JP6337568B2 - エンジンの吸気冷却構造 - Google Patents
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通常、車載空調装置に備えられる凝縮器は、エンジン動力で駆動される。このため、車載空調装置が冷房運転を開始すると、エンジン負荷が増大してエンジンの動力性能(エンジン回転数や出力トルク)が低下する。これを回復させるためには、エンジンに供給される空気量及び燃料噴射量を増加させなければならず、エネルギーの消費量が増大して燃費の悪化を招く。
一方、特許文献3に記載されたような技術では、車室内の温度や空調負荷は変化しないものの、排水を吸気配管まわりに巡らせるための構造が複雑となる。また、冷房運転時には常に吸気配管の周囲に排水が供給されるため、錆が発生する虞がある。この結果、吸気配管を耐食性の高い材料で複雑な形状に製造しなければならず、製造コストや部材重量の増加を招いてしまうため、現実的には適用が困難である。
なお、前記排水管と前記冷気管との分岐箇所には、三方分岐パイプを介装させることが好ましい。これにより、既存の排水管から冷気管を容易に分岐させることができる。
(3)前記分岐箇所には、三方分岐パイプが介装されていることが好ましい。
[1−1.全体構成]
本実施形態のエンジンの吸気冷却構造は、図1に例示するエンジン6に適用されている。このエンジン6は、車両に搭載され、内部で燃料と空気とを燃焼させることで車両に動力を生じるものである。エンジン6で生じた動力は、主として車両の走行に使用されるが、車両の車室内の温度や湿度を調節するHVAC(Heater, Ventilator and Air Conditioner,車載空調装置)1を駆動するためにも使用される。
なお、図1には、本実施形態のエンジンの吸気冷却構造の主要な構成要素を実線で示し、他の構成要素を破線で示す。
エバポレータ11は、冷媒を減圧して気化させることによって吸熱するものであり、HVAC1の冷房装置として機能する。つまりエバポレータ11は、HVAC1の冷房運転時に車室内に供給される空気を冷却するものである。
エバポレータ11の近傍には、エバポレータ11で発生する凝結水7を車外に排出するための排水管2が配置される。排水管2は、ここではHVAC1のケース底面部12から車外に向かって延設されている。
エアクリーナ5の内部には、吸気の流路を横切るように配置されたフィルタ53が設けられている。フィルタ53は、これを通過する空気中に含まれる埃や水分を捕集,除去するものであり、接続ダクト51と吸気ダクト52との間に介装される。
エアクリーナ5には、排水管2から分岐した冷気管4をエンジン6の吸気系に接続するための冷気口54が設けられている。冷気口54は、吸気の流れ方向を基準として、フィルタ53よりも上流側でエアクリーナ5のケース上面部55を貫通するように形成されている。
図2に示すように、三方分岐パイプ3は、基点からそれぞれ異なる方向に向かって直線状に延設された三本のパイプ部31,32,33を備えている。各パイプ部31,32,33は、何れも横断面が同様の円形閉断面をなす管状に形成されている。
図1に示すように、排水管2は、エバポレータ11から車外に向かって凝結水7の流路を形成するものである。ここでは排水管2が、凝結水7の流れ方向を基準として、上流側(エバポレータ11側)に設けられる上流管21と、上流管21の下流側に設けられる三方分岐パイプ3との二部材で構成されている。
上流管21の上流端部21aと下流端部21bとの間の部分は、エンジン6やHVAC1などの周辺部材の形状及び配置に応じて、これらと干渉しないような適宜の形状及び配置とされる。ただし、凝結水7を車外に向けて円滑に排出するという観点から、ここでは上流管21が、下流側に向かって常に下方に向かうように延設されている。
図1に示すように、冷気管4は、排水管2から分岐してエンジン6の吸気系に接続され、排水管2内の冷気をエンジン6の吸気系へと導くものである。ここでは冷気管4が、冷気の流れ方向を基準として、上流側(分岐箇所P側)に設けられる三方分岐パイプ3と、三方分岐パイプ3の下流側に設けられる下流管41との二部材で構成されている。
なお、下流管41の上流端部41aと下流端部41bとの間の部分は、エンジン6やHVAC1などの周辺部材の配置や形状に応じて、これらと干渉しないような適宜の形状及び配置とされる。
以下、本実施形態のエンジンの吸気冷却構造に係る作用について説明する。
