以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る電動機器の動力伝達装置について説明する。図1に示すように、本実施形態の動力伝達装置1は、電動機器としての電気自動車Vに適用されたものである。
この電気自動車Vは、四輪車両であり、ECU2と、原動機としての電動機(以下「モータ」という)4と、左右の駆動輪7,7(被駆動部)と、図示しない左右の遊動輪と、モータ4の動力を変速しながら駆動輪7,7に伝達する手動変速機10などを備えている。
このモータ4は、ブラシレスDCモータで構成されており、PDU5を介して、ECU2及びバッテリ6に連結されている。このPDU5は、インバータなどを含む電気回路で構成されている。ECU2は、PDU5を介して、モータ4とバッテリ6との間の電力の授受を制御することによって、後述するように、モータ4の運転状態を制御する。それにより、電気自動車Vの走行状態が制御される。
また、手動変速機10は、操作部材としての変速レバー11(図2参照)と、モータ4の回転軸に同軸に連結された入力軸20と、この入力軸20と平行に設けられた出力軸30と、変速レバー11の操作によって駆動されるシンクロ機構40(変速段設定機構)などを備えている。
入力軸20は、2つの軸受23,23を介して、図示しないミッションケースに回転自在に支持されている。この入力軸20上には、モータ4側からその反対側に向かって順に、低速段駆動ギヤ21、シンクロ機構40及び高速段駆動ギヤ22が設けられている。これらの2つのギヤ21,22及びシンクロ機構40は、入力軸20と同心に配置されているとともに、2つのギヤ21,22は入力軸20上に回転自在に設けられている。
また、低速段駆動ギヤ21は、一体に形成されたドグギヤ21aを有しており、高速駆動ギヤ22も、一体に形成されたドグギヤ22aを有している。後述するように、シンクロ機構40のスリーブ42がドグギヤ21a又はドグギヤ22aに噛み合うことによって、低速段又は高速段がインギヤされる。
入力軸20の近傍には、入力回転速度センサ60(回転方向検出手段)が設けられている。この入力回転速度センサ60は、入力軸20の回転速度を検出して、それを表す検出信号をECU2に出力する。ECU2は、この入力回転速度センサ60の検出信号に基づき、入力軸20の回転速度すなわちモータ4の回転速度(以下「モータ回転速度」という)NMOTを算出する。この場合、モータ回転速度NMOTは、モータ4の正転方向のときには正値として算出され、逆転方向のときには負値として算出される。
また、出力軸30は、2つの軸受34,34を介して、ミッションケースに回転自在に支持されている。この出力軸30上には、モータ4側からその反対側に向かって順に、出力ギヤ33、低速段従動ギヤ31及び高速段従動ギヤ32が配置されており、これらの3つのギヤ31〜33はいずれも、出力軸30に同心に固定されている。
この低速段従動ギヤ31は、前述した低速段駆動ギヤ21に常に噛み合っており、これらのギヤ21,31によって、低速段が構成されている。また、高速段従動ギヤ32は、前述した高速段駆動ギヤ22に常に噛み合っており、これらのギヤ22,32によって、高速段が構成されている。
この出力軸30の近傍には、出力回転速度センサ61(車速検出手段)が設けられている。この出力回転速度センサ61は、出力軸30の回転速度を検出して、それを表す検出信号をECU2に出力する。ECU2は、この出力回転速度センサ61の検出信号に基づき、電気自動車Vの速度である車速VPを算出する。
また、出力ギヤ33は、終減速装置35のギヤ36に常に噛み合っている。以上の構成により、出力軸30の動力は、終減速装置35及び駆動軸37,37を介して、左右の駆動輪7,7に伝達される。
一方、シンクロ機構40は、本出願人が特許第4121821号公報で提案済みのものと同様に構成されているので、その詳細な説明は省略するが、入力軸20と一体に回転するハブ41と、このハブ41上に軸線方向に摺動自在に設けられたスリーブ42などを備えている。このスリーブ42の内周面には、ドグギヤ21a,22aと噛合可能なスプライン歯(図示せず)が形成されている。
