JP6328007B2 - 鉄道車両用の空気抵抗低減部材 - Google Patents

鉄道車両用の空気抵抗低減部材 Download PDF

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Description

本発明は、鉄道車両用の空気抵抗低減部材に関する。
例えば、特許文献1には、鉄道車両の車体側面に対し、開口部から露出する台車を覆うように側板を取り付け、高速走行時における鉄道車両の近傍を流れる空気流を案内することにより、鉄道車両が空気流から受ける空気抵抗の低減を図る技術が開示されている。
また、特許文献2には、鉄道車両を構成する車両同士の車間部と、車体側面及び側板部材間とを覆うように網状体をそれぞれ設け、高速走行時における鉄道車両の近傍を流れる空気流を網状体に当てて分散させることにより、鉄道車両が空気流から受ける空気抵抗の低減を図る技術が開示されている。
特開2005−262962号公報 特開平7−172311号公報
特許文献1及び2に開示された技術は、鉄道車両の開口部または車間部を所定の部材で覆うため、開口部または車間部の内部においてメンテナンス等の作業を行う際には、開口部または車間部を外部に開放するための工程が必要となり、作業負担が増大する。
また、車間部のような走行時の可動部分を覆うように部材を設ける場合には、当該部材の耐久性により使用可能期間が定められ、定期的に部材を交換する必要が生じうる。これにより、運用コストが増加する。
そこで本発明は、鉄道車両用の空気抵抗低減部材において、鉄道車両のメンテナンス等の作業負担を増大させることなく空気抵抗を良好に低減でき、従来よりも長寿命化を実現できるようにすることを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る鉄道車両用の空気抵抗低減部材は、上下方向に表面が延びた第1領域と、前記第1領域より下方において、下方に向けて車幅が狭くなるように屈曲した第2領域とを有する鉄道車両の車体側面に対し、前記第2領域における車間部または開口部の前記鉄道車両の進行方向前方の周縁領域に取り付けられ、前記車体側面から側方に突設された突出頂部と、前記突出頂部から前記鉄道車両の進行方向前方及び上下方向に向かって下り勾配を成す傾斜面部とを有し、上下方向の幅が、前記鉄道車両の進行方向前方から後方に向かって増大した形状を有する。
上記態様に係る鉄道車両用の空気抵抗低減部材は、鉄道車両の進行方向の前方及び上下方向に向かって下り勾配を成す傾斜面部を有するとともに、上下方向の幅が鉄道車両の進行方向の前方から後方に向かって増大した形状を有するので、走行時に鉄道車両の車体側面の近傍を流れる空気流を傾斜面部に当てて車体側面から外方に離間させることにより、空気抵抗低減部材よりも鉄道車両の進行方向後方に存在する車間部または開口部に空気流が流れ込むのを防止できる。車幅が下方に向けて狭くなるように屈曲して形成された第2領域の近傍を流れる空気流の流速は、第1領域の近傍を流れる空気流の流速よりも遅いので、空気抵抗低減部材を第2領域に取り付けることで、空気抵抗低減部材自身の空気抵抗を低減しながら、効率よく空気流を車体側面から離間させることができる。従って、鉄道車両が空気流より受ける空気抵抗を良好に低減できる。
上記本発明の一態様に係る鉄道車両用の空気抵抗低減部材は、鉄道車両の車間部または開口部を閉塞することなく車体側面に取り付けられるので、鉄道車両のメンテナンス等の作業時において、空気抵抗低減部材を取り付けたことによる作業負担が増大するのを防止できる。また、上記本発明の一態様に係る空気抵抗低減部材は、鉄道車両の可動部を覆うように設ける必要がないので、高い耐久性を維持でき、定期的な交換回数を少なくできる。
結果として、鉄道車両用の空気抵抗低減部材において、鉄道車両のメンテナンス等の作業負担を増大させることなく空気抵抗を良好に低減でき、従来よりも長寿命化を実現できる。
