以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことはいうまでもない。
同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
また、実施の形態で用いる図面においては、断面図であっても図面を見易くするためにハッチングを省略する場合もある。また、平面図であっても図面を見易くするためにハッチングを付す場合もある。
また、以下の実施の形態において、A〜Bとして範囲を示す場合には、特に明示した場合を除き、A以上B以下を示すものとする。
(実施の形態1)
<反射法弾性波探査法>
初めに、地下資源探査の分野で行われる、加速度センサを用いた反射法弾性波探査について説明する。反射法弾性波探査とは、物理探査の一種であり、人工的に地震波を発生させ、地表に設置した受振器により地下から跳ね返ってくる反射波を捉え、その結果を解析して地下構造を解明する方法である。
図1は、反射法弾性波探査の概要を示した地表の断面模式図である。
図1に示すように、反射法弾性波探査では、地表G3に設置された起振源G1から地中に弾性波(図1中矢印)を励振し、地層の境界G4aおよびG4bのいずれかで反射した弾性波を、地表G3に設置された受振器G2a、G2b、G2c、G2dおよびG2eのいずれかでセンシングする。一般的な起振源G1は地表に対して垂直方向に発振するため、鉛直に近い方向にP波が効率よく励振される。そのため、反射法弾性波探査では、P波を用いる。また、再び地表に戻ってくる弾性波は、鉛直方向に近い方向から伝搬してくるP波であるため、受振器は鉛直方向の弾性振動を検知する必要がある。
さまざまな方向に励振された弾性波は、減衰の大きい地中を伝搬し、複数の地層の境界G4aおよびG4bで反射し、再び減衰の大きい地中を伝搬し、広い領域に拡散して地表に戻ってくる。微弱な弾性振動を検知するため、受振器G2a、G2b、G2c、G2dおよびG2eとして、鉛直方向に高感度な加速度センサを用いる必要がある。したがって、受振器G2a、G2b、G2c、G2dおよびG2eとして、以下に説明する実施の形態1の加速度センサを用いることが望ましい。
<加速度センサの構成>
次に、本実施の形態1の加速度センサの構成について、図面を参照しながら説明する。
図2および図3は、実施の形態1の加速度センサの断面図である。図4〜図6は、実施の形態1の加速度センサの平面図である。図7は、実施の形態1の加速度センサの断面図である。
図2は、図4〜図6のA−A線に沿った断面図であり、図3および図7は、図4〜図6のB−B線に沿った断面図である。図2および図3は、重力加速度がz軸方向に印加されていない状態を示し、図7は、重力加速度GRが−z軸方向に印加されている状態を示す。すなわち、図7は、重力加速度GRにより可動電極31が回転軸AX1を中心として回転変位した状態を示す。
図4は、キャップ層CLおよびメンブレン層MLを除去して透視した状態を示し、ベース層の上面の状態を示している。図5は、キャップ層の下面の状態を示している。図6は、キャップ基板20を除去して透視した状態を示し、メンブレン層の状態を示している。なお、図5〜図6では、ベース基板10の図示を省略している。
図2および図3に示すように、本実施の形態1の加速度センサ1は、ベース層BLと、メンブレン層MLと、キャップ層CLと、を有する。
図2〜図4に示すように、ベース層BLは、基体としてのベース基板10と、下部電極11と、ギャップ調整膜12aおよび12bと、空間13と、を有する。
ベース基板10は、ベース基板10の主面としての上面の領域であって、ベース基板10の中心側の中心領域としての領域AR1と、ベース基板10の上面の領域であって、領域AR1よりもベース基板10の周辺側の周辺領域としての領域AR2と、を有する。
なお、平面視において、互いに交差、好適には直交する2つの方向を、x軸方向およびy軸方向とし、ベース基板10の主面に垂直な方向をz軸方向とする。また、本願明細書では、平面視において、とは、ベース基板10の主面としての上面に垂直な方向であるz軸方向から視た場合を意味する。
領域AR2では、ベース基板10の上面上、すなわちベース基板10上には、ギャップ調整膜12aが形成されている。また、領域AR1のうち一部の領域でも、ベース基板10の上面上、すなわちベース基板10上には、ギャップ調整膜12aと同層に、ギャップ調整膜12bが形成されている。
一方、領域AR1のうちギャップ調整膜12bが形成された領域以外の領域では、ベース基板10の上面上、すなわちベース基板10上には、ギャップ調整膜12bは形成されておらず、下部電極11が形成されている。下部電極11は、領域AR1で、平面視において、x軸方向におけるギャップ調整膜12bの一方の側(図4中右側)に配置されている。下部電極11は、可動部としての可動電極31の下面と対向配置されている。
ギャップ調整膜12aおよび12bの厚さは、下部電極11の厚さよりも厚い。そのため、領域AR1では、下部電極11上、および、ベース基板10上に、空間13が形成されている。すなわち、ギャップ調整膜12aおよび12bは、下部電極11上に空間13を形成するためのものである。空間13は、大気圧より十分低い圧力の気体で充満されている。
ベース基板10は、単結晶シリコン基板と、単結晶シリコン基板の表面に形成された酸化シリコン膜(図示せず)とにより形成されている。この酸化シリコン膜により、下部電極11は、ベース基板10の単結晶シリコン基板と電気的に絶縁されている。また、下部電極11は、電気接続線(図示せず)とを介して例えば検出回路と電気的に接続されている。
図2、図3および図5に示すように、キャップ層CLは、基体としてのキャップ基板20と、上部電極21と、ギャップ調整膜22aおよび22bと、空間23と、を有する。
領域AR1は、キャップ基板20の主面としての下面の領域であって、キャップ基板20の中心側の中心領域としての領域でもある。また、領域AR2は、キャップ基板20の下面の領域であって、領域AR1よりもキャップ基板20の周辺側の周辺領域としての領域でもある。さらに、x軸方向およびy軸方向は、キャップ基板20の主面としての下面内で、互いに交差、好適には直交する2つの方向でもあり、z軸方向は、キャップ基板20の下面に垂直な方向でもある。
領域AR2では、キャップ基板20の下面下、すなわちキャップ基板20下には、ギャップ調整膜22aが形成されている。また、領域AR1のうち一部の領域でも、キャップ基板20の下面下、すなわちキャップ基板20下には、ギャップ調整膜22aと同層に、ギャップ調整膜22bが形成されている。
一方、領域AR1のうちギャップ調整膜22bが形成された領域以外の領域では、キャップ基板20の下面下、すなわちキャップ基板20下には、ギャップ調整膜22bは形成されておらず、上部電極21が形成されている。上部電極21は、領域AR1で、平面視において、x軸方向におけるギャップ調整膜22bの一方の側(図5中右側)に配置されている。上部電極21は、可動部としての可動電極31の上面と対向配置されている。
ギャップ調整膜22aおよび22bの厚さは、上部電極21の厚さよりも厚い。そのため、領域AR1では、上部電極21下、および、キャップ基板20下に、空間23が形成されている。すなわち、ギャップ調整膜22aおよび22bは、上部電極21下に空間23を形成するためのものである。空間23は、大気圧より十分低い圧力の気体で充満されている。
キャップ基板20は、単結晶シリコン基板と、単結晶シリコン基板の表面に形成された酸化シリコン膜(図示せず)とにより形成されている。この酸化シリコン膜により、上部電極21は、キャップ基板20の単結晶シリコン基板と電気的に絶縁されている。また、上部電極21は、電気接続線(図示せず)を介して例えば検出回路と電気的に接続されている。
図2、図3および図6に示すように、メンブレン層MLは、可動部としての可動電極31と、ねじれバネ32aおよび32bと、固定部33と、枠34と、を有する。可動電極31、ねじれバネ32aおよび32b、固定部33および枠34は、いずれも低抵抗の単結晶シリコン基板からなり、その単結晶シリコン基板を、例えば厚さ方向(z軸方向)にDRIE(Deep Reactive Ion Etching)によりエッチングして、単結晶シリコン基板を貫通する孔部を形成することにより、形成されている。なお、可動電極31の外側面と、枠34の内側面との間には、空間35が形成されている。
固定部33は、図2に示すように、ギャップ調整膜12bとギャップ調整膜22bとに挟まれている。固定部33の下端は、ギャップ調整膜12bに機械的に接続され、固定部33の上端は、ギャップ調整膜22bに機械的に接続されている。ギャップ調整膜12bは、ベース基板10に機械的に接続されているため、結局、固定部33は、ベース基板10に機械的に固定されている。すなわち、固定部33は、ベース基板10の主面としての上面上に固定されている。また、ギャップ調整膜22bは、キャップ基板20に機械的に接続されているため、結局、固定部33は、キャップ基板20に機械的に固定されている。固定部33は、電気接続線(図示せず)を介して例えば検出回路と電気的に接続されている。
ねじれバネ32aは、y軸方向に延在し、ねじれバネ32aのy軸方向における一方の側の端部36aは、固定部33に接続され、ねじれバネ32aのy軸方向における他方の側の端部37aは、可動電極31の端部61に接続されている。また、ねじれバネ32bは、y軸方向に延在し、ねじれバネ32bのy軸方向における一方の側の端部36bは、固定部33に接続され、ねじれバネ32bのy軸方向における他方の側の端部37bは、可動電極31の端部61に接続されている。
ねじれバネ32aは、ねじれバネ32aが弾性変形して、端部37aが端部36aに対してねじれることにより、端部37aが、端部36aに対して、y軸方向に沿った回転軸AX1を中心として回転変位可能となるように、設けられている。また、ねじれバネ32bは、ねじれバネ32bが弾性変形して、端部37bが端部36bに対してねじれることにより、端部37bが、端部36bに対して、ねじれバネ32aの回転軸AX1と同一の回転軸AX1を中心として回転変位可能となるように、設けられている。したがって、ねじれバネ32aおよび32bの各々は、弾性変形部である。
好適には、ねじれバネ32aのz軸方向の厚さは、ねじれバネ32aのx軸方向の幅よりも大きい。これにより、端部37aが端部36aに対して容易にねじれるようにすることができる。また、好適には、ねじれバネ32bのz軸方向の厚さは、ねじれバネ32bのx軸方向の幅よりも大きい。これにより、端部37bが端部36bに対して容易にねじれるようにすることができる。
可動電極31は、図6に示すように、領域AR1で、平面視において、x軸方向における固定部33の一方の側(図6中右側)に配置されている。可動電極31の回転軸AX1側の端部61には、y軸方向に延在する回転軸AX1を中心として回転変位可能な2個のねじれバネ32aおよび32bが、y軸方向で互いに離れて接続されている。そのため、可動電極31の固定部33側の端部61は、ねじれバネ32aおよび32bを介して、固定部33に接続されている。また、可動電極31は、固定部33に対して、ねじれバネ32aおよび32bの回転軸AX1を中心として、回転変位可能である。
可動電極31は、z軸方向から視たときに、例えば長方形の形状を有する。すなわち、可動電極31は、例えば、x軸方向に垂直な側面SM1および側面SM2、ならびに、y軸方向に垂直な側面SM3および側面SM4を有する。側面SM1は、可動電極31の回転軸AX1側の端部61であり、側面SM2は、可動電極31の回転軸AX1側と反対側の端部62である。言い換えれば、側面SM1は、可動電極31のx軸方向における負側の端部61であり、側面SM2は、可動電極31のx軸方向における正側の端部62である。また、側面SM3は、可動電極31のy軸方向における負側の端部63であり、側面SM4は、可動電極31のy軸方向における正側の端部64である。
一例として、z軸方向から視たときの可動電極31の平面寸法を、4.0mm(x軸方向)×3.9mm(y軸方向)とすることができる。また、z軸方向における可動電極31の厚さを、0.25mmとすることができる。
可動電極31の回転軸AX1側の端部61(側面SM1)と、回転軸AX1との間の、x軸方向の距離を、距離LXmsとする。また、可動電極31の回転軸AX1側と反対側の端部62(側面SM2)と、回転軸AX1との間の、x軸方向の距離を、距離LXmeとする。このとき、距離LXmsを、200μmとし、距離LXmeを、4200μmとすることができる。
なお、図6に示す例では、可動電極31は、接続部38aを介してねじれバネ32aの端部37aと接続され、接続部38bを介してねじれバネ32bの端部37bと接続されているが、x軸方向における接続部38aおよび38bの長さを限りなく短くすることができる。このとき、可動電極31と、ねじれバネ32aおよび32bとの間、または、可動電極31と、固定部33との間には、x軸方向における幅が非常に狭いスリットが形成されることになるので、距離LXmsを、略0とみなすことができる。