図4に示すように、このスリーブ42には、後述するシフトフォーク機構15のシフトフォーク15bが嵌合しており、変速動作の際、このシフトフォーク15bによって、スリーブ42は軸線方向に駆動される。この場合、スリーブ42が低速段駆動ギヤ21側に駆動されたときには、スリーブ42は、入力軸20と低速段駆動ギヤ21を互いに同期させながら低速段駆動ギヤ21側に摺動し、そのスプライン歯が低速段駆動ギヤ21のドグギヤ21aに噛み合う状態となる。それにより、低速段駆動ギヤ21が入力軸20に連結され、低速段がインギヤ状態となることで、モータ4の動力が低速段を介して駆動輪7に伝達可能となる。
また、スリーブ42が高速段駆動ギヤ22側に駆動されたときには、スリーブ42は、入力軸20と高速段駆動ギヤ22を互いに同期させながら高速段駆動ギヤ22側に摺動し、そのスプライン歯が高速段駆動ギヤ22のドグギヤ22aに噛み合う状態となる。それにより、高速段駆動ギヤ22が入力軸20に連結され、高速段がインギヤ状態となることで、モータ4の動力が高速段を介して駆動輪7に伝達可能となる。
また、この手動変速機10の場合、図2に示すように、変速レバー11はシフトゲートパネル12の案内孔12aに嵌合しており、この案内孔12aの形状に起因して、図3に示すシフトパターンを備えている。なお、以下の説明では、運転者による変速レバー11の操作に関して、図3の上下方向及び左右方向の操作をそれぞれ、「シフト操作」及び「セレクト操作」という。
図2,3に示すように、この手動変速機10のシフトパターンにおいては、ニュートラル位置Nを中心として、前後の所定位置に、前進低速段位置(以下「低速段位置」という)「L」及び前進高速段位置(以下「高速段位置」という)「H」が配置されている。また、ニュートラル位置「N」から所定距離分、右側に寄った位置が、リバース準備位置「R1」になっており、このリバース準備位置「R1」から前方に移動した位置が、リバース位置「R」になっている。
さらに、リバース準備位置「R1」とリバース位置「R」との間隔は、ニュートラル位置「N」と低速段位置「L」との間隔と同じ値に設定されている。なお、以下の説明では、変速レバー11が4つの位置「L」,「H」,「N」,「R」のいずれの位置にもない状態を「ノーポジション状態」という。
また、この手動変速機10は、図4に示すように、セレクタ14と、セレクタ14及びシンクロ機構40に係合するシフトフォーク機構15などを備えている。なお、以下の説明では、図4の左側を「左」、図4の右側を「右」、図4の手前側を「上」、図4の奥側を「下」という。
このセレクタ14は、図5に示すように、軸14a及びアーム14bなどで構成されている。この軸14aは、丸棒状で、上下方向に延びており、軸線回りに回動可能でかつ軸線方向に摺動可能な状態で、ミッションケースに取り付けられている。また、アーム14bは、軸14aに一体にボルト止めされているとともに、シフトフォーク機構15の後述するシフトピース15cに係合している。なお、本実施形態では、セレクタ14が第1可動部材に相当し、シフトフォーク機構15が第2可動部材に相当し、シフトピース15cが係合部に相当する。
さらに、セレクタ14の軸14aには、図示しないシフト機構と、セレクト機構のアーム13とが連結されており、これらのシフト機構及びセレクト機構は、図示しない変速ケーブルを介して変速レバー11に連結されている。このセレクタ14の場合、変速レバー11がニュートラル位置「N」にあるときには、図4に示す中立位置に位置する。
また、変速レバー11がニュートラル位置「N」から低速段位置「L」までシフト操作されたときには、シフト機構によって駆動されることにより、軸14aが図4に示す中立位置から図7(a)に示すLシフト位置まで、図中の時計回りに回動する。一方、変速レバー11がニュートラル位置「N」から高速段位置「H」までシフト操作されたときには、シフト機構によって駆動されることにより、軸14aが図4に示す中立位置から図7(b)に示すHシフト位置まで、図中の反時計回りに回動する。
