JP7469642B2 - 高強度鋼線 - Google Patents

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本開示は、高強度鋼線に関する。
橋梁ケーブル用鋼線、PC鋼線、ロープ用鋼線等の鋼線は、高炭素鋼線材をパテンティング処理してパーライト組織にした後、伸線加工を行い、時効処理した鋼線を用いて製造されている。
近年は、施工コストの低減又は構造物の軽量化を目的に、引張強さが2010MPa以上の高強度鋼線が求められている。
しかしながら、鋼線の強度が高くなると、鋼線や、撚り線後の製品を水素が侵入する環境や腐食環境で使用すると、水素脆化や腐食の進行によって破断が生じる可能性が高くなる。そのため、上記分野に用いられる高強度鋼線には、優れた耐水素脆化特性と耐食性を有することが望まれる。
鋼線の耐水素脆化特性を向上させる技術として、特許文献1には、化学組成が、質量%で、C:0.90~1.10%、Si:0.80~1.50%、Mn:0.30~0.70%、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Al:0.010~0.070%、N:0.0010~0.010%、Cr:0~0.50%、V:0~0.10%、B:0~0.005%、Ni:0~1.0%、Cu:0~0.50%であり、前記鋼線の線径をDとしたとき、前記鋼線の表面から0.1Dの部位のビッカース硬さと、前記鋼線の表面から0.1Dの部位より内側の領域のビッカース硬さとの比が下記(i)式を満足し、前記鋼線の表面から10μmまでの領域における平均炭素濃度が、前記鋼線の炭素濃度の0.8倍以下であり、前記鋼線の表面から10μmの部位より内側の領域における金属組織が、面積%で、パーライト組織:95%以上であり、かつ、引張強さが2000~2400MPaである、高強度PC鋼線が提案されている。
1.10<HvS/HvI≦1.15 ・・・(i)
ただし、前記(i)式中の各記号の意味は、以下の通りである。
vS:鋼線の表面から0.1Dの部位のビッカース硬さ
vI:鋼線の表面から0.1Dの部位より内側の領域のビッカース硬さ
さらに、特許文献2では、C :0.70~1.20%、Si:0.10~2.00%、Mn:0.20~1.00%、P:0.030%以下、S :0.030%以下、N :0.0010~0.0100%、Al:0~0.100%、Cr:0~2.00%、V :0~0.30%、B :0~0.0050%、Ti:0~0.050%、Nb:0~0.050%、Zr:0~0.050%、Ni:0~2.00%、Cu:0~1.00%、Sn:0~0.50%、Mg:0~0.010%、Ca:0~0.010%、からなる化学組成を有し、金属組織が95面積%以上のパーライト組織からなり、鋼線の軸を含む軸方向の断面における表層で測定したパーライトブロックの平均アスペクト比Rが2.0以上であり、鋼線の直径をDとしたとき、鋼線の軸を含む軸方向の断面において、(表層で測定した平均アスペクト比)/(0.25Dの位置で測定した平均アスペクト比)が1.1以上であり、引張強度が1800MPa以上である高強度鋼線が提案されている。
さらに、特許文献3では、C:0.5~1.0%を含有する他、Cu,Ni及びTiよりなる群から選ばれる1種以上(但し、Cu及び/又はNiを含有する)であって、下記(1)式を満足するように含有する鋼からなり、パーライト組織の面積率を80%以上としたものであり、且つ1200N/mm2以上の強度を有するものであることを特徴とする耐遅れ破壊性及び耐食性に優れた高強度鋼線が提案されている。
3.1≧3[Cu]+[Ni]+6[Ti]≧0.24(%) …(1)
但し、[Cu],[Ni]及び[Ti]は夫々Cu,Ni及びTiの含有量(質量%)を示す。
特許第6416708号公報 国際公開第2018/021574号 特許第4124590号公報
C含有量を高くして引張強さを高くすると、耐水素脆化特性は低下するが、高強度であり、耐水素脆化特性にも優れた高強度鋼線が望ましい。
本開示は、引張強さが2010MPa以上であり、耐水素脆化特性に優れた高強度鋼線を提供することを課題とする。
上記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 化学組成が、質量%で、
C:0.70~1.15%、
Si:0.50~1.50%、
Mn:0.20~0.90%、
P:0.015%以下、
S:0.012%以下、
Cu:0.08~0.40%、
Ni:0.04~0.40%、
Al:0.010~0.070%、及び
N:0.0010~0.0060%
を含み、残部がFe及び不純物からなり、
鋼線に含まれるCu及びNiの質量%での含有量を、それぞれ[Cu]及び[Ni]で表した場合に、[Cu]/[Ni]≧1.0を満たし、
前記鋼線の中心軸を含み、かつ、前記中心軸に平行な断面において、前記鋼線の直径をDとした場合に、前記鋼線の表面から0.25Dの深さの位置でのパーライト組織の面積率が90%以上であり、かつ、パーライトブロックの平均アスペクト比が2.0以上であり、
前記鋼線の中心軸に垂直な断面において、前記鋼線の表面から0.03mmの深さの位置でのビッカース硬さの平均値をHv0.03、前記表面から前記中心軸までの領域でビッカース硬さの平均値が最大となる位置でのビッカース硬さの平均値をHvmaxで表した場合に、Hv0.03/Hvmax≦0.90を満たし、
引張強さが2010MPa以上である、高強度鋼線。
<2> 前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、
Cr:0.50%以下、
Mo:0.30%以下、
V:0.20%以下、及び
Nb:0.050%以下、
からなる群より選ばれる1種又は2種以上をさらに含む、<1>に記載の高強度鋼線。
<3> 前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、
Ti:0.050%以下、及び
B:0.0050%以下、
の1種又は2種をさらに含む、<1>又は<2>に記載の高強度鋼線。
<4> 前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、
Ca:0.0050%以下、
Mg:0.0050%以下、及び
Zr:0.050%以下
