JP6327289B2 - 偏光板保護フィルム、その製造方法、偏光板及び画像表示装置 - Google Patents

偏光板保護フィルム、その製造方法、偏光板及び画像表示装置 Download PDF

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Description

本発明は、偏光板保護フィルム、その製造方法、偏光板及び画像表示装置に関する。
エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)や液晶表示装置(LCD)に代表される画像表示装置には、その薄型化への要求が益々高まっている。また、屋外用途をはじめとして画像表示装置の使用環境は多様化しており、画像表示装置には従来に比べて過酷な環境下でも良好な画像品質を安定して維持できること(性能の高度な耐久性)が求められるようになっている。
画像表示装置における画像品質の低下は、水分が偏光板内部へと進入し、偏光子を劣化させることが一因とされる。偏光子はその表面に保護フィルム(光学フィルム)が積層されて保護されているが、保護フィルムにも薄膜化が求められている。保護フィルムを薄膜化すると水分が偏光子とより接触しやすくなり、画像品質が低下しやすくなる。このような画像品質の低下は、屋外用途等の過酷環境下での使用においてより顕在化する。
上記光学フィルムとしては、汎用性又は加工性の観点から、セルロース系樹脂が広く用いられている。耐久性をより高める必要性から、光学フィルムの改質が進められている(例えば特許文献1〜6)。
特開平9−197128号公報 特開2012−172062号公報 特開2015−11059号公報 特開2014−115473号公報 特開2014−24254号公報 特開2014−48433号公報
本発明者らは、偏光子の劣化を抑える観点で検討を重ねた結果、上記各特許文献に記載のフィルムをはじめ従来の保護フィルムは、特に上述した要求水準まで高度に薄膜化した際には、透湿性が高く、高温高湿条件下における偏光子の劣化を十分に抑えることが困難であることが明らかとなってきた。
更に、防湿層を備えた2層構造の保護フィルム(例えば、特許文献1及び4)を用いた偏光板は、高温高湿条件下に長時間さらされると、防湿層が剥離し、耐久性が十分ではないことが分かった。
本発明は、セルロースエステル層を備えた偏光板保護フィルムであって、低透湿性及び層間密着性に優れる偏光板保護フィルムと、その製造方法とを提供することを課題とする。また、本発明は、画像表示装置に組み込んだ際に、高温高湿条件下で長時間使用した場合の画像品質低下を抑制することができる偏光板、及び、この偏光板を用いた画像表示装置を提供すること課題とする。
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討を重ねた結果、溶解度パラメータが特定範囲内にある繰り返し単位を含むポリマーを含有する層を、上記ポリマー及びセルロースエステルそれぞれと後述するfd値に関して特定の関係を満たす溶媒と上記ポリマーとを含有する組成物を用いる特定の成膜方法で、セルロースエステル層に隣接して設けた偏光板保護フィルムが、上記ポリマー層とセルロースエステル層との層間密着性に優れること、また低透湿度を示し、偏光子の保護フィルムとして用いることにより高温高湿条件下においても偏光子の劣化を効果的に抑えることができることを見出した。本発明はこれらの知見に基づき、更に検討を重ね、完成されるに至ったものである。
<1>セルロースエステルを含有するセルロースエステル層と、セルロースエステル層の少なくとも一方の表面に隣接する、ポリマーB1を含有するポリマーB1層とを有し、
ポリマーB1が、下記〔a〕の繰り返し単位を含み、
ポリマーB1層が、セルロースエステル層の表面上に、ポリマーB1と、下記式Iで規定されるfdが下記関係式[1]及び[2]を満たす溶媒とを含有する組成物を適用してなり、
85℃、相対湿度85%の条件下、6時間での透湿度が100g/m以上1600g/m以下である偏光板保護フィルム。
〔a〕:Hoy法により算出される溶解度パラメータδtが13.5以上20.0未満である繰り返し単位
関係式[1] |fdsolvent−fdcellulose|≦0.050
関係式[2] |fdsolvent−fdpolymerB1|≦0.050
関係式[1]及び[2]中、fdsolventは溶媒のfd値を表し、fdcelluloseはセルロースエステルのfd値を表し、fdpolymerB1はポリマーB1のfd値を表す。
ここで、fd値は下記式Iで規定される。 式I fd=δd/(δd+δp+δh)
式Iにおいて、δd、δp及びδhは、それぞれ、Hoy法により算出される溶解度パラメータδtに対する、London分散力に対応する項、双極子間力に対応する項、及び、水素結合力に対応する項を示し、fdはδdとδpとδhの和に対するδdの比率を示す。
<2>ポリマーB1が、下記〔b〕の繰り返し単位を含む、<1>に記載の偏光板保護フィルム。
〔b〕:Hoy法により算出される溶解度パラメータδtが20.0以上26.0以下である繰り返し単位
<3>ポリマーB1層の、セルロースエステル層と反対側の表面に隣接する、ポリマーB2を含有するポリマーB2層を有し、
ポリマーB2が、下記〔a〕の繰り返し単位を含み、かつ〔b〕の繰り返し単位を含まない、<2>に記載の偏光板保護フィルム。
〔a〕:Hoy法により算出される溶解度パラメータδtが13.5以上20.0未満である繰り返し単位
〔b〕:Hoy法により算出される溶解度パラメータδtが20.0以上26.0以下である繰り返し単位
<4>ポリマーB1層が、セルロースエステル層の上記表面上に、上記組成物を塗布してなる、<1>〜<3>のいずれか1つに記載の偏光板保護フィルム。
<5>セルロースエステルを含有するセルロースエステル層の少なくとも一方の表面上に、ポリマーB1と、下記式Iで規定されるfdが下記関係式[1]及び関係式[2]を満たす溶媒とを含有する組成物を適用する工程を含む、<1>〜<3>のいずれか1つに記載の偏光板保護フィルムの製造方法。
関係式[1] |fdsolvent−fdcellulose|≦0.050
関係式[2] |fdsolvent−fdpolymerB1|≦0.050
関係式[1]及び[2]中、fdsolventは溶媒のfd値を表し、fdcelluloseはセルロースエステルのfd値を表し、fdpolymerB1はポリマーB1のfd値を表す。
ここで、fd値は下記式Iで規定される。 式I fd=δd/(δd+δp+δh)
式Iにおいて、δd、δp及びδhは、それぞれ、Hoy法により算出される溶解度パラメータδtに対する、London分散力に対応する項、双極子間力に対応する項、及び、水素結合力に対応する項を示し、fdはδdとδpとδhの和に対するδdの比率を示す。
<6>偏光子と、偏光子の少なくとも一方の表面に設けられた、<1>又は<2>に記載の偏光板保護フィルムとを有する偏光板。
<7>偏光板保護フィルムのポリマーB1層が偏光子の表面側に配置されている<6>に記載の偏光板。
<8>偏光子と、偏光子の少なくとも一方の表面に設けられた、<3>に記載の偏光板保護フィルムとを有する偏光板。
<9>偏光板保護フィルムのポリマーB2層が偏光子の表面側に配置されている<8>に記載の偏光板。
<10>偏光子の一方の表面に偏光板保護フィルムが設けられている場合、偏光子の、偏光板保護フィルムと反対側の表面に、シクロオレフィンポリマーを含有するシクロオレフィンフィルムを有する<6>〜<9>のいずれか1つに記載の偏光板。
<11>上記<6>〜<10>のいずれか1つに記載の偏光板を有する画像表示装置。
本発明は、セルロースエステル層を備えた偏光板保護フィルムであって、低透湿性及び層間密着性に優れる偏光板保護フィルムと、その製造方法とを提供することができる。また、本発明は、画像表示装置に組み込んだ際に、高温高湿条件下で長時間使用した場合の画像品質低下を抑制することができる偏光板、及び、この偏光板を用いた画像表示装置を提供することができる。
図1は、本発明の偏光板保護フィルムの好ましい一実施形態を示す断面図である。 図2は、本発明の偏光板保護フィルムの好ましい一実施形態を示す断面図である。 図3は、本発明の偏光板保護フィルムの好ましい一実施形態を示す断面図である。 図4は、本発明の偏光板保護フィルムの好ましい一実施形態を示す断面図である。 図5は、本発明の偏光板の好ましい一実施形態を示す断面図である。 図6は、本発明の偏光板の好ましい一実施形態を示す断面図である。 図7は、本発明の偏光板保護フィルムを組み込んだ偏光板を備えた液晶表示装置の一実施形態について、その概略を示す模式図である。 図8は、セルロースエステル層の製造方法(共流延)一例を示す部分拡大模式図である。
本発明において、「〜」で表される数値範囲は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味である。
本明細書において、特定の符号で表示された置換基や連結基等(以下、置換基等という)が複数あるとき、あるいは複数の置換基等を同時若しくは択一的に規定するときには、それぞれの置換基等は互いに同一でも異なっていてもよいことを意味する。このことは、置換基等の数の規定についても同様である。また、複数の置換基等が近接(特に隣接)するときにはそれらが互いに連結したり縮環したりして環を形成していてもよい意味である。
本明細書において化合物の表示については、化合物そのものの他、その塩、そのイオンを含む意味に用いる。また、目的の効果を奏する範囲で、構造の一部を変化させたものを含む意味である。なお、化合物の塩としては、例えば、化合物と無機酸若しくは有機酸とで形成された、化合物の酸付加塩、又は、化合物と無機塩基若しくは有機塩基とで形成された、化合物の塩基付加塩等が挙げられる。また、化合物のイオンとしては、例えば、上述の化合物の塩が水又は溶媒等に溶解して生成するイオンが挙げられる。
本明細書において置換、無置換を明記していない置換基(連結基についても同様)については、所望の効果を奏する範囲で、その基に任意の置換基を有していてもよい意味である。これは置換、無置換を明記していない化合物についても同義である。
また本明細書において、単に「置換基」という場合、特段の断りがない限り、下記置換基群Tから選択される基が挙げられる。また、特定の範囲を有する置換基が記載されているだけの場合(例えば「アルキル基」と記載されているだけの場合)は、下記置換基群Tの対応する基(上記の場合はアルキル基)における好ましい範囲、具体例が適用される。
本明細書において、ある基の炭素数を規定する場合、この炭素数は、基全体の炭素数を意味する。つまり、この基が更に置換基を有する形態である場合、この置換基を含めた全体の炭素数を意味する。
本明細書において、ある基が非環状骨格及び環状骨格を採り得る場合、特段の断りがない限り、ある基は、非環状骨格の基と環状骨格の基を含む。例えば、アルキル基は、直鎖アルキル基、分岐アルキル基及び環状(シクロ)アルキル基を含む。ある基が環状骨格を採る場合、環状骨格の基における炭素原子数の下限は、ある基において具体的に記載した炭素原子数の下限にかかわらず、3以上であり、5以上が好ましい。
本明細書において、「(メタ)アクリル酸」との用語は、メタクリル酸及びアクリル酸の両方を包含する意味に用いる。このことは「(メタ)アクリルアミド」についても同様である。また、本明細書において、「アクリル酸」との用語は通常よりも広義の意味で用いている。すなわち、「アクリル酸」は、R−C(=CR )COOHの構造を有する化合物すべてを包含する意味に用いる(R及びRは各々独立に水素原子又は置換基を示す。ただし、Rがメチルである場合、メタクリル酸を意味する)。このことは、「アクリルアミド」についても同様である。
置換基群T:
アルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは1〜12、特に好ましくは1〜8のものであり、例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシルなどが挙げられる。シクロアルキル基の場合、炭素数は、好ましくは3〜20、より好ましくは3〜12、特に好ましくは3〜8のものである。例えば、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは2〜12、特に好ましくは2〜8であり、例えばビニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基などが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは2〜12、特に好ましくは2〜8であり、例えばプロパルギル基、3−ペンチニル基などが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは6〜20、特に好ましくは6〜12であり、例えばフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基などが挙げられる。)、アミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは0〜10、特に好ましくは0〜6であり、例えばアミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基などが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは1〜12、特に好ましくは1〜8であり、例えばメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは6〜16、特に好ましくは6〜12であり、例えばフェニルオキシ基、2−ナフチルオキシ基などが挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばアセチル基、ベンゾイル基、ホルミル基、ピバロイル基などが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは2〜16、特に好ましくは2〜12であり、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは7〜16、特に好ましくは7〜10であり、例えばフェニルオキシカルボニル基などが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは2〜16、特に好ましくは2〜10であり、例えばアセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは2〜16、特に好ましくは2〜10であり、例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基などが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは2〜16、特に好ましくは2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノ基などが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは7〜16、特に好ましくは7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノ基などが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基などが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは0〜16、特に好ましくは0〜12であり、例えばスルファモイル基、メチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基などが挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばカルバモイル基、メチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基などが挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばメチルチオ基、エチルチオ基などが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは6〜16、特に好ましくは6〜12であり、例えばフェニルチオ基などが挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばメシル基、トシル基などが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばメタンスルフィニル基、ベンゼンスルフィニル基などが挙げられる。)、ウレタン基、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばウレイド基、メチルウレイド基、フェニルウレイド基などが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシ基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子が挙げられ、5員環若しくは6員環又はこれらの縮合環が好ましい。具体的には、例えば、イミダゾリル基、ピリジル基、キノリル基、フリル基、ピペリジル基、モルホリノ基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基などが挙げられる。)、及び、シリル基(好ましくは、炭素数3〜40、より好ましくは3〜30、特に好ましくは3〜24であり、例えば、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基などが挙げられる)。
これらの置換基は更に置換基を有してもよい。また、置換基が2つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、隣接する置換基は互いに連結して環を形成してもよい。
以下、本発明の内容について詳細に説明する。
[1.偏光板保護フィルム]
本発明の偏光板保護フィルムは、セルロースエステルを含有するセルロースエステル層と、セルロースエステル層の一方の表面に隣接する、下記〔a〕の繰り返し単位を含むポリマーB1を含有するポリマーB1層とを有している。
この偏光板保護フィルムにおいて、ポリマーB1層は、セルロースエステル層の表面上に、ポリマーB1と、下記式Iで規定されるfdが下記関係式[1]及び「2」を満たす溶媒とを含有する組成物を適用して、形成されている。
そして、偏光板保護フィルムは、85℃、相対湿度85%の環境条件下で6時間における透湿度が、100g/m以上1600g/m以下を示す。
〔a〕:Hoy法により算出される溶解度パラメータδtが13.5以上20.0未満である繰り返し単位
関係式[1] |fdsolvent−fdcellulose|≦0.050
関係式[2] |fdsolvent−fdpolymerB1|≦0.050
関係式[1]及び[2]中、fdsolventは溶媒のfd値を表し、fdcelluloseはセルロースエステル層に含有されるセルロースエステルのfd値を表し、fdpolymerB1はポリマーB1のfd値を表す。
ここで、fd値は、下記式Iで規定される。
式I fd=δd/(δd+δp+δh)
式Iにおいて、δd、δp及びδhは、それぞれ、Hoy法により算出される溶解度パラメータδtに対する、London分散力に対応する項、双極子間力に対応する項、及び、水素結合力に対応する項を示し、fdはδdとδpとδhの和に対するδdの比率を示す。
上記構成を有する本発明の偏光板保護フィルムは、透湿度が低く(低透湿度)、しかも層間密着性(単に密着性ともいう)に優れる。この偏光板保護フィルムは、薄膜化されていても、偏光子と重ね合わされることにより、高温高湿条件下における偏光子の劣化を防止できる。
その理由は定かではないが、以下のように考えられる。
上述した画像品質の低下は、ヨウ素染色されたポリビニルアルコール樹脂で形成された偏光子の場合、偏光子中のヨウ素含有量が徐々に減少するためと、考えられる。すなわち、偏光板保護フィルムを透過して侵入してくる水分により、偏光子において、ホウ酸架橋が加水分解され、またポリヨウ化物イオン(I 、I 、及び更に高次の価数のポリヨウ化物イオン)等がモノヨウ化物イオンI等に分解される。そのため、分解されたヨウ素類が偏光板保護フィルムに拡散して、その含有量が減少する。
上述のように、本発明の偏光板保護フィルムは、〔a〕の繰り返し単位を含むポリマーB1を含有する層を備えており、水分の透湿度を効果的に抑えることができる。そのため、水分の透過を抑えて偏光子との接触を防止できる。かりに、偏光子が水分と接触したとしても、ポリマーB1を含有する層中への上述のヨウ素類の拡散を効果的に防止できると、考えられる。しかも、このポリマーB1層は、後述するように、上述のfd値に関して、セルロースエステル及びポリマーB1と特定の関係を満たす溶媒を含有する組成物で形成される。これにより、セルロースエステル層上に直接設けられる場合であっても、ポリマー層B1の低透湿度を維持しつつ、セルロースエステル層との高い層間密着性を示すと考えられる。
1.偏光板保護フィルムの構造
まず、本発明の偏光板保護フィルムの構造について、説明する。
本発明の偏光板保護フィルムは、セルロースエステル層と、セルロースエステル層の少なくとも一方の表面に隣接する、ポリマーB1層とを有する。
本発明において、ある層の表面に隣接する層とは、ある層と隣接する層との間に両層を密着又は接着させる密着性層(接着剤層)等を介することなく、ある層の一方の表面に直に接する状態に設けられた(積層したないしは重ね合わせた)層を意味する。
本発明の偏光板保護フィルムは、上記積層構造を有していれば、その他の構成は特に限定されない。
例えば、図1に示される偏光板保護フィルム10Aのように、セルロースエステル層11と、セルロースエステル層11の一方の表面に隣接するポリマーB1層12とを有する構造が挙げられる。また、図2に示される偏光板保護フィルム10Bのように、セルロースエステル層11の両表面に隣接するポリマーB1層12を有する構造が挙げられる。更に、図3に示される偏光板保護フィルム10Cのように、セルロースエステル層11と、セルロースエステル層11の一方の表面に隣接するポリマーB1層12と、ポリマーB1層の表面に隣接するポリマーB2を含有する層(ポリマーB2層ともいう)13とを有する構造が挙げられる。また、図4に示される偏光板保護フィルム10Dのように、セルロースエステル層11の両表面それぞれに、ポリマーB1層12及びポリマーB2層13をこの順で有し、各層が互いに隣接している構造が挙げられる。
上記構造において、上記ポリマーB1層及びB2層は、それぞれ、2層以上の積層構造を有していてもよい。また、セルロースエステル層11の両表面に設けられるポリマーB1層及びB2層は、それぞれ、同一でも異なっていてもよい。
本発明において、ポリマーB1が後述する〔b〕の繰り返し単位を含まない場合、ポリマーB1及びポリマーB1層は、それぞれ、ポリマーB2及びポリマーB2層にも相当するが、ポリマーB2及びポリマーB2層とはしない。換言すると、ポリマーB2は、〔b〕の繰り返し単位を含むポリマーB1に対して、〔b〕の繰り返し単位を含まないポリマーとして、用いられる。同様に、ポリマーB2層は、〔b〕の繰り返し単位を含むポリマーB1を含有する層に対して、〔b〕の繰り返し単位を含まないポリマーB2を含有する層として、用いられる。したがって、〔a〕の繰り返し単位を含み、〔b〕の繰り返し単位を含まないポリマーを含有する層が複数積層されている場合、これらの層はすべてポリマーB1層とする。
本発明において、ポリマーB1層、ポリマーB2層、又は、両層を合わせて、ヨウ素類拡散防止層ということがある。ただし、「ヨウ素類拡散防止層」との用語は、単にヨウ素類の拡散を防止しうる層という意味合いで、本発明の理解を容易にするために用いているに過ぎない。この「ヨウ素類拡散防止層」には、そのヨウ素類の拡散を防止しうる度合いにかかわらず、本発明で規定するポリマーを含有する層のすべてが包含される。すなわち、本発明の要旨ないし技術的範囲の判断に際し、「ヨウ素類拡散防止層」との用語が、本発明を限定的に解釈する発明特定事項として考慮されるものではない。
本発明の偏光板保護フィルムは、少なくともポリマーB1層が後述する組成物を用いて形成される。この場合、セルロースエステル層とポリマーB1層との境界近傍(各層の積層表面近傍)に、セルロースエステルとポリマーB1とが混合した混合領域(図1〜6において図示しない)を有している。この混合領域は、領域に含まれるセルロースエステル又はポリマーB1の含有量に着目した場合、セルロースエステル層又はポリマーB1層のいずれかに含まれる。例えば、上記混合領域において、セルロースエステルとポリマーB1の合計100質量%に対して、セルロースエステルの含有量が50質量%以上である混合領域はセルロースエステル層に含まれる。
本発明の偏光板保護フィルムは、ポリマーB1層の形成に際して上記混合領域が形成される。そのため、セルロースエステルと親和性が低いポリマーB1層であっても、混合領域においてセルロースエステルとポリマーB1とが混和して、セルロースエステル層との層間密着性が強固になる。
本発明においては、ポリマーB1層とポリマー層B2層との境界近傍に、ポリマーB1とポリマーB2とが混合した混合領域を有していてもよい。この場合、ポリマーB1層とポリマー層B2層との層間密着性が強固になる。
ポリマーB1層及びポリマーB2層の形成方法については、後述する。