さらに、このセレクタ14の場合、変速レバー11がニュートラル位置「N」、低速段位置「L」及び高速段位置「H」にあるときには、セレクト機構によって、図5及び図8(a)に示す正転位置に保持されるとともに、変速レバー11がニュートラル位置「N」からリバース準備位置「R1」までセレクト操作されたときには、セレクト機構のアーム13によって図5の下側に駆動されることにより、図5及び図8(a)に示す正転位置から図8(b)に示す逆転位置まで軸線方向に摺動する。
このセレクタ14の近傍には、セレクト位置センサ62(部材位置検出手段)が設けられている。このセレクト位置センサ62は、ECU2に電気的に接続されており、セレクタ14が正転位置及び逆転位置にあることを検出して、それを表す検出信号をECU2に出力する。ECU2は、後述するように、このセレクト位置センサ62の検出信号に基づき、セレクタ14が逆転位置にあるか否かを判定する。
シフトフォーク機構15は、図6に示すように、フォークシャフト15a、シフトフォーク15b及びシフトピース15cを一体に組み立てたものである。フォークシャフト15aは、中空の円筒状のものであり、図7(a)に示す低速段インギヤ位置と、図4に示す中立位置と、図7(b)に示す高速段インギヤ位置との間で軸線方向に摺動可能に設けられている。
また、フォークシャフト15aの左端部の上側には、3つの凹部15e,15f,15gが形成されており、これらの凹部15e〜15gに対応するミッションケースの部位には、デテント(図示せず)が設けられている。このデテントは、本出願人が特開2002−340184号公報で提案済みのものと同じように構成されており、フォークシャフト15aは、3つの凹部15e〜15gのいずれかがデテントに係合することにより、それに応じた位置に係止される。
この場合、セレクタ14が図4に示す中立位置にあるときには、デテントが中央の凹部15fに係合することで、フォークシャフト15aが図4に示す中立位置に保持される。それにより、セレクタ14も中立位置に保持される。また、セレクタ14が図7(a)に示すLシフト位置にあるときには、デテントが左側の凹部15eに係合することで、フォークシャフト15aが図7(a)に示す低速段インギヤ位置に保持される。それにより、セレクタ14もLシフト位置に保持される。
さらに、セレクタ14が図7(b)に示すHシフト位置にあるときには、デテントが右側の凹部15gに係合することで、フォークシャフト15aが図7(b)に示す高速段インギヤ位置に保持される。それにより、セレクタ14もHシフト位置に保持される。
また、シフトフォーク15bはフォークシャフト15aの中央部に固定され、シンクロ機構40のスリーブ42に嵌合している。シフトピース15cは、フォークシャフト15aからセレクタ14側に向かって延びており、その先端部には、凹部15dが形成されている。この凹部15dには、セレクタ14のアーム14bが係合しており、図8(a),(b)に示すように、この凹部15dの厚さは、セレクタ14が正転位置及び逆転位置のいずれにあるときでも、アーム14bがシフトピース15cと常に係合するようなサイズに設定されている。
また、シフトフォーク15bは、フォークシャフト15aが図4に示す中立位置にあるときには、シンクロ機構40を介して、低速段及び高速段をいずれもニュートラル状態とし、フォークシャフト15aが図7(a)に示す低速段インギヤ位置にあるときには、シンクロ機構40を介して、低速段をインギヤさせる。さらに、シフトフォーク15bは、フォークシャフト15aが図7(b)に示す高速段インギヤ位置にあるときには、シンクロ機構40を介して、高速段をインギヤさせる。
さらに、フォークシャフト15aの近傍には、シフト位置センサ63(部材位置検出手段)が設けられている。このシフト位置センサ63は、ECU2に電気的に接続されており、シフトフォーク15bが低速段インギヤ位置及び高速段インギヤ位置にあることを検出して、それを表す検出信号をECU2に出力する。
