JP6340179B2 - 壁体構築用ブロック及び壁体 - Google Patents
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Description
ブロック積みで構築される壁体では、例えば任意箇所のブロックを取り除くことで、開口部を形成することも考えられる。
請求項2に記載の発明に係る壁体構築用ブロックは、請求項1に記載の壁体構築用ブロックにおいて、縦目地となる両側面のうち、一方の側面に形成され、前記挿通部に達する案内路を有し、前記貫通部は、前記案内路が形成されない他方の側面と前記挿通部との間に設けられていることを特徴としている。
この圧縮束の部分を避けて、圧縮応力の小さい部分に貫通部を配置することで、貫通部の破損の可能性を回避できる。ここに、圧縮応力の小さい部分は、圧縮束と一対の柱で区画される一対の第1三角壁面の範囲、及び圧縮束と一対の水平部材で区画される一対の第2三角壁面の範囲である。
本発明の第1実施形態に係る壁体構築用ブロック10(以下ブロック10と記す。)について、図1〜図3を用いて説明する。
ここに、図1(A)はブロック10の平面図を、図1(B)は正面図を、図1(C)は斜視図をそれぞれ示している。図2、図3は、いずれも、ブロック10を一部に組み込んだ壁体20の構築手順を示す正面図である。なお、図中の矢印UPは鉛直方向上方を示している。
ブロック10は、プレキャストコンクリート製とされ、壁体20を構築したとき積上げ面となる、上面12及び下面14を有している。上面12及び下面14は、両端部24R、24Lから中央部に向かって、中央部が狭くなる方向へ直線状に傾斜している。即ち、正面視において、上面12は中央部に向かって下方へ傾斜し、下面14は中央部に向かって上方へ傾斜し、羽根を広げたチョウチョウの形状となっている。
ブロック10の中央部には、縦筋挿通孔(挿通部)16が形成されている。縦筋挿通孔16は、上面12及び下面14と交差する方向に形成され、架構30内へ配筋された縦筋18、19(縦筋19は延長縦筋)が挿通される。
また、一方の側面24Lの凹部26Lから縦筋挿通孔16まで、縦筋18、19を通過させる溝部(案内路)28が形成されている。案内路28は、上面12から下面14に達する深さで形成されており、縦筋18、19を、凹部26Lから縦筋挿通孔16に挿通させる。
また、ブロック10に貫通孔22を設けているので、壁体20から、壁体構築用ブロックの一部を取り除いて貫通孔を形成する方法と比較して、開口部を設けることによる壁体20の損傷を抑制することができる。
壁体20は、ブロック10と、外形寸法が同一で貫通孔22が設けられていない、従来の壁体構築用ブロックとを組み合わせて構築される。
なお、壁体構築用ブロック40、44、46、48は、一例であり、他の構成の壁体構築用ブロックを使用しても良い。
本実施例では、正面視で右側と最上段の2か所に、壁体構築用ブロック10を設けた例を示している。
これにより、縦筋挿通孔16及び凹部26R、26Lに縦筋18を挿通させ、落とし込み方式で、ブロック10、44又はブロック48を積み重ねることができる。ブロック48は、柱32と接する両端部に配置される。
図18(A)〜(D)に示すように、先ず、ブロック40は、正面側から見て90度回転させられ、正面側から縦筋19の間の空間56にアプローチして、隣り合う縦筋19間に挿入される。
次に、図18(E)、(F)に示すように、縦筋19が案内路28を通過して縦筋挿通孔16に達するように、ブロック40は、正面側から反時計方向に90度回転させられる。この作業を同様に繰り返すことで、落し込み方法で積み上げなくても、ブロック40が積み上げられる。
なお、水平部材は梁34U、34Dで説明したが、スラブでも良い。
