JP6320447B2 - 前癌状態の胃癌検出キット及び前癌状態の胃癌細胞の検出方法 - Google Patents

前癌状態の胃癌検出キット及び前癌状態の胃癌細胞の検出方法 Download PDF

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Description

本発明は、早期胃癌検出キット及び早期胃癌細胞の検出方法に関する。
癌/精巣抗原は、癌細胞と精巣以外では発現が認められないタンパク質の総称である。癌/精巣抗原の1つであるKitakyushu lung cancer antigen−1(以下、「KK−LC−1」という。)は、当初、肺癌細胞株が特異的に発現する抗原として同定されたものである(例えば、非特許文献1を参照。)。
ところで、胃癌は、早期に発見され、リンパ節転移や遠隔転移を認めない症例では、治癒切除により予後良好である。胃癌の5年生存率による治療成績は、Stage Iは約90%、Stage IIは約70%、Stage IIIは約50%、Stage IVは約10%とされている。このため、胃癌の早期発見は重要である。
ほとんどの胃癌は、早期段階では無症状であることが多い。したがって、自覚症状により胃癌を早期発見することは困難である。自覚症状としては、胃部不快感、吐き気、黒色便、貧血、体重減少、易疲労感、発熱、軟便化等が挙げられる。このような自覚症状が現れた後に、進行、転移をした状態で胃癌が発見される場合も少なくない。そこで、早期段階で胃癌を検出する技術が求められている。
Identification of a new cancer/germline gene, KK-LC-1, encoding an antigen recognized by autologous CTL induced on human lung adenocarcinoma. Fukuyama T, Hanagiri T, Takenoyama M, Ichiki Y, Mizukami M, So T, Sugaya M, So T, Sugio K, Yasumoto K. Cancer Res. 2006 May 1;66(9):4922-8.
このような背景のもと、本発明は、早期胃癌を検出する技術を提供することを目的とする。
本発明は以下の態様を含む。
(1)KK−LC−1に対する特異的結合物質、KK−LC−1遺伝子のcDNAを増幅するためのプライマーセット又はKK−LC−1遺伝子のmRNAに特異的にハイブリダイズするプローブ、を備える、早期胃癌検出キット。
(2)KK−LC−1に対する特異的結合物質を備え、前記特異的結合物質が蛍光色素又はポジトロン核種で標識されている、(1)に記載の早期胃癌検出キット。
(3)前記特異的結合物質が蛍光色素で標識されており、内視鏡による検出用である、(2)に記載の早期胃癌検出キット。
(4)ヘリコバクター・ピロリ感染検出薬を更に備える、(1)〜(3)のいずれかに記載の早期胃癌検出キット。
(5)胃組織試料におけるKK−LC−1の発現を検出する工程を備える、早期胃癌細胞の検出方法。
(6)前記胃組織試料が胃下部領域に由来するものである、(5)に記載の早期胃癌細胞の検出方法。
(7)前記胃組織試料が幽門腺に由来するものである、(5)又は(6)に記載の早期胃癌細胞の検出方法。
(8)前記胃組織試料におけるヘリコバクター・ピロリ感染を検出する工程を更に備える、(5)〜(7)のいずれかに記載の早期胃癌細胞の検出方法。
本発明によれば、早期胃癌を検出する技術を提供することができる。
胃、食道及び十二指腸を示す模式図である。 (a)は、胃底腺に由来する代表的な胃組織試料の顕微鏡写真である。倍率は400倍である。(b)は、幽門腺に由来する代表的な胃組織試料の顕微鏡写真である。倍率は400倍である。(c)は、胃底腺及び幽門腺の境界領域に由来する代表的な胃組織試料の顕微鏡写真である。倍率は400倍である。
[早期胃癌検出キット]
1実施形態において、本発明は、KK−LC−1に対する特異的結合物質、KK−LC−1遺伝子のcDNAを増幅するためのプライマーセット又はKK−LC−1遺伝子のmRNAに特異的にハイブリダイズするプローブ、を備える、早期胃癌検出キットを提供する。
本明細書において、早期胃癌とは、前癌状態又はステージIの胃癌を意味する。ここで、前癌状態とは、外見上正常であるが放置すると癌ができると考えられる状態を意味する。また、ステージIの胃癌とは、国際対がん連合(UICC)が提案しているTNM分類における、IA又はIBに分類される胃癌を意味する。
