JP6343240B2 - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents

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Description

本発明は、電動パワーステアリング装置に関する。
従来、電動パワーステアリング装置のラック・ピニオン等に過大な衝撃荷重がかかることを抑制するために、ラック軸の両端それぞれにゴム等の緩衝弾性部材を設けている。
例えば、特許文献1に記載のラック・ピニオン式パワーステアリング装置においては、ラック軸は、その左右の両端のボールジョイント部に隣接する位置にそれぞれ所定幅の合成樹脂やゴム等からなる環状のストッパラバーを備えている。ストッパラバーは、ラック軸の左右方向への進退動のストロークにおける左方への移動の移動端においては、ギヤハウジングの右方延出筒状ハウジングの内周部に嵌入されるストッパピース端に、また、右方への移動の移動端においては左方ハウジングの左方端にそれぞれ当接する。これにより、ラック軸がハウジングに突き当たることに起因してラック・ピニオン等に過大な衝撃荷重が生じることを抑制する。このように、ストッパラバーは、ステアリングホイール(ハンドル)の回転操作力を車輪に伝達するラック・ピニオン等の伝達機構(減速ギヤ機構)を保護する役目を果たしている。
特開2006−117221号公報
軽量化、コスト削減という観点からは、ストッパラバーなどのラック軸がハウジングに突き当たる時の衝撃緩衝部材を設けていないことが望ましい。
本発明は、衝撃緩衝部材を設けなくてもステアリングホイールの回転操作力を車輪に伝達する伝達手段を保護することができる電動パワーステアリング装置を提供することを目的とする。
かかる目的のもと、本発明は、車両のステアリングホイールと連動して回転するステアリングシャフトと、直線的に移動することで車輪を転動させるラック軸と、当該ラック軸に形成されたラックとラック・ピニオンを構成するピニオンシャフトとを有して、前記ステアリングホイールの回転操作力を前記車両の車輪の転動力として伝達する伝達手段と、前記ステアリングシャフトと前記ピニオンシャフトとの間に生じる回転トルクを検出するトルク検出手段と、回転駆動力が前記ラック軸を移動させる力として加えられる電動モータと、前記車両に設けられたイグニッションスイッチがオフである場合に前記トルク検出手段が検出した回転トルクに基づいて前記ラック軸の移動を抑制するように前記電動モータの駆動を制御する抑制手段と、を備えることを特徴とする電動パワーステアリング装置である。
ここで、前記抑制手段は、前記電動モータを短絡することで前記ラック軸の移動を抑制するとよい。
また、前記抑制手段は、前記ラック軸が反対方向に移動するように前記電動モータを回転させる電流を供給することで当該ラック軸の移動を抑制するとよい。
また、前記抑制手段は、前記トルク検出手段が検出した回転トルクの値である検出トルク値が予め定められた限界値以上となったら前記ラック軸の移動を抑制するように前記電動モータの駆動を制御するとよい。
また、前記抑制手段は、前記トルク検出手段が検出した回転トルクの値である検出トルク値の変化量が予め定められた限界値以上となったら前記ラック軸の移動を抑制するように前記電動モータの駆動を制御するとよい。
また、前記抑制手段は、前記イグニッションスイッチがオフである場合に前記トルク検出手段に電力を供給するとよい。
本発明によれば、別途衝撃緩衝部材を設けなくてもステアリングホイールの回転操作力を車輪に伝達する伝達手段を保護することができる。
実施の形態に係る電動パワーステアリング装置の概略構成を示す図である。 トルクセンサの構成を示す分解斜視図である。 トルクセンサの配置を示す断面図である。 ステアリング装置が適用される自動車の概略構成とステアリング装置の制御装置の概略構成を示す図である。 モータ制御部の概略構成を示す図である。 衝撃抑制部が行う衝撃抑制制御の処理手順を示すフローチャートである。
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、実施の形態に係る電動パワーステアリング装置100の概略構成を示す図である。
電動パワーステアリング装置100(以下、単に「ステアリング装置100」と称する場合もある。)は、車両の進行方向を任意に変えるためのかじ取り装置であり、本実施の形態においては自動車1に適用した構成を例示している。
