JP6338110B2 - はすば歯、及び、はすば歯車の製造方法 - Google Patents
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外周部にはす歯が形成されたリムと、
前記リムの内周部から歯車中心側に張り出す内側フランジとを備える環状のはすば歯車、及び、はすば歯車の製造方法に関する。
そして、前記内側フランジ4にデフケース2の取り付けフランジ11が重ねられ、前記ボルト挿通孔5と取り付けフランジ11のボルト挿通孔16とに挿通されたボルトB(締結部材に相当)により、前記内側フランジ4に前記取り付けフランジ11が締結固定される。
従来、前記内側フランジ4の両フランジ面は扁平に形成されていたために(図13及び特許文献1参照)、内側フランジ4の強度が十分ではなかった。
そのために、内側フランジ4にボルト挿通孔5を形成した後に浸炭焼き入れ等の熱処理を行うと、図14に示すように、熱処理油へのはすば歯車1の浸漬における急冷時に、はす歯1Tの影響で(すなわち、歯がはすば歯車1の軸線Oに対して傾斜していることに起因して)ねじれ変形が発生し、はすば歯車1の軸線Oと直交する方向から見たときに、8の字にねじれた形状となりやすい(図14は、歪を誇張して描いてある)。
このねじれ変形により、リム3の端面及び内側フランジ4のフランジ面に面振れが発生し、それに伴い、はす歯1Tの歯面の歯筋誤差も大きくなる。前記歯筋誤差が大きくなることによって歯あたりが悪化し、騒音や振動を増大させる恐れがあった。
また、前記内側フランジ4と前記取り付けフランジ11の締結部に非常に大きな駆動力が加わるため、上記のようにはすば歯車1にねじれ変形が発生していると、締結部のボルトBに大きな力が加わり、騒音や振動がさ らに大きくなってしまう恐れや、締結部に破損が生じてしまう恐れがあった。
上記のねじれ変形を抑制するために、はすば歯車1に取り付けられるデフケース2の取り付けフランジ11を厚肉にすると重量が増大する。
一方、熱処理後に内側フランジ4に締結部材挿通孔5を加工することは、通常のボール盤等の工作機械では困難であることから、レーザ加工等によりボルト挿通孔5を形成することになる。しかしながら、この手段では製作コストが高くなる。また、熱処理は金属の表面を硬化するための処理であることから、熱処理後に内側フランジ4にボルト挿通孔5を形成することは好ましくない。
本発明は上記実状に鑑みて成されたもので、その目的は、熱処理前に内側フランジに複数の締結部材挿通孔が形成されている構造であっても、熱処理時の歪みを抑えることができ、結果的に、デフケース等の取り付け部品が取り付けられた場合に、騒音や振動を低減でき、さらに、デフケース等の取り付け部品との締結部材に局所的に大きな力が加わり、騒音や振動がさらに大きくなってしまう恐れや、締結部に破損が生じてしまう恐れが低減することができるはすば歯、及び、はすば歯車の製造方法を提供する点にある。
外周部にはす歯が形成されたリムと、
前記リムの内周部から歯車中心側に張り出す内側フランジとを備える環状のはすば歯車であって、
前記内側フランジに複数の締結部材挿通孔が周方向に分散配設され、
前記リムの内周部と前記複数の締結部材挿通孔との間のフランジ面に、前記歯車中心を挟んで位置する一対のリブが、一組又は複数組、立設されている点にある。(請求項1)
その結果、熱処理前に内側フランジに複数の締結部材挿通孔が周方向に分散配設されていても、熱処理時の内側フランジのねじれ変形を小さくすることができ、歯筋誤差を小さくすることができて、熱処理によるはすば歯車の歪みを抑制することができる。
これにより、本発明のはすば歯車に取り付け部品が取り付けられた場合に、騒音や振動を低減することができる。また、はすば歯車の回転方向の力を各リブにも分散することができる。そのため、例えば回転方向の力の一部を各リブで担うことができ、締結部材(例えばボルト)の個数を減らし軽量化できる。さらに例えば締結部材(例えばボルト)に局所的に大きな力が加わることを抑制できるため、振動・騒音が発生することや、締結部が破損することを防げる。