実施例において後述するように、発明者らは、胃癌患者由来の外見上正常な胃組織試料においてもKK−LC−1の発現が認められることを明らかにした。したがって、被検者由来の胃組織試料におけるKK−LC−1の発現を検出することにより、早期胃癌を検出することができる。KK−LC−1の発現は、タンパク質レベルで検出してもよいし、mRNAレベルで検出してもよい。なお、ヒトKK−LC−1遺伝子のRefSeq IDはNM_001017978である。
(特異的結合物質)
本実施形態のキットにおいて、特異的結合物質としては、例えば、抗体、抗体断片、アプタマー等が挙げられる。抗体は、例えば、マウス等の動物にKK−LC−1タンパク質又はその断片を抗原として免疫することによって作製することができる。あるいは、例えば、ファージライブラリーのスクリーニングにより作製することができる。抗体断片としては、Fv、Fab、scFv等が挙げられる。
抗KK−LC−1抗体は、モノクローナル抗体であってもよく、ポリクローナル抗体であってもよい。また、市販の抗体であってもよい。また、抗KK−LC−1抗体はヒト化されていてもよい。ヒト化された抗体はヒトに投与しても問題が生じにくい。
アプタマーとは、標的物質に対する特異的結合能を有する物質である。アプタマーとしては、核酸アプタマー、ペプチドアプタマー等が挙げられる。標的ペプチドに特異的結合能を有する核酸アプタマーは、例えば、systematic evolution of ligand by exponential enrichment(SELEX)法等により選別することができる。また、標的ペプチドに特異的結合能を有するペプチドアプタマーは、例えば酵母を用いたTwo−hybrid法等により選別することができる。
上記の特異的結合物質は蛍光色素で標識されていてもよい。ここで、「蛍光色素で標識されている」とは、上記の特異的結合物質が直接蛍光色素で標識されている場合、及び上記の特異的結合物質に結合する2次抗体等が蛍光色素で標識されている場合を含む。
発明者らは、以前に、KK−LC−1タンパク質が細胞膜表面上に局在することを明らかにしている。発明者らは更に、KK−LC−1タンパク質のC末端側を細胞の外部に露出した状態で細胞膜表面上に存在することを明らかにしている。
そこで、例えば、被検者の胃に蛍光色素で標識された特異的結合物質を接触させ、内視鏡等を用いて、蛍光色素による染色状況を確認することにより、KK−LC−1タンパク質の発現を確認することができる。すなわち、上記の特異的結合物質は、蛍光色素で標識されており、内視鏡による検出用であってもよい。ここで、内視鏡は顕微鏡を内蔵しているものであってもよい。
あるいは、上記の特異的結合物質はポジトロン核種で標識されていてもよい。すなわち、特異的結合物質はポジトロン核種で標識されたポジトロン断層法(positron emission tomography、PET)用プローブであってもよい。
PETとは、陽電子(ポジトロン)の検出を利用したコンピューター断層撮影技術である。PET診断に用いられるポジトロン核種としては、11C(半減期20.4分)、13N(半減期9.97分)、15O(半減期2.04分)、18F(半減期109.8分)、64Cu(半減期12.7時間)、89Zr(半減期78.91時間)等が挙げられる。
上記の特異的結合物質を、上記のいずれかのポジトロン核種で標識することにより、KK−LC−1タンパク質特異的なPET用プローブを製造することができる。上記の特異的結合物質をPET用プローブとして用いることにより、低侵襲で高精度に早期胃癌を検出することができる。
抗体やアプタマーをポジトロン核種で標識する方法としては、例えば、DOTA(1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−テトラ酢酸)等のキレート剤を抗体やアプタマーに結合させ、続いて、DOTAに64Cu等のポジトロン核種をキレートさせる方法等が挙げられる。抗体やアプタマーにDOTAを結合させる方法としては、例えば、抗体やアプタマーとDOTA−NHS(N−hydroxysuccinimide)エステルとを反応させる方法等が挙げられる。
また、上記の特異的結合物質を用いたELISA法等により、被検者の血清又は血漿中のKK−LC−1タンパク質を検出してもよい。これにより、低侵襲で高精度に早期胃癌を検出することができる。
(KK−LC−1遺伝子のcDNAを増幅するためのプライマーセット)
上述したように、KK−LC−1の発現はmRNAレベルで検出してもよい。mRNAレベルで検出する方法としては、例えば、胃組織試料から調製したRNAをcDNAに逆転写し、このcDNAを鋳型として遺伝子増幅を行うこと等が挙げられる。
