以下、本発明の受電器、及び、電力伝送システムを適用した実施の形態について説明する。
<実施の形態1>
本発明の受電器、及び、電力伝送システムを適用した実施の形態1について説明する前に、図1乃至図3を用いて、実施の形態1の受電器、及び、電力伝送システムの前提技術について説明する。
図1は、電力伝送システム50を示す図である。
図1に示すように、電力伝送システム50は、交流電源1、一次側(送電側)の送電器10、及び二次側(受電側)の受電器20を含む。電力伝送システム50は、送電器10及び受電器20を複数含んでもよい。
送電器10は、一次側コイル11と一次側共振コイル12を有する。受電器20は、二次側共振コイル21と二次側コイル22を有する。二次側コイル22には負荷装置30が接続される。
図1に示すように、送電器10及び受電器20は、一次側共振コイル(LC共振器)12と受電共振コイル(LC共振器)21の間の磁界共鳴(磁界共振)により、送電器10から受電器20へエネルギー(電力)の伝送を行う。ここで、一次側共振コイル12から二次側共振コイル21への電力伝送は、磁界共鳴だけでなく電界共鳴(電界共振)等も可能であるが、以下の説明では、主として磁界共鳴を例として説明する。
また、実施の形態1では、一例として、交流電源1が出力する交流電圧の周波数が6.78MHzであり、一次側共振コイル12と二次側共振コイル21の共振周波数が6.78MHzである場合について説明する。
なお、一次側コイル11から一次側共振コイル12への電力伝送は電磁誘導を利用して行われ、また、二次側共振コイル21から二次側コイル22への電力伝送も電磁誘導を利用して行われる。
また、図1には、電力伝送システム50が二次側コイル22を含む形態を示すが、電力伝送システム50は二次側コイル22を含まなくてもよく、この場合には、二次側共振コイル21に負荷装置30を直接的に接続すればよい。
図2は、送電器10から電子機器40A、40Bに磁界共鳴によって電力を伝送する状態を示す図である。
電子機器40A及び40Bは、それぞれ、タブレットコンピュータ及びスマートフォンであり、それぞれ、受電器20A、20Bを内蔵している。受電器20A及び20Bは、図1に示す受電器20(図1参照)から二次側コイル22を取り除いた構成を有する。すなわち、受電器20A及び20Bは、二次側共振コイル21を有する。なお、図2では送電器10を簡略化して示すが、送電器10は交流電源1(図1参照)に接続されている。
図2では、電子機器40A、40Bは、送電器10から互いに等しい距離の位置に配置されており、それぞれが内蔵する受電器20A及び20Bが磁界共鳴によって送電器10から非接触の状態で同時に電力を受電している。
ここで一例として、図2に示す状態において、電子機器40Aに内蔵される受電器20Aの受電効率が40%、電子機器40Bに内蔵される受電器20Bの受電効率が40%であることとする。
受電器20A及び20Bの受電効率は、交流電源1に接続される一次側コイル11から伝送される電力に対する、受電器20A及び20Bの二次側コイル22が受電する電力の比率で表される。なお、送電器10が一次側コイル11を含まずに交流電源1に一次側共振コイル12が直接的に接続されている場合は、一次側コイル11から伝送される電力の代わりに、一次側共振コイル12から伝送される電力を用いて受電電力を求めればよい。また、受電器20A及び20Bが二次側コイル22を含まない場合は、二次側コイル22が受電する電力の代わりに二次側共振コイル21が受電する電力を用いて受電電力を求めればよい。
受電器20A及び20Bの受電効率は、送電器10と受電器20A及び20Bのコイル仕様や各々との間の距離・姿勢によって決まる。図2では、受電器20A及び20Bの構成は同一であり、送電器10から互いに等しい距離・姿勢の位置に配置されているため、受電器20A及び20Bの受電効率は互いに等しく、一例として、40%である。
また、電子機器40Aの定格出力は10W、電子機器40Bの定格出力は5Wであることとする。
このような場合には、送電器10の一次側共振コイル12(図1参照)から伝送される電力は、18.75Wになる。18.75Wは、(10W+5W)/(40%+40%)で求まる。
ところで、送電器10から18.75Wの電力を電子機器40A及び40Bに向けて伝送すると、受電器20A及び20Bは、合計で15Wの電力を受信することになり、受電器20A及び20Bは、均等に電力を受電するため、それぞれが7.5Wの電力を受電することになる。
この結果、電子機器40Aは、電力が2.5W不足し、電子機器40Bは、電力が2.5W余ることになる。
すなわち、送電器10から18.75Wの電力を電子機器40A及び40Bに伝送しても、電子機器40A及び40Bがバランスよく受電することはできない。換言すれば、電子機器40A及び40Bが同時に受電する際における電力の供給バランスがよくない。
図3は、送電器10から電子機器40B1、40B2に磁界共鳴によって電力を伝送する状態を示す図である。
電子機器40B1、40B2は、同じタイプのスマートフォンであり、それぞれ、受電器20B1、20B2を内蔵している。受電器20B1及び20B2は、図2に示す受電器20Bと等しい。すなわち、受電器20B1及び20B2は、二次側共振コイル21を有する。なお、図3では送電器10を簡略化して示すが、送電器10は交流電源1(図1参照)に接続されている。
図3では、電子機器40B1及び40B2の送電器10に対する角度(姿勢)は等しいが、電子機器40B1は、電子機器40B2よりも送電器10から遠い位置に配置されている。電子機器40B1、40B2がそれぞれ内蔵する受電器20B1及び20B2は、磁界共鳴によって送電器10から非接触の状態で電力を同時に受電している。
ここで一例として、図3に示す状態において、電子機器40B1に内蔵される受電器20B1の受電効率が35%、電子機器40B2に内蔵される受電器20B2の受電効率が45%であることとする。
ここでは、電子機器40B1及び40B2の送電器10に対する角度(姿勢)は等しいため、受電器20B1及び20B2の受電効率は、受電器20B1及び20B2の各々と送電器10との間の距離によって決まる。このため、図3では、受電器20B1の受電効率は、受電器20B2の受電効率よりも低い。なお、電子機器40B1及び40B2の定格出力は、ともに5Wである。
このような場合には、送電器10の一次側共振コイル12(図1参照)から伝送される電力は、12.5Wになる。12.5Wは、(5W+5W)/(35%+45%)で求まる。
ところで、送電器10から12.5Wの電力を電子機器40B1及び40B2に向けて伝送すると、受電器20B1及び20B2は、合計で10Wの電力を受信することになる。また、図3では、受電器20B1の受電効率が35%であり、受電器20B2の受電効率が45%であるため、受電器20B1は、約4.4Wの電力を受電し、受電器20B2は、約5.6%の電力を受電することになる。
この結果、電子機器40B1は、電力が約0.6W不足し、電子機器40B2は、電力が0.6W余ることになる。
すなわち、送電器10から12.5Wの電力を電子機器40B1及び40B2に伝送しても、電子機器40B1及び40B2がバランスよく受電することはできない。換言すれば、電子機器40B1及び40B2が同時に受電する際における電力の供給バランスがよくない(改善の余地がある)。
なお、ここでは、電子機器40B1及び40B2の送電器10に対する角度(姿勢)が等しく、電子機器40B1及び40B2の送電器10からの距離が異なる場合の電力の供給バランスについて説明した。
しかしながら、受電効率は、送電器10と受電器20B1及び20B2との間の距離と角度(姿勢)によって決まるため、図3に示す位置関係において電子機器40B1及び40B2の角度(姿勢)が異なれば、受電器20B1及び20B2の受電効率は、上述した35%及び45%とは異なる値になる。
また、電子機器40B1及び40B2の送電器10からの距離が等しくでも、電子機器40B1及び40B2の送電器10に対する角度(姿勢)が異なれば、受電器20B1及び20B2の受電効率は互いに異なる値になる。
以上、図2に示すように、定格出力が互いに異なる電子機器40A、40Bに、送電器10から磁界共鳴によって電力を同時に伝送する際には、電子機器40A及び40Bがバランスよく受電することは困難である。
また、図3に示すように、電子機器40B1及び40B2の定格出力が互いに等しくても、電子機器40B1及び40B2の送電器10に対する角度(姿勢)が異なれば、受電器20B1及び20B2の受電効率は互いに異なるため、電子機器40B1及び40B2がバランスよく受電することは困難である。
また、図2及び図3では、電子機器40A及び40Bと、電子機器40B1及び40B2とがそれぞれ同時に受電する場合について説明したが、電子機器40Aと40B、又は、電子機器40B1と40B2のような複数の電子機器が時分割的に別々に受電することも考えられる。
しかしながら、複数の電子機器が時分割的に別々に受電する場合には、それぞれの電子機器が受電している間は、他の電子機器は受電できないため、すべての電子機器の受電が完了するのに時間がかかるという問題が生じる。
次に、図4乃至図9を用いて、実施の形態1の受電器、及び、電力伝送システムについて説明する。
図4は、実施の形態1の受電器100と送電装置80を示す図である。送電装置80は、交流電源1と送電器10を含む。交流電源1と送電器10は、図1に示すものと同様であるが、図4では、より具体的な構成を示す。
送電装置80は、交流電源1と送電器10を含む。
送電器10は、一次側コイル11、一次側共振コイル12、整合回路13、キャパシタ14、制御部15、及びアンテナ16を有する。
受電器100は、二次側共振コイル110、キャパシタ115、電圧計116、整流回路120、調整部130、平滑キャパシタ140、制御部150、電圧計155、出力端子160X、160Y、及びアンテナ170を含む。出力端子160X、160Yには、DC−DCコンバータ210が接続されており、DC−DCコンバータ210の出力側にはバッテリ220が接続されている。
まず、送電器10について説明する。図4に示すように、一次側コイル11は、ループ状のコイルであり、両端間に整合回路13を介して交流電源1に接続されている。一次側コイル11は、一次側共振コイル12と非接触で近接して配置されており、一次側共振コイル12と電磁界結合される。一次側コイル11は、自己の中心軸が一次側共振コイル12の中心軸と一致するように配設される。中心軸を一致させるのは、一次側コイル11と一次側共振コイル12との結合強度を向上させるとともに、磁束の漏れを抑制して、不必要な電磁界が一次側コイル11及び一次側共振コイル12の周囲に発生することを抑制するためである。
一次側コイル11は、交流電源1から整合回路13を経て供給される交流電力によって磁界を発生し、電磁誘導(相互誘導)により電力を一次側共振コイル12に送電する。
図4に示すように、一次側共振コイル12は、一次側コイル11と非接触で近接して配置されて一次側コイル11と電磁界結合されている。また、一次側共振コイル12は、所定の共振周波数を有し、高いQ値を有するように設計されている。一次側共振コイル12の共振周波数は、二次側共振コイル110の共振周波数と等しくなるように設定されている。一次側共振コイル12の両端の間に、共振周波数を調整するためのキャパシタ14が直列に接続される。
一次側共振コイル12の共振周波数は、交流電源1が出力する交流電力の周波数と同一の周波数になるように設定されている。一次側共振コイル12の共振周波数は、一次側共振コイル12のインダクタンスと、キャパシタ14の静電容量によって決まる。このため、一次側共振コイル12のインダクタンスと、キャパシタ14の静電容量は、一次側共振コイル12の共振周波数が、交流電源1から出力される交流電力の周波数と同一の周波数になるように設定されている。
