以下、本発明に係るエレベータ用調速装置の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、エレベータ10において、本例では、昇降路の最上部に巻上機12が設置されている。巻上機12の主シーブ14には、主ロープ16が掛けられている。主ロープ16の一端部にはかご18が、他端部にはカウンタウエイト20が連結されている。
また、主ロープ16と平行して、無端状のガバナロープ22が、エレベータ用調速装置24(以下、単に「調速装置24」と言う。)のガバナシーブ26とテンションシーブ28とで張架されている。ガバナロープ22の中間部には、かご18に付設された公知の非常止め装置(不図示)を作動させるための非常止めレバー30が固定されている。
上記の構成を有するエレベータ10において、不図示の制御装置によって回転制御される不図示の電動機からの回転動力が不図示の動力伝達機構を介し、巻上機12の主シーブ14に伝達されて、主シーブ14が回転駆動されると、主シーブ14に掛けられた主ロープ16に連結されているかご18が、不図示のガイドレールに案内されて、昇降路内を昇降する。これに伴い、非常止めレバー30が固定されているガバナロープ22が走行し、ガバナシーブ26はかご18の昇降速度と同じ速度(周速)で回転される。この場合、ガバナシーブ26は、かご18が上昇すると、第1の向きである矢印Uの向きに回転され、かご18が下降すると第2の向きである矢印Dの向きに回転される。
エレベータ10は、かご18の上昇運転における定格速度(以下、「上昇定格速度」と言う。)よりも、下降運転における定格速度(以下、「下降定格速度」と言う。)の方が遅く設定されている。例えば、上昇定格速度は1000m/minであり、下降定格速度は600m/minである。
調速装置24は、かご18の昇降速度と同期するガバナシーブ26の回転速度を検知し、かご18の上昇中において、上昇定格速度よりも大きい所定の速度に対応する回転速度(以下、「上昇過速度」と言う。)を検知すると、前記制御装置に対し、前記電動機の停止信号を送る。
また、調速装置24は、かご18の下降中において、下降定格速度よりも大きい所定の速度に対応する、ガバナシーブ26の回転速度(以下、「第1下降過速度」と言う。)を検知すると、前記制御装置に対し、前記電動機の停止信号を送る。
かご18の上昇中または下降中に上記停止信号を受けると、かご18の走行を停止させるため、前記制御装置は、電動機の駆動を停止する。
さらに、調速装置24は、かご18の下降中において、ガバナシーブ26の回転速度が、第1下降過速度よりも大きい所定の回転速度(以下、「第2下降過速度」と言う。)に達すると、後述する把持機構102(図2、図3)によりガバナロープ22を把持して、ガバナロープ22の走行を停止させる。これにより、非常止めレバー30が引き上げられて、前記非常止め装置(不図示)が作動し、かご18が安全に停止される。第2下降過速度は、日本では、通常、下降定格速度の1.4倍を越えない範囲の大きさに対応する、ガバナシーブ26の回転速度に設定される。
ここで、本例において、過速度の各々は、大きい方から、上昇過速度、第2下降過速度、第1下降過速度の順になっている(上昇過速度>第2下降過速度>第1下降過速度)。
上記の機能を発揮する調速装置24の詳細について、図2〜図9を適宜参照しながら説明する。
図3に示すように、調速装置24は、台座32を有し、台座32上に第1調速機34と第2調速機36が設けられている。第1調速機34と第2調速機36は、前述のガバナシーブ26を共有する。ガバナシーブ26は、金属円板の外周に、ガバナロープ22が掛けられる断面がU字状をしたシーブ溝26Aが形成されてなるものである。なお、図3において、ガバナシーブ26に掛けられたガバナロープ22(図1、図2)の図示は省略している。
ガバナシーブ26は、主として台座32に立設された支柱38に、回転自在に支持されている。当該支持の構造について、図4(a)を参照しながら説明する。
ガバナシーブ26は、第1の回転軸である中空シャフト40と一体的に形成されている。なお、ガバナシーブと中空シャフトとは、別体として作製し、ガバナシーブの中心に孔を開設し、当該孔と中空シャフトとをしまりばめの関係ではめ合わせて、両者を一体としても構わない。また、一体とすることに限らず、ガバナシーブの回転が中空シャフトに伝達されれば構わないため、例えば、キーを用いて両者を結合しても構わない。
支柱38には、水平方向に貫通孔42が開設されており、貫通孔42に2個のころがり軸受44,46が挿入されている。そして、ころがり軸受44,46を介して、中空シャフト40が支柱38に軸支されている。
上記の構成により、ガバナロープ22(図1、図2)が走行して、ガバナシーブ26が回転されると、これに伴って中空シャフト40がガバナシーブ26と同じ回転速度で回転する。