ステアリング装置100は、ドライバが操作する車輪(ホイール)状のステアリングホイール(ハンドル)101と、ステアリングホイール101に一体的に設けられたステアリングシャフト102とを備えている。また、ステアリング装置100は、ステアリングシャフト102と自在継手103aを介して連結された上部連結シャフト103と、この上部連結シャフト103と自在継手103bを介して連結された下部連結シャフト108とを備えている。下部連結シャフト108は、ステアリングホイール101の回転に連動して回転する。
また、ステアリング装置100は、転動輪としての左右の前輪150のそれぞれに連結されたタイロッド104と、タイロッド104に連結されたラック軸105とを備えている。また、ステアリング装置100は、ラック軸105に形成されたラック歯105aとともにラック・ピニオンを構成するピニオン106aを備えている。ピニオン106aは、ピニオンシャフト106の下端部に形成されている。ラック軸105およびピニオンシャフト106は、ステアリングホイール101の回転操作力を前輪150の転動力として伝達する伝達手段の一例として機能する。
また、ステアリング装置100は、ピニオンシャフト106を収納するステアリングギヤボックス107を有している。ピニオンシャフト106は、ステアリングギヤボックス107内にてトーションバー112(図3参照)を介して下部連結シャフト108と連結されている。そして、ステアリングギヤボックス107の内部には、下部連結シャフト108とピニオンシャフト106との相対回転角度に基づいて、言い換えればトーションバー112(図3参照)の捩れ量に基づいてステアリングホイール101の操舵トルクを検出するトルク検出手段の一例としてのトルクセンサ109が設けられている。
ステアリングギヤボックス107内に、ラック軸105の中央部に形成されたラック歯105aが入っており、ラック軸105の両端部は、それぞれステアリングギヤボックス107から突出している。そして、ラック軸105の両端部には、それぞれ、ステアリングギヤボックス107における図1で見た場合の左右方向の両端面の開口部よりも大きな外形の突出部105bが設けられている。そして、この突出部105bがステアリングギヤボックス107の左右方向の端面に突き当たることで、ラック軸105の移動量が規制される。
また、ステアリング装置100は、ステアリングギヤボックス107に支持された電動モータ110と、電動モータ110の駆動力を減速してピニオンシャフト106に伝達する減速機構111とを有している。本実施の形態に係る電動モータ110は、3相ブラシレスモータである。
そして、ステアリング装置100は、電動モータ110の作動を制御する制御装置10を備えている。制御装置10は、電動モータ110の制御を行う際の演算処理を行うCPUと、CPUにて実行されるプログラムや各種データ等が記憶されたROMと、CPUの作業用メモリ等として用いられるRAMとを備えている。
CPUは、メインCPUとサブCPUとを有する。ROMは、メインCPUにて実行されるプログラムや各種データ等が記憶されたメインROMと、サブCPUにて実行されるプログラムや各種データ等が記憶されたサブROMとを有する。RAMは、メインCPUの作業用メモリとして用いられるメインRAMと、サブCPUの作業用メモリとして用いられるサブRAMとを有する。
制御装置10には、上述したトルクセンサ109にて検出された操舵トルクが出力信号に変換されたトルク信号Tdと、自動車1に設けられた車速センサ170にて検出された、自動車1の移動速度である車速Vcが出力信号に変換された車速信号vなどが入力される。
以上のように構成されたステアリング装置100は、ステアリングシャフト102とピニオンシャフト106との間に生じている回転トルク(例えばステアリングホイール101に加えられた運転者の操舵トルク)をトルクセンサ109にて検出し、その検出トルクに応じて制御装置10が電動モータ110を駆動制御する。そして、電動モータ110の発生トルクがピニオンシャフト106に伝達されることにより、電動モータ110の発生トルクが、ステアリングホイール101に加える運転者の操舵力をアシストする。
<トルクセンサ109の構成>
図2は、トルクセンサ109の構成を示す分解斜視図である。図3は、トルクセンサ109の配置を示す断面図である。
トルクセンサ109は、図2に示すように、下部連結シャフト108に固定されるマグネットカラー121及び永久磁石122と、ピニオンシャフト106に固定されるステータユニット130とを備えている。また、トルクセンサ109は、後述する第1ステータ131及び第2ステータ132で導かれた磁束を集磁して、下部連結シャフト108とピニオンシャフト106との間の相対回転角度に応じた電気信号を出力するセンサユニット140を備えている。