整合回路13は、一次側コイル11と交流電源1とのインピーダンス整合を取るために挿入されており、インダクタLとキャパシタCを含む。
交流電源1は、磁界共鳴に必要な周波数の交流電力を出力する電源であり、出力電力を増幅するアンプを内蔵する。交流電源1は、例えば、数百kHzから数十MHz程度の高周波の交流電力を出力する。
キャパシタ14は、一次側共振コイル12の両端の間に、直列に挿入される可変容量型のキャパシタである。キャパシタ14は、一次側共振コイル12の共振周波数を調整するために設けられており、静電容量は制御部15によって設定される。
制御部15は、交流電源1の出力電圧及び出力周波数の制御、キャパシタ14の静電容量の制御等を行う。また、制御部15は、アンテナ16を通じて、受電器100とデータ通信を行う。
以上のような送電装置80は、交流電源1から一次側コイル11に供給される交流電力を磁気誘導により一次側共振コイル12に送電し、一次側共振コイル12から磁界共鳴により電力を受電器100の二次側共振コイル110に送電する。
次に、受電器100に含まれる二次側共振コイル110について説明する。ここでは、一例として、共振周波数が6.78MHzである形態について説明する。
二次側共振コイル110は、一次側共振コイル12と同一の共振周波数を有し、高いQ値を有するように設計されている。二次側共振コイル110は、共振コイル部111と、端子112X、112Yとを有する。ここで、共振コイル部111は、実体的には二次側共振コイル110そのものであるが、ここでは、共振コイル部111の両端に端子112X、112Yを設けたものを二次側共振コイル110として取り扱う。
共振コイル部111には、共振周波数を調整するためのキャパシタ115が直列に挿入されている。また、キャパシタ115には、調整部130が並列に接続されている。また、共振コイル部111の両端には、端子112X、112Yが設けられている。端子112X、112Yは、整流回路120に接続されている。端子112X、112Yは、それぞれ、第1端子及び第2端子の一例である。
二次側共振コイル110は、二次側コイルを介さずに整流回路120に接続されている。二次側共振コイル110は、調整部130によって共振が発生しうる状態にされているときには、送電器10の一次側共振コイル12から磁界共鳴によって送電される交流電力を整流回路120に出力する。
キャパシタ115は、二次側共振コイル110の共振周波数を調整するために、共振コイル部111に直列に挿入されている。キャパシタ115は、端子115X及び115Yを有する。キャパシタ115には、調整部130が並列に接続されている。
電圧計116は、キャパシタ115に並列に接続されており、キャパシタ115の両端子間電圧を測定する。電圧計116は、二次側共振コイル110が受電する交流電力の電圧を検出し、電圧を表す信号を制御部150に伝送する。電圧計116で測定する交流電圧は、スイッチ131X及び131Yを駆動する駆動信号の同期を取るために用いられる。
整流回路120は、4つのダイオード121〜124を有する。ダイオード121〜124は、ブリッジ状に接続されており、二次側共振コイル110から入力される電力を全波整流して出力する。
調整部130は、二次側共振コイル110の共振コイル部111において、キャパシタ115に並列に接続されている。
調整部130は、スイッチ131X、131Y、ダイオード132X、132Y、キャパシタ133X、133Y、及び端子134X、134Yを有する。
スイッチ131X及び131Yは、端子134X及び134Yの間で互いに直列に接続されている。スイッチ131X及び131Yは、それぞれ、第1スイッチ及び第2スイッチの一例である。端子134X、134Yは、それぞれ、キャパシタ115の端子115X、115Yに接続されている。このため、スイッチ131X及び131Yの直列回路は、キャパシタ115に並列に接続されている。
ダイオード132Xとキャパシタ133Xは、スイッチ131Xに並列に接続されている。ダイオード13Yとキャパシタ133Yは、スイッチ131Yに並列に接続されている。ダイオード132X及び132Yは、互いのアノード同士が接続されるとともに、互いのカソードがキャパシタ115に接続されている。すなわち、ダイオード132X及び132Yは、互いの整流方向が反対向きになるように接続されている。
なお、ダイオード132X及び132Yは、それぞれ、第1整流素子及び第2整流素子の一例である。また、調整部130は、キャパシタ133X及び133Yを含まなくてもよい。
スイッチ131X、ダイオード132X、及びキャパシタ133Xとしては、例えば、FET(Field Effect Transistor)を用いることができる。Pチャネル型又はNチャネル型のFETのドレイン−ソース間のボディダイオードが、ダイオード132Xのような整流方向を有するように接続すればよい。Nチャネル型のFETを用いる場合は、ソースがダイオード132Xのアノードであり、ドレインがダイオード132Xのカソードである。
また、スイッチ131Xは、制御部150から出力される駆動信号がゲートに入力されることにより、ドレイン−ソース間の接続状態を切り替えることによって実現される。また、キャパシタ133Xは、ドレイン−ソース間の寄生容量によって実現することができる。
同様に、スイッチ131Y、ダイオード132Y、及びキャパシタ133Yとしては、例えば、FETを用いることができる。Pチャネル型又はNチャネル型のFETのドレイン−ソース間のボディダイオードが、ダイオード132Bのような整流方向を有するように接続すればよい。Nチャネル型のFETを用いる場合は、ソースがダイオード132Yのアノードであり、ドレインがダイオード132Yのカソードである。
また、スイッチ131Yは、制御部150から出力される駆動信号がゲートに入力されることにより、ドレイン−ソース間の接続状態を切り替えることによって実現される。また、キャパシタ133Yは、ドレイン−ソース間の寄生容量によって実現することができる。
なお、スイッチ131X、ダイオード132X、及びキャパシタ133Xは、FETによって実現するものに限られず、スイッチ、ダイオード、及びキャパシタを並列に接続することによって実現してもよい。これは、スイッチ131Y、ダイオード132Y、及びキャパシタ133Yについても同様である。
スイッチ131Xと131Yは、互いに逆位相でオン/オフが切り替えられる。スイッチ131Xがオフでスイッチ131Yがオンのときには、調整部130内では端子134Xからキャパシタ133X及びスイッチ131Yを経て端子134Yに向かう方向に共振電流が流れるとともに、キャパシタ115には端子115Xから端子115Yに共振電流が流れ得る状態になる。すなわち、図4において、二次側共振コイル110には時計回りの方向に共振電流が流れ得る状態になる。
また、スイッチ131Xがオンでスイッチ131Yがオフのときには、調整部130内では端子134Xからスイッチ131X及びダイオード132Yを経て端子134Yに向かう電流経路が生じる。この電流経路は、キャパシタ115に並列であるため、キャパシタ115には電流が流れなくなる。
従って、スイッチ131Xがオフでスイッチ131Yがオンにされていて、二次側共振コイル110に時計回りの方向に共振電流が流れている状態から、スイッチ131Xがオンでスイッチ131Yがオフの状態に切り替えられると、共振電流が生じなくなる。電流経路にキャパシタが含まれなくなるからである。
また、スイッチ131Xがオンでスイッチ131Yがオフのときには、調整部130内では端子134Yからキャパシタ133Y及びスイッチ131Xを経て端子134Xに向かう方向に共振電流が流れるとともに、キャパシタ115には端子115Yから端子115Xに共振電流が流れ得る状態になる。すなわち、図4において、二次側共振コイル110には反時計回りの方向に共振電流が流れ得る状態になる。
また、スイッチ131Xがオフでスイッチ131Yがオンのときには、調整部130内では端子134Yからスイッチ131Y及びダイオード132Xを経て端子134Xに向かう電流経路が生じる。この電流経路は、キャパシタ115に並列であるため、キャパシタ115には電流が流れなくなる。
従って、スイッチ131Xがオンでスイッチ131Yがオフにされていて、二次側共振コイル110に反時計回りの方向に共振電流が流れている状態から、スイッチ131Xがオフでスイッチ131Yがオンの状態に切り替えられると、共振電流が生じなくなる。電流経路にキャパシタが含まれなくなるからである。
調整部130は、上述のようにスイッチ131X及び131Yを切り替えることにより、共振電流が生じ得る状態と、共振電流が生じない状態とを切り替える。スイッチ131X及び131Yの切り替えは、制御部150から出力される駆動信号によって行われる。
駆動信号の周波数は、二次側共振コイル110が受電する交流周波数に設定される。
スイッチ131X及び131Yは、上述のような高い周波数で交流電流の遮断を行う。例えば、2つのFETを組み合わせた調整部130は、高速で交流電流の遮断を行うことができる。
なお、駆動信号と調整部130の動作については、図6を用いて後述する。
平滑キャパシタ140は、整流回路120の出力側に接続されており、整流回路120で全波整流された電力を平滑化して直流電力として出力する。平滑キャパシタ140の出力側には、出力端子160X、160Yが接続される。整流回路120で全波整流された電力は、交流電力の負成分を正成分に反転させてあるため、略交流電力として取り扱うことができるが、平滑キャパシタ140を用いることにより、全波整流された電力にリップルが含まれるような場合でも、安定した直流電力を得ることができる。
なお、平滑キャパシタ140の上側の端子と出力端子160Xとを結ぶ線路は、高電圧側の線路であり、平滑キャパシタ140の下側の端子と出力端子160Yとを結ぶ線路は、低電圧側の線路である。
制御部150は、内部メモリにバッテリ220の定格出力を表すデータを保持する。また、送電器10の制御部15からのリクエストに応じて、送電器10から受電器100が受電する電力(受電電力)を測定し、受電電力を表すデータをアンテナ170を介して送電器10に送信する。
また、制御部150は、送電器10から位相差を表すデータを受信すると、受信した位相差を用いて駆動信号を生成して、スイッチ131X及び131Yを駆動する。なお、受電電力は、制御部150が、電圧計155で測定される電圧Vと、バッテリ220の内部抵抗値Rとに基づいて求めればよい。受電電力PはP=V2/Rで求められる。
ここで、図5を用いて制御部150について説明する。図5は、制御部150の内部構成を示す図である。
制御部150は、コンパレータ151、PLL(Phase Locked Loop:位相同期回路)152、位相シフト回路153、位相制御部154、インバータ155、及び基準位相検出部156を有する。
コンパレータ151は、電圧計116で検出される交流電圧を所定の基準電圧Vrefと比較し、クロックをPLL152に出力する。
PLL152は、位相比較器152A、補償機152B、及びVCO(Voltage Controlled Oscillator)152Cを有する。位相比較器152A、補償機152B、及びVCO152Cは、直列に接続されるとともに、VCO152Cの出力が位相比較器152Aにフィードバックされるように接続されている。このような構成によりPLL152は、コンパレータ151から入力される信号と同期したクロックを出力する。