したがって、本実施形態の早期胃癌検出キットは、KK−LC−1遺伝子のcDNAを増幅するためのプライマーセットであってもよい。プライマーセットの塩基配列は、KK−LC−1遺伝子のcDNAを特異的に増幅できる限り特に制限されないが、例えば、配列番号1に示すセンスプライマー及び配列番号2に示すアンチセンスプライマーのセットであってもよい。
(KK−LC−1遺伝子のmRNAに特異的にハイブリダイズするプローブ)
KK−LC−1の発現をmRNAレベルで検出する別の方法として、胃組織試料から調整したRNAをKK−LC−1遺伝子のmRNAに特異的にハイブリダイズするプローブと接触させ、KK−LC−1遺伝子のmRNAと上記プローブとの結合を検出することが挙げられる。より具体的には、例えば、DNAマイクロアレイ解析、ノーザンブロッティング等が挙げられる。
プローブは、KK−LC−1遺伝子のmRNAに特異的にハイブリダイズするものであれば特に限定されない。また、プローブは、担体上に固定されてDNAマイクロアレイ等を構成していてもよい。
(ヘリコバクター・ピロリ感染検出薬)
また、実施例において後述するように、ヘリコバクター・ピロリに感染した胃癌患者由来の外見上正常な胃組織試料では、KK−LC−1の発現の陽性率が更に向上する。したがって、本実施形態の早期胃癌検出キットは、ヘリコバクター・ピロリ感染検出薬を更に備えていてもよい。KK−LC−1の発現と共に、ヘリコバクター・ピロリに感染しているか否かを検出することにより、より高精度に早期胃癌を検出することができる。ヘリコバクター・ピロリ感染の検出は、胃組織試料を用いて行ってもよいし、胃組織試料が由来する被検者の血清等を用いて行ってもよい。
ヘリコバクター・ピロリ感染検出薬としては、特に限定されず、ヘリコバクター・ピロリの存在を検出する検出薬、又はヘリコバクター・ピロリの感染によって生じる炎症反応若しくは免疫応答を検出する検出薬等が挙げられる。
ヘリコバクター・ピロリの存在を検出する検出薬としては、ヘリコバクター・ピロリ由来の遺伝子又はタンパク質を検出する検出薬が挙げられる。ヘリコバクター・ピロリ由来のタンパク質としては、ウレアーゼA、ウレアーゼB等のウレアーゼ;FlaA、FlaB、FliD、FliK、FlgE、FlgM等の鞭毛タンパク質;空胞化毒素(VacA);毒素随伴タンパク質(CagA);好中球活性化タンパク質(NapA)等が挙げられる。また、ヘリコバクター・ピロリ由来の遺伝子としては、上述したヘリコバクター・ピロリ由来のタンパク質をコードする遺伝子が挙げられる。
また、ヘリコバクター・ピロリ感染によって生じる炎症反応若しくは免疫応答を検出する検出薬としては、被検者由来の血清中の抗ヘリコバクター・ピロリIgG抗体を検出する検出薬、ヘリコバクター・ピロリ感染により、胃粘膜上皮細胞から放出されるIL−8を検出する検出薬、IL−8が産生誘導するTNF−α、IL−1、IL−6等を検出する検出薬等が挙げられる。
ヘリコバクター・ピロリ感染を検出する検出薬としては、上述したもの以外にも、尿素試験法による検出薬が挙げられる。本検出薬は次のようなものである。まず、安定性同位元素又は放射性同位元素で標識した尿素を被検者に経口投与する。すると、ヘリコバクター・ピロリが有するウレアーゼにより同位元素で標識した尿素が加水分解され、アンモニアと同位元素で標識されたCOが発生し、呼気から放出される。そこで、この呼気を採取し、呼気中に存在する、同位元素で標識されたCOと自然界に存在するCOとの比率を測定する。測定された比率に基づいてヘリコバクター・ピロリ感染を検出することができる。
[早期胃癌細胞の検出方法]
1実施形態において、本発明は、胃組織試料におけるKK−LC−1の発現を検出する工程を備える、早期胃癌細胞の検出方法を提供する。本実施形態の検出方法において、KK−LC−1の発現の検出は、上述したものと同様にして行えばよく、タンパク質レベルで検出してもよいし、mRNAレベルで検出してもよい。胃組織試料としては、内視鏡を用いて被検者から採取した生検試料、胃洗浄液等を利用することができる。
ここで、図1を用いて胃の領域について説明する。図1は、胃100と、食道110と、十二指腸120を示す模式図である。胃癌取扱い規約第14版(2010年3月発行、日本胃癌学会編)によれば、胃100の大彎130及び小彎140を3等分し、それぞれの対応点を結んで、胃100を上部領域150、中部領域160及び下部領域170の3つの領域に分けると記載されており、本明細書においてもこの領域区分にしたがう。実施例において後述するように、胃組織試料が胃下部領域に由来するものであると、より早期胃癌の検出率を向上させることができる。