永久磁石122は、N極とS極とが周方向に交互に並んでリング状に形成され、周方向に着磁されている。本実施の形態における永久磁石122は、8個ずつのN極、S極が周方向に等間隔で配置されている。
マグネットカラー121は、鉄材によって円筒状に形成されていて、外周面121aに永久磁石122が嵌め合わされ、例えば接着によって永久磁石122はマグネットカラー121に固定される。また、図3に示すように、マグネットカラー121の内周面121bに下部連結シャフト108が挿入されて、圧入、溶接、カシメ等により、マグネットカラー121は下部連結シャフト108に固定される。これにより、永久磁石122は、下部連結シャフト108と一体的に回転可能である。
(ステータユニット130)
ステータユニット130は、第1ステータ131と、第2ステータ132と、ステータホルダ133と、ヨーク134とを備えている。
第1ステータ131及び第2ステータ132は、例えばパーマロイ等の軟磁性材料で形成されている。第1ステータ131は、図2に示すように、円環状に形成された円環部131bと、円環部131bの内周縁から下部連結シャフト108の軸方向に突出して延び、周方向に等間隔に形成された8個のステータ爪131aとを有している。
また、第1ステータ131は、円環部131bの外周縁から下部連結シャフト108の軸方向に突出して延びた3個の突片131cを有している。これら3個の突片131cは周方向に等間隔で形成されている。各突片131cは、工具等によって半径方向内方に押されて塑性変形し、ステータホルダ133の位置決め部133jにカシメられ、第1ステータ131はステータホルダ133に結合される。
第2ステータ132は、第1ステータ131を図示の上下を逆にして配置したものと同じであり、円環部132b、ステータ爪132a及び突片132cは、それぞれ第1ステータ131の円環部131b、ステータ爪131a及び突片131cに対応する。
第2ステータ132も第1ステータ131と同様に、ステータホルダ133の位置決め部133jに位置決めされてカシメられ、第2ステータ132はステータホルダ133に結合される。
ステータホルダ133に位置決めして固定された第1ステータ131のステータ爪131aと第2ステータ132のステータ爪132aとは、周方向に等間隔に交互に並ぶ。
ステータホルダ133は、非磁性材料によって概略円筒状に形成されている。
ヨーク134は、例えば鉄材によって円筒状に形成されていて、インサート成形により、ステータホルダ133と一体的に形成されている。
以上のように構成されたステータユニット130は、図3に示すように、ヨーク134の内周面134bに、ピニオンシャフト106が挿入されて、圧入、溶接、カシメ等によりピニオンシャフト106に固定される。
(センサユニット140)
センサユニット140は、第1コレクタ141及び第2コレクタ142と、磁気センサ143と、基板144と、端子145と、センサハウジング146とを備える。
センサハウジング146は、例えばポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂材又はポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂材で形成されている。センサハウジング146は、図2,図3に示すように、基部146pと、基部146pから立ち上がった周壁146qと、基部146pを挟んで周壁146qと反対側に形成された接続部146rとを有している。
第1コレクタ141、第2コレクタ142、基板144及び端子145は、センサハウジング146の基部146pと周壁146qとにより囲まれた内部に収容され、センサハウジング146に保持されている。
センサユニット140は、図3に示すように、周壁146qがステアリングギヤボックス107に形成された孔107aに挿入され、基部146pが、締付部材(不図示)によりステアリングギヤボックス107に固定される。
第1コレクタ141は、平板の円弧状に形成された円弧部141aと、円弧部141aの外周縁からそれぞれ外方に延びて形成された複数の突出部141bとを有する。
円弧部141aは、第1ステータ131の円環部131bの一部である円弧に対応する形状である。円弧部141aは、センサハウジング146がステアリングギヤボックス107に固定された状態で、第1ステータ131の円環部131bとの間に空隙を介して対向して配置され、第1ステータ131で導かれた磁束を集磁する。
複数の突出部141bの内の少なくとも一の突出部141bは、磁気センサ143に接し、円弧部で集磁された磁束を磁気センサ143に導く。