の1種又は2種をさらに含む、<1>~<3>のいずれか1つに記載の高強度鋼線。
<5> 前記鋼線の前記中心軸に垂直な断面において、前記表面から0.03mmの深さの位置でのビッカース硬さの平均値Hv0.03が550以下である<1>~<4>のいずれか1つに記載の高強度鋼線。
<6> 前記鋼線の直径が、1.5~8.0mmである<1>~<5>のいずれか1つに記載の高強度鋼線。
<7> 前記鋼線の表面に、Zn、Al、Cu、Sn、Mg及びSiからなる群より選ばれる1種又は2種以上の金属を含むめっき層が被覆されている<1>~<6>のいずれか1つに記載の高強度鋼線。
本開示によれば、引張強さが2010MPa以上であり、耐水素脆化特性に優れた鋼線が提供される。
パーライトブロックのアスペクト比を説明するための概略図である。 ビッカース硬さを測定する位置を説明するための概略図である。 実施例におけるa1~a13、c1、c2、e1の各鋼線から得られた、鋼線の引張強さと耐水素脆化特性の指標である水素脆化破断時間の関係を示す図である。 実施例におけるb1~b10、d1、d2の各鋼線から得られた、鋼線の引張強さと耐水素脆化特性の指標である水素脆化破断時間の関係を示す図である。
以下、本開示に係る高強度鋼線について詳細に説明する。本開示において「高強度鋼線」とは引張強さが2010MPa以上である鋼線を意味するが、以下の説明において、単に「鋼線」と称する場合がある。
本明細書中、化学組成とは、鋼線の鋼部分における組成(鋼組成)を意味し、めっき層を有する場合、めっき層の組成は含まれない。
化学組成の元素の含有量について、「%」は「質量%」を意味する。
化学組成の元素の含有量は、元素量(例えば、C量、Si量等)と表記する場合がある。
本明細書中において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
ただし、「~」の前後に記載される数値に「超」又は「未満」が付されている場合の数値範囲は、これら数値を下限値又は上限値として含まない範囲を意味する。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階的な数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよく、また、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
「鋼線の中心軸を含み、かつ、中心軸に平行な断面」とは、鋼線の中心軸を含み、鋼線の長手方向(つまり伸線方向)に沿って切断した、中心軸方向と平行な断面を示す。
また、「鋼線の中心軸に垂直な断面」とは、鋼線の長手方向(つまり伸線方向)に垂直に切断した断面を示す。
「中心軸」とは、鋼線の軸方向(長手方向)と直交する断面の中心点を通り、軸方向に延びる仮想線を示す。
鋼線の「表面」とは、鋼線の外周面を意味する。
「XD」(Xは数値)との表記は、鋼線の直径をDとしたとき、鋼線の表面から、中心軸に向かって(径方向に向かって)、直径DのX倍の深さの位置を示す。例えば、「0.25D」は、直径Dの0.25倍の深さの位置を示す。
以下、本開示の一例である実施形態について説明する。
本実施形態に係る高強度鋼線は、所定の化学成分を含み、かつ、下記(1)を満たす化学組成を有し、下記(2)を満たす金属組織を有し、さらに下記(3)を満たす硬さを有し、引張強さが2010MPa以上である高強度鋼線である。
(1)Cu:0.08~0.40%、Ni:0.04~0.40%であり、鋼線におけるCuの含有量を[Cu]、Niの含有量を[Ni]で表した場合に、[Cu]/[Ni]≧1.0を満足する範囲で含有する。
(2)鋼線の中心軸を含み、かつ、中心軸に平行な断面において、鋼線の直径をDとした場合に、鋼線の表面から0.25Dの深さの位置でのパーライト組織の面積率が90%以上であり、かつ、パーライトブロックの平均アスペクト比が2.0以上である。
(3)鋼線の中心軸に垂直な断面において、表面から0.03mmの深さで測定したビッカース硬さの平均値をHv0.03、表面から中心軸までの領域においてビッカース硬さが最大となる位置でのビッカース硬さの平均値をHvmaxで表したとき、Hv0.03/Hvmax≦0.90を満たす。
本実施形態に係る高強度鋼線は、上記構成により、高強度でかつ、耐水素脆化特性に優れた鋼線となる。
本発明者らは、鋼線の化学組成および金属組織が、耐水素脆化特性に及ぼす影響を詳細に調査した。その結果、本発明者らは次の知見を得た。
鋼材中にCu:0.08~0.40%、Ni:0.04~0.40%を[Cu]/[Ni]≧1.0を満足する範囲で含有させる。Cu量がNi量以上となるように含有することにより鋼材中に侵入する水素量が抑制され、水素脆化特性を改善することができる。
次に、鋼線の金属組織のパーライト組織の面積率を90%以上とし、中心軸に平行な断面において、パーライトブロックを軸方向(長手方向)に伸長化させる。パーライト組織はセメンタイト相とフェライト相の層状構造を有する。パーライト組織が伸長化して、パーライトブロックの平均アスペクト比が2.0以上になると、水素脆化き裂の伝搬経路が伸長化方向となり、耐水素脆化特性を改善できる。
また、表面から0.03mm深さでのビッカース硬さを低くすることにより、水素脆化のき裂の発生を抑制することで耐水素脆化特性を改善できる。
即ち、鋼線の成分が上記(1)を満足し、金属組織が上記(2)を満足し、さらに硬さが上記(3)を満足することで、鋼線の強度を2010MPa以上にしても高い水素脆化特性を得ることが可能となった。
以上により、本実施形態に係る鋼線は、高強度でかつ耐水素脆化特性に優れた鋼線となることが見出された。
[鋼線]
本実施形態に係る高強度鋼線は、化学組成が、質量%で、
C:0.70~1.15%、
Si:0.50~1.50%、
Mn:0.20~0.90%、
P:0.015%以下、
S:0.012%以下、
Cu:0.08~0.40%、
Ni:0.04~0.40%、
Al:0.010~0.070%、及び
N:0.0010~0.0060%
を含み、残部がFe及び不純物からなり、
鋼線に含まれるCu及びNiの質量%での含有量を、それぞれ[Cu]及び[Ni]で表した場合に、[Cu]/[Ni]≧1.0を満たし、