第1調速機34(図3)は、ディスク形の調速機であって、ガバナシーブ26の、支柱38側の主面26B(以下、「第1主面26B」と言う。)に取り付けられた、上昇過速度を検出するための第1検出機構47を有する。
図5に示すように、第1検出機構47は、一対の振子48,50を有している。振子48,50の各々は、リンク52,54の一端にそれぞれ接合されており、リンク52,54の各々は、長手方向における中央部が、ピン56,58によってガバナシーブ26に回転自在に取り付けられている。リンク52の他端部とリンク54の一端部とは、リンク60によって連結されている。
リンク54の他端部は、ブラケット62およびピン64を介して、ロッド66の一端部に、相対的に回転自在に連結されている。
ロッド66は、雄ねじが形成された雄ねじ部66Aと円形断面のストレート部66Bとを有する。
衝立状をした第1ばね座部材68が第1主面26Bに立設されており、ストレート部66Bの先端部が、図6に示すように、第1ばね座部材68に開設された貫通孔68Aに遊挿されている。第1ばね座部材68から突出したストレート部66B部分には、E形止め輪70が嵌め込まれている。E形止め輪70は、第1ばね座部材68から、ストレート部66Bが雄ねじ部66A側へ抜けるのを防止するストッパとして機能する。
雄ねじ部66Aには、2個のナット72,74が螺合している。雄ねじ部66Aには、また、貫通孔を有する皿状をした第2ばね座部材76が嵌め込まれている。
第1ばね座部材68と第2ばね座部材76の間のロッド66部分には、圧縮コイルばね78が圧縮された状態で外挿されている。ガバナシーブ26の非回転中における圧縮コイルばね78の長さ(以下、「基本長さ」と言う。)は、ナット72の締め込み加減で調整される。すなわち、ナット72を締め込むと短くなり、緩めると長くなる。これにより、基本長さにおいて、第1ばね座部材68と第2ばね座部材76の間に作用する圧縮コイルばね78の復元力(付勢力)を調整することができる。ナット74は、調整後におけるナット72の緩み止めとして機能する。
上記の構成からなる第1調速機34において、かご18(図1)が上昇して、ガバナシーブ26が、図5の矢印Uの向きに回転すると、これに伴い、振子48,50は、ガバナシーブ26の回転中心(中空シャフト40の軸心)を中心に公転する。公転する振子48,50は、遠心力により、圧縮コイルばね78の付勢力に抗して、ピン56,58を中心にそれぞれ矢印C1,C2の向きに回転して、ガバナシーブ26(中空シャフト40)の径方向外方へ変位する。
ガバナシーブ26が矢印Uの向きに上昇過速度で回転したときにおける変位位置で公転する振子48,50に蹴られてONされる上昇過速スイッチ80が、図3に示すように、振子48,50の公転半径方向、上方に設けられている。
上昇過速スイッチ80がONされると、当該ON信号が前記電動機の停止信号として前記制御装置に送信される。当該停止信号を受けた当該制御装置は、前記電動機への給電を遮断して、当該電動機の駆動を停止する。
なお、上記した例では、ガバナシーブ26の回転に伴って回転する中空シャフト40の回転速度から、上昇過速度を検出するための第1検出機構47をガバナシーブ26に取り付けたが、これに限らず、例えば、ガバナシーブ26とは別の円板部材(不図示)を中空シャフト40に同軸上に固定し、当該円板部材に第1検出機構47を取り付けて、中空シャフト40の回転速度から、上昇過速度を検出することとしても構わない。
以上説明したように、かご18の上昇中に、第1調速機34によって、上昇過速度が検出されると、かご18の駆動源である前記電動機が停止されることとなる。
次に、第2調速機36の詳細について説明する。
第2調速機36は、図4に示すように、第2の回転軸である中実シャフト90を有する。中実シャフト90は、太径部90Aと細径部90Bとを有する段付きのシャフトであって、太径部90Aが、中空シャフト40の中空部に挿入され、2個のころがり軸受け92,94を介して中空シャフト40、ひいては支柱38に軸支されている。なお、図示は省略するが、中空シャフト40が支柱38(ころがり軸受け44,46)から抜けないように、E形止め輪等が中空シャフト40の外周面に形成された溝(不図示)に嵌め込まれており、中実シャフト90が中空シャフト40(ころがり軸受け92,94)から抜けないように、E形止め輪等が太径部90Aの外周面に形成された溝(不図示)に嵌め込まれている。
中実シャフト90には、これと一体的に回転する爪車96が同軸上に設けられている。爪車96には、図2に示すように、中実シャフト90の回転速度から、第1および第2の下降過速度を検出するための第2検出機構97が設けられている。爪車96は、中空シャフト40の回転を中実シャフト90に対して断続する主クラッチ装置140(後述)を構成する部材であるが、その回転断続機能については後で詳述する。