第2コレクタ142は、平板の円弧状に形成された円弧部142aと、円弧部142aの外周縁からそれぞれ外方に延びて形成された複数の突出部142bとを有する。
円弧部142aは、第2ステータ132の円環部132bの一部である円弧に対応する形状である。円弧部142aは、センサハウジング146がステアリングギヤボックス107に固定された状態で、第2ステータ132の円環部132bとの間に空隙を介して対向して配置され、第2ステータ132で導かれた磁束を集磁する。
複数の突出部142bの内の少なくとも一の突出部142bは、磁気センサ143に接し、円弧部142aで集磁された磁束を磁気センサ143に導く。
磁気センサ143は、第1コレクタ141で導かれた磁束と第2コレクタ142で導かれた磁束とに基づいて第1コレクタ141と第2コレクタ142との間の磁束密度に対応した電気信号に変換する。磁気センサ143は、制御装置10から電流が供給されることにより作動して、第1コレクタ141と第2コレクタ142との間の磁束密度を検出し、検出した磁束密度を電気信号(例えば電圧信号)に変換して出力するセンサであり、磁気抵抗素子、ホールIC、ホール素子などを例示することができる。
基板144は処理回路を備えていて、磁気センサ143から出力された電気信号に対して処理回路で処理を施す。
端子145は基板144から基部146pを貫通して接続部146rまで延び、基板144の処理回路で処理が施された電気信号を接続部146rの側まで導く。
接続部146rには図示しない電線のコネクタが接続され、基板144の処理回路で処理が施された電気信号は、端子145から電線を通じて制御装置10(図1参照)に入力される。
<制御装置10の構成>
図4は、ステアリング装置100が適用される自動車1の概略構成とステアリング装置100の制御装置10の概略構成を示す図である。
自動車1は、ステアリング装置100の他に、周知の、イグニッション(IG)スイッチ11と、発電機12と、バッテリ13とを備えている。
制御装置10は、電動モータ110の駆動を制御するモータ制御部40と、モータ制御部40からの制御信号に基づいて電動モータ110を駆動させるモータ駆動部50と、電動モータ110に実際に流れる実電流Imを検出するモータ電流検出部60とを有している。
また、制御装置10は、図4に示すように、電動モータ110に流れる電流のリップル成分を吸収するための大容量のコンデンサ71と、電流を通電したり遮断したりする各種のリレー72とを備えている。リレー72は、モータ駆動部50への電流を通電・遮断するパワーリレー721と、3つの経路が並列に配置されたモータ端子の内の2つの経路に各々直列に接続されて、モータ駆動部50から電動モータ110に供給される電流を通電・遮断するモータリレー722とを有する。
その他、制御装置10は、安定した電流制御を行うために、図4に示すように、ダイオードD1、D2、D3、D4、抵抗R1、R2およびスイッチング素子S1、S2を有している。
先ずは、モータ制御部40について説明する。
図5は、モータ制御部40の概略構成を示す図である。
モータ制御部40は、トルク信号Td(操舵トルク)に基づいて目標補助トルクを算出し、この目標補助トルクを電動モータ110が供給するのに必要となる目標電流ITを算出する目標電流算出部20と、目標電流算出部20が算出した目標電流に基づいて電動モータ110の駆動を制御するモータ駆動制御部30とを有している。
また、モータ制御部40は、後述するリレー72を作動させる、つまりリレー72をオフ(開状態)からオン(閉状態)へ切り替えたり、オンからオフへ切り替えたりするリレー作動部37を有している。
また、モータ制御部40は、ラック軸105の突出部105bがステアリングギヤボックス107の端面に突き当たるときの衝撃を抑制する衝撃抑制部38を有している。
本実施の形態に係るモータ制御部40においては、メインCPUが、メインROMに格納されたプログラムを実行することにより、目標電流算出部20、モータ駆動制御部30およびリレー作動部37の機能を実現する。また、サブCPUが、サブROMに格納されたプログラムを実行することにより、衝撃抑制部38の機能を実現する。
そして、モータ制御部40は、イグニッションスイッチ11がオフである場合にトルクセンサ109が検出した回転トルクに基づいてラック軸105の移動を抑制するように電動モータ110の駆動を制御する抑制手段の一例として機能する。