HVAC1の冷房運転時、エバポレータ11が駆動されると、エバポレータ11の表面温度が低下する。これによって、エバポレータ11の表面には結露が生じ、低温の凝結水7が付着する。この凝結水7は、その量が増加するとエバポレータ11の表面からケース底面部12上に滴下する。そして、ケース底面部12上に溜まった凝結水7は、排水口12aから排水管2に流出する。このとき、凝結水7とともにエバポレータ11で冷却された空気(冷気)の一部が一緒にHVAC1内から排水口12aを通じて排水管2の内部に流れ込む。そのため、排水管2内の空気は、凝結水7と冷気とによって常に冷却されている。
これに対し冷気は、分岐箇所Pまで達すると、上述の吸気負圧によって低圧なエンジン6側に吸入されて、冷気管4内に流入する(図2中の白抜き矢印参照)。つまり、この分岐箇所Pでは、凝結水7は下方に向かって流れるのに対し、冷気は上方に向かって流れることで、両者が分離される。
エアクリーナ5の内部に流れ込んだ冷気は、吸気ダクト52を通じてエアクリーナ5内に取り込まれた吸気と共に、フィルタ53を通過する。このとき、冷気中に含まれる埃や過剰な水分がフィルタ53によって捕集される。そして吸気は、この冷気を含むことによって温度が低減され、高密度な状態で接続ダクト51内を流下してエンジン6に供給される。
(1)上記のエンジンの吸気冷却構造は、排水管2内の冷気をエンジン6の吸気系へと導く冷気管4を備えているので、従来排出していた排水管2内の冷気を利用してエンジン6の吸気温度を低減させることができる。これにより、充填効率や体積効率を増大させてエンジン出力を向上させることができる。したがって、燃費を悪化させることなくエンジンの動力性能を高めることができる。ゆえに、エンジン負荷の大きい冷房運転時に、特に有益な効果を得ることができる。
また、冷気はエンジン6の吸気負圧でエンジン6側に吸入されるため、冷気の流量や流通方向の制御が不要である。つまり、電子制御装置や制御弁などを設ける必要がなく、排水管2と吸気系との間を冷気管4で接続するだけでよいので、簡素な構成とすることができ、低コスト化が図れる上に既存のエンジンへの適用が容易である。
(3)また、上記のエンジンの吸気冷却構造では、冷気管4が吸気系に介装されたエアクリーナ5のフィルタ53よりも上流側に接続されている。このため、冷気中の水蒸気をよりフィルタ53で確実に捕集することができる。これにより、冷気中の水蒸気がエンジン6に供給されてしまうことを防止できる。
上述した実施形態に関わらず、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。本実施形態の各構成は、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせてもよい。
また、上記には分岐箇所Pに三方分岐パイプ3を介装させるものを例示したが、三方分岐パイプ3を使用せずに排水管2から冷気管4を分岐させてもよい。例えば、冷気管4を排水管2に対して直接的に接続してもよいし、排水管2及び冷気管4を一体で成形してもよい。
また、冷気管4の形状も上記のものに限定されない。冷気管4は、例えば全長に亘って直線状に延設されてもよいし、蛇行した形状に形成されてもよい。また、冷気管4は、少なくとも排水管2から分岐してエンジン6の吸気系に接続されるものであればよく、その下流端部41bの接続先は、エアクリーナ5に限らず例えば吸気ダクト52や、エアクリーナ5(フィルタ53)の下流側の接続ダクト51であってもよい。この場合も、冷気管4を通じて排水管2内の冷気をエンジン6の吸気系に導くことにより、吸気温度を低減させることができる。
11 エバポレータ(蒸発器)
2 排水管
3 三方分岐パイプ
4 冷気管
5 エアクリーナ
53 フィルタ
6 エンジン
7 凝結水
P 分岐箇所
Claims (3)
- 車載空調装置に内蔵され、車室内に供給される空気を冷却する蒸発器と、
前記蒸発器で発生する凝結水を車外に排出する排水管と、
前記排水管から分岐してエンジンの吸気系に接続され、前記排水管内の冷気を前記吸気系へと導く冷気管と、を備え、
前記排水管が、前記冷気管との分岐箇所から下方に向かって延設された一部を有し、
前記冷気管が、前記分岐箇所から上方に向かって延設された一部を有し、
前記排水管の前記一部と前記冷気管の前記一部とが、互いに反対方向に延びるように直線状に配置される
ことを特徴とする、エンジンの吸気冷却構造。 - 前記冷気管が、前記吸気系を構成するエアクリーナのフィルタよりも上流側に接続される
ことを特徴とする、請求項1に記載のエンジンの吸気冷却構造。 - 前記分岐箇所には、三方分岐パイプが介装されている
ことを特徴とする、請求項1または2に記載のエンジンの吸気冷却構造。
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