JP6331911B2 - 現像装置の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、電子写真方式の画像形成装置に用いられる現像装置及びそれを用いた画像形成装置に関し、特に、トナーと磁性キャリアを含む二成分現像剤を用い、トナー担持体上にトナーのみを担持させて感光体上の静電潜像を現像する現像装置に関するものである。
従来、電子写真プロセスを用いた画像形成装置における現像方式としては、主として粉末の現像剤が使用され、感光体ドラム等の像担持体上に形成された静電潜像を現像剤によって可視化し、その可視像(トナー像)を記録媒体上に転写した後、定着処理を行うプロセスが一般的である。
現像剤は、トナー及び磁性キャリアから成る二成分現像剤と、非磁性或いは磁性を帯びたトナーのみから成る一成分現像剤とに大別され、二成分現像剤を用いる現像方式としては、磁気ローラー(現像剤担持体)を用いて現像剤を感光体ドラム(像担持体)に対して非接触に設置した現像ローラー(トナー担持体)上に移行させる際に、磁気ローラー上に磁性キャリアを残したまま現像ローラー上に非磁性トナーのみを転移させてトナー薄層を形成し、交流電界によって感光体ドラム上の静電潜像にトナーを付着させる現像方式が知られている。
現像ローラー内部には磁気ローラーに対向する位置に現像ローラー磁極が配置される。一方、磁気ローラー内部には複数の磁極を有する固定マグネット体が配置されており、磁気ローラーに対向する位置には現像ローラー側磁極と異極性の主極が配置される。これにより、磁気ローラーと現像ローラーの対向部分において磁気ブラシが形成される。この磁気ブラシによって磁気ローラーと現像ローラーとの間でトナーの受け渡しが行われる。具体的には、現像に用いられずに残った現像ローラー上のトナー層が剥ぎ取られるとともに、現像ローラー上に新たなトナー層が形成される。
近年、磁気ローラーや現像ローラー内部に配置されるマグネットとして、例えば特許文献1に示すような樹脂材料中に磁性粉を分散させたプラスチックマグネットが使用されている。プラスチックマグネットは、ラバーマグネットと比較して、低容量で高磁力を確保できるという特徴を有する。
このプラスチックマグネットは射出成型により生産されるが、金型構成上の制約を受けて、金型内に樹脂材料を射出する射出ゲートをマグネットの端部に設けるのが一般的である。このとき、樹脂材料中に混合された磁性粉が射出ゲートと反対側(反ゲート側)に偏る傾向にあり、成型されたプラスチックマグネットは、ゲート側に比べて反ゲート側の磁力が高くなる。
特開2011−119769号公報
上述したようなプラスチックマグネットを現像ローラー内部の磁極、或いは磁気ローラー内部の固定マグネット体の主極として用いた場合、磁力の高い方の端部(反ゲート側)においてトナーを引き付ける磁気吸引力が強くなり、現像ローラーからのトナーの剥ぎ取り力も高くなる。そのため、現像ローラーの長手方向においてトナーの剥ぎ取り性能に差が生じ、現像ローラーの回転周期で現像ゴースト(現像履歴)が発生し易くなる。上記のトナーの剥ぎ取り性能の差は、プラスチックマグネットの長手方向における磁力勾配に起因するものであり、製造工程上、この磁力勾配を抑えることは困難である。
本発明は、上記問題点に鑑み、現像剤担持体およびトナー担持体内に配置されるマグネットの磁力勾配に起因するトナーの剥ぎ取り性のバラツキを簡易な構成で抑制できる現像装置及びそれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために本発明の第1の構成は、現像剤担持体と、トナー担持体と、
を備えた現像装置である。現像剤担持体は、回転可能な円筒状の回転スリーブと、回転スリーブ内に回転不能に固定され、複数の磁極を有する固定マグネット体と、を有し、磁性キャリアとトナーとを含む二成分現像剤を担持して表面に磁気ブラシを形成する。トナー担持体は、現像剤担持体及び静電潜像が形成される像担持体に対向して配置される回転可能な円筒状の現像スリーブと、現像スリーブ内に回転不能に固定され、現像スリーブと現像剤担持体との近接部に配置されるトナー担持体側磁極と、を有し、現像剤担持体の磁気ブラシを用いて表面にトナー層が形成される。固定マグネット体は、回転スリーブとトナー担持体との近接部に配置される主極を有する。現像スリーブは、長手方向の一端側から樹脂材料から成るコート液中にディッピングし、他端側から引き上げるディッピング法によって外周面にコート層を形成したものである。主極およびトナー担持体側磁極の少なくとも一方の長手方向において磁力が高い側に、現像スリーブのディッピング時における上端側が配置されている。
