JP6288265B2 - 鋼線 - Google Patents

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Description

本発明は、プレストレストコンクリートなどに用いる、製造性を低下させることなく、伸線加工性及び捻回特性を劣化させることなく、引張強さが1800MPa以上であり、かつ耐水素脆化特性を向上させた高強度な鋼線に関する。
本願は、2014年6月4日に、日本に出願された特願2014−116004号に基づき優先権を主張し、この内容をここに援用する。
主として、土木・建築構造物に用いられるプレストレストコンクリートの緊張に用いられている鋼線は、PC鋼線と称される。
従来、ピアノ線材をパテンティング処理して、その組織をパーライトにした後、伸線加工と撚り線加工とを行って得られたワイヤは、ストランドと呼ばれている。このストランドを最終工程にて時効熱処理することによって、PCストランド用パーライト鋼線は製造されている。
なお、以下、「PCストランド用パーライト鋼線」を、単に「鋼線」または「パーライト鋼線」と記載する場合がある。
近年は、施工コストの低減や構造物の軽量化を目的に、引張強さが1800MPaを超える高強度のPCストランド用パーライト鋼線が求められている。
しかしながら、PCストランド用パーライト鋼線の高強度化に伴って、鋼線の耐水素脆化特性が低下する課題がある。
鋼線の耐水素脆化特性を向上させる技術として、特許文献1にはPC鋼線の表層の少なくとも1/10d(dは鋼線の半径)の深さの領域において、パーライト中の板状セメンタイトの平均アスペクト比を30以下とした高強度PC鋼線が提案されている。
しかしながら、特許文献1に記載のPC鋼線を得るためには、冷間伸線加工後の最終工程において急速加熱して、450℃以上に5秒以上保持するなどの処理が必要であり、製造方法が複雑となる。
また、特許文献2では、PC鋼線の線径をDとしたときに、表面から0.1Dの領域の硬さを、内部の硬さの1.1倍以下にした高強度PC鋼線が提案されている。
また、特許文献2に記載のような硬さを得るためには、例えば、線材を900℃〜1100℃に加熱後、600℃〜650℃の温度範囲に保定して部分的なパーライト変態処理を施した後、引き続き540℃〜600℃未満の温度範囲に保持することや、熱間圧延により700℃〜950℃で仕上げ圧延した後、500℃〜600℃の温度範囲に冷却することや、また、伸線加工後に450℃超〜650℃の温度範囲に2秒〜30秒保持し、引き続き250℃〜450℃でのブルーイング処理を施すなど、複雑な製造方法が必要となる。
日本国特開2004−360005号公報 日本国特開2009−280836号公報
このように、伸線加工性と捻回特性とを有し、高強度な鋼線の耐水素脆化特性を向上させる従来技術は、製造方法が複雑になり製造性が低下し、鋼線の引張強さと耐水素脆化特性とを両立させることが難しかった。
そこで、本発明は、このような実情に鑑み、製造性を低下させることなく、伸線加工性及び捻回特性を劣化させることなく、高強度でかつ耐水素脆化特性に優れた高強度なパーライト鋼線を提供することを目的とする。
まず鋼線の組織は、伸線時に高強度化しやすいパーライトとする必要がある。本発明者らは、引張強さが1800MPa以上の高強度な鋼線の耐水素脆化特性に及ぼす化学成分と、組織との関係を詳細に調査した。その結果、本発明者らは、高強度な鋼線の耐水素脆化特性を向上させるとともに、生産性を向上させて安価に製造することが可能なパーライト鋼線について、次の知見を見出した。
線材をPb浴、あるいは熱間圧延ラインに設置した溶融塩槽に浸漬して、パーライト変態を完了させるためのパテンティング処理を行い、その後、パテンティング処理した線材を伸線加工する。そして、伸線加工後の線材に対して、時効熱処理や、張力を付与しながら加熱処理を行うヒートストレッチ処理を行うことによって、高強度なパーライト鋼線は一般に製造されている。
本発明者らは、パーライト鋼線の耐水素脆化特性を向上させるためには、下記の方法が有効であることを見出した。それは、伸線加工によって伸長化したパーライトブロックのうち、高ひずみ領域のパーライトブロックを回復または再結晶させ微細化させる方法である。この方法が有効である理由は必ずしも明らかではないが、局所的な高ひずみと時効熱処理とにより、耐水素脆化特性の向上効果が得られるものと推測される。
まず、伸線加工によって局所的に高ひずみになっている箇所(局所領域)は、局所的に延性が低下しており、この延性が低下した局所領域から水素脆化が発生する。そして、この高ひずみの局所領域を時効熱処理により、回復または再結晶させることによって、局所的に延性を回復でき、鋼線の耐水素脆化特性を向上させることが可能となる。また、回復または再結晶する領域が局所的であるため、鋼線自体の引張強さは殆ど変化しない。
このように、本発明者らは鋼線の組織を、局所的な高ひずみを用いて、改良することにより、従来技術と比べて高強度なパーライト鋼線の耐水素脆化特性を向上させることが可能となるとことを見出した。
