JP6326396B2 - LiCoO2含有スパッタリングターゲットおよびLiCoO2含有焼結体 - Google Patents

LiCoO2含有スパッタリングターゲットおよびLiCoO2含有焼結体 Download PDF

Info

Publication number
JP6326396B2
JP6326396B2 JP2015220456A JP2015220456A JP6326396B2 JP 6326396 B2 JP6326396 B2 JP 6326396B2 JP 2015220456 A JP2015220456 A JP 2015220456A JP 2015220456 A JP2015220456 A JP 2015220456A JP 6326396 B2 JP6326396 B2 JP 6326396B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
target
licoo
peak
sintered body
relative density
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2015220456A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2017088956A (ja
Inventor
尚敏 坂本
尚敏 坂本
林 和志
和志 林
雄一 武富
雄一 武富
守賀 金丸
守賀 金丸
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kobe Steel Ltd
Kobelco Research Institute Inc
Original Assignee
Kobe Steel Ltd
Kobelco Research Institute Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kobe Steel Ltd, Kobelco Research Institute Inc filed Critical Kobe Steel Ltd
Priority to JP2015220456A priority Critical patent/JP6326396B2/ja
Publication of JP2017088956A publication Critical patent/JP2017088956A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6326396B2 publication Critical patent/JP6326396B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E60/00Enabling technologies; Technologies with a potential or indirect contribution to GHG emissions mitigation
    • Y02E60/10Energy storage using batteries