図19に示すように、壁体20を構成するブロック40の上面12及び下面14には、いずれも両端部24R、24Lから中央部に向かって傾斜が設けられている。これにより、架構30を介して壁体20へ、矢印P1で示す水平力が作用したとき、ブロック40には、矢印P2、P3、P4…Pnで示す水平力が、傾斜面に沿って押下げ方向へ順次作用し、壁体20の水平移動が抑制される。つまり、横筋なしでブロック40を積み上げる構造であるにも関わらず、矢印P1で示す水平力に対抗することができる。
本発明の第2実施形態に係る壁体構築用ブロック50(以下ブロック50と記す。)について、図4を用いて説明する。ブロック50は、貫通孔22に鋼管52を挿入して周壁を補強した点において、第1実施形態に係るブロック10と相違する。相違点を中心に説明する。
ここに、図4(A)はブロック50の平面図を、(B)は(C)のX1−X1線断面図を、(C)は(A)のX2−X2線断面図を示している。
これにより、壁体構築用ブロック50の破損強度を、壁体構築用ブロック10より高めることができる。他の構成は、第1施形態と同じであり説明は省略する。
本発明の第3実施形態に係る壁体構築用ブロック60(以下ブロック60と記す。)について、図5を用いて説明する。ブロック60は、端部に形成された凹部26Lと、縦筋挿通孔16との間に案内路が設けられていない点において、第1実施形態に係るブロック10と相違する。相違点を中心に説明する。
ここに、図5(A)はブロック60の平面図を、(B)は正面図を、(C)は斜視図を示している。
一方、ブロック10の場合と異なり、組み立て時に案内路を利用して縦筋挿通孔16に縦筋18、19を挿通させることはできない。このため、ブロック60は、縦筋18の場合に使用され、縦筋18の上から落とし込んで積み上げる(図2参照)。他の構成は、第1実施形態と同じであり説明は省略する。
本発明の第4実施形態に係る壁体構築用ブロック58(以下ブロック58と記す。)について、図6を用いて説明する。ブロック58は、貫通孔64が2個(64R、64L)設けられている点において、第3実施形態に係るブロック60と相違する。相違点を中心に説明する。ここに、図6はブロック58の斜視図を示している。
他の構成は、第3実施形態の壁体構築用ブロック60と同じであり説明は省略する。
本発明の第5実施形態に係る壁体構築用ブロック62(以下ブロック62と記す。)について、図7を用いて説明する。ブロック62は、貫通孔64が2個(64R、64L)設けられている点において、第3実施形態に係るブロック60と相違する。相違点を中心に説明する。ここに、図7はブロック62の斜視図を示している。
しかし、縦筋18の上部は開放されているので、ブロック62を、縦筋18の上から落とし込み方式で積み立てることができる(図2参照)。
他の構成は、第3実施形態の壁体構築用ブロック60と同じであり、説明は省略する。
本発明の第6実施形態に係る壁体構築用ブロック70(以下ブロック70と記す。)について、図8を用いて説明する。ブロック70は、ブロック70の上面12、下面14、及び側面24R、24Lが鋼板で形成されている。また、円筒状の鋼管76で縦筋挿通孔16が形成され、半円筒状の鋼管78で凹部26R、26Lが形成されている点において、第3実施形態に係るブロック60と相違する。相違点を中心に説明する。
ここに、図8はブロック70の斜視図を示している。
また、円筒状の鋼管76で縦筋挿通孔16が形成され、半円筒状の鋼管78R、78Lで凹部26R、26Lが形成されている。
これにより、ブロック70の強度を高くすることができる。
また、ブロック70の前面と後面の間には、上面12、下面14、側面24R、24Lで空間が形成されており、この空間を、設備配管類を貫通させる開口部として利用することができる。
しかし、第3実施形態に係るブロック60と同様に、縦筋18は上端部が開放されているので、ブロック60を、縦筋18の上から落とし込むことができる(図2参照)。
他の構成は、第3実施形態のブロック60と同じであり説明は省略する。
