JP6327096B2 - 衛生紙用柔軟剤 - Google Patents

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本発明は衛生紙用柔軟剤に関し、詳細には、衛生紙の柔らかさおよびフィット感を向上させ、衛生紙で肌を擦った際の肌への負担を軽減させることができる衛生紙用柔軟剤に関する。
衛生紙は、ティシュペーパーやトイレットペーパー、ペーパータオルなど日常において顔や手など人の肌に触れる目的にて使用されることが多く、良好な肌触りが求められている。中でもティシュペーパーやトイレットペーパーは、その用途により顔や臀部などの繊細な部位に対して使用されることが多く、特に肌を擦るような使用の場合、擦った時の肌への負担の軽減が求められる。紙で擦った際の肌への負担を軽減する方法としては、紙を柔らかくして肌にフィットさせ、さらに擦った際の肌への刺激を少なくする方法が挙げられる。
これまでも衛生紙の肌触りを向上させることは検討されており、例えば特許文献1には保湿性、柔軟性、肌触りに優れる紙や不織布の製造方法として、グリセリンとショ糖脂肪酸エステルを含む混合物を紙や不織布に塗布することが開示されている。この方法では混合状態の均一化と吸水性の低下抑制を目的にショ糖脂肪酸エステルが用いられており(段落〔0019〕)、この効果を得るのに必要な量のショ糖脂肪酸エステルを混合すると、保湿性は充分であっても、しっとり感が不足することがある。
特許文献2には、脂肪酸エステル、PEG脂肪酸エステル、ポリアルキレングリコール二塩基酸エステル及びショ糖エステルから選ばれたエステル類を含む混合物を水解性シートに塗布することで、「しっとり」感を付与して肌触りを向上させることが開示されている。この方法では混合物に肌温度で溶融する化合物を含ませることで肌と接した際に混合物の一部が溶融し「しっとり」感が得られ、混合物の一部は肌と触れても溶融しないものを含むため「べたつき」感が抑制される(段落〔0019〕)。しかし、成分の一部は肌と接しても溶融しない化合物であり、紙表面に溶融しない化合物が残ってしまい、塗布された紙の柔らかさが不足することがある。
特許文献3には、高級アルコール、ショ糖脂肪酸エステル、鉱物油などの配合物が塗布されたティッシュ・ペーパーが開示されている。この方法は、特に滑らかさを向上させることに重点をおいたものであり、この方法でも融点の高い化合物を用いて高粘度の配合物とし、紙の滑らかさを向上させている。しかし、この方法でも、肌と接しても溶融しない化合物が用いられており、紙の柔らかさについてはやや不足してしまう。
このように、紙をしっとり感じさせることや滑らかさを向上させることは、紙の肌触りを良くするには必要であるが、肌を擦った時の肌への負担を軽減させるには、紙が柔らかく肌へフィットさせることと、擦った際の肌への刺激を低減することの両立が必要である。
特開平5−156596号公報 特開2005−290618号公報 特表2007−534386号公報
本発明は、衛生紙の柔らかさおよびフィット感を向上させ、衛生紙で肌を擦った際の肌への負担を軽減させることができる衛生紙用柔軟剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討した結果、(A)グリセリン、(B)水、および(C)特定のショ糖脂肪酸エステルを所定量で含有する組成物を衛生紙に含ませることによって、衛生紙の柔らかさおよびフィット感を向上させると共に、衛生紙で肌を擦った際の肌への負担を軽減させることができることを見出した。
すなわち、本発明は、(A)グリセリン、(B)水、および(C)ショ糖脂肪酸エステルを含有する衛生紙用柔軟剤であって、(C)成分中に含まれるアシル基の炭素数が8〜18であり、炭素数12および14の各アシル基を少なくとも含み、アシル基全体の質量を100質量部としたとき、炭素数12および14の両アシル基の合計が75〜95質量部であり、炭素数12のアシル基/炭素数14のアシル基の質量比が70/30〜90/10であり、(A)成分、(B)成分、および(C)成分の合計含有量を100質量部としたとき、(A)成分の含有量が70〜94.5質量部、(B)成分の含有量が5〜25質量部、(C)成分の含有量が0.5〜5質量部である衛生紙用柔軟剤に関する。