さらに、前記リブを取り付け部品に対するガイドとして使用し、リブに沿うように前記取り付け部品を移動させて、本発明のはすば歯車に取り付けることにより、はすば歯車に対して取り付け部品を正確に位置決めして取り付けることができる。
そして、はすば歯車のねじれ変形を抑制することで、内側フランジを薄肉にすることができ、はすば歯車を軽量化することができる。(請求項1)
前記複数の締結部材挿通孔は前記周方向に等間隔に分散配設され、
前記リブの長さは、隣り合う一対の締結部材挿通孔の前記周方向の間隔よりも長く設定されていると、次の作用を奏することができる。(請求項2)
(請求項2)
前記リブの両端は前記リムの内周部に連なっていると、次の作用を奏することができる。(請求項3)
前記リブは前記内側フランジの両フランジ面に立設されていると、次の作用を奏することができる。(請求項4)
前記内側フランジの一方のフランジ面に立設されたリブと、他方のフランジ面に立設されたリブとは、前記内側フランジの厚さ方向において重ならない位置に配置されていると、次の作用を奏することができる。(請求項5)
自動車のトランスミッション部品に使用されると、次の作用を奏することができる。(請求項6)
請求項1〜6のいずれか一つに記載のはすば歯車を製造する方法であって、
前記はすば歯車を溶媒に浸漬する熱処理工程を備え、
この熱処理工程において、前記はすば歯車は、前記リブが前記溶媒の液面に対して傾斜した姿勢で前記溶媒に浸漬されるはすば歯車の製造方法である点にある。(請求項7)
これに対して、本発明の上記構成によれば、次の作用を奏することができる。
例えば、図6に示すように、はすば歯車1の軸線方向視で、歯車中心Oを中心として時計周りに、頂点から0°、90°,180°,270°の位置を定めたとき、フランジ面のリブ6を、0°〜90°間と、180°〜270°間に配置し、90°の位置と270°の位置とを結ぶ横軸に対して右下がりに45°傾斜させておく。
そして、前記横軸と直交する上方からはすば歯車1を下降させて溶媒15に浸漬する。このように、前記リブ6を溶媒15の液面15Mに対して傾斜させた状態で、はすば歯車1を溶媒15に浸漬させる。
これにより、前記横軸に沿うA方向からはすば歯車1を見た状態で、はすば歯車1の上半部が左側に膨らもうとした場合、上側の傾斜したリブ6が、膨らみ予想部位の上側から下側にわたって位置することになり、このリブ6により前記上半部の膨らみを効果的に抑制することができる。
また、はすば歯車1の下半部が右側に膨らもうとした場合、下側の傾斜したリブ6が、膨らみ予想部位の上側から下側にわたって位置することになり、このリブ6により前記下半部の膨らみを効果的に抑制することができる。
その結果、はすば歯車1が8の字にねじれた形状となることを回避することができて、はすば歯車1の歪みを効果的に抑制することができる。(請求項7)
熱処理前に内側フランジに複数の締結部材挿通孔が形成されている構造であっても、熱処理時の歪みを抑えることができ、結果的に、デフケース等の取り付け部品が取り付けられた場合に、騒音や振動を低減でき、
さらに、デフケース等の取り付け部品との締結部材に局所的に大きな力が加わり、騒音や振動がさらに大きくなってしまう恐れや、締結部に破損が生じてしまう恐れが低減することができるはすば歯、及び、はすば歯車の製造方法を提供することができた。
図1(a),図1(b),図2(b),図3に、自動車のトランスミッション部品のファイナルギアとして使用される環状のはすば歯車1を示してある。このはすば歯車1には、前記トランスミッション部品の一部であるデファレンシャル部のデフケース2が取り付けられる。
デフケース2は、はすば歯車1に取り付けられる円形の取り付けフランジ11と、回転軸に嵌合(外嵌)する円筒状の嵌合部17とを備えている。図2(a)に示すように、デフケース2の取り付けフランジ11にボルト挿通孔16が形成されるとともに、取り付けフランジ11の外周部に、デフケース2の中心を挟んで位置する一対の扁平部11Hが、デフケース2の中心O(はすば歯車1の歯車中心0と共通の中心)に対して点対称に形成されている。
はすば歯車1は、外周部にはす歯1Tが形成されたリム3と、リム3の内周部3Nの幅方向中央部から歯車中心O側に張り出す内側フランジ4と、中心孔1Hとを備えている。リム3の幅方向と、はすば歯車1の中心線に沿う方向(以下「はすば歯車1の軸線方向」と称する)とは一致する。