また、可動電極31は、ねじれバネを介さずに固定部33に接続することもできる。このような場合には、「可動電極31の回転軸AX1側」とは、「可動電極31の固定部33側」に相当し、「可動電極31の回転軸AX1側と反対側」とは、「可動電極31の固定部33側と反対側」に相当する。また、例えば「可動電極31の回転軸AX1側の端部61(側面SM1)と、回転軸AX1との間の、x軸方向の距離」とは、「可動電極31の固定部33側の端部61(側面SM1)と、固定部33との間の、x軸方向の距離」に相当する。さらに、「可動電極31の回転軸AX1側と反対側の端部62(側面SM2)と、回転軸AX1との間の、x軸方向の距離」とは、「可動電極31の固定部33側と反対側の端部62(側面SM2)と、固定部33との間の、x軸方向の距離」に相当する。
本実施の形態1の加速度センサ1は、ベース基板10の上面またはキャップ基板20の下面、すなわちxy平面に垂直な方向(−z軸方向)に、重力加速度GR(9.8ms−2)が印加された状態で、±z軸方向に印加される微小な振動加速度を、高精度に検出することができる。図7に示すように、加速度センサ1を、z軸方向が鉛直方向と平行になるように、つまり−z軸方向が、重力加速度GRが印加される方向と一致するように設置することにより、±z軸方向の振動を、最も高精度に検出することができる。
本実施の形態1における加速度センサ1では、可動電極31の質量、ならびに、ねじれバネ32aおよび32bのバネ定数は、重力加速度GR(図7参照)が印加されている状態で、可動電極31の回転軸AX1側と反対側の端部62が、重力加速度GRが印加されていない状態に比べ、z軸方向において負側に2μm変位するように、調整されている。
ギャップ長GAPbは、可動電極31と下部電極11との間に存在する空間13のz軸方向の厚さであり、可動電極31と下部電極11との間のz軸方向の距離である。可動電極31が回転軸AX1を中心として回転変位することにより傾斜するため、空間13のz軸方向の厚さ、すなわち可動電極31と下部電極11との間のz軸方向の距離は、x軸方向の各位置によって異なる。ここでは、x軸方向の下部電極11の中心位置における、空間13のz軸方向の厚さを、ギャップ長GAPbとして、定義する。すなわち、x軸方向の下部電極11の中心位置における、可動電極31と下部電極11との間のz軸方向の距離を、ギャップ長GAPbとして、定義する。
ギャップ長GAPtは、可動電極31と上部電極21との間に存在する空間23のz軸方向の厚さであり、可動電極31と上部電極21との間のz軸方向の距離である。可動電極31が回転軸AX1を中心として回転変位することにより傾斜するため、空間23のz軸方向の厚さ、すなわち可動電極31と上部電極21との間のz軸方向の距離は、x軸方向の各位置によって異なる。ここでは、x軸方向の上部電極21の中心位置における、空間23のz軸方向の厚さを、ギャップ長GAPtとして、定義する。すなわち、x軸方向の上部電極21の中心位置における、可動電極31と上部電極21との間のz軸方向の距離を、ギャップ長GAPtとして、定義する。
好適には、ギャップ調整膜12aおよび12bの厚さは、ギャップ調整膜22aおよび22bの厚さよりも、厚い。すなわち、可動電極31の回転軸AX1側の端部61の下端と、下部電極11の上面との間の、z軸方向の距離LZbは、可動電極31の回転軸AX1側の端部61の上端と、上部電極21の下面との間の、z軸方向の距離LZtよりも、長い。これにより、ギャップ調整膜12aおよび12bの厚さがギャップ調整膜22aおよび22bの厚さに等しい場合に比べ、重力加速度が印加されているときの、ギャップ長GAPbとギャップ長GAPtとの差を、0に近づけることができる。
本実施の形態1では、ギャップ調整膜12aおよび12bの厚さを、ギャップ調整膜22aおよび22bの厚さより例えば2μm大きくすることができる。このとき、距離LZbを6μmとし、距離LZtを4μmとすることができ、重力加速度GRが印加されているときの、ギャップ長GAPtと、ギャップ長GAPbとを、等しくすることができる。
なお、距離LZbを、回転軸AX1と、下部電極11の上面との間の、z軸方向の距離と定義することもでき、距離LZtを、回転軸AX1と、上部電極21の下面との間の、z軸方向の距離と定義することもできる。このような場合でも、好適には、距離LZbは、距離LZtよりも、長い。
また、図2および図3では、理解を簡単にするために、距離LZbを、ギャップ調整膜12aまたは12bの上面と、下部電極11の上面との間の、z軸方向の距離として表示し、距離LZtを、ギャップ調整膜22aまたは22bの下面と、上部電極21の下面との間の、z軸方向の距離として表示する(以下の各断面図においても同様)。
下部電極11と上部電極21とは、図2〜図5に示すように、互いに平行になるように配置されている。また、前述したように、下部電極11は、可動電極31の下面と対向配置され、上部電極21は、可動電極31の上面と対向配置されている。
下部電極11は、z軸方向から視たときに、長方形の形状を有する。すなわち、下部電極11は、x軸方向に垂直な側面SB1および側面SB2、ならびに、y軸方向に垂直な側面SB3および側面SB4を有する。側面SB1は、下部電極11の回転軸AX1側の端部41であり、側面SB2は、下部電極11の回転軸AX1側と反対側の端部42である。言い換えれば、側面SB1は、下部電極11のx軸方向における負側の端部41であり、側面SB2は、下部電極11のx軸方向における正側の端部42である。また、側面SB3は、下部電極11のy軸方向における負側の端部43であり、側面SB4は、下部電極11のy軸方向における正側の端部44である。
上部電極21は、z軸方向から視たときに、長方形の形状を有する。すなわち、上部電極21は、x軸方向に垂直な側面SC1および側面SC2、ならびに、y軸方向に垂直な側面SC3および側面SC4を有する。側面SC1は、上部電極21の回転軸AX1側の端部51であり、側面SC2は、上部電極21の回転軸AX1側と反対側の端部52である。言い換えれば、側面SC1は、上部電極21のx軸方向における負側の端部51であり、側面SC2は、上部電極21のx軸方向における正側の端部52である。また、側面SC3は、上部電極21のy軸方向における負側の端部53であり、側面SC4は、上部電極21のy軸方向における正側の端部54である。
下部電極11の回転軸AX1側の端部41(側面SB1)と、回転軸AX1との間の、x軸方向の距離を、距離LXbsとする。また、下部電極11の回転軸AX1側と反対側の端部42(側面SB2)と、回転軸AX1との間の、x軸方向の距離を、距離LXbeとする。このとき、距離LXbsを、200μmとし、距離LXbeを、3810μmとすることができる。すなわち、距離LXbeと距離LXbsとの差を、3610μmとすることができる。
上部電極21の回転軸AX1側の端部51(側面SC1)と、回転軸AX1との間の、x軸方向の距離を、距離LXtsとする。また、上部電極21の回転軸AX1側と反対側の端部52(側面SC2)と、回転軸AX1との間の、x軸方向の距離を、距離LXteとする。このとき、距離LXtsを、590μmとし、距離LXteを、4200μmとすることができる。すなわち、距離LXteと距離LXtsとの差を、3610μmとすることができる。
本実施の形態1における加速度センサ1では、可動電極31は、−z軸方向に重力加速度GRが印加されているときに、重力加速度GRとは別に印加される加速度であって、微小な振動成分からなる加速度を、高精度に検出するためのものである。加速度により可動電極31に印加される力が十分大きくなるように、可動電極31は、十分大きな質量を有する。上述した微小な振動成分からなる加速度が可動電極31に印加されることにより、当該加速度により可動電極31に印加される力は、回転軸AX1を支点としたトルクとして可動電極31に作用し、回転軸AX1を中心として、可動電極31を回転変位させる。
可動電極31と下部電極11とにより、空間13を挟んで、非平行平板型コンデンサが形成される。図7に示すように、y軸方向の負側から正側に向かって視た場合、可動電極31が時計方向に回転変位したときは、可動電極31と下部電極11との間の静電容量Cbは、大きくなる。一方、y軸方向の負側から正側に向かって視た場合、可動電極31が反時計方向に回転変位したときは、可動電極31と下部電極11との間の静電容量Cbは、小さくなる。
可動電極31と上部電極21とにより、空間23を挟んで、非平行平板型コンデンサが形成される。図7に示すように、y軸方向の負側から正側に向かって視た場合、可動電極31が時計方向に回転変位したときは、可動電極31と上部電極21との間の静電容量Ctは、可動電極31と下部電極11との間の静電容量Cbとは逆に、小さくなる。一方、y軸方向の負側から正側に向かって視た場合、可動電極31が反時計方向に回転変位したときは、可動電極31と上部電極21との間の静電容量Ctは、可動電極31と下部電極11との間の静電容量Cbとは逆に、大きくなる。
本実施の形態1における加速度センサ1に、重力加速度GRより小さい鉛直方向の振動加速度が入力された場合、可動電極31は回転変位方向に振動する。そのため、静電容量Cbの容量値と、静電容量Ctの容量値とは、互いに逆位相に振動する。そのため、加速度センサ1は、検出回路により検出された静電容量Cbと、検出回路により検出された静電容量Ctとの容量差、すなわちΔC=Cb−Ctにより算出される出力ΔCに基づいて、重力より小さい鉛直方向の加速度振動を検出する。すなわち、加速度センサ1は、静電容量Cbと静電容量Ctとに基づいて、加速度を検出する。
<静止位置における重力加速度の影響について>
次に、静止位置における重力加速度の影響について、図8〜図15を参照し、比較例1と比較しながら説明する。
図8は、比較例1の加速度センサの断面図である。図9〜図11は、比較例1の加速度センサの平面図である。図12は、比較例1の加速度センサの断面図である。
図8および図12は、図9のB−B線に沿った断面図である。図8は、重力加速度がz軸方向に印加されていない状態を示し、図12は、重力加速度GRが−z軸方向に印加されている状態を示す。すなわち、図12は、重力加速度GRにより可動電極31が回転軸AX1を中心として回転変位した状態を示す。
図8に示すように、比較例1の加速度センサ101は、本実施の形態1の加速度センサ1と同様に、ベース層BLと、メンブレン層MLと、キャップ層CLと、を有する。ベース層BLは、ベース基板10と、下部電極11と、ギャップ調整膜12aおよび12bと、空間13と、を有する。キャップ層CLは、キャップ基板20と、上部電極21と、ギャップ調整膜22aおよび22bと、空間23と、を有する。メンブレン層MLは、可動電極31と、ねじれバネ32aおよび32bと、固定部33と、枠34と、を有する。
図11に示すように、メンブレン層MLに含まれる可動電極31は、実施の形態1の加速度センサ1の可動電極31と同様に、低抵抗の単結晶シリコン基板からなり、z軸方向から視たときに、例えば長方形の形状を有する。z軸方向から視たときの可動電極31の平面寸法を、4.0mm(x軸方向)×3.5mm(y軸方向)とすることができる。また、z軸方向における可動電極31の厚さを、0.25mmとすることができる。
ギャップ長GAPbは、可動電極31と下部電極11との間に存在する空間13のz軸方向の厚さであり、可動電極31と下部電極11との間のz軸方向の距離である。また、比較例1でも、実施の形態1と同様に、x軸方向の下部電極11の中心位置における、空間13のz軸方向の厚さを、ギャップ長GAPbとして、定義する。
ギャップ長GAPtは、可動電極31と上部電極21との間に存在する空間23のz軸方向の厚さであり、可動電極31と上部電極21との間のz軸方向の距離である。また、比較例1でも、実施の形態1と同様に、x軸方向の上部電極21の中心位置における、空間23のz軸方向の厚さを、ギャップ長GAPtとして、定義する。
下部電極11と上部電極21とは、図8〜図11に示すように、可動電極31を挟んで対向する位置に配置されている。
下部電極11の回転軸AX1側の端部41(側面SB1)と、回転軸AX1との間の、x軸方向の距離を、距離LXbsとする。また、下部電極11の回転軸AX1側と反対側の端部42(側面SB2)と、回転軸AX1との間の、x軸方向の距離を、距離LXbeとする。このとき、比較例1では、距離LXbsを、200μmとし、距離LXbeを、4200μmとすることができる。
上部電極21の回転軸AX1側の端部51(側面SC1)と、回転軸AX1との間の、x軸方向の距離を、距離LXtsとする。また、上部電極21の回転軸AX1側と反対側の端部52(側面SC2)と、回転軸AX1との間の、x軸方向の距離を、距離LXteとする。このとき、距離LXtsを、距離LXbsと等しい200μmとし、距離LXteを、距離LXbeと等しい4200μmとする。
比較例1の加速度センサ101でも、本実施の形態1の加速度センサ1と同様に、可動電極31の質量、ならびに、ねじれバネ32aおよび32bのバネ定数は、重力加速度が印加されていない場合と比較して、重力加速度が印加された場合に、可動電極31の固定部33側と反対側の端部62がz軸方向において負側に2μm移動するように、設定されている。