本発明の第1の構成によれば、現像剤担持体とトナー担持体との間の距離が広くなる側、即ち現像スリーブのディッピング時の上端側には主極およびトナー担持体側磁極の少なくとも一方の磁力の強い側が配置され、現像剤担持体とトナー担持体との間の距離が狭くなる側、即ち現像スリーブのディッピング時の下端側には主極およびトナー担持体側磁極の少なくとも一方の磁力の弱い側が配置される。その結果、主極およびトナー担持体側磁極の少なくとも一方の磁力勾配によって生じる、トナー担持体から現像剤担持体へのトナーの剥ぎ取り性能の差が、現像スリーブのコート層の膜厚の勾配によって相殺される。従って、トナー担持体の長手方向におけるトナー剥ぎ取り性能の差を解消することができ、トナー担持体の回転周期で発生する現像ゴーストを効果的に抑制可能となる。
本発明の現像装置8が搭載された画像形成装置100の概略構成図 本発明の一実施形態に係る現像装置8の側面断面図 本発明の現像装置8に用いられる現像ローラー33の側面断面図 現像ローラー33の断面拡大図 ディッピング法により現像スリーブ33aに形成されたコート層47の膜厚を示す縦断面図 主極N1、現像ローラー側磁極33bに用いるプラスチックマグネットの長手方向の磁力分布を示すグラフ 現像スリーブ33aの長手方向位置とコート層47の膜厚変動との関係を示すグラフ 実施例2で用いるリング状のベタ画像とハーフトーン画像が連続するテスト画像を示す図
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る現像装置8を備えた画像形成装置100の概略構成図である。図1において、画像形成装置100(ここでは一例としてデジタル複合機を示す)では、コピー動作を行う場合、後述する画像読取装置6において原稿の画像データを読み取り画像信号に変換する。一方、複合機本体2内の画像形成部3において、帯電ユニット4により図中のA方向に回転する感光体ドラム5が一様に帯電され、画像読取装置6で読み取られた原稿画像データに基づく露光ユニット(レーザー走査ユニット等)7からのレーザービームにより感光体ドラム5上に静電潜像が形成され、現像装置8により静電潜像にトナーが付着されてトナー像が形成される。この現像装置8へのトナーの供給はトナーコンテナ9から行われる。
上記のようにトナー像が形成された感光体ドラム5に向けて、用紙が給紙機構10から用紙搬送路11及びレジストローラー対12を経由して画像形成部3に搬送され、この画像形成部3において転写ローラー13(画像転写部)により感光体ドラム5の表面におけるトナー像が用紙に転写される。そして、トナー像が転写された用紙は感光体ドラム5から分離され、定着ローラー対14aを有する定着部14に搬送されてトナー像が定着される。定着部14を通過した用紙は、複数方向に分岐した用紙搬送路15に送られて、用紙搬送路15の分岐点に設けられた複数の経路切換ガイドを有する経路切換機構21、22によって用紙の搬送方向が振り分けられ、そのまま(或いは、反転搬送路16に送られて両面コピーされた後に)、第1排出トレイ17a、第2排出トレイ17bから成る用紙排出部に排出される。
また、感光体ドラム5の表面の残留電荷を除去する除電装置(図示せず)がクリーニング装置18の下流側に設けられている。さらに、給紙機構10は、複合機本体2に着脱自在に取り付けられ、用紙を収納する複数の給紙カセット10a、10bと、その上方に設けられるスタックバイパス(手差しトレイ)10cと、を備えてなり、これらは用紙搬送路11によって感光体ドラム5及び現像装置8等からなる画像形成部3に繋がっている。