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、その要旨は以下のとおりである。
(1)本発明の一態様に係る鋼線は、化学成分として、質量%で、C:0.80%〜1.20%、Si:0.10%〜2.00%、Mn:0.20%〜1.00%、P:0.030%以下、S:0.030%以下、O:0.0100%以下、N:0.0010%〜0.0100%を含有し、選択的に、Al:0.100%以下、Cr:2.00%以下、Mo:1.00%以下、V:0.30%以下、B:0.0050%以下、Ti:0.050%以下、Nb:0.050%以下、Zr:0.050%以下、Ni:2.00%以下、Cu:1.00%以下、Ca:0.010%以下、Mg:0.010%以下からなる群より選択される1種以上を含有し、残部がFe及び不純物であり、組織はパーライトを含み、前記パーライトの面積率が90%以上であり、平均パーライトブロック粒径が円相当径で5μm〜20μmであり、前記平均パーライトブロック粒径の0.1倍以下の前記円相当径を有するパーライトブロックの前記パーライトに占める面積率が3%以上、30%以下であり、引張強さが1800MPa以上である。
(2)上記(1)に記載の鋼線では、前記化学成分として、質量%で、Al:0.005%〜0.100%、Cr:0.01%〜2.00%、Mo:0.01%〜1.00%、V:0.01%〜0.30%、B:0.0001%〜0.0050%、Ti:0.001%〜0.050%、Nb:0.001%〜0.050%、Zr:0.001%〜0.050%、Ni:0.01%〜2.00%、Cu:0.01%〜1.00%、Ca:0.0001%〜0.010%、Mg:0.0001%〜0.010%からなる群より選択される1種以上を含有してもよい。
上記(1)および(2)の各態様によれば、耐水素脆化特性に優れ、かつ引張強さ1800MPa以上の高強度なパーライト鋼線の提供が可能になる。そして、この高強度なパーライト鋼線が、土木・建築物の施工コストの低減や軽量化に寄与し、産業上の効果は極めて顕著である。
上述したように、一般に、高強度なパーライト鋼線は、次のように製造されている。まず、熱間圧延により製造された線材に対し、Pb浴あるいは熱間圧延ラインに設置した溶融塩槽にて、パテンティング処理が行われる。引き続き、この線材は伸線加工される。その後、この線材に対し、時効熱処理や張力を付与しながら、加熱処理を行う「ヒートストレッチ処理」が行われる。
高強度なパーライト鋼線の耐水素脆化特性を向上させるためには、上述したように、伸線加工後の高ひずみが存在する局所領域のパーライトブロックを、時効熱処理により回復または再結晶させて微細にしておくことが有効である。つまり、伸線加工後に時効熱処理を施した鋼線においても、局所的に高ひずみとなって延性が低下している脆化領域が消失していることにより、水素割れのき裂の発生を抑制することができる。したがって、高強度であっても耐水素脆化特性の劣化を抑制することが可能となる。
即ち、鋼線において、パーライトの面積率が90%以上であり、平均パーライトブロック粒径が円相当径で5μm〜20μmであり、かつ、その平均パーライトブロック粒径の0.1倍以下の円相当径を有するパーライトブロックの全パーライトに占める面積率を3%以上、30%以下とすることで、伸線加工、時効熱処理及びヒートストレッチ処理後の鋼線の強度を1800MPa以上にすることができ、かつ、鋼線の耐水素脆化特性を劣化させないことが可能である。
このように、伸線加工によって導入した高ひずみが存在する領域を、伸線加工後の時効熱処理によって、回復または再結晶させることによって、平均パーライトブロック粒径よりも非常に小さい粒径を有するパーライトブロック(微細パーライトブロック)を生成させ、その微細パーライトブロックが全パーライトに占める面積率を制御することによって、従来技術と比べて、引張強さが1800MPa以上であっても、鋼線の耐水素脆化特性を向上させることが可能となる。
ここで、微細パーライトブロックとは、具体的に、平均パーライトブロック粒径(円相当径)の0.1倍の以下の円相当径を有するパーライトブロックを示す。例えば、微細パーライトブロックの大きさは、0.1μm〜2.0μmが好ましい。
本実施形態に係る鋼線について説明する。
まず、本実施形態における鋼線が含有する化学成分の範囲を限定した理由を説明する。なお、以下の説明における%は、質量%を意味する。
C:0.80%〜1.20%
Cは、鋼線の組織をパーライトとし、伸線加工後の鋼線の引張強さを確保するために必要な元素である。
C含有量が0.80%未満では、線材中に初析フェライトが生成し、例えば、1800MPaという所定の引張強さを確保することが困難となる。そのため、C含有量の下限を0.80%とする。より安定して引張強さを高めるためには、C含有量は、好ましくは0.85%以上であり、より好ましくは0.90%以上である。