目標電流算出部20は、目標電流を設定する上で基準となるベース電流Ibを算出するベース電流算出部21と、電動モータ110の慣性モーメントを打ち消すための電流であるイナーシャ補償電流Isを算出するイナーシャ補償電流算出部22と、モータの回転を制限する電流であるダンパー補償電流Idを算出するダンパー補償電流算出部23とを備えている。また、目標電流算出部20は、ベース電流算出部21、イナーシャ補償電流算出部22、ダンパー補償電流算出部23などからの出力に基づいて目標電流ITを決定する目標電流決定部25を備えている。さらに、目標電流算出部20は、トルク信号Tdの位相補償を行う位相補償部26を備えている。
なお、目標電流算出部20には、トルク信号Tdと、車速信号vと、電動モータ110の回転速度Nmが出力信号に変換された回転速度信号Nmsとが入力される。回転速度信号Nmsは、例えば3相ブラシレスモータである電動モータ110に設けられ、この電動モータ110の回転子(ロータ)の回転角度を検出するセンサ(例えば、回転子の回転位置を検出するレゾルバ、ロータリエンコーダ等で構成されるロータ位置検出回路)の出力信号が微分されることにより得られるものであることを例示することができる。
ベース電流算出部21は、位相補償部26にてトルク信号Tdが位相補償されたトルク信号Tsと、車速センサ170からの車速信号vとに基づいてベース電流Ibを算出する。
イナーシャ補償電流算出部22は、トルク信号Tsと車速信号vとに基づいて電動モータ110およびシステムの慣性モーメントを打ち消すためのイナーシャ補償電流Isを算出する。
ダンパー補償電流算出部23は、トルク信号Tsと、車速信号vと、電動モータ110の回転速度信号Nmsとに基づいて、電動モータ110の回転を制限するダンパー補償電流Idを算出する。
目標電流決定部25は、ベース電流算出部21が算出したベース電流Ib、イナーシャ補償電流算出部22が算出したイナーシャ補償電流Isおよびダンパー補償電流算出部23が算出したダンパー補償電流Idに基づいて目標電流ITを決定する。目標電流決定部25は、例えば、ベース電流Ibに、イナーシャ補償電流Isを加算するとともにダンパー補償電流Idを減算して得た補償電流を、予め経験則に基づいて作成しROMに記憶しておいた、補償電流と目標電流ITとの対応を示すマップに代入することにより目標電流ITを算出する。
モータ駆動制御部30は、目標電流算出部20にて最終的に決定された目標電流ITと、モータ電流検出部60にて検出された電動モータ110へ供給される実電流Imとの偏差に基づいてフィードバック制御を行うフィードバック(F/B)制御部31と、電動モータ110をPWM駆動するためのPWM(パルス幅変調)信号を生成するPWM信号生成部35とを有している。
フィードバック制御部31は、目標電流算出部20にて最終的に決定された目標電流ITとモータ電流検出部60にて検出された実電流Imとの偏差を求める偏差演算部32と、その偏差がゼロとなるようにフィードバック処理を行うフィードバック(F/B)処理部33とを有している。
PWM信号生成部35は、フィードバック制御部31からの出力値に基づいてPWM信号を生成し、生成したPWM信号をモータ駆動部50に向けて出力する。
リレー作動部37は、IGスイッチ11がオンである場合には、リレー72を、通常時にはオンとし、異常時にはオフとする。また、リレー作動部37は、IGスイッチ11がオフである場合には、リレー72をオフとする。
衝撃抑制部38は、トルクセンサ109に対して電力を供給してトルクセンサ109を駆動するとともに、トルクセンサ109にて検出されたトルクを用いてラック軸105の突出部105bがステアリングギヤボックス107の端面に突き当たるときの衝撃を抑制する衝撃抑制制御を行う。衝撃抑制制御については後で詳述する。なお、トルクセンサ109に対して電力を供給するとは、トルクセンサ109の磁気センサ143に電流を供給することであることを例示することができる。
次に、モータ駆動部50について説明する。
モータ駆動部50は、所謂インバータであり、スイッチング素子として6個の独立したトランジスタ(FET)を備え、6個の内の3個のトランジスタは電源の正極側ラインと各相の電気コイルとの間に接続され、他の3個のトランジスタは各相の電気コイルと電源の負極側(アース)ラインと接続されている。そして、6個の中から選択した2個のトランジスタのゲートを駆動してこれらのトランジスタをスイッチング動作させることにより、電動モータ110の駆動を制御する。
次に、モータ電流検出部60について説明する。
モータ電流検出部60は、モータ駆動部50に接続されたシャント抵抗の両端に生じる電圧から電動モータ110に流れる実電流Imの値を検出して、検出した実電流Imをモータ電流信号に変換して出力する。
以上のように構成されたステアリング装置100においては、IGスイッチ11がオフである場合には、バッテリ13からの電力が制御装置10のサブCPU,サブROM,サブRAMには供給され、メインCPU,メインROM,メインRAMには供給されないように構成されている。IGスイッチ11がオンとなり、自動車1のエンジン(不図示)が作動すると、発電機12およびバッテリ13からの電力がメインCPU,メインROM,メインRAMにも供給されるように構成されている。メインCPUなどにも電力が供給されるようになると、モータ制御部40のリレー作動部37がパワーリレー721をオンすることでモータ駆動部50に電力が供給される。また、リレー作動部37がモータリレー722をオンにすることで、モータ駆動部50の作動により電動モータ110に電流が供給され、電動モータ110が駆動され得る状態となる。
IGスイッチ11がオフである場合にもバッテリ13からの電力がサブCPU,サブROM,サブRAMに供給されることで、衝撃抑制部38は、IGスイッチ11がオフである場合に衝撃抑制制御を行う。衝撃抑制制御は、ラック軸105の突出部105bがステアリングギヤボックス107の端面に突き当たるときの衝撃を抑制する制御である。
以下に、衝撃抑制部38が行う衝撃抑制制御について説明する。
衝撃抑制部38は、トルクセンサ109にて検出されたトルクが出力信号に変換されたトルク信号を取得する。そして、衝撃抑制部38は、取得したトルク信号に基づいて、ステアリングシャフト102とピニオンシャフト106との間に生じている回転トルクを把握する。以下、把握した回転トルクの値を検出トルク値と称す。
衝撃抑制部38は、検出トルク値が予め定められた所定基準値以上になった場合には、リレー72をオンにし、モータ駆動部50に電力を供給する。モータ駆動部50に電力が供給されると、モータ駆動部50の作動により電動モータ110に電流が供給され得る状態となる。
そして、衝撃抑制部38は、検出トルク値が予め定められた所定限界値以上である場合には、モータ駆動部50に設けられたトランジスタ(FET)全てをオンにして電動モータ110を短絡する。所定限界値は、上述した所定基準値よりも大きな値であり、ラック軸105がステアリングギヤボックス107に突き当たることに起因して、ラック・ピニオンに過大な衝撃が加わりラック歯105aまたはピニオン106aに伝達異常が生じる許容上限トルク値よりも低い値であることを例示することができる。
次に、フローチャートを用いて、衝撃抑制部38が行う衝撃抑制制御の処理手順について説明する。
図6は、衝撃抑制部38が行う衝撃抑制制御の処理手順を示すフローチャートである。衝撃抑制部38は、IGスイッチ11がオフであるときに、この衝撃抑制制御処理を予め定めた期間毎に繰り返し実行する。
衝撃抑制部38は、先ず、トルクセンサ109にて検出された検出トルク値が所定基準値以上であるか否かを判別する(ステップ(以下、単に、「S」と記す。)101)。そして、検出トルク値が所定基準値以上である場合(S101でYes)、衝撃抑制部38は、リレー72を、オン(閉状態)とする(S102)。他方、検出トルク値が所定基準値未満である場合(S101でNo)、リレー72を、オフ(開状態)とする(S103)。
リレー72を、閉状態(オン)とした後、衝撃抑制部38は、検出トルク値が所定限界値以上であるか否かを判別する(S104)。そして、検出トルク値が所定限界値以上である場合(S104でYes)、衝撃抑制部38は、モータ駆動部50に設けられたトランジスタ(FET)全てをオンにして電動モータ110を短絡する(S105)。他方、検出トルク値が所定限界値未満である場合(S104でNo)、本処理の実行を終了する。
モータ制御部40の衝撃抑制部38が上述した衝撃抑制制御を行うことで、例えば、前輪150を交換するときや整備するときなどに、車体を浮かせ前輪150の向きを変えるために前輪150を持って回転させる場合でも、ラック軸105がステアリングギヤボックス107に突き当たるときの衝撃を回避することができるか、抑制することができる。