画像形成装置100の本体上部には、画像読取装置6が配置されている。画像読取装置6は、原稿の画像情報を読み取るものであり、1枚ずつの原稿を手置きで読み取らせる場合には、原稿搬送装置27を開いて装置本体の上面に設けられたコンタクトガラス6a上に原稿を載置し、原稿束から1枚ずつを自動的に読み取らせる場合には、原稿束を、閉じた状態の原稿搬送装置27の給紙トレイ27a上に載置する。原稿束が給紙トレイ27a上に載置された場合は、当該原稿束から1枚ずつの原稿が自動的に順次コンタクトガラス6a上に送り込まれるようになっている。いずれの場合でもコンタクトガラス6a上に位置した原稿に、不図示の露光ランプから光が照射され、その反射光は画像光として不図示の反射鏡及び結像レンズ等の光学系を介して光電変換部(CCD)へ導かれる。
用紙搬送路15は、具体的には、定着ローラー対14aの下流側において、まず左右二股に分岐し、一方の経路(図1では右方向に分岐する経路)は第1排出トレイ17aに連通するように構成されている。そして、他方の経路(図1では左方向に分岐する経路)は搬送ローラー対19を経由して二股に分岐し、一方の経路(図1では左方向に分岐する経路)は第2排出トレイ17bに連通するように構成されている。これに対し、他方の経路(図1では下方向に分岐する経路)は反転搬送路16に連通するように構成されている。
図2は、画像形成装置100に搭載される本発明の現像装置8の側面断面図である。図2に示すように、現像装置8は、二成分現像剤(以下、単に現像剤ともいう)が収納される現像容器30を備えており、現像容器30は仕切壁30aによって第1及び第2攪拌室30b、30cに区画され、第1及び第2攪拌室30b、30cには図示しないトナーコンテナから供給されるトナー(正帯電トナー)をキャリアと混合して撹拌し、帯電させるための第1攪拌スクリュー31a及び第2攪拌スクリュー31bが回転可能に配設されている。
そして、第1攪拌スクリュー31a及び第2攪拌スクリュー31bによって現像剤が攪拌されつつ軸方向に搬送され、仕切壁30aの両端に形成された現像剤通過路(図示せず)を介して第1及び第2攪拌室30b、30c間を循環する。図示の例では、現像容器30は左斜め上方に延在しており、現像容器30内において第2攪拌スクリュー31bの上方には磁気ローラー32が配置され、磁気ローラー32の左斜め上方には現像ローラー33が対向配置されている。そして、現像ローラー33は現像容器30の開口側(図2の左側)において感光体ドラム1aに対向しており、磁気ローラー32及び現像ローラー33は図2の時計回り方向に回転する。
なお、現像容器30には、第1攪拌スクリュー31aと対面してトナー濃度センサー(図示せず)が配置されており、トナー濃度センサーで検知されるトナー濃度に応じて補給装置(図示せず)からトナー補給口30dを介して現像容器30内にトナーが補給される。
磁気ローラー32は、非磁性の回転スリーブ32aと、回転スリーブ32aに内包される複数の磁極を有する固定マグネット体32bで構成されている。本実施形態では、固定マグネット体32bの磁極は、主極N1、規制極(汲上極)S1、搬送極N2、S2、及び剥離極S3の5極構成である。磁気ローラー32と現像ローラー33とはその対面位置(対向位置)において所定のギャップをもって対向している。本実施形態では、主極N1として射出成型により成型されたプラスチックマグネットを使用している。
また、現像容器30には穂切りブレード34が磁気ローラー32の長手方向(図2の紙面と垂直な方向)に沿って取り付けられており、穂切りブレード34は、磁気ローラー32の回転方向(図2の時計回り方向)において、現像ローラー33と磁気ローラー32との対向位置よりも上流側に位置付けられている。そして、穂切りブレード34の先端部と磁気ローラー32表面との間には僅かな隙間(ギャップ)が形成されている。
現像ローラー33は、非磁性の現像スリーブ33aと、現像スリーブ33a内に固定された現像ローラー側磁極33bで構成されている。現像ローラー側磁極33bは、固定マグネット体32bの対向する磁極(主極)N1と異極性(S極)である。本実施形態では、現像ローラー側磁極33bとして射出成型により成型されたプラスチックマグネットを使用している。
現像ローラー33及び磁気ローラー32には、バイアス制御回路(図示せず)を介して現像バイアス電源43が接続されている。具体的には、現像バイアス電源43は、現像ローラー33に接続される直流電源と交流電源から成る第1電源43aと、第1電源43aと現像ローラー33の間から分岐して設けられ、磁気ローラー32に接続される直流電源と交流電源から成る第2電源43bと、を備えており、第1電源43a及び第2電源43bは共通のグランドに接地されている。