一方、C含有量が1.20%を超えると、線材中に初析セメンタイトが増加して、線材の伸線加工性が劣化する。そのため、C含有量の上限を1.20%とする。バラツキを無くし、より安定して伸線加工性を得るためには、C含有量は、好ましくは1.15%以下であり、より好ましくは1.10%以下である。
Si:0.10%〜2.00%
Siは、リラクセーション特性を高めるとともに、固溶強化により引張強さを高めるために必要な元素である。
Si含有量が0.10%未満では、これらの効果が不十分である。そのため、Si含有量の下限を0.10%とする。より高いリラクセーション特性を得るためには、Si含有量は、好ましくは0.30%以上であり、より好ましくは0.50%以上である。
一方、Si含有量が2.00%を超えると、これらの効果が飽和するとともに、線材の伸線加工性が劣化して、鋼線の製造性が低下する。そのため、Si含有量の上限を2.00%とする。より安定して熱間圧延中に割れを発生させないためには、Si含有量は、好ましくは1.80%以下であり、より好ましくは1.50%以下である。
Mn:0.20%〜1.00%
Mnは、パーライト変態後の鋼の引張強さを高めるために必要な元素である。
Mn含有量が、0.20%未満では、この効果が不十分である。そのため、Mn含有量の下限を0.20%とする。より安定して引張強さを高めるためには、Mn含有量は、好ましくは0.30%以上であり、より好ましくは0.50%以上である。
一方、Mn含有量が、1.00%を超えると、偏析により局所的な強度が高くなるため捻回特性が低下する。そのため、Mn含有量の上限を1.00%とする。合金コストの観点より、Mn含有量は、好ましくは0.90%以下であり、より好ましくは0.80%以下である。
P:0.030%以下
Pは、不純物として鋼線中に含有され、粒界に偏析して耐水素脆化特性を劣化させる元素である。
特に、P含有量が0.030%を超えると、耐水素脆化特性の劣化が著しくなる。したがって、P含有量は0.030%以下に制限する。P含有量は好ましくは0.015%以下であり、より好ましくは0.010%以下である。
なお、P含有量の下限は0%を含む。しかしながら、現状の精錬技術と製造コストとを考慮すると、P含有量の下限は0.0001%が好ましい。
S:0.030%以下
Sも、Pと同様に、不純物として鋼線中に含有され、粒界に偏析して耐水素脆化特性を劣化させる元素である。
特に、S含有量が0.030%を超えると、耐水素脆化特性の劣化が著しくなる。したがって、S含有量は0.030%以下に制限する。S含有量は好ましくは0.015%以下であり、より好ましくは0.010%以下である。
なお、S含有量の下限は0%を含む。しかしながら、現状の精錬技術と製造コストとを考慮すると、S含有量の下限は0.0001%が好ましい。
O:0.0100%以下
Oは、鋼線中に不可避的に含有され、Al、TiまたはMnなどの酸化物として存在する元素である。
特に、O含有量が0.0100%を超えると、粗大な酸化物を形成し、伸線加工時に断線の原因となる。したがって、O含有量は0.0100%以下に制限する。O含有量は好ましくは0.0080%以下であり、より好ましくは0.0050%以下である。
なお、O含有量の下限は0%を含む。しかしながら、現状の精錬技術と製造コストとを考慮すると、O含有量の下限は0.0001%が好ましい。
N:0.0010%〜0.0100%
Nは、Al、Ti、Nb、Vと窒化物/炭窒化物を形成し、結晶粒径を細粒化し、鋼線の延性を向上させるために必要な元素である。
N含有量が0.0010%未満では、この効果が得られない。そのため、N含有量の下限を0.0010%とする。より安定して延性を向上させるためには、N含有量は、好ましくは0.0015%以上であり、より好ましくは0.0025%以上である。
一方、N含有量が0.0100%を超えると、微細析出物が増加して鋼線の延性を低下させる。そのため、N含有量の上限を0.0100%とする。より安定して鋼線の延性を得るため、N含有量は、好ましくは0.0070%以下であり、より好ましくは0.0050%以下である。
以上が、本実施形態に係る鋼線の基本的な成分組成であり、残部は、鉄及び不純物である。なお、「残部がFe及び不純物である」における「不純物」とは、鋼を工業的に製造する際に、原料としての鉱石、スクラップ、または製造環境などから不可避的に混入するものを指す。
上記した基本成分及び不純物の他に、本実施形態に係る鋼線には、さらに、選択的に、Al、Cr、Mo、V、B、Ti、Nb、Zr、Ni、Cu、Ca及びMgからなる群より選択される1種以上を含有してもよい。
以下に、これら成分の数値限定範囲とその限定理由とについて説明する。ここで、記載する%は、質量%である。
Al:0.100%以下
Alは脱酸元素として機能するとともに、AlNを形成することによって、結晶粒を細粒化する。その結果、鋼線の延性を向上させる効果を有する。また、結晶粒を微細化して、鋼線の耐水素脆化特性を向上させる効果を有する。
このような効果を得たい場合には、Al含有量を0.005%以上とすることが好ましい。