位相シフト回路153は、PLL152の出力側に接続されており、位相制御部154から入力される位相差を表す信号に基づき、PLL152から出力されるクロックの位相を基準の位相に対して位相差分シフトして出力する。位相シフト回路153としては、例えば、Phase Shifterを用いればよい。
位相制御部154は、送電器10から送信される位相差を表す信号が入力されると、位相差を表す信号を位相シフト回路153用の信号に変換して出力する。
位相制御部154から入力される信号に基づいて、基準の位相に対して位相差分だけ位相がシフトされたクロックは、二手に分岐され、一方はそのままクロックCLK1として出力され、他方はインバータ155で反転されてクロックCLK2として出力される。クロックCLK1とCLK2は、制御部150が出力する制御信号である。
基準位相検出部156は、位相シフト回路153がクロックの位相をシフトするシフト量を制御することにより、PLL152が出力するクロックに対する位相シフト回路153が出力するクロックの位相を調整して、最大の受電効率が得られる位相を検出する。
そして、基準位相検出部156は、検出した位相を基準の位相として内部メモリに保持する。受電効率が最大になる動作点は、電圧計116で検出される電圧値が最大になる点であるため、基準位相検出部156は、位相シフト回路153で与える位相のシフト量を調整しながら、電圧計で検出される電圧値が最大になる動作点を検出し、その動作点における位相を基準の位相として内部メモリに保持する。
ここで、PLL152が出力するクロックは、電圧計116で検出される磁界共鳴による交流電圧の位相に対応している。このため、PLL152が出力するクロックに位相シフト回路153が与える位相のシフト量を調整することは、電圧計116で検出される電圧波形に対するクロックの位相のシフト量を位相シフト回路153で制御することである。
基準の位相は、最大の受電効率が得られるクロックCLK1とCLK2の交流電圧に対する位相である。この基準の位相を0度として取り扱い、受電電力を調整するために、基準の位相(0度)に対するクロックCLK1とCLK2の位相の位相差を位相シフト回路153で調整する。
ここでは、交流電圧の位相を検出しないため、最大の受電効率が得られるときのクロックCLK1とCLK2に位相シフト回路153が与える位相のシフト量を基準の位相として取り扱う。
なお、ここでは、電圧計116で検出される交流電圧に対して、PLL152から出力されるクロックの位相を位相シフト回路153で調整する形態について説明するが、電圧計116の変わりに電流計を用いて、交流電流に対するクロックの位相を位相シフト回路153で調整してもよい。
電圧計155は、出力端子160Xと160Yの間に接続される。電圧計155は、受電器100の受電電力を計算するために用いられる。電圧計155で測定される電圧Vと、バッテリ220の内部抵抗値Rとに基づいて上述のように受電電力を求めれば、電流を測定して受電電力を測定する場合に比べて損失が少ないため、好ましい測定方法である。しかしながら、受電器100の受電電力は、電流と電圧を測定して求めてもよい。電流を測定する場合は、ホール素子、磁気抵抗素子、検出コイル、又は抵抗器等を用いて測定すればよい。
DC−DCコンバータ210は、出力端子160X、160Yに接続されており、受電器100から出力される直流電力の電圧をバッテリ220の定格電圧に変換して出力する。DC−DCコンバータ210は、整流回路120の出力電圧の方がバッテリ220の定格電圧よりも高い場合は、整流回路120の出力電圧をバッテリ220の定格電圧まで降圧する。また、DC−DCコンバータ210は、整流回路120の出力電圧の方がバッテリ220の定格電圧よりも低い場合は、整流回路120の出力電圧をバッテリ220の定格電圧まで昇圧する。
バッテリ220は、繰り返し充電が可能な二次電池であればよく、例えば、リチウムイオン電池を用いることができる。例えば、受電器100がタブレットコンピュータ又はスマートフォン等の電子機器に内蔵される場合は、バッテリ220は、このような電子機器のメインのバッテリである。
なお、一次側コイル11、一次側共振コイル12、二次側共振コイル110は、例えば、銅線を巻回することによって作製される。しかしながら、一次側コイル11、一次側共振コイル12、二次側共振コイル110の材質は、銅以外の金属(例えば、金、アルミニウム等)であってもよい。また、一次側コイル11、一次側共振コイル12、二次側共振コイル110の材質は異なっていてもよい。
このような構成において、一次側コイル11及び一次側共振コイル12が電力の送電側であり、二次側共振コイル110が電力の受電側である。
磁界共鳴方式によって、一次側共振コイル12と二次側共振コイル110との間で生じる磁界共鳴を利用して送電側から受電側に電力を伝送するため、送電側から受電側に電磁誘導で電力を伝送する電磁誘導方式よりも長距離での電力の伝送が可能である。
磁界共鳴方式は、共振コイル同士の間の距離又は位置ずれについて、電磁誘導方式よりも自由度が高く、ポジションフリーというメリットがある。
次に、図6及び図7を用いて、駆動信号でスイッチ131X及び131Yを駆動したときの電流経路について説明する。
図6は、キャパシタ115及び調整部130における電流経路を示す図である。図6は、図4と同様に、端子134Xからキャパシタ115又は調整部130の内部を通って端子134Yに流れる電流の向きを時計回り(CW(Clockwise))と称す。また、端子134Yからキャパシタ115又は調整部130の内部を通って端子134Xに流れる電流の向きを反時計回り(CCW(Counterclockwise))と称す。
まず、スイッチ131Xと131Yがともにオフで電流が時計回り(CW)の場合は、端子134Xからキャパシタ133X及びダイオード132Yを経て端子134Yに向かう方向に共振電流が流れるとともに、キャパシタ115には端子115Xから端子115Yに共振電流が流れる。従って、二次側共振コイル110には時計回りの方向に共振電流が流れる。
スイッチ131Xと131Yがともにオフで電流が反時計回り(CCW)の場合は、端子134Yからキャパシタ133Y及びダイオード132Xを経て端子134Xに向かう方向に共振電流が流れるとともに、キャパシタ115には端子115Yから端子115Xに共振電流が流れる。従って、二次側共振コイル110には反時計回りの方向に共振電流が流れる。
スイッチ131Xがオンでスイッチ131Yがオフで、電流が時計回り(CW)の場合は、調整部130内では端子134Xからスイッチ131X及びダイオード132Yを経て端子134Yに向かう電流経路が生じる。この電流経路は、キャパシタ115に並列であるため、キャパシタ115には電流が流れなくなる。従って、二次側共振コイル110には共振電流は流れない。なお、この場合には、スイッチ131Yをオンにしても、二次側共振コイル110には共振電流は流れない。
スイッチ131Xがオンでスイッチ131Yがオフで、電流が反時計回り(CCW)の場合は、調整部130内では端子134Yからキャパシタ133Y及びスイッチ131Xを経て端子134Xに向かう方向に共振電流が流れるとともに、キャパシタ115には端子115Yから端子115Xに共振電流が流れる。従って、二次側共振コイル110には反時計回りの方向に共振電流が流れる。なお、スイッチ131Xと並列なダイオード132Xにも電流が流れる。
スイッチ131Xがオフでスイッチ131Yがオンで、電流が時計回り(CW)の場合は、調整部130内では端子134Xからキャパシタ133X及びスイッチ131Yを経て端子134Yに向かう方向に共振電流が流れるとともに、キャパシタ115には端子115Xから端子115Yに共振電流が流れる。従って、二次側共振コイル110には時計回りの方向に共振電流が流れる。なお、スイッチ131Yと並列なダイオード132Yにも電流が流れる。
スイッチ131Xがオフでスイッチ131Yがオンで、電流が反時計回り(CCW)の場合は、調整部130内では端子134Yからスイッチ131Y及びダイオード132Xを経て端子134Xに向かう電流経路が生じる。この電流経路は、キャパシタ115に並列であるため、キャパシタ115には電流が流れなくなる。従って、二次側共振コイル110には共振電流は流れない。なお、この場合には、スイッチ131Xをオンにしても、二次側共振コイル110には共振電流は流れない。
なお、共振電流の共振周波数に寄与する静電容量は、キャパシタ115と、キャパシタ132X又は132Yとによって決まる。このため、キャパシタ132Xと132Yの静電容量は等しいことが望ましい。
図7は、二次側共振コイル110に生じる交流電圧と、駆動信号に含まれる2つのクロックを示す図である。
図7(A)及び(B)に示す交流電圧V0は、送電周波数と同一周波数の波形で、例えば二次側共振コイル110に生じる交流電圧であり、電圧計116(図4参照)によって検出される。また、クロックCLK1、CLK2は、駆動信号に含まれる2つのクロックである。例えば、クロックCLK1は、スイッチ131Xの駆動用に用いられ、クロックCLK2は、スイッチ131Yの駆動用に用いられる。クロックCLK1及びCLK2は、それぞれ、第1信号及び第2信号の一例である。
図7(A)では、クロックCLK1、CLK2は、交流電圧V0に同期している。すなわち、クロックCLK1、CLK2の周波数は、交流電圧V0の周波数に等しく、クロックCLK1の位相は、交流電圧V0の位相に等しい。なお、クロックCLK2は、クロックCLK1とは180度位相が異なり、逆位相である。
図7(A)において、交流電圧V0の周期Tは、周波数fの逆数であり、周波数は6.78MHzである。
図7(A)のように、交流電圧V0に同期したクロックCLK1、CLK2は、スイッチ131X及び131Yをオフにした状態で、受電器100が送電器10から受電して二次側共振コイル110に共振電流を発生させた状態で、制御部150がPLL152を用いて生成すればよい。
図7(B)では、クロックCLK1、CLK2の位相は、交流電圧V0に対してθ度遅れている。このように交流電圧V0に対して位相差θ度を有するクロックCLK1、CLK2は、制御部150が位相シフト回路153を用いて生成すればよい。
制御部150は、交流電圧V0に対する2つのクロックCLK1、CLK2の位相差を調整して最大の受電効率が得られる位相を検出する。最大の受電効率が得られる位相は、受電器100が受電する電力が最大になる位相であり、交流電圧V0に対する2つのクロックCLK1、CLK2の位相差により、1周期の全期間にわたって共振状態になるときに受電電力が最大になる。このため、制御部150は、交流電圧V0に対する2つのクロックCLK1、CLK2の位相差を増大及び減少させながら受電電力が最大になる位相差を検出し、検出した位相差を0度として取り扱う。
そして、制御部150は、受電電力が最大になる位相差(0度)と、送電器10から受信する位相差を表すデータとに基づいて、交流電圧V0に対する2つのクロックの位相差を位相シフト回路153で設定する。
次に、図8を用いて、駆動信号の位相差を調整した場合に、受電器100が送電器10から受電する電力の受電効率について説明する。
図8は、駆動信号の位相差に対する受電効率の特性を示すシミュレーション結果を示す図である。横軸の位相差は、受電電力が最大となる位相差を0度としたときの交流電圧V 0に対する2つのクロックの位相差であり、縦軸の受電効率は、交流電源1(図1参照)が送電器10に入力する電力(Pin)に対する、受電器100が出力する電力(Pout)の比である。受電効率は、送電器10と受電器100との間における電力の伝送効率に等しい。
なお、送電器10が送電する電力の周波数は6.78MHzであり、駆動信号の周波数もこれと同一に設定した。また、位相差が0度の状態は、共振電流の1周期の全期間にわたって磁界共鳴による共振が二次側共振コイル110に生じており、共振電流が二次側共振コイル110に流れている状態である。位相差が大きくなることは、共振電流の1周期の中で二次側共振コイル110に共振が生じない期間が増えることを意味する。従って、位相差が180度の状態は、理論的には二次側共振コイル110に共振電流が全く流れない状態になる。
図8に示すように、位相差を0度から増大させて行くと、受電効率が低下する。位相差が約60度以上になると、受電効率は約0.1未満である。このように、交流電圧V0に対する2つのクロックの位相差を変化させると、二次側共振コイル110に流れる共振電流の電力量が変化することにより、受電効率が変化する。
図9は、実施の形態1の電力伝送システム500を用いた送電装置80と電子機器200A及び200Bを示す図である。
送電装置80は、図4に示す送電装置80と同一のものであるが、図9では、図4における一次側コイル11、制御部15、及びアンテナ16以外の構成要素を電源部10Aとして表してある。電源部10Aは、一次側共振コイル12、整合回路13、キャパシタ14をまとめて表したものである。なお、交流電源1、一次側共振コイル12、整合回路13、キャパシタ14をまとめて電源部として捉えてもよい。
アンテナ16は、例えば、Bluetooth(登録商標)のような近距離での無線通信を行うことができるアンテナであればよい。アンテナ16は、電子機器200A及び200Bに含まれる受電器100A及び100Bから、受電電力及び定格出力を表すデータを受信するために設けられており、受信したデータは制御部15に入力される。制御部15は、制御部の一例であるとともに第3通信部の一例である。
電子機器200A及び200Bは、例えば、それぞれ、タブレットコンピュータ又はスマートフォン等の端末機である。電子機器200A及び200Bは、それぞれ、受電器100A及び100B、DC−DCコンバータ210A及び210B、及び、バッテリ220A及び220Bを内蔵する。
受電器100A及び100Bは、図4に示す受電器100と同様の構成を有する。DC−DCコンバータ210A及び210Bは、それぞれ、図4に示すDC−DCコンバータ210と同様である。また、バッテリ220A及び220Bは、それぞれ、図4に示すバッテリ220と同様である。
受電器100Aは、二次側共振コイル110A、キャパシタ115A、整流回路120A、調整部130A、平滑キャパシタ140A、制御部150A、及びアンテナ170Aを有する。二次側共振コイル110Aは、第1の二次側共振コイルの一例である。
二次側共振コイル110A、キャパシタ115A、整流回路120A、調整部130A、平滑キャパシタ140A、制御部150Aは、それぞれ、図4に示す二次側共振コイル110、キャパシタ115、整流回路120、調整部130、平滑キャパシタ140、制御部150に対応する。なお、図9では、二次側共振コイル110A、整流回路120A、平滑キャパシタ140Aを簡略化して示し、電圧計155及び出力端子160X、160Yは省略する。
受電器100Bは、二次側共振コイル110B、キャパシタ115B、整流回路120B、調整部130B、平滑キャパシタ140B、制御部150B、及びアンテナ170Bを有する。受電器100Bは、受電器100Aから見て、他の受電器の一例である。また、二次側共振コイル110Bは、第2の二次側共振コイルの一例である。
二次側共振コイル110B、キャパシタ115B、整流回路120B、調整部130B、平滑キャパシタ140B、制御部150Bは、それぞれ、図4に示す二次側共振コイル110、キャパシタ115、整流回路120、調整部130、平滑キャパシタ140、制御部150に対応する。なお、図9では、二次側共振コイル110B、整流回路120B、平滑キャパシタ140Bを簡略化して示し、電圧計155及び出力端子160X、160Yは省略する。
アンテナ170A及び170Bは、例えば、Bluetooth(登録商標)のような近距離での無線通信を行うことができるアンテナであればよい。アンテナ170A及び170Bは、送電器10のアンテナ16とデータ通信を行うために設けられており、それぞれ、受電器100A及び100Bの制御部150A及び150Bに接続されている。制御部150A及び150Bは、駆動制御部の一例であるとともに、それぞれ、第1通信部及び第2通信部の一例である。
受電器100Aの制御部150Aは、二次側共振コイル110Aの受電電力と、バッテリ220Aの定格出力を表すデータをアンテナ170Aを介して送電器10に送信する。同様に、受電器100Bの制御部150Bは、二次側共振コイル110Bの受電電力と、バッテリ220Bの定格出力を表すデータをアンテナ170Bを介して送電器10に送信する。
電子機器200A及び200Bは、それぞれ、送電装置80の近くに配置した状態で、送電装置80に接触せずにバッテリ220A及び220Bを充電することができる。バッテリ220A及び220Bの充電は、同時に行うことが可能である。
電力伝送システム500は、図9に示す構成要素のうち、送電器10と、受電器100A及び100Bとによって構築される。すなわち、送電装置80と、電子機器200A及び200Bとは、磁界共鳴による非接触状態での電力伝送を可能にする電力伝送システム500を採用している。
ここで、バッテリ220A及び220Bの充電を同時に行うと、図2及び図3を用いて説明したように、電子機器200A及び200Bへの電力の供給バランスがよくない状態が生じうる。
そこで、送電器10は、電力供給のバランスを改善するために、二次側共振コイル110Aの受電効率、バッテリ220Aの定格出力、二次側共振コイル110Bの受電効率、及びバッテリ220Bの定格出力に基づいて、交流電圧V0に対する調整部130A及び130Bを駆動する駆動信号(クロックCLK1とCLK2)の位相差を設定する。
図10は、駆動信号の位相差と、受電器100A及び100Bの受電効率との関係を示す図である。
ここでは、受電器100Bの調整部130Bを駆動する駆動信号の位相差を受電効率が最大となる位相差(0度)に固定した状態において、受電器100Aの調整部130Aを駆動する駆動信号の位相差を受電効率が最大となる位相差(0度)から変化させる場合について説明する。
図10において、横軸は、受電器100A、100Bの調整部130A、130Bを駆動する駆動信号の位相差(θA、θB)を表す。また、左側の縦軸は、受電器100A及び100Bのそれぞれの受電効率と、受電器100A及び100Bの受電効率の合計値とを示す。
受電器100Bの調整部130Bを駆動する駆動信号の位相差を0度に固定した状態で、受電器100Aの調整部130Aを駆動する駆動信号の位相差を0度から増大又は低下させて行くと、図10に示すように、受電器100Aの受電効率の比率は低下する。受電器100Aの受電効率は、位相差が0度のときに最大である。また、受電器100Aの受電効率の低下に伴い、受電器100Aの受電効率の比率は増大する。
このように受電器100Aの調整部130Aを駆動する駆動信号の位相差を変化させると、受電器100Aの受電量が減少するため、受電器100Aに流れる電流も減少する。すなわち、位相差の変化により、受電器100Aのインピーダンスが変化していることになる。
磁界共鳴を用いた同時電力伝送では、磁界共鳴によって送電器10から受電器100A及び100Bに送電される電力を受電器100Aと100Bとで分配している。このため、受電器100Aの調整部130Aを駆動する駆動信号の位相差を0度から変化させて行くと、受電器100Aの受電量が減る分だけ、受電器100Bの受電量が増えることになる。
このため、図10に示すように、受電器100Aの受電効率の比率は低下する。また、これに伴い受電器100Bの受電効率の比率は増大する。
受電器100Aの調整部130Aを駆動する駆動信号の位相差が約±90度まで変化すると、受電器100Aの受電効率の比率は、略0まで低下し、受電器100Bの受電効率の比率は、約0.8まで増大する。
そして、受電器100A及び100Bの受電効率の和は、受電器100Aの調整部130Aを駆動する駆動信号の位相差が0度のときに約0.85であり、受電器100Bの調整部130Aを駆動する駆動信号の位相差が約±90度まで低下すると、受電器100A及び100Bの受電効率の和は、約0.8になる。
このように、受電器100Aの調整部130Bを駆動する駆動信号の位相差を0度に固定した状態で、受電器100Aの調整部130Aを駆動する駆動信号の位相差を0度から変化させて行くと、受電器100Aの受電効率の比率が低下し、受電器100Bの受電効率の比率が増大する。そして、受電器100A及び100Bの受電効率の和は、約0.8前後の値で大きく変動しない。
磁界共鳴を用いた電力伝送では、磁界共鳴によって送電器10から受電器100A及び100Bに送電される電力を受電器100Aと100Bとで分配しているため、位相差が変化しても、受電器100A及び100Bの受電効率の和が大きく変動しない。
同様に、受電器100Aの調整部130Aを駆動する駆動信号の位相差を0度に固定した状態で、受電器100Bの調整部130Bを駆動する駆動信号の位相差を0度から低下させれば、受電器100Bの受電効率の比率が低下し、受電器100Aの受電効率の比率が増大することになる。そして、受電器100A及び100Bの受電効率の和は、約0.8前後の値で大きく変動しない。
従って、受電器100A又は100Bの調整部130A又は130Bのいずれか一方を駆動する駆動信号の位相差を調整すれば、受電器100A及び100Bの受電効率の比率を調整することができる。
以上のように、調整部130A又は130Bを駆動する駆動信号の位相差を変化させると、受電器100A及び100Bの二次側共振コイル110A及び110Bの受電効率の比率が変わる。
このため、実施の形態1では、受電器100A及び100Bの調整部130A及び130Bの駆動信号のうちのいずれか一方の位相差を基準の位相差から変更する。基準の位相差は、例えば、受電効率が最大となる位相差を基準の位相差(0度)と定義し、この場合には、いずれか他方の位相差を0度から変化させる。
この際に、調整部130A及び130Bのどちらの駆動信号の位相差を基準の位相差から変更するかは、次のように判定する。
まず、バッテリ220Aの定格出力を二次側共振コイル110Aの受電効率で除算して得る第1の値と、バッテリ220Bの定格出力を二次側共振コイル110Bの受電効率で除算して得る第2の値とを求める。
そして、第1の値と第2の値とのうち、いずれか小さい方の受電器(100A又は100B)に対応する駆動信号の位相差を0度から変化させて適切な位相差に設定する。
定格出力を受電効率で除算して得る値は、送電器10が受電器(100A又は100B)に送電する電力量(必要送電量)を表す。必要送電量とは、受電器(100A又は100B)が余剰電力も不足電力も生じることなく受電できるように、送電器10から送電する電力量である。
従って、必要送電量が小さい方の受電器(100A又は100B)への電力供給量を絞れば、必要送電量が大きい方の受電器(100A又は100B)への電力供給量を増やすことができる。この結果、受電器100A及び100Bへの電力供給量のバランスを改善することができる。
図10から分かるように、いずれか一方の受電器(100A又は100B)の位相差を変化させると、その受電器(100A又は100B)の受電電力量が低下する。また、いずれか他方の受電器(100A又は100B)は、位相差が0度に固定された状態で、受電電力量が増大する。
このため、必要送電量が小さい方の受電器(100A又は100B)に対応する駆動信号の位相差を基準の位相差(0度)から変化させれば、必要送電量が小さい方の受電器(100A又は100B)への電力供給量が絞られ、必要送電量が大きい方の受電器(100A又は100B)への電力供給量を増やすことができる。
このようにして、受電器100A及び100Bへの電力供給量のバランスを改善すればよい。なお、具体的な位相差の設定方法については後述する。
次に、図11を用いて、送電器10が受電器100A及び100Bから受電効率と定格出力を表すデータを入手する方法について説明する。
図11は、送電器10と受電器100A及び100Bとが位相差を設定するために実行する処理を示すタスク図である。このタスクは、制御部15、150A、及び150B(図9参照)によって実行される。
まず、受電器100Aは、受電電力を表すデータを送電器10に送信する(ステップS1A)。同様に、受電器100Bは、受電電力を表すデータを送電器10に送信する(ステップS1B)。これにより、送電器10は、受電器100A及び100Bから受電電力を表すデータを受信する(ステップS1)。
受電電力を表すデータの送信は、例えば、送電器10からのリクエストに応じて、制御部150A及び150Bがアンテナ170A及び170Bを介して行うようにすればよい。また、受電電力を表すデータには、受電器100A及び100Bを識別する識別子を含ませればよい。
受電電力を表すデータは、次のようにして取得すればよい。まず、送電器10から受電器100Bに調整部130Bの両スイッチ(図4の131X及び131Y)をオンに設定する信号を無線通信で送信するとともに、送電器10から受電器100Aに調整部130Aの両スイッチをオフに設定する信号を無線通信で送信する。
ここで、調整部130Bの両スイッチをオンにすると、調整部130Bには共振が生じなくなり、受電器100Bは電力を受電しない状態になる。すなわち、受電器100Bはオフにされる。また、調整部130Aの両スイッチをオフにすると、二次側共振コイル110Aに共振電流が流れる状態になる。
そして、送電器10から磁界共鳴で所定の電力を受電器100Aに送電し、受電器100Aで電力を受電する。このとき、受電器100Aで受信した電力量を表す信号を送電器10に送電すれば、送電器10で受電器100Aの受電効率を測定することができる。
また、受電器100Bの受電効率を測定するには、送電器10から受電器100Aに調整部130Aの両スイッチをオンに設定する信号を無線通信で送信するとともに、送電器10から受電器100Bに調整部130Bの両スイッチをオフに設定する信号を無線通信で送信する。送電器10から磁界共鳴で所定の電力を受電器100Bに送電し、受電器100Bで受信した電力量を表す信号を送電器10に送電すれば、送電器10で受電器100Bの受電効率を測定することができる。
次に、受電器100Aは、定格出力を表すデータを送電器10に送信する(ステップS2A)。同様に、受電器100Bは、定格出力を表すデータを送電器10に送信する(ステップS2B)。これにより、送電器10は、受電器100A及び100Bから定格出力を表すデータを受信する(ステップS2)。
電子機器200A及び200Bの定格出力を表すデータは、例えば、制御部150A及び150Bの内部メモリに予め格納しておき、受電効率を表すデータを送った後に、制御部150A及び150Bがアンテナ170A及び170Bを介して送電器10に送信するようにしておけばよい。
次に、送電器10は、受電器100Aの受電効率を表すデータ及び定格出力を表すデータと、受電器100Bの受電効率を表すデータ及び定格出力を表すデータとに基づき、受電器100A及び100Bに対応する駆動信号の位相差を演算する(ステップS3)。いずれか一方の位相差は、受電効率が最大となる基準の位相差(0度)であり、他方の位相差は、基準の位相差(0度)から変化して最適化された位相差である。ステップS3の詳細は、図15を用いて後述する。
次に、送電器10は、位相差を表すデータを受電器100A及び100Bに送信する(ステップS4)。そして、受電器100A及び100Bは、位相差を受信する(ステップS4A及びS4B)。
ここで、送電器10の制御部15は、位相差を演算した後に、アンテナ16を介して位相差を表すデータを受電器100A及び100Bに送信するように設定されている。
受電器100A及び100Bの制御部150A及び150Bは、位相差を駆動信号に設定する(ステップS5A及びS5B)。
送電器10は、送電を開始する(ステップS6)。ステップS6の処理は、例えば、駆動信号への位相差の設定を制御部150A及び150Bが完了したことを表す通知が送電器10に対してなされたときに実行すればよい。
ここで、図12及び図13を用いて、受電器100A及び100Bの受電効率を表すデータの取得方法について説明する。
図12は、送電装置80と電子機器200A及び200Bの等価回路を示す図である。図12に示す等価回路は、図9に示す送電装置80と電子機器200A及び200Bに対応している。ただし、ここでは、送電装置80は、一次側コイル11を含まず、交流電源1に一次側共振コイル12が直接接続されているものとして説明する。また、受電器100A及び100Bは、それぞれ、電圧計155A及び155Bを含む。
図12では、二次側共振コイル110Aは、コイルLRAと抵抗器RRAであり、キャパシタ115Aは、キャパシタCRAである。また、平滑キャパシタ140AはキャパシタCSAであり、DC−DCコンバータ210Aとバッテリ220Aは、抵抗器RLAである。
同様に、二次側共振コイル110Bは、コイルLRBと抵抗器RRBであり、キャパシタ115Bは、キャパシタCRBである。また、平滑キャパシタ140BはキャパシタC SBであり、DC−DCコンバータ210Bとバッテリ220Bは、抵抗器RLBである。
また、送電装置80の共振コイル12は、抵抗器RTとコイルLTであり、交流電源1は、電源VSと抵抗器RSである。また、キャパシタ14は、キャパシタCTである。
送電装置80と電子機器200Aとの相互インダクタンスをMTA、送電装置80と電子機器200Bとの相互インダクタンスをMTB、電子機器200Aと200Bとの相互インダクタンスをMABとする。
ここで、相互インダクタンスをMTAと相互インダクタンスをMTBに比べると、相互インダクタンスをMABは無視できるほど小さいので、ここでは、相互インダクタンスをMTAと相互インダクタンスをMTBについて検討する。
相互インダクタンスMTAは、送電装置80と、電子機器200Aの受電器100Aとの受電効率によって決まる。受電効率は、送電装置80に対する受電器100Aの位置(距離)と姿勢(角度)によって決まるからである。同様に、相互インダクタンスMTBは、送電装置80と、電子機器200Bの受電器100Bとの受電効率によって決まる。
受電器100Aの受電効率は、受電器100Bをオフにした状態で、送電器10から受電器100Aに電力を送電し、受電器100Aが受電した電力量を計測することによって求めることができる。同様に、受電器100Bの受電効率は、受電器100Aをオフにした状態で、送電器10から受電器100Bに電力を送電し、受電器100Bが受電した電力量を計測することによって求めることができる。
従って、受電器100Aと100Bの単独での受電効率を求めれば、相互インダクタンスMTAと、相互インダクタンスMTBを求めることができる。
実施の形態1では、受電器100A及び100Bの二次側共振コイル110A及び110Bの受電効率の比率を変えるために、調整部130A又は130Bを駆動する駆動信号の位相差を変化させる。
このため、相互インダクタンスMTAと相互インダクタンスMTBとの関係に対して、位相差を関連付けたテーブルデータを予め用意しておき、このようなテーブルデータを用いて、駆動信号の位相差を調整する。
図13は、相互インダクタンスMTAと相互インダクタンスMTBとの関係に対して、位相差を関連付けたテーブルデータを示す図である。
図13の(A)は、調整部130Bを駆動する駆動信号の位相差を0度に固定した状態で、調整部130Aを駆動する駆動信号の位相差を調整するためのテーブルデータである。
相互インダクタンスMTA1、MTA2、MTA3・・・は、実際には、具体的な相互インダクタンスMTAの値をとる。同様に、相互インダクタンスMTB1、MTB2、M TB3・・・は、実際には、具体的な相互インダクタンスMTBの値をとる。位相差PD1A、PD2A、PD3A、・・・、PD11A、PD12A、PD13A、・・・は、具体的には、シミュレーションまたは実験的に求められた具体的な位相差の値をとる。
図13の(B)は、調整部130Aを駆動する駆動信号の位相差を0度に固定した状態で、調整部130Bを駆動する駆動信号の位相差を調整するためのテーブルデータである。
相互インダクタンスMTA1、MTA2、MTA3・・・と、相互インダクタンスMT B1、MTB2、MTB3・・・は、図13の(A)と同様である。位相差PD1B、PD2B、PD3B、・・・、PD11B、PD12B、PD13B、・・・は、具体的には、シミュレーションまたは実験的に求められた具体的な位相差の値をとる。
図13の(A)及び(B)に示すテーブルデータを実験的に求めるには、受電器100Aと100Bの送電器10に対する位置及び姿勢を様々に変えた状態で、相互インダクタンスをMTAとMTBを計測しつつ、位相差の最適化を図ることによって作成することができる。
図14は、相互インダクタンスMTA、MTBと、受電効率とを関連付けたテーブルデータである。図14の(A)は、相互インダクタンスMTAと、受電器100Aの受電効率とを関連付けたテーブルデータであり、図14の(B)は、相互インダクタンスMTBと、受電器100Bの受電効率とを関連付けたテーブルデータである。
相互インダクタンスMTA、MTBは、それぞれ、送電装置80と、受電器100A、100Bとの受電効率EA、EBによって決まる。
図14の(A)では、相互インダクタンスMTA1、MTA2、・・・と、受電器100Aの受電効率EA1、EA2、・・・とが関連付けられている。また、図14の(B)では、相互インダクタンスMTB1、MTB2、・・・と、受電器100Bの受電効率E B1、EB2、・・・とが関連付けられている。
予め実験等で受電器100A、100Bの相互インダクタンスMTA、MTBと、受電効率とを測定しておき、図14の(A)、(B)に示すようなテーブルデータを作成しておけば、受電器100A、100Bの受電効率から、受電器100A、100Bの相互インダクタンスMTA、MTBを求めることができる。あるいはシミュレーションによって、受電器100A、100Bの受電効率から、受電器100A、100Bの相互インダクタンスMTA、MTBを求めてもよい。
次に、図15を用いて、位相差の設定方法について説明する。
図15は、実施の形態1の送電器10が受電器100A又は100Bの位相差を設定する方法を示すフローチャートである。このフローは、送電器10の制御部15によって実行される処理を表し、図11のステップS3の処理内容の詳細を示すものである。
制御部15は、受電器100A及び100Bから受電電力を表す信号を受信して受電効率を求め、受電器100A及び100Bから定格出力を表す信号を受信してステップS3に進行すると、図15に示す処理を開始する。
制御部15は、バッテリ220Aの定格出力を二次側共振コイル110Aの受電効率で除算して得る第1の値と、バッテリ220Bの定格出力を二次側共振コイル110Bの受電効率で除算して得る第2の値とを求め、第1の値が第2の値よりも大きいか否かを判定する(ステップS31)。
制御部15は、第1の値が第2の値よりも大きい(S31:YES)と判定すると、受電器100Aの調整部130Aを駆動する駆動信号の位相差を0度に設定する(ステップS31A)。
次いで、制御部15は、受電器100Bの調整部130Bを駆動する駆動信号の位相差を設定する(ステップS32A)。具体的には、制御部15は、図14の(A)及び(B)に示すテーブルデータに基づき、それぞれ、受電器100A、100Bの受電効率EA、EBから受電器100A、100Bの相互インダクタンスMTA、MTBを求める。そして、制御部15は、図13の(B)に示すテーブルデータから、受電器100A、100Bの相互インダクタンスMTA、MTBに基づいて、受電器100Bの調整部130Bを駆動する駆動信号の位相差を求める。
ステップS32Aの処理が終了すると、制御部15はフローをステップS4(図11参照)に進行する。
また、制御部15は、第1の値が第2の値よりも小さい(S31:NO)と判定すると、受電器100Bの調整部130Bを駆動する駆動信号の位相差を0度に設定する(ステップS31B)。
次いで、制御部15は、受電器100Aの調整部130Aを駆動する駆動信号の位相差を設定する(ステップS32B)。具体的には、制御部15は、図14の(A)及び(B)に示すテーブルデータに基づき、それぞれ、受電器100A、100Bの受電効率EA、EBから受電器100A、100Bの相互インダクタンスMTA、MTBを求める。そして、制御部15は、図13の(A)に示すテーブルデータから、受電器100A、100Bの相互インダクタンスMTA、MTBに基づいて、受電器100Aの調整部130Aを駆動する駆動信号の位相差を求める。
ステップS32Bの処理が終了すると、制御部15はフローをステップS4(図11参照)に進行する。
以上のようにして、制御部15は、受電器100A、100Bの調整部130A、130Bを駆動する駆動信号の位相差を設定する。
以上、実施の形態1によれば、受電器100A及び100Bの二次側共振コイル110A及び110Bの受電効率と、電子機器200A及び200Bの定格出力とにより、受電器100A及び100Bへの必要送電量を求める。
そして、受電器100A及び100Bのうち、必要送電量が小さい方の受電器(100A又は100B)に対応する駆動信号の位相差を基準の位相差から変化させる。
この結果、必要送電量が小さい方の受電器(100A又は100B)への電力供給量が絞られ、必要送電量が大きい方の受電器(100A又は100B)への電力供給量を増やすことができる。
このようにして、受電器100A及び100Bへの電力供給量のバランスを改善する。
従って、実施の形態1によれば、電力供給量のバランスを改善することのできる受電器100A又は100Bを提供することができる。また、実施の形態1によれば、電力供給量のバランスを改善することができる電力伝送システム500を提供することができる。
また、以上では、2つの受電器100A及び100Bのうち、必要送電量が小さい方の受電器(100A又は100B)に対応する駆動信号の位相差を低減することによって受電器100A及び100Bへの電力供給量のバランスを改善する形態について説明した。
しかしながら、3つ以上の受電器が同時に充電される場合もある。このような場合には、必要電力量、つまりは各定格電力を各受電効率で除算して得る電力量が最大の受電器以外の受電器の駆動信号の位相差を低減するようにすればよい。
また、以上では、電子機器200A及び200Bが、一例として、タブレットコンピュータ又はスマートフォン等の端末機である形態について説明したが、電子機器200A及び200Bは、例えば、ノート型のPC(Personal Computer)、携帯電話端末機、携帯型のゲーム機、デジタルカメラ、ビデオカメラ等の充電式のバッテリを内蔵する電子機器であってもよい。
また、以上では、2つの受電器100A及び100Bの受電効率と定格出力に応じて位相差を求め、制御部150A又は150Bがスイッチ131A及び131Bを駆動する駆動信号の位相差を調整する形態について説明した。
しかしながら、1つの送電器10と1つの受電器100(図4参照)との間で電力を伝送する場合には、受電器100の制御部150が、実験等で予め求めておいた位相差を用いてスイッチ131A及び131Bを駆動してもよい。この場合には、制御部150の内部メモリにバッテリ220の定格出力を表すデータを格納しておく必要はない。
また、1つの送電器10と1つの受電器100(図4参照)との間で電力を伝送する場合には、受電器100の制御部150がクロックCLK1、CLK2の位相差を調整することによって、受電電力を調整することができる。この場合には、受電器100が受電する電力が最大になる位相差を検出する必要はない。
また、以上では、受電器100A及び100Bがバッテリ220A及び220Bを同時に充電する形態について説明した。しかしながら、電子機器200A及び200Bは、バッテリ220A及び220Bを含まずに、受電器100A及び100Bが受電した電力を直接的に消費して動作してもよい。受電器100A及び100Bは、同時に効率的に受電できるので、電子機器200A及び200Bがバッテリ220A及び220Bを含まない場合でも、電子機器200A及び200Bが同時に駆動することが可能になる。これは、時分割的に受電する場合には不可能であるため、同時に受電する場合のメリットの一つである。なお、このような場合には、電子機器200A及び200Bの駆動に必要な定格出力を用いて、位相差を設定すればよい。
また、以上では、送電器10の制御部15が駆動信号を生成し、受電器100A及び100Bに送信する形態について説明したが、送電器10の送電電力を表すデータを受電器100A、100Bに送信し、受電器100A、100B側で駆動信号を生成してもよい。この場合に、受電器100Aと100Bとの間でデータ通信を行い、受電器100A又は100Bで、どちらの受電電力が大きいかを判定し、受電電力の少ない方の受電器(100A又は100B)の駆動信号の位相差を増大するように、少なくともいずれか一方の受電器(100A又は100B)が駆動信号を生成するようにすればよい。
また、送電器10が受電器100A、100Bから受電電力と定格出力を表すデータを受信して、必要送電量が小さい方の受電器(100A又は100B)の制御部(150A又は150B)に位相差を調整させるようにしてもよい。この場合に、位相差を調整するために必要なデータは、制御部(150A又は150B)が内部メモリに格納すればよい。
また、調整部130のダイオード131X及び131Yの向きは、図4に示す向きとは反対であってもよい。図16は、実施の形態1の変形例の調整部130Vを示す図である。
調整部130Vは、スイッチ131X、131Y、ダイオード132VX、132VY、キャパシタ133X、133Y、及び端子134X、134Yを有する。ダイオード132VX、132VYの整流方向は、それぞれ、図4に示すダイオード132X、132Yと反対である。それ以外は、図4に示す調整部130と同様であるため、同様の構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。
図17は、キャパシタ115及び調整部130Vにおける電流経路を示す図である。図17では、端子134Xからキャパシタ115又は調整部130Vの内部を通って端子134Yに流れる電流の向きを時計回り(CW(Clockwise))と称す。また、端子134Yからキャパシタ115又は調整部130Vの内部を通って端子134Xに流れる電流の向きを反時計回り(CCW(Counterclockwise))と称す。
スイッチ131Xがオフでスイッチ131Yがオンで、電流が時計回り(CW)の場合は、調整部130V内では端子134Xからダイオード132VX及びスイッチ131Yを経て端子134Yに向かう電流経路が生じる。この電流経路は、キャパシタ115に並列であるため、キャパシタ115には電流が流れなくなる。従って、二次側共振コイル110には共振電流は流れない。
スイッチ131Xがオフでスイッチ131Yがオンで、電流が反時計回り(CCW)の場合は、調整部130V内では端子134Yからスイッチ131Y及びキャパシタ133Xを経て端子134Xに向かう方向に共振電流が流れるとともに、キャパシタ115には端子115Yから端子115Xに共振電流が流れる。従って、二次側共振コイル110には反時計回りの方向に共振電流が流れる。
スイッチ131Xがオンでスイッチ131Yがオフで、電流が時計回り(CW)の場合は、調整部130V内では端子134Xからスイッチ131X及びキャパシタ133Yを経て端子134Yに向かう方向に共振電流が流れるとともに、キャパシタ115には端子115Xから端子115Yに共振電流が流れる。従って、二次側共振コイル110には時計回りの方向に共振電流が流れる。
スイッチ131Xがオンでスイッチ131Yがオフで、電流が反時計回り(CCW)の場合は、調整部130V内では端子134Yからダイオード132VY及びスイッチ131Xを経て端子134Xに向かう電流経路が生じる。この電流経路は、キャパシタ115に並列であるため、キャパシタ115には電流が流れなくなる。従って、二次側共振コイル110には共振電流は流れない。
<実施の形態2>
図18は、実施の形態2の受電器101と送電装置80を示す図である。送電装置80は、図4に示すものと同様である。
受電器101は、実施の形態1の受電器100(図4参照)に、スイッチ180とダミー抵抗器190を追加した構成を有する。その他の構成は、受電器100と同様であるため、同様の構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。
スイッチ180は、3つの端子181、182、183を有するスイッチである。端子181、182、183は、それぞれ、整流回路120の高電圧側(図中上側)の出力端子、ダミー抵抗器190の上側の端子、及び平滑キャパシタ140の上側の端子に接続されている。
スイッチ180は、制御部150によって駆動され、端子181の接続先を端子182及び183のいずれか一方に切り替える。すなわち、スイッチ180は、整流回路120の高電圧側(図中上側)の出力端子の接続先を、ダミー抵抗器190の上側の端子、及び、平滑キャパシタ140の上側の端子のいずれか一方に切り替える。
ダミー抵抗器190は、平滑キャパシタ140の下側の端子と出力端子160Yとを結ぶ低電圧側の線路と、スイッチ180の端子182との間に接続されている。ダミー抵抗器190は、バッテリ220のインピーダンスと等しいインピーダンスを有する抵抗器である。
ダミー抵抗器190は、受電器101の受電効率を測定する際に、バッテリ220の代わりに用いるために設けられている。バッテリ220を充電して受電効率を測定するよりも、バッテリ220と同一のインピーダンス(抵抗値)を有するダミー抵抗器190に電流を流して受電効率を測定する方が、少ない電力消費で実現可能だからである。
実施の形態2の受電器101は、ダミー抵抗器190を用いて測定した受電効率を用いて、受電器101の調整部130を駆動する駆動信号の位相差を決定する。
なお、スイッチ180は、整流回路120と平滑キャパシタ140との間において、平滑キャパシタ140の下側の端子と出力端子160Yとを結ぶ低電圧側の線路に挿入されていてもよい。この場合は、ダミー抵抗器190が、平滑キャパシタ140の上側の端子と出力端子160Xとを結ぶ高電圧側の線路と、スイッチ180との間に接続されていればよい。
以下では、受電電力、定格出力、位相差等を表すデータは、受電器101A及び101Bの制御部150A及び150Bと、受信器10の制御部15と間で通信される。制御部150A及び150Bと制御部15との間の通信は、アンテナ170A及び170Bとアンテナ16との間で行われる(図9参照)。
図19乃至図21は、実施の形態2の受電器101A、101Bと送電器10とが駆動信号の位相差を設定するために実行する処理を示すタスク図である。