前記鋼線の中心軸を含み、かつ、前記中心軸に平行な断面において、前記鋼線の直径をDとした場合に、前記鋼線の表面から0.25Dの深さの位置でのパーライト組織の面積率が90%以上であり、かつ、パーライトブロックの平均アスペクト比が2.0以上であり、
前記鋼線の中心軸に垂直な断面において、前記鋼線の表面から0.03mmの深さの位置でのビッカース硬さの平均値をHv0.03、前記表面から前記中心軸までの領域でビッカース硬さの平均値が最大となる位置でのビッカース硬さの平均値をHvmaxで表した場合に、Hv0.03/Hvmax≦0.90を満たし、
引張強さが2010MPa以上である。
以下、本実施形態に係る鋼線の化学組成、金属組織、及び特性等について説明する。
<化学組成>
本実施形態に係る高強度鋼線の化学組成は、質量%で、C:0.70~1.15%、Si:0.50~1.50%、Mn:0.20~0.90%、P:0.015%以下、S:0.012%以下、Cu:0.08~0.40%、Ni:0.04~0.40%、Al:0.010~0.070%、N:0.0010~0.0060%、並びに残部:Fe及び不純物からなる。
また、本実施形態に係る鋼線の化学組成は、Feの一部に代えて、Cr:0.50%以下、Mo:0.30%以下、V:0.20%以下、Ti:0.050%以下、B:0.0050%以下、Nb:0.050%以下、Ca:0.0050%以下、Mg:0.0050%以下、及びZr:0.050%以下からなる群から選ばれる1種又は2種以上を含んでもよい。Cr、Mo、V、Ti、B、Nb、Ca、Mg及びZrは、任意元素である。つまり、本実施形態に係る高強度鋼線はこれら元素を含有しなくてもよいし、それぞれ0%超~上記上限値以下の範囲で含有してもよい。
以下、本実施形態に係る高強度鋼線に含まれる各元素量の範囲を限定した理由を説明する。
C:0.70~1.15%
Cは、鋼線の引張強さを確保するために含有する。C量が0.70%未満では初析フェライトが生成し、所定の引張強さを確保することが困難である。一方、C量が1.15%を超えると初析セメンタイト量が増加し伸線加工性が劣化する。そのため、C量は、0.70~1.15%とする。高強度と伸線加工性を両立する好ましいC量の範囲は、0.90~1.10%である。
Si:0.50~1.50%
Siは、リラクセーション特性を高めるとともに、固溶強化により引張強さを高める効果がある。Si量が0.50%未満ではこれらの効果が不十分である。Si量が1.50%を超えると、これらの効果が飽和するとともに熱間延性が劣化して、製造性が低下する。そのため、Si量は、0.50~1.50%とする。好ましいSi量の範囲は0.70~1.40%である。より好ましいSi量の範囲は1.00~1.30%である。
Mn:0.20~0.90%
Mnは、パーライト変態後の鋼の引張強さを高める効果がある。Mn量が0.20%未満では効果が不十分である。Mn量が0.90%を超えると効果が飽和する。そのため、Mn量は、0.20~0.90%とする。好ましいMn量の範囲は0.30~0.80である。
P:0.015%以下
Pは、不純物として鋼線に含有される。Pは延性を劣化させるため抑制したほうがよい。そのため、Pの上限は、0.015%とする。好ましいP量の上限は、0.012%である。より好ましいP量の上限は0.010%である。なお、P量の下限は、0%がよいが(つまり含まれないことがよいが)、脱Pコストを低減する観点から、0%超であることがよい。
S:0.012%以下
Sは、不純物として鋼線に含有される。Sは延性を劣化させるため抑制したほうがよい。さらにS含有量が増加すると、耐水素脆化特性が劣化する。そのため、S量の上限は、0.012%とする。好ましいS量の上限は、0.010%である。より好ましいS量の上限は0.008%である。なお、S量の下限は、0%がよいが(つまり含まれないことがよいが)、脱Sコストを低減する観点から、0%超であることがよい。
Cu:0.08~0.40%
Cuは、鋼線の耐水素脆化特性を向上させる効果がある。Cu量が0.08%未満ではその効果が得られない。Cu量が0.40%を超えると、鋼線の素材である線材に表面疵が発生しやすくなり、伸線加工の際に断線の原因となる。そのため、Cu量は0.08~0.40%とする。好ましいCu量の範囲は、0.09~0.30%である。より好ましいCu量の範囲は0.10~0.20%である。
Ni:0.04~0.40%
Niは、Cuを含有した線材を製造する際に発生する表面疵を抑制する効果がある。Ni量が0.04%未満ではその効果が得られない。Ni量が0.40%を超えるとマルテンサイト組織が生じ易くなって伸線加工性を劣化させることがある。そのため、Ni量は0.04~0.40%とする。好ましいNi量の範囲は0.06~0.30%である。より好ましいNi量の範囲は0.10~0.20%である。
[Cu]/[Ni]≧1.0
Cu及びNiは、その質量%での含有量をそれぞれ[Cu]、[Ni]で表した場合に[Cu]/[Ni]≧1.0を満足する範囲で含有することで、耐水素脆化特性を向上させることができる。[Cu]/[Ni]が1.0未満では、耐水素脆化特性の改善効果が低下する。[Cu]/[Ni]の上限は特に限定されないが、3.0を超えると線材の表面疵が発生しやすくなるため、3.0以下が好ましく、2.2以下がより好ましい。
Al:0.010~0.070%
Alは、脱酸元素として機能するとともに、AlNを形成し、結晶粒を細粒化し延性を向上させる効果、固溶Nを低減して延性を向上させる効果、固溶Bの生成を促進し、非パーライト組織の生成を抑制し、捻回特性や伸線加工性を改善する効果等がある。しかし、Al量が、0.010%未満では効果がなく、Al量が0.070%を超えると効果が飽和するとともに製造性を低下させることがある。そのため、Al量は0.010~0.070%とすることがよい。好ましいAl量の範囲は0.020~0.060%である。より好ましいAl量の範囲は0.030~0.050%である。
N:0.0010~0.0060%
Nは、Al、Ti、Nb、V等と窒化物を形成し、結晶粒径を細粒化し延性を向上させる効果がある。N量が0.0010%未満ではこれらの効果が得られない。N量が0.0060%を超えると伸線加工性と延性を劣化させる。そのため、N量は、0.0010~0.0060%とする。好ましいN量の範囲は0.0020~0.0050%未満である。