一方で、Al含有量が0.100%を超えると、これらの効果が飽和するとともに製造性を劣化させる虞がある。そのため、Al含有量は0.100%以下が好ましい。
Al含有量は、より好ましくは0.008%〜0.070%であり、さらに好ましくは0.010%〜0.050%である。
Cr:2.00%以下
Crはパーライト変態後の鋼の引張強さを高める効果を有する。
このような効果を得たい場合には、Cr含有量を0.01%以上とすることが好ましい。
一方で、Cr含有量が2.00%を超えると、合金コストが上がるだけでなく、本実施形態に係る鋼線には不必要なマルテンサイト組織が生じ易くなって、伸線加工性や鋼線の耐水素脆化特性を劣化させる虞がある。そのため、Cr含有量は2.00%以下が好ましい。
Cr含有量は、より好ましくは0.05%〜1.00%であり、さらに好ましくは0.10%〜0.50%である。
Mo:1.00%以下
Moは時効熱処理後の鋼線の引張強さを高める効果を有する。
このような効果を得たい場合には、Mo含有量を0.01%以上とすることが好ましい。
一方で、Mo含有量が1.00%を超えると、合金コストが上がるだけでなく、本実施形態に係る鋼線には不必要なマルテンサイト組織が生じ易くなって、伸線加工性や鋼線の耐水素脆化特性を劣化させる虞がある。そのため、Mo含有量は1.00%以下が好ましい。
Mo含有量は、より好ましくは0.03%〜0.50%であり、さらに好ましくは0.05%〜0.30%である。
V:0.30%以下
Vは炭化物VCとして析出して、引張強さを高めるとともに、鋼線の耐水素脆化特性を向上させる効果を有する。
このような効果を得たい場合には、V含有量を0.01%以上とすることが好ましい。
一方で、V含有量が0.30%を超えると、合金コストが増加し、製造性が低下する。そのため、V含有量は0.30%以下が好ましい。
V含有量は、より好ましくは0.03%〜0.20%であり、さらに好ましくは0.05%〜0.15%である。
B:0.0050%以下
Bは時効熱処理後の鋼線の引張強さを高める効果や鋼線の耐水素脆化特性を向上させる効果を有する。
このような効果を得たい場合には、B含有量を0.0001%以上とすることが好ましい。
一方で、B含有量が0.0050%を超えると、これらの効果が飽和し、製造性が低下する。そのため、B含有量は0.0050%以下が好ましい。
B含有量は、より好ましくは0.0003%〜0.0040%であり、さらに好ましくは0.0005%〜0.0020%である。
Ti:0.050%以下
Tiは脱酸元素として機能するとともに、炭化物や窒化物を析出させて鋼線の引張強さを高める効果や、結晶粒を細粒化して鋼線の延性を向上させる効果を有する。
このような効果を得たい場合には、Ti含有量を0.001%以上とすることが好ましい。
一方で、Ti含有量が0.050%を超えると、これらの効果が飽和するとともに、粗大な酸化物を生成して鋼線の伸線加工性を劣化させる虞がある。そのため、Ti含有量は0.050%以下が好ましい。
Ti含有量は、より好ましくは0.003%〜0.040%であり、さらに好ましくは0.005%〜0.030%である。
Nb:0.050%以下
Nbは炭化物や窒化物を析出させて鋼線の引張強さを高める効果や、結晶粒を細粒化して鋼線の延性を向上させる効果を有する。
このような効果を得たい場合には、Nb含有量を0.001%以上とすることが好ましい。
一方で、Nb含有量が0.050%を超えると、これらの効果が飽和するとともに鋼線の捻回特性を劣化させる虞がある。そのため、Nb含有量は0.050%以下が好ましい。
Nb含有量は、より好ましくは0.003%〜0.040%であり、さらに好ましくは0.005%〜0.030%である。
Zr:0.050%以下
Zrは脱酸元素として機能するとともに、硫化物を形成することで固溶Sを低減し、鋼線の耐水素脆化特性を向上させる効果を有する。
このような効果を得たい場合には、Zr含有量を0.001%以上とすることが好ましい。
一方で、Zr含有量が0.050%を超えると、これらの効果が飽和するとともに、粗大な酸化物を生成して、鋼線の伸線加工性を劣化させる虞がある。そのため、Zr含有量は0.050%以下が好ましい。
Zr含有量は、より好ましくは0.003%〜0.040%であり、さらに好ましくは0.005%〜0.030%である。
Ni:2.00%以下
Niは水素の侵入を抑制する効果を有する。
このような効果を得たい場合には、Ni含有量を0.01%以上とすることが好ましい。
一方で、Ni含有量が2.00%を超えると、合金コストが上がるだけでなく、本実施形態に係る鋼線には不必要なマルテンサイト組織が生じ易くなって、鋼線の伸線加工性や耐水素脆化特性を劣化させる虞がある。そのため、Ni含有量は2.00%以下が好ましい。
Ni含有量は、より好ましくは0.04%〜1.00%であり、さらに好ましくは0.06%〜0.60%である。
Cu:1.00%以下
Cuは水素の侵入を抑制する効果を有する。
このような効果を得たい場合には、Cu含有量を0.01%以上とすることが好ましい。