本発明の第7実施形態に係る壁体構築用ブロック80(以下ブロック80と記す。)について、図9、図10を用いて説明する。ブロック80は、正面視において、両端部より中央部が厚く形成され、中央部に貫通孔86が形成されている点において、第1実施形態に係るブロック10と相違する。相違点を中心に説明する。
ここに、図9はブロック80の斜視図を示し、図10はブロック80が一部に組み込まれた壁体21の正面図を示している。
前板鋼鈑83F、後板鋼鈑83Bの周囲は、鋼鈑81と例えば溶接接合等で接合され、、鋼管85の外周面は、前板鋼鈑83F、後板鋼鈑83Bと、例えば溶接接合等で接合されている。
しかし、両側面24R、24Lには凹部26R、26Lが形成されており、凹部26R、26Lを利用して、縦筋18、19に固定させることができる。
ここに、縦筋18、19は、壁体21を構築する際のブロック位置確保として使用しており、後述するように、壁体21の水平力の負担の寄与は小さい。このため、縦筋18、19を一部省略しても問題はない。
他の構成は、第1実施形態のブロック10と同じであり説明は省略する。
本発明の第8実施形態に係る壁体構築用ブロック90(以下ブロック90と記す。)について、図11を用いて説明する。ブロック90は、ブロック80の前板鋼鈑83と後板鋼鈑83Bに替えて、中間位置に中間鋼鈑92が設けられ、中間鋼鈑92に開口部94が形成されている点において、第7実施形態に係るブロック80と相違する。相違点を中心に説明する。ここに、図11はブロック90の斜視図を示している。
中間鋼鈑92の外周は鋼鈑81と、例えば溶接接合等で接合されている。他の構成は、第7実施形態のブロック80と同じであり説明は省略する。
本発明の第9実施形態に係る壁体構築用ブロック96(以下ブロック96と記す。)について、図12を用いて説明する。ブロック96は、第8実施形態に係るブロック90を上下方向に二分割した点において、第8実施形態に係るブロック90と相違する。相違点を中心に説明する。
ここに、図12は、壁体構築用ブロック96の分解斜視図を示している。
ここに、一方の分割ユニット98Uは、上面82が両端部(両側面24R、24L)から中央部にかけて上り勾配とされ、内部には、上下方向に二分割された中間鋼鈑102が壁体20の厚さ方向の中間部に形成されている。
他方の分割ユニット98Uは、基本的な構成は分割ユニット98Uと同じであり、下面82が両端部(両側面24R、24L)から中央部にかけて下がり勾配とされ、内部には、中間鋼鈑102が壁体20の厚さ方向の中間部に形成されている。
また、鋼鈑81には、平面視で、両側面24L、24Rに半円形状の凹部26R、26Lが形成されている。凹部26R、26Lも、分割ユニット98U、98Dが組み合わされたとき、上下方向へ貫通する凹部26R、26Lが形成される。
これにより、設備配管類を、一旦切断しなくても、設備配管類をブロック96で囲むことができる。他の構成は、第6実施形態のブロック70と同じであり説明は省略する。
本発明の第10実施形態に係る壁体110について、図13〜15を用いて説明する。
図13に示すように、壁体110は、一対の柱112R、112Lと梁(水平部材)114U、114Dで構成された架構116の内部へ構築されている。壁体110はプレキャストコンクリート製の従来のブロック40で構築され、壁体110には、壁厚方向へ貫通し、配管部材等が貫通される貫通孔126を有している。また、壁体110には縦筋118が配筋されている。
実験は、図13に示す架構116を用いて、架構116に加えた水平力P1、P2と、壁体110の損傷程度の関係を測定した。水平力P1、P2は、梁114の断面中央部に作用させた。
同様に、水平力P2を作用させたとき、壁体110の角部Cから対角線上の下部の角部Dに向けて、斜めに損傷が大きくなるゾーン(白抜きのゾーンPZ2)の存在が確認された。
また、白抜きのゾーンPZ1、PZ2は、壁体110がブロック40で構築されているため、ブロック40同士の圧縮応力伝達機構も水平力抵抗機構に影響を及ぼしていると考えられる。