第2検出機構97は、第1検出機構47(図5)と実質的に同じ構成をしている。よって、第2検出機構97の構成部材には二百番台の符号を付し、その下二桁には、第1検出機構47において対応する構成部材に付した番号(アルファベットを含む)を用い、その詳細な説明については省略することとする。
かご18(図1)が下降して、ガバナシーブ26が矢印Dの向きに回転し、その回転が、後述するように爪車96に伝達されて、爪車96が、ガバナシーブ26と同じ向き(矢印Dの向き)、同じ回転速度で回転すると、これに伴い、振子248,250は、ガバナシーブ26の回転中心(中実シャフト90の軸心)を中心に公転する。公転する振子248,250は、遠心力により、圧縮コイルばね278の付勢力に抗して、ピン256,258を中心にそれぞれ、図2における時計方向に回転して、ガバナシーブ26(中実シャフト90)の径方向外方へ変位する。
ガバナシーブ26が矢印Dの向きに第1下降過速度で回転したときにおける変位位置で公転する振子248,250に蹴られてONされる下降過速スイッチ98が、図3に示すように、振子248,250の公転半径方向、上方に設けられている。なお、下降過速スイッチ98は、台座32に立設されたブラケット100等からなる取付手段により台座32に取り付けられているのであるが、煩雑さを避けるため、ブラケット100は、その一部の図示に止める。
下降過速スイッチ98がONされると、当該ON信号が前記電動機の停止信号として前記制御装置に送信される。当該停止信号を受けた当該制御装置は、前記電動機への給電を遮断して、当該電動機の駆動を停止する。
前記電動機を停止してもなお、かご18(図1)が下降し続け、その下降速度が増加して、ガバナシーブ26の回転速度が、第2下降過速度に達すると、前述したように、ガバナロープ22が把持機構102によって把持されて、ガバナロープ22の走行が停止される。
図2、図3に示すように、把持機構102は、第2検出機構97の下方に設けられている。把持機構102は、公知の機構であるので、簡単に説明するに止める。
把持機構102は、固定掴み104と可動掴み106を有する。固定掴み104は、台座32に固定されている。可動掴み106は、アーム108の一端に接合されており、アーム108の他端部は、台座32に、垂直平面内で回転自在に取り付けられている。
可動掴み106には、リンク110の一端部が、ピン112を介して回転自在に取り付けられている。リンク110の他端部には、ピン114が突設されており、ピン114はU字状の切欠き116Aを有するトリップレバー116の切欠き116Aに係合している。トリップレバー116は、台座32に立設されたブラケット120の上端部に、六角鍔付きピン118を介して、回転自在に取り付けられている。
可動掴み106は、通常は、図2、図3に示すように、トリップレバー116によって台座32から持ち上げられた位置で支持されている。矢印Dの向きに回転するガバナシーブ26の回転速度が、第1下降過速度を超えて第2下降過速度に達するまでの間、公転する振子248,250は、ガバナシーブ26(中実シャフト90)の径方向、外方へさらに変位する。
ガバナシーブ26の回転速度が第2下降過速度に達したときにおける変位位置で公転する振子248,250によって、トリップレバー116の上端部が矢印Aの向きに蹴られる。蹴られたトリップレバー116は、六角鍔付きピン118を中心に、矢印Bの向きに回転する。これにより、ピン114がトリップレバー116の切欠き116Aから相対的に離脱し、可動掴み106は、トリップレバー116による支持を失って、その自重により、下方へ揺動(降下)する。
そして、可動掴み106が固定掴み104と対向する位置まで降下し、ガバナロープ22が、可動掴み106と固定掴み104とで把持されて、ガバナロープ22の走行が停止される。ガバナロープ22の停止によって、前述の通り、非常止め装置が作動して、かご18(図1)が安全に停止される。
なお、上記した例では、中実シャフト90の回転速度から、第1および第2下降過速度を検出するための第2検出機構97を爪車96に取り付けたが、これに限らず、例えば、爪車96とは別の円板部材(不図示)を中実シャフト90に同軸上に固定し、当該円板部材に第2検出機構97を取り付けて、中実シャフト90の回転速度から、第1および第2下降過速度を検出することとしても構わない。
以上説明したように、調速装置24によれば、かご18の上昇中に中空シャフト40(図4)の回転速度から上昇過速度が検出されると、前記電動機が停止され、かご18の下降中に中実シャフト90の回転速度から、第1下降過速度が検出されると前記電動機が停止され、さらに、第1下降過速度よりも大きい第2下降過速度が検出されると、非常留め装置が作動することとなる。