一方で、Cu含有量が1.00%を超えると、熱間延性を阻害し製造性が劣化するとともに、本実施形態に係る鋼線には不必要なマルテンサイト組織が生じ易くなって、鋼線の伸線加工性や耐水素脆化特性を劣化させる虞がある。そのため、Cu含有量は1.00%以下が好ましい。
Cu含有量は、より好ましくは0.02%〜0.50%であり、さらに好ましくは0.03%〜0.30%である。
Ca:0.010%以下
Caは脱酸元素として機能するとともに、硫化物を形成することで固溶Sを低減し、耐水素脆化特性を向上させる効果を有する。このような効果を得たい場合には、Ca含有量を0.0001%以上とすることが好ましい。
一方で、Ca含有量が0.010%を超えると、これらの効果が飽和するとともに粗大な酸化物を生成し、伸線加工性を劣化させる虞がある。そのため、Ca含有量は0.010%以下が好ましい。
Ca含有量は、より好ましくは0.0003%〜0.0050%であり、さらに好ましくは0.0010%〜0.0030%である。
Mg:0.010%以下
Mgは脱酸元素として機能するとともに、硫化物を形成することで固溶Sを低減し、耐水素脆化特性を向上させる効果を有する。
このような効果を得たい場合には、Mg含有量を0.0001%以上とすることが好ましい。
一方で、Mg含有量が0.010%を超えると、これらの効果が飽和するとともに粗大な酸化物を生成し、伸線加工性を劣化させる虞がある。そのため、Mg含有量は0.010%以下が好ましい。
Mg含有量は、より好ましくは0.0003%〜0.0050%であり、さらに好ましくは0.0010%〜0.0030%である。
次に、本実施形態に係る鋼線の組織について説明する。
本実施形態に係る鋼線の組織は、パーライトを含む。
このパーライトの面積率が90%未満では、伸線加工及び時効熱処理後の鋼線の引張強さが低下したり、捻回特性が劣化する。したがって、このパーライトの面積率を90%以上とする。好ましくは、パーライトの面積率は95%以上である。なお、パーライトの面積率は、100%でもよい。
一方、本実施形態に係る鋼線の組織の残部は、すなわち、パーライト以外の組織はフェライト、ベイナイト、初析セメンタイト及びマルテンサイトの非パーライト組織である。これらの非パーライト組織は、伸線加工の際に割れの発生や、伸線加工と時効熱処理後の鋼線の耐水素脆化特性を劣化させる。そのため、非パーライト組織の面積率を10%以下とする。
なお、パーライトの面積率は、100%から非パーライト組織の面積率を減じて求めることができる。
具体的には、パーライトの面積率は次の方法で求めることが出来る。なお、本段落おけるdは鋼線の半径(単位mm)を示す。
鋼線の試料(サンプル)において、鋼線の長手方向に平行なL断面を鏡面研磨した後、エッチングする。そして、エッチングしたL断面の表層から50μm深さ、1/4d、1/2dの3か所の位置において、それぞれSEMを用いて、倍率2000倍で、5視野撮影する。なお、1視野あたりの面積は、60μm×40μmである。
得られた各視野のSEM写真を用いて、通常の画像解析の方法で、マルテンサイト、ベイナイト、フェライトなどの非パーライト組織の面積率を求め、それらを全体から除いたもの、即ち、100%から非パーライト組織の面積率を減じたものをパーライトの面積率として得ることができる。
また、パーライトブロックの大きさは伸線加工性と非常に強い相関関係があり、パーライトを微細化することによって、鋼線の伸線加工性を向上させることができる。この効果は、平均パーライトブロック粒径の制御によって得られる。
平均パーライトブロック粒径が、円相当径で20μmを超えると、鋼線の伸線加工性の向上効果が得られない。そのため、平均パーライトブロック粒径を円相当径で20μm以下とする。
一方、平均パーライトブロック粒径を小さくし過ぎると、具体的には、平均パーライトブロック粒径を5μm未満にすると、高ひずみを有する局所領域における回復または再結晶による鋼線の引張強さの向上効果を得られない。そのため、平均パーライトブロック粒径を円相当径で5μm以上とする。
なお、平均パーライトブロック粒径の円相当径は、円の直径であり、電子線後方散乱回折装置(EBSD)を用いて測定することができる。
本実施形態に係る鋼線では、平均パーライトブロック粒径以外に、高ひずみを有する局所領域において、伸線加工及び時効熱処理によって回復または再結晶により得られる微細なパーライトブロックの粒径を制御する必要がある。
高ひずみを有する局所領域において、伸線加工及び時効熱処理によって回復または再結晶により得られる微細なパーライトブロックの粒径は、円相当径で、最大で平均パーライトブロック粒径の0.1倍である。すなわち、これらの微細なパーライトブロックの粒径は、これらの微細なパーライトブロックを含んだ平均パーライトブロック粒径の0.1倍以下である。
伸線加工後の時効熱処理によって、回復または再結晶する局所領域が大きくなると、この平均パーライトブロック粒径の0.1倍以下の円相当径を有する微細なパーライトブロックの全パーライトに占める面積率(微細パーライトブロックの面積率)が30%を超えてしまう。その結果、鋼線の強度が低下する。そのため、平均パーライトブロック粒径の0.1倍以下の円相当径を有する微細なパーライトブロックの全パーライトに占める面積率(微細パーライトブロックの面積率)は30%以下とする。