比較例1の加速度センサ101では、ギャップ調整膜12aおよび12bの厚さは、ギャップ調整膜22aおよび22bの厚さと、等しい。そのため、可動電極31の回転軸AX1側の端部61の下端と、下部電極11の上面との間の、z軸方向の距離LZbは、可動電極31の回転軸AX1側の端部61の上端と、上部電極21の下面との間の、z軸方向の距離LZtと、等しい。
比較例1において、距離LZbおよび距離LZtのいずれも、5μmとし、重力加速度が−z軸方向に印加されているときの、ギャップ長GAPtを、6μmとし、ギャップ長GAPbを、4μmとする。
図13は、比較例1における、可動電極と下部電極との間の静電容量、および、可動電極と上部電極との間の静電容量のギャップ長依存性を示すグラフである。図13の横軸は、重力加速度GRが−z軸方向に印加され、かつ、可動電極31が振動していないときの、すなわち重力加速度GRが印加された静止状態の、ギャップ長GAPbを基準としたときの、ギャップ長GAPbの変化量ΔGAPbを示す。また、図13の横軸は、重力加速度GRが−z軸方向に印加され、かつ、可動電極31が振動していないときの、すなわち重力加速度GRが印加された静止状態の、ギャップ長GAPtを基準としたときの、ギャップ長GAPtの変化量ΔGAPtを示す。
言い換えれば、変化量ΔGAPbは、重力加速度GRが印加された静止状態から、可動電極31が回転軸AX1を中心として回転変位したときの、ギャップ長GAPbのずれ量である。また、変化量ΔGAPtは、重力加速度GRが印加された静止状態から、可動電極31が回転軸AX1を中心として回転変位したときの、ギャップ長GAPtのずれ量である。
図13では、重力加速度GRが印加された状態での、静電容量Cbの変化量ΔGAPb依存性(図13では、重力有での静電容量Cbと表記)を、実線で示し、静電容量Ctの変化量ΔGAPt依存性(図13では、重力有での静電容量Ctと表記)を、一点鎖線で示している。
なお、図13では、重力加速度が印加されていない状態での、静電容量Cbの変化量ΔGAPb依存性、および、静電容量Ctの変化量ΔGAPt依存性を、破線で示している(図13では、重力無での静電容量Cb、Ctと表記)。重力加速度が印加されていない場合、図8に示すように、可動電極31は下部電極11と上部電極21との間の中間位置で静止するため、静電容量Cbの変化量ΔGAPb依存性と、静電容量Ctの変化量ΔGAPt依存性とは、一致する。
鉛直方向(−z軸方向)に重力加速度が印加された場合、図12に示すように、y軸方向の負側から正側に向かって視たときに、可動電極31は反時計方向に回転変位し、ギャップ長GAPbは約1μm減少し、ギャップ長GAPtは約1μm増加する。そのため、ΔGAPb=ΔGAPt=0の場合、すなわち、重力加速度GRが印加された静止状態での、静電容量Cbの容量値と、静電容量Ctの容量値と、が異なる。
前述したように、加速度センサは、静電容量Cbの容量値と、静電容量Ctの容量値と、の容量差に基づいて、加速度を検出する。すなわち、加速度センサの出力ΔCは、静電容量Cbの容量値と、静電容量Ctの容量値と、の容量差であり、この出力ΔCに基づいて、加速度を検出する。そのため、静電容量Ctの容量値と、静電容量Cbの容量値と、の容量差において、重力加速度GRに相当する静電容量Ctの容量値と、重力加速度GRに相当する静電容量Cbの容量値とが、キャンセルされていることが望ましい。すなわち、重力加速度GRが印加されており、かつ、重力加速度GRより小さい鉛直方向の振動加速度が印加されていない状態で、可動電極31が静止状態であるときに、重力加速度GRに相当する静電容量Cbの容量値と、重力加速度GRに相当する静電容量Ctの容量値と、が等しいことが、望ましい。
ここで、重力加速度GRが印加され、かつ、重力加速度GRより小さい鉛直方向の振動加速度が印加されていない状態で、可動電極31が静止状態であるときに、静電容量Cbの容量値と、静電容量Ctの容量値とが、キャンセルされていないと、重力加速度GRより小さい鉛直方向の振動加速度を検知する精度が著しく低下する。
例えば、重力加速度GRが印加されており、かつ、重力加速度GRより小さい鉛直方向の振動加速度が印加されていない状態で、可動電極31が静止状態であるときに、静電容量Ctの容量値と、静電容量Cbの容量値とが、重力加速度GRに対応した容量値だけ異なる場合を考える。このような場合であって、重力加速度GRの1000分の1、すなわちGR/1000の加速度に相当する振幅の振動を1%の測定精度で測定するときは、検出器として、(1+1/1000−1/100000)GRと、(1+1/1000+1/100000)GRと、を分離する必要があるため、6桁の測定精度を有する検出器が必要である。
一方、重力加速度GRが印加されており、かつ、重力加速度GRより小さい鉛直方向の振動加速度が印加されていない状態で、可動電極31が静止状態であるときに、静電容量Ctの容量値と、静電容量Cbの容量値と、が等しい場合を考える。すなわち、静電容量Ctの容量値と、静電容量Cbの容量値と、がキャンセルされる場合を考える。このような場合であって、重力加速度GRの1000分の1、すなわちGR/1000の加速度に相当する振幅の振動を1%の測定精度で測定するときは、検出器として、(0+1/1000−1/100000)GRと、(0+1/1000+1/100000)GRと、を分離するためには、3桁の測定精度を有する検出器を用いれば十分である。
すなわち、重力加速度が印加された静止状態で、静電容量Cbの容量値と、静電容量Ctの容量値と、の容量差が増加すると、加速度センサのダイナミックレンジを大きくする必要があり、加速度センサの検出回路の消費電力が増加するおそれがある。一方、ダイナミックレンジを大きくすることができない場合には、加速度センサにおける加速度の測定精度が低下するか、または、加速度の感度が低下するおそれがある。
ここで、上記特許文献2に記載された技術によれば、上記した消費電力の増加、または、測定精度もしくは感度の低下の課題を解決する方法として、可動電極31の回転軸AX1を+z軸方向に移動させる方法が考えられる。しかしながら、このような方法では、課題を解決できないことを、比較例2と比較しながら、以下に説明する。
図14は、比較例2の加速度センサの断面図である。
図14に示すように、比較例2の加速度センサ201は、本実施の形態1の加速度センサ1と同様に、ベース層BLと、メンブレン層MLと、キャップ層CLと、を有する。ベース層BLは、ベース基板10と、下部電極11と、ギャップ調整膜12aおよび12b(図2参照)と、空間13と、を有する。キャップ層CLは、キャップ基板20と、上部電極21と、ギャップ調整膜22aおよび22b(図2参照)と、空間23と、を有する。メンブレン層MLは、可動電極31と、ねじれバネ32aおよび32bと、固定部33(図2参照)と、枠34と、を有する。
比較例2の加速度センサ201では、ギャップ調整膜12aの厚さは、ギャップ調整膜22aの厚さよりも厚い。そのため、可動電極31の回転軸AX1側の端部61の下端と、下部電極11の上面との間の、z軸方向の距離LZbは、可動電極31の回転軸AX1側の端部61の上端と、上部電極21の下面との間の、z軸方向の距離LZtよりも、長い。
比較例2でも、本実施の形態1と同様に、x軸方向の下部電極11の中心位置における、可動電極31と下部電極11との間のz軸方向の距離を、ギャップ長GAPbとして、定義する。また、比較例2でも、本実施の形態1と同様に、x軸方向の上部電極21の中心位置における、可動電極31と上部電極21との間のz軸方向の距離を、ギャップ長GAPtとして、定義する。
比較例2では、ギャップ調整膜12aの厚さを、ギャップ調整膜22aの厚さより例えば2μm大きくする。このとき、距離LZbは6μmとなり、距離LZtは4μmとなり、重力加速度GRが−z軸方向に印加されているときの、ギャップ長GAPtと、ギャップ長GAPbとが、等しくなる。
本発明者らは、比較例2の加速度センサ201において、可動電極31の回転角度を回転角度θとしたときに、可動電極31と下部電極11との間の静電容量Cbの容量値、および、可動電極31と上部電極21との間の静電容量Ctの容量値の、回転角度θ依存性を、詳細に検討した。その結果、静電容量Ctの容量値、および、静電容量Cbの容量値が、下記式(1)〜式(5)を満たすことを見出した。
ここで、
であり、また、
である。さらに、εは、空間13および23を占める気体の誘電率であり、Sbは、静電容量Cbに対応した有効電極面積であり、Scは、静電容量Ctに対応した有効電極面積である。比較例2では、下部電極11の面積は、可動電極31の面積よりも小さく、かつ、上部電極21の面積は、可動電極31の面積よりも小さい。そのため、静電容量Cbに対応した有効電極面積は、下部電極11の面積であり、静電容量Ctに対応した有効電極面積は、上部電極21の面積である。
式(1)〜式(5)において、回転角度θを0に近づけたときに、式(1)に示す静電容量Cbの容量値、および、式(2)に示す静電容量Ctの容量値は、上記特許文献2の式(1)と式(2)に漸近する。そのため、本願明細書の式(1)〜式(5)は、可動電極が傾斜することを考慮した式ということができる。
図15は、比較例2における、可動電極と下部電極との間の静電容量、および、可動電極と上部電極との間の静電容量のギャップ長依存性を示すグラフである。図15の横軸は、図13の横軸と同様に、ギャップ長GAPbの変化量ΔGAPb、および、ギャップ長GAPtの変化量ΔGAPtを示す。
図15に示すように、比較例2では、ΔGAPb=ΔGAPt=0の場合、静電容量Cbの容量値と、静電容量Ctの容量値とは、等しい。しかし、ΔGAPt=ΔGAPb≠0の場合、静電容量Cbの容量値と、静電容量Ctの容量値とは、異なる。これは、ΔGAPt=ΔGAPb=0での、静電容量Cbの1次導関数Cb’と、静電容量Ctの1次導関数Ct’とが、等しくなく、かつ、ΔGAPb=ΔGAPt=0での、静電容量Ctの2次導関数Ct”と、静電容量Cbの2次導関数Cb”とが、等しくないことによる。これは、上記特許文献2とは異なる結果であるが、前述した式(1)〜式(5)を用いて説明したように、本発明者らが、可動電極31が傾斜することを考慮したためであり、可動電極が傾斜することに起因する現象である。
前述したように、反射法弾性波探査では、反射法弾性波探査に用いられる加速度センサは、鉛直方向、すなわち重力加速度と同じ方向に印加され、かつ、重力加速度より小さい加速度を、検出する必要がある。すなわち、反射法弾性波探査に用いられる加速度センサでは、鉛直方向の加速度の感度を向上させる必要がある。そのため、反射法弾性波探査に用いられる加速度センサでは、加速度の感度を向上させるために、可動部の質量を大きくするか、または、可動部を固定部と接続する弾性変形部のバネ定数を小さくすることがある。
ところが、一方の端部が固定部に接続された可動電極は、自重により傾斜する。そして、可動電極が自重により傾斜した状態で、鉛直方向に印加された重力加速度よりも小さい加速度を検出する場合に、加速度センサの消費電力が増大するか、または、印加された加速度に対する加速度センサの出力の線形性が低下することを、本発明者らは見出した。
上記特許文献1および上記特許文献2に記載された技術では、可動電極が自重により傾斜したことによって、加速度センサの消費電力が増大することも、加速度センサの出力の加速度に対する線形性が低下することも、十分に考慮されていない。
一方、本実施の形態1の加速度センサ1では、距離LXbsが距離LXtsよりも小さく、かつ、距離LXbeが距離LXteよりも小さい。
図16は、実施の形態1における、可動電極と下部電極との間の静電容量、および、可動電極と上部電極との間の静電容量のギャップ長依存性を示すグラフである。図16の横軸は、図13の横軸と同様に、ギャップ長GAPbの変化量ΔGAPb、および、ギャップ長GAPtの変化量ΔGAPtを示す。
本実施の形態1の加速度センサ1では、前述したように、距離LXbsが距離LXtsよりも小さく、かつ、距離LXbeが距離LXteよりも小さい。そのため、ΔGAPb=ΔGAPt=0を満たす位置、すなわち鉛直方向(−z軸方向)に重力加速度GRが印加されている状態における可動電極31の静止位置において、静電容量Cbの1次導関数Cb’が静電容量Ctの1次導関数Ct’と等しく、かつ、静電容量Cbの2次導関数Cb”が静電容量Ctの2次導関数Ct”と等しい。そのため、ギャップ長GAPbの変化量ΔGAPb、および、ギャップ長GAPtの変化量ΔGAPtの広い範囲(±1μm未満)で、静電容量Cbが静電容量Ctと等しい。
また、上記特許文献2にも記載されているように、静電容量Cbの2次導関数Cb”と、静電容量Ctの2次導関数Ct”との間に差が生じると、加速度センサの静電容量Cbと静電容量Ctとの容量差に対応した出力ΔCの、変化量ΔGAPbおよびΔGAPtに対する直線性が低下するおそれがある。
図17は、実施の形態1、比較例1および比較例2の加速度センサに加速度が印加されたときの出力ΔCの非線形性を示すグラフである。図17の横軸は、重力加速度GRで規格化した印加加速度を示す。図17の縦軸は、重力加速度をGRとし、静止位置を中心とした±0.95GRの範囲での出力ΔCをフルスケール(FS)としたとき(以下では、「フルスケール(FS)±0.95GR」とも称する。)の、出力ΔCの非線形性を示す。