また、本発明の衛生紙用柔軟剤は、さらに、(D)成分として炭素数8〜14のアルキル鎖を有するアルキルポリグルコシドを含有していても良く、その場合、(A)成分、(B)成分、および(C)成分の合計含有量を100質量部としたとき、(D)成分の含有量が0.2〜2質量部であることが好ましい。
本発明の衛生紙用柔軟剤によれば、衛生紙の柔らかさおよびフィット感を向上させ、衛生紙で肌を擦った際の肌への負担を軽減させることができる。
以下、本発明の実施形態を説明する。本発明の衛生紙用柔軟剤は、(A)グリセリン、(B)水、および(C)ショ糖脂肪酸エステルを含有する。
(A)成分のグリセリンとしては、化粧品、医薬品等の原料として使用されているグリセリンが好適に使用される。
(B)成分の水はイオン交換水、精製水が好適に使用される。
(C)成分であるショ糖脂肪酸エステル中に含まれるアシル基の炭素数は8〜18である。炭素数8〜18のアシル基としては、具体的に脂肪酸名で表記すると、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の脂肪酸が挙げられる。
アシル基中には炭素数12および14の各アシル基を少なくとも含み、アシル基全体の質量を100質量部としたとき、炭素数12および14の両アシル基の合計が75〜95質量部であり、好ましくは80〜90質量部である。
また、炭素数12のアシル基の質量/炭素数14のアシル基の質量比が70/30〜90/10であり、好ましくは80/20〜88/12である。
炭素数12および14の各アシル基の質量を上記のとおりに規定することにより、衛生紙に塗布した場合、衛生紙のフィット感が向上し、肌への負担を良好に軽減することができる。
アシル基の組成は、ショ糖脂肪酸エステルを加水分解して得られた脂肪酸をメチルエステル化した後、ガスクロマトグラフィーにて分析することができる。具体的には、ショ糖脂肪酸エステルを数g量り取り、水と1/2NのNaOHを加えて湯浴中で1時間加熱する。冷却後、10質量%のHClを加えて酸性とし、エーテルで3回抽出した後に水洗し、エーテル層を乾燥させて脂肪酸を得る。得られた脂肪酸は、基準油脂分析試験法(日本油化学会制定)2.4.1脂肪酸誘導体化法、2.4.1.2メチルエステル化法(三フッ化ホウ素−メタノール法)に従ってメチルエステル化し、2.4.2脂肪酸組成、2.4.2.2脂肪酸組成(FID昇温ガスクロマトグラフ法)を基にガスクロマトグラフィーにて測定することができる。
また、水酸基価の測定やゲル浸透クロマトグラフィーによる分析によって、ショ糖に結合している脂肪酸の数を求めることができ、ショ糖脂肪酸エステルのエステル化度を算出することができる。(C)成分であるショ糖脂肪酸エステルにおけるエステル化度は1〜2であることが、衛生紙の柔らかさを向上させる上で好ましい。より好ましいエステル化度は1〜1.6である。さらに好ましくは1.2〜1.4である。
(C)成分としては、単一組成のアシル基を有するショ糖脂肪酸エステルを数種組み合わせて本発明で規定するアシル基の組成に調整しても良いし、本発明で規定するアシル基の組成に調整された混合組成の脂肪酸を用いて合成したショ糖脂肪酸エステルを使用しても良い。
本発明の衛生紙用柔軟剤における(A)成分の含有量は、(A)成分、(B)成分、および(C)成分の合計含有量を100質量部としたとき、70〜94.5質量部であり、好ましくは75〜90質量部である。(A)成分の含有量が70質量部未満の場合は、衛生紙の柔らかさが低下することがあり、94.5質量部を超える場合は、肌を擦った時の肌への負担が軽減できないことがある。
また、本発明の衛生紙用柔軟剤における(B)成分の含有量は、(A)成分、(B)成分、および(C)成分の合計含有量を100質量部としたとき、5〜25質量部であり、好ましくは10〜20質量部である。(B)成分の含有量が5質量部未満の場合は、柔軟剤の浸透性が低下し柔らかさが低下することがある。25質量部を超える場合は、塗工時に紙切れが生じるなど加工性が低下することがある。
また、本発明の衛生紙用柔軟剤における(C)成分の含有量は、(A)成分、(B)成分、および(C)成分の合計含有量を100質量部としたとき、0.5〜5質量部である。衛生紙の柔らかさおよび肌への負担軽減の点から、1〜3質量部であることが好ましい。(C)成分の含有量が0.5質量部未満の場合や5質量部を超える場合は、衛生紙の柔らかさが低下することがある。