一方で、伸線加工後の時効熱処理によって回復または再結晶する局所領域が十分でなく、高ひずみが残存する領域が残ってしまうと、この平均パーライトブロック粒径の0.1倍以下の円相当径を有する微細なパーライトブロックの全パーライトに占める面積率(微細パーライトブロックの面積率)が3%未満になる。その結果、伸線加工と時効熱処理後の鋼線の耐水素脆化特性が劣化する。そのため、平均パーライトブロック粒径の0.1倍以下の円相当径を有する微細なパーライトブロックの全パーライトに占める面積率(微細パーライトブロックの面積率)は3%以上とする。
なお、パーライトブロックの大きさは、鋼線の直径(線径)を、単位mmで、Dとしたとき、鋼線のL断面を研磨して表層からの深さが0.01×D、0.25×D、0.5×Dにて、透過型電子顕微鏡を用いて200kVの加速電圧にてTEM−プリセッション法を用いる解析により得られる。
まず、TEM−プリセッション法では、10nm以下のビーム径で、15nmピッチで6μm×6μmの視野を伸線方向に18視野、鋼線の伸線方向(長手方向)と鋼線の長手方向に垂直な垂直方向に5視野連続の合計90視野を測定し、各視野を繋ぎ合わせる。
次に、パーライトブロック粒界については、フェライトの回折スポットを解析することで、各測定点での結晶方位を決定して結晶方位マップを作成し、10°以上の方位差がある粒界をブロック粒界とする。
そして、パーライトブロックの大きさ、すなわちパーライトブロック粒径は、ブロック粒界で囲まれた各ブロックの面積から求めた円相当径で定義する。
各視野で得られたパーライトブロック粒径の面積を合計して、面積平均することによって、本実施形態に係る鋼線の平均パーライトブロック粒径を得ることができる。
上述した化学組成と組織とを満足することで、1800MPa以上の引張強さを有し、耐水素脆化特性に優れるPC鋼線として好適な鋼線を得ることができる。引張強さが1800MPa未満では、PCストランド用パーライト鋼線として、施工コストの低減や構造物の軽量化の目的を達成することができない。そのため、本実施形態に係る鋼線の引張強さは1800MPa以上とする。上述した鋼線を得るためには、後述する製造方法により鋼線を製造すればよい。次に、本実施形態に係る鋼線の好ましい製造方法について説明する。
本実施形態に係る鋼線は以下のようにして製造することができる。なお、以下に説明する鋼線の製造方法は、本実施形態に係る鋼線を得るための一例であり、以下の手順及び方法で限定するものではなく、本発明の構成を実現できる方法であれば、如何なる方法をも採用することが可能である。
まず、上記の化学成分となるよう鋼を溶製した後、連続鋳造によって鋼片を製造する。なお、連続鋳造後、鋼片に分塊圧延を行ってもよい。
得られた鋼片を1050℃以上になるように加熱し、仕上げ圧延温度を850℃として熱間圧延し、線材を得る。
仕上げ圧延後に得られた線材を、リング状に巻取る。この時、巻取り温度を950℃以下とする。
平均パーライトブロック粒径を円相当径で5μm〜20μmとするために、巻取り後の線材を、570℃以下の溶融塩槽に浸漬して、パーライト変態処理を行う。この処理は、一般的にパテンティング処理と呼ばれる。この時、溶融塩槽の温度が低すぎると、鋼線の組織がベイナイトになってしまうので、溶融塩槽温度は450℃以上とする必要がある。
平均パーライトブロック粒径とこの平均パーライトブロック粒径の0.1倍以下の円相当径を有する微細なパーライトブロックの全パーライトに占める面積率とをより安定して得るためには、溶融塩槽温度の低温化が有効であり、溶融塩槽温度を500℃未満にすることが好ましい。
また、パーライト変態処理は熱間圧延後、室温まで冷却速度5℃/s〜30℃/sで冷却した線材を、950℃以上の温度域に再加熱した後、Pb浴や塩浴に浸漬して500℃〜600℃に保持してもよい。
そして、これらの線材を、減面率75%〜90%で4mmφ〜6mmφの鋼線に伸線加工して引張強さを付与し、伸線加工後に450℃以上で0.5秒以上〜5秒未満の時間の時効熱処理を行う。
時効熱処理時間が0.5秒未満では、再結晶または回復が十分ではなく、高ひずみが残存する領域が多くなってしまい、結果として、鋼線の引張強さが低下する。一方、時効熱処理時間が5秒以上だと、微細なパーライトブロックを得ることができず、結果として、鋼線の耐水素脆化特性と高強度とを両立することができない。
上述の製造方法により、製造性を低下させることなく、伸線加工性及び捻回特性を劣化させることなく、耐水素脆化特性に優れた、引張強さが1800MPa以上の高強度鋼線を製造することができる。
以下、本発明の鋼線の実施例を挙げ、本実施形態に係る鋼線の効果をより具体的に説明する。ただし、実施例における条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能である。よって、本発明は、種々の条件を採用し得、それらは何れも本発明の技術的特徴に含まれるものである。