すなわち、IGスイッチ11がオフであり自動車1のエンジン(不図示)が作動していない状態で、車体を浮かせて前輪150が強制的に回転させられると、前輪150の慣性モーメントの影響により、相当な勢いで前輪150が回転し、ラック軸105が勢いよく移動することがある。かかる場合においても、トルクセンサ109にて検出された検出トルク値が所定限界値以上になった場合には、モータ駆動部50に設けられたトランジスタ(FET)全てがオンにされ、相間が短絡されるので、電動モータ110回転時に発生する逆起電圧で電動モータ110が瞬時に停止する。これにより、電動モータ110と機械的に連結されたピニオンシャフト106の回転が急停止し、ラック軸105の移動も瞬時に停止する。その結果、ラック軸105がステアリングギヤボックス107に突き当たることを回避することができるか、突き当たったとしてもそのときの衝撃力(速度)を抑制することができる。これにより、ラック軸105がステアリングギヤボックス107に突き当たることに起因して、ラック軸105に形成されたラック歯105aおよびピニオンシャフト106に形成されたピニオン106a等に過大な衝撃荷重が入力されることを抑制できる。
以上、説明したように本実施の形態に係る制御装置10によれば、IGスイッチ11がオフのときに、例えば前輪150が持たれて回転させられた場合でも、ラック軸105がステアリングギヤボックス107に突き当たることに起因してラック歯105aおよびピニオン106a等に過大な衝撃が生じることが抑制される。それゆえ、ステアリング装置100は、ラック軸105がステアリングギヤボックス107に突き当たる時の衝撃を和らげる為に、合成樹脂やゴム等からなるストッパラバーなどの弾性部材を備えている必要がない。言い換えれば、ラック軸105がステアリングギヤボックス107に突き当たる時の衝撃緩衝部材を設けなくても、ラック歯105aおよびピニオン106a等に過大な衝撃荷重が生じることを抑制することができる。その結果、ステアリングホイール101の回転操作力を前輪150の転動力として伝達する伝達機構の一例としての、ラック歯105aおよびピニオン106a等を有するラック・ピニオン駆動連結部を保護することができる。
また、上述した実施の形態に係る制御装置10においては、IGスイッチ11がオフである場合にはバッテリ13からの電力が供給されるサブCPUが、サブROMに格納されたプログラムを実行することにより、衝撃抑制部38の機能を実現する。そして、IGスイッチ11がオフである場合にはメインCPUにバッテリ13からの電力が供給されない。それゆえ、上述した実施の形態に係る制御装置10によれば、IGスイッチ11がオフである場合にもメインCPUに電力が供給される構成と比べて消費電力を大幅に削減することができる。
なお、上述した実施の形態に係る制御装置10においては、衝撃抑制部38が、トルクセンサ109にて検出された検出トルク値が所定限界値以上になった場合に電動モータ110を短絡することを、IGスイッチ11がオフされているときに行うことについて述べたが、特にかかる態様に限定されない。IGスイッチ11がオンにされモータ駆動部50に電力が供給されているときに、衝撃抑制部38が、トルクセンサ109にて検出された検出トルク値が所定限界値以上になった場合にモータ駆動部50に設けられたトランジスタ(FET)全てをオンにしてもよい。
また、上述した制御装置10によれば、ラック軸105がステアリングギヤボックス107に突き当たる時の衝撃を和らげるために、衝撃抑制部38は、モータ駆動部50に設けられたトランジスタ(FET)全てをオンにして短絡する制御を行っているが、特にかかる態様に限定されない。例えば、衝撃抑制部38は、モータ駆動部50に設けられたトランジスタ(FET)全てをオンとし、その後オフとし、再度オンとするように繰り返しオンとオフとを切り替えてもよい。かかる態様でも、ラック軸105の勢いを抑制することができるので、衝撃緩衝部材を設けなくても、ラック歯105aおよびピニオン106a等に過大な衝撃荷重が生じることを抑制することができる。
また、衝撃抑制部38は、例えば、ラック軸105を、移動している方向とは逆方向に移動させるような電流を電動モータ110に供給するように制御してもよい。つまり、衝撃抑制部38は、電動モータ110が、現在のラック軸105の移動に伴って回転している方向とは逆方向に回転駆動するような電流を電動モータ110に供給するように制御してもよい。例えば、衝撃抑制部38は、現在のラック軸105の移動に伴って回転している方向とは逆方向に回転させるための予め定められた電流量を電動モータ110に供給するように制御することを例示することができる。あるいは、衝撃抑制部38は、例えば、電動モータ110の回転速度が大きいほど電流量を大きくするなど、電動モータ110の回転速度に応じた量であってもよい。また、トルクセンサ109にて検出された検出トルク値に応じた量であってもよい。