受電器101A、101Bは、図18に示す受電器101と同様の構成を有する。また、受電器101A、101Bは、それぞれ、図9に示す実施の形態1の受電器100A、100Bと同様に、1つの送電器10から送電される電力を受電する。ここでは、2つの受電器101を区別するために、受電器101A、101Bと称す。
また、受電器101Aは、二次側共振コイル110A、キャパシタ115A、整流回路120A、調整部130A、平滑キャパシタ140A、制御部150A、スイッチ180A、ダミー抵抗器190Aを含み、DC−DCコンバータ210A及びバッテリ220A(図9参照)が接続されるものとして説明する。
同様に、受電器101Bは、二次側共振コイル110B、キャパシタ115B、整流回路120B、調整部130B、平滑キャパシタ140B、制御部150B、スイッチ180B、ダミー抵抗器190Bを含み、DC−DCコンバータ210B及びバッテリ220B(図9参照)が接続されるものとして説明する。
また、図19乃至図21に示す処理は、送電器10の制御部15(図18参照)と、受電器101A、101Bの制御部150(図18参照)とが実行するが、以下では、送電器10、受電器101A、101Bが処理を行うものとして説明する。
送電器10と受電器101A、101Bは、電力伝送の準備を開始する(スタート)。電力伝送の準備は、例えば、送電器10と受電器101A、101Bを所定の準備モードに設定し、受電器101A、101Bから送電器10に対して、送電を要求する通知を行うことによって開始される。
ここで、受電器101Aの調整部130Aと、受電器101Bの調整部130Bとは、特に制御されない限り、オフ(スイッチ131X及び131Yがオンの状態)にされる。調整部130A及び130Bがオフの状態では、受電器101A及び101Bには磁界共鳴による共振は生じない(共振がオフの)状態になる。
まず、送電器10は、受電器101Aにテスト送電通知を送信する(ステップS111)。ここで、受電器101Bよりも受電器101Aの方が早く送電器10に対して送電要求の通知を行ったものとする。送電器10は、ステップS111において、最も早く送電要求の通知を行った受電器101Aに対して、テスト送電通知を送信する。なお、送電器10は、受電器101A、101Bを識別する識別子等を用いて、受電器101A、101Bを識別する。
受電器101Aは、テスト送電通知を送電器10から受信したかどうかを判定する(ステップS112A)。なお、受電器101Aは、テスト送電通知を送電器10から受信するまでステップS112Aの処理を繰り返し実行する。
受電器101Aは、調整部130Aのスイッチ131X及び131Yをオフにし、スイッチ180Aの接続先をダミー抵抗器190Aに切り替える(ステップS113A)。調整部130Aのスイッチ131X及び131Yをオフにすると、磁界共鳴による共振の1周期の期間にわたって二次側共振コイル110Aに共振電流が流れる状態になる。受電器101Aは、ステップS113Aの処理が終了すると、終了した旨を送電器10に通知する。
送電器10は、テスト送電を開始する(ステップS114)。これにより、受電器101Aの受電が開始する。
受電器101Aは、制御部150Aの位相シフト回路153のシフト量を制御することにより、2つのクロックCLK1、CLK2の位相を調整して、最大の受電効率が得られる基準の位相を検出する。そして、受電器101Aは、基準の位相において、送電器10から受電した電力を表す受電電力とバッテリ220Aの定格出力を送電器10に通知し、調整部130Aのスイッチ131X及び131Yをオンにする(ステップS115A)。このように受電器101Aが送電器10に通知する受電電力は、基準の位相において測定されるため、受電器101Aが受電しうる最大の受電電力である。
調整部130Aのスイッチ131X及び131Yがオンにされると、受電器101Aは、受電しても磁界共鳴による共振が生じない状態になる。すなわち、共振がオフの状態になる。受電器100Aの共振をオフにした状態は、受電器101Bが送電器10から受電して受電効率を測定する際に、影響を与えない状態である。
送電器10は、受電器101Aから送信される受電電力とバッテリ220Aの定格出力を表すデータを受信し、受電器101Aの受電電力と定格出力を検知する(ステップS116)。
次に、送電器10は、受電器101Bにテスト送電通知を送信する(ステップS117)。
受電器101Bは、テスト送電通知を送電器10から受信したかどうかを判定する(ステップS112B)。なお、受電器101Bは、テスト送電通知を送電器10から受信するまでステップS112Bの処理を繰り返し実行する。
受電器101Bは、調整部130Bのスイッチ131X及び131Yをオフにし、スイッチ180Bの接続先をダミー抵抗器190Bに切り替える(ステップS113B)。調整部130Bのスイッチ131X及び131Yをオフにすると、磁界共鳴による共振の1周期の期間にわたって二次側共振コイル110Bに共振電流が流れる状態になる。受電器101Bは、ステップS113Bの処理が終了すると、終了した旨を送電器10に通知する。
送電器10は、テスト送電を開始する(ステップS118)。これにより、受電器101Bの受電が開始する。
受電器101Bは、制御部150Bの位相シフト回路153のシフト量を制御することにより、2つのクロックCLK1、CLK2の位相を調整して、最大の受電効率が得られる基準の位相を検出する。そして、受電器101Bは、基準の位相において、送電器10から受電した電力を表す受電電力とバッテリ220Bの定格出力を送電器10に通知し、調整部130Bのスイッチ131X及び131Yをオンにする(ステップS115B)。このように受電器101Aが送電器10に通知する受電電力は、基準の位相において測定されるため、受電器101Aが受電しうる最大の受電電力である。
調整部130Bのスイッチ131X及び131Yがオンにされると、受電器101Bは、受電しても磁界共鳴による共振が生じない状態になる。すなわち、共振がオフの状態になる。
送電器10は、受電器101Bから送信される受電電力とバッテリ220Bの定格出力を表すデータを受信し、受電器101Bの受電電力と定格出力を検知する(ステップS119)。
以上で図19に示す処理が終了する。なお、図19に示す処理の(1)、(1A)、(1B)は、それぞれ、図20に示す(1)、(1A)、(1B)に続く。
送電器10は、受電器101A及び101Bから受信した受電電力とバッテリ220A及び220Bの定格出力を表すデータを用いて、受電器101A、101Bの調整部130A、130Bを駆動する駆動信号の位相差を決定し、位相差を受電器101A及び101Bに通知する(ステップS121)。位相差は、実施の形態1と同様の方法で決定すればよい。
受電器101Aは、送電器10から受信した位相差を用いて調整部130Aを駆動する(ステップS122A)。同様に、受電器101Bは、送電器10から受信した位相差を用いて調整部130Bを駆動する(ステップS122B)。
受電器100Aの制御部150Aは、ステップS122Aで駆動信号の位相差を設定する前に、ステップS115Aにおいて、基準の位相を検出している。。
制御部150Aは、基準の位相に、送電器10から受信した位相差を加算して得る位相を2つのクロックの位相として設定する。これは、ステップS115Bにおいて、受電器100Bの制御部150Bが位相を設定する場合も同様である。
送電器10は、テスト送電を開始する(ステップS123)。このテスト送電は、ステップS114及びS118のテスト送電とは異なり、受電器101A及び101Bの両方に対して同時に送電を行うテストである。受電器101A及び101Bは、同時に受電する状態で、それぞれ受電電力を計測する。
受電器101Aは、送電器10から受電した電力を表す受電電力を送電器10に通知し、調整部130Aのスイッチ131X及び131Yをオンにする(ステップS124A)。同様に、受電器101Bは、送電器10から受電した電力を表す受電電力を送電器10に通知し、調整部130Bのスイッチ131X及び131Yをオンにする(ステップS124B)。
送電器10は、受電器101A及び101Bから送信される受電電力を表すデータを受信し、受電器101A及び101Bの受電電力を検知する(ステップS125)。
送電器10は、ステップS125で受信した受電器101A及び101Bの受電電力が目標範囲内であるかどうかを判定する(ステップS126)。
ここで、受電電力の目標範囲とは、例えば、受電器101A及び101Bの定格出力の50%の電力を下限値とし、受電器101A及び101Bの定格出力の130%を上限とする範囲として設定する。
このような受電電力の目標範囲は、送電器10の制御部15がステップS116及びS119で受電器101A及び101Bから受信するバッテリ220A及び220Bの定格出力に基づいて設定すればよい。このような受電電力の目標範囲は、受電器101A及び101Bの受電バランスを良くするために用いるものである。
送電器10は、ステップS126において、受電電力の比率が目標範囲内ではないと判定すると(S126:NO)、フローをステップS121にリターンする。位相差を再度調整して、受電効率が目標範囲内に収まるかどうかを確かめるためである。なお、ステップS121にリターンして位相差を再設定する際には、送電器10は、受電器101A及び101Bのうち、受電電力が目標範囲の下限以下だった受電器の位相差の絶対値を小さくすればよく、受電電力が目標範囲の上限以上だった受電器の位相差の絶対値を大きくすればよい。
以上で図20に示す処理が終了する。なお、図20に示す処理の(2)、(2A)、(2B)は、それぞれ、図21に示す(2)、(2A)、(2B)に続く。
送電器10は、受電電力が目標範囲内にあると判定すると(S126:YES)、本送電を行うことを表す本送電通知を受電器101A及び101Bに送信する(ステップS131)。本送電とは、テスト送電とは異なり、本当に受電器101A及び101Bを充電するために送電を行うことをいう。本送電通知とは、本送電を行うことを送電器10が受電器101A及び101Bに知らせるための通知をいう。
受電器101Aは、送電器10から本送電通知を受信したかどうかを判定する(ステップS132A)。同様に、受電器101Bは、送電器10から本送電通知を受信したかどうかを判定する(ステップS132B)。
なお、受電器101A及び101Bは、本送電通知を受信しない場合は、それぞれ、フローをステップS122A及び122Bにリターンする。ステップS126において、受電電力が目標範囲内にないと送電器10によって判定された場合に相当するため、送電器10がステップS121にリターンして受電器101A及び101Bに送信する位相差を用いて調整部130A及び130Bを駆動するためである。
受電器101Aは、送電器10から本送電通知を受信したと判定すると(S132A:YES)、位相差を用いた調整部130Aの駆動を再開するとともに、スイッチ180Aの接続先をバッテリ220Aに切り替え、切り替えたことを送電器10に通知する(ステップS133A)。同様に、受電器101Bは、送電器10から本送電通知を受信したと判定すると(S132B:YES)、位相差を用いた調整部130Bの駆動を再開するとともに、スイッチ180Bの接続先をバッテリ220Bに切り替え、切り替えたことを送電器10に通知する(ステップS133B)。
送電器10は、本送電を開始する(ステップS134)。
受電器101Aは、バッテリ220Aが満充電になったか、又は、利用者による充電の停止操作があるかどうかを判定する(ステップS135A)。同様に、受電器101Bは、バッテリ220Bが満充電になったか、又は、利用者による充電の停止操作があるかどうかを判定する(ステップS135B)。
受電器101Aは、満充電、又は、充電の停止操作のいずれでもないと判定すると(S135A:NO)、位相差の再調整が必要かどうかを判定する(ステップS136A)。
例えば、受電器101Bが満充電、又は、充電の停止操作によって充電されていない状態になった場合には、受電器101Aの位相差を再調整する必要が生じる。従って、送電器10が後述するステップS139において、受電器101Bの充電が完了した、又は、充電が停止したと判定して、受電器101Aが送電器10から受電器101Bの充電が完了、又は、充電停止についての通知を受信した場合に、受電器101Aは、位相差の再調整が必要と判定する。
受電器101Bは、満充電、又は、充電の停止操作のいずれでもないと判定すると(S135B:NO)、位相差の再調整が必要かどうかを判定する(ステップS136B)。
例えば、受電器101Aが満充電、又は、充電の停止操作によって充電されていない状態になった場合には、受電器101Bの位相差を再調整する必要が生じる。従って、送電器10が後述するステップS139において、受電器101Aの充電が完了した、又は、充電が停止したと判定して、受電器101Bが送電器10から受電器101Aの充電が完了、又は、充電停止についての通知を受信した場合に、受電器101Bは、位相差の再調整が必要と判定する。
受電器101Aは、バッテリ220Aの満充電、又は、充電の停止操作があったと判定すると(S135A:YES)、充電完了、又は、停止操作があったことを送電器10に通知する。これにより、受電器101Aは処理を終了する。
同様に、受電器101Bは、バッテリ220Bの満充電、又は、充電の停止操作があったと判定すると(S135B:YES)、充電完了、又は、停止操作があったことを送電器10に通知する。これにより、受電器101Aは処理を終了する。
送電器10は、受電器101A又は101Bにおいて、充電完了、又は、停止操作があったかどうかを判定する(ステップS137)。送電器10は、受電器101A又は101Bからの充電完了、又は、停止操作を表す通知の有無に基づいて、ステップS137の判定を行う。なお、ステップ137の判定は、受電器101A又は101Bからの充電完了、又は、停止操作を表す通知があるまで繰り返し実行される。
受電器101Aは、バッテリ220Aの満充電、又は、充電の停止操作を行ったことを送電器10に通知すると、調整部130Aのスイッチ131X及び131Yをオンにする(ステップS138A)。これにより受電器101Aは受電しない状態になる。同様に、受電器101Bは、バッテリ220Bの満充電、又は、充電の停止操作を行ったことを送電器10に通知すると、調整部130Bのスイッチ131X及び131Yをオンにする(ステップS138B)。これにより受電器101Bは受電しない状態になる。
送電器10は、受電器101A又は101Bからの充電完了(満充電)、又は、停止操作を表す通知があった(S137:YES)と判定すると、受電器101A及び101Bの両方の充電が完了したか、又は、充電が停止されたかどうかを判定する(ステップS139)受電器101A及び101Bのうちの一方の充電が完了又は停止されていなければ、引き続き送電する必要があるからである。
送電器10は、受電器101A及び101Bのうちの一方の充電が完了又は停止されていないと判定すると(S139:NO)、フローをステップS121にリターンする。再び位相差を設定して送電を行うためである。
また、送電器10は、受電器101Aの充電が完了した、又は、充電が停止したと判定した場合は、受電器101Aの充電が完了、又は、充電が停止したことを受電器101Bに通知する。同様に、送電器10は、受電器101Bの充電が完了した、又は、充電が停止したと判定した場合は、受電器101Bの充電が完了、又は、充電が停止したことを受電器101Aに通知する。
送電器10は、受電器101A及び101Bの両方の充電が完了した、又は、充電が停止したと判定すると(S139:YES)、処理を終了する。
以上により、送電器10による受電器101A及び101Bへの送電処理が終了する。
なお、以上では、2つの受電器101A及び101Bが送電器10から受電する場合に位相差を決定する形態について説明したが、3つ以上の受電器が送電器10から受電する場合も同様に位相差を決めることができる。例えば、受電器が3つある場合には、ステップS115Bが終了した後に、ステップ111、S112A、S113A、S114、S115A、及びS116と同様のステップを3つ目の受電器に対して行うことにより、送電器10が3つ目の受電器の受電電力と定格出力を入手すればよい。
そして、3つの受電器の位相差を決定し、受電電力が目標範囲内であるかどうかを判定した後に、本送電を行うようにすればよい。これは、受電器が4つ以上ある場合も同様である。
以上、実施の形態2によれば、電力供給量のバランスを改善することのできる受電器101A又は101Bを提供することができる。また、実施の形態2によれば、電力供給量のバランスを改善することができる電力伝送システムを提供することができる。
また、実施の形態2では、受電器101A及び101Bの位相差を決める際に、ステップS121〜S126によるテスト送電の処理を行う。そして、テスト送電の結果、受電器101A及び101Bの受電電力が目標範囲内にない場合には、位相差を再調整して、より受電バランスを改善できる位相差を求める。
従って、実施の形態2によれば、電力供給量のバランスをより改善した受電器101A又は101Bを提供することができる。
<実施の形態3>
図22は、実施の形態3における送電器10とN個の受電器101−1、101−2、・・・、101−Nとを示す図である。図23は、実施の形態3による位相差と送電出力Pの決定処理を示すフローチャートである。図24は、実施の形態3で用いるテーブル形式のデータを示す図である。
実施の形態3では、1つの送電器10からN個の受電器101−1、101−2、・・・、101−Nに電力を伝送する場合に、受電器101−1〜101−Nの調整部130を駆動する駆動信号の位相差を決定する手法について説明する。
ここで、Nは任意の整数であり、2以上の整数であればよい。
受電器101−1〜101−Nの各々は、実施の形態2の受電器101A及び101Bと同様の構成を有する。また、受電器101−1〜101−Nには、それぞれ、DC−DCコンバータ210とバッテリ220が接続されるものとして説明する。
以下では、受電電力、位相差等を表すデータは、受電器101−1〜101−Nの制御部150と、受信器10の制御部15との間で通信される。制御部150と制御部15との間の通信は、アンテナ170とアンテナ16との間で行われる(図9参照)。
実施の形態3では、具体的には、以下のような手順で受電器101−1〜101−Nの各々に含まれる調整部130を駆動する駆動信号の位相差を決定する。
まず、送電器10は、受電器101−1〜101−Nの各々に、個別的に電力P0を送電する(ステップS201)。また、受電器101−1〜101−Nは、それぞれ、電力P0を受電すると、受電電力PK(K=1〜N)と、バッテリ220の定格出力PBK(K=1〜N)とを表すデータを送電器10に送信する。
次に、送電器10は、受電電力PK(K=1〜N)と、バッテリ220の定格出力PBK(K=1〜N)とを表すデータを受信する(ステップS202)。
受電電力PKは、受電器101−1〜101−Nの内部で、スイッチ180をダミー抵抗器190に接続させて測定される。定格出力PBKは、受電器101−1〜101−Nの各々に接続されるバッテリ220の定格出力である。バッテリ220の定格出力を表すデータは、受電器101−1〜101−Nの各々の制御部150が内部メモリに保持している。
電力の送電は、受電器101−1〜101−Nの各々に対して、1対1で行うため、送電器10は、送電をN回行うことになる。なお、送電器10が受電器101−1〜101−Nの各々に送電する電力P0は、受電器101−1〜101−Nの各々について等しい。
次に、送電器10は、受電器101−1〜101−Nの各々について、受電電力PK(K=1〜N)に対する、定格出力PBK(K=1〜N)の比XK(K=1〜N)を求める(ステップS203)。XK=PBK/PKで求まる。
次に、送電器10は、比XKのうちの最大値XSを求め、受電器101−1〜101−Nの各々について、最大値XSに対する比XKの比YK(K=1〜N)を求める(ステップS204)。YK=XK/XSで求まる。
次に、送電器10は、受電器101−1〜101−Nの受電電力が、Y1〜YN倍になるような位相差D1〜DNを求める(ステップS205)。Y1〜YN倍になるような位相差D1〜DNを求めるには、例えば、図24に示すようなテーブル形式のデータを用いればよい。
図24に示すテーブル形式のデータは、比Y1〜YNの組み合わせと、位相差D1〜DNの組み合わせとを関連付けたデータである。比Y1〜YNの組み合わせには、Ya1、Ya2、・・・、YaN、Yb1、Yb2、・・・、YbN等がある。位相差D1〜DNの値の組み合わせには、Da1、Da2、・・・、DaN、Db1、Db2、・・・、DbN等がある。
比Y1〜YNの組み合わせYa1、Ya2、・・・は、それぞれ、位相差D1〜DNの組み合わせDa1、Da2、・・・、DaNと関連付けられている。比Y1〜YNの組み合わせYb1、Yb2、・・・は、それぞれ、位相差D1〜DNの組み合わせDb1、Db2、・・・、DbNと関連付けられている。
このような比Y1〜YNの組み合わせと、位相差D1〜DNの組み合わせとを関連付けたデータを多数用意しておき、ステップS204で受電器101−1〜101−Nについて求めた比Y1〜YNに対応する位相差D1〜DNを図24に示すテーブル形式のデータから求めればよい。
なお、図24に示すテーブル形式のデータの中に、ステップS204で受電器101−1〜101−Nについて求めた比Y1〜YNの組み合わせが存在しない場合は、ステップS204で求めた比Y1〜YNに近い比Y1〜YNに関連付けられた位相差D1〜DNを用いればよい。また、このようにステップS204で求めた比Y1〜YNの組み合わせが図24に示すデータに存在しない場合には、ステップS204で求めた比Y1〜YNの組み合わせに近い比Y1〜YNを補間処理等で求めることによって、位相差D1〜DNを用いればよい。
また、ここでは、図24に示すテーブル形式のデータを用いて位相差D1〜DNを求める形態について説明したが、例えば、比Y1〜YNの値に応じて、位相差D1〜DNを演算してもよい。比Y1〜YNの値は、比XKが最大値XSになる場合に1となり、その他の場合は1未満の値になる。このため、比Y1〜YNの値が大きいほど、必要な受電電力量が多いことになる。従って、比Y1〜YNの値が大きいほど位相差D1〜DNを大きく設定し、比Y1〜YNの値が小さいほど位相差D1〜DNを小さく設定すればよい。
次に、送電器10は、受電器101−1〜101−Nに、位相差D1〜DNを表すデータを送信する(ステップS206)。
最後に、送電器10は、送電出力Pを次式で設定する(ステップS207)。
以上で、位相差D1〜DNと送電出力Pの設定が終了する。
以上、実施の形態3によれば、電力供給量のバランスを改善することのできる受電器101−1〜101−Nを提供することができる。また、実施の形態3によれば、電力供給量のバランスを改善することができる電力伝送システム(受電器101−1〜101−N及び送電器10)を提供することができる。
以上、本発明の例示的な実施の形態の受電器、及び、電力伝送システムについて説明したが、本発明は、具体的に開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。