本発明においては、更に、セルロースエステル層又はヨウ素類拡散防止層の表面に、特定の機能に特化した各種機能層を、直接設けてもよい。このような機能層としては、例えば、ハードコート層、反射防止層、光散乱層、防汚層又は帯電防止層等が挙げられる。機能層は一層で複数の機能を兼ねていていてもよい。
本発明において、機能層は、本発明の効果を高める観点では、セルロースエステル層の表面に直接設けることが好ましい。
2.ヨウ素類拡散防止層
本発明において、「ポリマーB1層」又は「ポリマーB2層」とは、層を構成するポリマー層全体(全質量)において、後述するポリマーB1又はポリマーB2をそれぞれ50質量%以上含有する層を意味する。ここで、ポリマー層全体中の各ポリマーの含有量は、それぞれ、60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましく、85質量%以上が特に好ましい。ポリマーB1又はポリマーB2の含有量が多いほど、セルロースエステル層等との密着性をより高めることができ好ましい。そのため、ポリマー層全体中の各ポリマーB1又はB2の含有量は、100質量%でもよく、通常は99質量%以下である。上記ポリマー層中のポリマーの含有量が100質量%でない場合、残部としては、後述する、ポリマーB1及びB2以外の樹脂を含むことができる。
ポリマーB1又はポリマーB2として、それぞれ、2種以上の各ポリマーを用いてもよい。すなわち、組成比及び/又は分子量が異なるポリマー同士を併用してもよい。この場合、各ポリマーの合計量が上記範囲内となる。
ヨウ素類拡散防止層の膜厚に特に制限はなく、1〜25μmが好ましく、1〜20μmがより好ましく、1〜15μmが特に好ましい。
ヨウ素類拡散防止層がポリマーB1層及びポリマーB2層を有する場合、ポリマーB1層及びポリマーB2層の膜厚は、それらの合計膜厚が上記範囲内にあれば、特に制限はない。例えば、ポリマーB1層の膜厚は、0.1〜24μmが好ましく、0.2〜19μmがより好ましく、0.5〜14μmが特に好ましい。また、ポリマーB2層の膜厚は0.1〜24μmが好ましく、0.2〜19μmがより好ましく、0.5〜14μmが特に好ましい。
以下に、本発明のヨウ素類拡散防止層を構成するポリマーB1及びポリマーB2について、それぞれ説明する。
<2−1:ポリマーB1>
本発明に用いるポリマーB1は、下記〔a〕の繰り返し単位を含む。
〔a〕:Hoy法により算出される溶解度パラメータδtが13.5以上20.0未満の繰り返し単位
本発明において、溶解度パラメータδtは、文献“Properties of Polymers 3rd, ELSEVIER, (1990)”の214〜220頁の「2) Method of Hoy (1985, 1989)」欄に記載のAmorphous Polymersについて求められるδtをいうものとし、上記文献の上記の欄の記載にしたがい算出される。なお、δtの単位は、通常(J/cm1/2又は(cal/cm1/2を用いるが、本発明においては、(cal/cm1/2を用いる。
ポリマーB1としては、上記〔a〕を満たす繰り返し単を有するものであれば、特に限定されないが、(メタ)アクリル樹脂を好ましく用いることができる。
((メタ)アクリル樹脂)
本発明において、(メタ)アクリル樹脂は、アクリル樹脂に加えて、メタクリル樹脂を含む。(メタ)アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸化合物の重合体、又は、これら化合物の共重合体、更には、(メタ)アクリル酸エステルの重合体、又は、これらエステルの共重合体を包含する。また、上記(メタ)アクリル樹脂は、上記化合物を重合させた後に、環化反応によって形成される環構造を主鎖中に含んでもよい。このような構造を含む重合体としては、ラクトン環を有する重合体、無水グルタル酸環を有する重合体又はグルタルイミド環含有重合体が挙げられる。
上記(メタ)アクリル樹脂の繰り返し単位は、上記範囲の溶解度パラメータδtを有するものであれば特に限定されない。上記(メタ)アクリル樹脂は、繰り返し単位として(メタ)アクリル酸エステル由来の繰り返し単位を有することが好ましい。
上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、特に限定されないが、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジルなどのアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジルなどのメタクリル酸エステルなどが挙げられ、これらは1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも特に、耐熱性、透明性が優れる点から、メタクリル酸メチルが好ましい。
上記(メタ)アクリル酸エステル由来の繰り返し単位は、アクリル樹脂の繰り返し単位の総質量に対して、本発明の効果を十分に発揮させる上で、好ましくは50〜100質量%、より好ましくは70〜100質量%、更に好ましくは80〜100質量%、特に好ましくは90〜100質量%である。
アクリル樹脂のガラス転移温度Tgは、80〜120℃の範囲内にあることが好ましい。このガラス転移温度Tgは、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定され、本発明においては、下記に記載の測定方法を用いることができる。測定試料は(メタ)アクリル樹脂粉末そのものの他、偏光板保護フィルムからポリマーB1層を削りとった粉末を用いてもよい。なお、ポリマーB1層を削りとった粉末を用いる場合は、必要に応じてポリマーB1以外の成分を除去(精製)してもよい。
<ガラス転移温度Tgの測定方法>
示差走査熱量測定装置(X−DSC7000、アイティー計測制御社製)にて、測定試料20mgを測定パンに入れ、これを窒素気流中で速度10℃/分で30℃から120℃まで昇温して15分間保持した後、30℃まで−20℃/分で冷却する。この後、再度30℃から250℃まで昇温して、ベースラインが低温側から偏奇し始める温度をガラス転移温度Tgとする。
(メタ)アクリル樹脂の重量平均分子量は、特に限定されない。例えば、この樹脂の重量平均分子量の下限値は、フィルムの表面性の観点から、10,000以上が好ましく、15,000以上が好ましく、30,000以上がより好ましい。一方、(メタ)アクリル樹脂の重量平均分子量の上限値は、製膜性の観点から、好ましくは2,000,000以下が好ましく、1,800,000以下がより好ましく、1,500,000以下が更に好ましく、1,000,000以下が特に好ましく、500,000以下が最も好ましい。分子量の測定は、後述する実施例で記載する方法等で測定することができる。
(メタ)アクリル樹脂は、適宜合成してもよく、市販品を用いてもよい。市販の(メタ)アクリル樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ダイヤナールBR83、BR80、BR85及びBR88(いずれも商品名、三菱レイヨン社製)、又は、80N(商品名、旭化成デルペット)が好ましい。
ポリマーB1は、上記〔a〕の繰り返し単位に加えて、更に、下記〔b〕の繰り返し単位を有することが好ましい。
〔b〕:Hoy法により算出される溶解度パラメータδtが20.0以上26.0以下の繰り返し単位
このような構成とすることで、ポリマーB1と、セルロースエステルとの親和性が更に高まるため、セルロースエステル層と、ヨウ素類拡散防止層との間の、より強固な密着性を確保できる。
以下に、上記〔a〕の繰り返し単位に加えて、上記〔b〕の繰り返し単位を含むポリマーB1について説明する。
上記〔b〕の繰り返し単位は、上記範囲の溶解度パラメータδtを有するものであれば特に限定されないが、下記一般式(1)で表される繰り返し単位であることが好ましい。下記一般式(1)で表される繰り返し単位中のβ−ケトエステル構造は、セルロースエステルと親和性が良好であるため、セルロースエステル層とヨウ素類拡散防止層の密着性を高めることができる。
一般式(1)
Figure 0006327289
一般式(1)中、Rは水素原子、脂肪族基、芳香族基又は複素環基を示し、上記脂肪族基、芳香族基及び複素環基は置換基を有していてもよい。Lは、単結合、あるいは、2価の脂肪族基、2価の芳香族基、2価の複素環基、−C(=O)−、−O−、−N(R)−又はそれらの組み合わせを示す。上記2価の脂肪族基、2価の芳香族基及び2価の複素環基は置換基を有していてもよい。Rは水素原子又はアルキル基を示す。
上記Rにおける脂肪族基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基などを挙げることができ、その中でも炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、メチルがより好ましい。
上記Rにおける芳香族基としては、特に限定されないが、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基を挙げることができ、その中でもフェニル基が好ましい。
上記Rにおける複素環基としては、特に限定されないが、ピリジル基、ピロリジル基、ピペリジル基、ピペラゾル基、ピロリル基、モルホリノ基、チアモルホリノ基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピロリドニル基、ピペリドニル基を挙げることができ、その中でもモルホリノ基、ピリジル基が好ましい。
上記一般式(1)におけるRは、水素原子又は脂肪族基であることが好ましく、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基がより好ましく、水素原子又はメチルであることが特に好ましく、メチルであることがより特に好ましい。
上記脂肪族基、芳香族基又は複素環基が有していてもよい置換基としては、例えば、炭素原子数1〜6のアルキル基(例えばメチル、エチル、イソプロピル、tert−ブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル)、炭素原子数2〜6のアルケニル基(例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニル)、炭素原子数2〜6のアルキニル基(例えばプロパルギル基、3−ペンチニル基)、アミノ基(例えばアミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基)、アルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基)、アリールオキシ基(例えばフェニルオキシ基、2−ナフチルオキシ基)、アシル基(例えばアセチル基、ベンゾイル基、ホルミル基、ピバロイル基)、アルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基)、アリールオキシカルボニル基(例えばフェニルオキシカルボニル基)、アシルオキシ基(例えばアセトキシ基、ベンゾイルオキシ基。)、アシルアミノ基(例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基)、アルコキシカルボニルアミノ基(例えばメトキシカルボニルアミノ基)、アリールオキシカルボニルアミノ基(例えば(フェニルオキシカルボニルアミノ基)、スルホニルアミノ基(例えばメタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基)、スルファモイル基(例えばスルファモイル基、メチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基)、カルバモイル基(例えばカルバモイル基、メチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基)、アルキルチオ基(例えばメチルチオ基、エチルチオ基)、アリールチオ基(例えばフェニルチオ基)、スルホニル基(例えばメシル基、トシル基)、スルフィニル基(例えばメタンスルフィニル基、ベンゼンスルフィニル基)、ウレイド基(例えばウレイド基、メチルウレイド基、フェニルウレイド基)、リン酸アミド基(例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミド)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(例えばイミダゾリル基、ピリジル基、キノリル基、フリル基、ピペリジル基、モルホリノ基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基)又はシリル基(例えば、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基)を挙げることができ、その中でもメチル、フルオロメチルが好ましい。
上記一般式(1)におけるLは、単結合、2価の脂肪族基、2価の芳香族基、2価の複素環基、−C(=O)−、−O−、−N(R)−又はそれらの組み合わせを示し、上記2価の脂肪族基、2価の芳香族基及び2価の複素環基は置換基を有していてもよい。
上記Lは、2価の脂肪族基、2価の芳香族基、−C(=O)−、又はL−L−であることが好ましい(ただし、L及びLの一方が、−C(=O)−、−O−、−N(R)−又はそれらの組み合わせを示し、他方が2価の脂肪族基、2価の芳香族基又は2価の複素環基を示す。上記2価の脂肪族基、2価の芳香族基及び2価の複素環基は置換基を有していてもよい。Rは水素原子又はアルキル基を示す。)。ここで、上記−L−L−はLが主鎖に連結する。
上記Lは−L−L−であることがより好ましい。
上記Lは、Lが−C(=O)−、−O−、−N(R)−又はそれらの組み合わせであり、かつ、Lが2価の脂肪族基、2価の芳香族基又は2価の複素環基であることが特に好ましい。
上記Lにおける2価の脂肪族基としては、アルキレン基、アルキニル基であることが好ましく、炭素数1〜5の置換基を有していてもよいアルキレン基であることがより好ましく、エチレン基であることがより特に好ましい。
上記Lにおける2価の芳香族基としては、特に限定されないが、炭素数6〜12の芳香族基が好ましく、フェニレン基、ナフチレン基であることが好ましく、置換基を有していてもよいフェニレン基であることがより好ましく、無置換のフェニレン基であることが特に好ましい。
上記Lにおける2価の複素環基としては、特に限定されないが、ピリジレン基、ピロリジレン基、ピペリジレン基、ピペラジレン基、ピロリレン基、モルホリニレン基、チアモルホリレニン基、イミダゾリレン基、ピラゾリレン基、ピロリドニレン基、ピペリドニレン基を挙げることができ、その中でも、モルホリニレン基が好ましい。
上記2価の脂肪族基、2価の芳香族基及び2価の複素環基が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基、ハロゲン基を挙げることができ、その中でもアルキル基が好ましく、炭素数1〜6のアルキル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。
上記Lは、−C(=O)−、−O−、−N(R)−又はそれらの組み合わせであることが好ましい。上記−C(=O)−、−O−、−N(R)−又はこれらの組み合わせとしては、−C(=O)−、−O−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、−N(R)−C(=O)−、−C(=O)−N(R)−、又は、−N(R)−C(=O)−N(R)−が好ましい。更に上記Lは、−C(=O)−O−又は−C(=O)−N(R)−であることがより好ましく、−C(=O)−O−であることが特に好ましい。
上記Lは2価の脂肪族基、2価の芳香族基又は2価の複素環基であることが好ましく、炭素数1〜5の置換基を有していてもよいアルキレン基、又は、炭素数1〜5の置換基を有していてもよいフェニレン基であることがより好ましく、炭素数1〜5の置換基を有していてもよいアルキレン基であることがより特に好ましく、エチレン基であることが更に好ましい。
なお、上記L及びLにおける上記2価の脂肪族基、2価の芳香族基及び2価の複素環基の好ましい範囲は、上記Lにおける上記2価の脂肪族基、2価の芳香族基及び2価の複素環基の好ましい範囲と同じである。
上記一般式(1)におけるR及びLの好ましい組み合わせは、上記一般式(1)におけるRが水素原子又はメチルであり、Lが2価の脂肪族基、2価の芳香族基、−C(=O)−、又はL−L−である態様である。
より好ましくは、上記一般式(1)におけるRが水素原子又はメチルであり、LがL−L−である態様である。
更に好ましくは、上記一般式(1)におけるRが水素原子又はメチルであり、Lが−C(=O)−O−であり、Lが炭素数1〜5の置換基を有していてもよいアルキレン基である態様である。
特に好ましくは、上記一般式(1)におけるRが水素原子又はメチルであり、Lが−C(=O)−O−であり、Lがエチレン基である態様である。
上記の各組み合わせにおいて、上記一般式(1)におけるRについては、メチルが好ましい。
上記Rは水素原子又はアルキル基を示す。
上記Rは、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基であることが好ましく、水素原子又はメチルであることがより好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
上記一般式(1)で表される繰り返し単位を導くことのできる化合物(モノマー)として、下記一般式(2)で表される化合物が好ましい。
一般式(2)
Figure 0006327289
一般式(2)中、R及びLは、一般式(1)におけるR及びLと同義であり、好ましい範囲も一般式(1)におけるR及びLと同一である。
上記一般式(2)で表される化合物が、アセト酢酸エチルメタクリレート又はアセト酢酸エチルアクリレートであることがより好ましく、アセト酢酸エチルメタクリレートであることが更に好ましい。
以下に下記一般式(2)で表される化合物を挙げるが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
Figure 0006327289
本発明において、上記〔a〕の繰り返し単位を含み、かつ、上記〔b〕の繰り返し単位を含むポリマーB1は、上記〔b〕の繰り返し単位を導くことのできる化合物として上記一般式(2)で表される化合物の1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、アセト酢酸エチルメタクリレート、アセト酢酸エチルアクリレート又はこれらの混合物を用いることが好ましい。
ここで、〔a〕の繰り返し単位と〔b〕の繰り返し単位とを含むポリマーは、上記〔a〕の繰り返し単位を導くことのできる上記化合物と、一般式(2)で表される化合物の共重合体となる。すなわち、上記〔a〕の繰り返し単位を導くことのできる上記化合物と、上記一般式(2)で表される化合物1種のみとの共重合体であってもよく、上記〔a〕の繰り返し単位を導くことのできる上記化合物と、上記一般式(2)で表される化合物を2種以上用いて得られた共重合体であってもよい。上記一般式(2)で表される化合物を2種以上用いて得られた共重合体の各化合物に対応する繰り返し単位の組成比については特に制限はない。
本発明に用いられる上記一般式(2)で表される化合物は市販品として入手又は公知の文献を参照して合成することができる。
ポリマーB1は、上記〔a〕の繰り返し単位及び上記〔b〕の繰り返し単位以外に、その他の繰り返し単位を含んでいてもよい。すなわち、本発明では、上記〔a〕の繰り返し単位を導くことのできる上記化合物と、必要により上記一般式(2)で表される化合物と、その他の繰り返し単位の少なくとも1種とを共重合させて得られるポリマーを用いることができる。
上記その他の繰り返し単位を導く化合物としては、上記〔a〕の繰り返し単位を導くことのできる上記化合物及び上記一般式(2)で表される化合物と共重合可能であれば特に制限はないが、エチレン性不飽和化合物が好ましい。エチレン性不飽和化合物としては、上記〔a〕の繰り返し単位を導くことのできる上記化合物及び上記一般式(2)で表される化合物以外のその他のエチレン性不飽和化合物が好ましい。
これらは1種単独で、又は2種以上混合して、上記〔a〕の繰り返し単位を導くことのできる上記化合物及び必要により上記一般式(2)で表される化合物と共重合させることができる。
(ポリマーB1における繰り返し単位の含有量)
ポリマーB1は、上記〔a〕の繰り返し単位を有していれば、繰り返し単位の含有量については特に制限されない。
低透湿度の偏光板保護フィルムを得る観点からは、上記ポリマーB1を構成する繰り返し単位の総モル量中に占める上記〔a〕の繰り返し単位のモル量は、100モル%以下であることが好ましい。ポリマーB1が〔a〕の繰り返し単位以外の繰り返し単位を有する場合、ポリマーB1を構成する繰り返し単位の総モル量中に占める上記〔a〕の繰り返し単位のモル量は、10モル%以上が好ましく、20モル%以上がより好ましく、30モル%以上が更に好ましい。また、80モル%以下が好ましく、70モル%以下がより好ましく、60モル%以下が更に好ましい。
ポリマーB1層とセルロースエステル層との親和性をより高め、層間密着性に優れた偏光板保護フィルムを得る観点からは、上記ポリマーB1を構成する繰り返し単位の総モル量中に占める上記〔b〕の繰り返し単位のモル量を、10モル%以上とすることが好ましく、20モル%以上とすることがより好ましく、30モル%以上とすることが更に好ましい。上記ポリマーB1を構成する繰り返し単位の総モル量中に占める上記〔b〕の繰り返し単位のモル量は、90モル%以下が好ましく、80モル%以下がより好ましく、70モル%以下が更に好ましい。
ポリマーB1において、上記〔b〕の繰り返し単位の総モル量中に占める、上記一般式(1)で表される繰り返し単位のモル量は、0.1〜100モル%であることが好ましく、1〜100モル%であることがより好ましい。
上記ポリマーB1が、〔b〕の繰り返し単位を含有する場合、上記〔a〕の繰り返し単位の含有量と、上記〔b〕の繰り返し単位の含有量は、モル比で、[〔a〕の繰り返し単位]/[〔b〕の繰り返し単位]=95/5〜10/90を満たすことが好ましく、[〔a〕の繰り返し単位]/[〔b〕の繰り返し単位]=95/5〜30/70を満たすことがより好ましく、[〔a〕の繰り返し単位]/[〔b〕の繰り返し単位]=92/8〜50/50を満たすことが更に好ましく、[〔a〕の繰り返し単位]/[〔b〕の繰り返し単位]=90/10〜60/40を満たすことが更に好ましく、[〔a〕の繰り返し単位]/[〔b〕の繰り返し単位]=90/10〜75/25を満たすことが更に好ましい。
上記ポリマーB1が、上記その他の繰り返し単位を有している場合、ポリマーB1を構成する繰り返し単位の総モル量中、上記〔a〕の繰り返し単位の含有量と上記〔b〕の繰り返し単位の含有量は、合計で、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることが更に好ましく、50質量%以上であることが特に好ましい。上記ポリマーB1は、上記〔a〕の繰り返し単位及び上記〔b〕の繰り返し単位のモル量が合計で100モル%以下であることが好ましく、上記〔a〕の繰り返し単位と上記〔b〕の繰り返し単位とからなる形態であることも好ましい。
(ポリマーB1の合成法)
ポリマーB1の合成方法は、特に限定されず、従来公知の方法を広く採用することができ、例えば、上記繰り返し単位を導く化合物を用いた、ラジカル重合法、アニオン重合法又はカチオン重合法などが挙げられる。ラジカル重合法に用いる開始剤としては、例えばアゾ化合物又は過酸化物等が挙げられ、より具体的には、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾイソブチル酸ジエステル誘導体又は過酸化ベンゾイルなどが挙げられる。重合溶媒は、特に問わないが、例えば、トルエン若しくはクロロベンゼン等の芳香族炭化水素溶媒、ジクロロエタン若しくはクロロホルムなどのハロゲン化炭化水素溶媒、テトラヒドロフラン若しくはジオキサン等のエーテル溶媒、ジメチルホルムアミド等のアミド溶媒、メタノール等のアルコール溶媒、酢酸メチル若しくは酢酸エチル等のエステル溶媒、アセトン、シクロヘキサノン若しくはメチルエチルケトンなどのケトン溶媒、又は水等が挙げられる。溶媒の選択により、均一系で重合する溶媒重合、生成したポリマーが沈殿する沈殿重合、ミセル状態で重合する乳化重合を行うこともできる。
(ポリマーB1の分子量)
ポリマーB1の重量平均分子量は、10,000〜2,000,000であることが好ましく、20,000〜1,800,000であることがより好ましく、30,000〜1,800,000であることが更に好ましく、30,000〜1,500,000であることが特に好ましい。分子量の測定は、後述する実施例で記載する方法等で測定することができる。
<2−2:ポリマーB2>
ポリマーB2を用いる場合、上述のように、本発明の偏光板保護フィルムは、例えば、図3又は図4に示される構造を有する。これにより、セルロースエステル層とヨウ素類拡散防止層の間のより強固な密着性を確保でき、偏光板に組み込んだ際の高温高湿環境下における偏光性能の劣化を効果的に抑制することが可能になる。
その理由は定かではないが、次のように考えられる。ヨウ素類拡散防止層として、ポリマーB2層を有する場合、ポリマーB1層は、上記〔a〕の繰り返し単位と上記〔b〕の繰り返し単位とを有するポリマーB1を含有する。このポリマーB1中の上記2種の繰り返し単位がバランスよく機能する。その結果、セルロースエステル層とポリマーB1層との層間密着性に加えて、ヨウ素類拡散防止層間すなわちポリマーB1層とポリマーB2層との層間密着性も、向上する。また、偏光板に組み込んだ際の高温高湿環境下における偏光性能の劣化を更に抑制できる。