図14は、比較のための従来の鉄筋コンクリート製の耐震壁の数値計算の概要を示す図であり、図15は、ブロック壁の数値計算の概要を示す図である。
図14(A)は、柱112R、112Lと梁114U、114Dで構成された架構117内へ、鉄筋コンクリート製の耐震壁124が構築された解析モデルのメッシュ割を示し、実線128は、メッシュ割位置である。図14(B)は、架構117と耐震壁124の縦筋130と横筋132の配筋位置を示し、図14(C)は解析結果を示している。
結果は、求めた応力の分布を視覚的に分かり易く表現するため、応力が周囲より大きい部分にドットを付して表示した。
なお、図14(C)は、一例として、圧縮ひずみが2000μ程度に達する範囲にドットを付している。
図15(A)は、柱112R、112Lと梁114U、114Dで構成された架構117内へ、コンクリート製の壁体125が構築された解析モデルのメッシュ割を示し、実線128は、メッシュ割位置である。図15(B)は、壁体125の配筋位置を示している。壁体125には縦筋及び横筋は設けられていない。図15(C)は、解析結果を示している。
結果は、求めた応力の分布を視覚的に分かり易く表現するため、応力が周囲より大きい部分にドットを付して表示した。
なお、図15(C)は、一例として、圧縮ひずみが2000μ程度に達する範囲にドットを付している。
12 上面
14 下面
16 縦筋挿通孔(挿通部)
18 縦筋
20 鉄骨梁(Y方向)
22 貫通孔(貫通部)
24 側面
26 凹部(挿通部)
28 溝部(案内路)
30 架構
32 柱
34 梁(水平部材)
36 前面
38 後面
120 柱中央部三角ゾーン(第1三角壁面)
122 梁中央部三角ゾーン(第2三角壁面)
P1、P2 水平力
PZ1、PZ2 圧縮束(周囲より応力の高い範囲)
Claims (6)
- 柱と水平部材で構成された架構内へ積み上げられ、壁体を構築したとき積上げ面となる上面及び下面と交差する方向に形成され、前記架構内へ配筋された縦筋が挿通される挿通部と、
前記壁体を構築したとき、前記壁体の壁厚方向へ貫通する貫通部と、
前記貫通部に挿入されて前記貫通部の周壁を補強する鋼管と、
前記鋼管の外周部に設けられ、前記鋼管を周囲と一体化させる補強部材と、
を有する壁体構築用ブロック。 - 縦目地となる両側面のうち、一方の側面に形成され、前記挿通部に達する案内路を有し、
前記貫通部は、前記案内路が形成されない他方の側面と前記挿通部との間に設けられている、
請求項1に記載の壁体構築用ブロック。 - 前記壁体を正面から見たとき、前記上面及び前記下面は、両端部から中央部に向かって傾斜している請求項1又は2に記載の壁体構築用ブロック。
- 前記壁体を正面から見たとき、前記上面は両端部から中央部にかけて上り勾配とされ、前記下面は両端部から中央部にかけて下り勾配とされ、
前記貫通部は、前記中央部に形成されている請求項2又は3に記載の壁体構築用ブロック。 - 柱と水平部材で構成された架構内へブロックを積み上げて構築された壁体であって、
前記ブロックは、前記架構に配筋された縦筋が挿通される挿通部を有し、
前記ブロックの積上げ面は、前記壁体を正面から見たとき、両端部から中央部に向かって傾斜しており、
前記壁体を壁厚方向へ貫通する開口部が形成される位置には、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の壁体構築用ブロックが配置されている壁体。 - 前記壁体を壁厚方向へ貫通する貫通部は、
前記架構から前記壁体へ水平力が作用したとき、前記壁体の角部から対角線上の他の角部に向けて、斜めに帯状に形成される圧縮束を避けて、前記圧縮束と前記柱で区画される一対の第1三角壁面、又は前記圧縮束と前記水平部材で区画される一対の第2三角壁面の少なくとも一つに設けられている請求項5に記載の壁体。
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