また、胃腺には胃底腺、噴門腺及び幽門腺の3種が存在する。実施例において後述するように、胃組織試料が幽門腺に由来するものであると、更に早期胃癌の検出率を向上させることができる。
したがって、胃下部領域又は幽門腺に由来する胃組織試料におけるKK−LC−1の発現を確認することにより、早期胃癌を更に高精度に検出することができる。胃組織試料は、胃下部領域の幽門腺に由来するものであることがより好ましい。
また、実施例において後述するように、ヘリコバクター・ピロリに感染した胃癌患者由来の外見上正常な胃組織試料では、KK−LC−1の発現の陽性率が更に向上する。したがって、本実施形態の早期胃癌細胞の検出方法は、胃組織試料におけるヘリコバクター・ピロリ感染を検出する工程を更に備えていてもよい。本工程において、ヘリコバクター・ピロリ感染の検出方法は特に制限されず、上述したものと同様の方法を用いることができる。
次に実験例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実験例に限定されるものではない。
[実験例1]
胃癌患者由来の胃組織試料におけるKK−LC−1の発現を検討した。胃組織試料としては、腫瘍部位に由来する試料だけでなく外見上正常な組織に由来する試料についても検討した。また、胃組織試料が由来する領域、胃癌患者がヘリコバクター・ピロリに感染していたか否かについても検討した。
より具体的には、2011年6月6日から2015年9月15日までに北里大学メディカルセンター外科において胃癌と診断され、胃の切除術を受けた患者のうち、切除組織から胃組織試料を採取することができた患者を対象として検討を行った。
まず、患者の術前血清を回収した。続いて、ELISA法により、患者の術前血清中の抗ヘリコバクター・ピロリIgGの存在量を測定し、患者がヘリコバクター・ピロリに感染していたか否かを確認した。
続いて、胃の切除術後の新鮮胃組織から、腫瘍部位に由来する胃組織試料1個と、腫瘍部位から遠位の外見上正常な胃組織試料1〜4個をそれぞれ回収した。ここで、外見上正常な組織については、胃上部領域、胃中部領域、胃下部領域のいずれの領域に由来するものであるかを記録した。続いて、回収した各組織から全RNAを調製しcDNAを調製した。また、採取した各組織試料に隣接する組織も回収し、ホルマリン固定後、パラフィン包埋ブロックを作製した。
続いて、作製したパラフィン包埋ブロックから薄切切片を作製してヘマトキシリン・エオシン染色した。続いて、染色した組織の顕微鏡観察により、胃組織試料が胃底腺、幽門腺、胃底腺及び幽門腺の境界領域のいずれの腺領域に由来するものであるかを識別した。
図2(a)は、胃底腺に由来する代表的な胃組織試料の顕微鏡写真である。倍率は400倍である。図2(b)は、幽門腺に由来する代表的な胃組織試料の顕微鏡写真である。倍率は400倍である。図2(c)は、胃底腺及び幽門腺の境界領域に由来する代表的な胃組織試料の顕微鏡写真である。倍率は400倍である。
また、調製したcDNAを鋳型としたRT−PCRにより、KK−LC−1の発現を確認した。KK−LC−1増幅用プライマーとしては、センスプライマー(配列番号1)及びアンチセンスプライマー(配列番号2)を使用した。40サイクルのPCR反応における342bpの増幅産物の有無により、KK−LC−1の発現の有無を判断した。
表1は、腫瘍部位に由来する胃組織試料について、KK−LC−1の発現を集計した結果である。その結果、腫瘍部位に由来する胃組織試料の77.9%において、KK−LC−1の発現が認められた。この結果は、KK−LC−1が胃癌マーカーとして有用であることを示す。
また、表2は、外見上正常な胃組織試料について、胃組織試料が由来する領域及びKK−LC−1の発現を集計した結果である。その結果、胃癌患者由来の外見上正常な胃組織試料において、KK−LC−1の発現が高頻度に認められることが明らかとなった。また、胃癌患者由来の外見上正常な胃組織試料が、胃下部領域に由来するものであると、KK−LC−1の発現の陽性率は64.6%であり、より胃癌の検出率が向上することが明らかとなった。また、胃組織試料が胃下部領域の幽門腺に由来するものであると、KK−LC−1の発現の陽性率は71.2%であり、更に胃癌の検出率が向上することが明らかとなった。