これにより、現像ローラー33には第1電源43aから直流電圧に交流電圧を重畳した現像バイアスが印加される。一方、磁気ローラー32には、供給バイアスとして、第1電源43aから印加されるバイアスをベースに、第2電源43bから直流電圧に交流電圧を重畳したバイアスが重畳して印加される。
前述のように、第1攪拌スクリュー31a及び第2攪拌スクリュー31bによって、現像剤が攪拌されつつ現像容器30内を循環してトナーを帯電させ、第2攪拌スクリュー31bによって現像剤が磁気ローラー32に搬送される。穂切りブレード34には固定マグネット体32bの規制極S1が対向するため、穂切りブレード34として非磁性体或いは規制極S1と異なる極性の磁性体を用いることにより、穂切りブレード34の先端と回転スリーブ32aとの隙間に引き合う方向の磁界が発生する。
この磁界により、穂切りブレード34と回転スリーブ32aとの間に磁気ブラシが形成される。そして、磁気ローラー32上の磁気ブラシは穂切りブレード34によって層厚規制された後、現像ローラー33に対向する位置に移動すると、固定マグネット体32bの主極N1及び現像ローラー側磁極33bにより引き合う磁界が付与されるため、磁気ブラシは現像ローラー33表面に接触する。そして、磁気ローラー32に印加されるVmag(DC)と現像ローラー33に印加されるVslv(DC)との電位差ΔV、及び磁界によって現像ローラー33上にトナー薄層を形成する。
現像ローラー33上のトナー層厚は現像剤の抵抗や磁気ローラー32と現像ローラー33との回転速度差等によっても変化するが、ΔVによって制御することができる。ΔVを大きくすると現像ローラー33上のトナー層は厚くなり、ΔVを小さくすると薄くなる。現像時におけるΔVの範囲は一般的に100V〜350V程度が適切である。
次に、本発明の現像装置14に用いられる現像ローラー33について説明する。図3は、現像ローラー33の側面断面図であり、図4は、現像ローラー33の断面拡大図(図3におけるXX′矢視断面図)である。現像ローラー33は、アルミニウムまたはアルミニウム合金製の現像スリーブ33aの外周面にアルマイト層(アルミニウムの酸化被膜)45が形成されており、アルマイト層45の表面にはアルコール可溶性ナイロン樹脂からなるコート層47が積層されている。なお、図3及び図4では現像スリーブ33a内の現像ローラー側磁極33bは記載を省略している。
次に、現像ローラー33の製造方法について説明する。先ず、アルミニウムまたはアルミニウム合金製の円筒を切削、研磨等により所定の外径寸法の現像スリーブ33aに仕上げた後、酸水溶液中で陽極酸化処理を行うことにより表面にアルマイト層45を形成する。アルマイト層45は、中心に微細孔を有する六角柱状のセルの集合体であり、微細孔の底面がアルミ素地との界面(バリア層)となる。アルマイト層45は、現像ローラー33へ現像バイアスを印加する際のリークの発生を防止する。
アルマイト層45が厚すぎると、現像ローラー33全体の抵抗が大きくなって高電圧の現像バイアスを印加する必要が生じる。一方、アルマイト層45が薄すぎると、アルマイト層を均一に形成することができずリークが発生するおそれがある。従って、アルマイト層45の層厚は10μm〜20μm程度が好ましい。
その後、アルマイト層45の表面を熱処理する。この熱処理は、後述するコート層47の乾燥工程の前に予めアルマイト層45にクラックを生じさせておくことで、乾燥工程においてアルマイト層45及びコート層47にクラックを生じさせないようにするものである。熱処理時間は、例えば乾燥工程に要する時間以上(例えば120℃で10分以上)の一定時間に定められており、全ての現像スリーブ33aに対して概ね一定量のクラックが生じる。
熱処理の後、アルマイト層45の表面にコート層47を形成する。コート層47は、現像スリーブ33a上に供給されたトナーのアルマイト層45への固着を抑制する。さらに、コート層47が現像剤に与える機械的ストレスは金属表面に比べて少ないため、現像剤搬送量を増加させたときの現像ローラー33からのトナー回収性の向上と現像剤の劣化防止との両立を図ることができる。