図17に示すように、比較例2における出力ΔCの非線形性は、比較例1における出力ΔCにおける非線形性よりも小さくなっており、さらに、本実施の形態1における出力ΔCの非線形性は、比較例2における出力ΔCにおける非線形性よりも小さくなっている。図17に示すように、フルスケール(FS)±0.95GRにおける非線形性は、比較例1では14.2%FSであり、比較例2では4.5%FSであり、本実施の形態1では2.2%FSであり、本実施の形態1では、比較例1および比較例2のいずれに比べても非線形性が小さくなるため、本実施の形態1の効果は明白である。
図18は、出力ΔCと、距離LXtsと距離LXbsとの差(LXts−LXbs)との関係を示すグラフである。図18では、実施の形態1における出力ΔCに加え、可動電極31が下部電極11および上部電極21のいずれとも平行でないことを無視した場合の出力ΔCを、比較例3として示している。比較例3は、上記特許文献2の式(3)に示す関係に相当するものである。なお、本実施の形態1の非線形性を示すグラフのうち、左端(LXts−LXbs=0)に白抜きの丸で示すデータは、比較例2のデータに相当する。
なお、図18では、距離LXbeを、3810μmとし、距離LXteを、4200μmとしている。
比較例3の非線形性を示すグラフでは、可動電極31が下部電極11および上部電極21のいずれとも平行でないことを無視しているため、距離LXtsと距離LXbsとの差(LXts−LXbs)を変化させても、出力ΔCの非線形性は変化せず、一定である。一方、実施の形態1の非線形性を示すグラフでは、距離LXtsと距離LXbsとの差(LXts−LXbs)を変化させることにより、出力ΔCの非線形性を調整することができる。すなわち、本実施の形態1では、距離LXbsを距離LXtsよりもある程度短くすることにより、出力ΔCの線形性の改善の効果があることが明らかである。
なお、図18に示す例では、距離LXtsと距離LXbsとの差(LXts−LXbs)が550μm程度のときに、出力ΔCの非線形性が最小になる。
このように、本発明者らが見出した、距離LXtsと距離LXbsとの差を調整することにより出力ΔCの非線形性を調整することは、可動電極31が下部電極11および上部電極21のいずれとも平行でないことを考慮したことにより、初めて明らかになった現象である。
つまり、可動電極31が回転軸AX1を中心として回転変位したときの静電容量Cbおよび静電容量Ctの変化への寄与の大きさは、回転軸AX1からの距離に依存する。回転軸AX1側と反対側の部分の可動電極31、および、回転軸AX1側と反対側の部分の下部電極11の方が、回転軸AX1側の部分の可動電極31、および、回転軸AX1側の部分の下部電極11に比べ、静電容量Cb、静電容量Cbの1次導関数Cb’、および、静電容量Cbの2次導関数Cb”への寄与が大きい。また、回転軸AX1側の部分の可動電極31、および、回転軸AX1側の部分の上部電極21の方が、回転軸AX1側と反対側の部分の可動電極31、および、回転軸AX1側と反対側の部分の上部電極21に比べ、静電容量Ct、静電容量Ctの1次導関数Ct’、および、静電容量Ctの2次導関数Ct”への寄与が大きい。
比較例2で示したように、距離LXbsが距離LXtsと等しく、かつ、距離LXbeが距離LXteと等しいときは、静電容量Ctの1次導関数Ct’は、静電容量Cbの1次導関数Cb’よりも小さく、静電容量Ctの2次導関数Ct”は、静電容量Cbの2次導関数Cb”よりも小さい。
一方、本実施の形態1で示したように、距離LXbsを距離LXtsよりも小さくし、かつ、距離LXbeを距離LXteよりも小さくする。このとき、回転軸AX1側と反対側の部分の可動電極31の、静電容量Cb、静電容量Cbの1次導関数Cb’、および、静電容量Cbの2次導関数Cb”への寄与が、小さくなる。また、回転軸AX1側の部分の可動電極31の、静電容量Ct、静電容量Ctの1次導関数Ct’、および、静電容量Ctの2次導関数Ct”への寄与が、小さくなる。したがって、本実施の形態1では、比較例2に比べ、1次導関数Ct’と1次導関数Cb’との差、および、2次導関数Ct”と2次導関数Cb”との差を、小さくすることができる。
これにより、加速度センサの静電容量Cbと静電容量Ctとの容量差に対応した出力ΔCの、変化量ΔGAPbおよびΔGAPtに対する直線性を向上させることができる。そのため、加速度センサのダイナミックレンジを小さくすることができ、加速度センサの検出回路の消費電力を低減することができる。または、加速度センサによる加速度の測定精度を向上させることができ、加速度の感度を向上させることができる。
なお、上記特許文献2に記載された技術では、距離LXbeが距離LXteよりも短い例は示されているものの、距離LXbsが距離LXtsよりも短い例は記載されていない。
<本実施の形態の主要な特徴と効果>
以上説明したように、本実施の形態1における加速度センサ1では、距離LXbsが距離LXtsよりも短く、かつ、距離LXbeが距離LXteよりも短い。これにより、重力加速度GRが印加されているときの可動電極31の静止位置において、静電容量Cbの1次導関数Cb’を、静電容量Ctの1次導関数Ct’と等しくし、かつ、静電容量Cbの2次導関数Cb”を、静電容量Ctの2次導関数Ct”と等しくすることができ、線形性に優れた出力ΔCを出力することができる。そのため、感度が高く、消費電力が低く、印加された加速度に対する出力の線形性が高い加速度センサを提供することができる。
なお、本実施の形態1における加速度センサ1では、後述する実施の形態2の加速度センサ1bとは異なり、距離LZtが距離LZbよりも小さい。これにより、重力加速度GRが印加されているときの可動電極31の静止位置において、ギャップ長GAPbをギャップ長GAPtと等しくすることができる。
本実施の形態1では、可動部としての可動電極31が、固定部33に対して、平面視においてy軸方向に沿った軸を中心として、回転変位可能である例について説明した。しかし、可動電極31の一部が少なくともz軸方向に変位可能であればよく、例えばx軸方向における可動電極31の固定部33側の端部61が、固定部33に直接接続されることにより、可動電極31が、いわゆる片持ち梁であってもよい。
このような場合、距離LXbsは、下部電極11の固定部33側の端部41と、固定部33との間の、x軸方向の距離であり、距離LXbeは、下部電極11の固定部33側と反対側の端部42と、固定部33との間の、x軸方向の距離である。また、距離LXtsは、上部電極21の固定部33側の端部51と、固定部33との間の、x軸方向の距離であり、距離LXteは、上部電極21の固定部33側と反対側の端部52と、固定部33との間の、x軸方向の距離である。
<実施の形態1の変形例>
鉛直方向の加速度を高精度に測定する方法として、可動電極と固定電極との間に電圧を印加し、発生するクーロン力で可動電極の位置を制御するサーボ制御による方法が考えられる。以下では、サーボ制御による方法を用いて加速度を検出する加速度センサを、実施の形態1の変形例として、説明する。
図19および図20は、実施の形態1の変形例の加速度センサの平面図である。
図19に示すように、実施の形態1の変形例の加速度センサ1aでは、ベース層BLは、下部電極11に加え、サーボ制御用下部電極14を有する。サーボ制御用下部電極14は、図2に示した下部電極11と同様に、領域AR1のうちギャップ調整膜12bが形成された領域以外の領域で、ベース基板10の上面上、すなわちベース基板10上に形成されている。サーボ制御用下部電極14は、平面視において、下部電極11のy軸方向における一方の側に、配置されている。
図20に示すように、実施の形態1の変形例の加速度センサ1aでは、キャップ層CLは、上部電極21に加え、サーボ制御用上部電極24を有する。サーボ制御用上部電極24は、図2に示した上部電極21と同様に、領域AR1のうちギャップ調整膜22bが形成された領域以外の領域で、キャップ基板20の下面下、すなわちキャップ基板20下に形成されている。サーボ制御用上部電極24は、平面視において、上部電極21のy軸方向における一方の側に、配置されている。
なお、実施の形態1の変形例の加速度センサ1aの構造を、本実施の形態1における加速度センサ1と同様な構造とし、サーボ制御用下部電極を下部電極11と兼用し、サーボ制御用上部電極を上部電極21と兼用してもよい。あるいは、実施の形態1の変形例の加速度センサ1aが、可動電極31に加え、サーボ制御用可動電極を有してもよい。
すなわち、サーボ制御用下部電極と、下部電極11とを、別に設けても一体的に設けてもよく、いずれの場合にも、同様の効果を有する。また、サーボ制御用上部電極と、上部電極21とを、別に設けても一体的に設けてもよく、いずれの場合にも、同様の効果を有する。さらに、サーボ制御用可動電極と、可動電極31とを、別に設けても一体的に設けてもよく、いずれの場合にも、同様の効果を有する。
サーボ制御で用いるクーロン力は、静電容量Cbの1次導関数Cb’ に比例し、静電容量Ctの1次導関数Ct’に比例する。そのため、1次導関数Ct’の変化量ΔGAPt依存性と1次導関数Cb’の変化量ΔGAPb依存性と、が異なる場合、サーボ制御用下部電極に印加するサーボ電圧と、サーボ制御用上部電極に印加するサーボ電圧とを、それぞれ異なる値に制御する必要が生じ、サーボ制御が煩雑になる。また、1次導関数Cb’ と1次導関数Ct’のうち、小さい方に合わせて最大サーボ電圧を決定する必要があるため、サーボ電圧が高電圧化するおそれがある。それに伴って、鉛直方向(−z軸方向)に印加される微小な振動加速度を精度よく検出できないか、または、加速度センサの消費電力が増大するおそれがある。
一方、本変形例の加速度センサ1aでも、実施の形態1の加速度センサ1と同様に、距離LXbsが距離LXtsよりも小さく、かつ、距離LXbeが距離LXteよりも小さい。
本変形例の加速度センサ1aにおける、可動電極31と下部電極11との間の静電容量Cbの容量値のギャップ長依存性を、図16に示した実施の形態1における、可動電極31と下部電極11との間の静電容量Cbの容量値のギャップ長依存性と、同様にすることができる。また、本変形例の加速度センサ1aにおける、可動電極31と上部電極21との間の静電容量Ctの容量値のギャップ長依存性を、図16に示した実施の形態1における、可動電極31と上部電極21との間の静電容量Ctの容量値のギャップ長依存性と、同様にすることができる。
ここで、実施の形態1に対する本変形例の関係と同様に、比較例1および比較例2に対して、サーボ制御用下部電極およびサーボ制御用上部電極を形成したものを、それぞれ比較例4および比較例5とする。分りやすいように、比較例4および比較例5のサーボ制御用下部電極およびサーボ制御用上部電極は、比較例1および比較例2の下部電極および上部電極と面積は同じに設定している。
例えばサーボ電圧1Vを印加した時に下部電極11および上部電極21で発生するクーロン力の絶対値は、容量値とギャップ量の比であるから、比較例4では、下部電極11で4.6μN、上部電極21で1.6μNであり、比較例5では、下部電極11で2.9μN、上部電極21で2.3μNである。
一方、本変形例では、例えばサーボ電圧1Vを印加した時に下部電極11および上部電極21で発生するクーロン力の絶対値は、下部電極11で2.5μN、上部電極21で2.5μNである。このように、本変形例では、例えばサーボ電圧1Vを印加した時に、下部電極11で発生するクーロン力が、上部電極21で発生するクーロン力と等しくなるため、サーボ制御が煩雑にならず、サーボ電圧を低電圧化することができる。
つまり、本変形例でも、実施の形態1と同様に、重力加速度GRが印加されているときの可動電極31の静止位置において、静電容量Cbの1次導関数Cb’を、静電容量Ctの1次導関数Ct’と等しくし、静電容量Cbの2次導関数Cb”を、静電容量Ctの2次導関数Ct”と等しくすることができる。これにより、サーボ制御が煩雑にならず、サーボ電圧を低電圧化することができる。そのため、鉛直方向(−z軸方向)に印加される微小な振動加速度を高精度で検出できるか、または、加速度センサの消費電力を低減することができる。
(実施の形態2)
次に、実施の形態2の加速度センサについて説明する。実施の形態2の加速度センサは、下部電極の面積が、上部電極の面積よりも小さい。
<加速度センサの構成>
図21および図22は、実施の形態2の加速度センサの断面図である。図23および図24は、実施の形態2の加速度センサの平面図である。
図21および図22は、図23および図24のB−B線に沿った断面図である。図21は、重力加速度がz軸方向に印加されていない状態を示し、図22は、重力加速度GRが−z軸方向に印加されている状態を示す。すなわち、図22は、重力加速度GRにより可動電極31が回転軸AX1を中心として回転変位した状態を示す。