ポリマーB2は、下記〔a〕の繰り返し単位を含み、下記〔b〕の繰り返し単位を含まない。本発明において、〔b〕の繰り返し単位を含まないとは、不可避的に存在する〔b〕の繰り返し単位をも排除するものではなく、例えば、ポリマーB2を構成する繰り返し単位の総モル量中に占める上記〔b〕の繰り返し単位の含有量が1質量%以下であることを意味する。
〔a〕:Hoy法により算出される溶解度パラメータδtが13.5以上20.0未満の繰り返し単位
〔b〕:Hoy法により算出される溶解度パラメータδtが20.0以上26.0以下の繰り返し単位
ポリマーB2が含む繰り返し単位としては、ポリマーB1において説明した、〔a〕の繰り返し単位と同義であり、好ましい範囲も同様である。
また、ポリマーB2が含まない繰り返し単位としては、同様に、上述した、〔b〕の繰り返し単位と同義であり、好ましい範囲も同様である。
ポリマーB1は、上記〔a〕の繰り返し単位を有していれば、繰り返し単位の含有量については特に制限されない。
低透湿度の偏光板保護フィルムを得る観点からは、上記ポリマーB2を構成する繰り返し単位の総モル量中に占める上記〔a〕の繰り返し単位のモル量は、100モル%以下であることが好ましい。
上記ポリマーB2は、上記その他の繰り返し単位を有していてもよい。この場合、ポリマーB2を構成する繰り返し単位の総モル量中、上記〔a〕の繰り返し単位の含有量は、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることが更に好ましく、30質量%以上であることが特に好ましい。上記ポリマーB2は、上記〔a〕の繰り返し単位からなる形態であることも好ましい。
(ポリマーB2の分子量)
ポリマーB2の重量平均分子量の下限値は、フィルムの表面性の観点から、10,000以上が好ましく、20,000以上がより好ましく、30,000以上が特に好ましい。一方、ポリマーB2の重量平均分子量の下限値は、フィルムの表面性の観点から、2,000,000以下が好ましく、1,800,000以下がより好ましく、1,500,000以下が更に好ましい。分子量の測定は、後述する実施例で記載する方法等で測定することができる。
(ポリマーB2の合成法)
ポリマーB2の合成方法は、特に限定されず、従来公知の方法を広く採用することができ、例えば、上記ポリマーB1の合成法で説明した各種の合成法が挙げられる。
<2−3:添加剤>
上記ポリマーB1層及びB2層は、それぞれ、本発明の効果を損なわない範囲で、添加剤を含んでいてもよい。
添加剤としては、後述するセルロースエステル層に用いられる添加剤が挙げられる。
また、添加剤として、フルオロ脂肪族基含有重合体(「フッ素系ポリマー」と略記することもある)が挙げられる。この重合体を含有すると、ヨウ素類拡散防止層の表面平滑性を向上させることができる。フルオロ脂肪族基含有重合体としては、側鎖に、炭素数4以上のパーフルオロアルキル基又は炭素数4以上かつ−CFHを有するフルオロアルキル基を有する重合体であることが好ましい。具体的には、特開2012−214004号公報の段落[0191]〜[0211]の記載を参照でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
フッ素系ポリマーにおける、特開2012−214004号公報の段落[0193]に記載の一般式[2]で示されるフルオロ脂肪族基含有モノマーに由来するモノマー単位の量は、このフッ素系ポリマーの全モノマー単位量に対して、10質量%以上であることが好ましく、より好ましくは40質量%以上である。
フッ素系ポリマーにおける、特開2012−214004号公報の段落[0193]に記載の一般式[3]で示されるモノマーに由来するモノマー単位の量は、フッ素ポリマーの全モノマー単位量に対して、90質量%未満で用いることが好ましく、より好ましくは60質量%未満である。
フッ素系ポリマーの好ましい重量平均分子量は、3000〜100,000が好ましく、6,000〜80,000がより好ましく、8,000〜60,000が更に好ましい。
ここで、重量平均分子量は、TSKgel GMHxL、TSKgel G4000HxL、TSKgel G2000HxL(何れも東ソー社製、商品名)のカラムを使用したGPC分析装置により、溶媒THF(テトロヒドロフラン)、示差屈折計検出によるポリスチレン換算で表した分子量である。分子量は300以上の成分のピーク面積から算出する。
ヨウ素類拡散防止層がフッ素系ポリマーを含有する場合、乾燥及び面状故障の発生の抑制などの観点から、各ポリマー層を形成するための組成物(塗布液)中の全固形分に対する(各ポリマー層中の)、フッ素系ポリマーの含有率(質量%)は、0.001質量%〜5質量%が好ましく、0.005〜2.0質量%が更に好ましい。
上記以外の添加剤として、例えば、微粒子が挙げられる。この微粒子は、特に限定されないが、ケイ素、チタン、ジルコニウム若しくはアルミニウム等の酸化物微粒子、又は、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリル酸エステル若しくはポリジメチルシロキサン等の架橋粒子、若しくは、SBR(Styrene−Butadiene Rubber;スチレン−ブタジエンゴム)若しくはNBR(Acrylonitrile−Butadiene Rubber;ニトリルゴム)などの架橋ゴム微粒子等の有機微粒子等が挙げられる。ヨウ素類拡散防止層が架橋微粒子を含有すると、搬送時のスリキズの発生防止又はロール形態におけるフィルムの貼り付きを抑えることができる。
微粒子の平均粒径は、1nmないし20000nmであることが好ましい。また、微粒子の形状は、球状、棒状、針状又は板状など特に制限なく使用できる。微粒子の添加量は、各ポリマー層中、60体積%以下であることが好ましく、40体積%以下であることがより好ましい。
3.セルロースエステル層
本発明の偏光板保護フィルムを構成するセルロースエステル層(セルロースエステルフィルムともいう)は、層中にセルロースエステルを50質量%以上含有する層である。セルロースエステル層中のセルロースエステルの含有量は60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましく、85質量%以上が更に好ましい。セルロースエステル層中のセルロースエステルの含有量は、高い程、ヨウ素拡散防止層との密着性を維持できる点で、好ましい。したがって、上記のセルロースエステルの含有量の上限は、特に限定されないが、例えば、99質量%以下が好ましく、96質量%以下がより好ましく、95質量%以下が更に好ましく、92質量%以下が特に好ましい。この場合、セルロースエステルを除く残部には、例えば後述する添加剤等が含まれる。
なお、セルロースエステル層は、層中にその他の樹脂を含有してもよく、ポリマーB1又はB2が好ましい例として挙げられる。セルロースエステル層がポリマーB1又はB2を含有していると、ポリマー層との層間密着性を更に向上させることができる。
<3−1:セルロースエステル>
本発明のセルロースエステルフィルムに用いられるセルロースエステルについて説明する。
セルロースエステルは、セルロースエステルフィルムの製造に用いられるセルロースエステルであれば特に制限されることなく用いることができる。
セルロースを構成する、β−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位及び6位に遊離のヒドロキシ基を有している。セルロースエステルは、これらのヒドロキシ基の一部をエステル化剤等によりエステル化した重合体(ポリマー)である。
セルロースとしては、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ,針葉樹パルプ)等があり、いずれの原料セルロースから得られるセルロースでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。原料セルロースは、例えば、丸澤、宇田著、「プラスチック材料講座(17)繊維素系樹脂」、日刊工業新聞社(1970年発行)や発明協会公開技報公技番号2001−1745号(7頁〜8頁)に記載のセルロースを用いることができる。
セルロースエステルとしては、セルロースエステルフィルムの製造に用いられる公知のセルロースエステルを何ら制限なく用いることができる。中でもセルロースアシレートを用いることが好ましい。
(セルロースアシレート)
本発明に用いるセルロースアシレートは、セルロースエステルフィルムの製造に用いられる公知のセルロースアシレートを何ら制限なく用いることができる。
アシル置換度(以下、単に「置換度」ということがある)は、2位、3位及び6位に位置するセルロースのヒドロキシ基のアシル化の度合いを示すものであり、すべてのグルコース単位の2位、3位及び6位のヒドロキシ基がいずれもアシル化された場合、総アシル置換度は3である。例えば、すべてのグルコース単位で、6位のみがすべてアシル化された場合、総アシル置換度は1である。同様に、全グルコースの全ヒドロキシ基において、各々のグルコース単位で、6位及び2位のいずれか一方のすべてがアシル化された場合も、総アシル置換度は1である。
すなわち置換度は、グルコース分子中の全ヒドロキシ基がすべてアシル化された場合を3として、アシル化の度合いを示すものである。
セルロースアシレートの置換度は、手塚他、Carbohydrate.Res.,273,83−91(1995)に記載の方法、又は、ASTM−D817−96に規定の方法に準じて測定することができる。
本発明に用いるセルロースアシレートの総アシル置換度は、透湿度の観点から、1.50以上3.00以下であることが好ましく、2.00〜2.97であることがより好ましく、2.30以上2.97未満であることが更に好ましく、2.30〜2.95であることが特に好ましい。
本発明に用いるセルロースアシレートのアシル基に、特に制限はなく、1種のアシル基を有する形態でもよいし、2種以上のアシル基を有する形態でもよい。本発明に用いうるセルロースアシレートは、炭素数2以上のアシル基を置換基として有することが好ましい。炭素数2以上のアシル基に特に制限はなく、脂肪族のアシル基でもよいし、芳香族のアシル基でもよい。これらのアシル基で置換されたセルロースアシレートは、例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステル、芳香族カルボニルエステル、又は芳香族アルキルカルボニルエステルなどであり、それぞれ更に置換された基を有していてもよい。
炭素数2以上のアシル基の具体例として、アセチル、プロピオニル、ブタノイル、ヘプタノイル、ヘキサノイル、オクタノイル、デカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ヘキサデカノイル、オクタデカノイル、イソブタノイル、tert−ブタノイル、シクロヘキサンカルボニル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイルなどが挙げられる。これらの中でも、アセチル、プロピオニル、ブタノイル、ドデカノイル、オクタデカノイル、tert−ブタノイル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイルが好ましく、更に好ましくはアセチル、プロピオニル、ブタノイルであり、特に好ましくはアセチルである。
セルロースアシレートは、炭素数2〜4のアシル基を置換基として有することが好ましい。2種類以上のアシル基を用いるときは、その一つがアセチル基であることが好ましい。これらのセルロースアシレートにより溶解性の好ましい溶液が作製でき、特に非塩素系有機溶媒において、良好な溶液の作製が可能となる。更に粘度が低くろ過性のよい溶液の作成が可能となる。
セルロースアシレートのアシル基としてアセチル基のみを用いたセルロースアセテートは、本発明に好適に用いることができ、このセルロースアセテートの総アシル置換度は、透湿度及び光学特性の観点から、2.00〜3.00であることが好ましく、2.20〜3.00であることがより好ましく、2.30〜3.00であることが更に好ましく、2.30〜2.97であることが更に好ましく、2.30〜2.95であることが特に好ましい。
2種類以上のアシル基を有する混合脂肪酸エステルも本発明におけるセルロースアシレートとして好ましく用いることができる。中でも混合脂肪酸エステルのアシル基には、アセチル基と炭素数が3〜4のアシル基が含まれることが好ましい。また、混合脂肪酸エステルがアシル基としてアセチル基を含む場合、そのアセチル置換度は2.5未満が好ましく、1.9未満が更に好ましい。一方、炭素数が3〜4のアシル基を含む場合の炭素数が3〜4のアシル基の置換度は0.1〜1.5であることが好ましく、0.2〜1.2であることがより好ましく、0.5〜1.1であることが特に好ましい。
また、特開2008−20896号公報の段落[0023]〜[0038]に記載の、脂肪酸アシル基と置換若しくは無置換の芳香族アシル基とを有する混合酸エステルも好ましく用いることができる。
本発明においては、エステル基及び置換度の一方又は両方が異なる、2種のセルロースエステルないしセルロースアシレートを併用することもできる。この場合、後述する共流延法等により、異なるセルロースエステルからなる積層構造として形成してもよい。
本発明に用いるセルロースエステルないしセルロースアシレートは、その重合度が250〜800が好ましく、300〜600が更に好ましい。また、本発明に用いるセルロースエステルないしセルロースアシレートは、その数平均分子量が40000〜230000が好ましく、60000〜230000が更に好ましく、75000〜200000が最も好ましい。
重合度は、ゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography;GPC)によりポリスチレン換算で測定される数平均分子量をセルロースエステルないしセルロースアシレートのグルコピラノース単位の分子量で除することで求めることができる。
本発明に用いるセルロースエステルは常法により合成することができる。例えばセルロースアシレートであれば、アシル化剤として酸無水物や酸塩化物を用いて合成できる。上記アシル化剤が酸無水物である場合は、反応溶媒として有機酸(例えば、酢酸)や塩化メチレンが使用される。また、触媒として、硫酸のようなプロトン性触媒を用いることができる。アシル化剤が酸塩化物である場合は、触媒として塩基性化合物を用いることができる。セルロースアシレートの一般的な工業的生産では、セルロースを目的のアシル基に対応する有機酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸等)又はそれらの酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸等)を用いてそのヒドロキシ基がエステル化される。
例えば、綿花リンタ又は木材パルプ由来のセルロースを原料とし、これを酢酸等の有機酸で活性化処理した後、硫酸触媒の存在下で、所望の構造の有機酸を用いてエステル化することによりセルロースアシレートを得ることができる。また、アシル化剤として有機酸無水物を用いる場合には、一般にセルロース中に存在するヒドロキシ基の量に対して有機酸無水物を過剰量で使用してセルロースをエステル化する。
またセルロースアシレートは、例えば、特開平10−45804号公報に記載された方法により合成することもできる。
上記セルロースエステルフィルムは、樹脂としてセルロースエステルを5〜99質量%含むことが透湿度の観点から好ましく、20〜99質量%含むことがより好ましく、50〜95質量%含むことが特に好ましい。
<3−2:その他の添加剤>
セルロースエステル層は、本発明の効果を損なわない範囲で、添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、公知の可塑剤、有機酸、色素、ポリマー、レターデーション調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤又はマット剤などが例示される。これらについては、特開2012−155287号公報の段落番号[0062]〜[0097]の記載を参酌でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。また、添加剤としては、剥離促進剤、有機酸、多価カルボン酸誘導体を挙げることもできる。これらについては、国際公開第2015/005398号段落[0212]〜[0219]の記載を参酌でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。更に、添加剤として、後述する、ラジカル捕捉剤、劣化防止剤又はバルビツール酸化合物なども挙げることができる。
添加剤の含有量(セルロースエステルフィルムが二種以上の添加剤を含有する場合には、それらの合計含有量)は、セルロースエステル100質量部に対して50質量部以下であることが好ましく、30質量部以下であることがより好ましく、5〜30質量部であることが更に好ましい。
(可塑剤)
好ましい添加剤の1つとしては、可塑剤を挙げることができる。可塑剤をセルロースエステルフィルムに添加することにより、セルロースエステルフィルムの疎水性を高めることができる。この点は、セルロースエステルフィルムの透湿度を低下させる観点から好ましい。このような可塑剤を使用することは、セルロースエステルフィルムを、偏光子の保護膜(偏光板保護フィルムという)として用いた場合、湿度に起因する画像表示装置の表示ムラを発生しにくくすることができるため、好ましい。
可塑剤としては、特に限定されないが、多価アルコールの多価エステル化合物(以下、「多価アルコールエステル可塑剤」とも記載する。)、重縮合エステル化合物(以下、「重縮合エステル可塑剤」とも記載する。)、又は、炭水化物化合物(以下、「炭水化物誘導体可塑剤」とも記載する。)を挙げることができる。多価アルコールエステル可塑剤については、国際公開第2015/005398号の段落[0081]〜[0098]、重縮合エステル可塑剤については、同公報の段落[0099]〜[0122]、炭水化物誘導体可塑剤については、同公報の段落[0123]〜[0140]を参照でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
可塑剤の分子量は、添加することによる上記効果を良好に得る観点からは、3000以下であることが好ましく、1500以下であることがより好ましく、1000以下であることが更に好ましい。また、可塑剤の分子量は、低揮散性の観点からは、例えば300以上であり、好ましくは350以上である。なお、多量体の可塑剤については、分子量とは、数平均分子量をいうものとする。
可塑剤の含有量は、可塑剤の添加効果と可塑剤の析出抑制とを両立する観点から、セルロースエステル100質量部に対して、1〜20質量部とすることが好ましく、2〜15質量部とすることがより好ましく、5〜15質量部とすることが更に好ましい。
可塑剤は、2種類以上を併用してもよい。2種類以上を併用する場合も、含有量の具体例及び好ましい範囲は上記と同一である。
(酸化防止剤)
好ましい添加剤の1つとしては、酸化防止剤を挙げることもできる。酸化防止剤については、国際公開第2015/005398号の段落[0143]〜[0165]の記載を参酌でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
(ラジカル捕捉剤)
好ましい添加剤の1つとしては、ラジカル補捉剤を挙げることもできる。ラジカル補捉剤については、国際公開第2015/005398号段落[0166]〜[0199]の記載を参酌でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
(劣化防止剤)
好ましい添加剤の1つとしては、劣化防止剤を挙げることもできる。劣化防止剤については、国際公開第2015/005398号段落[0205]〜[0206]の記載を参酌でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
(バルビツール酸化合物)
セルロースエステルフィルムは、バルビツール酸構造を有する化合物(バルビツール酸化合物)を含有することもできる。バルビツール酸化合物は、この化合物を添加することにより、セルロースエステルフィルムに各種機能を発現させることができる化合物である。例えば、バルビツール酸化合物は、セルロースエステルフィルムの硬度向上に有効である。また、バルビツール酸化合物は、この化合物を含むセルロースエステルフィルムを備えた偏光板の、光、熱又は湿度等に対する耐久性の改良にも有効である。上記セルロースエステルフィルムに使用可能なバルビツール酸化合物については、例えば、国際公開第2015/005398号段落[0029]〜[0060]の記載を参酌でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
<3−3:セルロースエステルフィルムの物性>
本発明のセルロースエステルフィルムは、下記の物性ないし特性を有することが好ましい。
(膜厚)
上記セルロースエステルフィルムの平均膜厚は、用途に応じ適宜定めることができるが、例えば、10〜100μmであることが好ましく、15〜80μmであることがより好ましく、25〜60μmであることが更に好ましい。10μm以上とすることにより、ウェブ状のフィルムを作製する際のハンドリング性が向上し好ましい。また、100μm以下とすることにより、湿度変化に対応しやすく、光学特性を維持しやすい。
また、セルロースエステルフィルムが3層以上の積層構造を有する場合、コア層(基層)の膜厚は3〜70μmが好ましく、5〜60μmがより好ましい。3層構造である場合の第一のスキン層(エア面層又はエア側表層ともいう)及び第二のスキン層(支持体層又は支持体側表層ともいう)の膜厚は、ともに、0.5〜20μmが好ましく、0.5〜10μmがより好ましく、0.5〜3μmが更に好ましい。なお、コア層は、積層構造において内部に位置する層、3層構造である場合は中間に位置する層をいい、両スキン層は積層構造ないし3層構造において、外側に位置する層をいう。
(幅)
上記セルロースエステルフィルムは、用途に応じ適宜定めることができるが、例えば、フィルム幅が700〜3000mmであることが好ましく、1000〜2800mmであることがより好ましく、1470〜2500mmであることが特に好ましい。
4.偏光板保護フィルムの透湿度
偏光板保護フィルムの透湿度は、6時間当たり、100〜1600g/mである。6時間当たりの透湿度が100g/m未満であると、偏光板製造過程における乾燥が遅く生産性が低下する。一方、1600g/mを超えると、偏光子の保護フィルムとして用いた際に偏光子の劣化を効果的に抑えることができないことがある。
本発明において、6時間当たりの透湿度は、150〜1200g/mであることが好ましく、200〜1000g/mであることがより好ましく、300〜800g/mであることが特に好ましい。上記の透湿度を上記範囲に制御することで、偏光板の生産性が高く、しかも、偏光子の保護フィルムとして用いた際に偏光子の劣化を効果的に抑えることができる。
本発明の偏光板保護フィルムにおける透湿度は、JIS Z 0208(1976)の「防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)」に基づき、下記の方法によって算出された値である。
偏光板保護フィルムを60mm×60mmに裁断し、温度85℃相対湿度85%の雰囲気中、裁断したフィルムを6時間に通過する水蒸気の質量を測定し、裁断したフィルムの表面積1m2あたりの質量に換算した値として、求めることができる。
水蒸気の質量は吸湿剤(無水塩化カルシウム)の質量変化で測定する。
5.偏光板保護フィルムの製造方法
本発明の偏光板保護フィルムの製造方法について説明する。
偏光板保護フィルムは、例えば、後述する方法でセルロースエステル層を作製した後、セルロースエステル層の少なくとも一方の表面上に、ポリマーB1層を形成するための組成物(形成液)を適用する工程を含む方法により、製造される。
ポリマーB1層を形成するための組成物は、ポリマーB1と、下記式Iで規定されるfdが下記関係式[1]及び関係式[2]を満たす溶媒とを含有する。これにより、セルロースエステル層とポリマーB1層との層間密着性をより強大なものとすることができる。特に、上記方法により、セルロースエステル層及びポリマーB1層の境界近傍に上述の混合領域を形成することができ、上記層間密着性の向上効果が大きくなる。
上記混合領域の厚みは、特に限定されないが、塗布溶媒によるセルロースエステルの溶解又は膨潤しやすさ(以下、溶解性又は膨潤性ともいう)、溶媒の乾燥速度等により、適宜に設定できる。
セルロースエステル層又はポリマーB1層中の、混合領域の厚みは、セルロースエステル層とポリマーB1層との境界近傍を、フィルム断面の飛行時間型2次イオン質量分析を行い、セルロースエステル及びポリマーB1に由来するフラグメントイオンの分布により、測定できる。
<5−1:セルロースエステル層の製造方法>
本発明の偏光板保護フィルムの製造方法に用いるセルロースエステル層の製造方法を、説明する。
セルロースエステルフィルムは、特に限定されるものではなく、例えば溶融製膜法又は溶液製膜法(ソルベントキャスト法)により製造されることが好ましく、添加剤の揮散や分解を考慮すると溶液製膜法により製造されることがより好ましい。
溶融製膜法としては、T−ダイ法等の製造法を用いることが好ましく、特に同時共押し出し法を用いることが好ましい。溶液製膜法としては、後述する共流延法、逐次流延法、塗布法等の積層流延法を用いることが好ましく、特に同時共流延(同時多層共流延ともいう。)法を用いることが、安定製造及び生産コスト低減の観点から特に好ましい。
溶液製膜法を利用したフィルムの製造例については、米国特許第2,336,310号、同第2,367,603号、同第2,492,078号、同第2,492,977号、同第2,492,978号、同第2,607,704号、同第2,739,069号及び同第2,739,070号の各明細書、英国特許第640731号及び同第736892号の各明細書、並びに特公昭45−4554号、同49−5614号、特開昭60−176834号、同60−203430号及び同62−115035号等の各公報を参考にすることができる。
(流延)
溶液の流延方法としては、調製されたドープを加圧ダイから金属支持体上に均一に押出す方法、一旦金属等の支持体上に流延されたドープをブレードで膜厚を調節するドクターブレードによる方法、逆回転するロールで調節するリバースロールコーターによる方法等があり、加圧ダイによる方法が好ましい。加圧ダイにはコートハンガータイプやTダイタイプ等があるが、いずれも好ましく用いることができる。また、ここで挙げた方法以外にも、従来知られているセルロースエステル溶液を流延製膜する種々の方法で実施することができ、用いる溶媒の沸点等の違いを考慮して各条件を設定することができる。
金属支持体としては、エンドレスに走行するものが好ましく、表面がクロムメッキによって鏡面仕上げされたドラムや表面研磨によって鏡面仕上げされたステンレスベルト(バンドといってもよい)が用いられる。上記金属支持体の材質については特に制限はないが、SUS製(例えば、SUS 316)であることがより好ましい。
使用される加圧ダイは、金属支持体の上方に、1基又は2基以上設置してもよい。好ましくは1基又は2基設置する。2基以上設置する場合には、流延するドープ量をそれぞれのダイに種々な割合に分けてもよく、複数の精密定量ギアポンプからそれぞれの割合でダイにドープを送液してもよい。流延に用いられるドープ(樹脂溶液)の温度は−10〜55℃が好ましく、より好ましくは25〜50℃である。その場合、工程の全ての溶液温度が同一でもよく、又は工程の各所で異なっていてもよい。異なる場合は、流延直前で所望の温度であればよい。
セルロースエステルフィルムが複層である場合、共流延法、逐次流延法又は塗布法などの積層流延法を用いることが好ましく、特に同時共流延(同時多層共流延ともいう。)法を用いることが、安定製造及び生産コスト低減の観点から特に好ましい。
共流延法及び逐次流延法によりセルロースエステルフィルムを製造する場合には、まず、各層用のセルロースエステル溶液(ドープともいう)を調製し、この溶液を支持体上に流延する。
共流延法(重層同時流延)では、まず、流延用支持体(バンド又はドラム)の上に、各層(3層あるいはそれ以上でもよい)各々の流延用ドープを別々のスリットなどから同時に押出すことができる流延用ダイを用いてドープを押出して、各層同時に流延する。流延後、適当な時間をおいて支持体から剥ぎ取って、乾燥しフィルムを成形する流延法である。共流延ダイを用いることにより、例えば、流延用支持体の上に表層用ドープから形成された表層2層と、これら表層に挟まれたコア層用ドープからなるコア層の計3層を、支持体上に同時に押出して流延することができる。図8は、共流延の一例を示す模式図(部分拡大図)である。図8に示す例による共流延については、後述の実施例で更に説明する。
逐次流延法では、流延用支持体の上に、まず、第1層用の流延用ドープを流延用ダイから押出して、流延し、乾燥あるいは乾燥することなく、その上に第2層用の流延用ドープを流延用ダイから押出して流延する要領で、必要なら第3層以上まで逐次ドープを流延、積層して、適当な時間をおいて支持体から剥ぎ取って乾燥し、セルロースエステルフィルムを形成する。
また塗布法では、一般的には、コア層を溶液製膜法によりフィルム状に形成し、その表層に、目的のセルロースエステル溶液である塗布液を塗布し、乾燥して、積層構造のセルロースエステルフィルムを製造することができる。
(延伸)
上記セルロースエステルフィルムは、上記の流延、乾燥後、延伸処理されていることも好ましい。前述の通り、セルロースエステルフィルムは厚み方向の配向度が一定の範囲の値を取ることが好ましいが、延伸処理により厚み方向の配向度を高めることができる。セルロースエステルフィルムの延伸方向は、フィルム搬送方向(MD(Machine Direction)方向)と搬送方向に直交する方向(TD(Transverse Direction)方向)のいずれでもよい。後に続く偏光板加工プロセスを考慮すると、TD方向であることが好ましい。延伸処理は2段階以上に分けて複数回行ってもよい。
TD方向に延伸する方法は、例えば、特開昭62−115035号、特開平4−152125号、同4−284211号、同4−298310号、同11−48271号などの各公報に記載されている。TD方向の延伸の場合、フィルムの巾をテンターで保持しながら搬送して、テンターの巾を徐々に広げることによって延伸することができる。またポリマーフィルムの乾燥後に、延伸機を用いて延伸すること(好ましくはロング延伸機を用いる一軸延伸)もできる。
MD方向の延伸の場合、例えば、フィルムの搬送ローラの速度を調節して、フィルムの剥ぎ取り速度よりも巻き取り速度を速くすることで行うことができる。
上記セルロースエステルフィルムの延伸倍率(延伸前の寸法に対する延伸量の割合を意味する。)は、1%以上100%以下が好ましく、5%以上60%以下が更に好ましく、10%以上40%以下が特に好ましい。
特に、幅方向の延伸では、延伸倍率は5%以上30%以下が好ましく、8%以上20%以下が好ましい。
また、搬送方向と幅方向の両方向に延伸してもよく、その場合には、搬送方向の延伸倍率が1%以上20%以下で、幅方向の延伸倍率が5%以上30%以下であることが好ましく、搬送方向の延伸倍率が1%以上8%以下で、幅方向の延伸倍率が10%以上20%以下であることが好ましい。
延伸処理は、製膜工程の途中で行ってもよいし、製膜して巻き取った原反を延伸処理してもよいが、本発明の製造方法では残留溶媒を含んだ状態で支持体から剥離し延伸を行う、即ち、製膜工程の途中で延伸することが好ましい。
支持体からの剥離する際の残留溶媒量は、10〜100質量%であることが好ましく、15〜60質量%であることがより好ましい。
ここで、残留溶媒量とは、以下の式により算出することができる。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
式中、Mは乾燥前のセルロースエステルフィルムの質量、Nは乾燥前のセルロースエステルフィルムを110℃で3時間乾燥させたときの質量を表す。
(乾燥)
上記セルロースエステルフィルムの製造方法では、上記セルロースエステルフィルムを乾燥する工程と、乾燥後のセルロースエステルフィルムをTg−10℃以上の温度で延伸する工程とを含むことが、レターデーション発現性の観点から好ましい。
上記セルロースエステルフィルムの製造に係わる、金属支持体上におけるドープの乾燥は、一般的には、金属支持体(ドラム又はベルト)の表面側、つまり金属支持体上にあるウェブの表面から熱風を当てる方法、ドラム又はベルトの裏面から熱風を当てる方法、温度コントロールした液体をベルトやドラムのドープ流延面の反対側である裏面から接触させて、伝熱によりドラム又はベルトを加熱し表面温度をコントロールする裏面液体伝熱方法などがあるが、裏面液体伝熱方式が好ましい。流延される前の金属支持体の表面温度は、ドープに用いられている溶媒の沸点以下であれば何度でもよい。しかし乾燥を促進するためには、また金属支持体上での流動性を失わせるためには、使用される溶媒の内の最も沸点の低い溶媒の沸点より1〜10℃低い温度に設定することが好ましい。なお、流延ドープを冷却して乾燥することなく剥ぎ取る場合はこの限りではない。
(剥離)
上記セルロースエステルフィルムの製造方法は、上記ドープ膜を上記金属支持体から剥ぎ取る工程を含むことが好ましい。上記セルロースエステルフィルムの製造方法における剥離の方法については特に制限はなく、公知の方法を用いた場合に剥離性を改善することができる。上述の、製膜工程中での延伸処理において剥離することもできる。
フィルム厚さの調整は、所望の厚さになるように、ドープ中に含まれる固形分濃度、ダイの口金のスリット間隙、ダイからの押し出し圧力、金属支持体速度等を調節すればよい。
以上のようにして得られた、上記セルロースエステルフィルムの長さは、1ロール当たり100〜10000mで巻き取るのが好ましく、より好ましくは500〜7000mであり、更に好ましくは1000〜6000mである。巻き取る際、少なくとも片端にナーリングを付与するのが好ましく、ナーリングの幅は3mm〜50mmが好ましく、より好ましくは5mm〜30mm、高さは0.5〜500μmが好ましく、より好ましくは1〜200μmである。これは片押しであっても両押しであってもよい。
一般的に、大画面表示装置において、斜め方向のコントラストの低下及び色味付きが顕著となるので、上記セルロースエステルフィルムは、特に大画面液晶表示装置に用いるのに適している。大画面用液晶表示装置用の光学補償フィルムとして用いる場合は、例えば、フィルム幅を1470mm以上として成形するのが好ましい。また、本発明の偏光板保護フィルムには、液晶表示装置にそのまま組み込むことが可能な大きさに切断されたフィルム片の態様のフィルムのみならず、連続生産により、長尺状に作製され、ロール状に巻き上げられた態様のフィルムも含まれる。後者の態様の偏光板保護フィルムは、その状態で保管・搬送等され、実際に液晶表示装置に組み込む際や偏光子等と貼り合わされる際に、所望の大きさに切断されて用いられる。また、同様に長尺状に作製されたポリビニルアルコールフィルム等からなる偏光子等と、長尺状のまま貼り合わされた後に、実際に液晶表示装置に組み込む際に、所望の大きさに切断されて用いられる。ロール状に巻き上げられた光学補償フィルムの一態様としては、ロール長が2500m以上のロール状に巻き上げられた態様が挙げられる。
このようにして、上記製造方法において基材層となる、セルロースエステルフィルムを作製できる。
<5−2:ポリマーB1層の形成>
次いで、ポリマーB1層をセルロースエステル層上に形成する方法について、説明する。
ポリマーB1層は、下記組成物をセルロースエステル層上に適用することにより、形成することができる。これにより、セルロースエステル層とポリマーB1層とを高い層間密着性で積層させることができる。
上記組成物の適用方法の詳細は後述する。
上記組成物は適用後に、好ましくは乾燥される。
(ポリマーB1層を形成するための組成物)
本発明においては、下記組成物を用いて、ポリマーB1層を形成する。この方法に用いられるポリマーB1層を形成するための組成物(ヨウ素類拡散防止層形成用組成物ともいう)B1は、ポリマーB1と、下記式Iで規定されるfdが下記関係式[1]及び関係式[2]を満たす溶媒と、必要により後述する添加剤等とを含有する。
この溶媒は、セルロースエステルに対する溶解性又は膨潤性が低すぎると、混合領域の形成が不十分となり、十分な層間密着性が発現しなくなることがある。一方、溶解性又は膨潤性が高すぎると、乾燥により溶媒が除去された後に、セルロースエステルとポリマーB1が相分離して混合領域が脆くなることがあり、やはり十分な層間密着性が発現しなくなることがある。
以上の観点から、組成物B1に含有される溶媒として、下記式Iで規定されるfdが下記関係式[1]及び関係式[2]を満たす溶媒を用いる。
式I fd=δd/(δd+δp+δh)
式Iにおいて、δd、δp及びδhは、それぞれ、Hoy法により算出される溶解度パラメータδtにおける、London分散力に対応する項、双極子間力に対応する項、及び、水素結合力に対応する項を示し、fdはδdとδpとδhの和に対するδdの比率を示す。
関係式[1] |fdsolvent−fdcellulose|≦0.050
関係式[2] |fdsolvent−fdpolymerB1|≦0.050
関係式[1]及び[2]において、fdsolventは溶媒のfd値を示し、fdcelluloseは上記セルロースエステル層に含有されるセルロースエステルのfd値を示し、fdpolymerB1はポリマーB1のfd値を示す。
関係式[1]により算出される、|fdsolvent−fdcellulose|が0.050を超えると、溶剤によるセルロースエステルの膨潤又は溶解が不十分となり、密着性が低下する。一方、関係式[2]により算出される、|fdsolvent−fdpolymerB1|が0.050を超えると、塗布、乾燥後のポリマーB1層が脆くなり密着性が低下する。
この組成物に含まれる溶媒は、上記関係式[1]及び[2]を満たすものであれば特に限定されない。この溶媒は、層間密着性の点で、関係式[1−1]及び関係式[2−1]を満たすものが好ましい。
関係式[1−1] |fdsolvent−fdcellulose|≦0.040
関係式[2−1] |fdsolvent−fdpolymerB1|≦0.040
関係式[1−1]及び関係式[2−1]において、dsolvent、fdcellulose及びfdpolymerB1は、それぞれ、上記関係式[1]及び[2]と同義である。
上記溶媒は、上記関係式[1]又は[1−1]、及び、関係式[2]又は[2−1]を満たしたうえで、更に、下記関係式[1−2]及び関係式[2−2]の少なくとも一方を満たすものがより好ましい。
関係式[1−2] |fdsolvent−fdcellulose|≦0.020
関係式[2−2] |fdsolvent−fdpolymerB1|≦0.040
関係式[1−2]及び関係式[2−2]において、dsolvent、fdcellulose及びfdpolymerB1は、それぞれ、上記関係式[1]及び[2]と同義である。
上記関係式[1]及び[2]の下限は、いずれも、0であるが、好ましくは0.001である。
本発明において、溶媒を2種以上併用する場合のfd値は、以下の式により算出するものとする。
(混合溶媒のfd値)=Σ(wi・fdi)
ここで、wiはi番目の溶剤の質量分率、fdiはi番目の溶剤のfd値を表す。
本発明において、ポリマーB1を2種以上併用する場合のfd値は、以下の式により算出するものとする。
(混合ポリマーB1のfd値)=Σ(wi・fdi)
ここで、wiはi番目のポリマーB1の質量分率、fdiはi番目のポリマーB1のfd値を表す。
また、ポリマーB1が2種以上の繰り返し単位を有する場合、上記関係式[2]におけるポリマーB1のfd値は、以下の式により求められる、δd、δp及びδhにより、算出する。
(ポリマーB1のδd値)=Σ(mi・δdi)
ここで、miはi番目の繰り返し単位のモル分率、δdiはi番目の繰り返し単位のδd値を表す。
(ポリマーB1のδp値)=Σ(mi・δpi)
ここで、miはi番目の繰り返し単位のモル分率、δpiはi番目の繰り返し単位のδp値を表す。
(ポリマーB1のδh値)=Σ(mi・δhi)
ここで、miはi番目の繰り返し単位のモル分率、δhiはi番目の繰り返し単位のδh値を表す。
本発明において、セルロースエステル層がセルロースエステルを2種以上含む場合、セルロースエステルのfd値は、下記のようにして算出する。
(セルロースエステルのfd値)=Σ(wi・fdi)
ここで、wiはi番目のセルロースエステルの質量分率、fdiはi番目のセルロースエステルのfd値を表す。
用いる溶媒を選定するに際して、上記式Iで表されるfdを、用いようとするセルロースエステル若しくはポリマーB1、及び、溶媒それぞれについて、算出する。
− London分散力に対応する項δd −
London分散力に対応する項δdは、文献“Properties of Polymers 3rd, ELSEVIER, (1990)”の214〜220頁の「2) Method of Hoy (1985,1989)」欄に記載のAmorphous Polymersについて求められるδdをいうものとし、上記文献の上記の欄の記載に従って算出される。
− 双極子間力に対応する項δp −
双極子間力に対応する項δdの算出方法は、文献“Properties of Polymers 3rd, ELSEVIER, (1990)”の214〜220頁の「2) Method of Hoy (1985,1989)」欄に記載のAmorphous Polymersについて求められるδpをいうものとし、上記文献の上記の欄の記載に従って算出される。
− 水素結合力に対応する項δh −
水素結合力に対応する項δhの算出方法は、文献“Properties of Polymers 3rd, ELSEVIER, (1990)”の214〜220頁の「2) Method of Hoy (1985,1989)」欄に記載のAmorphous Polymersについて求められるδhをいうものとし、上記文献の上記の欄の記載に従って算出される。
上記のようにしてそれぞれ算出したδd、δp及びδhを用いて、式Iにより、溶媒、ポリマーB1及びセルロースエステルのfdをそれぞれ算出する。これにより、用いる溶媒が上記関係式[1]及び関係式[2]を満たすか否かを判断できる。
溶解度パラメータδtは、London分散力に対応する項δd、双極子間力に対応する項δp、及び、水素結合力に対応する項δhに対して以下の関係を有する物性指数である。
δt=δd+δp+δh
セルロースエステルは、極性が小さいグルコピラノース環部分と、極性が高くかつ水素結合を形成可能なエステル部分を有する。本発明者らは、溶剤に対するセルロースエステルの膨潤又は溶解性は、London分散力に対応する項δdがグルコピラノース環部分に対する親和性に、双極子間力に対応する項δpと水素結合力に対応する項δhの和がエステル部分に対する親和性に対応し、両者のバランスをとることが重要なのではないかと考えた。更に、ポリメチルメタクリレート等、本発明のポリマーB1についても、炭化水素基部分に対する親和性と、極性基及び水素結合性基部分に対する親和性のバランスをとることにより、溶剤に対する溶解性を調節できるのではないかと考えた。本仮説に基づき本発明者らが、London分散力に対応する項δd、双極子間力に対応する項δp、及び水素結合力に対応する項δhの和に対するLondon分散力の寄与率fdに着目したところ、本発明の偏光板保護フィルムの密着性、又は、偏光板耐久性の改善効果との間に相関性が見出された。
これについて本発明者らは、次のように考えている。上記の組成物をセルロースエステル層上に塗布する際に、ポリマーB1及びセルロースエステルとfd値が類似した溶媒を用いることにより、ポリマーB1と、積層界面表面及びその近傍に存在するセルロースエステルとが上記溶媒中にそれぞれ溶解する。その結果、積層界面において、ポリマーB1及びセルロースエステルの相互作用が溶媒を介して高まり、これに加えて、両層の界面近傍にポリマーB1とセルロースエステルとの混合領域が形成されるためと、考えている。
上記関係式[1]及び関係式[2]を満たしうる溶媒としては、特に限定されないが、有機溶媒が挙げられ、1種単独で、又は複数種を併用することができる。中でも、ケトン溶媒、酢酸エステル溶媒及び炭化水素溶媒のうち上記関係式[1]及び関係式[2]を満たすものを選択して用いることが好ましい。
ケトン溶媒としては、特に限定されないが、例えば、アセトン、MEK(メチルエチルケトン)又はMiBK(メチルイソブチルケトン)等が挙げられる。酢酸エステル溶媒としては、特に限定されないが、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル又は酢酸ブチルが挙げられる。炭化水素溶媒としては、特に限定されないが、例えば、トルエン又はシクロヘキサンが挙げられる。
上記組成物において、ポリマーB1と上記溶媒との質量比は、特に限定されないが、上記関係式[1]及び関係式「2」を満たすfd値を示す溶媒の全量に対してポリマーB1を3〜50質量%含むことが好ましい。このような質量比とすることで、製造適性に優れた組成物を得ることができる。
上記組成物液に含まれるポリマーB1は、上述の通りである。
上記組成物液は、本発明の効果を損なわない限り、上述した、ポリマーB1、その他の樹脂、各種の添加剤を含有していてもよい。
この組成物は、適用後の溶媒の乾燥を促進する観点から、活性エネルギー線硬化層を形成する材料(バインダー)を更に含むことが好ましい。このようなバインダーとしては、特に限定されず、通常のものを用いることができる。
(ヨウ素類拡散防止層形成用組成物B1の適用)
ヨウ素類拡散防止層形成用組成物B1を適用する方法は、特に限定されるものではなく、通常の方法を採用することができる。例えば、上述したような複層構造のセルロースエステルフィルムを作製する方法の他に、塗布法等が挙げられ、生産性の観点から塗布法が好ましく、塗布法の中でもスプレーコーティング法がより好ましい。
− ヨウ素類拡散防止層形成用組成物B1の塗布 −
ヨウ素類拡散防止層形成用組成物B1の塗布法は、特に限定されるものではなく、通常の方法を採用することができる。溶融製膜法、溶液製膜法(ソルベントキャスト法)の他、上述した方法でセルロースエステル層を作製した後、各種塗布方法によりポリマー層B1を形成することもできる。各種塗布方法としては、例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、エクストルージョンコート法(ダイコート法)(米国特許第2681294号公報参照)又はマイクログラビアコート法等の公知の方法が用いられる。中でも、マイクログラビアコート方が好ましい。また、塗布時の搬送速度についても、特に限定されないが、搬送速度1〜100m/分の条件で塗布することが好ましい。
(ヨウ素類拡散防止層形成用組成物B1の乾燥)
適用後の乾燥条件は、特に限定されないが、乾燥が速い(溶媒の蒸発が速い)と、セルロースエステルとポリマーB1とが混合できる時間が短くなり、混合領域の厚さが薄くなる。したがって、乾燥条件は、形成される混合領域の厚み等を考慮して、例えば、乾燥風の温度、乾燥風中の溶媒含率、適用後の組成物の厚み、溶媒の分子量、溶媒の沸点等によって、適宜に設定することが好ましい。例えば、乾燥温度は25〜140℃の範囲、乾燥時間は30〜1000秒の条件から、それぞれ、選択することが好ましい。
このようにして、セルロースエステル層上にポリマーB1層を形成する。
<5−3:ポリマーB2層の形成>
次いで、必要により、上述のようにして形成したポリマーB1層の、セルロースエステル層とは反対側の表面に、ポリマーB2層を形成する。
ポリマーB2層は、上記表面に、ポリマーB2層を形成するための組成物(ヨウ素類拡散防止層形成用組成物ともいう)B2を適用することにより、形成することができる。
この組成物B2の適用方法は、特に限定されず、ヨウ素類拡散防止層形成用組成物B1の適用方法と同じ方法が挙げられ、塗布法が好ましい。
また、組成物B2は適用後に、好ましくは乾燥される。
ヨウ素類拡散防止層形成用組成物B2は、上述のポリマーB2と、溶媒と、必要により上述の添加剤等とを含有する。
ヨウ素類拡散防止層形成用組成物B2に含まれる溶媒は、特に限定されず、上記関係式等の式Iで規定されるfdに関する限定はない。このような溶媒として、各種の有機溶媒を用いることができる。有機溶媒としては、例えば、ケトン溶媒、酢酸エステル溶媒又は炭化水素溶媒が好ましく挙げられ、ヨウ素類拡散防止層形成用組成物B1に含まれる溶媒と同種のものが挙げられる。また、これ以外にも、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、流動パラフィン若しくはミネラルスピリット等の鎖状脂肪族炭化水素系溶媒、又は、シクロペンタン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ジシクロヘプタン、トリシクロデカン、ヘキサヒドロインデン若しくはシクロオクタン等の脂環式炭化水素系溶媒等も用いることができる。
ヨウ素類拡散防止層形成用組成物B1に含まれる溶媒と同種の溶媒を用いると、ポリマーB2層の形成時に、ポリマーB1とポリマーB2との相互作用が高まり、これに加えて、両層の界面近傍にポリマーB1とポリマーB2との混合領域が形成される。これにより、ポリマーB1層とポリマーB2層とを強固な層間密着性で積層させることができる。
ヨウ素類拡散防止層形成用組成物B2を適用する上記方法は、いずれも、ヨウ素類拡散防止層形成用組成物B1を適用する上記方法と同じである。好ましい塗布法においても、ヨウ素類拡散防止層形成用組成物B2の塗布方法(条件)及び乾燥方法(条件)は、ヨウ素類拡散防止層形成用組成物B1の塗布方法及び乾燥方法と同じである。
このようにして、ポリマーB1層上にポリマーB2層を形成することができる。
本発明において、偏光子の両側にヨウ素類拡散防止層を有する場合、上記「5−2:ポリマーB1層の形成」及び「5−3:ポリマーB2層の形成」と同様にして、偏光子の両側に、ヨウ素類拡散防止層をそれぞれ形成することができる。
[2.偏光板]
1.偏光板
本発明の偏光板は、偏光子及び本発明の偏光板保護フィルムを少なくとも1枚含む。本発明の偏光板保護フィルムを有する本発明の偏光板は、偏光子と偏光板保護フィルムとの密着性が強く、偏光子の劣化が効果的に防止され、高い偏光子耐久性を示す。
以下に、偏光板の構造及び性能、偏光子等について、説明する。
2.偏光子