Description

本発明は、LiCoO2含有スパッタリングターゲットおよびLiCoO2含有焼結体に関する。特には、LiCoO2含有薄膜をスパッタリングで形成するときに、パーティクルの発生量が抑えられ、安定したスパッタ放電を継続できるLiCoO2含有スパッタリングターゲットおよびLiCoO2含有焼結体に関する。
Li系薄膜二次電池は、薄膜太陽電池や、薄膜熱電素子、無線充電素子などの各種デバイスに用いられ、その需要が急速に高まっている。Li系薄膜二次電池は、代表的には、Liと遷移金属であるCoとを含むコバルト酸リチウム(LiCoO2)含有薄膜からなる正極と、リン酸リチウムオキシナイトライド(LiPON)などのLiを含む固体電解質と、Li金属薄膜などからなる負極と、から構成されている。このLi系薄膜二次電池の電池容量は正極の電気化学的特性の影響を強く受ける。
上記正極を構成するLiCoO2含有薄膜の成膜には、スパッタリングや抵抗加熱蒸着などの真空蒸着法が用いられる。前記スパッタリングは、当該薄膜と同じ材料で形成されたスパッタリングターゲット(以下、ターゲットと略記する場合がある。)、即ちLiCoO2含有ターゲットをスパッタリングする方法である。このスパッタリング法によれば、成膜条件の調整が容易であるなどの利点がある。
ところで、上記スパッタリングに用いるターゲットは、Li含有酸化物を主体としており、水分との反応により特性劣化が生じやすい。具体的には、例えば電気抵抗率が不安定であり、大気中でも電気抵抗率が変動するほどである。よって、ターゲット製造工程は、一貫した乾式プロセスが必須となっており、焼結体のターゲット形状への加工も乾式で行われる。しかし、乾式加工成形は湿式加工成形と比べ、加工で生じた研削粉の排出がされ難く、該研削粉がターゲット表面に残存しやすい。ターゲット表面に残存する研削粉は、スパッタリング時の放電初期のパーティクル発生の原因となる。パーティクルが発生すると、スパッタリング中の異常放電の原因となり、電池の量産工程で問題となる。これを解消すべく、ターゲットと真空成膜装置の清掃回数を増加させることも考えられるが、結果として真空チャンバーの開放回数が増え、生産性の低下を招く。また、上記パーティクルが、成膜されたLiCoO2含有薄膜に付着すると、Li系薄膜二次電池の短絡の原因となり、製品の歩留まりが低下する。
よって上記スパッタリングに用いるターゲットには、上記パーティクルが極力抑制されていることが求められる。
例えば特許文献1には、複数のターゲットを接合したターゲット接合体において、スパッタリングターゲット間の隙間の幅を、好ましくは0.1mm以上とすることによって、ターゲット同士が隙間部で干渉することで生じるパーティクルを抑制することが挙げられている。
特許文献2には、LiCoO2焼結体の相対密度を75%以上とすることで、スパッタリング中での割れやノジュールの発生を防止できると記載されている。特許文献3には、Li含有遷移金属酸化物薄膜を、異常放電が発生することなく安定して成膜するために、該成膜に用いるスパッタリングターゲットや酸化物焼結体の相対密度を高め、かつ比抵抗を低くすることが提案されている。
特許文献4には、スパッタ膜の均一性に富み、スパッタリング時にパーティクルの発生がないリチウム含有遷移金属酸化物ターゲットが提案されている。具体的に該ターゲットとして、結晶系が六方晶系を示すリチウム含有遷移金属酸化物の焼結体よりなるターゲットであって、相対密度が90%以上、平均結晶粒径が1μm以上50μm以下の焼結体よりなるリチウム含有遷移金属酸化物ターゲットが提案されている。
特許文献5には、LiCoO2焼結体の相対密度を90%以上、比抵抗を3kΩ・cm以下、かつ平均粒径を50μm以下とすることによって、パーティクルの発生を抑制でき、直流電力と高周波電力との重畳放電による安定したスパッタリングが可能となる旨示されている。
これらの文献に示されている通り、これまでLiCoO2含有ターゲットの相対密度や平均結晶粒径を制御することでパーティクルを抑制することがなされているが、該パーティクルの発生がより確実に抑制されたLiCoO2含有スパッタリングターゲットやLiCoO2含有焼結体はまだ実現されていない。
特開2014−231639号公報 特開2014−198901号公報 特開2013−194299号公報 特開2012−164671号公報 国際公開第2011/086650号パンフレット
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は特に、LiCoO2含有薄膜をスパッタリング法で形成時にパーティクルの発生が十分に抑えられ、安定したスパッタ放電を継続できるLiCoO2含有スパッタリングターゲットおよびLiCoO2含有焼結体を確立することにある。
上記課題を解決し得た本発明のLiCoO2含有スパッタリングターゲットは、平均結晶粒径3〜5μm、および相対密度80〜92%を満たし、更に、ラマン分光スペクトル測定で485±5cm-1の領域に表れるピークについて、ピーク半値幅が、基準となるターゲットのピーク半値幅の88%以下であり、かつピーク強度が、基準となるターゲットのピーク強度の106%以上であるところに特徴を有する。ここで、前記基準となるターゲットのピーク半値幅とピーク強度は、前記LiCoO2含有スパッタリングターゲットと同じ条件で、原料粉末を用いた焼結、加熱処理、乾式加工成形、およびボンディングを順次行って得られるターゲットに対し、前記LiCoO2含有スパッタリングターゲットと同じ条件でラマン分光スペクトル測定を行って求められる値である。
上記課題を解決し得た本発明の別のLiCoO2含有スパッタリングターゲットは、平均結晶粒径10〜50μm、および相対密度92%以上を満たし、更に、ラマン分光スペクトル測定で485±5cm-1の領域に表れるピークについて、ピーク半値幅が、基準となるターゲットのピーク半値幅の71%以下であり、かつピーク強度が、基準となるターゲットのピーク強度の127%以上であるところに特徴を有する。ここで、前記基準となるターゲットのピーク半値幅とピーク強度は、前記LiCoO2含有スパッタリングターゲットと同じ条件で、原料粉末を用いた焼結、加熱処理、乾式加工成形、およびボンディングを順次行って得られるターゲットに対し、前記LiCoO2含有スパッタリングターゲットと同じ条件でラマン分光スペクトル測定を行って求められる値である。
上記課題を解決し得た本発明の別のLiCoO2含有スパッタリングターゲットは、平均結晶粒径3〜5μm、および相対密度80〜92%を満たし、かつラマン分光スペクトル測定で、485±5cm-1の領域に表れるピークの半値幅が4.0cm-1以下であることを特徴とする。
上記課題を解決し得た本発明の別のLiCoO2含有スパッタリングターゲットは、平均結晶粒径10〜50μm、および相対密度92%以上を満たし、かつラマン分光スペクトル測定で、485±5cm-1の領域に表れるピークの半値幅が4.4cm-1以下であることを特徴とする。