図21および図22に示すように、本実施の形態2における加速度センサ1bは、ベース層BLと、メンブレン層MLと、キャップ層CLと、を有する。また、本実施の形態2における加速度センサ1bは、下部電極11および上部電極21の平面形状を除き、比較例1の加速度センサ101の構造と同様の構造を有する。
本実施の形態2における加速度センサ1bも、実施の形態1の加速度センサ1と同様に、−z軸方向に重力加速度GR(図22参照)が印加された状態で、±z軸方向に印加される微小な振動加速度を、高精度に検出することができる。
本実施の形態2でも、実施の形態1と同様に、可動電極31の質量、ならびに、ねじれバネ32aおよび32bのバネ定数は、重力加速度GRが印加されている状態で、可動電極31の回転軸AX1側と反対側の端部62が、重力加速度GRが印加されていない状態に比べ、z軸方向において負側に2μm移動するように、調整されている。
ギャップ長GAPbは、可動電極31と下部電極11との間に存在する空間13のz軸方向の厚さであり、可動電極31と下部電極11との間のz軸方向の距離である。また、本実施の形態2でも、実施の形態1と同様に、x軸方向の下部電極11の中心位置における、可動電極31と下部電極11との間のz軸方向の距離を、ギャップ長GAPbとして、定義する。
ギャップ長GAPtは、可動電極31と上部電極21との間に存在する空間23のz軸方向の厚さである。また、本実施の形態2でも、実施の形態1と同様に、x軸方向の上部電極21の中心位置における、可動電極31と上部電極21との間のz軸方向の距離を、ギャップ長GAPtとして、定義する。
本実施の形態2の加速度センサ1bでは、ギャップ調整膜12aの厚さは、ギャップ調整膜22aの厚さと、等しい。そのため、可動電極31の回転軸AX1側の端部61の下端と、下部電極11の上面との間の、z軸方向の距離LZbは、可動電極31の回転軸AX1側の端部61の上端と、上部電極21の下面との間の、z軸方向の距離LZtと、等しい。
なお、実施の形態1では、距離LZbと距離LZtを、距離LZbと距離LZtの平均値から±20%調節することで、重力GRが印加された状態のギャップ長GAPbとGAPtとを一致させた。本実施の形態2で、距離LZbが距離LZtと等しいとは、距離LZbおよび距離LZtの各々の、距離LZbと距離LZtとの平均値からの差がそれぞれ20%以下であることを意味する。
本実施の形態2では、距離LZbおよび距離LZtのいずれも5μmとし、重力加速度が−z軸方向に印加されているときの、ギャップ長GAPtを、6μmとし、ギャップ長GAPbを、4μmとすることができる。
下部電極11と上部電極21とは、図21〜図24に示すように、互いに平行、かつ、いずれもz軸に垂直になるように、配置されている。また、下部電極11および上部電極21は、z軸方向において互いに対向するように配置されている。
下部電極11の回転軸AX1側の端部41(側面SB1)と、回転軸AX1との間の、x軸方向の距離を、距離LXbsとする。また、下部電極11の回転軸AX1側と反対側の端部42(側面SB2)と、回転軸AX1との間の、x軸方向の距離を、距離LXbeとする。このとき、距離LXbsを、200μmとし、距離LXbeを、3810μmとすることができる。すなわち、距離LXbeと距離LXbsとの差を、3610μmとすることができる。
上部電極21の回転軸AX1側の端部51(側面SC1)と、回転軸AX1との間の、x軸方向の距離を、距離LXtsとする。また、上部電極21の回転軸AX1側と反対側の端部52(側面SC2)と、回転軸AX1との間の、x軸方向の距離を、距離LXteとする。このとき、距離LXtsを、590μmとし、距離LXteを、4200μmとすることができる。すなわち、距離LXteと距離LXtsとの差を、3610μmとすることができる。
一方、下部電極11のy軸方向の長さLYbは、上部電極21のy軸方向の長さLYtよりも小さい。すなわち、下部電極11の面積は、上部電極21の面積よりも小さい。本実施の形態2における加速度センサ1bでは、長さLYbと長さLYtが、下記式(6)
を満たす。これにより、式(1)により示される静電容量Cbの容量値と、式(2)により示される静電容量Ctの容量値とを、等しくすることができる。
<本実施の形態の主要な特徴と効果>
本実施の形態2における加速度センサ1bでも、実施の形態1の加速度センサ1と同様に、距離LXbsが距離LXtsよりも短く、かつ、距離LXbeが距離LXteよりも短い。
一方、本実施の形態2における加速度センサ1bでは、実施の形態1の加速度センサ1とは異なり、距離LZbが距離LZtと等しい一方で、長さLYbが長さLYtよりも小さい。すなわち、下部電極11の面積は、上部電極21の面積よりも小さい。
このような場合、重力加速度GRが印加されているときの可動電極31の静止位置において、ギャップ長GAPbはギャップ長GAPtよりも小さくなる。しかし、式(1)〜式(6)を満たす場合には、重力加速度GRが印加されているときの静止位置において、静電容量Ctの1次導関数Ct’を、静電容量Cbの1次導関数Ct’と等しくし、かつ、静電容量Cbの2次導関数Cb”を、静電容量Ctの2次導関数Ct”と等しくすることができ、線形性に優れた出力ΔCを出力することができる。そのため、本実施の形態2でも、本実施の形態1と同様の効果を有し、感度が高く、消費電力が低く、印加された加速度に対する出力の線形性が高い加速度センサを提供することができる。
<実施の形態2の変形例>
本実施の形態2における加速度センサ1bでは、分かりやすい例として、距離LXbeと距離LXbsとの差、および、距離LXteと距離LXtsとの差を、いずれも3610μmにした。しかし、距離LXbsが距離LXtsよりも短く、かつ、距離LXbeが距離LXteよりも短ければよく、距離LXbeと距離LXbsとの差を、距離LXteと距離LXtsとの差と等しくする必要はない。このような、距離LXbeと距離LXbsとの差と、距離LXteと距離LXtsとの差とが異なる例を、実施の形態2の変形例として、図25および図26に示す。図25および図26は、実施の形態2の変形例の加速度センサの平面図である。
図25および図26に示すように、本変形例の加速度センサ1cでは、距離LXbeと距離LXbsとの差(LXbe−LXbs)は、距離LXteと距離LXtsとの差(LXte−LXts)よりも小さい。このような場合でも、距離LXbs、距離LXbe、距離LXtsおよび距離LXte、ならびに、長さLYbおよび長さLYtが、式(6)を満たすように設定することにより、実施の形態2と同様の効果が得られる。
なお、上記式(6)の左辺が1に等しくなくても、実施の形態1と略同様の効果が得られる。例えば本変形例の加速度センサ1cの場合では、重力が印加されない場合(θ=0)の左辺の値は0.8程度であるから、それより1に近い場合、つまり0.8〜1.2程度であれば、実施の形態1と略同様の効果が得られる。
(実施の形態3)
次に、実施の形態3の加速度センサについて説明する。実施の形態3の加速度センサは、z軸方向から視たときに、可動電極31が、回転軸AX1を挟んで両側に配置された可動右電極31Rと可動左電極31Lとを有する。
<加速度センサの構成>
図27および図28は、実施の形態3の加速度センサの断面図である。図29および図30は、実施の形態3の加速度センサの平面図である。図31は、実施の形態3の加速度センサの断面図である。
図27は、図29および図30のA−A線に沿った断面図であり、図28および図31は、図29および図30のB−B線に沿った断面図である。図27および図28は、重力加速度がz軸方向に印加されていない状態を示し、図31は、重力加速度GRが−z軸方向に印加されている状態を示す。すなわち、図31は、重力加速度GRにより可動電極31が回転軸AX1を中心として回転変位した状態を示す。
図27および図28に示すように、本実施の形態3の加速度センサ1dは、ベース層BLと、メンブレン層MLと、キャップ層CLと、を有する。
図27〜図29に示すように、ベース層BLは、基体としてのベース基板10と、ギャップ調整膜12aおよび12bと、空間13と、を有する。
ベース基板10は、ベース基板10の主面としての上面の領域であって、ベース基板10の中心側の中心領域としての領域AR1と、ベース基板10の上面の領域であって、領域AR1よりもベース基板10の周辺側の周辺領域としての領域AR2と、を有する。
なお、平面視において、互いに交差、好適には直交する2つの方向を、x軸方向およびy軸方向とし、ベース基板10の主面に垂直な方向をz軸方向とする。
領域AR2では、ベース基板10の上面上、すなわちベース基板10上には、ギャップ調整膜12aが形成されている。また、領域AR1のうち一部の領域でも、ベース基板10の上面上、すなわちベース基板10上には、ギャップ調整膜12aと同層に、ギャップ調整膜12bが形成されている。
一方、領域AR1のうちギャップ調整膜12bが形成された領域以外の領域では、ベース基板10の上面上、すなわちベース基板10上には、ギャップ調整膜12bは形成されていない。また、本実施の形態3では、実施の形態1とは異なり、領域AR1のうちギャップ調整膜12bが形成された領域以外の領域では、下部電極11(図2参照)も形成されていない。したがって、領域AR1では、ベース基板10上に、空間13が形成されている。すなわち、ギャップ調整膜12bは、ベース基板10上に、空間13を形成するためのものである。空間13は、大気圧より十分低い圧力の気体で充満されている。
図27、図28および図30に示すように、キャップ層CLは、基体としてのキャップ基板20と、上部左電極21Lと、上部右電極21Rと、ギャップ調整膜22aおよび22bと、空間23と、を有する。
領域AR1は、キャップ基板20の主面としての下面の領域であって、キャップ基板20の中心側の中心領域としての領域でもある。また、領域AR2は、キャップ基板20の下面の領域であって、領域AR1よりもキャップ基板20の周辺側の周辺領域としての領域でもある。また、x軸方向およびy軸方向は、キャップ基板20の主面としての下面内で、互いに交差、好適には直交する2つの方向でもあり、z軸方向は、キャップ基板20の主面に垂直な方向でもある。
領域AR2では、キャップ基板20の下面下、すなわちキャップ基板20下には、ギャップ調整膜22aが形成されている。また、領域AR1のうち一部の領域でも、キャップ基板20の下面下、すなわちキャップ基板20下には、ギャップ調整膜22aと同層に、ギャップ調整膜22bが形成されている。
一方、領域AR1のうちギャップ調整膜22bが形成された領域よりもx軸方向における一方の側(図27中左側)の領域では、キャップ基板20の下面下、すなわちキャップ基板20下には、ギャップ調整膜22bは形成されておらず、上部左電極21Lが形成されている。上部左電極21Lは、領域AR1で、平面視において、x軸方向におけるギャップ調整膜22bの一方の側(図27中左側)に配置されている。上部左電極21Lは、可動部としての可動左電極31Lの上面と対向配置されている。
また、領域AR1のうちギャップ調整膜22bが形成された領域よりもx軸方向における他方の側(図27中右側)の領域では、キャップ基板20の下面下、すなわちキャップ基板20下には、ギャップ調整膜22bは形成されておらず、上部右電極21Rが形成されている。上部右電極21Rは、領域AR1で、平面視において、ギャップ調整膜22bを挟んで上部左電極21Lと反対側(図27中右側)に配置されている。上部右電極21Rは、可動部としての可動右電極31Rの上面と対向配置されている。
ギャップ調整膜22aおよび22bの厚さは、上部左電極21Lおよび上部右電極21Rの厚さよりも厚い。そのため、領域AR1では、上部左電極21L下、上部右電極21R下、および、キャップ基板20下に、空間23が形成されている。すなわち、ギャップ調整膜22aおよび22bは、上部左電極21L下、および、上部右電極21R下に、空間23を形成するためのものである。空間23は、大気圧より十分低い圧力の気体で充満されている。
キャップ基板20は、単結晶シリコン基板と、単結晶シリコン基板の表面に形成された酸化シリコン膜(図示せず)とにより形成されている。この酸化シリコン膜により、上部左電極21Lおよび上部右電極21Rは、キャップ基板20の単結晶シリコン基板と電気的に絶縁されている。また、上部左電極21Lおよび上部右電極21Rの各々は、電気接続線(図示せず)を介して例えば検出回路と電気的に接続されている。なお、ベース基板10も、単結晶シリコン基板により形成されている。
図27、図28および図30に示すように、メンブレン層MLは、可動部としての可動電極31と、ねじれバネ32aおよび32bと、固定部33と、枠34と、を有する。可動電極31、ねじれバネ32aおよび32b、固定部33および枠34は、いずれも低抵抗の単結晶シリコン基板からなり、その単結晶シリコン基板を、例えば厚さ方向(z軸方向)にDRIEによりエッチングして、単結晶シリコン基板を貫通する孔部を形成することにより、形成されている。なお、可動電極31の外側面と、枠34の内側面との間には、空間35が形成されている。