実施形態に係る鉄道車両の部分側面図である。 鉄道車両の図1のII−II線矢視断面図である。 空気抵抗低減部材の正面図である。 空気抵抗低減部材の斜視図である。 鉄道車両に取り付けられた状態における図3の空気抵抗低減部材のV−V線矢視断面図である。 図3の空気抵抗低減部材のVI−VI線矢視断面図である。 鉄道車両の走行中において空気抵抗低減部材の近傍を流れる空気流の動きを示す模式図である。 鉄道車両の走行中において車両側面の近傍を流れる空気流の流速分布をシミュレーションにより算出した結果を示す図である。 変形例1に係る空気抵抗低減部材の正面図である。 変形例2に係る空気抵抗低減部材の正面図である。 変形例3に係る鉄道車両の部分側面図である。
以下、本発明の実施形態とその変形例とについて、各図を参照して説明する。
<実施形態>
[鉄道車両]
図1は、実施形態に係る鉄道車両1の部分側面図である。図2は、鉄道車両1の図1のII−II線矢視断面図である。図2では、車両2の輪郭線を実線で示し、台枠3aと輪軸6の一部とを破線で示し、法令で定められた車体の車両限界を規定する限界線Pを一点鎖線で示している。
図1及び2に示す鉄道車両1は、いわゆる高速鉄道車両であって、連結された複数の車両2を備えて構成される。車両2の各々は、進行方向に延びる車体3と、線路R上に走行可能に配置され、車体3を下方より支持する複数の台車4とを有する。一例として、鉄道車両1は、線路Rに沿って、図1の紙面左右方向のいずれの方向に対しても走行が可能である。
車体3は、各台車4の上方で水平に配置された台枠3aと、車体3の幅方向の両側にそれぞれ配置された側構体3bと、各側構体3bの上方に配置された屋根構体3cとを有する。側構体3bの外面は、車両2の車体側面3dをなしている。車体側面3dは、上下方向に表面が延びた第1領域3eと、第1領域3eより下方において、車両2の車幅が下方に向けて狭くなるように屈曲して形成された第2領域3fとを有する。図2に示すように、第2領域3fは、一例として、下方に行くに従って、車両2の幅方向の内方に曲面状に屈曲した側面形状を有する。これにより、第2領域3fは、台枠3aの下方に配置された不図示の各種機器及び各種構造物を覆っている。第2領域3fには、鉄道車両1の進行方向に交差する方向に延びる縁辺3g等で規定され且つ下方に開放された切欠部である開口部S1が、車体3の長手方向に間隔をおいて複数にわたり形成されている。
台車4は、台車枠5と、台車枠5に回転可能に軸支された一対の輪軸6とを有し、車両2における各開口部S1の内部において、車体3を下方から支持するように設けられている。
隣接する2台の車両2の各々は、その長手方向端部である妻構え3hを互いに対向させた状態で、車間部S2をおいて、連結部3iにより連結されている。車間部S2では、車両2の車体側面3dを平面視する方向から見て、第1領域3eと略同じ高さの空間が幌7で囲まれ、第2領域3fと略同じ高さの空間が外部に露出している。
[空気抵抗低減部材]
図1及び2に示すように、隣接する2両の車両2の長手方向両端付近における第2領域3fには、空気抵抗低減部材8、9が取り付けられている。図3は、空気抵抗低減部材8の正面図である。図4は、空気抵抗低減部材8の斜視図である。図5は、鉄道車両1に取り付けられた状態における図3の空気抵抗低減部材8のV−V線矢視断面図である。図6は、図3の空気抵抗低減部材8のVI−VI線矢視断面図である。
空気抵抗低減部材8、9は、鉄道車両1の走行時において、車体側面3dの近傍を流れる空気流より鉄道車両1が受ける空気抵抗を低減する目的で設けられる。空気抵抗低減部材8、9は、互いに対称的な形状を有し且つ同じサイズで構成されている。従って、以下では、空気抵抗低減部材8の具体的な構成を説明する。