上記課題を解決し得た本発明のLiCoO2含有焼結体は、平均結晶粒径3〜5μm、および相対密度80〜92%を満たし、更に、ラマン分光スペクトル測定で485±5cm-1の領域に表れるピークについて、ピーク半値幅が、基準となる焼結体のピーク半値幅の88%以下であり、かつピーク強度が、基準となる焼結体のピーク強度の106%以上であるところに特徴を有する。ここで、前記基準となる焼結体のピーク半値幅とピーク強度は、前記LiCoO2含有焼結体と同じ条件で、原料粉末を用いた焼結、加熱処理、および乾式加工成形を順次行って得られる焼結体に対し、前記LiCoO2含有焼結体と同じ条件でラマン分光スペクトル測定を行って求められる値である。
上記課題を解決し得た本発明の別のLiCoO2含有焼結体は、平均結晶粒径10〜50μm、および相対密度92%以上を満たし、更に、ラマン分光スペクトル測定で485±5cm-1の領域に表れるピークについて、ピーク半値幅が、基準となる焼結体のピーク半値幅の71%以下であり、かつピーク強度が、基準となる焼結体のピーク強度の127%以上であるところに特徴を有する。ここで、前記基準となる焼結体のピーク半値幅とピーク強度は、前記LiCoO2含有焼結体と同じ条件で、原料粉末を用いた焼結、加熱処理、および乾式加工成形を順次行って得られる焼結体に対し、前記LiCoO2含有焼結体と同じ条件でラマン分光スペクトル測定を行って求められる値である。
上記課題を解決し得た本発明の別のLiCoO2含有焼結体は、平均結晶粒径3〜5μm、および相対密度80〜92%を満たし、かつラマン分光スペクトル測定で、485±5cm-1の領域に表れるピークの半値幅が4.0cm-1以下であることを特徴とする。
上記課題を解決し得た本発明の別のLiCoO2含有焼結体は、平均結晶粒径10〜50μm、および相対密度92%以上を満たし、かつラマン分光スペクトル測定で、485±5cm-1の領域に表れるピークの半値幅が4.4cm-1以下であることを特徴とする。
本発明によれば、LiCoO2含有薄膜の形成をスパッタリングで行うときに、パーティクルの発生が十分に抑えられて、安定したスパッタ放電を継続できるLiCoO2含有スパッタリングターゲットとLiCoO2含有焼結体を提供できる。
図1は、LiCoO2含有スパッタリングターゲットの製造工程図である。 図2は、LiCoO2含有スパッタリングターゲット表面のSEM(Scanning Electron Microscope)画像である。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。特に、上記パーティクルの発生が抑制されたターゲットを得るべく、ターゲットの物性について種々の観点から調べた。その結果、上記パーティクルの発生はターゲットのラマン分光スペクトルと相関があることを、下記に説明の通りまず見出した。以下では、焼結体にボンディング処理して得られるターゲットをメインとして説明するが、後記する表面処理をボンディング処理前に施して得られる焼結体についても、上記ターゲットと同じ構成を有し、かつ同じ効果を示す。即ち、下記ターゲットIと同じ構成および効果を示す焼結体として、焼結体Iが挙げられ、下記ターゲットIIと同じ構成および効果を示す焼結体として、焼結体IIが挙げられる。本発明では、焼結直後のものを「焼結物」、この焼結物に対し少なくとも加熱処理、乾式加工成形、および後記の表面処理を施したものであって、ボンディング処理前のものを「焼結体」といい区別する。
LiCoO2は、層状岩塩型の結晶構造を有しており、電子およびイオン伝導性に異方性を示し、結晶のC軸に垂直な方向に電荷が流れやすい。この方向は、ラマン分光スペクトルの485±5cm-1付近に検出されるピーク(以下「Egピーク」ということがある)の振動方向と同一である。よって、LiCoO2結晶のC軸に垂直な方向の結晶性が高い、つまりEgピーク半値幅が狭いほど、電荷が移動しやすく、安定したスパッタ放電が得られる。一方、上記パーティクル発生の原因の一つであるターゲット製造過程の乾式加工成形で生じる切削粉や研磨くずは、LiCoO2結晶であるがその結晶性が低いこと、また上記乾式加工成形により、LiCoO2以外の副生成物が生じたり、該乾式加工成形によりターゲット表面がダメージを受け、ターゲットから分離はしていないが結晶性の低下した箇所が生じることにも着目した。以下、これら切削粉や研磨くず、前記副生成物、および前記結晶性の低下した箇所を「切削粉等」ということがある。
そして、これら切削粉等が表面に残存するターゲットは、上記切削粉等の影響を受けて上記Egピークの半値幅が広くなる傾向にあり、この場合パーティクルの発生頻度や異常放電が生じやすいといった、Egピークの半値幅と;ターゲットに残存する切削粉等の程度、および該切削粉等に起因するパーティクルの発生頻度や異常放電発生の有無と;の関連性を見出した。また上記Egピークの強度についても同様の傾向がみられることを見出した。
そして本発明者らは、下記の通り、得られる特性に応じた平均結晶粒径と相対密度を満たすと共に、上記ラマン分光スペクトルにおけるピーク半値幅とピーク強度を制御すれば、上記パーティクルの発生が十分に抑えられて、安定したスパッタ放電を継続できるとして本発明を完成させた。以下、本発明の各要件について説明する。
[平均結晶粒径が3〜5μm、かつ相対密度が80〜92%]
本発明では、以下、平均結晶粒径3〜5μm、および相対密度80〜92%を満たし、かつ後述するラマン分光スペクトルの規定を満たすターゲットを、以下「ターゲットI」という。
ターゲットIでは、平均結晶粒径を3〜5μm、かつ相対密度80〜92%を満たすことによって、ターゲットの比抵抗を例えば1.0×102Ω・cm以下に低減でき、DCパルススパッタリング法を適用することができる。
ターゲットIは上述の通り相対密度80%以上を満足する。相対密度が高くなるほど、スパッタリング中での割れを防止することができ、安定した放電をターゲットライフ終了まで連続して維持することができる。相対密度は高い程良く、好ましくは85%以上である。なお、その上限は、上記観点からは特に限定されないが、ポアを広く分布させて比抵抗のばらつきを抑制する観点から、ターゲットIの相対密度は92%以下とする。該相対密度は、好ましくは90%以下である。
[平均結晶粒径が10〜50μm、かつ相対密度が92%以上]
また本発明では、平均結晶粒径10〜50μm、および相対密度92%以上を満たし、かつ後述するラマン分光スペクトルの規定を満たすターゲットを、以下「ターゲットII」という。
ターゲットIIでは、平均結晶粒径を10〜50μm、かつ相対密度92%以上を満たすことによって、ターゲットの比抵抗を例えば1.0×102Ω・cm以下に低減でき、DCパルススパッタリング法を適用することができる。またターゲットIIの平均結晶粒径は、ターゲットの相対密度と相関がある。製造工程における焼結時に、結晶が成長して結晶粒径が大きくなるほど、相対密度が増大しターゲットの強度を十分高くすることができる。この観点からターゲットIIの平均結晶粒径は10μm以上とする。好ましくは20μm以上である。一方、平均結晶粒径が大きくなりすぎると割れが生じ易くなる。よって、ターゲットIIの平均結晶粒径は、50μm以下であり、好ましくは40μm以下である。