固定部33は、図27に示すように、ギャップ調整膜12bとギャップ調整膜22bとに挟まれている。固定部33の下端は、ギャップ調整膜12bに機械的に接続され、固定部33の上端は、ギャップ調整膜22bに機械的に接続されている。ギャップ調整膜12bは、ベース基板10に機械的に接続されているため、結局、固定部33は、ベース基板10に機械的に固定されている。すなわち、固定部33は、ベース基板10の主面としての上面上に固定されている。また、ギャップ調整膜22bは、キャップ基板20に機械的に接続されているため、結局、固定部33は、キャップ基板20に機械的に固定されている。固定部33は、電気接続線(図示せず)を介して例えば検出回路と電気的に接続されている。
ねじれバネ32aは、y軸方向に延在し、ねじれバネ32aのy軸方向における一方の側の端部36aは、固定部33に接続され、ねじれバネ32aのy軸方向における他方の側の端部37aは、可動電極31に接続されている。また、ねじれバネ32bは、y軸方向に延在し、ねじれバネ32bのy軸方向における一方の側の端部36bは、固定部33に接続され、ねじれバネ32bのy軸方向における他方の側の端部37bは、可動電極31に接続されている。
ねじれバネ32aは、ねじれバネ32aが弾性変形して、端部37aが端部36aに対してねじれることにより、端部37aが、端部36aに対して、y軸方向に沿った回転軸AX1を中心として回転変位可能となるように、設けられている。また、ねじれバネ32bは、ねじれバネ32bが弾性変形して、端部37bが端部36bに対してねじれることにより、端部37bが、端部36bに対して、ねじれバネ32aの回転軸AX1と同一の回転軸AX1を中心として回転変位可能となるように、設けられている。したがって、ねじれバネ32aおよび32bの各々は、弾性変形部である。
図27〜図31に示すように、可動電極31は、可動左電極31Lと、可動右電極31Rと、接続部38aおよび38bと、を有する。
可動左電極31Lは、領域AR1で、平面視において、x軸方向における固定部33の一方の側(図27中左側)に配置されている。また、可動右電極31Rは、領域AR1で、平面視において、x軸方向における固定部33の他方の側(図27中右側)に配置されている。すなわち、可動右電極31Rは、平面視において、固定部33を挟んで可動左電極31Lと反対側に配置されている。
可動左電極31Lの回転軸AX1側の端部61Lと、可動右電極31Rの回転軸AX1側の端部61Rとは、y軸方向で互いに離れて設けられた接続部38aおよび接続部38bにより、接続されている。接続部38aには、y軸方向に延在する回転軸AX1を中心として回転変位可能なねじれバネ32aが、接続され、接続部38bには、y軸方向に延在する回転軸AX1を中心として回転変位可能なねじれバネ32bが、接続されている。そのため、可動左電極31Lの固定部33側の端部61Lは、接続部38aおよび接続部38bを介して固定部33に接続されており、可動右電極31Rの固定部33側の端部61Rは、接続部38aおよび接続部38bを介して固定部33に接続されている。また、接続部38aおよび接続部38bにより接続された可動左電極31Lおよび可動右電極31Rは、固定部33に対して、ねじれバネ32aおよび32bの回転軸AX1を中心として、一体的に回転変位可能である。
可動左電極31Lと、可動右電極31Rとは、いずれも、z軸方向から視たときに、例えば長方形の形状を有する。すなわち、可動左電極31Lは、例えば、x軸方向に垂直な側面SM1Lおよび側面SM2L、ならびに、y軸方向に垂直な側面SM3Lおよび側面SM4Lを有し、可動右電極31Rは、例えば、x軸方向に垂直な側面SM1Rおよび側面SM2R、ならびに、y軸方向に垂直な側面SM3Rおよび側面SM4Rを有する。
側面SM1Lは、可動左電極31Lの回転軸AX1側の端部61Lであり、側面SM2Lは、可動左電極31Lの回転軸AX1側と反対側の端部62Lである。また、側面SM3Lは、可動左電極31Lのy軸方向における負側の端部63Lであり、側面SM4Lは、可動左電極31Lのy軸方向における正側の端部64Lである。
側面SM1Rは、可動右電極31Rの回転軸AX1側の端部61Rであり、側面SM2Rは、可動右電極31Rの回転軸AX1側と反対側の端部62Rである。また、側面SM3Rは、可動右電極31Rのy軸方向における負側の端部63Rであり、側面SM4Rは、可動右電極31Rのy軸方向における正側の端部64Rである。
一例として、z軸方向から視たときの可動左電極31Lの平面寸法を、4.0mm(x軸方向)×3.9mm(y軸方向)とし、z軸方向から視たときの可動右電極31Rの平面寸法を、4.0mm(x軸方向)×3.9mm(y軸方向)とすることができる。
接続部38aにねじれバネ32aが接続され、接続部38bにねじれバネ32bが接続されているため、可動左電極31Lと、可動右電極31Rとは、回転軸AX1を中心としてシーソーのように回転変位することができる。
可動左電極31Lの回転軸AX1側の端部61L(側面SM1L)と、回転軸AX1との間の、x軸方向の距離を、距離LXLmsとし、可動左電極31Lの回転軸AX1側と反対側の端部62L(側面SM2L)と、回転軸AX1との間の、x軸方向の距離を、距離LXLmeとする。また、可動右電極31Rの回転軸AX1側の端部61R(側面SM1R)と、回転軸AX1との間の、x軸方向の距離を、距離LXRmsとし、可動右電極31Rの回転軸AX1側と反対側の端部62R(側面SM2R)と、回転軸AX1との間の、x軸方向の距離を、距離LXRmeとする。
具体的には、距離LXLmsを、200μmとし、距離LXLmeを、4200μmとすることができる。また、距離LXRmsを、200μmとし、距離LXRmeを、4200μmとすることができる。
図30に示すように、可動左電極31Lと、可動右電極31Rとは、z軸方向から視たときに、同一の平面形状を有する。しかし、図27および図28に示すように、可動左電極31Lのz軸方向の厚さは、可動右電極31Rのz軸方向の厚さよりも小さい。これにより、可動左電極31Lの質量MSLを、可動右電極31Rの質量MSRよりも小さくすることができる。なお、メンブレン層MLを例えばSOI(Silicon On Insulator)基板により形成することにより、可動左電極31Lのz軸方向の厚さを、可動右電極31Rのz軸方向の厚さよりも容易に小さくすることができる。
具体的には、実施の形態3では、重力は−z軸方向に印加されているため、可動左電極31Lのz軸方向の厚さを、可動右電極31Rのz軸方向の厚さの例えば半分に設定することができ、可動左電極31Lのz軸方向の厚さを例えば125μmとし、可動右電極31Rのz軸方向の厚さを例えば250μmとすることができる。なお、重力が+z軸方向に印加されている場合は、可動左電極31Lのz軸方向の厚さを例えば250μmとし、可動右電極31Rのz軸方向の厚さを例えば125μmとすることで、同じ効果を得ることができる。
可動左電極31Lの重心GCLと、回転軸AX1との間の、x軸方向の距離を、距離LXLとする。また、可動右電極31Rの重心GCRと、回転軸AX1との間の、x軸方向の距離を、距離LXRとする。本実施の形態3では、重力の方向が、上部左電極21Lから可動左電極31Lに向かう方向(−z軸方向)である場合、質量MSLと距離LXLとの積が、質量MSRと距離LXRとの積よりも小さい。これにより、鉛直方向(−z軸方向)に重力加速度GRが印加されるときに、y軸方向の負側から正側に向かって視た場合、可動電極31が時計方向に回転変位することになる。なお、重力の方向が、可動左電極31Lから上部左電極21Lに向かう方向(+z軸方向)である場合、質量MSLと距離LXLとの積が、質量MSRと距離LXRとの積よりも大きい。
本実施の形態3における加速度センサ1dも、実施の形態1の加速度センサ1と同様に、−z軸方向に重力加速度GR(図31参照)が印加された状態で、±z軸方向に印加される微小な振動加速度を、高精度に検出することができる。
本実施の形態3における加速度センサ1dでは、可動左電極31Lおよび可動右電極31Rの質量、ならびに、ねじれバネ32aおよび32bのバネ定数は、重力加速度GR(図31参照)が印加されている状態で、可動右電極31Rの回転軸AX1側と反対側の端部62Rが、重力加速度GRが印加されていない状態に比べ、z軸方向において負側に2μm移動するように、調整されている。
ギャップ長GAPLtは、可動左電極31Lと上部左電極21Lとの間に存在する空間23のz軸方向の厚さであり、可動左電極31Lと上部左電極21Lとの間のz軸方向の距離である。可動左電極31Lが回転軸AX1を中心として回転変位することにより傾斜するため、空間23のz軸方向の厚さ、すなわち可動左電極31Lと上部左電極21Lとの間のz軸方向の距離は、x軸方向の各位置によって異なる。ここでは、x軸方向の上部左電極21Lの中心位置における、空間23のz軸方向の厚さを、ギャップ長GAPLtとして、定義する。すなわち、x軸方向の上部左電極21Lの中心位置における、可動左電極31Lと上部左電極21Lとの間のz軸方向の距離を、ギャップ長GAPLtとして、定義する。
ギャップ長GAPRtは、可動右電極31Rと上部右電極21Rとの間に存在する空間23のz軸方向の厚さであり、可動右電極31Rと上部右電極21Rとの間のz軸方向の距離である。可動右電極31Rが回転軸AX1を中心として回転変位することにより傾斜するため、空間23のz軸方向の厚さ、すなわち可動右電極31Rと上部右電極21Rとの間のz軸方向の距離は、x軸方向の各位置によって異なる。ここでは、x軸方向の上部右電極21Rの中心位置における、空間23のz軸方向の厚さを、ギャップ長GAPRtとして、定義する。すなわち、x軸方向の上部右電極21Rの中心位置における、可動右電極31Rと上部右電極21Rとの間のz軸方向の距離を、ギャップ長GAPRtとして、定義する。
ギャップ調整膜22aおよび22bの厚さを調整することにより、可動左電極31Lの回転軸AX1側の端部61Lの上端と、上部左電極21Lの下面との間の、z軸方向の距離であり、可動右電極31Rの回転軸AX1側の端部61Rの上端と、上部右電極21Rの下面との間の、z軸方向の距離である距離LZtは、調整されている。
本実施の形態3では、距離LZtを5μmとし、重力加速度GRが印加されているときの、ギャップ長GAPLtを4μmとし、ギャップ長GAPRtを6μmとすることができる。
上部左電極21Lと上部右電極21Rとは、図27、図28および図31に示すように、互いに同層に配置されている。また、前述したように、上部左電極21Lは、可動左電極31Lの上面と対向配置され、上部右電極21Rは、可動右電極31Rの上面と対向配置されている。
上部左電極21Lの回転軸AX1側の端部51L(側面SC1L)と、回転軸AX1との間の、x軸方向の距離を、距離LXLtsとする。また、上部左電極21Lの回転軸AX1側と反対側の端部52L(側面SC2L)と、回転軸AX1との間の、x軸方向の距離を、距離LXLteとする。このとき、距離LXLtsを、200μmとし、距離LXLteを、3810μmとすることができる。すなわち、距離LXLteと距離LXLtsとの差を、3610μmとすることができる。なお、側面SC3Lは、上部左電極21Lのy軸方向における負側の端部53Lであり、側面SC4Lは、上部左電極21Lのy軸方向における正側の端部54Lである。
上部右電極21Rの回転軸AX1側の端部51R(側面SC1R)と、回転軸AX1との間の、x軸方向の距離を、距離LXRtsとする。また、上部右電極21Rの回転軸AX1側と反対側の端部52R(側面SC2R)と、回転軸AX1との間の、x軸方向の距離を、距離LXRteとする。このとき、距離LXRtsを、590μmとし、距離LXRteを、4200μmとすることができる。すなわち、距離LXRteと距離LXRtsとの差を、3610μmとすることができる。なお、側面SC3Rは、上部右電極21Rのy軸方向における負側の端部53Rであり、側面SC4Rは、上部右電極21Rのy軸方向における正側の端部54Rである。
一方、上部左電極21Lのy軸方向の長さLYLtは、上部右電極21Rのy軸方向の長さLYRtよりも小さい。すなわち、上部左電極21Lの面積は、上部右電極21Rの面積よりも小さい。本実施の形態3における加速度センサ1dでは、長さLYRtと長さLYLtが、下記式(7)
を満たす。ここで、
であり、また、
である。これにより、式(1)により示される静電容量Cbの容量値と、式(2)により示される静電容量Ctの容量値とを、等しくすることができる。
本実施の形態3における加速度センサ1dでは、可動左電極31Lおよび可動右電極31Rからなる可動電極31は、−z軸方向に重力加速度GRが印加されているときに、重力加速度GRとは別に印加される加速度であって、微小な振動成分からなる加速度を、高精度に検出するためのものである。加速度により可動左電極31Lに印加される力と、加速度により可動右電極31Rに印加される力との差が十分大きくなるように、可動左電極31Lの質量と、可動右電極31Rの質量との質量差は、十分大きな値を有する。上述した微小な振動成分からなる加速度が可動電極31に印加されることにより、当該加速度により可動電極31に印加される力は、回転軸AX1を支点としたトルクとして可動右電極31Rおよび可動左電極31Lに作用し、回転軸AX1を中心として、可動右電極31Rおよび可動左電極31Lを、一体的に回転変位させる。