この場合、シフトフォーク15bが低速段インギヤ位置にあるときには、セレクタ14がLシフト位置にあることになり、シフトフォーク15bが高速段インギヤ位置にあるときには、セレクタ14がHシフト位置にあることになる。以上の原理により、ECU2は、後述するように、シフト位置センサ63の検出信号に基づき、セレクタ14がLシフト位置及びHシフト位置にあるか否かを判定する。
次に、以上のように構成された手動変速機10の動作について説明する。この手動変速機10では、運転者により、変速レバー11が図3に示すシフトパターンに沿って操作されることで、低速段位置「L」、高速段位置「H」、ニュートラル位置「N」及びリバース位置「R」のいずれかが選択される。
まず、変速レバー11がニュートラル位置「N」にあるときには、前述したように、セレクタ14は、デテントの機能によって、図4に示す中立位置に保持されるとともに、セレクト機構によって、図8に示す正転位置に保持される。
そして、変速レバー11がニュートラル位置「N」から低速段位置「L」までシフト操作された場合、セレクタ14は、シフト機構によって駆動されることにより、図4に示す中立位置から図7(a)に示すLシフト位置まで回動する。それに伴って、フォークシャフト15aが中立位置から低速段インギヤ位置に駆動され、シフトフォーク15bがシンクロ機構40のスリーブ42を低速段駆動ギヤ21側に駆動することにより、低速段がインギヤ状態となる。その際、デテントの機能により、フォークシャフト15aが低速段インギヤ位置に保持され、セレクタ14がLシフト位置に保持される。
この状態では、セレクタ14が正転位置にあることを表す検出信号が、セレクト位置センサ62からECU2に出力され、セレクタ14がLシフト位置にあることを表す検出信号が、シフト位置センサ63からECU2に出力される。
また、変速レバー11がニュートラル位置「N」から高速段位置「H」までシフト操作された場合、セレクタ14は、シフト機構によって駆動されることにより、図4に示す中立位置から図7(b)に示すHシフト位置まで回動する。それに伴って、フォークシャフト15aが中立位置から高速段インギヤ位置に駆動され、シフトフォーク15bがシンクロ機構40のスリーブ42を高速段駆動ギヤ22側に駆動することにより、高速段がインギヤされる。その際、デテントの機能により、フォークシャフト15aが高速段インギヤ位置に保持され、セレクタ14がHシフト位置に保持される。
この状態では、セレクタ14が正転位置にあることを表す検出信号が、セレクト位置センサ62からECU2に出力され、セレクタ14がHシフト位置にあることを表す検出信号が、シフト位置センサ63からECU2に出力される。この手動変速機10の場合、図3に示すシフトパターンを有しているので、変速レバー11が高速段位置「H」にシフト操作されたときにのみ、セレクタ14がHシフト位置に位置することになる。
また、変速レバー11によってリバース位置「R」を選択する場合、まず、変速レバー11がニュートラル位置「N」からリバース準備位置「R1」までセレクト操作される。その際、セレクタ14は、セレクト機構によって駆動されることにより、図5及び図8(a)に示す正転位置から図8(b)に示す逆転位置まで摺動し、それに伴い、セレクト位置センサ62からECU2に出力される検出信号は、セレクタ14が逆転位置にあることを表すものとなる。
次いで、変速レバー11がリバース準備位置「R1」からリバース位置「R」までシフト操作されると、セレクタ14は、シフト機構によって駆動されることにより、図4に示す中立位置から図7(a)に示すLシフト位置まで回動する。それに伴って、フォークシャフト15aが中立位置から低速段インギヤ位置に駆動され、シフトフォーク15bがシンクロ機構40のスリーブ42を低速段駆動ギヤ21側に駆動することにより、低速段がインギヤ状態となる。その際、デテントの機能により、フォークシャフト15aが低速段インギヤ位置に保持され、セレクタ14がLシフト位置に保持される。この状態では、セレクタ14がLシフト位置にあることを表す検出信号が、シフト位置センサ63からECU2に出力される。