上記ターゲットIとターゲットIIでは、平均結晶粒径の相違等から、以下に説明の通り、上記ピーク半値幅とピーク強度の規定が多少異なる。ラマン分光スペクトル測定で485±5cm-1の領域に表れるピーク(Egピーク)について、ターゲットIのピーク半値幅は、基準となるターゲットのピーク半値幅の88%以下を満たし、かつピーク強度が、基準となるターゲットのピーク強度の106%以上を満たす。また、ターゲットIIのEgピーク半値幅は、基準となるターゲットのEgピーク半値幅の71%以下を満たし、Egピーク強度は、基準となるターゲットのEgピーク強度の127%以上を満たす。
尚、上記基準となるターゲットのピーク半値幅とピーク強度は、前記LiCoO2含有スパッタリングターゲットと同じ条件で、原料粉末を用いた焼結、加熱処理、乾式加工成形、およびボンディングを順次行って得られるターゲットに対し、前記LiCoO2含有スパッタリングターゲットと同じ条件でラマン分光スペクトル測定を行って求められる値である。また、本発明の焼結体の場合、上記基準となる焼結体のピーク半値幅とピーク強度は、前記LiCoO2含有焼結体と同じ条件で、原料粉末を用いた焼結、加熱処理、および乾式加工成形を順次行って得られる焼結体に対し、前記LiCoO2含有焼結体と同じ条件でラマン分光スペクトル測定を行って求められる値である。
基準となるターゲットのピーク半値幅を100%としたときに、ターゲットIでは、Egピーク半値幅が88%以下を満たせば、またターゲットIIでは、Egピーク半値幅が71%以下を満たせば、いずれの場合もスパッタリング時にパーティクルが十分に抑制される。以下では、100×(本発明のターゲットのピーク半値幅)/(基準となるターゲットのピーク半値幅)で求められる値を「Egピーク半値幅の変化率」ということがある。Egピーク半値幅の変化率は、ターゲットIでは、好ましくは80%以下、より好ましくは75%以下である。またターゲットIIでは、好ましくは65%以下、より好ましくは60%以下である。尚、Egピーク半値幅の変化率の下限は、製造工程等を考慮すると、ターゲットIでは70%程度であり、ターゲットIIでは40%程度である。
更に、基準となるターゲットのピーク強度を100%としたときに、ターゲットIでは、Egピーク強度が106%以上を満たせば、またターゲットIIでは、Egピーク強度が127%以上を満たせば、いずれの場合もスパッタリング時にパーティクルが十分に抑制される。以下では、100×(本発明のターゲットのピーク強度)/(基準となるターゲットのピーク強度)で求められる値を「Egピーク強度の変化率」ということがある。Egピーク強度の変化率は、ターゲットIでは、好ましくは110%以上、より好ましくは120%以上である。またターゲットIIでは、好ましくは130%以上、より好ましくは140%以上である。尚、Egピーク強度の変化率の上限は、製造工程等を考慮すると、ターゲットIでは140%程度であり、ターゲットIIでは165%程度である。
ターゲットIとして、例えば前記Egピーク半値幅が4.0cm-1以下であるものが挙げられる。上記Egピーク半値幅は、好ましくは3.6cm-1以下である。またターゲットIIとして、例えば前記Egピーク半値幅が4.4cm-1以下であるものが挙げられる。上記Egピーク半値幅は、好ましくは4.0cm-1以下である。
上記ラマン分光分析は、後記の実施例に示す方法で行うことができる。
上記ラマン分光スペクトルが上記範囲のターゲットを得る手段として、後記の通り、ターゲットの製造過程でボンディング後に表面処理を行うことが挙げられる。また上記ラマン分光スペクトルが上記範囲の焼結体を得る手段として、後記の通り、焼結体の製造過程で乾式加工成形後に表面処理を行うことが挙げられる。以下では、ターゲットの製造方法をメインに説明する。
[LiCoO2含有スパッタリングターゲットの製造方法]
[原料粉末]
原料粉末としては、LiCoO2を含む粉末を使用する。この粉末には、焼結体の所望の組成に対応させるべく他の複合酸化物を含んでいてもよい。本発明では、LiCoO2含有粉末として特別なものを使用する必要はなく、例えば、市販のLiCoO2粉末をそのまま使用することができる。上記ターゲットIとターゲットIIのいずれを製造する場合にも、上記原料粉末の平均粒径D50として10μm以下、純度99.9%以上のものを用いることができる。
[焼結]
本発明に係るLiCoO2含有焼結体の製造方法では、ホットプレス法を採用する。このホットプレス法によれば、加圧によるアシスト効果により低い焼結温度でも比較的容易に相対密度の制御を行うことができる。
上記ホットプレス法では黒鉛型やセラミックス型を用いることができる。このうち、寸法によらず使用できる黒鉛型が好ましい。
以下では、黒鉛型を用いたホットプレス法による焼結を例に挙げて説明する。
上記の原材料粉末を黒鉛型に充填する。黒鉛型への充填に当たっては、上記原材料粉末を、予備成形することなく直接、充填しても良いし、或いは、別の金型に一旦充填し、金型プレスで予備成形した後、黒鉛型に充填しても良い。後者の予備成形は、ホットプレス工程で所定の型にセットする際のハンドリング性を向上させる目的で行なわれるものであり、例えば、約0.5〜1.0tonf/cm2程度の圧力を加えて予備成形体とすることが好ましい。
ホットプレスによる焼結を行うに当たり、平均結晶粒径が3〜5μm、かつ相対密度が80〜92%のターゲットを得る場合は、焼結前の加熱時(焼結温度に達するまでの、昇温過程)の雰囲気を真空雰囲気にすることが重要である。これにより、相対密度を上記範囲内とすることができる。真空度は特に限定されないが、おおむね3Pa未満に制御することが好ましい。焼結前の過程では、雰囲気に留意することが重要であり、それ以外の条件は特に限定されない。例えば、昇温速度は、おおむね、1〜20℃/分の範囲内であれば良い。一方、平均結晶粒径が10〜50μm、かつ相対密度が92%以上のターゲットを得る場合は、焼結前の加熱時(焼結温度に達するまでの、昇温過程)の雰囲気と焼結時の雰囲気は、特に限定されない。
次に、焼結温度に達したら焼結を行う。焼結時の雰囲気は、真空雰囲気、不活性雰囲気のいずれでも良い。不活性雰囲気に用いられるガスとしては、例えば、Ar、N2などの不活性ガスが挙げられる。雰囲気制御方法は特に限定されず、例えば炉内にArガスやN2ガスを導入することによって雰囲気を調整すればよい。
また、上記ホットプレス法による焼結時の温度は、700〜1000℃、圧力は10〜100MPaに制御することが好ましい。
焼結温度を700℃以上にすることにより、焼結体の相対密度が向上する。より好ましい焼結温度は、800℃以上である。また、焼結温度を1000℃以下にすることにより、焼結による質量減少を抑制し、焼結体の相対密度を向上させることができる。焼結温度は、より好ましくは950℃以下である。
焼結時の圧力を10MPa以上にすることにより、焼結体の相対密度が向上する。より好ましい圧力は、20MPa以上である。また、焼結時の圧力を100MPa以下にすることにより、黒鉛型の破損を抑制することができる。より好ましい圧力は、50MPa以下である。
また、焼結の際、最高温度域に達したときに保持しても良い。このときの保持時間は、焼結時の温度や圧力などによっても相違するが、おおむね、100時間以下であることが好ましい。原材料などとの関係で焼結温度が最適な範囲に設定されている場合は、保持時間はゼロとすることが可能である。