本実施形態に係る鋼線は、Feの一部に代えて、任意元素を含んでもよい。任意元素としては、Cr、Mo、V、Ti、B、Nb、Ca、Mg及びZrが挙げられる。これらの元素は任意元素であるため、各任意元素の含有量の下限値は0%でもよく、0%超でもよい。
B:0.0050%以下
Ti:0.050%以下
本実施形態に係る鋼線は、鋼線の表層部の非パーライト組織の面積率を低減する目的で、質量%で、更に、B:0超~0.0050%及びTi:0超~0.050%の1種又は2種を含有してもよい。
Bは、固溶Bとして粒界に偏析して非パーライト組織の生成を抑制し、捻回特性や伸線加工性を改善する効果がある。一方、B量が0.0050%を超えると粒界に炭化物を生成して伸線加工性を劣化させることがある。そのため、B量は0超~0.0050%とすることがよい。好ましいB量の範囲は0.0003~0.0030%である。より好ましいB量の範囲は0.0005~0.0020%である。
Tiは、脱酸元素として機能するとともに、炭化物や窒化物を析出させて引張強さを高める効果、結晶粒を細粒化して延性を向上させる効果、固溶Nを低減して伸線加工性を向上させる効果、固溶Bの生成を促進し、非パーライト組織の生成を抑制し、捻回特性や伸線加工性を改善する効果等がある。一方、Ti量が0.050%を超えるとこれらの効果が飽和するとともに粗大な酸化物又は窒化物を生成して伸線加工性を劣化させることがある。そのため、Ti量は0超~0.050%とすることがよい。好ましいTi量の範囲は0.005~0.030%である。より好ましいTi量の範囲は0.010~0.025%である。
本実施形態に係る高強度鋼線は、以下に記載する特性の向上を目的に、Cr:0超~0.50%、Mo:0超~0.30%、V:0超~0.20%、Nb:0超~0.050%Ca:0超~0.0050%、Mg:0超~0.0050%、及びZr:0超~0.050%からなる群より選ばれる1種又は2種以上を含有してもよい。
Cr:0.50%以下
Crは、パーライト変態後の鋼の引張強さを高める効果がある。一方、Cr量が0.50%を超えるとマルテンサイト組織が生じ易くなって伸線加工性および捻回特性を劣化させることがある。Cr量は0超~0.50%とすることがよい。好ましいCr量の範囲は0超~0.40%である。より好ましいCr量の範囲は0超~0.30%である。
Mo:0.30%以下
Moは、パーライト変態後の鋼の引張強さを高める効果がある。一方、Mo量が0.30%を超えるとマルテンサイト組織が生じ易くなって伸線加工性および捻回特性を劣化させることがある。Mo量は0超~0.30%とすることがよい。好ましいMo量の範囲は0超~0.20%である。より好ましいMo量の範囲は0超~0.15%である。
V:0.20%以下
Vは、炭化物VCを析出して、引張強さを高める効果がある。一方、V量が0.20%を超えて含有すると合金コストが増加するとともに捻回特性が劣化することがある。そのため、V量は0超~0.20%とすることがよい。好ましいV量の範囲は0超~0.080%である。より好ましいV量の範囲は0超~0.070%である。
Nb:0.050%以下
Nbは、炭化物や窒化物を析出させて引張強さを高める効果、結晶粒を細粒化して延性を向上させる効果、固溶Nを低減して伸線加工性を向上させる効果等がある。Nb量が0.050%を超えると効果が飽和するとともに捻回特性を劣化させることがある。そのため、Nb量は0超~0.050%とすることがよい。好ましいNb量の範囲は0超~0.030%である。より好ましいNb量の範囲は0超~0.020%である。
本実施形態に係る鋼線は、引張強さを高めるため、Cr:0.50%以下、Mo:0.30%以下、V:0.20%以下、及びNb:0.050%以下からなる群より選ばれる1種又は2種以上をさらに含んでもよい。
Ca:0.0050%以下
Mg:0.0050%以下
Ca、Mgは、それぞれ脱酸元素として機能するとともに、硫化物を形成することで固溶Sを低減し、延性を向上させる効果がある。一方、Ca量又はMg量がそれぞれ0.0050%を超えると効果が飽和するとともに粗大な酸化物を生成し、伸線加工性を劣化させることがある。そのため、Ca量及びMg量はそれぞれ0超~0.0050%とすることがよい。好ましいCa量及びMg量の範囲はそれぞれ0超~0.0030%である。より好ましいCa量及びMg量の範囲はそれぞれ0超~0.0020%である。
Zr:0.050%以下
Zrは、脱酸元素として機能するとともに、硫化物を形成することで固溶Sを低減し、延性を向上させる効果がある。一方、Zr量が0.050%を超えると効果が飽和するとともに粗大な酸化物を生成し、伸線加工性を劣化させることがある。そのため、Zr量は0超~0.050%とすることがよい。好ましいZr量の範囲は0超~0.030%である。より好ましいZr量の範囲は0超~0.020%である。
本実施形態に係る鋼線は、延性を向上させるため、Ca:0.0050%以下、Mg:0.0050%以下、及びZr:0.050%以下からなる群より選ばれる1種又は2種以上をさらに含んでもよい。
残部:Fe及び不純物
本実施形態に係る高強度鋼線の化学組成において、残部は、Fe及び不純物である。
ここで、不純物とは、原材料に含まれる成分、又は、製造の工程で混入する成分であって、意図的に含有させたものではない成分を指す。
不純物としては、例えば、O等が挙げられる。Oは鋼線中に不可避的に含有し、Al、Tiなどの酸化物として存在する。O量が高いと粗大な酸化物が形成し、伸線加工時に断線の原因となる。そのため、O量は0.01%以下に抑制することが好ましい。
<金属組織>
次に、本実施形態に係る高強度鋼線の金属組織の限定理由について述べる。
本実施形態に係る鋼線の金属組織は、鋼線の直径をDとしたとき、鋼線の中心軸を含み、かつ、中心軸に平行な断面において、鋼線の表面から0.25Dの深さの位置でのパーライト組織の面積率が90%以上であり、かつ、パーライトブロックの平均アスペクト比が2.0以上である。
(表面から0.25Dの深さの位置でのパーライト組織の面積率:90%以上)
金属組織において、パーライト組織の面積率が90%未満では強度の低下、又は捻回特性が劣化する。このため、パーライト組織の面積率の下限を90%とする。好ましいパーライト組織の面積率の下限は、95%である。より好ましいパーライト組織の面積率の下限は97%である。なお、パーライト組織の面積率の上限は、100%であってもよく、99%であってもよい。
