JP6315881B2 - 水処理方法及び水処理装置 - Google Patents
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Description
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
本項に記載の水処理方法は、被処理水に還元剤を添加した後に、酸を添加することにより、還元剤の添加によってpHが変動した被処理水に対して、pHを所定の範囲に維持するように酸を添加することとなるため、還元剤の添加により被処理水中の溶存酸素を実質的に除去しながらも、酸の添加により被処理水のpHを所定の範囲に安定して維持するものとなる。更に、被処理水に添加する酸の添加量を、脱塩処理に伴う濃縮水のpHが、4.5〜5.5になるように設定することで、逆浸透膜による脱塩処理における濃縮倍率を、シリカの溶解度以上に上げた場合においても、逆浸透膜面へのシリカスケールの析出を安定して抑制するものである。
本項に記載の水処理方法は、被処理水に対して上記(2)項に記載した添加量の酸を添加して、シリカスケールの析出を抑制した状態することで、逆浸透膜面へのシリカスケールの析出をより安定して抑制するものである。
本項に記載の水処理方法は、脱塩処理に伴う濃縮水又は透過水に溶存酸素が実質的に含まれなくなるように、被処理水に還元剤を添加するものであり、例えば、濃縮水又は透過水の溶存酸素濃度を0.1mg/L以下に保持するように、還元剤を添加する。なお、本説明において「溶存酸素が実質的に含まれなくなるように」とは、溶存酸素計等で測定した濃縮水や透過水の溶存酸素濃度に応じて、濃縮水や透過水中の溶存酸素を、計算上で必要十分に除去できるだけの量の還元剤を添加することを示している。これを実行するために、例えば、濃縮水の通水ラインに溶存酸素計を設置し、濃縮水の溶存酸素を測定することとしてもよい。このように、濃縮水又は透過水に溶存酸素が実質的に含まれなくなるように、還元剤を添加することで、被処理水に含まれる金属イオンの酸化析出を、安定して抑制するものである。
本項に記載の水処理方法は、膜ろ過処理を行うためのろ過膜として、精密ろ過膜もしくは限外ろ過膜を用いることにより、被処理水中の不溶性物質の除去を、十分に行うものである。ここで、精密ろ過膜もしくは限外ろ過膜は、通水方式(内圧式、外圧式等)、膜素材(有機、無機等)、膜形状等を問わず全て用いることができるが、続く脱塩処理に用いる逆浸透膜の膜閉塞を防止するため、膜孔径が0.1μm以下の膜を用いることが好ましい。ろ過方式としては酸素の溶解を低減し得るためデッドエンド方式が好ましく、逆通水の頻度は、精密ろ過膜もしくは限外ろ過膜の能力、及び、被処理水の性状から適宜決定する。
本項に記載の水処理方法は、被処理水に添加する還元剤として、重亜硫酸ナトリウムを用いることにより、被処理水中の溶存酸素と適切な速度で反応させ、溶存酸素の実質的な除去を行うものである。
本項に記載の水処理方法は、被処理水に添加する酸として、pH調整に用いられることが多く、比較的入手が容易な、塩酸もしくは硫酸を用いることで、被処理水のpHの維持を容易に行うものである。
(10)上記(9)項において、前記酸添加手段は、シリカスケールの析出が抑制される状態になるように前記酸を添加する水処理装置(請求項6)。
(11)上記(9)(10)項において、前記還元剤添加手段は、前記脱塩処理に伴う濃縮水又は透過水に溶存酸素が実質的に含まれなくなるように前記還元剤を添加する水処理装置(請求項7)。
(13)上記(9)から(12)項において、前記還元剤は、重亜硫酸ナトリウムである水処理装置。
(14)上記(9)から(13)項において、前記酸は、塩酸もしくは硫酸である水処理装置。
図1は、本発明の実施の形態に係る水処理装置10を模式的に示す模式図である。本発明の実施の形態に係る水処理装置10は、図3に示した従来の水処理装置100との比較において、大きく以下の点が異なっている。まず、本発明の実施の形態に係る水処理装置10では、従来の水処理装置100で行っていた膜分離装置22のろ過膜20への保護層の形成を行わないこととし、保護層の形成のための設備を備えていない。又、井戸14から揚水した被処理水12に対し、還元剤16を添加した後に、更に酸18を添加することとし、そのための設備が追加されている。
S10(地下水揚水):井戸14から井戸ポンプP2により、原水供給ラインL2を介して、被処理水12である地下水を揚水する。