図3及び6に示すように、空気抵抗低減部材8は、鉄道車両1の進行方向における前方から後方に向かって、上下方向の幅Wと、車体側面3dから側方への突出高さhとが、ともに増大した形状を有する。空気抵抗低減部材8は、第2領域3fに取り付けられた状態で平面視すると、3つの角部を有する緩やかな三角形状の輪郭形状をしている。空気抵抗低減部材8は、第2領域3fに取り付けられる際、第1角部8aが車両進行方向における前端部として配置され、第2角部8bが上方向における端部として配置され、第3角部8cが下方向における端部として配置される。なお、鉄道車両1は、図1の紙面の左右方向のいずれにも進行可能であるので、隣接する2両の車両2の車体側面3dの各々に取り付けられる空気抵抗低減部材8、9は、車両2の長手方向で互いに逆向きとなる対称形状を有するように形成される。
図3〜5に示すように、空気抵抗低減部材8は、第1角部8aから鉄道車両1の進行方向後方に位置する領域において、側方に突出するように形成された突出頂部8dを有する。突出頂部8dは、空気抵抗低減部材8の上下方向の幅Wにおける中央部Oよりも下方側の位置に形成されている。突出頂部8dの突出高さhは、車両2の車体側面3dの近傍を流れる空気流を車体側面3dの側方に案内するために十分な高さに設計される。図2及び3に示すように、鉄道車両1では、空気抵抗低減部材8を第2領域3fに設け、且つ、第2領域3fの屈曲率が大きくなる車体3の下方側に突出頂部8dを偏在させている。これによって、車両2の左右両側の車体側面3dから車幅方向に向かう各突出頂部8dの厚みtと、突出頂部8dの位置に対応する高さの鉄道車両1の車両2の車幅Nとの合計長さD1(N+2×t)が、突出頂部8dの位置に対応する高さにおいて法令で規定された車両限界幅D2(図2に示した限界線Pを参照)よりも短くなるように設定されている。これにより、前記合計長さD1(N+2×t)が法令で規定された車両限界幅D2を超えない範囲で、車体側面3dから側方に向けて突出頂部8dをある程度突出させることができるように図られている。
空気抵抗低減部材8に突出頂部8dを設けたことにより、空気抵抗低減部材8には、突出頂部8dから鉄道車両1の進行方向の前方及び上方向に向かって下り勾配をなす第1傾斜面部8eと、突出頂部8dから鉄道車両1の進行方向の前方及び下方向に向かって下り勾配をなす第2傾斜面部8fとがそれぞれ形成されている。第1傾斜面部8eと、第2傾斜面部8fとは、一例として、平滑な表面を有する。第1傾斜面部8eと、第2傾斜面部8fとは、鉄道車両1の走行時において、第2領域3fの近傍を流れる空気流を車体側面3dから離間させるように案内する。また、空気抵抗低減部材8では、一例として、第1角部8aと突出頂部8dとを結ぶ稜線Q(上下方向の幅Wに沿った方向で、空気抵抗低減部材8の高さが最も高くなる表面上の各点を第1角部8aと突出頂部8dとの間で結ぶ線)が、鉄道車両1の進行方向方向前方から後方に向かって緩やかな下り勾配となるように位置している。
空気抵抗低減部材8の後部には、平滑な表面を有する端面8gが形成される。図5に示すように、空気抵抗低減部材8は、車体側面3dにおける第2領域3fの形状に沿って上下方向に延びる円弧状の断面形状を有するように形成されている。空気抵抗低減部材8は、一例として、端面8gの表面が車間部S2における妻構え3hの外表面と略同一平面内に位置するように車体側面3dに取り付けられる。なお、空気抵抗低減部材8は、端面8gが妻構え3hの外表面よりも車間部S2側に突出するように車体側面3dに取り付けてもよい。
図6に示すように、第1角部8aと突出頂部8dとを結ぶ直線と、鉄道車両の進行方向との間の角度θは、一例として、5°以上15°以下の範囲となるように設定される。この角度θの範囲は、空気抵抗低減部材8によって空気流を車体側面3dから離間する方向に良好に案内するとともに、空気抵抗低減部材8自身による空気抵抗を抑制することを考慮して設定されている。鉄道車両1の進行方向における空気抵抗低減部材8の長さLは、適宜調節が可能であり、例えば、空気抵抗低減部材8を取り付ける第2領域3fの表面を構成するパネルのサイズに合わせて設定できる。