パーライト組織以外の残部組織(つまり、非パーライト組織)としては、フェライト、ベイナイト、初析セメンタイト、マルテンサイト等である。
(表面から0.25Dの深さの位置でのパーライトブロックの平均アスペクト比:2.0以上)
鋼線の表面から0.25Dの深さの位置でのパーライトブロックの平均アスペクト比が2.0未満では、耐水素脆化特性が劣化する。このためパーライトブロックの平均アスペクト比の下限を2.0とする。好ましい下限は3.0である。なお、15を超える平均アスペクト比を得るためには、高ひずみの伸線加工が必要となり、製造コストが増加する。そのため、パーライトブロックの平均アスペクト比の上限は15とすることが好ましい。
<金属組織の測定方法>
本実施形態に係る鋼線の金属組織の測定は、以下のようにして行う。
(パーライト組織の面積率の測定)
鋼線のパーライト組織の面積率は、以下の手順により求める。
まず、鋼線の中心軸を含み、かつ、中心軸に平行な断面(以下、「L断面」とも称する)をピクラールでエッチングし、金属組織を現出させる。
次に、SEM(走査型電子顕微鏡)により2000倍の倍率で径方向40μm×中心軸方向50μmの領域の金属組織を写真撮影する。金属組織のSEM写真の撮影の箇所は、鋼線の直径をDとしたとき、鋼線の表面(つまり外周面)から鋼線の径方向に0.25Dの深さの位置において、各々、中心軸方向に5mm間隔の2箇所とする。
撮影した金属組織のSEM写真中の非パーライト組織(フェライト、ベイナイト、マルテンサイト、初析セメンタイト等の各組織)を目視でマーキングし、面積率を画像解析により求める。
パーライト組織の面積率は、観察視野全体から非パーライト組織の面積を減じることにより求められる。そして、鋼線を長手方向に0.1m間隔で切断して採取した3個のサンプルについて測定し、測定した計6箇所の平均値を鋼線のパーライト面積率とする。
(パーライトブロックの平均アスペクト比の測定)
鋼線のパーライトブロックの平均アスペクト比は、以下の手順で求める。
まず、鋼線のL断面における鋼線の表面から鋼線の中心軸方向に0.25Dの深さの位置において、EBSD(電子線後方散乱回折法)装置を用いて、パーライトブロック粒界を検知する。この時、一つのL断面で表面から0.25D深さの位置を中心に、表面方向に250μm、中心軸方向に250μm、鋼線長手方向に500μmの領域において、測定ステップを1.0μmとして各測定点のbcc-Feの結晶方位を測定し、方位差が15度以上の境界をパーライトブロック境界と定義し、その境界に囲まれた領域をパーライトブロック粒とする。
得られた結晶方位マップにおいて、測定領域内のパーライトブロックのうち、円相当径の最大のものから順に20個のパーライトブロックを選定する。
次に、選定された20個のパーライトブロックの各々のアスペクト比(パーライトブロックの短径に対すると長径との比、すなわち、長径/短径)を求め、20個のパーライトブロックのアスペクト比の平均値を求める。
なお、各パーライトブロックのアスペクト比は、パーライトブロックの外縁に接触する平行線の間隔が最も長くなる距離をそのパーライトブロックの長径Xとし、該平行線に対して直角であり、パーライトブロックの外縁に接触する平行線の間隔をそのパーライトブロックの短径Yとして、X/Yの値をアスペクト比とする。例えば、図1に示すパーライトブロック20では、パーライトブロック20の両端に接触する平行線の間隔が長径Xであり、Yが短径である。
そして、パーライトブロックを一つのL断面当たり両側の2箇所、さらに鋼線の長手方向に100mmの間隔で採取した3個のサンプルについて調査し、全6箇所の平均アスペクト比の平均値をパーライトブロックの平均アスペクト比とする。
<特性等>
(ビッカース硬さ:Hv0.03/Hvmax≦0.90)
次に、本実施形態に係る高強度鋼線のビッカース硬さの比(Hv0.03/Hvmax)の限定理由について述べる。
鋼線の表面から0.03mmの深さで測定したビッカース硬さの平均値をHv0.03、表面から中心軸までの領域でビッカース硬さの平均値が最大となる位置でのビッカース硬さの平均値をHvmaxで表したとき、Hv0.03/Hvmaxを0.90以下とすることにより、鋼線の耐水素脆化特性が改善する。このため、Hv0.03/Hvmaxを0.90以下とする。好ましい上限は0.85である。
なお、Hv0.03が大きくなると耐水素脆化特性が劣化するため、Hv0.03の上限は550が好ましく、500がより好ましい。
ビッカース硬さは、以下の測定方法による。図2は、ビッカース硬さを測定する位置を説明するための概略図である。
まず、測定対象である鋼線を100mmの間隔で切断し、長さが3~10mmのサンプルを4本採取し、各サンプルについて、鋼線10の中心軸Cに垂直な断面(以下、「C断面」とも称する。)を鏡面研磨する。
表面から0.03mmの深さで測定したビッカース硬さの平均値Hv0.03は、以下の方法で測定する。鋼線10の表面から0.03mmの深さの位置にて45°おきに8箇所で、ビッカース硬さを測定する。ビッカース硬さ測定の際の試験力は0.98Nとして15秒間負荷した。各サンプルから得られた8箇所×4本、すなわち、32箇所の測定値を平均することによりHv0.03を求める。
また、表面から中心軸までの領域でビッカース硬さの平均値が最大となる位置でのビッカース硬さの平均値Hvmaxは、以下の方法で測定する。上記のように鋼線10から採取した4本のサンプルのC断面について、鋼線10の表面から中心軸Cに向かって0.05D間隔、すなわち、表面からの深さが0.05D、0.10D、0.15D、0.20D、0.25D、0.30D、0.35D、0.40D、0.45Dの9か所の位置にて45°おきに8箇所で、それぞれビッカース硬さを測定する。4本のサンプルの各位置で得られた測定値(すなわち、各位置で32箇所)を平均することによりその位置におけるビッカース硬さの平均値とし、0.05D~0.45Dの各位置でのビッカース硬さの平均値が最大となる位置でのビッカース硬さの平均値をHvmaxとする。なお、図4において0.10D~0.40Dの測定位置は図示を省略している。鋼線の中心部C(深さ0.5D)は、硬さは最も小さくなるため、ビッカース硬さの測定は不要である。
(引張強さ:2010MPa以上)