コート層47の材質としては、ナイロン樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂等が挙げられるが、正帯電トナーの樹脂材料と帯電性が近く、トナーの剥離性が良好であるとともに、後述するディッピング法によるコーティングが可能なアルコール可溶性ナイロン樹脂が好ましい。
なお、コート層47には抵抗調整剤として誘電率10以上の導電材を含有させて、コート層47の体積抵抗値を調整し、且つ抵抗ムラを抑制している。抵抗調整剤としてはカーボンブラックや酸化チタン、繊維形状のチタン酸カリウム等が挙げられる。これにより、トナー層の帯電状態の安定化とトナー回収時における剥離性の向上を図ることができる。コート層47の体積抵抗値としては、現像ローラー33表面の残留電荷を適度に滞留可能な104〜108Ω程度が好ましい。
本発明では、コート層47をディッピング法により形成する。具体的には、アルマイト層45が形成された現像スリーブ33aを一端側からコート液中にディッピングし、他端側から引き上げる。その後、コート液がコーティングされた現像スリーブ33aを所定温度で所定時間(例えば130℃で10分)乾燥させる乾燥工程を行い、膜厚が約2〜11μmのコート層47を形成する。
上記のディッピング法でコート層47を作成した現像ローラー33は、図5に示すように、ディッピング時の下端側(図5の左端)が現像ローラー33の長手方向の中央部分よりもコート層47の膜厚が厚くなる傾向にある。つまり、ディッピング時の下端側では現像ローラー33の外径が大きくなるため、現像装置8に装着したとき磁気ローラー22と現像ローラー33との間(以下、MS間という)の距離が近くなる。その結果、現像ローラー33はディッピング時の下端側において、現像ローラー33側から磁気ローラー22側へトナーを剥ぎ取る力が強くなり、上端側でトナーを剥ぎ取る力が弱くなる。
一方、固定マグネット体32bの主極N1、現像ローラー側磁極33bとして、射出成型で成型されたプラスチックマグネットを用いる場合、長手方向の磁力分布に偏りが発生する。図6は、主極N1、現像ローラー側磁極33bに用いるプラスチックマグネットの長手方向の磁力分布を示すグラフである。図6に示すように、射出成型で成型されたプラスチックマグネットでは、長手方向のゲート側の端部に比べて反ゲート側の端部で磁力が高くなる磁力勾配が生じる。
このプラスチックマグネットを主極N1、および現像ローラー側磁極33b磁極として用いた場合、磁力の高い側の端部(反ゲート側)においてトナーを引き付ける磁気吸引力が強くなるため、反ゲート側に対向する部分では現像ローラー33側から磁気ローラー22側へトナーを剥ぎ取る力が強くなる。一方、磁力の低い側の端部(ゲート側)において磁気吸引力が弱くなるため、ゲート側に対向する部分では現像ローラー33側から磁気ローラー22側へトナーを剥ぎ取る力が弱くなる。
そこで、本発明では、射出成型されたプラスチックマグネットを固定マグネット体32bの主極N1、現像ローラー側磁極33bとして用いる場合、ディッピング法によってコート層47が形成された現像ローラー33の、ディッピング時の下端側(図6の左端)にプラスチックマグネットの磁力が低い側(ゲート側)を配置するようにした。即ち、プラスチックマグネットの磁力が低い側においてコート層47の膜厚が大きくなり、磁力が高い側においてコート層47の膜厚が小さくなるように現像スリーブ33aと主極N1、現像ローラー側磁極33bの方向を規定した。
これにより、MS間の距離が広くなる側、即ち現像ローラー33のディッピング時の上端側には主極N1、現像ローラー側磁極33bの磁力の強い側が配置され、MS間の距離が狭くなる側、即ち現像ローラー33のディッピング時の下端側には主極N1、現像ローラー側磁極33bの磁力の弱い側が配置される。その結果、主極N1、および現像ローラー側磁極33bの磁力勾配によって生じるトナーの剥ぎ取り性能の差が、現像スリーブ33aのコート層47の膜厚の勾配によって相殺される。従って、現像ローラー33の長手方向におけるトナー剥ぎ取り性能の差を解消することができ、現像ローラー33の回転周期で発生する現像ゴーストを効果的に抑制可能となる。