以上のように、変速レバー11がリバース位置「R」にある状態では、セレクタ14が逆転位置にあることを表す検出信号が、セレクト位置センサ62からECU2に出力され、セレクタ14がLシフト位置にあることを表す検出信号が、シフト位置センサ63からECU2に出力されることになる。
さらに、ECU2には、アクセル開度センサ64、バッテリセンサ65及び警告ブザー66(報知手段)が電気的に接続されている。電気自動車Vは、図示しないアクセルペダルを備えており、アクセル開度センサ64は、運転者によるアクセルペダルの踏み込み量(以下「アクセル開度」という)APを検出して、それを表す検出信号をECU2に出力する。
また、バッテリセンサ65は、バッテリ6に入出力される電流・電圧値を表す検出信号をECU2に出力する。ECU2は、このバッテリセンサ65の検出信号に基づき、バッテリ6における電力の蓄積状態を表す充電状態SOCを算出する。
さらに、警告ブザー66は、電気自動車Vの図示しないインストルメント・パネル内に設けられている。ECU2は、後述するように、モータ制御処理の実行中、変速レバー11が誤操作されたときには、それを運転者に報知するために、警告音を警告ブザー66から出力させる。
一方、ECU2は、CPU、RAM、ROM及びI/Oインターフェース(いずれも図示せず)などからなるマイクロコンピュータで構成されており、前述した各種のセンサ60〜65の検出信号などに応じて、以下に述べように、モータ制御処理などの各種の制御処理を実行する。なお、本実施形態では、ECU2が、部材位置検出手段、電動機制御手段、回転方向検出手段、車速検出手段、誤操作判定手段及び報知手段に相当する。
以下、図9を参照しながら、モータ制御処理について説明する。このモータ制御処理は、モータ4の運転状態を制御するものであり、ECU2によって所定の制御周期ΔT(例えば10msec)で実行される。
同図に示すように、まず、ステップ1(図では「S1」と略す。以下同じ)で、変速位置判定処理を実行する。この変速位置判定処理は、前述したセレクト位置センサ62及びシフト位置センサ63の検出信号に基づいて、変速レバー11の変速位置を判定するとともに、その判定結果に基づいて、モータ4の運転状態を決定するものであり、具体的には、図10に示すように実行される。
同図に示すように、まず、ステップ20で、シフト位置センサ63の検出信号に基づき、セレクタ14がHシフト位置にあるか否かを判別する。この判別結果がYESのとき、すなわち変速レバー11が高速段位置「H」にあるときには、電気自動車Vを前進走行させるために、モータ4を正転側に力行制御すべきであると判定して、それを表すために、ステップ21に進み、正転フラグF_FWDを「1」に設定すると同時に、逆転フラグF_RVSを「0」に設定した後、本処理を終了する。
一方、ステップ20の判別結果がNOで、セレクタ14がHシフト位置にないときには、ステップ22に進み、シフト位置センサ63の検出信号に基づき、セレクタ14がLシフト位置にあるか否かを判別する。
この判別結果がYESのときには、ステップ23に進み、セレクト位置センサ62の検出信号に基づき、セレクタ14が逆転位置にあるか否かを判別する。この判別結果がNOで、セレクタ14がLシフト位置にありかつ正転位置にあるとき、すなわち変速レバー11が低速段位置「L」にあるときには、電気自動車Vを前進走行させるために、モータ4を正転側に力行制御すべきであると判定して、前述したように、ステップ21を実行した後、本処理を終了する。
一方、ステップ23の判別結果がYESで、セレクタ14がLシフト位置にありかつ逆転位置にあるとき、すなわち変速レバー11がリバース位置「R」にあるときには、電気自動車Vを後進走行させるために、モータ4を逆転側に力行制御すべきであると判定して、それを表すために、ステップ24に進み、逆転フラグF_RVSを「1」に設定すると同時に、正転フラグF_FWDを「0」に設定した後、本処理を終了する。