このような調速装置24では、かご18の上昇中には、第2検出機構97が作動しないように、中実シャフト90の回転を確実に禁止する必要がある。かご18の上昇中に、中実シャフト90が回転し、第2検出機構97の振子248,250が、中実シャフト90の径方向、外方へ変位すると、かご18の上昇速度が上昇定格速度に達するまでに、下降過速スイッチ98がONされて、前記電動機が停止されたり、場合によっては、振子248,250が、図2に示す矢印Aとは反対向きにトリップレバー116に衝突して、把持機構102の一部を損壊したりするおそれがあるからである。
また、振子248,250が、下降過速スイッチ98をONしたり、トリップレバー116に衝突したりする程に、中実シャフト90の径方向、外方へ変位することが無いにしても、かご18の上昇中において、回転が全く不要な中実シャフト90が不用意に回転してしまうことは、調速装置の信頼性の観点から好ましくない。
そこで、本実施形態では、ガバナシーブ26の回転に伴って回転する中空シャフト40の回転が、かご18の下降中には、中実シャフト90へ確実に伝達される一方、かご18の上昇中には、中実シャフト90の回転が可能な限り抑制されるよう、主クラッチ装置140および副クラッチ装置174が設けられている。
先ず、主クラッチ装置140について、図2、図3、図7、および図9を適宜参照しながら説明する。なお、図7(b)、図7(c)において、爪車96は、その背後に存する部材を見やすくするため、一点鎖線で表している。
主クラッチ装置140は、上記した爪車96を有している。爪車96は、図2、図3に示すように、円板の外周に等間隔で、複数の(本例では、8個の)歯142が形成されてなるものである。8個の歯142は、いずれも同様の構成であるが、相互に区別する場合には、符号の末尾に用いたアルファベットにより区別することとする。
図7(a)に示すように、爪車96の歯142Aは、周方向に、なだらかに傾斜した斜面部である弧状部144Aと鉤状部146Aとを有する。
弧状部144Aは、中実シャフト90(図2)の軸心を中心とする半径(同軸心からの径方向における距離)が、矢印Uの向きに漸増するように傾斜した弧状に形成されている。換言すれば、弧状部144Aは、中実シャフト90(図2)の軸心を中心とする半径が、矢印Dの向きに漸減するように傾斜した弧状に形成されている。前述した通り、矢印Uは、かご18の上昇中におけるガバナシーブ26の回転の向きであり、矢印Dは、かご18の下降中におけるガバナシーブ26の回転の向きである。
鉤状部146Aは、弧状部144Aの、矢印Uの向きにおける終端部近傍(終端部の、爪車96の中心方向内側)に形成されている。ここで、矢印Uの向きを基準として、弧状部144の始端部(図7において、左側端部)と終端部(図7において右側端部)とを規定することとする。
鉤状部146Aは、前記終端部の、中実シャフト90(図2)の軸心方向内側において、図8(a)に示すように、爪車96の周方向、矢印Dの向きに切り込まれた第1の切込部である周方向切込部148Aと、周方向切込部148Aの奥部(突当り部)からさらに、中実シャフト90の径方向外方にU字状に切り込まれた第2の切込部である径方向切込部150Aを含む。
主クラッチ装置140は、また、図7(b)、図9に示すように、爪車96の歯142に、後述のようにしてかみ合う掛合部材である掛合軸152を有する。掛合軸152は、後述するようにして、その長さ方向が爪車96の径方向と交差する(本例では、直交する)向きとなる姿勢で設けられている。なお、図9は、掛合軸152等を、図7(b)の矢印Eの向きに見た図であるが、図9において、爪車96の図示は省略している。また、図7(b)、図7(c)において、掛合軸152は、後述する掛合部152Aのみを図示している。
掛合軸152は、短冊状をした連接板154等によって、ガバナシーブ26に取り付けられている。連接板154は、その一端部がピン156を介して、ガバナシーブ26に回転自在に取り付けられている。図9に示すように、ガバナシーブ26と連接板154との間のピン156部分には、スリーブ158が外挿されている。スリーブ158は、ガバナシーブ26の第1主面26Bとは反対側の第2主面26Cからの連接板154の高さを調整するために設けられている。
掛合軸152は、連接板154の他端部に開設された貫通孔154Aに挿入されている。掛合軸152の連接板154を挟んだ両側には、E形止め輪160,162が嵌め込まれていて、掛合軸152の連接板154からの抜け止めが図られている。
掛合軸152の、連接板154から第2主面26Cに向かって突出した部分には、弾性部材である引張コイルばね164の一端部が係止されている。引張コイルばね164の他端部は、ガバナシーブ26に設けられたピン166の第2主面26Cから突出した部分に係止されている。
掛合軸152において、連接板154から第2主面26C側とは反対側に突出し、他の部分よりも径の細い部分(以下、「掛合部152A」と言う。)に対応する位置(第2主面26Cからの高さ位置)に爪車96(図9において不図示)が位置している。
掛合軸152の上記した取付態様により、掛合部152Aは、図7(b)、図7(c)に示すように、引張コイルばね164の復元力によって、ガバナシーブ26が設けられている中空シャフト40の径方向、爪車96の外周面に向かって付勢されており、ガバナシーブ26の回転が停止している状態において、掛合部152Aは、常に、爪車96の外周面に当接している。
また、掛合部152Aが爪車96に当接する位置から、ピン156の軸心を中心に、爪車96の全周のいずれの部分からも離間する位置まで変位する少しの回転角度範囲においては、掛合軸152は、中空シャフト40の径方向に変位すると言える。すなわち、当該回転角度範囲において、掛合軸152は、ピン156、連接板154により、爪車96の径方向外方において、中空シャフト40の径方向に変位自在に取り付けられていると言える。
上記の構成からなる主クラッチ装置140において、ガバナシーブ26が回転し、これに伴って、中空シャフト40が回転すると、(ガバナシーブ26に取り付けられている)掛合軸152は、中空シャフト40の軸心を中心として、中空シャフト40と一体的に公転する。
この場合、かご18(図1)が下降して、ガバナシーブ26(中空シャフト40)が矢印Dの向きに回転したとする。回転開始時に、掛合軸152の掛合部152Aが、図8(b)に二点鎖線で示すように、歯142Aの弧状部144Aに当接していたとすると、ガバナシーブ26の回転に伴って、掛合部152Aは、弧状部144A上を摺動して、ガバナシーブ26の回転の向き(矢印Dの向き)に隣接する(矢印Dの向きに最初に存する)歯142Cの鉤状部146Cの周方向切込部148Cの奥部(突当り部)に当接する(図8(b))。図7(b)は、掛合部152Aが周方向切込部148Cの奥部に当接する直前の状態を示している。
これにより、ピン156、連接板154、および掛合軸152を介して、ガバナシーブ26の回転が爪車96に伝達され、爪車96、ひいては中実シャフト90(図2)がガバナシーブ26と同じ速度で回転し始める。ガバナシーブ26の回転速度が増加すると、掛合軸152および連接板154等に作用する遠心力によって、掛合軸152(掛合部152A)は、ガバナシーブ26(中空シャフト40)の径方向外方へ変位し、掛合部152Aが、径方向切込部150Cに進入する(図8(c))。すなわち、中空シャフト40が矢印Dの向きに回転すると、掛合軸152(の掛合部152A)は、鉤状部146Cの周方向切込部148Cの奥部に当接した後、掛合軸152等に作用する遠心力によって径方向切込部150Cの奥部まで変位して、鉤状部146Cに掛合する。
このように、ガバナシーブ26が矢印Dの向きに回転して、中空シャフト40が矢印Dの向きに回転すると、当該回転開始初期に、掛合軸152が、爪車96の一の歯にかみ合って、中空シャフト40の回転を爪車96に伝達する。ここで「回転開始初期に、掛合軸152が一の歯にかみ合う」とは、掛合部152Aが、矢印Dの向きに最初に存する鉤状部と掛合して、当該掛合部を含む歯(一の歯)にかみ合うことを言う。
ここで、以上の説明から首肯されるように、中空シャフト40の回転を爪車96に伝達するだけであれば、鉤状部146を構成する径方向切込部150は不要であり、周方向切込部148だけで足りるのであるが、周方向切込部148に加え、径方向切込部150を設けた理由について説明する。
下降するかご18(図1)が目的階に近づいて、下降定格速度から減速し始めると、これに伴いガバナシーブ26の回転速度も減速される。そうすると、それまで掛合軸152に押進されていた爪車96は、その慣性によって、掛合軸152の公転速度(ガバナシーブ26の回転速度)よりも速く回転しようとする。この場合に、径方向切込部150が無く、周方向切込部148のみであると、掛合部152Aの鉤状部との掛合が減速直後に解除され、掛合部152Aは、弧状部144を矢印Uの向きに相対的に進行する。そして、弧状部144の終端部を通過すると、隣接する弧状部の始端部へと転落する。この転落の際に、掛合部152Aが、爪車96の外周面を叩くことによる打撃音(騒音)が発生する。この打撃音は、掛合部152Aが爪車96の外周を相対的に1周する間に、歯142の数だけ発生する。
これに対し、実施形態では、径方向切込部150を設けているため、ガバナシーブ26が減速され始めても、図8(d)に実線で示すように、掛合部152Aは、しばらくの間、径方向切込部150に留まり、直ちに、鉤状部146との掛合が解除されることはない。
もっとも、ガバナシーブ26の減速が進み、掛合軸152等に作用する遠心力が弱まると、掛合部152Aは、爪車96の軸心方向に変位して、鉤状部146との掛合が解除されることとなる。
すなわち、径方向切込部150は、掛合部152Aによる上記した打撃音の発生開始時期をできるだけ遅らせるため、換言すると、当該打撃音の発生期間をできるだけ短縮することを目的として設けているのである。
次に、かご18(図1)が上昇して、ガバナシーブ26が矢印Uの向きに回転した場合について説明する。回転開始時に、掛合軸152の掛合部152Aが、歯142Aの弧状部144Aに当接していたとすると、回転初期には、掛合部152Aは、弧状部144A上を摺動する。掛合部152Aが弧状部144Aの終端部を通過すると(図7(c)は、掛合部152Aが、弧状部144Aの終端部を通過する直前の状態を示している。)、掛合部152Aは、引張コイルばね164の付勢力によって、ガバナシーブ26の回転の向き(矢印Uの向き)に隣接する歯142Bの弧状部144Bに落下し(図8(e))、さらに弧状部144B上を摺動する。すなわち、掛合部152Aは、鉤状部146Aを通過して、鉤状部146Aに拘束されない。このように、主クラッチ装置140は、中空シャフト40(図4)の回転が中実シャフト90(図4)に対して、遮断されるように構成されている。しかしながら、掛合部152Aが、弧状部144Bに落下する際、上述した打撃音が発生する。この打撃音は掛合部152が爪車96の外周面を摺接している間、継続する。
この点、ガバナシーブ26の回転速度が増加すると、掛合軸152および連接板154等に作用する遠心力によって、掛合軸152(掛合部152A)は、ガバナシーブ26(中空シャフト40)の径方向外方へ変位し、掛合部152Aは、爪車96の外周面から離間し、当該外周面のいずれの部位とも非接触となる。これにより、上記打撃音が解消されると共に、主クラッチ装置140を介した、中空シャフト40の回転の中実シャフト90への伝達が完全に遮断される。
ここで、掛合軸152は、その掛合部152Aが爪車96の外周面全周に亘って非接触となるまで変位すれば足り、必要以上に変位すると、引張コイルばね164が弾性限度を超えて伸びてしまう等の不具合が生じる。そこで、これを防止するため、ガバナシーブ26の径方向における、連接板154の外方にストッパ168がガバナシーブ26に取り付けられている。ストッパ168は、L字状断面を有する細長い板体からなり、二組のボルト170・ナット172によって、ガバナシーブ26に固定されている。
かご18が定格速度で上昇中のため、ガバナシーブ26がこれに応じた一定の速度で回転している間は、図7(c)に示すように、連接板154の側面がストッパ168に当接し、これ以上の回転が阻止されて、掛合軸152の必要以上の変位が防止される。
また、この間(少なくともかご18が、上昇定格速度で上昇している間)、主クラッチ装置140において、回転を伝達するときには掛合する掛合軸152と爪車96とが、完全に非接触状態となる。この点、前述したフリーギヤやワンウェイクラッチのように、回転を伝達するときには掛合する爪と爪車〔フリーギヤ〕、ローラと外輪〔ワンウェイクラッチ〕が、回転を遮断するときは相互に摩擦し続けるため、これらの部材に不要な磨耗が生じる装置と比較して、実施形態における主クラッチ装置140は、そのような磨耗が生じるのを可能な限り抑制することができる。
ここで、引張コイルばね164の付勢力(ばね定数)は、以下の観点から定められる。主クラッチ装置140によって回転の伝達を遮断する場合(中空シャフト40が矢印Uの向きに回転する場合)において、早期に上述した打撃音(騒音)を解消することを考えると、掛合軸152と爪車96とを出来るだけ早く非接触状態にするのが好ましいため、ばね定数は小さくするのが好ましい。一方で、ばね定数を小さくし過ぎると、中空シャフト40が矢印Dの向きに回転する場合、場合によっては、掛合軸152が歯142にかみ合う前に、掛合軸152が爪車96の外周面から離間してしまう事態が生じるおそれがある。
そこで、回転初期(公転初期)に掛合軸152等に作用する遠心力の大きさや、周方向に隣接する鉤状部146の間隔等を考慮し、中空シャフト40が矢印Dの向きに回転する場合に、掛合軸152が歯142に確実にかみ合うのに必要な最小限の大きさのばね定数とすることが好ましい。
なお、上記の例では、掛合軸152(掛合部152A)を爪車96の外周面に向けて付勢する付勢手段として引張コイルばね164を用いたが、これに限らず、ねじりコイルばね(不図示)を用いても構わない。すなわち、ねじりコイルばねのコイル部(不図示)をピン156に外挿し、連接板154がピン156を中心に図7(b)、図7(c)において反時計方向に回転する向きに、前記コイル部から延出された腕部(不図示)を連接板154に引っ掛けるのである。
以上説明したように、主クラッチ装置140は、ガバナシーブ26の回転に伴って回転する中空シャフト40の回転が、中実シャフト90に対し、中空シャフト40が矢印Uの向きに回転するときは遮断され、矢印Dの向きに回転するときは伝達されるように構成されている。
しかし、既述したように、ガバナシーブ26が矢印Uの向きに回転し、これに伴い中空シャフト40が同じ向きに回転を開始した直後には、掛合軸152に掛合部152Aが、爪車96の弧状部144上を摺動しながら進行するため、なんらの手立てを講じない場合、両者の間に生じる摩擦力等によって、爪車96が回転し、ひいては、中実シャフト90も回転してしまう。このように、ガバナシーブ26が矢印Uの向きに回転中には、回転速度の検出対象ではない中実シャフト90が、不用意に回転してしまうのは、調速装置の信頼性の観点から好ましくない。