還元剤16の添加量は、後述する逆浸透膜(RO)24による脱塩処理に伴う濃縮水を、濃縮排水ラインL16に設けた溶存酸素計(DO)26により測定し、この測定した濃縮水の溶存酸素濃度が常時0mg/L付近となるように設定する。この際に、例えば、溶存酸素計26の測定データを図示せぬ制御部に送り、測定値が所定値(例えば0.1mg/L)を一定時間(例えば120秒間)超えた場合に、還元剤16の添加量を増加するように、還元剤ポンプP4に指示するよう構成してもよい。この場合の還元剤16の増加量は、例えば増加した酸素量に応じた量(反応当量)、又はこれを越える量とし、溶存酸素濃度が所定値に戻った際には、還元剤16の添加量を初期添加量に戻すよう構成してもよい。又、予め被処理水12に含まれる溶存酸素量、本水処理行程中に混入する酸素量、酸素との反応以外に消費される還元剤16の消費量等のデータを収集し、当該データに基づき、必要とされる還元剤16の量を算出し、当該計算値以上の還元剤16を添加することとしてもよい。
S40(膜ろ過処理):上記S20及びS30において、還元剤16及び酸18が添加された被処理水12を、ろ過膜20を備える膜分離装置(MS)22により膜ろ過処理する。ろ過膜20としては、限外ろ過膜や精密ろ過膜を用いる。なお、膜ろ過処理により発生した濃縮水は、膜分離装置22により再ろ過、或いは、排水ラインL8を介して排水される。
S50(中間タンク貯留):上記S40において、膜分離装置22により膜ろ過処理された被処理水12を、1次処理水送液ラインL4を介して中間タンクT6に貯留する。なお、膜分離装置22への逆通水を行う際には、中間タンクT6から被処理水12を、逆洗ポンプP8により逆通水ラインL6を経て膜分離装置22の2次側に供給し、その排水は排水ラインL8より排出するようにする。
S70(導電率計測):上記S60において、脱塩処理後の透過水として得られた被処理水12(透過水)の導電率を、導電率計(CD)28により計測する。そして、計測結果が、所定の値(例えば、70μS/cm)以下の被処理水12(所定値以下)については、S80へ移行する。又、導電率が所定の値を超える被処理水12(所定値超え)については、処理水循環ラインL18を介して中間タンクT6へ返送(S50へ復帰)する。
S80(処理水タンク貯留):上記S70において、導電率が所定の値以下であった被処理水12(所定値以下)を、処理水ラインL12を介して処理水タンクT8へ貯留する。これにより、処理水タンクT8には、飲料水化された地下水が貯留されることとなる。
S100(溶存酸素測定):上記S90において、排水用の濃縮水として分岐した被処理水12(排水用)の溶存酸素濃度を、溶存酸素計(DO)26により測定する。そして、この測定結果を、上記S20における還元剤16の添加量に反映させる。なお、図1の例では、溶存酸素計26を濃縮排水ラインL16に設けているが、この位置に限定されるものではなく、逆浸透膜24により分離される透過水又は濃縮水の経路(例えば、L12、L14、L18等)のいずれに設けてもよい。
S110(排水):上記S100において、溶存酸素濃度を測定した後の、排水用の濃縮水としての被処理水12を、濃縮排水ラインL16を経て排水する。
本実施例においては、地下水(井戸水)に、メタケイ酸ソーダ5水塩、カオリン、塩化第一鉄4水和物、塩化マンガン(II)4水和物、65%硫酸を添加し、pHが4.5〜5.5、シリカ濃度が50mg/L、鉄濃度が1mg/L、マンガン濃度が0.1mg/Lとなるように調製した模擬原水を、供給原水(被処理水12)として使用した。そして、以下の条件で地下水の飲料水化を行った。
次いで、中間タンクT6から昇圧ポンプP10により、1次処理水供給ラインL10を介して、被処理水12を逆浸透膜24に供給し、脱塩処理を行った(図2のS60)。そして、得られた透過水を、導電率計28により計測し(図2のS70)、70μS/cm以下の条件で処理水ラインL12を介して処理水タンクT8に貯留し(図2のS80)、70μS/cmを超える条件で、処理水循環ラインL18を介して中間タンクT6に返送する様に設定した。又、濃縮水は、一部を循環ラインL14を通じ昇圧ポンプP10に供給し、残りは、濃縮排水ラインL16を経て排水した(図2のS90、S110)。
上記のような条件で地下水の飲料水化を行った結果、通水時間が48時間経過しても、膜分離装置22の限外ろ過膜は、温度補正した膜間差圧が初期値から1%の上昇、逆浸透膜24は0.8%の上昇にとどまり、種々の金属およびシリカが含まれている供給水を高濃縮しても、安定稼働していることを確認した。又、得られた濃縮水には結晶物等の析出が起こっておらず、シリカ濃度を分析したところ、510mg/Lであることを確認した。
1つ目の比較例では、還元剤16の添加量を、供給原水中の溶存酸素濃度に相当する量とし、逆浸透膜24による脱塩処理後の濃縮排水中の溶存酸素濃度が、継続して0.2mg/L以上となる状態を含む、溶存酸素の除去が十分とはいえない条件下で、通水および再生を実施し、かつ、限外ろ過膜の逆通水の頻度を24時間とした点以外は、実施例と同様の条件で、地下水の飲料水化を行った。