図2(b),図3に示すように、デフケース2の取り付けフランジ11が前記はすば歯車1の内側フランジ4に重ねられるとともに、デフケース2の一対の扁平部11Hが、はすば歯車1の内側フランジ4の一対のリブ6に嵌合(内嵌)している。
(1) 前記リム3の内周部3Nと前記複数のボルト挿通孔5との間のフランジ面4Mに、歯車中心Oを挟んで位置する一対のリブ6が立設されているから、前記内側フランジ4の強度が増加して、内側フランジ4がねじれ変形に抵抗することができるようになる。
その結果、熱処理前に内側フランジ4に複数のボルト挿通孔5が周方向に分散配設されていても、熱処理時の内側フランジ4のねじれ変形を小さくすることができ、歯筋誤差を小さくすることができて、熱処理によるはすば歯車1の歪みを抑制することができる。
これにより、本発明のはすば歯車1に、取り付け部品としてのデフケース2が取り付けられた場合に、騒音や振動を低減することができる。また、はすば歯車1の回転方向の力を各リブ6にも分散することができる。そのため、例えば回転方向の力の一部を各リブ6で担うことができ、ボルトの個数を減らし軽量化できる。さらに例えばボルトに局所的に大きな力が加わることを抑制できるため、振動・騒音が発生することや、締結部が破損することを防げる。
さらに、デフケース2の一対の扁平部11Hを、前記一対のリブ6に各別に沿うようにリブ6に対してスライド移動させながら、デフケース2をはすば歯車1に取り付けることにより、デフケース2をはすば歯車1に対して正確に位置決めして取り付けることができる。
そして、はすば歯車1のねじれ変形を抑制することで、内側フランジ4を薄肉にすることができ、はすば歯車1を軽量化することができる。
本発明者は、各リブ6の位置が異なる第1〜第6の6個のはすば歯車1を製作し、熱処理変形の解析を行った。
[1] 第1のはすば歯車1〜第6のはすば歯車1の共通点
第1のはすば歯車1〜第6のはすば歯車1は、いずれも、外径200mm、歯幅27mm、内側フランジ4の厚さ8mm、リブ6の厚さ5mm、リブ高さ(リブの高さ寸法)9.5mmである。
[第1のはすば歯車1]
図4(a)に示すように、前記リブ6は、内側フランジ4の表側のフランジ面4Mと裏側のフランジ面4Mのいずれの面にも形成されている。いずれのフランジ面4Mのリブ6も、前記0°〜90°間と、前記180°〜270°間に位置し、前記横軸Xに対して右下がりに45°傾斜している。つまり、表側のフランジ面4Mに形成されたリブ6と、裏側のフランジ面4Mに形成されたリブ6とは、内側フランジ4の厚さ方向から見て重なっている。
図4(b)に示すように、いずれのフランジ面4Mのリブ6も、前記90°〜180°間と、前記270°〜0°間に位置し、前記横軸Xに対して右上がりに45°傾斜している。その他の点は第1のはすば歯車1と同じである。
図4(c)に示すように、前記リブ6は、表側のフランジ面4Mと裏側のフランジ面4Mのいずれの面にも形成されている。表側のフランジ面4Mのリブ6は、前記0°〜90°間と、前記180°〜270°間に位置し、前記横軸Xに対して右下がりに45°傾斜している。裏側のフランジ面4Mのリブ6は、前記90°〜180°間と、前記270°〜0°間に位置し、前記横軸Xに対して右上がりに45°傾斜している。つまり、前記表側のフランジ面4Mに立設されたリブ6と、裏側のフランジ面4Mに立設されたリブ6とは、前記内側フランジ4の厚さ方向において重ならない位置に配置されている。
図4(d)に示すように、前記リブ6は、表側のフランジ面4Mと裏側のフランジ面4Mのいずれの面にも形成されている。表側のフランジ面4Mのリブ6は、前記90°〜180°間と、前記270°〜0°間に位置し、前記横軸Xに対して右上がりに45°傾斜している。裏側のフランジ面4Mのリブ6は、前記0°〜90°間と、前記180°〜270°間に位置し、前記横軸Xに対して右下がりに45°傾斜している。つまり、前記表側のフランジ面4Mに立設されたリブ6と、裏側のフランジ面4Mに立設されたリブ6とは、前記内側フランジ4の厚さ方向において重ならない位置に配置されている。