そこで、本実施形態では、中実シャフト90の上記した不用意な回転を可能な限り抑制する手立てとして、副クラッチ装置174を設けている。副クラッチ装置174について、図2、図4を適宜参照しながら説明する。
副クラッチ装置174は、図4(b)に示すように、中実シャフト90に挿入されたワンウェイクラッチ176とワンウェイクラッチ176を台座32に固定する固定手段178とを有する。
固定手段178は、図2に示すように、台座32に立設されたブラケット180を含む。ブラケット180は、細長い板体の上端部がL字状に屈曲されてなるものであり、当該屈曲部に、ワンウェイクラッチ176を保持するホルダ182が取り付けられている。
ホルダ182は、図4(b)に示すように、段付きの貫通孔182Aを有する円筒部材であり、その軸心を中心に90度を成す2箇所に雌ねじ182B(一方の雌ねじのみを図4(b)に図示)が形成されている。
ブラケット180には、雌ねじ182B各々に対応させて、貫通孔(不図示)がそれぞれ開設されており、当該貫通孔の各々を通して雌ねじ182Bに螺合したボルト184,186(図2)によって、ホルダ182がブラケット180に取り付けられている。
ワンウェイクラッチ176は、貫通孔182Aへの圧入によってホルダ182に取り付けられている。ワンウェイクラッチ176は、これに挿入された中実シャフト90の矢印Dの向きの回転は許容し、矢印Uの向きの回転は禁止する向きに取り付けられる。
上記の構成からなる副クラッチ装置174を設けたことにより、かご18が上昇してガバナシーブ26が矢印Uの向きに回転中に、回転速度の検出対象ではない中実シャフト90が、不用意に回転してしまうのを防止できる。一方で、かご18が下降してガバナシーブ26が矢印Dの向きに回転中には、回転速度の検出対象である中実シャフト90の回転は許容されるため、第1下降過速度および第2下降過速度は支障なく検出され得る。
以上説明したように、実施形態に係る調速装置24によれば、かご18が上昇してガバナシーブ26が矢印Uの向きに回転すると、これに伴って回転する中空シャフト40の回転速度から上昇過速度が検出され、一方、かご18が下降してガバナシーブ26が矢印Dの向きに回転すると、これに伴って回転する中空シャフト40の回転が中実シャフト90に伝達されて、中実シャフト90の回転速度から、上昇過速度よりも遅い第1下降過速度および第2下降過速度が検出される。
また、かご18の上昇中においては、中空シャフト40の回転を中実シャフト90に対し遮断するように構成されている主クラッチ装置140に加え、中実シャフト90の回転を禁止する副クラッチ装置174を設けたことよって、過速度を検出する必要が無いときに、中実シャフト90が不用意に回転することを可能な限り抑制することができる。
上記実施形態では、爪車96の歯142にかみ合う掛合部材である掛合軸152をピン156や連接板154によってガバナシーブ26に取り付ける構成としたが、これに限らず、例えば、以下に記す変形例1や変形例2のように構成しても構わない。
(変形例1)
変形例1について、図10を参照しながら説明する。図10(a)は、図7(b),(c)に倣った図であり、図10(b)は、図10(a)において、G・G線に沿って切断した断面図である。図10(b)においても、爪車96の図示は、省略している。
図10に示すように、変形例1では、ガバナシーブ302に、その径方向に長く、厚み方向に貫通する長孔302Dが開設されている。変形例1における掛合軸304は、長手方向における中央部に、二つの鍔部304B,304Cが間隔を空けて形成されてなる軸部材であって、鍔部304Cから延出した軸部304Dに、フッ素樹脂からなるスリーブ部材306が圧入されている。掛合軸304は、スリーブ部材306が長孔302Dに挿入され、軸部304D端部にドーナツ状をした円板部材308が圧入されて、ガバナシーブ302に取り付けられている。これにより、掛合軸304は、ガバナシーブ302に対し、長孔302Dの長手方向、すなわち、ガバナシーブ302の径方向、ひいては中空シャフト40(図4(a)の径方向に変位自在となっている。
掛合軸304において、鍔部304Bから延出した部分が、爪車96の歯142の鉤状部146に掛合する掛合部304Aである。
長孔302Dよりもガバナシーブ302の径方向内側(長孔302Dの長手方向内側)には、厚み方向に貫通する丸孔302Eが開設されており、丸孔302Eには、溝付きピン310が圧入されている。
溝付きピン310の溝310Aと、掛合軸304の鍔部304Bと鍔部304Cの間隙との間には、引張コイルばね312が掛け渡されている。
上記した構成により、掛合部304Aは、引張コイルばね312の復元力によって、ガバナシーブ302が設けられている中空シャフト40の径方向、爪車96の外周面に向かって付勢されており、ガバナシーブ26の回転が停止している状態において、掛合部152Aは、常に、爪車96の外周面に当接している。
そして、(i)かご18(図1)が下降して、ガバナシーブ302が矢印Dの向きに回転すると、最終的に、掛合軸304の掛合部304Aが、爪車96の一の径方向切込部150に進入することで、掛合軸304が爪車96の一の歯142にかみ合って、中空シャフト40の回転が確実に中実シャフトに伝達され、(ii)一方、かご18が上昇して、ガバナシーブ302が矢印Uの向きに回転すると、最終的に、掛合軸304等に作用する遠心力によって、掛合軸304が、ガバナシーブ302(中空シャフト40)の径方向、外方へ変位し、掛合部304Aが、爪車96の外周面から離脱して、当該外周面のいずれの部位とも非接触となって、上述した打撃音が解消されると共に、主クラッチ装置を介した中空シャフト40の回転の中実シャフト90への伝達が遮断される点については、上記した実施形態と同様なので、それらの詳細な動作についての説明は省略する。
(変形例2)
変形例2について、図11を参照しながら説明する。図11(a)も、図7(b),(c)に倣った図であり、図11(b)は、図11(a)において、H・H線に沿って切断した断面図である。図11(b)においても、爪車96の図示は、省略している。
上記実施形態、および変形例1では、引張コイルばね164、引張コイルばね312によって、それぞれ、掛合軸152、掛合軸304を爪車96の外周面に向かって付勢したが、変形例2では、圧縮コイルばね314によって付勢している。
図11に示すように、変形例2においても、ガバナシーブ316に、その径方向に長く、厚み方向に貫通する長孔316Dが開設されている。長孔316Dは、細長い長方形をしている。変形例2における掛合軸318は、横断面が方形をした方形軸部318Bを有し、方形軸部318Bが、長孔316Dに嵌っている。方形軸部318Bの一端から横断面が円形をした軸部318Cが延出されており、軸部318Cに、ドーナツ状をし、長孔316Dの幅よりも長い外径を有する円板部材320が圧入されている。方形軸部318Bの他端から延出された軸部は、太径部318Dと細径部318Aがこの順に形成されている。本例において、太径部318Dの直径は、円板部材320の外径と同じであるが、異なっていても構わない。細径部318Aが、掛合軸318の掛合部318Aとなる。
長孔316Dの、ガバナシーブ316の中心から遠い方の端壁からはピン322が突設されており、前記端壁と対向する、方形軸部318Bの側壁からはピン324が突設されている。前記端壁と前記側壁の間には、両端部の各々がピン322、ピン324に嵌めこまれて、圧縮コイルばね314が圧縮状態で設けられている。
上記の構成により、掛合部318Aは、圧縮コイルばね314の復元力によって、ガバナシーブ316が設けられている中空シャフト40の径方向、爪車96の外周面に向かって付勢されており、ガバナシーブ316の回転が停止している状態において、掛合部318Aは、常に、爪車96の外周面に当接している。
そして、(i)かご18(図1)が下降して、ガバナシーブ316が矢印Dの向きに回転すると、中空シャフト40の回転が確実に中実シャフト90に伝達され、(ii)一方、かご18が上昇して、ガバナシーブ316が矢印Uの向きに回転すると、中空シャフト40の回転の中実シャフト90への伝達が遮断されるのは、上記した実施形態および変形例1と同様なので、その詳細な説明については省略する。
なお、上記変形例1および変形例2では、掛合軸304,318等をガバナシーブ302,316に設けることとしたが、これに限らず、ガバナシーブ302,316とは別個の円板部材を中空シャフト40に取り付けて、当該円板部材に掛合軸304,318等を設ける構成としても構わない。
以上、本発明を実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は、上記した形態に限らないことは勿論であり、例えば、以下の形態としても構わない。
(1)上記実施形態の副クラッチ装置174を構成する部材としてワンウェイクラッチ176(図4(b))を用いたが、ワンウェイクラッチ176に代えて、例えば、前述したフリーギヤを用いても構わない。
(2)上記実施形態において、爪車96には6個の歯142を設けたが、これに限らず、爪車に設ける歯の個数は1個でも構わない。また、2〜5個、あるいは7個以上としても構わない。
(3)上記実施形態では、爪車96の歯142は、弧状部144と鉤状部146とを含む構成としたが、弧状部144に代えて、他の形状をした斜面部としても構わない。他の形状としては、例えば、直線状をした斜面形状が考えられる。要は、中実シャフト90(図2)の軸心からの径方向における距離が、漸増するようになだらかに傾斜した斜面形状であれば構わないのである。