その他本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば上記実施形態においては、現像ローラー側磁極33bと固定マグネット体32bの主極N1の両方にプラスチックマグネットを用い、プラスチックマグネットの磁力の低い側(ゲート側)と現像ローラー33のディッピング時における下端側とを対向させるようにしたが、現像ローラー側磁極33bと固定マグネット体32bの主極N1のいずれか一方にプラスチックマグネットを用いる構成においても同様に適用可能である。
また本発明は、図1に示したモノクロ複合機に限らず、例えばモノクロプリンターやタンデム型のカラープリンター、カラー複合機やファクシミリ等の、他の画像形成装置にも適用できる。以下、実施例により本発明の効果について更に具体的に説明する。
(現像スリーブの作製)
直径20mmのアルミニウム素管から成る現像スリーブ33aの外周面にアルマイト処理を施して、厚さ10μmのアルマイト層45を形成し、アルマイト層45の表面を120℃で10分以上熱処理した。一方、結着樹脂としてアルコール可溶性ナイロン樹脂(CM8000、東レ製)100重量部、導電材として酸化チタン(ET−300W、石原産業製)100重量部、および分散媒としてメタノール800重量部を、ボールミル(φ1mmのジルコニアビーズ)にて48時間混合、分散させてコート液を調製した。次いで、アルマイト処理された現像スリーブ33aを、円筒形状の軸方向が鉛直方向に沿うように一端側からコート液中にディッピング(浸漬)し、他端側から引き上げた後、130℃で10分間乾燥させて、アルマイト層45の表面に膜厚が約2〜11μmのコート層47を形成した。
(現像ゴーストの評価)
実施例1で作製した現像スリーブ33a内に、現像ローラー側磁極33bとして射出成型により成型されたプラスチックマグネット、或いは押し出し成型により成型されたゴム磁石を配置して現像ローラー33を作製した。また、固定マグネット体32bの主極N1として射出成型により成型されたプラスチックマグネットを配置して磁気ローラー32を作製した。
なお、固定マグネット体32bの主極N1に用いられるプラスチックマグネットのゲート側の磁力は90mT、反ゲート側の磁力は95mTである。また、現像ローラー側磁極33bに用いられるプラスチックマグネットのゲート側の磁力は40mT、反ゲート側の磁力は43mTである。また、現像スリーブ33aの長手方向位置とコート層47の膜厚変動との関係を図7に示す。
これらの磁気ローラー32及び現像ローラー33を用いて、現像スリーブ33aのディッピングの上端及び下端の方向と、プラスチックマグネットのゲート方向との組み合わせを変化させて現像装置8(図2参照)を作製した。これらの現像装置8を図1に示したような試験機に搭載し、図8に示したようなリング状のベタ画像Bとハーフトーン画像Hが連続するテスト画像を出力し、現像ゴーストの発生を目視により観察した。
評価方法は、現像ゴーストの発生が非常に気になる場合をランク1、現像ゴーストの発生が気になる場合をランク2、現像ゴーストの発生が少し気になる場合をランク3、現像ゴーストが僅かに発生しているが気にならない場合をランク4、現像ゴーストが発生していない場合をランク5とし、ランク1〜3をNG(不可)、ランク4、5をOK(可)とした。評価結果を現像スリーブ33aのディッピングの上端及び下端の配置、プラスチックマグネットのゲート位置と併せて表1に示す。
Figure 0006331911
※1:ウレタン樹脂をスプレーコートした現像スリーブを使用
※2:押し出し成型により成型されたゴム磁石を使用
表1から明らかなように、主極N1としてプラスチックマグネットを用い、現像スリーブ33aのディッピング時における下端側と主極N1のゲート側(磁力の低い側)とを同方向に配置した実施例1、2では、現像ゴーストは実用上問題のないランク4であった。現像ローラー側磁極としてプラスチックマグネットを用い、現像スリーブ33aのディッピング時における下端側と現像ローラー側磁極のゲート側(磁力の低い側)とを同方向に配置した実施例3、4についても同様の結果であった。
さらに、主極N1及び現像ローラー側磁極の両方にプラスチックマグネットを用い、現像スリーブ33aのディッピング時における下端側と主極N1及び現像ローラー側磁極のゲート側(磁力の低い側)とを同方向に配置した実施例5、6では、現像ゴーストが発生しないランク5であった。