一方、前述したステップ22の判別結果がNOのとき、すなわち変速レバー11がニュートラル位置「N」にあるか又はノーポジション状態にあるときには、モータ4におけるトルク発生および発電を中止すべきであると判定して、それを表すために、ステップ25に進み、正転フラグF_FWD及び逆転フラグF_RVSをいずれも「0」に設定した後、本処理を終了する。
図9に戻り、ステップ1で、変速位置判定処理を以上のように実行した後、ステップ2に進み、正転フラグF_FWDが「1」であるか否かを判別する。この判別結果がNOのときには、ステップ3に進み、逆転フラグF_RVSが「1」であるか否かを判別する。
この判別結果がNOのときには、ステップ4に進み、モータ4のゼロトルク制御処理を実行する。このゼロトルク制御処理では、モータ4がトルクを発生せずかつ電力も発生しないように、モータ4への供給電力が制御される。ステップ4で、ゼロトルク制御処理を以上のように実行した後、本処理を終了する。
一方、ステップ3の判別結果がYESのときには、ステップ5に進み、NMOT>0が成立しているか否かを判別する。この判別結果がNOのとき、すなわちモータ4が回転停止状態にあるか又はモータ4が逆転中であるときには、ステップ6に進み、モータ4の逆転制御処理を実行する。
この逆転制御処理では、アクセル開度AP及び車速VPに応じて、モータ回転速度NMOTの目標値NMOTcmd(この場合は負値)を算出し、モータ回転速度NMOTが目標値NMOTcmdになるように、モータ4が力行制御される。それにより、電気自動車Vが後進走行する。ステップ6で、逆転制御処理を以上のように実行した後、本処理を終了する。
一方、ステップ5の判別結果がYESで、モータ4が正転中であるときには、ステップ7に進み、車速VPが所定値VHより小さいか否かを判別する。この所定値VHは、低速側の値に設定されている。
このステップ7の判別結果がYESのときには、運転者が電気自動車Vを前進走行状態から後進走行状態に切り換えようとしていると判定して、ステップ8に進み、充電状態SOCが所定の上限値SOCH未満であるか否かを判別する。
この判別結果がNOで、SOC≧SOCHが成立しているときには、バッテリ6への充電が不可能な状態にあると判定して、前述したように、ステップ4を実行した後、本処理を終了する。
一方、ステップ8の判別結果がYESのときには、バッテリ6への充電を実行すべきであると判定して、ステップ9に進み、モータ4の回生制御処理を実行した後、本処理を終了する。それにより、電気自動車Vの前進走行中、モータ4で発生した電力がバッテリ6に充電される。
一方、ステップ7の判別結果がNOで、VP≧VHが成立しているときには、運転者によって、変速レバー11がリバース位置「R」に誤操作されたと判定して、ステップ10に進み、それを運転者に報知するために、警告ブザー66を駆動し、警告音を出力する。
次いで、ステップ11に進み、モータ4の正転制御処理を実行する。この正転制御処理では、アクセル開度AP及び車速VPに応じて、モータ回転速度NMOTの目標値NMOTcmd(この場合は正値)を算出し、モータ回転速度NMOTが目標値NMOTcmdになるように、モータ4が力行制御される。それにより、電気自動車Vが前進走行する。ステップ11で、正転制御処理を以上のように実行した後、本処理を終了する。
一方、前述したステップ2の判別結果がYESのとき、すなわちモータ4が正転中であるときには、上述したように、ステップ11で、モータ4の正転制御処理を実行した後、本処理を終了する。
以上のように、本実施形態の動力伝達装置1によれば、運転者の変速レバー11の操作によって、低速段位置「L」が選択された場合、セレクタ14がLシフト位置及び正転位置に位置する状態となり、それに伴って、低速段がインギヤされるとともに、2つのセンサ62,63の検出信号に基づき、正転フラグF_FWDが「1」に設定され、逆転フラグF_RVSが「0」に設定される。それにより、ステップ11で、正転制御処理が実行され、電気自動車Vが前進走行する。