可動左電極31Lと上部左電極21Lとにより、空間23を挟んで、非平行平板型コンデンサが形成され、可動右電極31Rと上部右電極21Rとにより、空間23を挟んで、非平行平板型コンデンサが形成される。
図31に示すように、y軸方向の負側から正側に向かって視た場合、可動電極31が時計方向に回転変位したときは、可動左電極31Lと上部左電極21Lとの間の静電容量Cbは、大きくなる。一方、y軸方向の負側から正側に向かって視た場合、可動電極31が反時計回りに回転変位したときは、可動左電極31Lと上部左電極21Lとの間の静電容量Cbは、小さくなる。
また、図31に示すように、y軸方向の負側から正側に向かって視た場合、可動電極31が時計方向に回転変位したときは、可動右電極31Rと上部右電極21Rとの間の静電容量Ctは、小さくなる。一方、y軸方向の負側から正側に向かって視た場合、可動電極31が反時計回りに回転変位したときは、可動右電極31Rと上部右電極21Rとの間の静電容量Ctは、大きくなる。
本実施の形態3における加速度センサ1dの静電容量Cbは、実施の形態1における加速度センサ1の静電容量Cbに相当し、本実施の形態3における加速度センサ1dの静電容量Ctは、実施の形態1における加速度センサ1の静電容量Ctに相当する。つまり、加速度センサ1dは、検出回路により検出された静電容量Cbと、検出回路により検出された静電容量Ctとの容量差、すなわちΔC=Cb−Ctにより算出される出力ΔCに基づいて、重力加速度より小さい鉛直方向の加速度振動を検出する。すなわち、加速度センサ1dは、静電容量Cbと静電容量Ctとに基づいて、加速度を検出する。
<本実施の形態の主要な特徴と効果>
本実施の形態3における加速度センサ1dにおいて、距離LXLtsが距離LXRtsよりも短く、かつ、距離LXLteが距離LXRteよりも短いことは、実施の形態1の加速度センサ1において、距離LXbsが距離LXtsよりも短く、かつ、距離LXbeが距離LXteよりも短いことに相当する。そのため、本実施の形態3でも、本実施の形態1の効果に相当する効果を有し、感度が高く、消費電力が低く、印加された加速度に対する出力の線形性が高い加速度センサを提供することができる。
一方、本実施の形態3における加速度センサ1dでは、ベース層BLは、実施の形態1の下部電極11(図2参照)に相当する電極を有しない。そのため、加速度センサの製造工程数を削減することができ、加速度センサの製造コストを低減することができる。
<実施の形態3の変形例>
実施の形態3における加速度センサ1dでは、可動左電極31Lのz軸方向の厚さを、可動右電極31Rのz軸方向の厚さよりも薄くすることにより、可動左電極31Lの質量MSLを、可動右電極31Rの質量MSRよりも小さくした。しかし、質量MSLと距離LXLとの積を、質量MSRと距離LXRとの積よりも小さくすることにより、加速度により可動電極31に印加される力が、回転軸AX1を支点としたトルクとして可動電極31に印加されればよい。そのため、可動左電極31Lのz軸方向の厚さを、可動右電極31Rのz軸方向の厚さよりも薄くする必要はない。したがって、可動左電極31Lのz軸方向の厚さを、可動右電極31Rのz軸方向の厚さと等しくする一方、距離LXLを距離LXRよりも小さくした例を、実施の形態3の変形例として、図32に示す。図32は、実施の形態3の変形例の加速度センサの平面図である。
図32に示すように、本変形例の加速度センサ1eでは、距離LXLを距離LXRよりも小さくすることにより、質量MSLと距離LXLとの積を、質量MSRと距離LXRとの積よりも小さくする。これにより、実施の形態3の加速度センサ1dと同様の効果が得られる。
なお、実施の形態3では、分かりやすい例として、距離LXLteと距離LXLtsとの差(LXLte−LXLts)と距離LXRteと距離LXRtsとの差(LXRte−LXRts)を、いずれも3610μmにした。しかし、距離LXLtsが距離LXRtsよりも短く、かつ、距離LXLteが距離LXRteよりも短ければよく、距離LXLteと距離LXLtsとの差と、距離LXRteと距離LXRtsとの差とを、等しくする必要はない。重力加速度GRが印加された静止状態でのギャップ長GAPLtおよびGAPRtと、距離LXLts、LXLte、LXRtsおよびLXRteと、長さLYLtおよびLYRtとが、式(7)〜式(10)を満たすように設定することにより、実施の形態3と同様の効果が得られる。
(実施の形態4)
次に、実施の形態4の加速度センサについて説明する。実施の形態4の加速度センサでは、回転軸AX1側の部分の下部電極11の上面の高さが、回転軸AX1側と反対側の部分の下部電極11の上面の高さよりも高く、回転軸AX1側の部分の上部電極21の下面の高さが、回転軸AX1側と反対側の部分の上部電極21の下面の高さよりも高い。
<加速度センサの構成>
図33は、実施の形態4の加速度センサの断面図である。図33は、実施の形態1における図7の断面図に相当する断面図である。
図33に示すように、本実施の形態4における加速度センサ1fは、ベース層BLと、メンブレン層MLと、キャップ層CLと、を有する。また、本実施の形態4における加速度センサ1fは、空間13および23の形状、ならびに、可動電極31のy軸方向の長さを除き、比較例2の加速度センサ201の構造と同様の構造を有する。
すなわち、加速度センサ1fも、ベース基板10と、ベース基板10の主面としての上面上に固定された固定部33(図6参照)と、平面視において、x軸方向における固定部33の一方の側に配置された可動電極31と、可動電極31の下面と対向配置された下部電極11と、可動電極31の上面と対向配置された上部電極21と、を有する。可動電極31の固定部33側の端部61は、固定部33に接続されている。また、可動電極31は、ねじれバネ32aおよび32b(図6参照)の回転軸AX1を中心として回転変位可能である。
なお、本実施の形態4における加速度センサ1fでは、可動電極31のy軸方向の長さを3.1mmとし、実施の形態1の加速度センサ1と略同じ容量値に設定している。
下部電極11は、領域11aおよび領域11bを含む。領域11aは、下部電極11のうち、回転軸AX1側の領域、すなわち固定部33側の領域である。領域11bは、下部電極11のうち、回転軸AX1側と反対側の領域、すなわち固定部33側と反対側の領域であり、平面視において、領域11aを挟んで固定部33と反対側に位置する。
上部電極21は、領域21aおよび領域21bを含む。領域21aは、上部電極21のうち、回転軸AX1側の領域、すなわち固定部33側の領域である。領域21bは、上部電極21のうち、回転軸AX1側と反対側の領域、すなわち固定部33側と反対側の領域であり、平面視において、領域21aを挟んで固定部33と反対側に位置する。
このとき、領域11aの上面の高さは、領域11bの上面の高さよりも高く、領域21aの下面の高さは、領域21bの下面の高さよりも高い。
可動電極31の回転軸AX1側(図33中左側)の端部61の下端と、領域11aの上面とのz軸方向の距離を、距離LZb1とする。また、可動電極31の回転軸AX1側(図33中左側)の端部61の上端と、領域11bの上面とのz軸方向の距離を、距離LZb2とする。このとき、距離LZb1は、距離LZb2よりも短い。
一方、可動電極31の回転軸AX1側(図33中左側)の端部61の上端と、領域21aの下面とのz軸方向の距離を、距離LZt1とする。また、可動電極31の回転軸AX1側(図33中左側)の端部61の上端と、領域21bの上面とのz軸方向の距離を、距離LZt2とする。このとき、距離LZt1は、距離LZt2よりも長い。
例えば、領域11aと領域11bとの間に、高さ1.2μmの段差が形成され、領域21aと領域21bとの間に、高さ1.2μmの段差が形成されている。
なお、距離LZb1を、回転軸AX1と領域11aの上面とのz軸方向の距離と定義し、距離LZb2を、回転軸AX1と領域11bの上面とのz軸方向の距離と定義してもよい。また、距離LZt1を、回転軸AX1と領域21aの下面とのz軸方向の距離と定義し、距離LZt2を、回転軸AX1と領域21bの下面とのz軸方向の距離と定義してもよい。
これにより、本実施の形態4でも、実施の形態1と同様に、回転軸AX1側と反対側の部分の可動電極31の、静電容量Cb、静電容量Cbの1次導関数Cb’、および、静電容量Cbの2次導関数Cb”への寄与が、小さくなる。また、回転軸AX1側の部分の可動電極31の、静電容量Ct、静電容量Ctの1次導関数Ct’、および、静電容量Ctの2次導関数Ct”への寄与が、小さくなる。したがって、本実施の形態4でも、比較例2に比べ、1次導関数Cb’と1次導関数Ct’との差、および、2次導関数Cb”と2次導関数Ct”との差を、小さくすることができる。
なお、x軸方向の領域11aの中心位置における、可動電極31と領域11aとの間のz軸方向の距離を、ギャップ長GAPb1と定義し、x軸方向の領域11bの中心位置における、可動電極31と領域11bとの間のz軸方向の距離を、ギャップ長GAPb2と定義する。また、x軸方向の領域21aの中心位置における、可動電極31と領域21aとの間のz軸方向の距離を、ギャップ長GAPt1と定義し、x軸方向の領域21bの中心位置における、可動電極31と領域21bとの間のz軸方向の距離を、ギャップ長GAPt2と定義する。
図34は、実施の形態4における、可動電極と下部電極との間の静電容量、および、可動電極と上部電極との間の静電容量のギャップ長依存性を示すグラフである。図34の横軸は、図13の横軸と同様に、ギャップ長GAPbの変化量ΔGAPb、および、ギャップ長GAPtの変化量ΔGAPtを示す。
なお、図34では、ギャップ長GAPbを、ギャップ長GAPb1およびGAPb2の大きい方と定義し、ギャップ長GAPtを、ギャップ長GAPt1およびGAPt2の大きい方と定義している。
本実施の形態4の加速度センサ1fでは、前述したように、距離LZb1が距離LZb2よりも短く、かつ、距離LZt1が距離LZt2よりも長い。そのため、ΔGAPb=ΔGAPt=0を満たす位置、すなわち鉛直方向(−z軸方向)に重力加速度GRが印加されている状態における可動電極31の静止位置において、静電容量Cbの1次導関数Cb’が静電容量Ctの1次導関数Ct’と等しく、かつ、静電容量Cbの2次導関数Cb”が静電容量Ctの2次導関数Ct”と等しい。そのため、ギャップ長GAPbの変化量ΔGAPb、および、ギャップ長GAPtの変化量ΔGAPtの広い範囲(±1μm未満)で、静電容量Cbが静電容量Ctと等しい。したがって、本実施の形態4における加速度センサ1fでも、本実施の形態1における加速度センサ1と同様の効果を有する。
図35は、実施の形態4の加速度センサに加速度が印加されたときの出力ΔCの非線形性を示すグラフである。図35の横軸は、重力加速度GRで規格化した印加加速度を示す。図35の縦軸は、重力加速度をGRとし、静止位置を中心とした±0.95GRの範囲での出力ΔCをフルスケール(FS)としたときの、出力ΔCの非線形性を示す。
図35に示す本実施の形態4における出力ΔCの非線形性は、図17に示した比較例1および比較例2のいずれにおける出力ΔCの非線形性よりも小さくなっている。図35に示すように、フルスケール(FS)±0.95GRにおける非線形性は、本実施の形態4では2.4%FSであり、本実施の形態4では、図17に示した比較例1および比較例2のいずれに比べても非線形性が小さくなるため、本実施の形態4の効果は明白である。
なお、好適には、距離LZb1は、距離LZt1よりも長い。これにより、距離LZb1および距離LZb2の各々が、距離LZt1および距離LZt2のいずれよりも長くなるので、重力加速度GRが印加された静止状態で、静電容量Cbと静電容量Ctとが等しくなるように、容易に調整することができる。
図36および図37は、実施の形態4の加速度センサの平面図である。
図36および図37に示すように、下部電極11のy軸方向の長さLYbは、上部電極21のy軸方向の長さLYtよりも短くてもよい。すなわち、下部電極11の面積は、上部電極21の面積よりも小さくてもよい。これにより、重力加速度GRが印加されていない静止状態において、静電容量Cbと、静電容量Ctとが等しく、静電容量Cbの1次導関数Cb’と、静電容量Ctの1次導関数Ct’とが等しく、かつ、静電容量Cbの2次導関数Cb”と、静電容量Ctの2次導関数Ct”とが等しくなるように、容易に調整することができる。
なお、図36および図37に示すように、距離LXbsを距離LXtsと等しくすることができ、距離LXbeを距離LXteと等しくすることができる。これにより、可動電極31のx軸方向の長さを短くすることができ、加速度センサを小型化することができる。
また、距離LXbsが距離LXtsと等しいとは、距離LXbsおよび距離LXtsの各々の、距離LXbsと距離LXtsとの平均値からの差がそれぞれ20%以下であることを意味する。また、距離LXbeが距離LXteと等しいとは、距離LXbeおよび距離LXteの各々の、距離LXbeと距離LXteとの平均値からの差がそれぞれ20%以下であることを意味する。
<本実施の形態の主要な特徴と効果>
本実施の形態4における加速度センサ1fでは、回転軸AX1側の部分の下部電極11の上面の高さが、回転軸AX1側と反対側の部分の下部電極11の上面の高さよりも高く、回転軸AX1側の部分の上部電極21の下面の高さが、回転軸AX1側と反対側の部分の上部電極21の下面の高さよりも高い。これにより、重力加速度GRが印加されているときの可動電極31の静止位置において、静電容量Cbの1次導関数Cb’を、静電容量Ctの1次導関数Ct’と等しくし、かつ、静電容量Cbの2次導関数Cb”を、静電容量Ctの2次導関数Ct”と等しくすることができ、線形性に優れた出力ΔCを出力することができる。そのため、感度が高く、消費電力が低く、印加された加速度に対する出力の線形性が高い加速度センサを提供することができる。
<実施の形態4の第1変形例>
本実施の形態4でも、実施の形態1と同様に、サーボ制御による方法を用いて加速度を検出することができる。以下では、サーボ制御による方法を用いて加速度を検出する加速度センサを、実施の形態4の第1変形例として、説明する。
例えばサーボ電圧1Vを印加した時に下部電極11および上部電極21で発生するクーロン力の絶対値は、容量値とギャップ量の比であるから、本第1変形例では、下部電極11で2.9μN、上部電極21で2.9μNである。このように、本第1変形例では、例えばサーボ電圧1Vを印加した時に、下部電極11で発生するクーロン力が、上部電極21で発生するクーロン力と等しくなるため、サーボ制御が煩雑にならず、サーボ電圧を低電圧化することができる。
したがって、本第1変形例でも、実施の形態4と同様に、重力加速度GRが印加されているときの可動電極31の静止位置において、静電容量Cbの1次導関数Cb’を静電容量Ctの1次導関数Ct’と等しくし、静電容量Cbの2次導関数Cb”を静電容量Ctの2次導関数Ct”と等しくすることができる。これにより、サーボ制御が煩雑にならず、サーボ電圧を低電圧化することができる。そのため、鉛直方向(−z軸方向)に印加される微小な振動加速度を高精度で検出できるか、または、加速度センサの消費電力を低減することができる。
<実施の形態4の第2変形例>
実施の形態4において、領域11a上に少なくとも空気の比誘電率よりも高い比誘電率を有する絶縁膜を形成することにより、距離LZb1を真空の誘電率で換算したときの実効的な距離が、距離LZb2を真空の誘電率で換算したときの実効的な距離より短くなるようにしてもよい。また、領域21b下に少なくとも空気の比誘電率よりも高い比誘電率を有する絶縁膜を形成することにより、距離LZt1を真空の誘電率で換算したときの実効的な距離が、距離LZt2を真空の誘電率で換算したときの実効的な距離より短くなるようにしてもよい。このような例を、実施の形態4の第2変形例として、図38に示す。図38は、実施の形態4の第2変形例の加速度センサの断面図である。図38は、図33の断面図に相当する断面図である。
本第2変形例では、領域11aの上面の高さは、領域11bの上面の高さと等しいが、領域11a上に、下部絶縁膜15が形成されている。そのため、領域11a上に形成された下部絶縁膜15の上面の高さは、領域11bの上面の高さよりも高い。また、本第2変形例では、領域21aの下面の高さは、領域21bの下面の高さと等しいが、領域21b下に、上部絶縁膜25が形成されている。そのため、領域21aの下面の高さは、領域21b下に形成された上部絶縁膜25の下面の高さよりも高い。
本第2変形例では、可動電極31の回転軸AX1側の端部61の下端と、領域11aの上面との間の、z軸方向の距離を、距離LZb1とし、可動電極31の回転軸AX1側の端部61の下端と、領域11bの上面との間の、z軸方向の距離を、距離LZb2とする。また、可動電極31の回転軸AX1側の端部61の上端と、領域21aの下面との間の、z軸方向の距離を、距離LZt1とし、可動電極31の回転軸AX1側の端部61の上端と、領域21bの下面との間の、z軸方向の距離を、距離LZt2とする。
下部絶縁膜15および上部絶縁膜25の各々は、少なくとも空気の比誘電率よりも高い比誘電率を有する絶縁膜である。このような下部絶縁膜15および上部絶縁膜25を形成することにより、距離LZb1を真空の誘電率で換算したときの実効的な距離が、距離LZb2を真空の誘電率で換算したときの実効的な距離より短くなる。
なお、領域11aの上面の高さが、領域11bの上面の高さと等しいとは、領域11aの上面の高さおよび領域11bの上面の高さの各々の、領域11aの上面の高さと領域11bの上面の高さとの平均値からの差がそれぞれ20%以下であることを意味する。また、領域21aの下面の高さが、領域21bの下面の高さと等しいとは、領域21aの下面の高さおよび領域21bの下面の高さの各々の、領域21aの下面の高さと領域21bの下面の高さとの平均値からの差がそれぞれ20%以下であることを意味する。
例えば、領域11a上に、厚さ1.6μmの酸化シリコンからなる下部絶縁膜15が形成され、領域21b下に、厚さ1.6μmの酸化シリコンからなる上部絶縁膜25が形成されている。
図39は、実施の形態4の第2変形例における、可動電極と下部電極との間の静電容量、および、可動電極と上部電極との間の静電容量のギャップ長依存性を示すグラフである。図39の横軸は、図13の横軸と同様に、ギャップ長GAPbの変化量ΔGAPb、および、ギャップ長GAPtの変化量ΔGAPtを示す。なお、ギャップ長GAPbおよびGAPtの定義は、実施の形態1と同様にすることができる。
本実施の形態4の第2変形例の加速度センサ1gでは、距離LZb1を真空の誘電率で換算したときの実効的な距離が、距離LZb2を真空の誘電率で換算したときの実効的な距離よりも短い。また、距離LZt1を真空の誘電率で換算したときの実効的な距離が、距離LZt2を真空の誘電率で換算したときの実効的な距離よりも長い。そのため、ΔGAPb=ΔGAPt=0を満たす位置、すなわち鉛直方向(−z軸方向)に重力加速度GRが印加されている状態における可動電極31の静止位置において、静電容量Cbの1次導関数Cb’が静電容量Ctの1次導関数Ct’と等しく、かつ、静電容量Cbの2次導関数Cb”が静電容量Ctの2次導関数Ct”と等しい。すなわち、ギャップ長GAPbの変化量ΔGAPb、および、ギャップ長GAPtの変化量ΔGAPtの広い範囲(±1μm未満)で、静電容量Cbと静電容量Ctとは、一致している。したがって、本実施の形態4の第2変形例における加速度センサ1gでも、本実施の形態4における加速度センサ1fと同様の効果を有する。
図40は、実施の形態4の第2変形例の加速度センサに加速度が印加されたときの出力ΔCの非線形性を示すグラフである。図40の横軸は、重力加速度GRで規格化した印加加速度を示す。図40の縦軸は、重力加速度を重力加速度GRとし、静止位置を中心としたときの±0.95GRの範囲での出力ΔCをフルスケール(FS)としたとき(以下では、「フルスケール(FS)±0.95GR」とも称する。)の、出力ΔCの非線形性を示す。
図40に示す本第2変形例における出力ΔCの非線形性も、図35に示した実施の形態4における出力ΔCの非線形性と同様に、図17に示した比較例1および比較例2のいずれにおける出力ΔCにおける非線形性よりも小さくなっている。そのため、本第2変形例の効果も、実施の形態4の効果と同様に、明白である。
なお、図38において二点鎖線で示すように、下部絶縁膜15が、領域11a上および領域11b上に形成されていてもよく、この場合、領域11a上に形成された部分の下部絶縁膜15の厚さが、領域11b上に形成された部分の下部絶縁膜15の厚さよりも厚ければよい。また、上部絶縁膜25が、領域21a下および領域21b下に形成されていてもよく、この場合、領域21a下に形成された部分の上部絶縁膜25の厚さが、領域21b下に形成された部分の上部絶縁膜25の厚さよりも薄ければよい。
このような下部絶縁膜15を形成することにより、距離LZb1を真空の誘電率で換算したときの実効的な距離が、距離LZb2を真空の誘電率で換算したときの実効的な距離より短くなる。また、このような上部絶縁膜25を形成することにより、距離LZt1を真空の誘電率で換算したときの実効的な距離が、距離LZt2を真空の誘電率で換算したときの実効的な距離より長くなる。
すなわち、本第2変形例は、電極と可動電極との間に、少なくとも空気の比誘電率よりも高い比誘電率を有する絶縁膜を形成することにより、絶縁膜を形成しない場合に比べ、可動電極と電極との間の距離を真空の誘電率で換算したときの実効的な距離を、短くするものである。
<実施の形態4の第3変形例>
あるいは、実施の形態4の加速度センサに代え、実施の形態3の加速度センサにおいて、回転軸AX1側の部分の上部左電極21Lの下面の高さが、回転軸AX1側と反対側の部分の上部左電極21Lの下面の高さよりも低くてもよい。また、回転軸AX1側の部分の上部右電極21Rの下面の高さが、回転軸AX1側と反対側の部分の上部右電極21Rの下面の高さよりも高くてもよい。このような例を、実施の形態4の第3変形例として、図41および図42に示す。
図41は、実施の形態4の第3変形例の加速度センサの断面図である。図42は、実施の形態4の第3変形例の加速度センサの平面図である。図41は、図42のB−B線に沿った断面図である。図41は、重力加速度GRが−z軸方向に印加されている状態を示す。すなわち、図41は、重力加速度GRにより可動電極31が回転軸AX1を中心として回転変位した状態を示す。
本第3変形例の加速度センサ1hでは、上部左電極21Lは、領域21Laおよび領域21Lbを含む。領域21Laは、上部左電極21Lのうち、回転軸AX1側の領域、すなわち固定部33(図27参照)側の領域である。領域21Lbは、上部左電極21Lのうち、回転軸AX1側と反対側の領域、すなわち固定部33側と反対側の領域であり、平面視において、領域21Laを挟んで固定部33と反対側に位置する。
上部右電極21Rは、領域21Raおよび領域21Rbを含む。領域21Raは、上部右電極21Rのうち、回転軸AX1側の領域、すなわち固定部33側の領域である。領域21Rbは、上部右電極21Rのうち、回転軸AX1側と反対側の領域、すなわち固定部33側と反対側の領域であり、平面視において、領域21Raを挟んで固定部33と反対側に位置する。
このとき、領域21Laの下面の高さは、領域21Lbの下面の高さよりも低く、領域21Raの下面の高さは、領域21Rbの下面の高さよりも高い。
可動左電極31Lの回転軸AX1側の端部61L(図30参照)の上端と、領域21Laの下面とのz軸方向の距離を、距離LZLt1とする。また、可動左電極31Lの回転軸AX1側の端部61L(図30参照)の上端と、領域21Lbの下面とのz軸方向の距離を、距離LZLt2とする。このとき、距離LZLt1は、距離LZLt2よりも短い。
一方、可動右電極31Rの回転軸AX1側の端部61R(図30参照)の上端と、領域21Raの下面とのz軸方向の距離を、距離LZRt1とする。また、可動右電極31Rの回転軸AX1側の端部61R(図30参照)の上端と、領域21Rbの下面とのz軸方向の距離を、距離LZRt2とする。このとき、距離LZRt1は、距離LZRt2よりも長い。
なお、距離LZLt1を、回転軸AX1と領域21Laの下面とのz軸方向の距離と定義し、距離LZLt2を、回転軸AX1と領域21Lbの下面とのz軸方向の距離と定義してもよい。また、距離LZRt1を、回転軸AX1と領域21Raの下面とのz軸方向の距離と定義し、距離LZRt2を、回転軸AX1と領域21Rbの下面とのz軸方向の距離と定義してもよい。
このような場合、領域21Laに比べ、領域21Lbの、静電容量Cbの1次導関数Cb’および静電容量Cbの2次導関数Cb”への寄与が、小さくなる。また、領域21Raに比べ、領域21Rbの、静電容量Ctの1次導関数Ct’および静電容量Ctの2次導関数Ct”への寄与が、大きくなる。そのため、重力加速度GRが印加されているときの可動電極31の静止位置において、静電容量Cbの1次導関数Cb’を、静電容量Ctの1次導関数Ct’と等しくし、かつ、静電容量Cbの2次導関数Cb”を、静電容量Ctの2次導関数Ct”とを等しくすることができ、線形性に優れたΔCを出力することができる。したがって、感度が高く、消費電力が低く、印加された加速度に対する出力の線形性が高い加速度センサを提供することができる。
なお、実施の形態3の加速度センサにおいても、本実施の形態4の第2変形例と同様に、領域21Laの下面の高さを、領域21Lbの下面の高さと等しくし、領域21La下に少なくとも空気の比誘電率よりも高い比誘電率を有する絶縁膜を形成してもよい。これにより、距離LZLt1を真空の誘電率で換算したときの実効的な距離を、距離LZLt2を真空の誘電率で換算したときの実効的な距離よりも短くすることができる。
また、領域21Raの下面の高さを、領域21Rbの下面の高さと等しくし、領域21Rb下に少なくとも空気の比誘電率よりも高い比誘電率を有する絶縁膜を形成してもよい。これにより、距離LZRt1を真空の誘電率で換算したときの実効的な距離を、距離LZRt2を真空の誘電率で換算したときの実効的な距離よりも長くすることができる。
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。