次に、本実施形態に係る高強度鋼線の引張強さについて説明する。
鋼線の引張強さが2010MPa未満では、例えば、鋼線を土木・建築構造物の用途に適用した場合、施工コストの低減及び軽量化の効果が小さくなる。そのため、鋼線の引張強さの下限は2010MPaとする。
鋼線の引張強さの上限は、特に限定されるものではないが、引張強さが高すぎると、延性が低下し、伸線加工を施すときに割れが生じる場合がある。この点で、鋼線の引張強さの上限は、2700MPaがよい。
鋼線の引張強さは、以下の方法で求める。鋼線を長さ340mmの試験サンプルに切断後、矯正、直棒とする。200mmがチャック間長さ(試験長さ)となるように試験サンプルの上下70mmをチャッキングし、引張試験を行う。得られた最大荷重を断面積で除することで引張強さ(MPa)を算出する。1本の鋼線につき3本の試験サンプルを採取して引張試験を行い、その平均値を求める。
(線径)
次に、本実施形態に係る高強度鋼線の線径について説明する。
本実施形態に係る高強度鋼線は、橋梁ケーブル用鋼線、PC鋼線、ロープ用鋼線などに使用される高強度鋼線として好適である。そのため、鋼線の線径(直径)が1.5mm未満では、これらの製品を製造する際のコストが上昇し、8.0mmを超えると強度や捻回特性が劣化しやすくなる。そのため、本実施形態に係る鋼線の線径(直径)は、1.5mm~8.0mmがよい。より好ましい鋼線の線径(直径)の範囲は、3.0mm~7.5mmである。
(めっき層)
本実施形態に係る高強度鋼線は、鋼線の表面に、Zn、Al、Cu、Sn、Mg及びSiからなる群より選ばれる1種又は2種以上の金属を含むめっき層が被覆されていてもよい。ロープ用鋼線、橋梁ケーブル用鋼線などに使用される高強度鋼線には、表面にめっきが施された鋼線が使用されることがある。そして、表面にめっきが施されていても、本実施形態に係る高強度鋼線は、高強度となる。
[鋼線の製造方法]
本実施形態に係る高強度鋼線の製造方法は特に限定されないが、例えば、以下に示す製造方法によって鋼線を得ることができる。なお、下記の製造方法は一例であり、下記以外の製造方法によって化学成分、及びその他の要件が本実施形態の範囲である鋼線が得られた場合であっても、その鋼線は本実施形態に係る鋼線に含まれる。
本実施形態に係る高強度鋼線の化学組成を有する鋼片を、1180~1250℃に加熱する。加熱の際、鋼片表面温度が1180℃以上となる時間が25分以上とする。
その後、仕上げ圧延温度850~1000℃で熱間圧延する。
熱間圧延後、700~850℃でリング状に巻き取る。
巻き取り後、700~850℃である線材を、700℃から600℃までの平均冷却速度30~80℃/sで、520~600℃まで冷却し、その後、520~600℃で50秒以上保持することによりパーライト変態処理する。
あるいは、本実施形態に係る高強度鋼線の化学組成を有する鋼片を、熱間圧延後、冷却した線材を、1060~1150℃に再加熱し、520~650℃で20s以上保持することによりパーライト変態処理をしてもよい。
パーライト変態処理後、室温に冷却した線材を、総減面率65~95%で伸線加工し、300~600℃で1s以上30s以下保持し、鋼線が得られる。300~600℃で1s以上30s以下保持する際に、0.2%耐力の30~90%の引張応力を負荷してもよい。
さらに、鋼線の表面に、Zn、Al、Cu、Sn、Mg及びSiの1種又は2種以上の金属を含むめっき層を被覆するめっき処理を行ってもよい。
以下、本実施形態に係る高強度鋼線の製造方法の一例の詳細について説明する。
本実施形態に係る高強度鋼線の製造方法では、まず、上記本実施形態に係る高強度鋼線の化学組成を有する鋼片を、1180~1250℃に加熱する。2010MPa以上の高強度鋼線を得るためには、非パーライト組織の低減が有効であり、1180℃以上の加熱により均一性が高いパーライト組織が得られる。加熱温度が1250℃を超えると、製造コストが上昇する。表面から0.03mmの深さで測定したビッカース硬さの平均値をHv0.03の低減には加熱時間が長いほどよく、鋼片表面が1180℃以上となる時間は25分以上が好ましい。
次に、加熱した鋼片を、仕上げ圧延温度850~1000℃で熱間圧延することにより、線材を得る。
仕上げ圧延温度が850℃未満では、熱間圧延の際の変形抵抗が増大し圧延コストが嵩む。仕上げ圧延温度が1000℃を超えると、金属組織が粗大になり、伸線加工性が劣化する。好ましい仕上げ圧延温度の範囲は、870~980℃である。なお、仕上げ圧延温度とは、仕上げ圧延直後の線材の表面温度を指す。
仕上げ圧延後、線材を700~850℃でリング状に巻き取る。巻き取り温度が低いほど、表面から0.03mmの深さで測定したビッカース硬さの平均値Hv0.03が低くなる。そのため、巻き取り温度は850℃以下が好ましい。一方、巻き取り温度が700℃未満になると、線材の変形抵抗が増加し巻き取りが困難となる。
次に、巻き取り後、700~850℃である線材を、700℃から600℃までの平均冷却速度30~80℃/sで、520~600℃まで冷却する。平均冷却速度が30℃/s未満では、非パーライト組織の面積率が増大し、伸線加工性と捻回特性が劣化する。平均冷却速度が80℃/sを超えると製造コストが上昇する。なお、平均冷却速度とは、線材の表面冷却速度を指す。冷却温度が520℃未満では、パーライト面積率が小さくなり、捻回特性が劣化する。冷却温度が600℃を超えると、強度が低下する。
次に、520~600℃まで冷却後の線材を、520~600℃で50秒以上保持することによりパーライト変態処理する。保持温度が520℃未満では、パーライト面積率が小さくなり、捻回特性が劣化する。保持温度が600℃を超えると強度が低下する。保持時間が50秒未満では、パーライト変態が未完となり、マルテンサイトが生成し、伸線加工性と耐水素脆化特性が劣化する。ただし、製造コストの観点から、保持時間の上限は、150秒がよい。520~600℃の保持は、例えば、溶融塩浴槽により実施してもよい。
そして、上記パーライト変態処理後又は冷却後の線材(具体的には、室温(例えば25℃)まで冷却後の線材)を、総減面率65~95%で伸線加工して、300~600℃で1s以上30s以下保持し、鋼線を得る。総減面率が65%未満では強度が低下する。