これと同様に、運転者の変速レバー11の操作によって、高速段位置「H」が選択された場合、セレクタ14がHシフト位置及び正転位置に位置する状態となり、それに伴って、高速段がインギヤされるとともに、2つのセンサ62,63の検出信号に基づき、正転フラグF_FWDが「1」に設定され、逆転フラグF_RVSが「0」に設定される。それにより、ステップ11で、正転制御処理が実行され、電気自動車Vが前進走行する。
一方、運転者の変速レバー11の操作によって、リバース位置「R」が選択された場合、セレクタ14がLシフト位置及び逆転位置に位置する状態となり、それに伴って、低速段がインギヤされるとともに、2つのセンサ62,63の検出信号に基づき、逆転フラグF_RVSが「1」に設定され、正転フラグF_FWDが「0」に設定される。それにより、モータ4が逆転中のときには、ステップ6で、逆転制御処理が実行され、電気自動車Vが後進走行する。以上のように、特許文献1の動力伝達装置と異なり、切換スイッチによる正転/逆転の切換動作を行うことなく、変速レバー11の操作のみによって、モータ4の正転と逆転を切り換えることができる。それにより、モータ4の正転/逆転を切り換える際の操作を容易にかつ迅速に実行することができるとともに、切換スイッチが不要となることで、部品点数を削減でき、その分、製造コストを削減することができる。その結果、商品性を向上させることができる。
また、F_RVS=1とF_FWD=0が成立している場合において、モータ4が正転中で、VP<VHとSOC<SOCHが成立しているときには、モータ4の回生制御処理が実行されるので、電気自動車Vが前進走行状態から後進走行状態に切り換わる際において、前進走行から停車するまでの間、電気自動車Vを回生ブレーキによって制動しながら、回生電力をバッテリ6に充電することができる。それにより、電気自動車Vが停止するまでの制動距離を短縮できるとともに、電力消費量を低減することができる。その結果、商品性をさらに向上させることができる。
さらに、F_RVS=1とF_FWD=0が成立している場合において、モータ4が正転中で、VP≧VHが成立しているときには、運転者の誤操作が発生したと判定されることで、ステップ10で、警告ブザー66が駆動され、警告音が出力されるので、運転者の誤操作状態が継続するのを回避できる。これに加えて、誤操作が発生したと判定されたときに、ステップ11で、正転制御処理が実行されるので、電気自動車Vが低速走行中でない場合において、モータ4が正転制御状態から逆転制御状態に切り換わるのを回避できる。それにより、モータ4の正転制御から逆転制御への切り換えに起因して、電気自動車Vの挙動が不安定になるのを回避でき、電気自動車Vの走行安定性を向上させることができる。以上により、商品性をさらに向上させることができる。
なお、実施形態の手動変速機10に代えて、図11〜14に示す手動変速機10Aを用いてもよい。図11〜14に示すように、この手動変速機10Aでは、その一部が前述した手動変速機10と同様に構成されているので、以下、同じ構成については、同じ符号を付すとともに、その説明は省略する。
この手動変速機10Aは、誤操作防止機構70を備えている。この誤操作防止機構70は、変速レバー11のリバース位置「R」への誤操作を防止するためのものであり、ストッパ71、ガイドプレート72、コイルばね73及びばね座74などで構成されている。
ストッパ71は、円筒状のものであり、その内孔を介して、変速レバー11のレバー部11bに摺動可能な状態で嵌合しているとともに、その上端部がフランジ部71aになっている。
ばね座74は、変速レバー11のノブ11aの下側に取り付けられており、コイルばね73は、このばね座74とフランジ部71aとの間に圧縮状態で装着されている。ストッパ71は、このコイルばね73の付勢力により、常時は、その底面がシフトゲートパネル12の上面に当接した状態に保持されているとともに、その外径が案内孔12aの幅よりも大きく構成されている。