上記のような条件で行った結果、1つ目の比較例では、通水時間が24時間経過すると、膜分離装置22の限外ろ過膜の温度補正した膜間差圧は、初期と比較して20%上昇する結果となった。又、逆浸透膜24は、膜分離装置22の閉塞に伴う流量低下により、供給水量が低下し、90%の高濃縮が行えない結果となった。その際の、逆浸透膜24で得られた濃縮水のシリカ濃度は、450mg/Lを示していたが、差圧が穏やかに上昇する結果となった。
上記のような条件で行った結果、2つ目の比較例では、通水時間が48時間経過しても、膜分離装置22の限外ろ過膜は、初期膜間差圧に対して2%程度の微増にとどまり、安定的な運転を行っていた。しかし、逆浸透膜24は、24時間稼働で、初期膜間差圧に対して50%上昇する結果となり、運転を停止することとなった。
更に、本発明の実施の形態に係る水処理方法は、逆浸透膜24による脱塩処理に伴う濃縮水又は透過水に、溶存酸素が実質的に含まれなくなるように、被処理水12に還元剤16を添加するものであり、例えば、実施例のように、濃縮水の溶存酸素濃度を0.0mg/Lでほぼ安定保持するように、還元剤を添加する。これを実行するために、図1の例のように、濃縮排水ラインL16に溶存酸素計26を設置し、濃縮水の溶存酸素を測定することとしてもよい(S100)。このように、濃縮水又は透過水に溶存酸素が実質的に含まれなくなるように、還元剤16を添加することで、被処理水12に含まれる金属イオンの酸化析出を、安定して抑制することができる。
更に、膜ろ過処理を行うためのろ過膜20として、精密ろ過膜もしくは限外ろ過膜を用いることにより、被処理水12中の不溶性物質の除去を、十分に行うことができる。
更に、被処理水12に添加する酸18として、pH調整に用いられることが多く、比較的入手が容易な、塩酸もしくは硫酸を用いることとすれば、被処理水12のpHの維持を容易に行うことができる。
このように、本発明の実施の形態に係る水処理方法は、大型設備を必要としないため、省スペース化を図ることが可能であり、また、還元処理を基本とするため、薬液量を低減し、処理工程を簡略化することが可能となる。従って、本発明の方法によれば、極めて安価に水質のよい飲料水を安定して得ることが可能となる。
Claims (8)
- 金属イオン、シリカ、不溶性物質を含む被処理水を、ろ過膜により膜ろ過処理して不溶性物質を除去した後、逆浸透膜により脱塩処理する水処理方法であって、
前記被処理水に還元剤を添加して該被処理水中の溶存酸素を実質的に除去し、金属イオンの酸化析出を抑制した状態、かつ、前記被処理水に酸を添加した状態で、前記膜ろ過処理及び脱塩処理をし、この際、前記還元剤を添加した後に、前記酸を添加し、
前記酸の添加量を、前記脱塩処理に伴う濃縮水のpHが4.5〜5.5になるように設定する水処理方法。 - 前記被処理水に対して前記添加量の前記酸を添加することにより、シリカスケールの析出を抑制した状態にすることを特徴とする請求項1記載の水処理方法。
- 前記還元剤を、前記脱塩処理に伴う濃縮水又は透過水に溶存酸素が実質的に含まれなくなるように添加することを特徴とする請求項1又は2記載の水処理方法。
- 前記ろ過膜として、精密ろ過膜もしくは限外ろ過膜を用いることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の水処理方法。
- 金属イオン、シリカ、不溶性物質を含む被処理水の処理を行う水処理装置であって、
前記被処理水に還元剤を添加するための還元剤添加手段と、
前記被処理水に酸を添加するための酸添加手段と、
前記還元剤及び前記酸が添加された前記被処理水に膜ろ過処理を行い、不溶性物質を除去するためのろ過膜と、
前記膜ろ過処理後の前記被処理水に脱塩処理を行うための逆浸透膜とを含み、
前記還元剤添加手段は、前記酸が添加される前の前記被処理水に対し、前記還元剤を添加し、
前記酸添加手段は、前記脱塩処理に伴う濃縮水のpHが4.5〜5.5になるように前記酸を添加する水処理装置。 - 前記酸添加手段は、シリカスケールの析出が抑制される状態になるように前記酸を添加することを特徴とする請求項5記載の水処理装置。
- 前記還元剤添加手段は、前記脱塩処理に伴う濃縮水又は透過水に溶存酸素が実質的に含まれなくなるように前記還元剤を添加することを特徴とする請求項5又は6記載の水処理装置。
- 前記ろ過膜は、精密ろ過膜もしくは限外ろ過膜であることを特徴とする請求項5から7のいずれか1項記載の水処理装置。
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