これに対し、ウレタン樹脂をスプレーコートした現像スリーブ33aを用い、主極N1及び現像ローラー側磁極の両方にゴム磁石を用いた比較例1では、画像の幅方向全域において現像ゴーストの発生が非常に気になるランク1であった。また、主極N1及び現像ローラー側磁極の少なくとも一方にプラスチックマグネットを用い、現像スリーブ33aのディッピング時における上端側と主極N1及び現像ローラー側磁極のゲート側(磁力の低い側)とを同方向に配置した比較例2〜7では、画像のゲート側(磁力の低い側)に現像ゴーストの発生が気になるランク2、或いは現像ゴーストの発生が少し気になるランク3であった。
本発明は、現像剤担持体上の磁気ブラシを用いてトナー担持体上にトナーのみを移動させ、トナー担持体から像担持体にトナーを飛翔させる非接触現像方式の現像装置に利用可能である。本発明の利用により、現像剤担持体およびトナー担持体内に配置されるマグネットの磁力勾配に起因するトナーの剥ぎ取り性のバラツキを簡易な構成で抑制できる現像装置及びそれを備えた画像形成装置を提供することができる。
5 感光体ドラム(像担持体)
8 現像装置
30 現像容器
32 磁気ローラー(現像剤担持体)
32a 回転スリーブ
32b 固定マグネット体
33 現像ローラー(トナー担持体)
33a 現像スリーブ
33b 現像ローラー側磁極(トナー担持体側磁極)
34 穂切りブレード
43 現像バイアス電源(電圧印加装置)
43a 第1電源
43b 第2電源
45 アルマイト層
47 コート層
100 画像形成装置
N1 主極

Claims (5)

  1. 像担持体に非接触で対向配置される回転可能な円筒状の回転スリーブと、該回転スリーブ内に回転不能に固定され、複数の磁極を有する固定マグネット体と、を有し、磁性キャリアとトナーとを含む二成分現像剤を担持して表面に磁気ブラシを形成する現像剤担持体と、
    該現像剤担持体及び静電潜像が形成される像担持体に対向して配置される回転可能な円筒状の現像スリーブと、該現像スリーブ内に回転不能に固定され、前記現像スリーブと前記現像剤担持体との近接部に配置されるトナー担持体側磁極と、を有し、前記現像剤担持体の磁気ブラシを用いて表面にトナー層が形成されるトナー担持体と、
    を備えた現像装置の製造方法であって、
    前記固定マグネット体は、前記回転スリーブと前記トナー担持体との近接部に配置される主極を有し、
    前記現像スリーブ長手方向の一端側から樹脂材料から成るコート液中にディッピングし、他端側から引き上げるディッピング法によって、前記現像スリーブの外周面に前記現像スリーブのディッピング時における下端側の膜厚が前記現像スリーブの長手方向の中央部分の膜厚よりも厚くなるようなコート層を形成し
    前記主極が前記現像剤担持体の長手方向において磁力勾配を有する場合、前記主極の長手方向において磁力が高い側前記現像スリーブのディッピング時における上端側配置
    前記トナー担持体側磁極が前記現像剤担持体の長手方向において磁力勾配を有する場合、前記トナー担持体側磁極の長手方向において磁力が高い側前記現像スリーブのディッピング時における上端側配置ることを特徴とする現像装置の製造方法
  2. 前記主極および前記トナー担持体側磁極の少なくとも一方を構成する磁石は、樹脂材料中に磁性粉を分散させたプラスチックマグネットであることを特徴とする請求項1に記載の現像装置の製造方法
  3. 前記プラスチックマグネットは射出成型によって成型されており、前記プラスチックマグネットの射出成型時におけるゲート側、前記現像スリーブのディッピング時における下端側と同じ側に配置することを特徴とする請求項2に記載の現像装置の製造方法
  4. 前記コート層はアルコール可溶性ナイロンで形成されており、前記コート層中に酸化チタンが分散されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の現像装置の製造方法
  5. 前記現像スリーブは、アルミニウムまたはアルミニウム合金から成る外周面にアルマイト層を形成し、該アルマイト層の表面に前記コート層を形成したことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の現像装置の製造方法
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