また、ガイドプレート72は、シフトゲートパネル12の上面に固定されており、案内孔72aを有している。この案内孔72aは、シフトゲートパネル12の案内孔12aとほぼ同一の形状を有しており、低速段位置「L」と高速段位置「H」との間の部位の幅が、案内孔12aの幅よりも広くかつストッパ71の外径よりも若干、大きいサイズに設定されている。
次に、以上のように構成された手動変速機10A及び誤操作防止機構70の動作について説明する。この手動変速機10Aの場合、低速段位置「L」を選択するために、運転者が変速レバー11をニュートラル位置「N」から低速段位置「L」側に向かって操作した場合、ストッパ71が案内孔72aに沿って移動し、かつ変速レバー11のレバー部11bが案内孔12aに沿って移動することにより、変速レバー11は、図12に実線で示すよに、低速段位置「L」までスムーズに移動する。
これと同様に、高速段位置「H」を選択するために、運転者が変速レバー11をニュートラル位置「N」から高速段位置「H」側に向かって操作した場合も、変速レバー11は、図12に2点鎖線で示すように、高速段位置「H」までスムーズに移動する。
一方、リバース位置「R」を選択する場合、変速レバー11がニュートラル位置「N」にある状態で、図13に示すように、運転者がコイルばね73の付勢力に抗しながら、ストッパ71のフランジ部71aを指で上方に持ち上げると、ストッパ71の底面がガイドプレート72の上面よりも若干、上方の位置まで持ち上がった状態となる。
その状態で、変速レバー11をリバース準備位置「R1」側に操作すると、変速レバー11のレバー部11bが案内孔12aに沿って移動することにより、変速レバー11は、図14に2点鎖線で示すように、リバース準備位置「R1」までスムーズに移動する。さらに、変速レバー11をリバース準備位置「R1」からリバース位置「R」側に操作すると、変速レバー11は図14に破線で示すように、リバース位置「R」までスムーズに移動する。
一方、運転者がストッパ71を上方に持ち上げることなく、変速レバー11をニュートラル位置「N」からリバース準備位置「R1」側に操作した場合、上述したように、コイルばね73の付勢力により、ストッパ71の底面がシフトゲートパネル12の上面に当接した状態に保持されていることと、ストッパ71の外径が案内孔12aの幅よりも大きいことに起因して、ストッパ71が案内孔12aの縁に当接し、リバース準備位置「R1」側への移動が阻止される。すなわち、リバース位置「R」への誤操作を防止することができる。
なお、実施形態は、部材位置検出手段として、セレクト位置センサ62及びシフト位置センサ63を用いた例であるが、本発明の部材位置検出手段はこれに限らず、第1可動部材の位置を検出できるものであればよい。例えば、シフト位置センサ63に代えて、セレクタ14の回動角度を検出するセンサを設け、このセンサとセレクト位置センサ62とを併せて、部材位置検出手段として用いてもよい。
また、実施形態は、本発明の動力伝達装置を電動機器としての電気自動車に適用した例であるが、本発明の動力伝達装置はこれに限らず、電動機を動力源とする電動機器に適用可能である。例えば、本願発明の動力伝達装置を電動式の耕耘機、電動式の雪上車及び電動式の船舶などに適用してもよい。
さらに、実施形態は、本発明の動力伝達装置を4輪タイプの電気自動車に適用した例であるが、本発明の動力伝達装置はこれに限らず、2輪又は6輪以上の電動車両や、無限軌道タイプの電動車両にも適用可能である。
一方、実施形態は、手動変速機として、低速段及び高速段を備えたものを用いた例であるが、本発明の手動変速機はこれに限らず、複数の変速段を備えたものをであればよい。例えば、手動変速機として、3速段以上の変速段を備えたものを用いてもよい。
また、実施形態は、所定の第1シフト位置をLシフト位置とした例であるが、所定の第1シフト位置をHシフト位置としてもよく、その場合には、手動変速機10のリバース位置「R」を高速段位置「H」側に配置するとともに、セレクタ14がHシフト位置にありかつ逆転位置にあるときに、モータ4の逆転制御処理を実行すればよい。