このように、移動している方向とは逆方向にラック軸105を移動させるような電流を電動モータ110に供給することで、電動モータ110の回転速度が減速され、ラック軸105の移動速度が小さくなる。その結果、ラック軸105がステアリングギヤボックス107に突き当たることを回避することができるか、突き当たったとしてもそのときの衝撃力を抑制することができる。これにより、ラック軸105がステアリングギヤボックス107に突き当たることに起因してラック歯105aおよびピニオン106a等に過大な衝撃荷重が生じることを抑制することができる。したがって、ラック軸105がステアリングギヤボックス107に突き当たる時の衝撃緩衝部材を別途設けなくても、ラック歯105aおよびピニオン106a等に過大な衝撃力が生じることを抑制することができ、ラック・ピニオン等の伝達機構を保護することができる。
また、衝撃抑制部38は、トルクセンサ109にて検出された検出トルク値が所定基準値以上になった場合にリレー72をオン(閉状態)とし、検出トルク値が所定限界値以上になった場合にラック軸105の勢いを抑制するために電動モータ110を短絡することや逆方向にラック軸105を移動させるようなモータ電流を供給することについて述べたが、特にかかる態様に限定されない。
例えば、検出トルク値の微分値または2回微分値が、予め定められた所定の基準値以上となった場合にリレー72をオン(閉状態)としてもよい。また、検出トルク値の微分値または2回微分値が、予め定められた所定の限界値以上となった場合にラック軸105の勢いを抑制するために電動モータ110を短絡制御することや逆方向にラック軸105を移動させるようなモータ駆動電流を供給してもよい。
なお、電動モータ110の配置は、本実施例に限定されずラックアシスト式、デュアルピニオン式であっても適応可能である。
1…自動車、10…制御装置、20…目標電流算出部、30…モータ駆動制御部、37…リレー作動部、38…衝撃抑制部、40…モータ制御部、50…モータ駆動部、72…リレー、100…電動パワーステアリング装置、101…ステアリングホイール(ハンドル)、105…ラック軸、106…ピニオンシャフト、109…トルクセンサ、110…電動モータ

Claims (6)

  1. 車両のステアリングホイールと連動して回転するステアリングシャフトと、
    直線的に移動することで車輪を転動させるラック軸と、当該ラック軸に形成されたラックとラック・ピニオンを構成するピニオンシャフトとを有して、前記ステアリングホイールの回転操作力を前記車両の車輪の転動力として伝達する伝達手段と、
    前記ステアリングシャフトと前記ピニオンシャフトとの間に生じる回転トルクを検出するトルク検出手段と、
    回転駆動力が前記ラック軸を移動させる力として加えられる電動モータと、
    前記車両に設けられたイグニッションスイッチがオフである場合に前記トルク検出手段が検出した回転トルクに基づいて前記ラック軸の移動を抑制するように前記電動モータの駆動を制御する抑制手段と、
    を備えることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
  2. 前記抑制手段は、前記電動モータを短絡することで前記ラック軸の移動を抑制する
    ことを特徴とする請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
  3. 前記抑制手段は、前記ラック軸が反対方向に移動するように前記電動モータを回転させる電流を供給することで当該ラック軸の移動を抑制する
    ことを特徴とする請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
  4. 前記抑制手段は、前記トルク検出手段が検出した回転トルクの値である検出トルク値が予め定められた限界値以上となったら前記ラック軸の移動を抑制するように前記電動モータの駆動を制御する
    ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の電動パワーステアリング装置。
  5. 前記抑制手段は、前記トルク検出手段が検出した回転トルクの値である検出トルク値の変化量が予め定められた限界値以上となったら前記ラック軸の移動を抑制するように前記電動モータの駆動を制御する
    ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の電動パワーステアリング装置。
  6. 前記抑制手段は、前記イグニッションスイッチがオフである場合に前記トルク検出手段に電力を供給する
    ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の電動パワーステアリング装置。
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