また、外見上正常な胃組織試料を1個採取した23症例中、5例(21.7%)でKK−LC−1の発現が認められた。また、外見上正常な胃組織試料を2個採取した38症例中、いずれかの胃組織試料でKK−LC−1を発現していた症例は23例(60.5%)であった。また、外見上正常な胃組織試料を4個採取した15症例中、いずれかの胃組織試料でKK−LC−1を発現していた症例は11例(73.3%)であった。したがって、外見上正常な胃組織試料をできるだけ多く採取してKK−LC−1の発現を検討することにより、早期胃癌の検出率が向上することが明らかとなった。
表3は、ヘリコバクター・ピロリに感染していた患者に限定して、外見上正常な胃組織試料について、胃組織試料が由来する領域及びKK−LC−1の発現を集計した結果である。その結果、ヘリコバクター・ピロリに感染していた患者の外見上正常な胃組織試料におけるKK−LC−1の発現の陽性率は、表2の結果と比較して更に向上する傾向にあることが明らかとなった。
以上の結果から、被検者由来の外見上正常な胃組織試料におけるKK−LC−1の発現を確認することにより、早期胃癌を正確に検出できることが明らかとなった。また、被検者由来の外見上正常な胃組織試料におけるKK−LC−1の発現と共に、被検者がヘリコバクター・ピロリに感染しているか否かを検討することにより、早期胃癌を更に精度よく検出できることが明らかとなった。
[実験例2]
胃癌患者の腫瘍部位に由来する胃組織試料における癌/精巣抗原の発現を検討し、胃癌のステージ別に集計した。癌/精巣抗原としては、KK−LC−1、MAGE−A1、MAGE−A3、MAGE−A4、SSX−4、NY−ESO−1の発現を検討した。また、胃癌患者の術前血清を試料としたELISA法により、胃癌マーカーであるCEA及びCA19−9の発現についても検討した。
KK−LC−1の発現は、配列番号1に示すセンスプライマー及び配列番号2に示すアンチセンスプライマーを用いたRT−PCRにより検討した。40サイクルのPCR反応における増幅産物の有無により、KK−LC−1の発現の有無を判断した。
また、MAGE−A1、MAGE−A3、MAGE−A4、SSX−4及びNY−ESO−1の発現は、市販のキットを用いた50サイクルのリアルタイムPCR反応により検討した。使用したキットはいずれもThermo scientifics社製のものであり、MAGE−A1の検出には型式「Hs00607097_m1」のキットを使用し、MAGE−A3の検出には型式「Hs00366532_m1」のキットを使用し、MAGE−A4の検出には型式「Hs00365979_m1」のキットを使用し、SSX−4の検出には型式「Hs02341532_m1」のキットを使用し、NY−ESO−1の検出には型式「Hs00265824_m1」のキットを使用した。
また、CEAの発現は、市販のキット(型式「ルミパルスCEA−N BDX06T Ref: 292662」、富士レビオ株式会社)を用いて測定した。また、CA19−9の発現は、市販のキット(型式「ルミパルスCA19−9−N UDX10T Ref: 292655」、富士レビオ株式会社)を用いて測定した。
表4に、各癌/精巣抗原及び胃癌マーカーの発現を胃癌のステージ別に集計した結果を示す。その結果、KK−LC−1は、ステージIの胃癌の腫瘍部位において、他の癌/精巣抗原又は胃癌マーカーと比較して発現頻度が顕著に高いことが明らかとなった。この結果は、KK−LC−1が早期胃癌を検出可能なマーカーとして有用であることを更に支持するものである。
本発明により、早期胃癌を検出する技術を提供することができる。

Claims (6)

  1. KK−LC−1に対する特異的結合物質、KK−LC−1遺伝子のcDNAを増幅するためのプライマーセット又はKK−LC−1遺伝子のmRNAに特異的にハイブリダイズするプローブ、を備え、胃下部領域の幽門腺に由来する胃組織試料のKK−LC−1の発現の検出に用いられる、前癌状態の胃癌検出キット。
  2. KK−LC−1に対する特異的結合物質を備え、前記特異的結合物質が蛍光色素又はポジトロン核種で標識されている、請求項1に記載の前癌状態の胃癌検出キット。
  3. 前記特異的結合物質が蛍光色素で標識されており、内視鏡による検出用である、請求項に記載の前癌状態の胃癌検出キット。
  4. ヘリコバクター・ピロリ感染検出薬を更に備える、請求項1〜のいずれか一項に記載の前癌状態の胃癌検出キット。
  5. 胃組織試料におけるKK−LC−1の発現を検出する工程を備え、前記胃組織試料が胃下部領域の幽門腺に由来するものである、前癌状態の胃癌細胞の検出方法。
  6. 前記胃組織試料におけるヘリコバクター・ピロリ感染を検出する工程を更に備える、請求項に記載の前癌状態の胃癌細胞の検出方法。
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