図4(e)に示すように、前記リブ6は、内側フランジ4の表側のフランジ面4Mにのみ形成されている。また、前記リブ6は、前記0°〜90°間と、前記90°〜180°間と、前記180°〜270°間と、前記270°〜0°間に位置する。前記0°〜90°間と、前記180°〜270°間に位置するリブ6は、前記横軸Xに対して右下がりに45°傾斜している。前記90°〜180°間と前記270°〜0°間に位置するリブ6は、前記横軸Xに対して右上がりに45°傾斜している。
第6のはすば歯車1にはリブ6は形成されていない。前記第3のはすば歯車1から前記リブ6を取り除いた構造であり、図13に示す従来の構造のはすば歯車1である。
その結果、図5(a),図5(b)、表1に示すように、第3のはすば歯車1の面振れ量が0.073mmと最も小さく、リブ6が形成されていない第6のはすば歯車1(従来の構造のはすば歯車)の面振れ量が0.109mmと最も大きかった。
また、第1のはすば歯車1〜第5のはすば歯車1の面振れ量も、リブ6が設けられていない第6のはすば歯車1の面振れ量よりも小さかった。面振れ量とは、図5(a),図5(b)の波形の上端と下端との間の長さである。
(1) 前記一対のリブ6は、前記内側フランジ4の表裏一方のフランジ面4Mだけに立設されていてもよい。
図11に示すように、デフケース2の取り付けフランジ11の外周部には、前記一対の円弧状のリブ6に各別に嵌合(内嵌)する一対の嵌合凹部27が形成されて、前記一対の円弧状のリブ6が前記一対の嵌合凹部27に各別に嵌合している。これにより、はすば歯車1に加わる回転方向の力の伝達を、前記一対のリブ6と前記一対の嵌合凹部27とから成る嵌合部31で受け持つことができる。
図12に示すように、環状リブ33は多角形状(例えば六角形状)であってもよい。
前記デフケース2の取り付けフランジ11の外周部に、前記嵌合凹部27に換えて嵌合溝が形成されていてもよい。
対になるリブ6は、はすば歯車1が回転した際の回転モーメントを考慮するのであれば、歯車中心Oからの距離が同一で、前記横軸Xと成す角度も同一であることが好ましい。
2 トランスミッション部品(デフケース)
3 リム
3N リムの内周部
4 内側フランジ
4M フランジ面
5 締結部材挿通孔(ボルト挿通孔)
6 リブ
15 溶媒(熱処理油)
15M 溶媒の液面(熱処理油の液面)
O 歯車中心
Claims (7)
- 外周部にはす歯が形成されたリムと、
前記リムの内周部から歯車中心側に張り出す内側フランジとを備える環状のはすば歯車であって、
前記内側フランジに複数の締結部材挿通孔が周方向に分散配設され、
前記リムの内周部と前記複数の締結部材挿通孔との間のフランジ面に、前記歯車中心を挟んで位置する一対のリブが、一組又は複数組、立設されているはすば歯車。 - 前記複数の締結部材挿通孔は前記周方向に等間隔に分散配設され、
前記リブの長さは、隣り合う一対の締結部材挿通孔の前記周方向の間隔よりも長く設定されている請求項1記載のはすば歯車。 - 前記リブの両端は前記リムの内周部に連なっている請求項1又は2に記載のはすば歯車。
- 前記リブは前記内側フランジの両フランジ面に立設されている請求項1〜3のいずれか一つに記載のはすば歯車。
- 前記内側フランジの一方のフランジ面に立設されたリブと、他方のフランジ面に立設されたリブとは、前記内側フランジの厚さ方向において重ならない位置に配置されている請求項4に記載のはすば歯車。
- 自動車のトランスミッション部品に使用される請求項1〜5のいずれか一つに記載のはすば歯車。
- 請求項1〜6のいずれか一つに記載のはすば歯車を製造する方法であって、
前記はすば歯車を溶媒に浸漬する熱処理工程を備え、
この熱処理工程において、前記はすば歯車は、前記リブが前記溶媒の液面に対して傾斜した姿勢で前記溶媒に浸漬されるはすば歯車の製造方法。
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JP2015006949A JP6338110B2 (ja) | 2015-01-16 | 2015-01-16 | はすば歯、及び、はすば歯車の製造方法 |
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