[焼結後の加熱処理]
次に、酸素を含む雰囲気下で加熱処理する。これにより、焼結体の比抵抗が低下する。前述したように本発明では、所定のポア率を有する領域を多く確保するとの観点から、黒鉛型を用いたホットプレスによる焼結を行なうが、ホットプレス後の焼結物は比抵抗が高い。これは、原材料が黒鉛型と接触して還元反応が生じ、焼結体の酸素が不足するためと推測される。そこで、還元反応によって不足した酸素を、上記のように酸素雰囲気下での加熱処理によって補うことにより、最終的に得られる焼結体の比抵抗を低下させる。
ここで、酸素を含む雰囲気とは、たとえば酸素を20体積%以上含む雰囲気、代表的には大気が挙げられ、好ましくは酸素を50体積%以上、より好ましくは90体積%以上、さらに好ましくは100体積%含む雰囲気である。
上記の加熱処理は、所望の特性が得られるよう、酸素を含む雰囲気中で加熱することが重要であって、具体的な熱処理条件は、使用する原材料の種類、焼結体のサイズ、一度に熱処理する量などの関係で適宜適切に制御すれば良い。例えば、300℃以上1200℃以下の温度範囲で、おおむね、1〜100時間熱処理することが推奨される。
熱処理温度が低すぎる場合、比抵抗を十分に低下させることができず、例えば約108Ωcmレベルにとどまる。一方、熱処理温度が高すぎると、焼結による質量減少が顕著になり、良好な焼結体が得られない。より好ましい加熱温度は、600〜1100℃、特に好ましい加熱温度は800〜1100℃である。
また、加熱時間は、おおむね、100時間以下であることが好ましい。加熱時間が長すぎると、焼結による質量減少が顕著になり、良好な焼結体が得られない。より好ましい加熱時間は、5〜25時間、特に好ましい加熱時間は8〜15時間である。
上記の加熱時間は、所望とする比抵抗が得られるまで、加熱温度との関係で適切に制御することが好ましい。一般的な傾向として、加熱温度が高い程、また、加熱時間が長い程、比抵抗は低下する傾向にある。よって、加熱温度が高い場合には、加熱時間は短く設定できるのに対し、加熱温度が低い場合には、加熱時間を長く設定することが好ましい。例えば、加熱温度がおおむね、300℃と低い場合は、加熱時間を長くすることが好ましい。一方、加熱温度が比較的高い場合には、加熱時間にかかわらず、低い比抵抗を実現できるようになる。
[乾式加工成形、ボンディング]
このようにして得られた焼結物を、砥石による研削や研磨などの乾式加工成形で、ターゲットのサイズに加工する。スパッタリングターゲットは、バッキングプレートにボンディングされる。例えばCu製バッキングプレートにインジウム系のろう材を用いてボンディングを行う。
[表面処理]
上記パーティクルが生じるターゲットの表面を、SEM観察すると、表面には、乾式加工成形に起因する屑、具体的には切削時に発生した切削粉や研磨くずが多数存在していた。更に本発明者らが調査した結果、乾式加工成形したLiCoO2含有ターゲット表面には、LiCoO2以外の副生成物、即ち研磨によりダメージを受け、ターゲットから分離はしていないが結晶性の低下した箇所が存在すること分かった。上記副生成物等が上記ターゲットの電気抵抗率の変動、ターゲットの安定放電に影響することも分かった。本発明では、上記ボンディング後に表面処理を行うことによって、上記の切削粉等を除去し、結晶性が高く電子伝導性に優れたLiCoO2本来のスパッタリングターゲット面を得ることができる。
まずLiCoO2結晶のモース硬度は、文献などから6〜8(ビッカース硬度で500〜1100)であることから、表面処理に用いる材料として、モース硬度6(ビッカース硬度で500)以下のものを用いて、ターゲット表面をブラストや摺動の表面処理を行えば、ターゲットを構成するLiCoO2結晶を傷つけることなく、切削粉等のみを取り除くことが可能となるため好ましい。
具体的には、下記下記(i)〜(iii)の少なくともいずれかを行うことが挙げられる。これらのうち、好ましくはスパッタリング、ドライアイス洗浄のうちの1以上であり、より好ましくはスパッタリングである。
(i)スパッタリング
DCパルス印加によるDCパルススパッタリング法
装置:DCスパッタリング装置(HSM−542、島津製作所)
基板温度:10〜80℃
使用ガス:Arガスもしくは、Ar−O2混合ガス(O2量は体積比3〜35%)
ガス圧:0.13〜3Pa
ガス流量:10〜50sccm
(ii)ドライアイス洗浄
ドライアイス粒子の形状:目視で粒状であればよい
ドライアイス粒子のサイズ:直径3mm
圧縮空気圧力:0.3〜0.45MPa
ノズルサイズ:W0.3×L2.5mm
ターゲットとの距離:5cm
噴射時間:2〜5秒
(iii)高分子材料での摺動
高分子材料として、オレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、シリコン系樹脂、フッ素含有樹脂等からなるものを用い、約0.5MPaの力で摺動することが挙げられる。例えば、プラスチック消しゴム等の様なポリ塩化ビニルにフタル酸系可塑剤を加えて固めたものや、メラミン樹脂フォーム等のスポンジが挙げられる。
尚、切削粉等のその他の除去方法として、例えば超音波洗浄が挙げられる。しかし前述した通り、一貫した乾式プロセスを必須とするLiCoO2含有ターゲットの製造では、有機溶媒といえども液体に浸すことは避けた方がよい。仮に、超音波洗浄で上記切削粉等を十分に除去しようとすると、ターゲット本体の劣化を招くなどその他の問題が生じるため好ましくない。
上記では、本発明のターゲットの製造方法を示したが、本発明の焼結体を製造する場合には、上記焼結物を得た後、上記の通り、焼結後の加熱処理、乾式加工成形、および表面処理を行って得ることができる。この様にして得られた焼結体も、前述の通り本発明のターゲットと同じ構成および効果を有する。また、該焼結体を用いボンディングを行って得られるターゲットも、上述したターゲットと同じ構成および効果を有する。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって制限されず、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
[実施例1]
〔LiCoO2含有焼結物の作製〕
原料粉末として、市販のLiCoO2粉末(純度99.99%以上、平均粒径10μm以下の微粒材)を用いた。上記の原材料を、直接、黒鉛型にセットし、ホットプレスによる焼結を行い、LiCoO2含有焼結物を得た。焼結条件は、相対密度83%のLiCoO2焼結物の場合は、900℃で11時間保持とし、相対密度93%のLiCoO2焼結物の場合は、前記相対密度83%のLiCoO2焼結体に対して追加アニール、詳細には、更に1100℃で22時間保持した。このようにして得られた相対密度83%のLiCoO2焼結物と相対密度93%のLiCoO2焼結物を用いて、図1に示す製造工程でターゲットを得た。上記各焼結物に対し、酸素100体積%の酸素雰囲気下で900℃に昇温し、当該温度で11時間保持する加熱処理を行った。
〔LiCoO2含有スパッタリングターゲットの作製〕