以下に実施例により、本発明の効果をさらに具体的に説明する。
表1−1及び表1−2に示す化学成分からなる鋼材を用いて、表2−1及び表2−2に示す加熱温度に加熱して熱間圧延を行い、表2−1及び表2−2に示す巻取り温度にて巻取りをした。
次いで、熱間圧延ライン後方の溶融塩槽に浸漬してパテンティング処理を行い、得られた線材を伸線加工および伸線加工後に加熱して時効熱処理を行って、鋼線を作成した。
表2−1及び表2−2には鋼線の技術的特徴、すなわち、パーライトの面積率、面積平均により求めた鋼線の平均パーライトブロック粒径(円相当径)、微細パーライトブロックの面積率(平均パーライトブロック粒径の0.1倍以下の円相当径を有するパーライトブロックの全パーライトに占める面積率)及び鋼線の引張強さを示した。
表2−1の試験番号2は、熱間圧延後に溶融塩槽でパテンティング処理を行わずに、ステルモアを用いて衝風冷却し、その後伸線加工及び時効熱処理を行って得られた鋼線である。この試験番号2は、パーライトの面積率が本発明の範囲を外れており、伸線加工と時効熱処理後の鋼線の引張強さが1800MPaを満たさなかった比較例である。
試験番号7は、溶融塩温度が高く、パーライトの面積率が本発明の範囲を外れており、伸線加工と時効熱処理後の鋼線の引張強さが1800MPaを満たさなかった比較例である。
試験番号10は、伸線加工後の時効熱処理時間が長かったため、微細パーライトブロックの面積率が本発明の範囲を外れており、時効熱処理後の鋼線の引張強さが1800MPaを満たさなかった比較例である。
試験番号12は、伸線加工後の時効熱処理温度が低かったため、微細パーライトブロックの面積率が本発明の範囲を満たさなかった比較例である。
試験番号16は、パーライトの面積率が本発明の範囲を外れたため、時効熱処理後の鋼線の引張強さが1800MPa未満となった比較例である。
試験番号43は、C含有量が本発明の範囲を下回ったため、時効熱処理後の鋼線の引張強さが1800MPa未満となった比較例である。
試験番号46は、Si含有量が本発明の範囲を下回ったため、時効熱処理後の鋼線の引張強さが1800MPa未満となった比較例である。
試験番号53は、Mn含有量が本発明の範囲を下回ったため、時効熱処理後の鋼線の引張強さが1800MPa未満となった比較例である。
表3は熱間圧延後の線材を再加熱してパテンティング処理を行った例である。表3に示した条件で再加熱、パテンティング処理、伸線加工および時効熱処理を行った。パーライトの面積率、鋼線の平均パーライトブロック粒径、微細パーライトブロックの面積率(平均パーライトブロック粒径の0.1倍以下の円相当径を有する微細なパーライトブロックの全パーライトに占める面積率)及び鋼線の引張強さを示した。
表3の試験番号66は、時効熱処理温度が低かったため、微細パーライトブロックの面積率(平均パーライトブロック粒径の0.1倍以下の円相当径を有する微細なパーライトブロックの全パーライトに占める面積率)が、本発明の範囲を満たさなかった比較例である。
試験番号67は、時効熱処理時間が長く、微細パーライトブロックの面積率が本発明の範囲よりも大きいため、鋼線の引張強度が1800MPaを満たさなかった比較例である。
試験番号68は、時効熱処理温度が低かったため、微細パーライトブロックの面積率が本発明の範囲を満たさなかった比較例である。
表2−1、表2−2及び表3に記載した各試験番号の鋼線を用いて耐水素脆化特性を評価した。なお、引張強さが1800MPa未満の鋼線については、必要な強度を満たしていないため、耐水素脆化特性を評価しなかった。また、鋼線の特性として、伸線加工性及び捻回特性のうちの1つ、または両方を満たさなかった鋼線については、試験番号48及び54を除いて、耐水素脆化特性の評価をしなかった。また、伸線加工性及び捻回特性の両方を満たしていた鋼線について、合金コストが増加するなど製造性が低下した鋼線については、耐水素脆化特性の評価をしなかった。
耐水素脆化特性はFIP試験により評価した。50℃の20%のNHSCN溶液中に各試験番号の鋼線を浸漬して、破断荷重の0.8倍の荷重を負荷し破断時間を評価した。なお、比液量は12cc/cmとした。FIP試験は各試験番号につき12本評価し、その平均値を水素脆化破断時間とした。耐水素脆化特性は鋼線の引張強さに依存するため、引張強さが1800MPa以上の鋼線では、20hr以上を耐水素脆化特性が良好と判定し、表4−1及び4−2中に「良」として表示した。
また、伸線加工性については、伸線時加工時に目的の線径まで断線若しくは長手方向表層に割れが発生する縦割れが発生しない場合を「伸線加工性が良好である」と判定し、表4−1及び表4−2中に「良」として表示した。捻回特性については、チャック間距離を直径の100倍、ねじり回転速度を5rpm/min以上の条件下で、ねじり試験により評価し、デラミネーションが発生しない場合を「捻回特性が良好である」と判定し、表4−1及び表4−2中に「良」として表示した。