総減面率が95%を超えると、鋼線の延性が低下し、伸線加工性や捻回特性が劣化する。好ましい総減面率の範囲は、70~90%である。なお、総減面率とは、式:(伸線加工前の線材の断面積(中心軸方向に垂直な面の面積)と伸線加工後の鋼線の断面積との差分/伸線加工前の線材の断面積)×100で算出される値である。
300~600℃で1s以上30s以下保持することでリラクセーション特性が向上する。保持温度が300℃未満では、リラクセーション特性の改善効果が小さく、保持温度が600℃を超えると強度が低下する。好ましい保持温度は350℃以上550℃以下である。保持時間が1s未満では、リラクセーション特性の向上効果がなく、保持時間が30sを超えると強度が低下する。リラクセーション特性をさらに向上させる目的で、300~600℃で1s以上30s以下保持する際に、0.2%耐力の30~90%の引張応力を負荷してもよい。負荷応力が引張応力の30%未満ではリラクセーション特性の改善効果が小さく、90%を超えると断線する場合がある。
以上の工程を経て、本実施形態に係る高強度鋼線が得られる。
なお、本実施形態に係る高強度鋼線の製造方法は、更に、鋼線の表面に、Zn、Al、Cu、Sn、Mg及びSiの1種又は2種以上の金属を含むめっき層を被覆するめっき処理を、420~480℃で行う工程を有してもよい。つまり、鋼線の表面に、420~480℃(好ましくは430~470℃)でめっき処理を施してよい。これにより、Zn、Al、Cu、Sn、Mg及びSiの1種又は2種以上の金属を含むめっき層を有する高強度鋼線が得られる。
本実施形態に係る高強度鋼線は、耐水素脆化特性に優れた引張強さ2010MPa以上の鋼線であり、例えば、橋梁ケーブル用鋼線、PC鋼線、ロープ用鋼線などに好適に利用できる。そのため、本実施形態に係る高強度鋼線は、例えば、土木・建築物の軽量化や施工コストの低減に寄与し、産業上極めて有用である。
以下、実施例によって本開示に係る鋼線の例を具体的に説明するが、本開示に係る鋼線は以下の実施例により制限されるものではない。
[鋼線の製造]
表1に示す化学組成を有する鋼種A~Uの鋼片を用いて、表2~表6に示す条件で、次の通り、鋼線を製造した。
具体的には、表2に示す試験番号a1~a13の鋼線は、次の通り製造した。
まず、鋼片を加熱した後、熱間圧延して、得られた線材をリング状に巻取り、520~600℃まで冷却した。次に、得られた線材を熱間圧延ライン後方の溶融塩浴に浸漬してパテンティング処理(パーライト変態処理)した。その後、室温(25℃)まで冷却した線材を表2に示す線径(「伸線後線径」と表記)まで伸線加工し、伸線後に加熱して時効処理した。これら工程を経て、試験番号a1~a13に示す鋼線を製造した。
また、表3に示す試験番号b1~b10の鋼線は、次の通り製造した。
まず、鋼片を加熱した後、熱間圧延して、得られた線材をリング状に巻取り、520~600℃まで冷却した。次に、得られた線材を熱間圧延ライン後方の溶融塩浴に浸漬してパテンティング処理(パーライト変態処理)した。その後、室温(25℃)まで冷却した線材を表3に示す線径(伸線後線径と表記)まで伸線加工し、伸線後、鋼線に引張応力を負荷して、加熱して時効処理した。これら工程を経て、試験番号b1~b10に示す鋼線を製造した。
また、表4に示す試験番号c1~c2の鋼線は、次の通り製造した。
c1は、まず、鋼片を加熱した後、熱間圧延して、得られた線材をリング状に巻き取り、衝風冷却した。その後、室温(25℃)まで冷却した線材を、再加熱し、溶融鉛浴に浸漬した。その後、室温(25℃)まで冷却した線材を表4に示す線径まで伸線加工し、伸線後に加熱して時効処理した。
c2は、まず、鋼片を加熱した後、熱間圧延して、得られた線材をリング状に巻き取り、衝風冷却した。その後、室温(25℃)まで冷却した線材を表3に示す線径まで伸線加工し、伸線後に加熱して時効処理した。これら工程を経て、試験番号c1~c2に示す鋼線を製造した。
表5に示す試験番号d1~d2の鋼線は、次の通り製造した。
まず、鋼片を加熱した後、熱間圧延して、得られた線材をリング状に巻き取り、衝風冷却した。その後、室温(25℃)まで冷却した線材を、再加熱し、溶融鉛浴に浸漬した。その後、室温(25℃)まで冷却した線材を表5に示す線径まで伸線加工し、伸線後、鋼線に引張応力を負荷して、加熱して時効処理した。これら工程を経て、試験番号d1~d2に示す鋼線を製造した。
表6に示す試験番号e1の鋼線は、次の通り製造した。
まず、鋼片を加熱した後、熱間圧延して、得られた線材をリング状に巻取り、500~600℃まで冷却した。次に、得られた線材を熱間圧延ライン後方の溶融塩浴に浸漬してパテンティング処理した。その後、室温(25℃)まで冷却した線材を表5に示す線径まで伸線加工し、伸線後に加熱して時効処理した。その後、溶融亜鉛めっき処理した。これら工程を経て、試験番号e1に示す鋼線を製造した。
[評価]
これらの鋼線に対して、金属組織の観察と、ビッカース硬さ測定を行い、引張試験と耐水素脆化特性評価試験を行った。
鋼線の表面から0.25D深さのパーライト組織の面積率、パーライトブロックの平均アスペクト比、Hv0.03、Hv0.03/Hvmaxは、既述した方法に従って測定した。結果を表2~表6に示す。なお、パーライト組織以外の残部組織(非パーライト組織)としては、フェライト、ベイナイト、初析セメンタイト、マルテンサイト等が観察された。
また、表1~表6において、下線は、本開示の範囲外であることを示す。
<引張試験>
引張試験は、鋼線を長さ340mmに切断後、矯正、直棒とし、200mmがチャック間長さ(試験長さ)上下70mmをチャッキングして行った。得られた最大荷重を断面積で除することで引張強さ(MPa)を算出し、各鋼線につき3本の引張試験を行い、その平均値を求めた。結果を表2~表6に示す。なお、表6に示す試験番号e1の鋼線は、酸洗によりめっきを除去した後、引張試験を行った。
<耐水素脆化特性評価>
鋼線の耐水素脆化特性は、腐食防食協会で規格化された「20%チオシアン酸アンモニウム溶液中でのPC鋼材の水素脆化試験方法」(JSCE S 1201:2012)によって評価した。
鋼線あるいはめっき線を酸洗処理して表面の潤滑皮膜とめっきを除去した後、矯直加工を行って真直性を確保し、700mmL長さに切断したサンプルを試験片として用いた。