上記酸素雰囲気下で加熱処理後の各LiCoO2焼結物を、砥石による研削や研磨などの乾式加工成形で、φ101.6mm(4インチ)×5mmt(t=厚み)のサイズとし、Cu製バッキングプレートにインジウム系のろう材を用いてボンディングし、最後に、表1に示す各表面処理を施し、上記サイズのLiCoO2含有スパッタリングターゲットを得た。表1に示す各表面処理は下記に示す条件で行った。尚、基準となるターゲットとして、上記表面処理を行わない例も用意した。
〔表面処理〕
(スパッタリング)
スパッタリングは、DCスパッタリング装置(T/S距離=4cm、HSM−542、島津製作所)を用いて行った。具体的に、DCパルス印加によるDCパルススパッタリング法で実施し、放電出力は6.2W/cm2とした。パルス電源には、型番PV3−HTHV−0510、PEKURISを用い、片極性40kHz(80kHz相当)でパルス幅5μsの条件で実施した。成膜ガスには、Ar−O2混合ガスを用いた。
(ドライアイス洗浄)
ドライアイス洗浄は、3mmのドライアイスペレットを用いて、2〜5秒間実施した。圧縮空気圧力は0.35〜0.40MPaとし、ノズル先端の寸法は0.3mm×2.5mmであり、LiCoO2含有スパッタリングターゲットの平面に対し角度90〜60°で行った。
(高分子材料による摺動)
高分子材料による摺動は、プラスチック字消しやメラミン樹脂フォームなどの高分子材料を用い、削られた摺動材料の色が、母材と同じになるまで擦り続けた。
(超音波洗浄)
LiCoO2含有スパッタリングターゲットを、アセトンを満たした洗浄槽に沈めて、15分間、超音波処理した。
この様にして得られたターゲットを用いて、下記の通り、ラマン分光スペクトルの測定、ターゲット表面のSEM観察、一部の試料については、成膜のためのスパッタリングを行いパーティクルの発生量を測定した。
〔ラマン分光スペクトルの測定〕
LiCoO2含有スパッタリングターゲットのラマン分光スペクトルの測定には顕微レーザーラマン分光分析装置(LabRAM HR−800、堀場製作所/Jobin Yvon製)を用いた。レーザー波長514.5nmと測定範囲250〜790cm-1をLCO膜分析の標準条件とした。照射レーザー出力は2mW、分析範囲はφ2μm、分析深さは約500nm以下とした。LCO膜のピーク分離には、高温(HTと標記する)相LiCoO2のピークとして485cm-1,および595cm-1と、低温(LTと標記する)相LiCoO2のピークとして450cm-1,485cm-1,591cm-1,および607cm-1を用い、Co(酸化コバルトII、III)のピークとして、197cm-1,484cm-1,525cm-1,621cm-1,および694cm-1を用いて、ピーク半値幅とピーク強度を求めた。そして、No.1の表面処理なしの場合のEgピーク半値幅に対するNo.2〜5の各Egピーク半値幅の百分率での割合、およびNo.6の表面処理なしの場合のEgピーク半値幅に対するNo.7、8の各Egピーク半値幅の百分率での割合を、Egピーク半値幅の変化率として求めた。Egピーク強度についても、上記Egピーク半値幅と同様にしてEgピーク強度の変化率を求めた。その結果を表1に示す。
〔ターゲット表面のSEM観察〕
表1のNo.2とNo.7については、上記得られたLiCoO2含有スパッタリングターゲットを用いてその表面のSEM観察を行った。また表1のうちのその他の例については、LiCoO焼結物の小片(約20mm×40mm×厚み5mm)に対して上記と同じ工程で表面処理等したものをSEM観察に用いた。
詳細には、SEM装置として日立ハイテクノロジーズ社製S−4000とFEI社製QUANTA 200Fを用いた。そして、ターゲット材により結晶粒径が異なるため倍率1000〜5000倍で、サイズが125μm×150μm〜25μm×30μmの視野を3〜5視野観察した。そしていずれの視野においても、切削粉等が生じていない場合を、ターゲット表面の切削粉等が「なし」、少なくともいずれかの視野で切削粉等が確認された場合を、ターゲット表面の切削粉等が「あり」と評価した。
上記SEM観察の一例を、図2の(a)と(b)に示す。図2(a)は表1のNo.1の顕微鏡観察写真であり、ターゲット表面の切削粉等が「あり」の状態を示す。また図2(b)は表1のNo.3の顕微鏡観察写真であり、ターゲット表面の切削粉等が「なし」の状態を示す。その結果を表1に示す。
〔スパッタリング時のフレーク発生量〕
表1のNo.1とNo.3については、上述した表面処理としてのスパッタリングと同じ条件でスパッタリングを行い、フレークの発生量も確認した。このフレークとは、スパッタリング中に発生したパーティクルがターゲット表面に再付着し、剥がれ落ちたものである。その結果、No.1ではフレーク発生量が91mgであったのに対し、No.3では35mgと少なかった。
表1および図2から次のことがわかる。No.1は、LiCoO2焼結体を乾式加工成形したままのターゲットである。このターゲットは、ラマン分光スペクトルにおいて本発明の規定を満たしていないため、ターゲットの表面は、図2(a)に示す通り、乾式加工成形時に発生した切削粉等が結晶粒の凹凸部分に残留した。尚、これらの切削粉等は、スパッタリング中に取り除かれるが、スパッタ放電初期のパーティクル発生源となるため好ましくない。
またNo.1と同様に表面処理を行っていないNo.6のターゲットも、ラマン分光スペクトルにおいて本発明の規定を満たしておらず、ターゲット表面に切削粉等が発生した。更にNo.5のターゲットも、ラマン分光スペクトルにおいて本発明の規定を満たしておらず、ターゲット表面に切削粉等が発生した。このNo.5は、非水溶媒中で超音波洗浄を行った例である。非水溶媒中で超音波洗浄では、結晶粒子の表面に乾式加工成形中に擦り込まれた切削粉等が、多少付着しており、洗浄が不十分であった。
これに対し、No.2〜4、7および8のターゲットは、ラマン分光スペクトルにおいて本発明の規定を満たしており、ターゲット表面に切削粉等が存在しなかった。これらの例では、乾式加工成形で発生し、凹凸部分に残留していた切屑粉を、ドライアイス洗浄や可塑剤で摺動して除去した。その一例としてドライアイス洗浄を行ったNo.3のターゲットの表面写真を図2(b)に示す。この図2(b)に示す通り、表面処理を行ったターゲットの表面には切削粉等が存在せず、LiCoO2結晶粒子の表面が露出していることが確認された。
特に、No.2のEgピーク半値幅は2.9cm-1であって、基準となるターゲットであるNo.1のEgピーク半値幅4.1cm-1よりも十分狭くなった。同様に、No.7のEgピーク半値幅は2.6cm-1であって、基準となるターゲットであるNo.6のEgピーク半値幅6.2cm-1よりも十分狭くなった。このNo.2やNo.7の通りEgピーク半値幅が狭いほど、製造工程で生じる切削粉が存在せず、かつLiCoO2結晶性が高いことを意味する。結晶性の高いLiCoO2は優れた電気化学特性を示し、電子伝導し易いことから、安定したスパッタ放電が可能となる。
Li系薄膜二次電池の正極を構成するLiCoO2含有薄膜の形成に、本発明のLiCoO2含有スパッタリングターゲットを用いれば、パーティクルの発生を十分に抑えることができ、安定したスパッタ放電を継続することができる。その結果、安定した特性を示すLi系薄膜二次電池を製造することができる。