偏光子としては、少なくとも二色性色素と樹脂とからなるものであれば特に限定されず、偏光板に通常用いられるものを用いることができる。例えば、ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素溶液中に浸漬して延伸したもの等を用いることができる。ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素溶液中に浸漬して延伸した偏光子を用いる場合、例えば、接着剤を用いて偏光子の少なくとも一方の面に、上記積層体におけるセルロースエステル層の鹸化処理面を貼り合わせることができる。
3.偏光板の形状及び構造
本発明の偏光板の形状は、表示装置にそのまま組み込むことが可能な大きさに切断されたフィルム片の態様の偏光板のみならず、連続生産により、長尺状に作製され、ロール状に巻き上げられた態様(例えば、ロール長2500m以上や3900m以上の態様)の偏光板も含まれる。大画面液晶表示装置用とするためには、偏光板の幅は1470mm以上とすることが好ましい。
偏光板は、一般的には、偏光子を偏光板保護フィルムで挟み両面を保護した偏光板が広く用いられているが、本発明の偏光板は、偏光子の少なくとも一方の表面に偏光板保護フィルムを有していれば、その他の構成は特に限定されない。例えば、図5に示されるように、偏光子16と、偏光子16の片側表面のみに本発明の偏光板保護フィルム10Aを少なくとも1枚有する偏光板15Aが挙げられる。また、図示しないが、偏光子の両表面に本発明の偏光板保護フィルムを有する偏光板も挙げられる。
更に、本発明の偏光板は、偏光子の表面を保護し、かつ光学補償する点で、本発明の偏光板保護フィルムが設けられていない側の表面にフィルムを有していてもよい。このようなフィルムとしては、特に限定されないが、上記表面保護及び光学補償に加えて、高い耐湿性を示す点で、シクロオレフィンポリマーを含有するシクロオレフィンフィルムが好ましく挙げられる。
シクロオレフィンフィルムを有する偏光板としては、図6に示される偏光板15Bが挙げられる。この偏光板15Bは、偏光子16の一方の表面に本発明の偏光板保護フィルム10Aを有し、他方の表面にシクロオレフィンフィルム17を有している。
シクロオレフィンポリマーとしては、例えば、(1)ノルボルネン化合物に由来する構造単位を含む重合体、(2)ノルボルネン化合物以外の、単環の環状オレフィン化合物に由来する構造単位を含む重合体、(3)環状共役ジエン化合物に由来する構造単位を含む重合体、(4)ビニル脂環式炭化水素化合物に由来する構造単位を含む重合体、及び、(1)〜(4)の各化合物に由来する構造単位を含む重合体の水素化物等が挙げられる。本発明において、ノルボルネン化合物に由来する構造単位を含む重合体、及び、単環の環状オレフィン化合物に由来する構造単位を含む重合体には、各化合物の開環重合体を含む。
シクロオレフィンポリマーとしては、特に限定されないが、下記一般式(A−II)又は(A−III)で表される、ノルボルネン化合物に由来する構造単位を有する重合体が好ましい。下記一般式(A−II)で表される構造単位を有する重合体はノルボルネン化合物の付加重合体であり、下記一般式(A−III)で表される構造単位を有する重合体はノルボルネン化合物の開環重合体である。
Figure 0006327289
一般式中、mは0〜4の整数であり、0又は1が好ましい。
〜Rは、各々独立に、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表す。
本発明において、炭化水素基は、炭素原子と水素原子からなる基であれば特に限定されず、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基(芳香族炭化水素基)等が挙げられる。中でも、アルキル基又はアリール基が好ましい。
及びX、Y及びYは、各々独立に、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜10の炭化水素基、−(CH)nCOOR11、−(CH)nOCOR12、−(CH)nNCO、−(CH)nNO、−(CH)nCN、−(CH)nCONR1314、−(CH)nNR1314、−(CH)nOZ、−(CH)nW、又は、XとY若しくはXとYが互いに結合して形成する、(−CO)O若しくは(−CO)NR15を表す。
ここで、R11〜R15は、各々独立に、水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を表し、Zは炭化水素基又はハロゲンで置換された炭化水素基を表し、WはSi(R16(3−p)(R16は炭素数1〜10の炭化水素基を表し、Dはハロゲン原子、−OCOR17又は−OR17(R17は炭素数1〜10の炭化水素基)を表す。pは0〜3の整数である)を表す。
nは、0〜10の整数であり、0〜8が好ましく、0〜6がより好ましい。
一般式(A−II)又は(A−III)において、R〜Rは、それぞれ、水素原子又は−CHが好ましく、透湿度の点で、水素原子であることが更に好ましい。
及びYは、それぞれ、水素原子、−CH、−Cが好ましく、透湿度の点で、水素原子が更に好ましい。
及びYは、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子(特に塩素原子)又は−(CH)nCOOR11(特に−COOCH)が好ましく、透湿度の点で、水素原子が更に好ましい。
その他の基は、適宜に選択される。
一般式(A−II)又は(A−III)において、mが0又は1であり、R〜R、X〜X及びY〜Yがいずれも水素原子であることが、特に好ましい。
一般式(A−II)又は(A−III)で表される構造単位を有する重合体は、更に下記一般式(A−I)で表される構造単位を少なくとも1種以上含んでもよい。
Figure 0006327289
一般式中、R及びRは、各々独立に、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表し、X及びYは、各々独立に、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜10の炭化水素基、−(CH)nCOOR11、−(CH)nOCOR12、−(CH)nNCO、−(CH)nNO、−(CH)nCN、−(CH)nCONR1314、−(CH)nNR1314、−(CH)nOZ、−(CH)nW、又は、XとYが互いに結合して形成する、(−CO)O若しくは(−CO)NR15を表す。
ここで、R11〜R15は、各々独立に、水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を表し、Zは炭化水素基又はハロゲンで置換された炭化水素基を表し、WはSi(R16(3−p)(R16は炭素数1〜10の炭化水素基を表し、Dはハロゲン原子、−OCOR17又は−OR17(R17は炭素数1〜10の炭化水素基)を表す。pは0〜3の整数である)を表す。nは0〜10の整数を示す。
一般式(A−I)において、R、R、X及びYは、それぞれ、水素原子であることが更に好ましい。
ノルボルネン化合物の付加(共)重合体は、特開平10−7732号公報、特表2002−504184号公報、米国公開特許公開第2004229157A1、又は、国際公開第2004/070463号等に記載されている。
ノルボルネン化合物の重合体としては、ノルボルネン化合物(例えば、ノルボルネンの多環状不飽和化合物)同士を付加重合することによって得られる。
また、ノルボルネン化合物の重合体として、必要に応じ、ノルボルネン化合物と、エチレン、プロピレン、ブテン等のオレフィン、ブタジエン、イソプレンのような共役ジエン、エチリデンノルボルネンのような非共役ジエン、アクリロニトリル、アクリル酸、メタアクリル酸、無水マレイン酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、マレイミド、酢酸ビニル又は塩化ビニル等のエチレン性不飽和化合物とを付加共重合して得られる共重合体が挙げられる。中でも、エチレンとの共重合体が好ましい。
このようなノルボルネン化合物の付加(共)重合体としては、三井化学社よりアペルの商品名で発売されており、ガラス転移温度(Tg)が互いに異なる、例えば、APL8008T(Tg70℃)、APL6013T(Tg125℃)、又は、APL6015T(Tg145℃)等が挙げられる。また、ポリプラスチック社より、TOPAS8007、同6013、同6015等のペレットが市販されている。更に、Ferrania社よりAppear3000が市販されている。
上述の、ノルボルネン化合物の重合体は、市販品を使用することができる。例えば、JSR社からアートン(Arton)G又はアートンFという商品名で市販されており、また日本ゼオン社からゼオノア(Zeonor)ZF14、ZF16、ゼオネックス(Zeonex)250又はゼオネックス280という商品名で市販されている。
ノルボルネン化合物の重合体の水素化物は、ノルボルネン化合物等を付加重合又はメタセシス開環重合した後、水素添加することにより、合成できる。合成方法は、例えば、特開平1−240517号、特開平7−196736号、特開昭60−26024号、特開昭62−19801号、特開2003−1159767号又は特開2004−309979号等の各公報に記載されている。
上記シクロオレフィンポリマーの質量平均分子量は、特に限定されないが、10000〜1000000であることが好ましく、20000〜800000であることがより好ましく、30000〜500000であることが更に好ましく、50000〜300000であることが特に好ましく、50000〜200000であることが最も好ましい。シクロオレフィンポリマーの分子量が大きくなると、耐熱性、力学強度が向上する。シクロオレフィンポリマーの分子量は、下記条件により、測定することができる。
質量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography;GPC)によりポリスチレン換算で測定される質量平均分子量を採用した。具体的な測定条件を以下に示す。
−測定条件−
GPC装置:東ソー社製GPC装置(HLC−8320GPC、Ecosec)
カラム:TSK gel SuperHZM−H、TSK gel SuperHZ4000、TSK gel SuperHZ2000併用、(東ソー製、4.6mmID(内径)×15.0cm)
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
測定温度:25℃
キャリア流量:0.35mL/min
試料濃度:0.1質量%
検出器:RI(屈折率)検出器
4.偏光子と偏光板保護フィルムの積層方法
本発明の偏光板の製造方法は、偏光子の少なくとも一方の面に、少なくとも1枚の本発明の偏光板保護フィルムを積層する。
本発明の偏光板の製造方法では、偏光板保護フィルム面をアルカリ処理し、PVAフィルムをヨウ素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の少なくとも一方の面、好ましくは両面に、完全ケン化ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせる方法により作製することが好ましい。
偏光板保護フィルムの処理面と偏光子とを貼り合わせるのに使用される接着剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリビニルアルコール又はポリビニルアセタール(例えば、ポリビニルブチラール)の水溶液、ビニル系ポリマー(例えば、ポリブチルアクリレート)のラテックス、紫外線硬化型の接着剤等が挙げられる。特に好ましい接着剤は、完全鹸化ポリビニルアルコールの水溶液又は紫外線硬化型の接着剤である。
また、特開2015−11094号公報等に記載の貼り合わせ方法も、本発明の偏光板保護フィルムと偏光子と貼り合わせて方法として好ましく用いることができる。すなわち、偏光板保護フィルムの表面にコロナ処理を行った後に活性エネルギー線硬化型接着剤組成物を塗布、偏光子と貼り合わせて、紫外線を照射し、樹脂を硬化させた後に乾燥するものである。
本発明の偏光板保護フィルムは、セルロースエステルフィルムに対してヨウ素類拡散防止層が偏光子に近い側となるように貼り合わせられることが好ましい(図5及び図6参照)。上記構成にすることより、ヨウ素類の偏光板保護フィルムへの拡散を効果的に抑制することができ、高温高湿環境下に長期間保存された際の偏光性能劣化が起こりにくくなり、好ましい。
本発明のセルロースエステルフィルムの偏光子への貼り合せは、偏光子の透過軸と本発明のセルロースエステルフィルムの遅相軸が平行、直交又は45°となるように貼り合せることが好ましい。遅相軸の測定は、公知の種々の方法で測定することができ、例えば、複屈折計(KOBRADH、王子計測機器(株)製)を用いて行うことができる。
ここで、平行、直交又は45°については、本発明が属する技術分野において許容される誤差の範囲を含む。例えば、それぞれ平行、直交及び45°に関する厳密な角度から±10°の範囲内であることを意味し、厳密な角度との誤差は、±5°の範囲内が好ましく、±3°の範囲内がより好ましい。
偏光子の透過軸と本発明のセルロースエステルフィルムの遅相軸についての平行とは、本発明のセルロースエステルフィルムの主屈折率nxの方向と偏光子の透過軸の方向とが±10°の角度で交わっていることを意味する。この角度は、±5°の範囲内が好ましく、より好ましくは±3°の範囲内、更に好ましくは±1°の範囲内、最も好ましくは±0.5°の範囲内である。
また、偏光子の透過軸と本発明のセルロースエステルフィルムの遅相軸についての直交とは、本発明のセルロースエステルフィルムの主屈折率nxの方向と偏光子の透過軸の方向とが90°±10°の範囲内の角度で交わっていることを意味する。この角度は、好ましくは90°±5°の範囲内、より好ましくは90°±3°の範囲内、更に好ましくは90°±1°の範囲内、最も好ましくは90°±0.1°の範囲内である。上述のような範囲であれば、偏光板クロスニコル下における偏光度性能の低下が抑制され、光抜けが低減され好ましい。
本発明においては、偏光板保護フィルムと偏光子を貼り合せる方法として、偏光板保護フィルムの、偏光子と貼合する側の面に易接着層を設ける方法も好ましい態様の1つである。
以下、本発明の偏光板保護フィルムにおいて偏光子と貼合する側の面に設けられる易接着層を、「偏光子側易接着層」と称す。
偏光子側易接着層は、各種の偏光子と本発明の偏光板保護フィルムとの接着性を向上させるための層であり、偏光子と本発明の偏光板保護フィルムとを貼り合わせるために使用する各種の接着剤との接着性を向上させるために使用することができる。偏光子耐久性を向上させる観点から、偏光子側易接着層は、ヨウ素類拡散防止層側に設けることが好ましく、ヨウ素類拡散防止層に隣接して設けることが最も好ましい。
本発明の偏光板保護フィルムの帯電防止性をより効果的に高める観点から、偏光子側易接着層は、有機系導電性材料を含有していることが好ましく、特開2015−102636号公報の段落[0058]〜[0068]の記載を参照でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。有機系導電性材料は、偏光子側易接着層のみに含有されていてもよい。
偏光子側易接着層は、セルロースアシレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、アクリル樹脂及びウレタン樹脂から選ばれる少なくとも1種類を含むことが好ましく、中でもセルロースアシレート樹脂及び/又はウレタン樹脂を含むことが好ましい。また、偏光子側易接着層は架橋剤を含んでいてもよい。架橋剤としては、イソシアネート化合物であることが好ましく、特開2015−102636号公報の段落[0070]〜[0071]に記載のものを用いることができる。架橋剤を使用することにより、偏光子側易接着層が強固になるために、層間密着性に加え、耐湿熱性又は耐擦傷性がより向上する場合がある。
偏光子側易接着層は、本発明の偏光板保護フィルム上に2層以上設けてもよい。また、上述した樹脂を同一層中に2種類以上併用して用いてもよく、組成が異なる層を2層以上設けて偏光子側易接着層としてもよい。
偏光子易接着層に用いられるセルロースアシレート樹脂としては、例えば、セルロースエステル層にて説明した上記セルロースアシレートが挙げられ、これらを好ましく用いることができる。
ポリエステル樹脂としては、特開2015−102636号公報の段落[0077]〜[0079]の記載を参照でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。ポリビニルアルコール樹脂としては、特開2015−102636号公報の段落[0080]〜[0081]の記載を参照でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。アクリル樹脂としては、特開2015−102636号公報の段落[0083]〜[0084]の記載を参照でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。ウレタン樹脂としては、特開2015−102636号公報の段落[0085]〜[0093]の記載を参照でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
また、偏光子側易接着層は、偏光子側易接着層の塗布面状又は透明性を向上させるために、上述の樹脂以外のバインダーポリマーを併用することもできる。バインダーポリマーとしては、特開2015−102636号公報の段落[0095]〜[0096]の記載を参照でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
また、偏光子側易接着層は、紫外線吸収剤、又は屈折率を調整する粒子等を含有してもよい。偏光子側易接着層が含有してもよいその他の材料としては、特開2015−102636号公報の段落[0073]〜[0074]の記載を参照でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
本発明の偏光板保護フィルムに偏光子側易接着層を設ける方法は、特に限定されないが、例えば、特開2015−102636号公報の段落[0106]〜[0110]の記載を参照でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
5.偏光板の機能化
本発明の偏光板は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、液晶表示装置の視認性向上のための反射防止フィルム、ハードコート層、輝度向上フィルム、前方散乱層、又は、アンチグレア(防眩)層等の機能層を有する偏光板保護フィルムと複合した機能化偏光板としても好ましく使用される。機能化のための反射防止フィルム、輝度向上フィルム、他の機能性光学フィルム、前方散乱層、アンチグレア層については、特開2007−86748号公報の段落番号0257〜0276に記載され、これらの記載を基に機能化した偏光板を作製することができる。また、これらの詳細は、特開2012−082235号公報の段落0229〜0242及び段落0249〜0250、特開2012−215812号公報の段落0086〜0103の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
機能層としてのハードコート層について以下に説明する。
セルロースエステルフィルムは、上記ヨウ素拡散防止層が設けられていない表面に、所望によりハードコート層を設けることもできる。例えば、塗布組成物をセルロースエステルフィルム上に塗布し、硬化させることによって、セルロースエステルフィルム上にハードコート層を形成することができる。ハードコート層にフィラーや添加剤を加えることで、機械的、電気的、光学的な物理的な性能、又は、撥水性若しくは撥油性などの化学的な性能をハードコート層に付与することもできる。ハードコート層の厚みは0.1〜6μmの範囲であることが好ましく、3〜6μmの範囲であることが更に好ましい。このような範囲の薄いハードコート層を有することで、脆性又はカール抑制などの物性改善、軽量化及び製造コスト低減がなされたハードコート層を含む偏光板を得ることができる。
ハードコート層形成用の塗布組成物の一例は、マトリックス形成バインダー用モノマー又はオリゴマー、ポリマー類及び有機溶媒を含有する。この塗布組成物を塗布後に硬化することでハードコート層を形成することができる。硬化には、架橋反応、又は重合反応を利用することができる。これらの詳細は、特開2012−215812号公報の段落[0088]〜[0101]の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
塗布組成物は、例えば、上述の成分を有機溶媒に溶解及び/又は分散することで、調製することができる。ハードコート層の形成に好適な塗布組成物は、(メタ)アクリレート系化合物を含有する硬化性組成物である。なお(メタ)アクリレート系化合物には、アクリル系化合物とメタクリル系化合物とが包含されるものとする。
6.偏光板の性能又は物性
<6−1:偏光度>
本発明の偏光板は、偏光度95.0%以上が好ましく、98%以上がより好ましく、最も好ましくは99.5%以上である。
本発明において、偏光板の偏光度は、自動偏光フィルム測定装置:VAP−7070(日本分光社製)を用いて、波長380〜780nmで測定した直交透過率及び平行透過率から以下の式(I)により偏光度スペクトルを算出し、更に光源(補助イルミナントC)とCIE視感度(Y)の重み付け平均を以下の式(II)に従って計算することにより、求めることができる。
式(I):
偏光度スペクトル(%)
={(平行透過率−直交透過率)/(平行透過率+直交透過率)}1/2×100
Figure 0006327289
ここで、Tγ(λ)は偏光度スペクトルを示し、L(λ)は光源の発光スペクトルを示し、y(λ)は視感度を示す。
<6−2:偏光度変化量>
本発明の偏光板は、湿熱経時条件下における耐久性に優れる。このため、後述する偏光板耐久性試験前後での偏光度の変化量は小さい。
本発明の偏光板は、自動偏光フィルム測定装置:VAP−7070(日本分光社製)を用いて、直交透過率及び平行透過率を測定し、上記式により偏光度を算出し、特に、85℃、相対湿度85%の環境下で500時間保存した場合の偏光度変化量が5%未満であるのが好ましい。
直交透過率及び平行透過率は、本発明の偏光板をガラスに粘着剤を介して貼り付けた形態で次のようにしてそれぞれ測定する。
ガラス板の上に本発明の偏光板を、本発明の偏光板保護フィルムの側が空気界面側(ガラス板と反対側)になるように貼り付けたサンプル(約5cm×5cm)を2つ作製する。これらのサンプルについて、ガラス板側を光源に向けてセットして直交透過率及び平行透過率を測定する。2つのサンプルをそれぞれ測定し、算術平均した値を、直交透過率及び平行透過率とする。
<6−3:加工特性>
本発明の偏光板は、好ましくは、更に、打ち抜き加工等の裁断によっても、裁断後の偏光板には、その端部に剥離又はクラックが生じにくいという、加工特性としての打ち抜き特性にも優れる。
偏光板は、通常、画像表示装置のパネルサイズに合わせて、打ち抜き加工等によって、裁断される。このとき、偏光板保護フィルムの打ち抜き特性が悪いと、歩留まりの低下と製造コストの増大を招く。しかし、本発明の偏光板は、上述の偏光板保護フィルムを備えており、更には打ち抜き加工性にも優れ、上述の問題を回避できる。
<6−4:表面平滑性>
本発明の偏光板保護フィルムは、好ましくは、偏光子と貼り合わせる前の表面平滑性が高い。すなわち、偏光子と貼り合わせる側の表面の500μm×500μmの領域内の隣接する部分の高低差が0.1μm未満である。
表面平滑性は、実施例で記載した方法により、評価できる。
本発明の偏光板において、表面平滑性が高いと、偏光板保護フィルム製造後に異物等に起因する欠陥を検出しやすくなり、偏光板ひいては液晶表示装置の品質を向上させることができる。
<6−5:その他の特性>
本発明の偏光板のその他の好ましい光学特性等については特開2007−086748号公報の段落番号0238〜0255に記載されており、これらの特性を満たすことが好ましい。
[3.画像表示装置]
本発明の偏光子は、偏光子を利用する画像表示装置用途として好ましく用いられる。
このような画像表示装置として、液晶表示装置又は有機エレクトロルミネッセンス表示装置等が挙げられる。
1.液晶表示装置
本発明の画像表示装置としての一実施形態である液晶表示装置は、二枚の電極基板の間に液晶を担持してなる液晶セルと、その両側に配置された二枚の偏光板と、必要に応じて上述の液晶セルと偏光板との間に少なくとも一枚の光学補償フィルムとを、有している。
上記液晶表示装置の好ましい実施形態について説明する。
図7は、上記液晶表示装置の一実施形態を示す概略図である。図7において、液晶表示装置20は、液晶層24とこの両表面側(図7において上下という)に配置された第1(液晶セル上)電極基板23及び第2(液晶セル下)電極基板25とを有する液晶セル、液晶セルの両側に配置された第1(上側)偏光板21及び第2(下側)偏光板26を有する。液晶セルと各偏光板との間にカラーフィルターを配置してもよい。液晶表示装置20を透過型として使用する場合は、冷陰極あるいは熱陰極蛍光管、あるいは発光ダイオード、フィールドエミッション素子、エレクトロルミネッセント素子を光源とするバックライトを背面(図7の下側)に配置する。液晶セルの基板は、一般に50μm〜2mmの厚さを有する。
第1偏光板21及び第2偏光板26は、図7には図示しないが、通常は、それぞれ2枚の偏光板保護フィルムで偏光子を挟むように積層した構成を有している。本発明の液晶表示装置20は、少なくとも一方の偏光板が本発明の偏光板であることが好ましい。また、2枚の偏光板のうち、第1偏光板21(視認側偏光板)の偏光板保護フィルムとして本発明の偏光板保護フィルムを配置した上で、更に第2偏光板26(バックライト側偏光板)の偏光板保護フィルムとして本発明の偏光板保護フィルムを配置することも好ましい。これにより、2枚の偏光板に含まれる偏光子の伸縮を抑止し、パネルの反りを防止するができる。本発明の液晶表示装置20は、装置の外側(液晶セルから遠い側)から、偏光板保護フィルムとしての本発明の偏光板保護フィルム、偏光子、一般の透明保護フィルムの順序で積層することも好ましい。
液晶セルの液晶層24は、通常、二枚の基板の間にスペーサーを挟み込んで形成した空間に液晶が封入されて、形成されている。透明電極層は、導電性物質を含む透明な膜として基板上に形成される。これにより、基板と透明電極層とを備えた電極基板となる。液晶セルには、更にガスバリアー層、ハードコート層又は(透明電極層の接着に用いる)アンダーコート層(下塗り層)を設けてもよい。これらの層は、通常、基板上に設けられる。
本発明の偏光板保護フィルムは、液晶表示装置の光学補償フィルムとしても好ましく用いることもできる。この場合、液晶表示装置が、二枚の電極基板の間に液晶を担持してなる液晶セル、その両側に配置された二枚の偏光子、及び上述の液晶セルと偏光子との間に少なくとも一枚の本発明の偏光板保護フィルムを光学補償フィルムとして配置した構成であることが更に好ましい。
2.液晶表示装置の種類
本発明の偏光板保護フィルムは、様々な表示モードの液晶セル(液晶表示装置)に用いることができる。TN(Twisted Nematic)、IPS(In−PlaneSwitching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti−ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Super Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)、ECB(Electrically Controlled Birefringence)、又は、HAN(Hybrid Aligned Nematic)のような様々な表示モードが提案されている。また、上記表示モードを配向分割した表示モードも提案されている。本発明の偏光板保護フィルムないし偏光板は、いずれの表示モードの液晶表示装置においても好適に用いることができる。また、透過型、反射型、半透過型のいずれの液晶表示装置においても好適に用いることができる。
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
[1.参考例101:セルロースアシレートフィルムの作製]
1.セルロースアセテートの合成
以下のようにして、アセチル置換度2.87、重合度370のセルロースアセテートを合成した。このセルロースアセテートのfdcelluloseを表1に示した。
セルロースに、触媒として硫酸(セルロース100質量部に対し7.8質量部)を添加し、アシル置換基の原料となる酢酸を添加して、40℃でアシル化反応を行った。アシル化後に40℃で熟成を行った。更にこのセルロースアセテートの低分子量成分をアセトンで洗浄し除去した。このようにして、上記のセルロースアセテートを合成した。
2.エア側表層用ドープ101の調製
下記マット剤溶液2の1.3質量部と下記セルロースアシレート溶液1の98.7質量部とをインラインミキサーを用いて混合し、エア側表層用ドープ101液を調製した。
<2−1:セルロースアシレート溶液1の調製>
各成分を下記に示す組成でミキシングタンクに投入し、攪拌して溶解し、セルロースアシレート溶液1を調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースアシレート溶液1の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
アセチル置換度2.87、重合度370のセルロースアセテート
100.0質量部
スクロースベンゾエート(ベンゾイル置換度5.5)
6.0質量部
シグマ−アルドリッチ社製スクロースアセテートイソブチレート
4.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 353.9質量部
メタノール(第2溶媒) 89.6質量部
n−ブタノール(第3溶媒) 4.5質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
<2−2:マット剤溶液2の調製>
各成分を下記に示す組成で分散機に投入し、攪拌して溶解し、マット剤溶液2を調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
マット剤溶液2の組成
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平均粒子サイズ20nmのシリカ粒子(AEROSIL R972、
日本アエロジル社製) 2.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 69.3質量部
メタノール(第2溶媒) 17.5質量部
n−ブタノール(第3溶媒) 0.9質量部
上記セルロースアシレート溶液1 0.9質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
3.基層用ドープ102(セルロースアシレート溶液3)の調製
各成分を下記に示す組成でミキシングタンクに投入し、攪拌して溶解し、基層用ドープ102を調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
基層用ドープ102の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
アセチル置換度2.87、重合度370のセルロースアセテート
100.0質量部
スクロースベンゾエート(ベンゾイル置換度5.5)
6.0質量部
シグマ−アルドリッチ社製スクロースアセテートイソブチレート
4.0質量部
下記紫外線吸収剤C 2.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 297.7質量部
メタノール(第2溶媒) 75.4質量部
n−ブタノール(第3溶媒) 3.8質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
Figure 0006327289
4.支持体側表層用ドープ103液の調製
エア層側表層用ドープ101液において作製した、マット剤溶液2の1.3質量部と、セルロースアシレート溶液1の99.3質量部とを、インラインミキサーを用いて混合し、支持体側表層用ドープ103液を調製した。
5.フィルムの製膜
図8は、ドラム流延装置を用いて3層構造のセルロースアシレートフィルムを製造する方法を説明する図である。図8において、89は流延ダイを示し、70はドープを流延した流延膜を示す。
図8に示すドラム流延装置を用い、図8中の122が支持体側表層用ドープ103、120が基層用ドープ102、121がエア側表層用ドープ101となるようにして、3層同時に、ステンレス製の流延支持体85(支持体温度−9℃)に、流延ダイ89に設けられた流延口から均一に流延した。各層のドープ中の残留溶媒量が略70質量%の状態で剥ぎ取り、フィルムの幅方向の両端をピンテンターで固定し、残留溶媒量が3〜5質量%の状態で、横方向に1.28倍延伸しつつ乾燥した。その後、熱処理装置のロール間を搬送することにより、更に乾燥し、参考例101のセルロースアシレートフィルムNo.101を得た。得られたセルロースアシレートフィルムNo.101の厚みは60μm(エア側表層(図8中の121a)3μm、基層(図8中の120a)54μm、支持体側表層(図8中の122a)3μm)、幅は1480mmであった。
[2.実施例101〜107及び比較例201〜208]
実施例101〜107及び比較例203〜208においては、偏光子の一方の表面にヨウ素類拡散防止層を直接設けた偏光板保護フィルム(図1)、及び、それを備えた偏光板(図6)を作製して、その特性を評価した。
比較例201及び202については、偏光板保護フィルムとしてセルロースアシレートフィルムのみを用いた。
1.実施例101
<1−1:偏光板保護フィルムの作製>
以下のようにして、図1に示す単層構造のヨウ素拡散防止層(ポリマーB1層)12を備えた偏光板保護フィルム10Aを作製した。
(ヨウ素類拡散防止層形成用組成物Ba−1の調製)
各成分を下記に示す組成で混合し、孔径30μmのポリプロピレン製フィルターでろ過してヨウ素類拡散防止層形成用組成物Ba−1を調製した。
組成物Ba−1の調製にあたり、溶媒として、用いるセルロースアシレートフィルムNo.101に含有されるセルロースアシレートのfd値と、下記ポリマーB1(ポリメチルメタクリレート:PMMA)のfd値とに対して、それぞれ、fd値が上記関係式[1]及び上記関係式[2]を満たす酢酸プロピルを選択した。
このときの、fdsolvent及びfdpolymerB1、並びに、関係式[1](|fdsolvent−fdcellulose|)及び関係式[2](|fdsolvent−fdpolymerB1|)の計算値を、表1に示した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
ヨウ素類拡散防止層形成用組成物Ba−1の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
ポリメチルメタクリレート:三菱レイヨン社製ダイヤナールBR83
18.0質量部
酢酸プロピル(溶媒) 82.0質量部
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三菱レイヨン社製ダイヤナールBR83の上記測定方法によるガラス転移温度は116℃であり、重量平均分子量は40000であった。この重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography;GPC)によりポリスチレン換算で測定した。具体的な測定条件を以下に示す。
−測定条件−
GPC装置:東ソー社製GPC装置(HLC−8320GPC、Ecosec)
カラム:TSK gel SuperHZM−H、TSK gel SuperHZ4000、TSK gel SuperHZ2000併用、(東ソー製、4.6mmID(内径)×15.0cm)
溶離液: テトラヒドロフラン
測定温度:25℃
キャリア流量:0.35mL/min
試料濃度:0.1質量%
検出器:RI(屈折率)検出器
(ヨウ素類拡散防止層(ポリマーB1層)12の形成)
参考例101にて上述したフィルムの製膜時にステンレス製の流延支持体85に接していたセルロースアシレートフィルムNo.101の面(支持体側表層122aの表面)上に、ヨウ素類拡散防止層用塗布液Ba−1を、マイクログラビア塗布方式で、搬送速度30m/分の条件で塗布した。これを100℃で120秒乾燥し、厚み5μmのヨウ素類拡散防止層12を形成した。
こうして得られたヨウ素類拡散防止層12を備えた偏光板保護フィルム10Aを、実施例101の偏光板保護フィルムNo.101とした。
<1−2:偏光板の作製>
以下のようにして、偏光板保護フィルムNo.101及びシクロオレフィン系フィルムを備えた偏光板(図6)を作製した。
(活性エネルギー線硬化型接着剤組成物の調製)
各成分を下記に示す組成で混合し、50℃で1時間撹拌して、活性エネルギー線硬化型接着剤組成物を得た。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
活性エネルギー線硬化型接着剤組成物の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
ラジカル重合成化合物:東亜合成社製アロニックスM−220
20.0質量部
興人社製N−ヒドロキシルアクリルアミド
40.0質量部
興人社製アクロイルモルホリン 40.0質量部
ラジカル重合開始剤:日本化薬社製KAYACURE DETX−S
0.5質量部
ラジカル重合開始剤:BASF社製IRGACURE907
1.5質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
(偏光子の作製)
平均重合度2400、ケン化度99.9モル%、厚さ75μmのポリビニルアルコールフィルムを、30℃の温水中に60秒間浸漬して膨潤させた。次いで、0.3質量%(質量比:ヨウ素/ヨウ化カリウム=0.5/8)の30℃のヨウ素溶液中で1分間染色しながら、3.5倍まで延伸した。その後、65℃の4質量%のホウ酸水溶液中に0.5分間浸漬しながら総合延伸倍率が6倍となるまで延伸した。延伸後、70℃のオーブンで3分間乾燥を行い、厚さ26μmの偏光子を得た。偏光子の水分率は13.5質量%であった。
(貼り合わせ)
作製した偏光板保護フィルムNo.101のヨウ素類拡散防止層側の表面をコロナ処理した。コロナ処理を施したヨウ素類拡散防止層の表面に、上記で調製した活性エネルギー線硬化型接着剤組成物をMCDコーター(富士機械社製)(セル形状:ハニカム、グラビアロール線数:1000本/INCH、回転速度140%/対ライン速)を用いて、厚み0.5μmになるように塗布した。
また、別途、厚み40μmのシクロオレフィン系フィルム(JSR社製アートンG7810)についても、コロナ処理を施した後、その表面にも同様にして、上記の活性エネルギー線硬化型接着剤組成物を厚み0.5μmとなるように塗布した。
このシクロオレフィン系フィルムは、繰り返し単位として、上記一般式A−II(ただし、m=1、R、R、X及びYのいずれも水素原子)で表される、ノルボルネン化合物に由来する構造単位と、下記一般式(A−I)で表される構造単位(ただし、R、R、X及びYのいずれも水素原子)とを有する重合体である。
このようにして、活性エネルギー線硬化型接着剤組成物をそれぞれ塗布した偏光板保護フィルムNo.101及びシクロオレフィン系フィルムを作製した。
続いて、各フィルムの活性エネルギー線硬化型接着剤組成物を塗布した面を、偏光子の片側表面に、それぞれ、貼り合わせた。このとき、偏光子の透過軸と偏光板保護フィルムNo.101の遅相軸が垂直となるように、配置した。その後、貼り合わせたフィルム(偏光板保護フィルムNo.101又はシクロオレフィン系フィルム)の両面から、IRヒーターを用いて50℃に加温した。
更に、貼り合わせたフィルム(偏光板保護フィルムNo.101又はシクロオレフィン系フィルム)の両面から、下記に示す活性エネルギー線を照射して、上記活性エネルギー線硬化型接着剤組成物をそれぞれ硬化させた。
その後、70℃で3分間熱風乾燥して、偏光板No.101を得た。
− 活性エネルギー線 −
活性エネルギー線として、紫外線(ガリウム封入メタルハライドランプ)、照射装置:Fusion UV Systems,Inc社製Light HAMMER10、バルブ:Vバルブ、ピーク照度:1600mW/cm、積算照射量1000/mJ/cm(波長380〜440nm)を使用した。なお、紫外線の照度は、Solatell社製Sola−Checkシステムを使用して測定した。
2.実施例102
<2−1:偏光板保護フィルムNo.102及び偏光板No.102の作製>
上記実施例101のヨウ素類拡散防止層形成用組成物Ba−1の調製において、ヨウ素類拡散防止層のポリマーB1(ポリメチルメタクリレート)を下記構造のポリマーAに変更したこと、及び、酢酸プロピルを、上記各関係式を満たす溶媒としてメチルエチルケトン(MEK)に変更したこと以外は実施例101と同様にして、実施例102の偏光板保護フィルムNo.102及び偏光板No.102を作製した。
上記ポリマー及び溶媒の変更等にあたり、セルロースアシレートのfd値と、ポリマーAのfd値と、溶媒のfd値とが上記関係式[1]及び上記関係式[2]を満たすように、選択した。
Figure 0006327289
a/b=50/50(モル比率)
<2−2:ポリマーAの合成>
300mL三角フラスコにメタクリル酸メチル47.8g(0.47mol)、2−アセトアセトキシエチルメタクリレート102.2g(0.47mol)、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート0.93g(0.004mol)、メチルエチルケトン75.0gを量りとり、これらを混合溶解させて、モノマー組成物を調製した。
温度計、攪拌羽根、還流環を備えた1Lの三つ口フラスコに、メチルエチルケトン75.0gを仕込み、窒素気流下、85℃で攪拌した。このメチルエチルケトン中に、上記モノマー組成物を、1.2mL/minの速度で滴下した。滴下にはケミカルポンプを使用した。これを、更に85℃で6時間攪拌した後、得られた反応溶液を室温(25℃)まで放冷し、メチルエチルケトン500mLで希釈し、メタノール5L中に加えて白色沈殿を得た。得られた白色沈殿をろ別した後、メタノール2Lで再分散洗浄を3回繰り返し、60℃で終夜乾燥することで、目的のポリマーAを139.6g得た。得られたポリマーAの組成比はa/b=50/50(モル比率)、重量平均分子量は74,000であった。
<2−3:ポリマーの評価>
繰り返し単位の構造及び組成比は、BRUKER社製核磁気共鳴スペクトル測定装置(NMR300MHz)を用いたH−NMR測定により同定した。
重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography;GPC)によりポリスチレン換算で測定される重量平均分子量を採用した。具体的な測定条件は、上記ダイヤナールBR83と同じである。
3.実施例103
<3−1:セルロースアシレートフィルムの作製>
参考例101において、エア側表層用ドープ及び支持体側表層用ドープに使用するセルロースアシレート溶液1を下記組成のセルロースアシレート溶液5に変更した以外は、参考例101と同様にして、参考例103のセルロースアシレートフィルムNo.103を作製した。
用いたセルロースアセテートのfdcelluloseを表1に示した。
(セルロースアシレート溶液5の調製)
各成分を下記に示す組成でミキシングタンクに投入し、攪拌して溶解し、セルロースアシレート溶液5を調製した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースアシレート溶液5の組成
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
アセチル置換度2.87、重合度370のセルロースアセテート
100.0質量部
スクロースベンゾエート(ベンゾイル置換度5.5)
6.0質量部
シグマ−アルドリッチ社製スクロースアセテートイソブチレート
4.0質量部
上記ポリマーA 15.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 353.9質量部
メタノール(第2溶媒) 89.6質量部
n−ブタノール(第3溶媒) 4.5質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
<3−2:偏光板保護フィルム及び偏光板の作製>
上記実施例101において、酢酸プロピルに代えて、上記各関係式を満たす溶媒としてメチルエチルケトン(MEK)を用いたこと、及び、セルロースアシレートフィルムNo.101に代えて上記で調製したセルロースアシレートフィルムNo.103を用いたこと以外は、実施例101と同様にして、実施例103の偏光板保護フィルムNo.103及び偏光板No.103を作製した。
上記溶媒の変更等にあたり、セルロースアシレートのfd値と、ポリマーB1(ポリメチルメタクリレート:PMMA)のfd値と、溶媒のfd値とが上記関係式[1]及び上記関係式[2]を満たすように、選択した。
4.実施例104及び105
上記実施例101のヨウ素類拡散防止層形成用組成物Ba−1の調製において、酢酸プロピルに代えて、上記各関係式を満たす溶媒として表1に記載の溶媒を用いたこと以外は実施例101と同様にして、実施例104及び105の偏光板保護フィルムNo.104及び105並びに偏光板No.104及び105を作製した。
5.実施例106
実施例101の偏光板の作製において、セルロースアシレートフィルムの表面をコロナ処理した後に、活性エネルギー線硬化型接着剤組成物をヨウ素類拡散防止層12と反対側の表面に塗布し、ヨウ素類拡散防止層12がセルロースアシレート層に対して偏光子と反対側となるように貼り合わせたこと以外は、実施例101と同様にして、実施例106の偏光板No.106を作製した。
6.実施例107
実施例102で作製したポリマーAを含むヨウ素拡散防止層(ポリマーB1層)12の上に、実施例101で調製したヨウ素類拡散防止層形成用組成物Ba−1を実施例101と同様の方法で、乾燥後の膜厚が5μmとなるように塗布して、図3に示す2層構造のヨウ素拡散防止層を備えた実施例107の偏光板保護フィルムNo.107を作製した。
次いで、実施例101の偏光板の作製において、偏光板保護フィルムNo.101に代えて偏光板保護フィルムNo.107を用いたこと以外は、実施例101の偏光板の作製と同様にして、実施例107の偏光板No.107を作製した。
偏光板No.107においては、ヨウ素拡散防止層13と偏光子とを貼り合せた。
7.比較例201
<7−1:セルロースアシレートフィルムの作製>
参考例101において、セルロースアシレート溶液1を下記組成のセルロースアシレート溶液6に、セルロースアシレート溶液3を下記組成のセルロースアシレート溶液7に、それぞれ、変更したこと外は、参考例101と同様にして、比較例201のセルロースアシレートフィルムNo.201を作製した。
用いたセルロースアセテートのfdcelluloseを表1に示した。
(セルロースアシレート溶液6の調製)
各成分を下記に示す組成でミキシングタンクに投入し、攪拌して溶解し、セルロースアシレート溶液6を調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースアシレート溶液6の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
アセチル置換度2.87、重合度370のセルロースアセテート
100.0質量部
スクロースベンゾエート(ベンゾイル置換度5.5)
6.0質量部
シグマ−アルドリッチ社製スクロースアセテートイソブチレート
4.0質量部
上記ポリマーA 15.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 353.9質量部
メタノール(第2溶媒) 89.6質量部
n−ブタノール(第3溶媒) 4.5質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
(セルロースアシレート溶液7の調製)
各成分を下記に示す組成でミキシングタンクに投入し、攪拌して溶解し、セルロースアシレート溶液7を調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースアシレート溶液7の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
アセチル置換度2.87、重合度370のセルロースアセテート
100.0質量部
スクロースベンゾエート(ベンゾイル置換度5.5)
6.0質量部
シグマ−アルドリッチ社製スクロースアセテートイソブチレート
4.0質量部
上記ポリマーA 15.0質量部
下記紫外線吸収剤C 2.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 297.7質量部
メタノール(第2溶媒) 75.4質量部
n−ブタノール(第3溶媒) 3.8質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
<7−2:偏光板保護フィルムの作製>
比較例201のセルロースアシレートフィルムNo.201を偏光板保護フィルムNo.201とした。
<7−3:偏光板の作製>
(偏光板保護フィルムの鹸化処理)
作製した比較例201の偏光板保護フィルムNo.201を、2.3mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液に、55℃で3分間浸漬した。その後、室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.05mol/Lの硫酸を用いて中和した。再度、室温の水洗浴槽中で洗浄し、更に100℃の温風で乾燥した。このようにして、偏光板保護フィルムNo.201について表面の鹸化処理を行った。
(貼り合わせ)
鹸化処理した比較例201の偏光板保護フィルムNo.201のドラム(支持体)側表層面122aを、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、上記実施例101と同様の手順にて製造した偏光子の片側面に貼り付けた。更に、偏光子の反対側の面に、実施例101と同様にしてコロナ処理及び活性エネルギー線硬化型接着剤組成物塗布を施したシクロオレフィン系フィルム(JSR社製アートンG7810)を貼り合わせた。その後、貼り合わせたシクロオレフィン系フィルム側(片側)から、IRヒーターを用いて50℃に加温し、上記紫外線をシクロオレフィン系フィルム側に照射して、活性エネルギー線硬化型接着剤組成物を硬化させた。その後、70℃で3分間熱風乾燥して、比較例201の偏光板No.201を得た。
8.比較例202
参考例101のセルロースアシレートフィルムNo.101を偏光板保護フィルムNo.202とした。
比較例201の偏光板の作製において、セルロースアシレートフィルムNo.201の代わりに、参考例101のセルロースアシレートフィルムNo.101を用いたこと以外は、比較例201と同様にして、比較例202の偏光板No.202を作製した。
9.比較例203
実施例101において、ヨウ素類拡散防止層形成用組成物Ba−1を下記組成のヨウ素類拡散防止層形成用組成物Ba−5に変更したこと以外は、実施例101と同様にして、比較例203の偏光板保護フィルムNo.203及び偏光板No.203を作製した。
表1に、比較例203における、fdsolvent及びfdpolymerB1、並びに、関係式[1]及び関係式[2]の計算値を示した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ヨウ素類拡散防止層形成用組成物Ba−5の組成
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
シクロオレフィン系ポリマー:三井化学TOPAS APL6013T
18.0質量部
シクロヘキサン(溶剤) 82.0質量部
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TOPAS APL6013Tの繰り返し単位は、上記一般式(A−II)(ただし、m=0、R、R、X及びYのいずれも水素原子)で表される、ノルボルネン化合物に由来する構造単位を有する重合体である。
このTOPAS APL6013Tの重量平均分子量は10800であった。重量平均分子量の測定条件は上記ダイヤナールBR83と同じである。
10.比較例204〜208
上記実施例101のヨウ素類拡散防止層形成用組成物Ba−1の調製において、酢酸プロピルに代えて、上記関係式の少なくとも一方を満たさない溶媒として表1に記載の溶媒を用いたこと以外は実施例101と同様にして、比較例204〜208の偏光板保護フィルムNo.204〜208並びに偏光板No.204〜208を作製した。
[3偏光板保護フィルム及び偏光板の評価]
上記で得られた偏光板保護フィルムについて透湿度及び密着性を、また、偏光板について偏光板耐久性を、下記方法により評価した。その結果を表1に示す。
透湿度
本発明の偏光板保護フィルムにおける透湿度は、JIS Z 0208(1976)の「防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)」に基づき、下記の方法によって算出した。
具体的には、偏光板保護フィルムを60mm×60mmに裁断し、温度85℃で相対湿度85%の雰囲気中で、裁断した偏光板保護フィルムを6時間に通過する水分の質量(g/6hours)を測定し、裁断した偏光板保護フィルムの面積1mあたりの質量に換算(g/m/6hours)した。
偏光板保護フィルムを通過した水分の質量は、吸湿剤(無水塩化カルシウム)の質量変化から、算出した。
2.密着性
まず、偏光板保護フィルムに対して、ヨウ素類拡散防止層を備えた偏光板保護フィルムを温度25℃、相対湿度60%の条件で2時間調湿した。ヨウ素類拡散防止層を有する側の表面に、カッターナイフで、碁盤目状に縦11本及び横11本の切り込みを1mm間隔で入れて、合計100個の正方形の升目を刻んだ。その面(升目)に日東電工社製のポリエステル粘着テープ(No.31B)を貼りつけた。30分経時した後に、垂直方向にテープを素早く引き剥がし、剥がれた升目の数を数えて、下記4段階の基準で評価した。同じ密着評価を3回行って平均をとった。
本試験において、密着性は、ランクA又はBが合格レベルである。
なお、比較例201及び202の偏光板保護フィルムは、セルロースアシレートフィルムのみからなるので、密着性試験を行っていない。表1において「−」で示した。
(評価基準)
A:100升において剥がれが全く認められなかった。
B:100升において1〜10升の剥がれが認められた。
C:100升において11升以上の剥がれが認められた。
D:カッターナイフで切り込みを入れた時点で剥がれが認められた。
3.偏光板耐久性
上記で作製した各実施例及び比較例の偏光板について、偏光度を上述した方法で測定した。その後、85℃、相対湿度85%の環境下で500時間保存した後に、同様にして、保存後の偏光度を測定した。
保存前後の偏光度変化量を下記式により求め、偏光子耐久性として、得られた偏光度変化量について、以下の基準により、評価した。

偏光度変化量(%)=|保存後の偏光度(%)−保存前の偏光度(%)|

(評価基準)
A:偏光度変化量が0.1%未満
B:偏光度変化量が0.1%以上1%未満
C:偏光度変化量が1以上5%未満
D:偏光度変化量が5%以上
4.混合領域の確認
上記方法にて、セルロースアシレート層11とポリマー層12との境界近傍を確認したところ、実施例101〜107の偏光板保護フィルムは、混合領域を有していた。
Figure 0006327289
表1の結果から、本発明の偏光板保護フィルムNo.101〜107は、偏光板に用いた場合に、いずれも、比較例の偏光板保護フィルムNo.201及び202に対して、高温高湿環境下に保存しても、偏光度の低下を抑制できることが示された。更に、本発明の偏光板保護フィルムNo.101〜107は、比較例の偏光板No.203に対しても、また比較例の偏光板No.204〜208のいずれに対しても、ヨウ素類拡散防止層とセルロースアシレート層との間の層間密着性が優れていた。
また、ヨウ素類拡散防止層がセルロースアシレートフィルムに対して偏光子に近い側に配置した(ヨウ素類拡散防止層が接着剤層を介して偏光子と隣接して配置した)偏光板No.101は、ヨウ素類拡散防止層がセルロースアシレートフィルムに対して偏光子から遠い側に配置された偏光板No.106に対して、高温高湿環境下に保存した際の偏光性能の劣化が起こりにくく、特に好ましいことが分かった。
更に、セルロースアシレートフィルムの表層に上述の〔a〕及び〔b〕の繰り返し単位それぞれを含むポリマーAを含有するヨウ素類拡散防止層を備えた偏光板保護フィルムNo.102は、偏光板に用いた場合に、〔b〕の繰り返し単位を含有しないポリマーを含有するヨウ素類拡散防止層を備えた偏光板保護フィルムNo.105に対して、セルロースアシレートフィルムとヨウ素類拡散防止層の間の層間密着性が更に優れたものとなった。
[4.実施例301〜302及び比較例401]
実施例301及び302においては、偏光子の一方の表面にヨウ素類拡散防止層を直接設けた偏光板保護フィルム(図1)、及び、それを備えた偏光板を作製して、その特性を評価した。
比較例401については、偏光子の両表面にセルロースアシレートフィルムのみを直接設けた偏光板保護フィルム、及び、それを備えた偏光板を作製した。
1.実施例301
実施例301では、以下のようにして、偏光子の両面にヨウ素類拡散防止層を直接設けた偏光板保護フィルムNo.301(図1)、並びに、これを備えた偏光板をそれぞれ作製した。
<1−1:セルロースアシレートフィルム301Aの調製>
(コア層ドープ溶液301Aの調製)
各成分を下記に示す組成でミキシングタンクに投入し、撹拌して溶解し、コア層ドープ溶液301Aを調製した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
コア層ドープ溶液301Aの調製
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースアセテート(アセチル置換度2.43) 100質量部
添加剤1(下記のオリゴマー1) 4質量部
添加剤2(下記の化合物P−5) 7.5質量部
メチレンクロライド 394.0質量部
メタノール 59.0質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
− オリゴマー1 −
下記モル比のテレフタル酸及びコハク酸のジカルボン酸と、下記モル比のエチレングリコール及びプロピレングリコールのジオールとを反応させた後、末端封止してオリゴマー1を得た。原料であるジカルボン酸及びジオールそれぞれの種類及びモル比(仕込み比)、並びに、得られたオリゴマー1の末端封止構造及び分子量は表2の通りである。
Figure 0006327289
Figure 0006327289
(スキン層ドープ溶液の調製)
各成分を下記に示す組成でミキシングタンクに投入し、撹拌して溶解し、スキン層ドープ溶液を調製した。
用いたセルロースアセテート(アセチル置換度2.81)のfd値は0.389であった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
スキン層ドープ溶液の組成
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースアセテート(アセチル置換度2.81) 100質量部
メチレンクロライド 425.0質量部
メタノール 63.0質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
(マット剤溶液の調整)
各成分を下記に示す組成で分散機に投入し、撹拌して溶解し、マット剤分散液M1を調製した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
マット剤分散液M1の調製
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
平均粒子サイズ20nmのシリカ粒子 2.0質量部
(AEROSIL(登録商標)R972、日本アエロジル社製)
メチレンクロリド 76.1質量部
メタノール 11.4質量部
上記で調製したスキン層ドープ溶液 12.6質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
(マット剤を含有するスキン層ドープ溶液の調製)
上記にて調製したスキン層ドープ溶液に、マット剤分散液M1を以下に示した割合で混合し、マット剤を含有するスキン層ドープ溶液を調製した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
スキン層ドープ溶液の調製
――――――――――――――――――――――――――――――――――
スキン層ドープ溶液 100.0質量部
マット剤分散液M1 7.1質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――
(流延)
上記で調製したドープ溶液を用いて、バンド流延機により流延した。
図8中の120がコア層ドープ溶液301A、122と121がマット剤を含有するスキン層ドープ溶液となるようにして、共流延した。ここで、各ドープの流延量を調整することにより、コア層を最も厚くし、結果的に延伸後のフィルムの膜厚としてコア層が40μm、スキン層が各2μmとなるように同時多層共流延した流延膜を形成した。
次に、この流延膜を流延バンド85から剥ぎ取り、湿潤フィルムとした後、渡り部及びテンターで乾燥させた。なお、ドープを剥ぎ取った直後の湿潤フィルムの残留溶媒量は約25質量%であった。湿潤フィルムを乾燥室に送り、多数のローラに巻き掛けながら搬送する間に乾燥を十分に促進させ、流延して得られたフィルムとした。
(延伸)
流延して得られたフィルムを、クリップで把持し、固定端一軸の条件で横方向に延伸した。延伸温度は185℃、延伸率は31%とした。
(湿熱処理)
延伸処理を経た各フィルムに、結露防止処理、湿熱処理(水蒸気接触処理)及び熱処理を順次行った。
結露防止処理では、各フィルムに乾燥空気を当てて、フィルム温度Tf0を120℃に調節した。
湿熱処理(水蒸気接触処理)では、湿潤気体接触室内の湿潤気体の絶対湿度(湿熱処理絶対湿度)が250g/mとなるようにした。また、湿潤気体の露点は、各フィルムの温度Tf0よりも10℃以上高い温度となるように調節した。このようにして、各フィルムの温度(湿熱処理温度)が100℃となる状態を、処理時間(60秒)だけ維持しながら、各フィルムを搬送した。
熱処理では、熱処理室内の気体の絶対湿度(熱処理絶対湿度)を0g/mとし、各フィルムの温度(熱処理温度)を湿熱処理温度と同じ温度に設定して、処理時間(2分)だけ維持した。フィルム表面温度は、テープ型熱電対表面温度センサー(安立計器社製STシリーズ)をフィルムに3点貼り付け、それぞれの平均値から求めた。
(巻き取り)
その後、室温まで冷却した後でフィルムを巻き取った。このようにして作製したセルロースアシレートフィルム301A中の各層の厚みは、コア層が40μm、スキン層が各2μmであった。
<1−2:ヨウ素類拡散防止層形成用組成物Ba−2の調製>
(マット剤溶液M3の調製)
各成分を下記に示す組成で分散機に投入し、攪拌して溶解し、マット剤溶液M3を調製した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
マット剤溶液M3の調製
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平均粒子サイズ20nmのシリカ粒子 2.0質量部
(日本アエロジル社製、製品名:アエロジルNX90S)
ポリメチルメタクリレート:三菱レイヨン社製ダイヤナールBR80
4.0質量部
酢酸プロピル 94.0質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
(ヨウ素類拡散防止層形成用組成物Ba−2の調製)
各成分を下記に示す組成で混合し、孔径10μmのポリプロピレン製フィルターでろ過してヨウ素類拡散防止層形成用組成物Ba−2を調製した。
組成物Ba−2の調製にあたり、溶媒として、スキン層122aに含有されるセルロースアシレートのfd値と、下記ポリマーB1(ポリメチルメタクリレート)のfd値とに対して、それぞれ、fd値が上記関係式[1]及び上記関係式[2]を満たす酢酸プロピルを選択した。
このときの、fdpolymerB1、並びに、関係式[1]及び関係式[2]の計算値を、表3に示す。
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ヨウ素類拡散防止層形成用組成物Ba−2の組成
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ポリメチルメタクリレート:三菱レイヨン社製ダイヤナールBR80
10.0質量部
下記のフッ素系ポリマーF(重量平均分子量14900) 0.05質量部
マット剤溶液M3 25.0質量部
酢酸プロピル(溶媒) 65.0質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
Figure 0006327289
上記フッ素系ポリマーFの重量平均分子量の測定は、ゲル浸透クロマトグラフィーによりポリスチレン換算で測定した。上記繰り返し単位及びに付した数字は、各繰り返し単位のモル比を表す。
<1−3:ヨウ素類拡散防止層(ポリマーB1層)の形成>
作製した上記セルロースアセテートフィルムNo.301Aのバンド面(フィルム製膜時にステンレス製の流延支持体に接していたセルロースアシレートフィルムの支持体側表層122aの表面)上に、上述で調整したヨウ素類拡散防止層用塗布液Ba−2を、マイクログラビア塗布方式で、搬送速度30m/分の条件で塗布した。これを100℃で120秒乾燥し、厚み5μmのヨウ素類拡散防止層12を形成した。
このようにして、図1に示す単層構造のヨウ素類拡散防止層12を備えた偏光板保護フィルムo.301Aを得た。
<1−4:セルロースアシレートフィルム301Bの調製>
(エア側表層用ドープ301Bの調製)
下記マット剤溶液302Bの1.3質量部と、下記セルロースアシレート溶液301Bを98.7質量部加えて、インラインミキサーを用いて混合し、エア側表層用ドープ301Bを調製した。
各成分を下記に示す組成でミキシングタンクに投入し、攪拌して溶解し、セルロースアシレート溶液301Bを調製した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースアシレート溶液301Bの組成
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
アセチル置換度2.87、重合度370のセルロースアセテート
100.0質量部
スクロースベンゾエート(ベンゾイル置換度5.5)
3.0質量部
シグマ−アルドリッチ社製スクロースアセテートイソブチレート
1.0質量部
下記のバルビツール酸誘導体(E) 6.0質量部
下記の紫外線吸収剤(D) 2.3質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 353.9質量部
メタノール(第2溶媒) 89.6質量部
n−ブタノール(第3溶媒) 4.5質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
Figure 0006327289
各成分を下記に示す組成で分散機に投入し、攪拌して溶解し、マット剤溶液302Bを調製した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
マット剤溶液302Bの組成
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
平均粒子サイズ20nmのシリカ粒子(AEROSIL R972、
日本アエロジル社製) 2.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 69.3質量部
メタノール(第2溶媒) 17.5質量部
n−ブタノール(第3溶媒) 0.9質量部
上記セルロースアシレート溶液301B 0.9質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
(基層用ドープ303B(セルロースアシレート溶液303B)の調製)
各成分を下記に示す組成でミキシングタンクに投入し、攪拌して溶解し、基層用ドープ303Bを調製した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
基層用ドープ303Bの組成
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
アセチル置換度2.87、重合度370のセルロースアセテート
100.0質量部
スクロースベンゾエート(ベンゾイル置換度5.5)
3.0質量部
シグマ−アルドリッチ社製スクロースアセテートイソブチレート
1.0質量部
上記のバルビツール酸誘導体(E) 6.0質量部
上記の紫外線吸収剤D 2.3質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 297.7質量部
メタノール(第2溶媒) 75.4質量部
n−ブタノール(第3溶媒) 3.8質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
(支持体側表層用ドープ304Bの調製)
エア層側表層用ドープ301Bにおいて作製した、マット剤溶液302Bの1.3質量部と、セルロースアシレート溶液301Bの99.3質量部とを、インラインミキサーを用いて混合し、支持体側表層用ドープ304Bを調製した。
(流延)
図8に示すドラム流延装置を用い、上記調製した基層用ドープ303B(図8中、120)と、その両側に表層用ドープ(エア側表層用ドープ301B(図8中、121)及び支持体側表層用ドープ304B(図8中、122))とを3層同時にステンレス製の流延支持体(支持体温度−9℃)85に流延口から均一に流延した。各層のドープ中の残留溶媒量が略70質量%の状態で剥ぎ取り、フィルムの幅方向の両端をピンテンターで固定し、残留溶媒量が3〜5質量%の状態で、横方向に1.28倍延伸しつつ乾燥した。その後、熱処理装置のロール間を搬送することにより、更に乾燥し、セルロースアシレートフィルムNo.301Bを得た。得られたセルロースアシレートフィルムNo.301Bの厚みは55μm(エア側表層(図8中の121a)3μm、基層(図8中の120a)49μm、支持体側表層(図8中の122a)3μm)、幅は1480mmであった。
<1−5:偏光板保護フィルムNo.301の作製>
(ヨウ素類拡散防止層(ポリマーB1層)の形成)
上述のセルロースアシレートフィルムNo.301Bのバンド面(フィルム製膜時にステンレス製の流延支持体に接していたセルロースアシレートフィルムNo.301Bの支持体側表層122aの表面)上に、上記ヨウ素類拡散防止層用塗布液Ba−2を、マイクログラビア塗布方式で、搬送速度30m/分の条件で塗布した。これを100℃で120秒乾燥し、厚み5μmのヨウ素類拡散防止層を形成した。
ここで、組成物Ba−2の調製にあたり、溶媒として、バンド層に含有されるセルロースアシレートのfd値と、下記ポリマーB1(ポリメチルメタクリレート)のfd値とに対して、それぞれ、fd値が上記関係式[1]及び上記関係式[2]を満たす酢酸プロピルを選択した。
なお、セルロースアシレートは実施例101で用いたものと同一であり、ポリマーB1は実施例101で用いたものと同種である。このときの、fdpolymerB1、並びに、関係式[1]及び関係式[2]の計算値を、表3に示す。
このようにして、図1に示す単層構造のヨウ素類拡散防止層12を備えた偏光板保護フィルムNo.301Bを得た。
<1−6:偏光板の作製>
(活性エネルギー線硬化型接着剤組成物2の調製)
各成分を下記に示す組成で混合して、活性エネルギー線硬化型接着剤組成物2を得た。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
活性エネルギー線硬化型接着剤組成物2の組成
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
下記構造のカチオン重合性化合物A 75.0質量部
下記構造のカチオン重合性化合物B 20.0質量部
下記構造のカチオン重合性化合物C 5.0質量部
光カチオン重合開始剤:
トリアリールスルホニウム ヘキサフルオロホスフェート 2.25質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
Figure 0006327289
(偏光子の作製)
平均重合度2400、ケン化度99.9モル%、厚さ60μmのポリビニルアルコールフィルムを、30℃の温水中に60秒間浸漬して膨潤させた。次いで、0.3質量%(質量比:ヨウ素/ヨウ化カリウム=0.5/8)の30℃のヨウ素溶液中で1分間染色しながら、3.5倍まで延伸した。その後、65℃の4質量%のホウ酸水溶液中に0.5分間浸漬しながら総合延伸倍率が6倍となるまで延伸した。延伸後、70℃のオーブンで3分間乾燥を行い、厚さ20μmの偏光子を得た。偏光子の水分率は13質量%であった。
(貼り合わせ)
ヨウ素類拡散防止層を備えた偏光板保護フィルム301Bのヨウ素類拡散防止層側の表面にコロナ処理を施した。コロナ処理を施したヨウ素類拡散防止層の表面に、上記で調製した活性エネルギー線硬化型接着剤組成物2を、バーコーターを用いて、塗布した。
更に、ヨウ素類拡散防止層を備えた偏光板保護フィルム301Aについても、ヨウ素類拡散防止層側の表面にコロナ処理を施した後、ヨウ素類拡散防止層の表面に、同様にして、上記で調製した活性エネルギー線硬化型接着剤組成物2を塗布した。
続いて、各フィルムの活性エネルギー線硬化型接着剤組成物を塗布した面を、偏光子の片側表面にそれぞれ貼り合わせた。このとき、偏光子の透過軸と偏光板保護フィルムNo.301Aの遅相軸が平行、及び偏光子の透過軸と301Bの遅相軸が垂直となるように、配置した。その後、貼り合わせたフィルム(偏光板護フィルム301A及び301B)の両面から、IRヒーターを用いて50℃に加温した。
次いで、ベルトコンベアー付き紫外線照射装置(紫外線ランプは、フージョンUVシステム社製の“Dバルブ”使用)を用いて、積算光量が250mJ/cmとなるように偏光板保護フィルムNo.301A側から紫外線を照射して、上記活性エネルギー線硬化型接着剤組成物をそれぞれ硬化させた。
その後、70℃で3分間熱風乾燥して、偏光板No.301を得た。
2.実施例302
実施例302では、以下のようにして、偏光子の一方の表面にヨウ素類拡散防止層を直接設けた偏光板保護フィルムNo.302(図1)、並びに、これを備えた偏光板をそれぞれ作製した。
<2−1:偏光板の作製>
(貼り合わせ)
ヨウ素類拡散防止層を備えた偏光板保護フィルム301Aのヨウ素類拡散防止層側の表面にコロナ処理を施した。コロナ処理を施したヨウ素類拡散防止層の表面に、上記で調製した活性エネルギー線硬化型接着剤組成物2を、バーコーダーを用いて、塗布した。
また、別途、上記で調製したセルロースアセテートフィルムNo.301Bのエア面(フィルム製膜時にステンレス製の流延支持体に接していた支持体側表層122aと反対側の面)についても、コロナ処理を施した後、コロナ処理を施した表面に、ヨウ素類拡散防止層を備えた偏光板保護フィルムNo.301Aと同様にして、上記で調製した活性エネルギー線硬化型接着剤組成物2を塗布した。
このようにして、活性エネルギー線硬化型接着剤組成物をそれぞれ塗布したヨウ素類拡散防止層を備えた偏光板保護フィルムNo.301A及びセルロースアセテートフィルムNo.301Bを作製した。
続いて、各フィルムの活性エネルギー線硬化型接着剤組成物を塗布した面を、偏光子の片側表面にそれぞれ貼り合わせた。このとき、偏光子の透過軸と偏光板保護フィルムNo.301Aの遅相軸が平行となるように、配置した。その後、貼り合わせたフィルム(偏光板護フィルムNo.301A及びセルロースアセテートフィルムNo.301B)の両面から、IRヒーターを用いて50℃に加温した。
次いで、ベルトコンベアー付き紫外線照射装置(紫外線ランプは、フージョンUVシステム社製の“Dバルブ”使用)を用いて、積算光量が250mJ/cmとなるように偏光板保護フィルムNo.301A側から紫外線を照射して、上記活性エネルギー線硬化型接着剤組成物をそれぞれ硬化させた。
その後、70℃で3分間熱風乾燥して、偏光板No.302を得た。
3.比較例401の作製
比較例401では、以下のようにして、偏光子の両表面にセルロースアセテートフィルムを直接設けた偏光板を作製した。
<3−1:偏光板の作製>
(偏光板保護フィルムの鹸化処理)
セルロースアシレートフィルムNo.301A及びセルロースアシレートフィルムNo.301Bを、それぞれ、2.3mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液に、55℃で3分間浸漬した。これを、室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.05mol/Lの硫酸を用いて中和した。再度、室温の水洗浴槽中で洗浄し、更に100℃の温風で乾燥した。このようにして、セルロースアシレートフィルムNo.301A及びセルロースアシレートフィルムNo.301Bの表面を鹸化処理した。
(貼り合わせ)
鹸化処理したセルロースアシレートフィルムNo.301Aのエア面(フィルム製膜時にステンレス製の流延支持体に接していた支持体側表層122aと反対側の面)を、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて偏光子の片側面に貼り付けた。更に、鹸化処理したセルロースアシレートフィルムNo.301Bのエア面(フィルム製膜時にステンレス製の流延支持体に接していた支持体側表層122aと反対側の面)を、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて偏光子の反対側の面に貼り付けた。
このようにして比較例401の偏光板No.401作製した。
4.偏光板保護フィルム及び偏光板の評価
上記で得られた各偏光板保護フィルムについて透湿度及び密着性を、また、各偏光板について偏光板耐久性を、上記実施例101の各評価方法と同様にして、評価した。その結果を表3に示す。
密着性については、偏光板保護フィルムNo.301A及び301Bともに、評価結果はAであった。
偏光板耐久性評価に用いたサンプルは下記のようにして作製した。
偏光板No.301、No.302及び比較例の偏光板No.401について、保護フィルムのセルロースアシレートフィルムNo.301Aの面を、粘着剤を介して、ガラス板の上に貼り付けて、サンプル(5cm×5cm)を作製した。上記構成は、ガラス界面側に配置したセルロースアシレートフィルムの面が、実際の液晶表示装置において液晶セル側に配置されることを想定したものである。
Figure 0006327289
表3の結果から、次のことが分かる。
すなわち、本発明の偏光板保護フィルムNo.301及び302は、ヨウ素類拡散防止層とセルロースアシレート層との間の層間密着性が優れていた。また、本発明の偏光板保護フィルムNo.301及び302は、偏光板に用いた場合に偏光度の低下を抑制できた。具体的には、液晶セル側に本発明の偏光板保護フィルム301Aを用いることを想定した、偏光板No.302は、偏光板No.401に対して偏光子耐久性が優れていた。更に、空気側の偏光板保護フィルムにも本発明の偏光板保護フィルムNo.301Bを用いることを想定した、偏光板No.301は偏光子耐久性がより優れていた。
[5.実施例501〜505]
実施例501〜505においては、偏光子の一方の表面に、2層構造のヨウ素類拡散防止層12を備えた偏光板保護フィルム10A(図1)、並びに、この偏光板保護フィルムを備えた偏光板をそれぞれ、作製して、その特性を評価した。
まず、偏光板保護フィルム10Aを作製した。
1.実施例501
<1−1:ヨウ素類拡散防止層の製膜>
(ヨウ素類拡散防止層形成用組成物Ba−5の調製)
各成分を下記に示す組成で混合し、孔径10μmのポリプロピレン製フィルターでろ過してヨウ素類拡散防止層形成用組成物Ba−5を調製した。
組成物Ba−5の調製にあたり、溶媒として、セルロースアシレートのfd値と、下記ポリマーB1(ポリメチルメタクリレート)のfd値とに対して、それぞれ、fd値が上記関係式[1]及び上記関係式[2]を満たす酢酸プロピルを選択した。
セルロースアシレートは実施例101で用いたものと同一であり、ポリマーB1は実施例101で用いたものと同種(PMMA)である。したがって、組成物Ba−5の調製にあたり、fdselluolse、fdsolvent及びfdpolymerB1、並びに、関係式[1]及び関係式[2]の計算値は、実施例101と同じであるので、省略する。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ヨウ素類拡散防止層形成用組成物Ba−5の組成
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ポリメチルメタクリレート:三菱レイヨン社製ダイヤナールBR83
16.0質量部
酢酸プロピル(溶媒) 84.0質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
(ヨウ素類拡散防止層形成用組成物Ba−6の調製)
各成分を下記に示す組成で混合し、孔径10μmのポリプロピレン製フィルターでろ過してヨウ素類拡散防止層形成用組成物Ba−6を調製した。
組成物Ba−6の調製にあたり、溶媒として、セルロースアシレートのfd値と、下記ポリマーB1(ポリメチルメタクリレート)のfd値とに対して、それぞれ、fd値が上記関係式[1]及び上記関係式[2]を満たす酢酸プロピルを選択した。
セルロースアシレートは実施例101で用いたものと同一であり、ポリマーB1は実施例101で用いたものと同種(PMMA)である。したがって、組成物Ba−6の調製にあたり、fdselluolse、fdsolvent及びfdpolymerB1、並びに、関係式[1]及び関係式[2]の計算値は、実施例101と同じであるので、省略する。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ヨウ素類拡散防止層形成用組成物Ba−6の組成
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ポリメチルメタクリレート:三菱レイヨン社製ダイヤナールBR83
14.5質量部
下記マット剤溶液7 3.6質量部
酢酸プロピル(溶媒) 81.9質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ヨウ素類拡散防止層形成用組成物Ba−6に用いた上記マット剤溶液7は、各成分を下記に示す組成で分散機に投入し、攪拌して溶解して調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
マット剤溶液7の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
平均粒子サイズ20nmのシリカ粒子(AEROSIL R972、
日本アエロジル社製) 2.0質量部
酢酸プロピル(溶媒) 97.8質量部
ポリメチルメタクリレート:三菱レイヨン社製ダイヤナールBR83
0.2質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
(ヨウ素類拡散防止層(ポリマーB1層)12の形成)
参考例101にて作製したセルロースアセテートフィルムNo.101のバンド面(製膜時にステンレス製の流延支持体85に接していたセルロースアシレートフィルムの支持体側表層122aの表面)上に、ヨウ素類拡散防止層用塗布液Ba−5を、スロットダイ方式で、搬送速度30m/分の条件で塗布した。これを100℃で60秒乾燥し、厚み2.5μmのポリマーB1層の第1層を形成した。次いで、第1層の上にヨウ素類拡散防止層用塗布液Ba−6をスロットダイ方式で塗布した。これを100℃で60秒乾燥し、厚み2.5μmの第2層を形成した。このようにして2層構造からなるポリマーB1層を形成した。
得られたヨウ素類拡散防止層を備えた偏光板保護フィルム10Cを、実施例501の偏光板保護フィルムNo.501とした。
2.実施例502
実施例501のヨウ素類拡散防止層形成用組成物Ba−6の調製において、三菱レイヨン社製ダイヤナールBR83を三菱レイヨン社製ダイヤナールBR80に変更したこと以外は、実施例501と同様にして、実施例502の偏光板保護フィルムNo.502を作製した。
3.実施例503
実施例501のヨウ素類拡散防止層形成用組成物Ba−6の調製において、三菱レイヨン社製ダイヤナールBR83を三菱レイヨン社製ダイヤナールBR80に、溶媒を酢酸メチルに変更したこと以外は、実施例501と同様にして、実施例503の偏光板保護フィルムNo.503を作製した。
上記溶媒の変更に際し、セルロースアシレートのfd値と、下記ポリマーB2(ポリメチルメタクリレート)のfd値とに対して、それぞれ、fd値が上記関係式[1]及び上記関係式[2]を満たさない酢酸メチルを、選定した(具体的な値は比較例207を参照)。
4.実施例504
実施例501のヨウ素類拡散防止層形成用組成物Ba−6の調製において、三菱レイヨン社製ダイヤナールBR83を三菱レイヨン社製ダイヤナールBR80に、溶媒を酢酸メチルにそれぞれ変更し、かつ、ヨウ素類拡散防止層の厚み(第1層の厚みを4μm及び第2層の厚みを1μm)に変更したこと以外は、実施例501と同様にして、実施例504の偏光板保護フィルムNo.504を作製した。
5.実施例505
実施例501のヨウ素類拡散防止層形成用組成物Ba−6の調製において、三菱レイヨン社製ダイヤナールBR83を三菱レイヨン社製ダイヤナールBR80に、溶媒を酢酸メチルにそれぞれ変更し、かつ、界面活性剤(ヨウ素類拡散防止層形成用組成物Ba−2で用いた上記フッ素系ポリマーF)を、表4に示す量でヨウ素類拡散防止層形成用組成物Ba−5及びヨウ素類拡散防止層形成用組成物Ba−6に含有させ、かつ、ヨウ素類拡散防止層の厚み(第1層の厚みを4μm及び第2層の厚みを1μm)を変更したこと以外は、実施例501と同様にして、実施例505の偏光板保護フィルムNo.505を作製した。
6.偏光板の作製
次に、得られた各偏光板保護フィルムを用いて、偏光板を作製した。
実施例101の偏光板の作製において、偏光板保護フィルム101に代えて偏光板保護フィルムNo.501〜505をそれぞれ用いたこと以外は、実施例101と同様にして、実施例501〜505の偏光板No.501〜505をそれぞれ作製した。
7.偏光板保護フィルム及び偏光板の評価
上記で得られた各偏光板保護フィルムについて透湿度及び密着性を、また、各偏光板について偏光板耐久性を、上記実施例101の各評価方法と同様にして、評価した。また、各偏光板保護フィルムについて表面平滑性を、更に各偏光板について打ち抜き特性を、下記のようにして、評価した。その結果を表4に示す。
<7−1:フィルム面状:表面平滑性>
ヨウ素類拡散防止層を備えた偏光板保護フィルムのヨウ素類拡散防止層側の面の中央部を、菱化システム社製バートスキャン2.0(型番:R5300H)を用いて、620μm×465μmの面積を640×480pixelsの解像度で任意の3箇所を観察し、高低差0.1μm以上の凹凸の有無により表面の平滑性を評価した。
ここで、凹凸の高低差は、上記表面の620μm×465μmの領域について、隣接する底部と高部との差として、求めた。
評価基準は、上記領域のすべてにおいて、高低差0.1μm以上の凹凸が1つも存在しなかった場合を「凹凸なし」とし、上記領域の1つに高低差0.1μm以上の凹凸が1つでも存在した場合を「凹凸あり」とした。
<7−2:偏光板打ち抜き適性>
偏光板No.501〜505を、それぞれ、80℃、相対湿度10%以下の環境下で24時間保管後、25℃、相対湿度10%の環境下で24時間調湿した。調湿後の偏光板から、刃角43°のトムソン刃を用いて40mm×40mmの正方形のサンプル1枚を、セルロースアシレート層側からヨウ素類拡散防止層に向かって、打ち抜いた。打ち抜いたサンプルについて、偏光板を構成する各層間の剥離の程度を以下の基準により評価した。
サンプルについて剥離部の奥行き(各辺の端縁から試料内側に向かう方向における剥離した部分の先端までの最短直線距離)の最大値が、
A:1.0mm未満
B:1.0mm以上1.5mm未満
C:1.5mm以上5.0mm以下
Figure 0006327289
表4の結果から、次のことが分かる。
すなわち、本発明の偏光板保護フィルムNo.501〜505は、いずれも、ヨウ素類拡散防止層とセルロースアシレート層との間の層間密着性が優れていた。また、本発明の偏光板保護フィルムNo.501〜505は、偏光板に用いた場合に、偏光子耐久性に優れ好ましいことが分かった。
更に、第2層に重量平均分子量95000のポリメチルメタクリレートを用いた実施例502〜505は、第2層に重量平均分子量40000のポリメチルメタクリレートを用いた実施例501に対して、偏光板打ち抜き適性に優れていた。特に、ポリマー層B1にフッ素系界面活性剤を含有する実施例505は、フッ素系界面活性剤を含有しない実施例504に対して、フィルム表面の平滑性が高く好ましものであった。
[6.実施例701〜704]
実施例701〜704においては、偏光子の一方の表面にヨウ素類拡散防止層を直接設けた偏光板保護フィルム(図1)、並びに、この偏光板保護フィルムを備えた偏光板をそれぞれ、作製して、その特性を評価した。
1.実施例701
<1−1:ヨウ素類拡散防止層形成用組成物Ba−8の調製>
各成分を下記に示す組成で混合し、孔径10μmのポリプロピレン製フィルターでろ過してヨウ素類拡散防止層形成用組成物Ba−8を調製した。
組成物Ba−8の調製にあたり、溶媒として、セルロースアシレートのfd値と、下記ポリマーB1(ポリメチルメタクリレート)のfd値とに対して、それぞれ、fd値が上記関係式[1]及び上記関係式[2]を満たす酢酸プロピルを選択した。
セルロースアシレートは実施例101で用いたものと同一であり、ポリマーB1は実施例101で用いたものと同種(PMMA)である。したがって、組成物Ba−8の調製にあたり、fdselluolse、fdsolvent及びfdpolymerB1、並びに、関係式[1]及び関係式[2]の計算値は、実施例101と同じであるので、省略する。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ヨウ素類拡散防止層形成用組成物Ba−8の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
ポリメチルメタクリレート:三菱レイヨン社製ダイヤナールBR80
8.0質量部
上記構造のフッ素系ポリマーF 0.004質量部
酢酸プロピル(溶媒) 92.0質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
<1−2:マット剤溶液9の調製>
各成分を下記に示す組成で分散機に投入し、攪拌して溶解し、マット剤溶液9を調製した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
マット剤溶液9の組成
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
平均粒子サイズ20nmのシリカ粒子(AEROSIL NX90S、
日本アエロジル製) 2.0質量部
セルロースアセテートプロピネート:イーストマンケミカル社製
CAP−482−20 4.0質量部
酢酸プロピル(溶媒) 96.0質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
<1−3:偏光子側易接着層形成用組成物Ba−10の調製>
各成分を下記に示す組成で混合し、孔径10μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して易接着層形成用組成物Ba−10を調製した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
易接着層形成用組成物Ba−10の組成
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースアセテートプロピネート:イーストマンケミカル社製
CAP−482−20 7.8質量部
上記マット剤溶液9 3.6質量部
酢酸プロピル(溶媒) 88.6質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
イーストマンケミカル社製CAP−482−20は、アセチル置換度0.18、プロピオニル置換度2.47のセルロースアセテートプロピオネートである。
<1−4:ヨウ素類拡散防止層及び偏光子側易接着層の形成>
参考例101にて作製したセルロースアセテートフィルムNo.101のバンド面(製膜時にステンレス製の流延支持体85に接していたセルロースアシレートフィルムの支持体側表層122aの表面)上に、ヨウ素類拡散防止層用塗布液Ba−8を、スロットダイ方式で、搬送速度30m/分の条件で塗布した。これを100℃で60秒乾燥し、厚み4.5μmのポリマーB1層12を形成した。こうして、図1に示す偏光板保護フィルム10Aを作製した。
次いで、ポリマーB1層12の上に易接着層用塗布液Ba−10をスロットダイ方式で塗布した。これを100℃で60秒乾燥し、厚み0.5μmの偏光子側易接着層を形成した。
得られた偏光子側易接着層付き偏光板保護フィルムを、実施例701の偏光板保護フィルムNo.701とした。
<1−5:偏光板の作製>
比較例401の偏光板の作製において、偏光板保護フィルムNo.301B(空気界面側偏光板保護フィルム)の代わりに偏光板保護フィルムNo.701を用い、偏光子易接着層が偏光子に接し、セルロースアシレートフィルムの遅相軸が偏光子の透過軸と垂直になるように変更したこと以外は、比較例401と同様にして、本発明の偏光板No.701を作製した。
2.実施例702
実施例701において、易接着層形成用組成物Ba−10に添加したCAP−482−20をイーストマンケミカル社製CAB−171−15に変更したこと以外は、実施例701と同様にして、実施例702の偏光板保護フィルムNo.702、及び、偏光板No.702をそれぞれ作製した。
イーストマンケミカル社製CAB−171−15は、アセチル置換度2.0、ブチリル置換度0.7のセルロースアセテートブチレートである。
3.実施例703
実施例702において、易接着層形成用組成物Ba−10に上記構造のフッ素系界面活性剤(上記フッ素系ポリマーF)を表5に示す添加量で添加したこと以外は、実施例702と同様にして、実施例703の偏光板保護フィルムNo.703、及び、偏光板No.703をそれぞれ作製した。
4.実施例704
実施例701において、易接着層形成用組成物Ba−10を塗布しなかったこと以外は、実施例701と同様にして、実施例704の偏光板保護フィルムNo.704、及び、偏光板No.704をそれぞれ作製した。
5.偏光板の評価
上記で得られた各偏光板について偏光板耐久性を、上記実施例101の各評価方法と同様にして、評価した。また、各偏光板について剥離力を、下記のようにして、評価した。その結果を表5に示す。
<5−1:偏光板の剥離強度>
偏光板No.701〜704それぞれを、その偏光板保護フィルムNo.701〜704側で、接着剤を介してガラス基板上に貼り付けて、試験体を作製した。この試験体について、テンシロン万能材料試験機(型番:RTC−1210A、オリエンテック社製)を用いて、剥離角度90°、剥離速度300m/分の条件にて、貼り付けられた偏光板中の偏光子を、偏光板保護フィルムから剥離したときの剥離強度(N/25mm)を測定した。
Figure 0006327289
表5の結果から、本発明の偏光板保護フィルムNo.701〜704を備えた、本発明の偏光板は耐久性に優れることが分かった。更に、ポリマー層12の上に偏光子側易接着層を設けた実施例701〜703は偏光子側易接着層を設けていない実施例704に対して偏光板を構成する層間の密着性が高く好ましいことが示された。
偏光板保護フィルムNo.701〜704は、いずれも、ヨウ素類拡散防止層とセルロースアシレート層との間の層間密着性が高く、また上記範囲の透湿度を有していた。
10A〜10D 偏光板保護フィルム
11 セルロースエステル層
12 ポリマーB1層
13 ポリマーB2層
15A及び15B 偏光板
16 偏光子
17 シクロオレフィンフィルム
20 液晶表示装置
21 第1(上側)偏光板
22 第1偏光板吸収軸の方向
23 第1(液晶セル上)電極基板
24 液晶層
25 第2(液晶セル下)電極基板
26 第2(下側)偏光板
27 第2偏光板吸収軸の方向
70 流延膜
85 流延支持体(バンド)
89 流延ダイ
120 基層用ドープ
121 エア側表層用ドープ
122 支持体側表層用ドープ
120a 基層(コア層)
121a エア側表層(第一のスキン層)
122a 支持体側表層(第二のスキン層)

Claims (11)

  1. セルロースエステルを含有するセルロースエステル層と、前記セルロースエステル層の少なくとも一方の表面に隣接する、ポリマーB1を含有するポリマーB1層とを有し、
    前記ポリマーB1が、下記〔a〕の繰り返し単位を含み、
    前記ポリマーB1層が、前記セルロースエステル層の前記表面上に、前記ポリマーB1と、下記式Iで規定されるfdが下記関係式[1]及び[2]を満たす溶媒とを含有する組成物を適用してなり、
    85℃、相対湿度85%の条件下、6時間での透湿度が100g/m以上1600g/m以下である偏光板保護フィルム。
    〔a〕:Hoy法により算出される溶解度パラメータδtが13.5以上20.0未満である繰り返し単位
    関係式[1] |fdsolvent−fdcellulose|≦0.050
    関係式[2] |fdsolvent−fdpolymerB1|≦0.050
    関係式[1]及び[2]中、fdsolventは溶媒のfd値を表し、fdcelluloseはセルロースエステルのfd値を表し、fdpolymerB1はポリマーB1のfd値を表す。
    ここで、fd値は下記式Iで規定される。
    式I fd=δd/(δd+δp+δh)
    式Iにおいて、δd、δp及びδhは、それぞれ、Hoy法により算出される溶解度パラメータδtに対する、London分散力に対応する項、双極子間力に対応する項、及び、水素結合力に対応する項を示し、fdはδdとδpとδhの和に対するδdの比率を示す。
  2. 前記ポリマーB1が、下記〔b〕の繰り返し単位を含む、請求項1に記載の偏光板保護フィルム。
    〔b〕:Hoy法により算出される溶解度パラメータδtが20.0以上26.0以下である繰り返し単位
  3. 前記ポリマーB1層の、前記セルロースエステル層と反対側の表面に隣接する、ポリマーB2を含有するポリマーB2層を有し、
    前記ポリマーB2が、下記〔a〕の繰り返し単位を含み、かつ〔b〕の繰り返し単位を含まない、請求項2に記載の偏光板保護フィルム。
    〔a〕:Hoy法により算出される溶解度パラメータδtが13.5以上20.0未満である繰り返し単位
    〔b〕:Hoy法により算出される溶解度パラメータδtが20.0以上26.0以下である繰り返し単位
  4. 前記ポリマーB1層が、前記セルロースエステル層の前記表面上に、前記組成物を塗布してなる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の偏光板保護フィルム。
  5. セルロースエステルを含有するセルロースエステル層の少なくとも一方の表面上に、前記ポリマーB1と、下記式Iで規定されるfdが下記関係式[1]及び関係式[2]を満たす溶媒とを含有する組成物を適用する工程を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の偏光板保護フィルムの製造方法。
    関係式[1] |fdsolvent−fdcellulose|≦0.050
    関係式[2] |fdsolvent−fdpolymerB1|≦0.050
    関係式[1]及び[2]中、fdsolventは溶媒のfd値を表し、fdcelluloseはセルロースエステルのfd値を表し、fdpolymerB1はポリマーB1のfd値を表す。
    ここで、fd値は下記式Iで規定される。
    式I fd=δd/(δd+δp+δh)
    式Iにおいて、δd、δp及びδhは、それぞれ、Hoy法により算出される溶解度パラメータδtに対する、London分散力に対応する項、双極子間力に対応する項、及び、水素結合力に対応する項を示し、fdはδdとδpとδhの和に対するδdの比率を示す。
  6. 偏光子と、前記偏光子の少なくとも一方の表面に設けられた、請求項1又は2に記載の偏光板保護フィルムとを有する偏光板。
  7. 前記偏光板保護フィルムの前記ポリマーB1層が前記偏光子の表面側に配置されている請求項6に記載の偏光板。
  8. 偏光子と、前記偏光子の少なくとも一方の表面に設けられた、請求項3に記載の偏光板保護フィルムとを有する偏光板。
  9. 前記偏光板保護フィルムの前記ポリマーB2層が前記偏光子の表面側に配置されている請求項8に記載の偏光板。
  10. 前記偏光子の一方の表面に前記偏光板保護フィルムが設けられている場合、前記偏光子の、前記偏光板保護フィルムと反対側の表面に、シクロオレフィンポリマーを含有するシクロオレフィンフィルムを有する請求項6〜9のいずれか1項に記載の偏光板。
  11. 請求項6〜10のいずれか1項に記載の偏光板を有する画像表示装置。
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