次いで試験片の中心部を含む200mm長さが浸漬できる溶液セルを用い、50℃の20%チオシアン酸アンモニウム(NHSCN)水溶液に試験片を浸漬させた状態とし、a1~a13、c1、c2、e1の各鋼線については、引張試験から得た破断荷重の70%の一定荷重を試験片に負荷し、b1~b10、d1、d2の各鋼線については、引張試験から得た破断荷重の80%の一定荷重を試験片に負荷し、破断までの時間を測定した。
各鋼線から採取した6本の試験片に対して行い、破断時間の平均値を算出し、鋼線の耐水素脆化特性を評価した。
結果を表2~表6に示す。なお、表6に示す試験番号e1の鋼線は、酸洗によりめっきを除去した後、耐水素脆化特性を評価した。





図3に本開示のa1~a13、c1、c2、e1の各鋼線の実施例から得られた、鋼線の引張強さと耐水素脆化特性の指標である水素脆化破断時間の関係を示す。
図4に本開示のb1~b10、d1、d2の各鋼線の実施例から得られた、鋼線の引張強さと耐水素脆化特性の指標である水素脆化破断時間の関係を示す。
水素脆化破断時間は鋼線の引張強さの影響を受け、鋼線の引張強さが低いと破断時間が長く、鋼線の引張強さが高いと破断時間が短くなる。水素脆化破断時間が下記(A)式で示される時間(h)以上のとき、耐水素脆化特性が良好と判断した。
6.2×10×exp(-0.0038×TS(MPa))(h)・・・(A)
表2~6に(A)で計算された時間を示す。
上記結果から、本開示で規定する要件をすべて満たす試験番号a1~a6、b1~b4、b9、b10、c1、d1、e1の鋼線は、引張強さが2010MPa以上となり、かつ耐水素脆化特性が良好であることがわかる。
一方、試験番号a7の鋼線は、Si含有量、Hv0.03/Hvmaxが本開示の上限を超えた。
試験番号a8の鋼線は、[Cu]/[Ni]が本開示の下限未満である。
試験番号a9の鋼線は、Cu含有量が本開示の上限を超え、伸線加工中に断線した。
試験番号a10の鋼線は、S含有量が本開示の上限を超え、Hv0.03/Hvmaxが本開示の上限を超えた。
試験番号a11、a12の鋼線は、Hv0.03/Hvmaxが本開示の上限を超えた。
試験番号a13の鋼線は、鋼線の表面から0.25Dの深さの位置でのパーライトパーライトブロックの平均アスペクト比が本開示の下限未満であった。
試験番号b5の鋼線は、Cu、Niの含有量が本開示の下限未満であった。
試験番号b6の鋼線は、Cu含有量、[Cu]/[Ni]が本開示の下限未満であった。
試験番号b7の鋼線は、[Cu]/[Ni]が本開示の下限未満であった。
試験番号b8の鋼線は、Hv0.03/Hvmaxが本開示の上限を超えた。
試験番号c2の鋼線は、鋼線の表面から0.25Dの深さの位置でのパーライト組織の面積率が本開示の下限未満であった。
試験番号d2の鋼線は、Cu、Niの含有量が本開示の下限未満であった。
これらの本開示の範囲を外れる鋼線は、いずれも耐水素脆化特性が不良である。
10 鋼線
20 パーライトブロック
C 鋼線の中心軸

Claims (7)

  1. 化学組成が、質量%で、
    C:0.70~1.15%、
    Si:0.50~1.50%、
    Mn:0.20~0.90%、
    P:0.015%以下、
    S:0.012%以下、
    Cu:0.08~0.40%、
    Ni:0.04~0.40%、
    Al:0.010~0.070%、及び
    N:0.0010~0.0060%
    を含み、残部がFe及び不純物からなり、
    鋼線に含まれるCu及びNiの質量%での含有量を、それぞれ[Cu]及び[Ni]で表した場合に、[Cu]/[Ni]≧1.0を満たし、
    前記鋼線の中心軸を含み、かつ、前記中心軸に平行な断面において、前記鋼線の直径をDとした場合に、前記鋼線の表面から0.25Dの深さの位置でのパーライト組織の面積率が90%以上であり、かつ、パーライトブロックの平均アスペクト比が2.0以上であり、
    前記鋼線の中心軸に垂直な断面において、前記鋼線の表面から0.03mmの深さの位置でのビッカース硬さの平均値をHv0.03、前記表面から前記中心軸までの領域でビッカース硬さの平均値が最大となる位置でのビッカース硬さの平均値をHvmaxで表した場合に、Hv0.03/Hvmax≦0.90を満たし、
    引張強さが2010MPa以上である、高強度鋼線。
  2. 前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、
    Cr:0.50%以下、
    Mo:0.30%以下、
    V:0.20%以下、及び
    Nb:0.050%以下、
    からなる群より選ばれる1種又は2種以上をさらに含む、請求項1に記載の高強度鋼線。
  3. 前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、
    Ti:0.050%以下、及び
    B:0.0050%以下、
    の1種又は2種をさらに含む、請求項1又は請求項2に記載の高強度鋼線。
  4. 前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、
    Ca:0.0050%以下、
    Mg:0.0050%以下、及び
    Zr:0.050%以下
    の1種又は2種をさらに含む、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の高強度鋼線。
  5. 前記鋼線の前記中心軸に垂直な断面において、前記表面から0.03mmの深さの位置でのビッカース硬さの平均値Hv0.03が550以下である請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の高強度鋼線。
  6. 前記鋼線の直径が、1.5~8.0mmである請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の高強度鋼線。
  7. 前記鋼線の表面に、Zn、Al、Cu、Sn、Mg及びSiからなる群より選ばれる1種又は2種以上の金属を含むめっき層が被覆されている請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の高強度鋼線。
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