本発明の衛生紙用柔軟剤は、上記(A)成分、(B)成分、および(C)成分に加え、さらに、(D)成分としてアルキルポリグルコシドをさらに含有していても良い。
(D)成分のアルキルポリグルコシドは、例えば、グルコースと高級アルコールとの反応により得られ、反応生成物である複数種類のアルキルポリグルコシドや還元性化合物を含有する組成物である。
本発明で用いられるアルキルポリグルコシドは、アルキル鎖の炭素数が8〜14であり、好ましくは9〜14、さらに好ましくは10〜12である。アルキル鎖の炭素数が8未満の場合は、肌への負担抑制に寄与しないことがある。アルキル鎖の炭素数が14を超える場合は、柔軟剤の浸透性が低下してフィット感の向上に寄与しないことがある。アルキル鎖は直鎖でも分岐でも良い。
本発明で用いられるアルキルポリグルコシドは、グルコースの平均重合度が1.0〜2.0であり、好ましくは1.0〜1.5、より好ましくは1.0〜1.3である。平均重合度が2.0を超えると、肌への負担抑制に寄与しないことがある。
なお、グルコースの平均重合度は、例えば、フェノール−硫酸法により測定することができる。
本発明の衛生紙用柔軟剤が(D)成分を含有する場合、(D)成分の含有量は、(A)成分、(B)成分、および(C)成分の合計含有量を100質量部としたとき、0.2〜2質量部であり、好ましくは0.3〜1質量部である。(D)成分を上記の範囲で含有することにより、衛生紙のフィット感がさらに向上し、肌への負担をさらに良好に軽減することができる。
本発明の衛生紙用柔軟剤は、ミリスチン酸イソプロピルやパルミチン酸エチルヘキシルなどのエステル油(但し(C)成分を除く。)、高級アルコール、オリーブ油や大豆油などの油脂類、メチルポリシロキサンやその誘導体などのシリコーン油といった油性成分;アルキルリン酸エステル、アルキル硫酸エステル、アルキルスルホコハク酸塩などの陰イオン界面活性剤、四級アンモニウム塩やアルキルアミン塩などのカチオン性界面活性剤、アルキルベタインなどの両性界面活性剤、ソルビタン脂肪酸エステルやアルキルアルカノールアミドなどの非イオン性界面活性剤といった界面活性剤;ジグリセリン、プロピレングリコール、1, 3−ブチレングリコール、ソルビトールなどの多価アルコール、およびそれらのオキシアルキレン基付加物;ポリエチレングリコールなどの保湿剤;セルロース誘導体、デンプン誘導体、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、キサンタンガム、ゲランガム、グアーガム、カードラン、水溶性コラーゲンなどの水溶性高分子;安息香酸、フェノキシエタノール、塩化ベンザルコニウム、メチルイソチアゾリノン、ブチルカルバミン酸ヨウ化イソプロピルといった防腐剤などを他の成分としてさらに含有してもよい。
本発明の衛生紙用柔軟剤を含ませる衛生紙としては、ティシュペーパー、トイレットペーパー、キッチンペーパー等が挙げられる。衛生紙用柔軟剤を含ませる方法としては、塗布、含浸、流延などが挙げられる。例えば、本発明の衛生紙用柔軟剤をコーターまたは印刷機による塗布法、スプレー塗布法、浸漬法等により衛生紙に含ませることができる。これらの方法の中でも、グラビア印刷やフレキソ印刷等の印刷方式による塗布法が衛生紙への柔軟剤の付着のムラが少なくなる面で好ましい。
さらに、本発明の衛生紙用柔軟剤を衛生紙に含ませる工程において、衛生紙用柔軟剤を加温するなどして粘度を50〜300mPa・sec、好ましくは60〜150mPa・secに調整することにより、衛生紙への付着のムラを低減することができる。
なお、上記の粘度は、40℃における粘度であり、B型粘度計にて測定することができる。
本発明の衛生紙用柔軟剤は、充分な効果を発揮するために、衛生紙100質量部に対して、5〜25質量部を含ませることが好ましい。
以下、本発明を実施例および比較例により具体的に説明する。
〔衛生紙用柔軟剤の調製例〕
(A)成分のグリセリンを89質量部、(B)成分の水を10質量部、(C)成分としてガスクロマトグラフィー(GC)にて以下の条件でアシル基を分析したショ糖脂肪酸エステルを1質量部混合して組成物1(実施例1)を得た。
なお、(C)成分のエステル化度をゲル浸透クロマトグラフィー分析により算出し、表1に示す。
(GC測定条件)
GC:島津製作所製 GC−2014
カラム:100%ジメチルポリシロキサン
注入口温度:330℃
検出器温度:330℃
キャリアガス:He
検出器:FID
注入器:1μL
また、実施例1と同様に、表1に示すとおり、各成分を所定の割合で混合し、組成物2〜組成物10(実施例2〜5、比較例1〜5)を調製した。
〔衛生紙用柔軟剤塗布ティシュペーパーの調製例〕
調製した衛生紙用柔軟剤を40℃に加温して動粘度を70〜100mPa・secに調整し、ティシュペーパーに柔軟剤を印刷方式にて転写塗布した。塗布前後のティシュペーパーの重量差から、塗布前のティシュペーパー100質量部に対する塗布量を算出し、18〜22質量部となるように塗布した。
衛生紙用柔軟剤を塗布したティシュペーパーについて下記の評価を行なった。
〔柔らかさの評価〕
調製したティシュペーパーを温度23℃、湿度50%RHの恒温恒湿環境に2日間保管した後に、2枚1組としてJAPAN TAPPI No.34 に準拠した方法にて柔軟度(mN/100mm)の評価を行なった。
26mN/100mm未満:○(良好)
26mN/100mm以上:×(不良)
〔フィット感の評価〕
パネラー15人により、調製したティシュペーパーについて肌に密着するようなフィット感の官能評価を行なった。調製したティシュペーパーを湿度50%RH、温度23℃環境にて2日間保管後に評価した。標準サンプルと比較して、よりフィットすると感じた場合は「○」(良好)、標準サンプルよりもフィットしないと感じた場合は「×」(不良)とし、パネラー15人の評価のうち5割以上を占めた評価を評価結果とした。15人全員が「○」(良好)の評価をつけた場合は特に「◎」(非常に良好)と評価した。
標準サンプル:グリセリンを水にて1.1倍に希釈したものを塗布前(原紙)のティシュペーパー100質量部に対し10質量部塗布したもの。
〔肌への負担の評価〕
調製したティシュペーパーを温度23℃、湿度50%RHの恒温恒湿環境にて2日間保管した後、荷重を25 g(低荷重)、75 g(高荷重)とした際のティシュペーパーの平均摩擦係数(MIU)について摩擦感テスター(カトーテック株式会社製、KES−SE)を用いて測定した。肌を強く擦るときを想定したものが高荷重時であり、高荷重時のMIUが小さいほど、力を入れて拭くときの肌への負担が小さいと言える。
高荷重時のMIU 0. 37未満:◎
高荷重時のMIU 0. 37以上0. 4以下:○
高荷重時のMIU 0. 4超:×
Figure 0006327096
実施例1〜5の衛生紙用柔軟剤である組成物1〜5が塗布されたティシュペーパーはいずれも、柔らかさ、フィット感、肌への負担軽減で優れた評価が得られた。
一方、比較例1、および2は、(C)成分のショ糖脂肪酸エステルが1種類であるので、フィット感と肌への負担が不十分であった。
比較例3は、(C)成分としてショ糖脂肪酸エステルが含まれておらず、代わりに他のエステル油が含まれているので、柔らかさ、フィット感、肌への負担軽減のいずれも不良であった。
比較例4は、(A)成分、および(B)成分の各含有量が本発明規定の範囲から外れているので、柔らかさが不十分である。
比較例5は、(C)成分量が本発明規定の範囲から外れているので、柔らかさが不足しており、肌への負担軽減が不十分であった。

Claims (2)

  1. (A)グリセリン、(B)水、および(C)ショ糖脂肪酸エステルを含有する衛生紙用柔軟剤であって、
    (C)成分中に含まれるアシル基の炭素数が8〜18であり、炭素数12および14の各アシル基を少なくとも含み、アシル基全体の質量を100質量部としたとき、炭素数12および14の両アシル基の合計が75〜95質量部であり、炭素数12のアシル基/炭素数14のアシル基の質量比が70/30〜90/10であり、
    (A)成分、(B)成分、および(C)成分の合計含有量を100質量部としたとき、(A)成分の含有量が70〜94.5質量部、(B)成分の含有量が5〜25質量部、(C)成分の含有量が0.5〜5質量部である衛生紙用柔軟剤。
  2. さらに、(D)成分として炭素数8〜14のアルキル鎖を有するアルキルポリグルコシドを含有し、(A)成分、(B)成分、および(C)成分の合計含有量を100質量部としたとき、(D)成分の含有量が0.2〜2質量部である請求項1に記載の衛生紙用柔軟剤。
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