Claims (8)

  1. 平均結晶粒径3〜5μm、および相対密度80〜92%を満たし、更に、
    ラマン分光スペクトル測定で485±5cm-1の領域に表れるピークについて、
    ピーク半値幅が、基準となるターゲットのピーク半値幅の88%以下であり、かつ
    ピーク強度が、基準となるターゲットのピーク強度の106%以上であることを特徴とするLiCoO2含有スパッタリングターゲット。
    ここで、前記基準となるターゲットのピーク半値幅とピーク強度は、前記LiCoO2含有スパッタリングターゲットと同じ条件で、原料粉末を用いた焼結、加熱処理、乾式加工成形、およびボンディングを順次行って得られるターゲットに対し、前記LiCoO2含有スパッタリングターゲットと同じ条件でラマン分光スペクトル測定を行って求められる値である。
  2. 平均結晶粒径10〜50μm、および相対密度92%以上を満たし、更に、
    ラマン分光スペクトル測定で485±5cm-1の領域に表れるピークについて、
    ピーク半値幅が、基準となるターゲットのピーク半値幅の71%以下であり、かつ
    ピーク強度が、基準となるターゲットのピーク強度の127%以上であることを特徴とするLiCoO2含有スパッタリングターゲット。
    ここで、前記基準となるターゲットのピーク半値幅とピーク強度は、前記LiCoO2含有スパッタリングターゲットと同じ条件で、原料粉末を用いた焼結、加熱処理、乾式加工成形、およびボンディングを順次行って得られるターゲットに対し、前記LiCoO2含有スパッタリングターゲットと同じ条件でラマン分光スペクトル測定を行って求められる値である。
  3. 平均結晶粒径3〜5μm、および相対密度80〜92%を満たし、かつラマン分光スペクトル測定で、485±5cm-1の領域に表れるピークの半値幅が4.0cm-1以下であることを特徴とするLiCoO2含有スパッタリングターゲット。
  4. 平均結晶粒径10〜50μm、および相対密度92%以上を満たし、かつラマン分光スペクトル測定で、485±5cm-1の領域に表れるピークの半値幅が4.4cm-1以下であることを特徴とするLiCoO2含有スパッタリングターゲット。
  5. 平均結晶粒径3〜5μm、および相対密度80〜92%を満たし、更に、
    ラマン分光スペクトル測定で485±5cm-1の領域に表れるピークについて、
    ピーク半値幅が、基準となる焼結体のピーク半値幅の88%以下であり、かつ
    ピーク強度が、基準となる焼結体のピーク強度の106%以上であることを特徴とするLiCoO2含有焼結体。
    ここで、前記基準となる焼結体のピーク半値幅とピーク強度は、前記LiCoO2含有焼結体と同じ条件で、原料粉末を用いた焼結、加熱処理、および乾式加工成形を順次行って得られる焼結体に対し、前記LiCoO2含有焼結体と同じ条件でラマン分光スペクトル測定を行って求められる値である。
  6. 平均結晶粒径10〜50μm、および相対密度92%以上を満たし、更に、
    ラマン分光スペクトル測定で485±5cm-1の領域に表れるピークについて、
    ピーク半値幅が、基準となる焼結体のピーク半値幅の71%以下であり、かつ
    ピーク強度が、基準となる焼結体のピーク強度の127%以上であることを特徴とするLiCoO2含有焼結体。
    ここで、前記基準となる焼結体のピーク半値幅とピーク強度は、前記LiCoO2含有焼結体と同じ条件で、原料粉末を用いた焼結、加熱処理、および乾式加工成形を順次行って得られる焼結体に対し、前記LiCoO2含有焼結体と同じ条件でラマン分光スペクトル測定を行って求められる値である。
  7. 平均結晶粒径3〜5μm、および相対密度80〜92%を満たし、かつラマン分光スペクトル測定で、485±5cm-1の領域に表れるピークの半値幅が4.0cm-1以下であることを特徴とするLiCoO2含有焼結体。
  8. 平均結晶粒径10〜50μm、および相対密度92%以上を満たし、かつラマン分光スペクトル測定で、485±5cm-1の領域に表れるピークの半値幅が4.4cm-1以下であることを特徴とするLiCoO2含有焼結体。
JP2015220456A 2015-11-10 2015-11-10 LiCoO2含有スパッタリングターゲットおよびLiCoO2含有焼結体 Expired - Fee Related JP6326396B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015220456A JP6326396B2 (ja) 2015-11-10 2015-11-10 LiCoO2含有スパッタリングターゲットおよびLiCoO2含有焼結体