図7は、鉄道車両1の走行中において空気抵抗低減部材8の近傍を流れる空気流の動きを示す模式図である。空気抵抗低減部材8が空気抵抗低減部材9よりも鉄道車両1の進行方向前方に位置するように鉄道車両1が走行する際には、鉄道車両1の進行方向の前方から後方に向けて、比較的高速の空気流が車両2の車体側面3dの近傍を流通する。図7に示すように、車体側面3dの第2領域3fの近傍を流通する空気流が車間部S2に接近する際、その空気流の一部が、空気抵抗低減部材8における第1傾斜面部8eまたは第2傾斜面部8fの表面に衝突する。第1傾斜面部8eの表面8e1に衝突した空気流E1は、鉄道車両1の進行方向且つ上方向に向かって車両2から離間するように案内される。また、第2傾斜面部8fの表面8f1に衝突した空気流E2は、鉄道車両1の進行方向且つ下方に向かって車両2から離間するように案内される。これにより、空気抵抗低減部材8より後方の車間部S2には、空気流E1、E2が入り込むのが抑制されるので、車間部S2に空気流E1、E2が入り込むことにより生じる空気抵抗が低減される。なお、空気抵抗低減部材8は、後部に端面8gを有しており、空気抵抗低減部材8の内部は、外部に対して閉塞されている。従って、空気流E1、E2が鉄道車両1の進行方向後方から前方に回り込み、空気抵抗低減部材8の内部に入り込んで空気抵抗を生じるおそれはない。また、空気抵抗低減部材8では、鉄道車両1の進行方向前方から後方に向かって、稜線Qが緩やかな下り勾配となるように位置しているので、空気抵抗低減部材8に衝突した空気流を、流速が比較的遅い領域(例えば車体3の下部側の空気層)へと導く効果が奏される。このような効果は、空気抵抗低減部材9が空気抵抗低減部材8よりも鉄道車両1の進行方向前方に位置するように鉄道車両1が走行する際には、空気抵抗低減部材9においても同様に奏される。
図8は、鉄道車両の走行中において車両側面の近傍を流れる空気流の流速分布をシミュレーションにより算出した結果を示す図である。図8では、空気抵抗低減部材を取り付けていない鉄道車両を所定の速度で高速走行させたときの車両側面の近傍を流れる空気流の流速分布を、最高速度を100%とした場合における相対速度として示している。一般に、車両側面の近傍を流れる空気流の多くは、鉄道車両の進行方向の前方から後方に向けて流通するが、車体側面の近傍を流れる一部の空気流の流通方向及び速度は、車体形状および近傍の地上構造物等による影響を受けて変化する。図8に示すように、車体側面の第2領域3fは、下方に向けて車両2の内方に屈曲しているため、第2領域3fの近傍を流れる空気流の速度は、第1領域3eの近傍を流れる空気流の速度よりも相対的に遅くなる。第1領域3eの近傍を流れる空気流の流速は、鉄道車両1の速度と近いが、第2領域3fの近傍を流れる空気流の流速は、車両2の下方寄りの位置では、鉄道車両1の速度の半分程度まで低下する。本実施形態では、このような空気流の流速の違いに着目し、第2領域3fに空気抵抗低減部材8、9を設けることで、空気抵抗低減部材8、9自身が空気流から受ける空気抵抗を低減しながら、空気抵抗低減部材8、9により空気流を車体側面3dから離間させることで、鉄道車両1の空気抵抗を良好に低減させている。
空気抵抗低減部材8、9は、車両2の車体側面3dに対し、車間部S2または開口部S1を閉塞せずに取り付けることができる。従って、車間部S2または開口部S1の内部に対してメンテナンスする等の作業を行う際に空気抵抗低減部材8、9を取り外す必要がないので、空気抵抗低減部材8、9を取り付けたことによる作業負担の増大を防止できる。
また、空気抵抗低減部材8、9は、車間部S2のように、鉄道車両1の走行時に可動部となる部分を覆うように設ける必要がない。従って、使用時に伸縮や変形を生じないので耐久性により制限を受けることが少なく、使用可能期間を比較的長くでき、定期的な交換回数を少なくできる。
結果として、空気抵抗低減部材8、9によれば、空気抵抗を良好に低減しつつ、鉄道車両1のメンテナンス等における作業負担を低減し、従来よりも長寿命を実現できる。また、空気抵抗低減部材8、9は、既存の車両2に対して比較的容易に取り付けることが可能である。従って、運用コストの低減を期待できる。
<確認試験>
空気抵抗低減部材の突出頂部の突出高さと、上下方向における突出頂部の位置を変化させたときに、空気抵抗低減部材による空気抵抗の低減効果がどのように変化するかを以下の手法で調べた。
上下方向における空気抵抗低減部材の中央部Oに突出頂部を配置し、突出高さhを50mm、長さを300mm、最大幅を590mm、角度θを9.5°に設定した空気抵抗低減部材を基本構造として用意した。この基本構造の空気抵抗低減部材の上下方向における突出頂部の位置と、突出高さhとをそれぞれ変化させることにより、表1に示す実施例A〜Eを用意した。
これらの実施例A〜Eの各々を鉄道車両の車両側面の第2領域に取り付けた場合において、走行中の鉄道車両が空気流より受ける空気抵抗の変化をシミュレーションにより算出した。空気抵抗は、複数の車両を連結して編成された鉄道車両において、各車間部における各車両の妻構えの外表面が空気流より受ける圧力及び摩擦抵抗の総和として計算した。空気抵抗低減部材を取り付けなかった鉄道車両の中間車両の空気抵抗を100(%)とした場合の各実施例A〜Eの空気抵抗(%)と、比較例と各実施例A〜Eとの空気抵抗差(%)とを算出して、表1に示した。
Figure 0006328007
実施例D及びEに示すように、上下方向における突出頂部の位置が同じ場合、突出部の突出高さhが高くなるほど、空気抵抗の低減効果が高まることが分かった。この理由の一つとしては、突出頂部の突出高さhが大きくなるほど角度θも大きくなり、鉄道車両の進行方向に沿って流れる空気流が空気抵抗低減部材の傾斜面部に当たり易くなって、空気流が空気抵抗低減部材によって車体側面から離間する方向に案内され易くなることが考えられる。従って、突出頂部の突出高さhは、例えば車両2の車両限界幅を考慮した70mm以下の範囲において、できるだけ大きくすることが望ましいと考えられる。
実施例A〜Cに示すように、突出頂部の高さhを同じ50mmに設定した場合、空気抵抗の低減効果は、上下方向において、突出頂部を空気抵抗低減部材の中央部よりも下方に位置させた場合(実施例B)が最も優れ、突出頂部を空気抵抗低減部材の中央部よりもやや下方に位置させた場合(実施例A)が次に優れ、突出頂部を空気抵抗低減部材の中央部よりも上方に位置させた場合(実施例C)がこれに次いで優れることが分かったこのような結果が得られた理由の一つとして、図8に示したように、車体側面の近傍を流れる空気流は、車体側面の下方に行くほど流速が遅くなるので、上下方向において、突出頂部を空気抵抗低減部材の中央部よりも下方に位置させることで、車体側面の下方を流れる緩やかな空気流が積極的に空気抵抗低減部材に当たって車体側面から離間され、空気抵抗の低減効果が高まったものと考えられる。
この確認試験の範囲及び表1に示す範囲では、上下方向における空気抵抗低減部材の突出頂部の位置は、中央部であってもよいが、中央部よりも下方であると空気抵抗の低減効果を一層高められると言える。
なお、本願発明者らの行った別の確認試験によれば、角度θを5°以上に設定することにより、車体側面に対して空気流を有効に離間できる効果が確認できた。また、角度θを15°以下に設定することにより、空気抵抗低減部材自身による空気抵抗を良好に抑制できることが確認できた。従って、角度θとしては、5°以上15°以下の範囲であることが望ましいと考えられる。
<変形例>
図9は、変形例1に係る空気抵抗低減部材80の正面図である。図9に示すように、空気抵抗低減部材80は、第2領域3fに取り付けられた状態で平面視すると、鉄道車両1の進行方向前方の端部を頂点80aとする略半円形状の輪郭形状を有している。空気抵抗低減部材80は、頂点80aから鉄道車両1の進行方向の前方から後方に向かって、車両2の側方に突出するように形成された突出頂部80bを有する。空気抵抗低減部材80は、鉄道車両1の進行方向前方且つ上下方向に向かって、突出頂部80bから下り勾配をなす傾斜面部80cを有する。空気抵抗低減部材80の後方には、端面80dが形成されている。
このような構成を有する変形例1の空気抵抗低減部材80によっても、上記実施形態と同様に、鉄道車両1の走行時において、第2領域3fの近傍を進行方向の前方から後方に向かって流通する一部の空気流を傾斜面部80cで車体側面3dの側方に案内し、この空気流が車間部S2に入り込むのを防止できる。空気抵抗低減部材80は、緩やかな表面形状を有しているので、傾斜面部80cにおいて空気流をスムーズに車体側面3dより側方に向けて案内できる。従って、空気流によって鉄道車両1が受ける空気抵抗を良好に低減できる。
図10は、変形例2に係る空気抵抗低減部材81の正面図である。図10に示すように、空気抵抗低減部材81は、第2領域3fに取り付けられた状態で平面視すると、鉄道車両1の進行方向前方に上下方向に延びる縁辺81aを有する変形六角形状の輪郭形状をしている。空気抵抗低減部材81は、縁辺81aから鉄道車両1の進行方向後方に向かって車両2の側方に突出し且つ上下方向に延びるように形成された突出頂部としての縁辺81bを有する。空気抵抗低減部材81は、縁辺81bの一端から、鉄道車両1の進行方向且つ上方向に向かって下り勾配をなす第1傾斜面部81cと、縁辺81bの他端から、鉄道車両1の進行方向且つ下方向に向かって下り勾配をなす第2傾斜面部81dとを有する。空気抵抗低減部材8の後方には、端面81eが形成されている。
このような構成を有する変形例2の空気抵抗低減部材81によっても、上記実施形態と同様に、鉄道車両1の走行時において、第2領域3fの近傍を進行方向の前方から後方に向かって流通する一部の空気流を第1傾斜面部81c及び第2傾斜面部81dで車体側面3dの側方に案内し、この空気流が車間部S2に入り込むのを防止して、空気流によって鉄道車両1が受ける空気抵抗を良好に低減できる。また、空気抵抗低減部材81では、第1傾斜面部81cと第2傾斜面部81dとが独立して形成されているので、第1傾斜面部81c及び第2傾斜面部81dの各傾斜角度をそれぞれ個別且つ調整でき、車体側面3dの形状に合わせて空気抵抗低減部材81の形状を比較的容易に最適化できると考えられる。
図11は、変形例3に係る鉄道車両1の部分側面図である。変形例3では、実施形態と同様に、車両2の長手方向両端付近における車体側面3d第2領域3fに空気抵抗低減部材8を取り付けるとともに、第2領域3fに形成された開口部S1の鉄道車両1の少なくとも進行方向前側(ここでは進行方向の前側及び後側の両方)の周縁領域にも空気抵抗低減部材82、83を取り付けている。空気抵抗低減部材82、83は、開口部S1の上下方向高さに合わせて空気抵抗低減部材8よりも若干小型のサイズで構成され、開口部S1の縁辺3gに合わせて端面82a、83aを傾斜させた以外は、空気抵抗低減部材8と略同様の形状を有している。
このような空気抵抗低減部材82、83を用いた場合においても、鉄道車両1の走行時には、空気抵抗低減部材8と同様に、第2領域3fの近傍を進行方向の前方から後方に向かって流通する一部の空気流を空気抵抗低減部材82、83において車体側面3dの側方に案内することで、空気流が開口部S1車に入り込むのを防止できる。従って、当該空気流により鉄道車両1が受ける空気抵抗を良好に低減できる。
なお、空気抵抗低減部材8、9と、空気抵抗低減部材82、83とは、必ずしも併用する必要はなく、空気抵抗低減部材8、9または空気抵抗低減部材82、83の一方のみを車両2に取り付けてもよい。
<その他の事項>
上記実施形態及び各変形例では、空気抵抗低減部材8、9、80〜83を車体側面3dの第2領域3fにおける開口部S1または車間部S2の周縁領域に取り付ける構成を例示したが、空気抵抗低減部材8、9、80〜83を取り付ける位置はこれに限定されない。例えば、第2領域3fに開口部S1以外の開口部が形成されている場合には、この開口部の周縁領域に空気抵抗低減部材8、9、80〜83を取り付けてもよい。
空気抵抗低減部材8、9、80〜83を取り付ける鉄道車両は、高速鉄道車両に限定されず、これ以外の鉄道車両であってもよい。
上記実施形態において、車体側面3dに取り付けた空気抵抗低減部材8の各縁辺の形状は、例えば図3に示すような緩やかな曲線状に限定されず、例えば、直線状としてもよい。
空気抵抗低減部材8、9、80〜83は、車体側面3dに対し、上下方向に複数個にわたって取り付けてもよい。
空気抵抗低減部材8、9、80〜83を取り付ける車両2は、鉄道車両1における中間車両のみに限定されず、例えば、先頭車両でもよいし、最後尾の車両でもよい。
空気抵抗低減部材8、9、80〜83は、例えば、板状部材をプレス加工して作製してもよいし、所定の部材を切削加工して作製してもよい。
空気抵抗低減部材8、9、80〜83は、車体側面3dとは別体で構成してもよいし、車体側面3dと一体的に構成してもよい。この場合、例えば、車体側面3dのパネルを構成する板状部材を部分的にプレス加工することにより、空気抵抗低減部材8、9、80〜83を構成できる。
以上のように、本発明の一態様に係る空気抵抗低減部材は、鉄道車両用の空気抵抗低減部材において、鉄道車両のメンテナンス等の作業負担を増大させることなく空気抵抗を良好に低減でき、従来よりも長寿命化を実現できる優れた効果を有する。従って、この効果の意義を発揮できる空気抵抗低減部材として広く適用すると、有益である。
D1 車体側面から車幅方向に向かう突出頂部の厚みと、突出頂部の位置に対応する高さの鉄道車両の車幅との合計長さ
D2 突出頂部の位置に対応する高さにおける鉄道車両の車両限界幅
N 突出頂部の位置に対応する高さの鉄道車両の車幅
Q 稜線
S1 開口部
S2 車間部
t 車体側面から車幅方向に向かう突出頂部の最大厚み
1 鉄道車両
2 車両
3d 車体側面
3e 第1領域
3f 第2領域
4 台車
8a、80a 第1角部(前側端部)
8d、80b 突出頂部
8e、81c 第1傾斜面部
8e1 第1傾斜面部の表面
8f、81d 第2傾斜面部
8f1 第2傾斜面部の表面
8、9、80〜83 空気抵抗低減部材
80c 傾斜面部

Claims (6)

  1. 上下方向に表面が延びた第1領域と、前記第1領域より下方において、下方に向けて車幅が狭くなるように屈曲した第2領域とを有する鉄道車両の車体側面に対し、前記第2領域における車間部または開口部の前記鉄道車両の進行方向前方の周縁領域に取り付けられ、
    前記車体側面から側方に突設された突出頂部と、前記突出頂部から前記鉄道車両の進行方向前方及び上下方向に向かって下り勾配を成す傾斜面部とを有し、
    上下方向の幅が、前記鉄道車両の進行方向前方から後方に向かって増大した形状を有する、鉄道車両用の空気抵抗低減部材。
  2. 前記突出頂部は、その上下方向の中央部よりも下方側に位置している、請求項1に記載の鉄道車両用の空気抵抗低減部材。
  3. 前記鉄道車両の進行方向における前端部と前記突出頂部とを結ぶ直線と、前記鉄道車両の進行方向との間の角度が、5°以上15°以下である、請求項1または2に記載の鉄道車両用の空気抵抗低減部材。
  4. 前記鉄道車両の進行方向における前端部と前記突出頂部とを結ぶ稜線が、車両の進行方向方向前方から後方に向かって下り勾配となるように位置している、請求項1〜3のいずれか1項に記載の鉄道車両用の空気抵抗低減部材。
  5. 前記第2領域の形状に沿って上下方向に延びる円弧状の断面形状を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の鉄道車両用の空気抵抗低減部材。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載する前記空気抵抗低減部材が取り付けられた、鉄道車両。
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