JP2014023324A - 電力搬送装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】平面コイルを使用してコイルのQ値を高くし、送電側のコイルから受電側のコイルに電力搬送する送電効率を相当に高くする。
【解決手段】電力搬送装置は、交流電源3と、この交流電源3の周波数に共振する送電側のコイル1Xと、この送電側のコイル1Xと共振周波数が等しく、送電側のコイル1Xから電力搬送される受電側のコイル1Yとを備え、送電側のコイル1Xから受電側のコイル1Yに磁界共鳴で電力搬送する。コイル1は、導線12を同一平面にスパイラル状に巻いてなる平面コイル11を複数個互いに略平行に配置してなる多層スパイラルコイル10としている。この多層スパイラルコイル10は、隣接する平面コイル11の間隔を、等価直列抵抗が、隣接する平面コイル11の密着状態における等価直列抵抗の0.5倍以下とする間隔よりも広く配置している。
【選択図】図2

Description

本発明は、磁界共鳴方式で電力搬送する装置に関し、とくに、効率よく磁界共鳴方式で電力搬送できる装置に関する。
磁界共鳴方式で電力搬送する装置は開発されている。この磁界共鳴方式は、送電側のコイルと受電側のコイルとの共振周波数を等しくし、交流電源から共振周波数に等しい交流を送電側のコイルに供給して、送電側のコイルから受電側のコイルに電力搬送する。この電力搬送方式は、電磁誘導作用で電力搬送する装置に比較すると、送電側のコイルと受電側のコイルとの間隔を離しながら効率よく電力搬送できる特徴がある。したがって、この磁界共鳴方式は、受電側のコイルを送電側のコイルから離して効率よく電力搬送するのに適している。この磁界共鳴方式の電力搬送のコイルとして、導線を同一平面にスパイラル状に巻いた平面コイルを使用する装置が開発されている。(特許文献1参照)
特開2011−135717号公報
特許文献1の磁界共鳴による電力搬送システムは、コイルに平面コイルを使用し、さらに、共振周波数のずれを補正するために、コイルの近傍に圧電アクチュエータを設けて、コイルの線間容量を調整して共振周波数のずれを補正している。この磁界共鳴方式は、共振周波数のずれを防止して、送電効率を高く保持することができる。
ところで、磁界共鳴方式は、送電効率を高くするために、送電側のコイルと受電側のコイルの共振周波数を等しく調整し、さらに、電源からコイルの共振周波数に等しい交流を送電側のコイルに供給している。コイルの共振周波数(f)は、コイルのインダクタンス(L)とコイルに接続されるコンデンサーの静電容量(C)から以下の式で特定される。
f=1/{2π×(L×C)1/2
電源がコイルに供給する周波数、すなわちコイルの共振周波数は、用途やコイルの大きさなどを考慮して最適値に設定され、たとえば、50kHz〜10MHzに設定される。以上の式から、コイルの共振周波数を高くすることにより、コイルのインダクタンスを小さくできる。ただ、共振周波数を高くするとトランジスタやFETに高周波用の高価なスイッチング素子を使用する必要があって部品コストが高くなる。とくに、大電力用で高周波用のスイッチング素子はさらに高価となる。また、コイルの共振周波数を高くすると、電源に使用するスイッチング素子の電力効率、すなわち、入力電力に対する出力電力の比率が低下して、電源の電力効率が低下する。コイルの共振周波数を低くすることにより、トランジスタやFET等のスイッチング素子の部品コストを低減して、電源の電力効率を高くできる。ただ、共振周波数を低くするにはコイルのインダクタンスを大きくする必要がある。コイルのインダクタンスが特定されると、平面コイルは、巻き数と巻き径でインダクタンスが特定されるので、所定のインダクタンスとなる巻き数と直径として製作される。
ところで、磁界共鳴方式は、送電効率を高くするために、コイルのQ値を高くする必要がある。送電側のコイルから受電側のコイルへの送電効率(η)が以下の式で近似できるからである。
η=(kQ)/{1+[1+(kQ)1/2
ただし、以上の式においてkは、送電側のコイルと受電側のコイルの結合係数である。
以上の式から、磁界共鳴方式の送電効率は、コイルのQ値を高くすることにより、高くできる。さらに、コイルのQ値は、以下の式で示すようにコイルの抵抗を小さく、インダクタンスを大きくすることにより高くできる。
Q=2πfL/R
以上の式から、コイルのQ値は、コイルの導線の線径を太くして電気抵抗を小さくし、さらに巻き数を多くしてインダクタンスを大きくすることにより高くできる。線径を太くすることより抵抗を小さくできるが、線径を太くすると平面コイルが大きくなる。また、巻き数を多くしてインダクタンスを大きくすると、コイルの線長が長くなって電気抵抗が大きくなるので、巻き数を多くすることでQ値を高くするのは難しい。
ところで、平面コイルは、複数個を略平行に多層に積層する構造で、インダクタンスを大きくできる。たとえば、2個の平面コイルを隙間なく積層すると、インダクタンスは約4倍に増加する。2個の平面コイルを直列に接続するとコイルの電気抵抗は2倍となるので、インダクタンスが4倍、電気抵抗が2倍になると、コイルのQ値は2倍になる。しかしながら、実際に平面コイルを2層に積層してもコイルのQ値は2倍に増加しない。それは、コイルの等価直列抵抗が2倍よりも大きくなるからである。コイルの等価直列抵抗が増加するのは、互いに接近する導線に同じ方向に電流が流れると、導線全体に均一に電流が流れなくなって、電流の流れる領域が狭く制約されるからである。したがって、平面コイルを使用する従来の磁界共鳴の電力搬送装置は、コイルのQ値を高くすることが難しく、Q値を高くして送電効率を高くするのが難しい欠点があった。
本発明は、この欠点を解決することを目的に開発されたものである。本発明の重要な目的は、平面コイルを使用してコイルのQ値を高くし、送電側のコイルから受電側のコイルに電力搬送する送電効率を高くできる電力搬送装置を提供することにある。
課題を解決するための手段及び発明の効果
本発明の電力搬送装置は、交流電源3と、この交流電源3の周波数に共振する送電側のコイル1Xと、この送電側のコイル1Xと共振周波数が等しく、送電側のコイル1Xから電力搬送される受電側のコイル1Yとを備え、送電側のコイル1Xから受電側のコイル1Yに磁界共鳴で電力搬送する。コイル1は、導線12を同一平面にスパイラル状に巻いてなる平面コイル11を複数個互いに略平行に配置してなる多層スパイラルコイル10としている。この多層スパイラルコイル10は、隣接する平面コイル11の間隔を、等価直列抵抗が、隣接する平面コイル11を密着させた状態における等価直列抵抗の0.5倍以下とする間隔よりも広く配置している。
以上の電力搬送装置は、平面コイルのQ値を高くして、送電側のコイルから受電側のコイルに電力搬送する送電効率を相当に高くできる特徴がある。それは、平面コイルを積層してインダクタンスを大きくしながら、平面コイルの間隔を等価直列抵抗が小さくなる間隔に設定するからである。
ちなみに、本発明の電力搬送装置は、2層の平面コイルの間隔を調整して、コイルの等価直列抵抗を小さくすることで、多層スパイラルコイルのQ値を800から1400へと高くして、結合係数(k)を0.01とする状態で、送電効率を78%から87%へと約10%も向上できる。結合係数(k)は、送電側のコイルと受電側のコイルの間隔が広くなると小さくなり、たとえば、コイル半径が各々0.1mの送電側のコイルと受電側のコイルの間隔を0.5mにすると、0.01程度となる。送電側のコイルと受電側のコイルの間隔を広くして結合係数(k)を小さくすると送電効率は低下する。ただ、コイルのQ値が高いと、結合係数(k)が低下しても送電効率が低下する割合は少なくなる。したがって、本発明の電力搬送装置は、受電側のコイルを送電側のコイルに接近できない用途において、とくに送電効率を高くできる特徴を実現する。
図1は、送電側のコイルと受電側のコイルの間隔、すなわち伝送距離に対する送電効率の変化を示している。この図で曲線Aは、Q値を400としたときのコイル間の送電効率を示し、曲線Bは、Q値を1200としたときのコイル間の送電効率を示している。この図から明らかなように、受電側のコイルが送電側のコイルから離れるにしたがって、コイルのQ値を高くすることにより、送電効率の低下を少なくできることがわかる。磁界共鳴方式の電力搬送は、電磁誘導方式で電力搬送するのに比較して、受電側のコイルが送電側のコイルから離れた状態であっても効率よく電力搬送できることを特徴とする。この特徴から、磁界共鳴方式の電力搬送は、たとえば、電動自転車や電動車両のバッテリの無接点充電のように、受電側のコイルを送電側のコイルに接近させることが難しい用途に好適に使用されるが、とくに、本発明の電力搬送装置は、電磁誘導方式や従来構造のコイルを用いた磁界共鳴方式に比べてより高い送電効率を実現しながら電力搬送できる特徴を実現する。
本発明の電力搬送装置は、受電側のコイル1Yを、複数の平面コイル11を互いに略平行に配置してなる多層スパイラルコイル10とし、隣接する平面コイル11の間隔(D)を、等価直列抵抗が、隣接する平面コイル11の密着状態における等価直列抵抗の0.5倍以下とする間隔よりも広く配置することができる。
以上の電力搬送装置は、受電側のコイルを小さくしながらQ値を高くして送電効率を高くできる。
本発明の電力搬送装置は、送電側のコイル1Xを、複数の平面コイル11を互いに略平行に配置してなる多層スパイラルコイル10とし、隣接する平面コイル11の間隔(D)を、等価直列抵抗が、隣接する平面コイル11の密着状態における等価直列抵抗の0.5倍以下とする間隔よりも広く配置することができる。
以上の電力搬送装置は、送電側のコイルのQ値を高くし、あるいは送電側のコイルと受電側のコイルの両方のコイルのQ値を高くして、効率よく電力搬送できる。
本発明の電力搬送装置は、多層スパイラルコイル10が、2層の平面コイル11を略平行に配置することができる。
以上の電力搬送装置は、多層スパイラルコイルを平面コイルの2層構造とするので、ヘリカル構造のコイルと比べて薄くしながら、Q値を高くして、送電効率を高くできる。
本発明の電力搬送装置は、多層スパイラルコイル10を構成してなる複数の平面コイル11の間隔(D)を、スパイラル状に巻いてなる平面コイル11の線間の隙間(d)よりも広くすることができる。
以上の電力搬送装置は、平面コイルの間隔(D)を線間の隙間(d)よりも広くして、等価直列抵抗を小さくしてコイルのQ値を高くできる。
本発明の電力搬送装置は、隣接する平面コイル11の間隔(D)を、多層スパイラルコイル10のインダクタンスが、一つの平面コイル11のインダクタンスの3倍以上とする間隔よりも狭く配置することができる。
送電側のコイルと受電側のコイルの間隔に対する送電効率の変化を示すグラフである。 本発明の一実施の形態にかかる電力搬送装置のブロック図である。 図2に示す電力搬送装置における送電側のコイルと受電側のコイルを示す概略構成図である。 本発明の一実施の形態にかかる電力搬送装置の使用例を示す概略図である。 コイルのQ値によって送電効率が変化する特性を示すグラフである。 多層スパイラルコイルの一例を示す概略斜視図である。 多層スパイラルコイルの一例を示す概略断面図である。 多層スパイラルコイルの周波数に対する等価直列抵抗の一例を示すグラフである。 多層スパイラルコイルの周波数に対するQ値の一例を示すグラフである。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための電力搬送装置を例示するものであって、本発明は電力搬送装置を以下のものに特定しない。さらに、この明細書は、特許請求の範囲を理解しやすいように、実施例に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲」および「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
以下、電力搬送装置が磁界共鳴方式で電力搬送して電池を充電する装置を詳述する。ただし、本発明の電力搬送装置は、電池を充電する装置には特定せず、例えば、磁界共鳴方式で搬送される電力で照明を点灯し、あるいは動力のモータを駆動する装置などにも使用できる。
図2に示す電力搬送装置は、交流電源3と、この交流電源3の周波数に共振する送電側のコイル1Xと、この送電側のコイル1Xと共振周波数が等しく、送電側のコイル1Xから磁界共鳴で電力搬送される受電側のコイル1Yとを備える。送電側のコイル1Xと受電側のコイル1Yは、並列にコンデンサー2を接続して並列共振回路を構成している。並列共振回路の共振周波数は、コイル1のインダクタンスとコンデンサー2の静電容量から特定される。共振周波数が高い場合は、コイルにコンデンサーを接続することなく、コイルの浮遊容量とコイルのインダクタンスとで共振回路を構成することもできる。したがって、送電側のコイル1Xと受電側のコイル1Yには、必ずしもコンデンサーを接続する必要はない。
磁界共鳴方式は、共振周波数の等しい送電側のコイル1Xと受電側のコイル1Yとを結合して、送電側のコイル1Xから受電側のコイル1Yに電力搬送する方式である。したがって、磁界共鳴で電力搬送する電力搬送装置は、送電側のコイル1Xと受電側のコイル1Yの共振周波数を等しくすると共に、この共振周波数と同じ周波数の交流を、交流電源3から送電側のコイル1Xに供給して受電側のコイル1Yに電力搬送する。
送電側のコイル1Xと受電側のコイル1Yの共振周波数は、例えば50kHz〜10MHz、好ましくは100kHz〜1MHz、さらに好ましくは100kHz〜500kHzである。共振周波数を高くすればコイル1のインダクタンスを小さく、すなわちコイル1を小さくできる。ただ、共振周波数を高くすると、交流電源3のスイッチング素子33であるトランジスタやFET等のスイッチング素子に高価なものが必要となり、また電力損失も大きくなるので、前述の範囲で用途に最適な周波数に設定される。
交流電源3は、矩形波やサイン波の発振回路31と、この発振回路31から出力される交流で一対のスイッチング素子33を交互にオンオフに切り換えるドライブ回路32と、このドライブ回路32でオンオフに切り換えられる直列に接続されたスイッチング素子33とを備える。発振回路31の発振周波数は、送電側のコイル1Xの共振周波数に等しく、この発振回路31から出力される交流をスイッチング素子33で電力増幅して、送電側のコイル1Xに供給する。
電力搬送装置は、交流電源3の出力を効率よく送電側のコイル1Xに供給することが大切である。図2に示す交流電源3は、直列接続の中間接続点34を出力として、出力インピーダンスを低くしている。交流電源3は、低インピーダンスの1次コイル4を接続している。1次コイル4は、送電側のコイル1Xに結合されて、交流電源3から供給される交流を送電側のコイル1Xに供給する。この構造は、1次コイル4でインピーダンスマッチングをとりながら、交流電源3から出力される交流を、効率よく送電側のコイル1Xに供給できる。この交流電源3は、出力を1次コイル4に供給し、1次コイル4は、これに結合している送電側のコイル1Xに電力供給する。この回路構成は、1次コイル4と送電側のコイル1Xの巻き数比でインピーダンス変換して、交流電源3から送電側のコイル1Xに効率よく交流電力を供給できる。ただ、交流電源に直接に送電側のコイルを接続して、交流電源から送電側のコイルに電力供給することもできる。この回路構成は、交流電力の出力インピーダンスを送電側のコイルに整合するようにして、交流電力から送電側のコイルに効率よく電力供給する。
図2の電力搬送装置は、受電側のコイル1Yに誘導される交流電力を直流に変換する整流回路22と、整流回路22から出力される直流で電池21を充電する充電回路23とを備えている。整流回路22は、受電側のコイル1Yに誘導される交流をダイオード24で整流し、コンデンサー25で脈流を直流に変換して出力する。充電回路23は、整流回路22から出力される直流を、電池21の充電に最適な電流や電圧にコントロールしながら、電池21を充電する。
送電側のコイル1Xと受電側のコイル1Yは、図3に示すように、互いに結合される距離に配置されて、送電側のコイル1Xから受電側のコイル1Yに磁界共鳴で電力搬送する。受電側のコイル1Yが送電側のコイル1Xに接近すると結合係数(k)が大きくなって、送電効率は高くなる。送電側のコイル1Xから受電側のコイル1Yへの送電効率は、前述したように、コイル1のQ値と結合係数(k)で特定される。コイル1のQ値は、コイル1の等価直列抵抗とインダクタンスで特定される。インダクタンスは平面コイルの巻き数と巻き径で特定されるため、コイル形状も特定される。結合係数(k)は、コイル形状が特定されると、送電側のコイル1Xと受電側のコイル1Yとの距離で特定される。磁界共鳴方式は、受電側のコイル1Yを送電側のコイル1Xに密接することなく、離して効率よく電力搬送できることを特徴とする。たとえば、受電側のコイル1Yを送電側のコイル1Xから0.5m離して、結合係数(k)を0.01とする状態で、コイル1のQ値が1200であると、送電効率は80%以上となる。
結合係数(k)や受電側のコイル1Yと送電側のコイル1Xの間隔は、使用する用途によって特定される。たとえば、図4に示すように、太陽電池40の発電電力で電動自転車41のバッテリ43を充電する場合、自転車の前カゴ42に受電側のコイル1Yを固定し、これに接近する位置に送電側のコイル1Xを固定している状態では、送電側のコイル1Xと受電側のコイル1Yとの間隔を20cm以下として、結合係数(k)を0.01よりも大きくできる。結合係数(k)を0.01以上とする状態で、磁界共鳴方式で電力搬送する場合、コイル1のQ値を高くして送電効率を高くできる。
図5は、コイル1のQ値によって送電効率が変化する特性を示している。ただし、この図は、結合係数(k)を0.01とする状態での送電効率を示している。このグラフに示すように、結合係数(k)を0.01とする状態においては、コイル1のQ値が1000以上のとき、送電効率を80%以上にできる。コイル1のQ値は、インダクタンスに比例し、等価直列抵抗に反比例するので、インダクタンスを大きくし、等価直列抵抗を小さくすることにより高くできる。送電側のコイル1Xと受電側のコイル1Yは、図6と図7に示すように、導線12を同一平面にスパイラル状に巻いている複数の平面コイル11を互いに略平行に配置して積層する多層スパイラルコイル10としてインダクタンスを大きくできる。
多層スパイラルコイル10は、図6と図7に示すように、複数の平面コイル11を直列に接続して略平行な姿勢とし、スパイラル状に巻いている平面コイル11の中心を略同軸に配置している。図6に示すように、2個の平面コイル11を2層に配置する多層スパイラルコイル10は、平面コイル11を直列に接続して、インダクタンスを約4倍に増加できる。コイル1のQ値は、インダクタンスに比例するので、2個の平面コイル11を直列に接続して、等価直列抵抗が2倍になるとすれば、Q値は2倍となる。
図8は、周波数に対して、多層スパイラルコイル10の等価直列抵抗が増加する状態の一例を示している。この図において曲線Aは、直径が2mmの導線12をスパイラル状に巻いた2個の平面コイル11を密着して積層した多層スパイラルコイル10の等価直列抵抗を示している。この図に示すように、この多層スパイラルコイル10の等価直列抵抗は、周波数が10kHzのときは0.2Ωであるが、300kHzのときには0.8Ωに増加する。1個の平面コイル11の等価直列抵抗は、曲線Dで示すように、周波数が300kHzのときには0.2Ωであるから、2層に平面コイル11を積層してインダクタンスが4倍に増加しても、等価直列抵抗が0.2Ωから0.8Ωと4倍になるので、Q値は増加しない。
図8の曲線Bは、積層する平面コイル11の間隔(D)を3mmとする多層スパイラルコイル10の等価直列抵抗を示し、さらに、曲線Cは、積層する平面コイル11の間隔(D)を5mmとする多層スパイラルコイル10の等価直列抵抗を示している。曲線B、Cに示すように、多層スパイラルコイル10は、平面コイル11の間隔(D)を広くすることにより、等価直列抵抗を相当に小さくできる。したがって、本発明の電力搬送装置は、多段に配置される平面コイル11を離して配置することで、等価直列抵抗を小さくし、これによってQ値を高くして、送電効率を向上させる。
本発明の電力搬送装置は、送電効率を高くするために、多段に配置される平面コイル11の間隔(D)を、等価直列抵抗が、隣接する平面コイル11の密着状態における等価直列抵抗の0.5倍以下とする間隔よりも広く配置している。図8のグラフの数値を用いて説明すると、多層スパイラルコイルは、平面コイルを互いに密着するように2層に積層すると、等価直列抵抗が周波数300kHzにおいて0.8Ωとなる。ひとつの平面コイルの電気抵抗は0.2Ωであるから、平面コイルを2層に密接して積層する多層スパイラルコイルは、等価直列抵抗が4倍となる。すなわち、この多層スパイラルコイルは、インダクタンスが4倍で、等価直列抵抗が4倍となってQ値は増加しない。多段に配置される平面コイルに間隔(D)を設けて、等価直列抵抗を0.8Ωの0.5倍とする多層スパイラルコイルは、等価直列抵抗が0.4Ωとなって、ひとつの平面コイルの2倍となる。すなわち、Q値は2倍となる。本発明の電力搬送装置は、図8の特性の多層スパイラルコイルにあっては、等価直列抵抗を0.4Ωよりも小さくなるように、平面コイルを離して積層する。多段の平面コイルの間隔を広げて、等価直列抵抗を0.5倍よりも小さくするので、たとえば、平面コイルを2段に配置して、インダクタンスを4倍とする多層スパイラルコイルは、等価直列抵抗を0.4Ω(2倍)よりも小さくすることにより、Q値を高くできる。図8の曲線Cで示す多層スパイラルコイルは、間隔(D)を設けて2段に配置することにより、等価直列抵抗を0.3Ωにできる。この等価直列抵抗は、ひとつの平面コイルの1.5倍となるので、インダクタンスを増加しながら、Q値を4/1.5倍、すなわち、約2.7倍にできる。
さらに、多層スパイラルコイル10を構成する複数の平面コイル11の間隔(D)は、スパイラル状に巻いてなる平面コイル11の導線12の線間の隙間(d)よりも広くする。言い換えると、導線12の線間の隙間(d)は、平面コイル11の間隔(D)よりも狭くする。これにより、平面コイル11は、その外径を小さくできる。したがって、多層スパイラルコイル10は、平面コイル11の間隔(D)を線間の隙間(d)よりも広くすることにより、等価直列抵抗を小さくしてコイルのQ値を高くできる。
以上のように、多層スパイラルコイル10は、平面コイル11の間隔(D)を広くすることにより等価直列抵抗を小さくできる。ただ、平面コイル11の間隔(D)が広すぎると、インダクタンスも小さくなる。したがって、多層スパイラルコイル10は、隣接する平面コイル11の間隔(D)を、そのインダクタンスが、ひとつの平面コイル11のインダクタンスの3倍以上とする間隔よりも狭く配置している。
図9は、多層スパイラルコイル10の周波数に対するQ値を示している。この図の曲線Aは、2層の平面コイル11を密着して配置する多層スパイラルコイル10のQ値を示し、曲線Bは平面コイル11の間隔を3mmとする多層スパイラルコイル10のQ値を示し、曲線Cは平面コイル11の間隔を5mmとする多層スパイラルコイル10のQ値を示し、曲線Dはひとつの平面コイル11のQ値を示している。この図から明らかなように、周波数の300kHzにおける多層スパイラルコイル10のQ値は、平面コイル11の間隔を5mmとしたときには、約1400と極めて高く、また、平面コイル11の間隔を3mmとしたときには、約1200と高くできる。等価直列抵抗が0.8Ωから0.3Ωと1/2.7となるにも関わらず、Q値が700から1400と2倍にしかならないのは、平面コイル11の間隔を広くしたことでインダクタンスが低下するからである。
以上の電力搬送装置は、受電側のコイル1Yを送電側のコイル1Xに結合する距離、たとえば、受電側のコイル1Yを送電側のコイル1Xから0.1m〜0.5m離す状態に配置して、交流電源3から送電側のコイル1Xに交流電力を供給する。この状態で、送電側のコイル1Xから受電側のコイル1Yに磁界共鳴で電力搬送される。受電側のコイル1Yに誘導される交流は、整流回路22で直流に変換され、充電回路23を介して電池21を充電する。充電回路23は、電池21の満充電を検出して、満充電信号を交流電源3に伝送する。この電力搬送装置は、充電回路23に、満充電信号を交流電源3に伝送する送信器(図示せず)を装備し、交流電源3は満充電信号を受信する受信器(図示せず)を内蔵している。
本発明の電力搬送装置は、受電側のコイルを送電側のコイルに接近するのが難しい用途、たとえば、電動自転車や電動車両のバッテリの無接点充電等に好適に使用して、より高い送電効率を実現しながら電力搬送できる。
1…コイル 1X…送電側のコイル
1Y…受電側のコイル
2…コンデンサー
3…交流電源
4…1次コイル
10…多層スパイラルコイル
11…平面コイル
12…導線
21…電池
22…整流回路
23…充電回路
24…ダイオード
25…コンデンサー
31…発振回路
32…ドライブ回路
33…スイッチング素子
34…中間接続点
40…太陽電池
41…電動自転車
42…前カゴ
43…バッテリ

Claims (6)

  1. 交流電源(3)と、この交流電源(3)の周波数に共振する送電側のコイル(1X)と、この送電側のコイル(1X)と共振周波数が等しく、送電側のコイル(1X)から電力搬送される受電側のコイル(1Y)とを備え、送電側のコイル(1X)から受電側のコイル(1Y)に磁界共鳴で電力搬送する電力搬送装置であって、
    前記コイル(1)が、導線(12)を同一平面にスパイラル状に巻いてなる平面コイル(11)を複数個互いに略平行に配置してなる多層スパイラルコイル(10)で、この多層スパイラルコイル(10)は、隣接する平面コイル(11)の間隔(D)を、等価直列抵抗が、隣接する平面コイル(11)の密着状態における等価直列抵抗の0.5倍以下とする間隔よりも広く配置してなることを特徴とする電力搬送装置。
  2. 前記受電側のコイル(1Y)が、複数の平面コイル(11)を互いに略平行に配置してなる多層スパイラルコイル(10)で、この多層スパイラルコイル(10)は、隣接する平面コイル(11)の間隔(D)を、等価直列抵抗が、隣接する平面コイル(11)の密着状態における等価直列抵抗の0.5倍以下とする間隔よりも広く配置してなる請求項1に記載される電力搬送装置。
  3. 前記送電側のコイル(1X)が、複数の平面コイル(11)を互いに略平行に配置してなる多層スパイラルコイル(10)で、この多層スパイラルコイル(10)は、隣接する平面コイル(11)の間隔(D)を、等価直列抵抗が、隣接する平面コイル(11)の密着状態における等価直列抵抗の0.5倍以下とする間隔よりも広く配置してなる請求項1又は2に記載される電力搬送装置。
  4. 前記多層スパイラルコイル(10)が、2層の平面コイル(11)を略平行に配置してなる請求項1ないし3のいずれかに記載される電力搬送装置。
  5. 前記多層スパイラルコイル(10)を構成してなる複数の平面コイル(11)間の間隔(D)が、スパイラル状に巻いてなる平面コイル(11)の線間の隙間(d)よりも広い請求項1ないし4のいずれかに記載される電力搬送装置。
  6. 隣接する前記平面コイル(11)の間隔(D)を、多層スパイラルコイル(10)のインダクタンスが、一つの平面コイル(11)のインダクタンスの3倍以上とする間隔よりも狭く配置してなる請求項1ないし5のいずれかに記載される電力搬送装置。
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