また、製造コスト評価は、合金コストを含む製鋼コストおよび圧延コストを基準とし、選択元素を含む元素の成分範囲の中心値で計算した合金コスト以下および通常の圧延条件で計算した製造コスト以下となるものを「製造コストが低い」とし、表4−1及び表4−2中に「低」として表示した。一方、表4−1及び表4−2において、合金コストなど製造コストが増加した場合は、「高」として表示し、鋼線の製造性が低下したと判定した。
これらの結果を表4−1及び表4−2に示す。時効熱処理後の微細パーライトブロックの面積率が本発明の範囲を外れる試験番号12、67、68はいずれも水素脆化特性が不良であるのに対して、本発明例である実施例はいずれも耐水素脆化特性が良好だった。
試験番号44は、P含有量が本発明の範囲を上回ったため、耐水素脆化特性が不良となった比較例である。
試験番号48は、Cr含有量が本発明の範囲を上回ったため、耐水素脆化特性が不良となった比較例である。
試験番号49は、N含有量が本発明の範囲を上回ったため、耐水素脆化特性が不良となった比較例である。
試験番号52は、S含有量が本発明の範囲を上回ったため、耐水素脆化特性が不良となった比較例である。
試験番号54は、Mo含有量が本発明の範囲を上回ったため、耐水素脆化特性が不良となった比較例である。
試験番号61は、Ni含有量が本発明の範囲を上回ったため、耐水素脆化特性が不良となった比較例である。
試験番号62は、Cu含有量が本発明の範囲を上回ったため、耐水素脆化特性が不良となった比較例である。
試験番号65は、N含有量が本発明の範囲を下回り、平均パーライトブロック粒径が本発明の範囲を超えていたため、耐水素脆化特性が不良となった比較例である。
試験番号47、50、51、56、58〜60、63及び64は、それぞれMn含有量、O含有量、Si含有量、C含有量、Ti含有量、Nb含有量、Zr含有量、Ca含有量及びMg含有量が、本発明の範囲を上回ったため、伸線加工性及び捻回特性のうちの1つ、または両方を満たさなかった。そのため、耐水素脆化特性の評価が出来なかった。
また、試験番号45、55及び57は、それぞれ、Al含有量、V含有量及びB含有量が、本発明の範囲を上回ったため、鋼線の製造性が低下していた。
Figure 0006288265
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本発明によれば、引張強さが1800MPa以上であり、かつ伸線加工性及び捻回特性を低下させることなく、耐水素脆化特性を向上させたプレストレストコンクリートなどに用いる高強度な鋼線を、製造性を低下させることなく得ることができ、産業上の貢献が極めて顕著である。

Claims (2)

  1. 化学成分として、質量%で、
    C :0.80%〜1.20%;
    Si:0.10%〜2.00%;
    Mn:0.20%〜1.00%;
    P :0.030%以下;
    S :0.030%以下;
    O :0.0100%以下;
    N :0.0010%〜0.0100%
    を含有し、選択的に、
    Al:0.100%以下;
    Cr:2.00%以下;
    Mo:1.00%以下;
    V :0.30%以下;
    B :0.0050%以下;
    Ti:0.050%以下;
    Nb:0.050%以下;
    Zr:0.050%以下;
    Ni:2.00%以下;
    Cu:1.00%以下;
    Ca:0.010%以下;
    Mg:0.010%以下;
    からなる群より選択される1種以上を含有し;
    残部がFe及び不純物であり;
    組織はパーライトを含み;
    前記パーライトの面積率が90%以上であり;
    平均パーライトブロック粒径が円相当径で5μm〜20μmであり;
    前記平均パーライトブロック粒径の0.1倍以下の前記円相当径を有するパーライトブロックの前記パーライトに占める面積率が3%以上、30%以下であり;
    引張強さが1800MPa以上であることを特徴とする鋼線。
  2. 前記化学成分として、質量%で、
    Al:0.005%〜0.100%;
    Cr:0.01%〜2.00%;
    Mo:0.01%〜1.00%;
    V :0.01%〜0.30%;
    B :0.0001%〜0.0050%;
    Ti:0.001%〜0.050%;
    Nb:0.001%〜0.050%;
    Zr:0.001%〜0.050%;
    Ni:0.01%〜2.00%;
    Cu:0.01%〜1.00%;
    Ca:0.0001%〜0.010%;
    Mg:0.0001%〜0.010%;
    からなる群より選択される1種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の鋼線。
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