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015220456A JP6326396B2 (ja) 2015-11-10 2015-11-10 LiCoO2含有スパッタリングターゲットおよびLiCoO2含有焼結体

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2017088956A JP2017088956A (ja) 2017-05-25
JP6326396B2 true JP6326396B2 (ja) 2018-05-16

Family

ID=58768229

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2015220456A Expired - Fee Related JP6326396B2 (ja) 2015-11-10 2015-11-10 LiCoO2含有スパッタリングターゲットおよびLiCoO2含有焼結体

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6326396B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US10961637B2 (en) 2017-09-28 2021-03-30 Atotech Deutschland Gmbh Method for electrolytically depositing a zinc nickel alloy layer on at least a substrate to be treated

Families Citing this family (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6883431B2 (ja) * 2017-01-20 2021-06-09 三井金属鉱業株式会社 LiCoO2焼結体およびその製造方法
JP2020027770A (ja) * 2018-08-14 2020-02-20 株式会社アルバック 薄膜リチウム二次電池及び薄膜リチウム二次電池の製造方法
JP6885981B2 (ja) * 2019-03-29 2021-06-16 Jx金属株式会社 スパッタリングターゲットの梱包物の作製方法及び輸送方法
CN110274900B (zh) * 2019-07-11 2021-07-30 长春工业大学 一种原位实时表征太阳能电池内部界面的监测方法及系统

Family Cites Families (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR100563047B1 (ko) * 2003-07-24 2006-03-24 삼성에스디아이 주식회사 양극 활물질 및 이를 이용한 리튬 2차 전지
US8062486B2 (en) * 2006-07-27 2011-11-22 Jx Nippon Mining & Metals Corporation Lithium-containing transition metal oxide target, process for producing the same and lithium ion thin film secondary battery
JP2009249689A (ja) * 2008-04-07 2009-10-29 Toyota Motor Corp リチウム複合酸化物薄膜の製造方法、及び、電極体の製造方法
WO2011007412A1 (ja) * 2009-07-13 2011-01-20 トヨタ自動車株式会社 正極活物質層の製造方法
WO2011086650A1 (ja) * 2010-01-15 2011-07-21 株式会社アルバック LiCoO2焼結体の製造方法及びスパッタリングターゲット
JP5969786B2 (ja) * 2012-03-21 2016-08-17 株式会社コベルコ科研 LiCoO2焼結体およびスパッタリングターゲット、並びにその製造方法
JP6157387B2 (ja) * 2013-03-13 2017-07-05 株式会社コベルコ科研 LiCoO2含有焼結体およびスパッタリングターゲット、並びにLiCoO2含有焼結体の製造方法
JP6231428B2 (ja) * 2013-04-30 2017-11-15 株式会社コベルコ科研 Li含有酸化物ターゲット接合体およびその製造方法

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US10961637B2 (en) 2017-09-28 2021-03-30 Atotech Deutschland Gmbh Method for electrolytically depositing a zinc nickel alloy layer on at least a substrate to be treated

Also Published As

Publication number Publication date
JP2017088956A (ja) 2017-05-25

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6326396B2 (ja) LiCoO2含有スパッタリングターゲットおよびLiCoO2含有焼結体
JP5704571B2 (ja) LiCoO2焼結体の製造方法
JP6264846B2 (ja) 酸化物焼結体、スパッタリングターゲットおよびその製造方法
TWI498438B (zh) Sputtering target and its manufacturing method
US20180127866A1 (en) Method for Manufacturing Sputtering Target
JP5969786B2 (ja) LiCoO2焼結体およびスパッタリングターゲット、並びにその製造方法
US20120305391A1 (en) MANUFACTURING METHOD FOR LiCoO2 SINTERED BODY AND SPUTTERING TARGET
JP5887819B2 (ja) 酸化亜鉛焼結体、それから成るスパッタリングターゲットおよび酸化亜鉛薄膜
JP6157387B2 (ja) LiCoO2含有焼結体およびスパッタリングターゲット、並びにLiCoO2含有焼結体の製造方法
EP3219690B1 (en) Lithium cobalt sintered body and sputtering target produced by using the sintered body, production method of lithium cobalt oxide sintered body, and thin film formed from lithium cobalt oxide
KR101279277B1 (ko) ZnO-Ga2O3계 스퍼터링 타겟용 소결체 및 그 제조 방법
EP3103894A1 (en) LICoO2 SPUTTERING TARGET ,PRODUCTION THEREFOR, AND POSITIVE ELECTRODE MATERIAL THIN FILM
KR101648656B1 (ko) Li 함유 인산염 화합물 소결체 및 스퍼터링 타깃, 및 그 제조 방법
JP2014125422A (ja) 酸化物焼結体、酸化物焼結体スパッタリングターゲットおよびその製造方法
JP4026194B2 (ja) スパッタリングターゲット用ZnO−Ga2O3系焼結体およびその製造方法
US20210292887A1 (en) Al2O3 Sputtering Target and Production Method Thereof
WO2017064920A1 (ja) LiCoO2含有焼結体およびLiCoO2含有スパッタリングターゲット、並びにLiCoO2含有焼結体の製造方法
JP6585251B2 (ja) コバルト酸リチウム焼結体及び該焼結体を用いて作製されるスパッタリングターゲット及びコバルト酸リチウム焼結体の製造方法並びにコバルト酸リチウムからなる薄膜
CN106278248A (zh) 溅射靶

Legal Events

Date Code Title Description
RD02 Notification of acceptance of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7422

Effective date: 20170223

RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20170322

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20170731

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20180320

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20180322

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20180416

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6326396

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees