以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格を有さない。
[第1実施形態]
まず、図1,2を参照しつつ第1実施形態に係る画像読取装置1を備える画像処理装置10の構成について説明する。画像処理装置10は、画像読取装置1および画像形成装置2を備える。さらに、画像処理装置10は、画像読取装置1および画像形成装置2に共通の制御部8および操作表示部80も備える。
例えば、画像処理装置10は、複写機、複写機の機能を有するプリンターもしくはファクシミリ、または画像読取機能を含む複数の画像処理機能を備える複合機などである。
図1が示すようには、画像読取装置1は、透明の原稿台13、画像走査部11および原稿台カバー12を備える。原稿台カバー12には、ADF(Auto Document Feeder)120が組み込まれている。
原稿台13は、画像の読み取り対象物である原稿90が載置される部分である。一般に、原稿台13はプラテンガラスと称される。原稿台カバー12は、画像処理装置10の筐体100に対し、原稿台13を覆う閉位置と原稿台13上を解放する開位置との間で回動可能に支持されている。
画像走査部11は、発光部112、走査機構111、ミラーおよびレンズなどの光学系113及びイメージセンサー114などを備える。以下の説明において、水平面内における一の方向およびそれに直交する方向のことを、それぞれ主走査方向R1および副走査方向R2と称する。
発光部112は、透明の原稿台13に載置された原稿90に向けて光を照射する光源である。発光部112は、主走査方向R1に沿う帯状の光を、原稿台13を通じて原稿90に照射する。例えば、発光部112が、主走査方向R1に沿って配列された複数の発光ダイオードを含むLEDアレイであることが考えられる。また、発光部112が、主走査方向R1に沿う直管状の蛍光灯であることも考えられる。
光学系113は、原稿台13上における主走査方向R1に沿う線状領域からの放出光をイメージセンサー114の受光部へ導くためのミラーおよびレンズなどを含む。原稿90が原稿台13に載置されている場合、原稿台13上の前記線状領域からの放出光は、原稿90からの放出光と原稿外領域からの放射光とを含む。発光部112が点灯している場合、原稿90からの放出光は、原稿90に照射された発光部112の光の反射光である。
原稿台カバー12が閉じた状態において、前記原稿外領域からの放射光は、原稿台カバー12の内側面からの放出光である。原稿台カバー12が閉じられた状態において、原稿台カバー12の内側面は原稿台13の表面に沿っている。
原稿台カバー12が開いた状態において、前記原稿外領域からの放射光は、原稿台13の上方から原稿台13に入射する外光である。この外光は、画像読取装置1によって読み取られた画像における原稿外領域のノイズ画像の原因となる。
イメージセンサー114は、原稿台13上における主走査方向R1に沿う前記線状領域からの放出光の光量を画素ごとに検出し、検出した各画素の光量データを前記線状領域の画像データ列として出力するセンサーである。例えば、イメージセンサー114がCCD(Charge Coupled Device)114であることが考えられる。
イメージセンサー114は、前記線状領域の各画素についての検出光量に相当する画像データ列を出力する。前記画像データ列は、前記線状領域における主走査方向R1の区画領域である複数の画素のデータを含む。
走査機構111は、発光部112および光学系113の一部を支持して副走査方向R2に沿って移動させる機構である。これにより、発光部112の光の照射対象である前記線状領域の副走査方向R2における位置が変化する。発光部112の光が照射される前記線状領域は、イメージセンサー114による放出光量の検出対象でもある。なお、走査機構111は、ステッピングモーターなどの不図示の駆動部も備える。
走査機構111は、発光部112および前記線状領域からの光をイメージセンサー114へ導く光学系113の一部を副走査方向R2に沿って移動させる。これにより、画像走査部11は、原稿台13における主走査方向R1に沿う前記線状領域からの放出光の光量を画素ごとに検出しつつ副走査方向R2に沿って原稿台13上を走査する。原稿90が原稿台13上に載置されている状態においては、画像走査部11の走査対象の一部または全部が原稿90である。
なお、発光部112、イメージセンサー114およびレンズが一体化された密着イメージセンサー(CIS)が、画像走査部11に採用されることも考えられる。この場合、密着イメージセンサーは、走査機構111によって副走査方向R2に沿って移動可能に支持される。
ADF120は、回転する複数の搬送ローラー122により、原稿トレイ121にセットされた原稿90を、画像読取位置を経由して原稿排出トレイ123まで搬送する。その際、走査機構111が前記画像読取位置に停止した状態で、画像走査部11は原稿90の画像を読み取る。
図1が示す例において、画像読取装置1は、原稿センサー801およびカバーセンサー802も備える。原稿センサー801は、原稿トレイ121に原稿90がセットされているか否かを検出するセンサーである。カバーセンサー802は、原稿台カバー12が閉じられているか否かを検出するセンサーである。
以上に示したように、画像走査部11は、原稿台13上における前記線状領域からの放出光の光量を画素ごとに検出しつつ副走査方向R2に沿って原稿台13上を走査する。これにより、画像走査部11は、前記線状領域における各画素についての検出光量に相当する前記画像データ列を順次出力する画像読取処理を実行可能である。
画像形成装置2は、画像読取装置1から出力される画像データ列に応じた画像を記録シート9に形成する装置である。記録シート9は、紙、コート紙、ハガキ、封筒、およびOHPシートなどのシート状の画像形成媒体である。
例えば、画像形成装置2は、シート搬送部3、画像形成部4、光走査部5および定着部6などを備える。図1が示す画像形成装置2は、電子写真方式の画像形成装置である。なお、画像形成装置2がインクジェット方式などの他の方式の画像形成装置であることも考えられる。
前記シート搬送部3において、シート送出部ローラー31が記録シート9をシート収容部30からシート搬送路300へ送り出す。さらに、シート搬送ローラー32が記録シート9をシート搬送路300に沿って搬送する。さらに、排出ローラー33が画像形成後の記録シート9をシート搬送路300の出口から記録シート排出トレイ101上へ排出する。
画像形成部4は、シート搬送路300を移動中の記録シート9の表面に画像を形成する。画像形成部4は、ドラム状の感光体41、帯電部42、現像部43、転写部45およびクリーニング部47などを備える。なお、感光体41は像担持体の一例である。
感光体41が回転し、帯電部42が感光体41の表面を一様に帯電させる。さらに、光走査部5がレーザー光を走査することにより帯電した感光体41の表面に静電潜像を書き込む。さらに、現像部43が感光体41に現像剤を供給することにより、前記静電潜像を前記現像剤の像へ現像する。なお、現像剤は、不図示の現像剤補給部から現像部43へ供給される。
さらに、転写部45が、シート搬送路300を移動中の前記記録シート9に感光体41表面の前記現像剤の像を転写する。最後に、クリーニング部47が感光体41表面に残存する前記現像剤を除去する。
定着部6は、ハロゲンヒーターなどのヒーターを内包する定着ローラー61と加圧ローラー62との間に画像が形成された記録シート9を挟み込み、後工程へ送り出す。これにより、定着部6は、記録シート9上の前記現像剤の像である画像を加熱し、記録シート9上にその画像を定着させる。
制御部8は、操作表示部80を通じて入力される入力情報および原稿センサー801およびカバーセンサー802を含む各種センサーの検出結果に基づいて、画像処理装置10が備える各種の電気機器を制御する。
制御部8は、操作表示部80に操作メニューなどを表示させる。さらに、制御部8は、画像読取装置1を通じて入力される画像に対する画像処理を実行する。さらに、
例えば、図2が示すように、制御部8は、MPU(Micro Processor Unit)81、記憶部82、走査制御部83、発光制御部84、画像処理部85、レーザー制御部86および信号インターフェイス87などを備える。
MPU81は、各種の演算処理を実行するプロセッサーである。記憶部82は、MPU81に各種の処理を実行させるためのプログラムPr1〜Pr4などの情報が予め記憶される不揮発性の情報記憶媒体である。さらに、記憶部82は、MPU81による各種情報の読み書きが可能な情報記憶媒体でもある。
制御部8は、MPU81が記憶部82に予め記憶された各種のプログラムPr1〜Pr4実行することにより画像処理装置10を統括的に制御する。
信号インターフェイス87は、MPU81とセンサーおよび制御対象機器などとの間の信号の受け渡しを中継するインターフェイス回路である。MPU81は、信号インターフェイス87を介して原稿センサー801およびカバーセンサー802などの各種のセンサーの検出信号(計測信号)を入力する。さらに、MPU81は、信号インターフェイス87を介して制御対象機器へ制御信号を出力する。
走査制御部83は、画像走査部11の走査機構111を制御することにより、画像走査部11による副走査方向R2の走査位置、即ち、画像走査部11が走査対象とする前記線状領域の位置を制御する。
発光制御部84は、画像走査部11の発光部112を制御し、状況に応じて発光部112の発光状態を切り替える。画像処理部85は、画像走査部11を通じて得られる画像データを入力し、画像処理を実行する。
レーザー制御部86は、画像処理部85が出力する記録用画像データ列を入力し、その記録用画像データ列が示す各画素の濃度に応じて光走査部5が出力するレーザー光の光量を調節する。
以下の説明において、原稿台13上における画像走査部11の全走査領域のうち原稿90が存在する領域を原稿領域と称し、残りの領域を原稿外領域と称する。
ところで、画像読取装置1において、原稿台カバー12が開かれた状態で画像走査部11による原稿90の走査が行われる場合がある。この場合、室内照明などの外光がイメージセンサー114に入射することに起因するノイズ画像が前記原稿外領域に現れやすい。
前記原稿外領域のノイズ画像を除去するために、画像データから前記原稿領域を特定することが考えられる。例えば、前記原稿領域と前記原稿外領域との境界位置をエッジ検出処理によって検出することが考えられる。また、通常光量で得られた通常画像データと比較光量で得られた比較用画像データとにおける濃度差の大きい画素の領域を前記原稿領域として特定することなども考えられる。
しかしながら、前記原稿領域の特定のための上記の処理では、原稿90の下地の状態が多様である場合に、前記濃度差が顕著に現れずに前記原稿領域を正しく特定できない事態が生じ得る。例えば、原稿90の下地が白色に近い淡色である場合と黒色に近い濃色である場合とのいずれか一方で、前記原稿領域を正しく特定できない事態が生じ得る。
図9は、下地が白色などの淡色である原稿90にそれぞれ異なる光量の光が照射された場合に画像走査部11によって得られる画像データ列の値の分布を示すグラフである。また、図10は、下地が黒色などの濃色である原稿にそれぞれ異なる光量の光が照射された場合に画像走査部によって得られる画像データ列の値の分布を示すグラフである。
図9,10に示されるグラフにおいて、横軸は主走査方向R1における位置であり、縦軸は画像データ列におおける各画素のデータの値である。各画素のデータの値は、イメージセンサー114の検出光量に相当する。
また、図9,10において、実線のグラフg0は発光部112が基準光量で発光する基準状態であるときに得られた画像データ列の値、破線のグラフg1は発光部112が消灯状態であるときに得られた画像データ列の値、破線のグラフg3は発光部112が前記基準光量よりも大きな光量で発光する増光状態であるときに得られた画像データ列の値を示す。なお、前記基準光量は、原稿90の画像を読み取る通常の画像読取処理の際に設定される発光部112の光量である。
また、図9,10において、ΔB1は、前記基準状態での前記画像データ列における原稿90の下地部分の画素値と前記消灯状態での前記画像データ列における原稿90の下地部分の画素値との差である。また、ΔB2は、前記基準状態での前記画像データ列における原稿90の下地部分の画素値と前記増光状態での前記画像データ列における原稿90の下地部分の画素値との差である。以下、前者を第1差分ΔB1、後者を第2差分ΔB2と称する。
図9が示すように、原稿90の下地の色が薄い場合、第2差分ΔB2が第1差分ΔB1よりも小さくなる。そのため、原稿90の下地の色が薄い場合に、第2差分ΔB2が前記原稿領域の特定に用いられると、前記原稿領域を正しく特定できない事態が生じ得る。
一方、図10が示すように、原稿90の下地の色が濃い場合、第1差分ΔB1が第2差分ΔB2よりも小さくなる。そのため、第1差分ΔB1が前記原稿領域の特定に用いられると、前記原稿領域を正しく特定できない事態が生じ得る。
本実施形態における画像読取装置1は、外光の影響によって前記原稿外領域にノイズ画像が現れる現象を、原稿90の下地の状態の違いに関わらず回避するための機能を有している。以下、その機能について説明する。
[走査制御部83]
走査制御部83は、走査機構111およびイメージセンサー114を制御することにより、画像走査部11に前記画像読取処理を実行させる。より具体的には、走査制御部83は、走査機構111を制御することにより、発光部112および前記線状領域からの光をイメージセンサー114へ導く光学系113の一部を副走査方向R2の走査範囲における目的の位置へ移動させる。さらに、走査制御部83は、イメージセンサー114を制御することにより、イメージセンサー114に前記画像データ列を出力させる。
本実施形態における走査制御部83は、往路走査モードおよび復路走査モードの2種類の走査モードで画像走査部11を動作させる。前記往路走査モードは、画像走査部11が副走査方向R2における起点から終点まで順方向に走査範囲全体を走査するモードである。前記復路範囲走査モードは、画像走査部11が副走査方向R2における前記終点から前記起点まで逆方向に走査範囲全体を走査するモードである。
例えば、前記走査範囲における前記起点および前記終点の各々が、予め設定された位置であることが考えられる。この場合、前記起点および前記終点の各位置が、画像走査部11が副走査方向R2における走査可能範囲の両端の位置であることが考えられる。
また、前記起点および前記終点の一方又は両方の位置が、前記操作表示部80に対する操作によって前記走査可能範囲内で設定されることも考えられる。例えば、前記操作表示部80に対して原稿90のサイズおよび向きの情報が入力された場合に、前記走査可能範囲の一端が前記起点の位置として設定され、原稿90のサイズおよび向きに対応した位置が前記終点の位置として設定されることが考えられる。
また、画像処理部85が、前記起点および前記終点の一方又は両方の位置を自動設定することも考えられる。この場合、画像処理部85は、原稿台13上の原稿90の副走査方向R2における先端位置および後端位置の一方または両方を検出する原稿端検出処理を実行し、検出結果を前記起点または前記終点として設定する。なお、前記原稿端検出処理のアルゴリズムとして、周知の各種アルゴリズムを採用することが可能である。
本実施形態においては、MPU81が後述する動作モード信号Mdを出力する。動作モード信号Mdは、前記画像読取処理の開始信号であるとともに、開走査モードおよび閉走査モードのうちの一方を表す信号である。
MPU81は、操作表示部80に対して予め定められた読取開始操作が成されたことを検知した際に、動作モード信号Mdを走査制御部83、発光制御部84および画像処理部85へ出力する。走査制御部83、発光制御部84および画像処理部85は、動作モード信号Mdが入力されることにより前記画像読取処理を実行する。
前記開走査モードは、原稿台カバー12が開かれた状態を想定して原稿台13上の原稿90の走査を実行する動作モードである。前記閉走査モードは、原稿台カバー12が閉じられた状態を想定して原稿台13上の原稿90の走査を実行する動作モードである。
MPU81が出力する動作モード信号Mdが前記開走査モードを表す信号である場合、走査制御部83は、画像走査部11を前記往路走査モードで動作させた後に、前記復路走査モードで動作させる。その詳細については後述する。
一方、動作モード信号Mdが前記閉走査モードを表す信号である場合、走査制御部83は、画像走査部11を前記往路走査モードで動作させる。これにより、一般的な前記画像読取処理が実行される。
[発光制御部84]
発光制御部84は、発光部112の発光状態を制御する。より具体的には、発光制御部84は、発光部112の状態を、消灯状態と、前記基準光量で発光する前記基準状態と、前記基準光量よりも大きな光量で発光する前記増光状態との3つの状態のいずれかに設定することができる。前記基準状態および前記増光状態の各々における発光部112の光量は、それぞれ予め定められている。
本実施形態においては、動作モード信号Mdが前記開走査モードを表す信号である場合、発光制御部84は、発光部112を前記基準状態とそれとは異なる比較状態とに切り替える。
より具体的には、発光制御部84は、画像走査部11が前記往路走査モードで動作しているときに発光部112を前記基準状態にする。さらに、発光制御部84は、画像走査部11が前記復路走査モードで動作しているときに発光部112を前記比較状態にする。前記比較状態は、発光制御部84が後述する状態選択処理を実行することにより前記消灯状態および前記増光状態のうちのから選択する状態である。その詳細については後述する。
また、動作モード信号Mdが前記閉走査モードを表す信号である場合、発光制御部84は、画像走査部11が前記往路走査モードで動作するときに発光部112を前記基準状態にする。これにより、一般的な前記画像読取処理が実行される。
例えば、MPU81が、動作モード設定プログラムPr1を実行することにより、ユーザーによる操作表示部80に対する操作に従って動作モード信号Mdを設定することが考えられる。
また、MPU81が、原稿センサー801およびカバーセンサー802の検出結果が予め定められた開走査モード条件を満たすか否かに応じて、動作モード信号Mdを自動設定することも考えられる。この場合、MPU81が、動作モード設定プログラムPr1を実行することにより、動作モード信号Mdを自動設定する。
例えば、前記開走査モード条件は、原稿センサー801が、原稿トレイ121に原稿90がセットされていない状態を検出しており、かつ、カバーセンサー802が、原稿台カバー12が閉じられていない状態を検出していることである。MPU81は、前記開走査モード条件が成立している状態で、操作表示部80に対して複写実行操作が行われたことを検知した場合に、動作モード信号Mdを前記開走査モードの状態に設定し、その他の場合に動作モード信号Mdを前記閉走査モードの状態に設定する。
[画像処理部85]
画像処理部85は、代表値導出部851、減算部852、領域判定部853および背景置換部854を備える。例えば、画像処理部85が、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)またはDSP(Digital Signal Pocessor)などによって構成されることが考えられる。
代表値導出部851は、発光部112が前記基準状態であるときに得られる1つまたは複数の前記画像データ列の代表値を導出する演算を実行する。前記代表値は、前記画像データ列における原稿90の下地領域に相当する画素の反射光量または濃度の尺度となる値である。
以下の説明において、発光部112の前記基準状態に対応する前記画像データ列、即ち、発光部112が前記基準状態であるときに得られる前記画像データ列のことを第1画像データ列と称する。一方、発光部112の前記比較状態に対応する前記画像データ列のことを第2画像データ列と称する。
例えば、前記代表値が、1つ以上の前記第1画像データ列の度数分布における最も度数の大きな階級の値であることが考えられる。一般に、原稿90における大部分の領域は画像が形成されていない下地領域であり、比較的占有率の小さな残りの領域が画像領域であることが多い。そのため、前記第1画像データ列の度数分布における最も度数の大きな階級の値は、原稿90の下地領域からの反射光量または同下地領域の濃度の尺度となる前記代表値として適している。なお、最も度数の大きな前記階級の値は、例えばその階級の範囲の最小値、最大値、中央値または平均値などである。
後述するように、前記代表値は、発光部112の前記比較状態を前記消灯状態および前記増光状態のいずれにするかを選択するための指標値である。そのため、前記代表値は、原稿90の下地領域の色が特に濃い色であるか否かを判定できる程度の比較的粗い分解能でよい。従って、前記代表値が前記第1画像データ列の度数分布に基づいて導出される場合、その度数分布において区分される複数の階級の数は多くなくてもよい。これにより、代表値導出部851の演算負荷が軽減される。
また、減算部852は、発光部112の状態が前記基準状態と前記比較状態とに切り替えられる場合に、それぞれ同じ前記線状領域について得られる一対の前記画像データ列の差分ΔBを算出する。
より具体的には、減算部852は、前記線状領域ごとに前記基準状態に対応する前記第1画像データ列と前記比較状態に対応する前記第2画像データ列を比較し、前記第1画像データ列および前記第2画像データ列における相互に対応する画素のデータの差分ΔBを算出する。
発光部112の前記比較状態が前記消灯状態である場合、差分ΔBは、前記第1画像データ列の各画素のデータから前記第2画像データ列の各画素のデータを減算して得られる差分である。この差分は、図9の第1差分ΔB1に相当する。
また、発光部112の前記比較状態が前記増光状態である場合、差分ΔBは、前記第2画像データ列の各画素のデータから前記第1画像データ列の各画素のデータを減算して得られる差分である。この差分は、図10の第2差分ΔB2に相当する。
領域判定部853は、減算部852が算出する差分ΔBに基づいて前記画素各々を前記原稿領域画素と前記原稿外領域画素とに区分する領域区分処理を実行する。
前記画像データ列において、前記原稿領域における各画素のデータは、発光部112の状態の変化に応じて比較的大きく変化する。一方、前記原稿外領域における各画素のデータは、発光部112の状態が変化してもほとんど変化しない。
従って、領域判定部853は、差分ΔBが予め定められた光量差であるしきい光量差よりも小さな差を示す画素を原稿外領域画素と判定し、その他の画素を原稿領域画素と判定する。なお、前記原稿領域画素は、原稿台13上の領域における原稿90が存在する領域の画素であり、前記原稿外領域画素はそれ以外の領域の画素である。
背景置換部854は、前記基準状態に対応する前記第1画像データ列各々における前記原稿外領域画素に区分された前記画素のデータ各々を一の背景データに置換する背景置換処理を実行する。
[画像読取装置の制御方法]
次に、図3に示されるフローチャートを参照しつつ、動作モード信号Mdが前記開走査モードを示す場合における画像読取装置1の前記画像読取処理の手順の一例について説明する。以下の説明においてS101,S102,…は、制御部8におけるMPU81、走査制御部83、発光制御部84および画像処理部85が実行する各工程の識別符号を表す。
制御部8は、MPU81が前記開走査モードを表す動作モード信号Mdを出力した際に、図3に示される処理を開始する。
<工程S101〜S103>
動作モードが前記開走査モードである場合の前記画像読取処理において、発光制御部84の一部である第1発光制御部841が、発光部112の状態を前記基準光量で発光する前記基準状態にする(S101)。
さらに、発光部112が前記基準状態であるときに、走査制御部83の一部である第1走査制御部831が、前記往路走査モードで画像走査部11を動作させる(S102)。これにより、画像走査部11は、前記画像読取処理を実行し、発光部112の前記基準状態に対応する前記第1画像データ列を出力する。
また、第1走査制御部831は、副走査方向R2における前記起点から前記終点までの走査が終了したか否かを随時判別する(S103)。そして、第1発光制御部841および第1走査制御部831は、前記全走査範囲の走査が終了するまで、工程S101,S102の処理を継続する。
即ち、第1発光制御部841および第1走査制御部831は、発光部112の状態を前記基準状態にするとともに画像走査部11に前記画像読取処理を実行させることにより、副走査方向R2の全走査範囲について複数の前記第1画像データ列を画像走査部11に出力させる(S101〜S103)。出力された複数の前記第1画像データ列は、画像処理部85における不図示のデータバッファーに一時記憶される。第1発光制御部841および第1走査制御部831は、第1制御部の一例である。
<工程S104>
次に、画像処理部85の代表値導出部851が、工程S101〜S103で得られた複数の前記第1画像データ列の代表値を導出する(S104)。前述したように、前記代表値が、前記第1画像データ列の度数分布における最も度数の大きな階級の値であることが考えられる。
本実施形態において、代表値導出部851は、前記全走査範囲について得られた複数の前記第1画像データ列の全てに対し1つの前記代表値を導出する。
<工程S105>
さらに、MPU81が、前記第1画像データ列が予め定められた条件を満たすか否かに応じて、発光部112の前記比較状態として前記消灯状態および前記増光状態のいずれか一方を選択する(S105)。MPU81は、状態選択プログラムPr2を実行することによって本工程の処理を実行する。なお、状態選択プログラムPr2を実行するMPU81が状態選択部の一例である。
より具体的には、MPU81は、前記第1画像データ列の前記代表値が予め定められたしきい光量よりも小さな光量を示す値である場合に前記比較状態として前記増光状態を選択し、そうでない場合に前記比較状態として前記消灯状態を選択する。
例えば、前記画像データ列における前記画素各々のデータの値および前記代表値が、0〜255までの256階調で光量を示す値である場合が考えられる。この場合、MPU81は、前記代表値が予め設定されたしきい値よりも小さい場合に前記比較状態として前記増光状態を選択し、そうでない場合に前記比較状態として前記消灯状態を選択する。
一方、前記画像データ列における前記画素各々のデータの値および前記代表値が、0〜255までの256階調で画像濃度を示す値である場合が考えられる。前記画像濃度を示す値の大小関係は前記光量を示す値の大小関係と逆になる。この場合、MPU81は、前記代表値が予め設定されたしきい値よりも大きい場合に前記比較状態として前記増光状態を選択し、そうでない場合に前記比較状態として前記消灯状態を選択する。
原稿90の前記下地領域からの反射光の光量に相当する前記代表値が、比較的小さな光量を示す値である場合、原稿90の前記下地領域は黒色または黒色に近い濃色であると考えられる。この場合に、MPU81は、前記比較状態として前記増光状態を選択する。
一方、前記代表値が、比較的大きな光量を示す値である場合、原稿90の前記下地領域は白色または白色に近い淡色であると考えられる。この場合に、MPU81は、前記比較状態として前記消灯状態を選択する。
工程S105において、前記状態選択部として機能するMPU81は、複数の前記第1画像データ列の全部に基づいて1つの前記比較状態を選択する処理を行う。
<工程S106,S107,S112>
工程S103〜S105の終了後、発光制御部84の一部である第2発光制御部842が、発光部112の状態を工程S105で選択された前記比較状態にする(S106)。
さらに、発光部112が前記比較状態であるときに、走査制御部83の一部である第2走査制御部832が、前記復路走査モードで画像走査部11を動作させる(S107)。これにより、画像走査部11は、前記画像読取処理を実行し、発光部112の前記比較状態に対応する前記第2画像データ列を出力する。
また、第2走査制御部832は、副走査方向R2における前記終点から前記始点までの走査が終了したか否かを随時判別する(S112)。そして、第2発光制御部842および第2走査制御部832は、前記全走査範囲の走査が終了するまで、工程S106,S107の処理を継続する。工程S106において、第2走査制御部832は、発光部112の状態を副走査方向R2の全走査範囲において前記比較状態にする。
即ち、第2発光制御部842および第2走査制御部832は、発光部112の状態をMPU81によって選択された前記比較状態にするとともに画像走査部11に前記画像読取処理を実行させることにより、副走査方向R2の全走査範囲について複数の前記第2画像データ列を画像走査部11に出力させる(S106,S107,S112)。第2発光制御部842および第2走査制御部832は、第2制御部の一例である。
さらに、画像走査部11が前記復路走査モードで動作しているときに、前記線状領域各々に対応する前記第2画像データ列が得られるごとに、画像処理部85が、以下に示される工程S108〜S111の処理を実行する。
<工程S108>
まず、画像処理部85の減算部852が、工程S107で順次得られる前記第2画像データ列各々とそれに対応する前記第1画像データ列との差分ΔBを算出する(S108)。本実施形態において、減算部852は、前記復路走査モードでの前記画像読取処理によって前記第2画像データ列が得られるごとに、同じ前記線状領域を走査対象とする前記第1画像データ列と前記第2画像データ列との差分ΔBを算出する。工程S108において、減算部852は、工程S102で前記データバッファーに記録された前記第1画像データ列を参照する。
<工程S109>
次に、画像処理部85の領域判定部853が、減算部852が算出する差分ΔBに基づいて前記画素各々を前記原稿領域画素と前記原稿外領域画素とに区分する前記領域区分処理を実行する(S109)。前述したように、領域判定部853は、差分ΔBが予め定められた前記しきい光量差よりも小さな差を示す画素を前記原稿外領域画素に区分し、その他の画素を前記原稿領域画素に区分する。
工程S109において、前記比較状態が前記消灯状態である場合の前記しきい光量差と前記比較状態が前記増光状態である場合の前記しきい光量差とは異なる。通常、前記消灯状態に対応する前記しきい光量差の方が前記増光状態に対応する前記しきい光量差よりも大きい。
<工程S110>
さらに、MPU81が、前記原稿領域画素の区分の結果を領域判定部853から取得し、主走査方向R1における前記原稿領域画素に区分された領域の一端から他端までの長さから、画像出力に適した記録シート9のサイズを特定する(S110)。工程S110は、副走査方向R2における走査の最初の段階で1回のみ実行される。
例えば、工程S110は、副走査方向R2における前記終点からの走査により最初に得られた前記第2画像データ列について行われた最初の前記領域区分処理の結果に基づいて1回のみ実行される。また、工程S110が、複数回の前記領域区分処理の結果に基づいて1回のみ実行されることも考えられる。
MPU81は、シートサイズ特定プログラムPr4を実行することによって工程S110の処理を実行する。シートサイズ特定プログラムPr4を実行するMPU81は、前記原稿領域画素の区分の結果から画像形成先の記録シート9のサイズを特定するシートサイズ特定部として機能する。
<工程S111>
さらに、画像処理部85の背景置換部854が、工程S102で前記データバッファーに記録された前記第1画像データ列各々における前記原稿外領域画素に区分された前記画素のデータ各々を一の背景データに置換する(S111)。
前記背景データは、予め定められた色に相当するデータ、例えば、白色に相当するデータ、または黒色に相当するデータであることが考えられる。また、MPU81が、背景データ設定プログラムPr3を実行することにより、操作表示部80に対するユーザーの操作に従って前記背景データを予め設定することも考えられる。
前記原稿外領域画素のデータが置換された後の前記第1画像データ列は、画像処理部85によって最後の後処理が施された後、前記記録用画像データ列としてレーザー制御部86へ出力される。これにより、前記背景置換処理が施された後の前記第1画像データ列に相当する画像が記録シート9に形成される。
例えば、前記後処理は、前記第1画像データ列における前記線状領域からの放出光の光量に相当する各画素のデータを、画素濃度を表すデータに変換する濃度変換処理などである。各画素のデータが0〜255までの256階調のデータである場合、256階調の画素濃度のデータが、最大階調値である255から各画素の光量のデータを減算することにより算出される。
そして、工程S112において、第2走査制御部832が前記復路走査モードによる全走査範囲の走査が終了したと判別すると、制御部8による前記画像読取処理が終了する。
なお、画像読取装置1がカラー画像を読み取ることが可能な装置である場合、画像走査部11は検出する光の色が異なる複数のイメージセンサー114を備える。この場合、画像処理部85が、予め定められた1つの色のイメージセンサー114で得られる前記画像データ列について工程S104,S108〜S110の処理を実行することが考えられる。
また、画像処理部85が、複数のイメージセンサー114で得られる複数の前記画像データ列を平均したデータについて工程S104,S108〜S110の処理を実行することも考えられる。但し、前記背景置換処理は、複数のイメージセンサー114各々に対応する前記画像データ列ごとに実行される。
また、画像読取装置1がカラー画像を読み取ることが可能な装置である場合、画像形成装置2が、それぞれ異なる色の現像剤に対応する複数の画像形成部4を備えることも考えられる。この場合、画像形成部4各々は、不図示の中間転写ベルトに画像を転写し、この中間転写ベルトの画像が記録シート9に転写される。
以上に示したように、発光制御部84が、発光部112の状態を前記基準状態と前記比較状態とに切り替え(S101,S106)、走査制御部83が、発光部112の前記基準状態および前記比較状態の各々について画像走査部11に前記画像読取処理を実行させる(S102,S107)。
さらに、減算部852が、前記基準状態に対応する前記第1画像データ列と前記比較状態に対応する前記第2画像データ列とを比較し、前記第1画像データ列および前記第2画像データ列における相互に対応する前記画素のデータの差分ΔBを算出する。そして、領域判定部853が、差分ΔBの大きさに応じて前記画素各々を前記原稿領域画素と原稿外領域画素とに区分する。なお、減算部852および領域判定部853が、領域区分部の一例である。
より具体的には、領域判定部853は、差分ΔBが予め設定されたしきい値よりも大きいという条件を含む予め定められた差分条件を満たす場合に、その差分条件を満たす差分ΔBに対応する画素を前記原稿領域画素に区分し、そうでない場合にその差分ΔBに対応する画素を前記原稿外領域画素に区分する。
例えば、前記差分条件が、差分ΔBが主走査方向R1において予め定められた個数以上連続して予め定められた光量差よりも大きな差を示すという条件を含むことが考えられる。一般に、前記原稿領域が主走査方向R1において連続する複数の画素からなる場合が多い。そのため、比較的大きな光量差を示す差分ΔBに対応する画素が連続することが前記差分条件の必要条件であれば、前記原稿外領域画素に区分されるべき画素が誤って前記原稿領域画素に区分されてしまうことを防止することができる。
以上の制御が行われることにより、画像読取装置1によれば、原稿台カバー12が開かれた状態で原稿90の走査が行われる場合に、外光の影響によって前記原稿外領域にノイズ画像が現れることを回避することができる。
また、状態選択プログラムPr2を実行するMPU81が、前記第1画像データ列が予め定められた条件を満たすか否かに応じて前記比較状態として前記消灯状態および前記増光状態のいずれか一方を選択する。
図9からわかるように、原稿90の下地の色が薄い場合、第1差分ΔB1が第2差分ΔB2よりも大きくなる。そのため、第1差分ΔB1の大きさの判定によって前記原稿領域と前記原稿外領域とを区分すれば、前記原稿領域が正しく特定されやすい。
また、図9からわかるように、原稿90の下地の色が濃い場合、第2差分ΔB2が第1差分ΔB1よりも大きくなる。そのため、第2差分ΔB2の大きさの判定によって前記原稿領域と前記原稿外領域とを区分すれば、前記原稿領域が正しく特定されやすい。
従って、画像読取装置1によれば、原稿90の下地の状態に関わらず、外光の影響によって前記原稿外領域にノイズ画像が現れることを回避することができる。
[第2実施形態]
次に、図4に示されるフローチャートを参照しつつ、第2実施形態に係る画像読取装置について説明する。図4は、第2実施形態に係る画像読取装置において動作モード信号Mdが前記開走査モードを示す場合における前記画像読取処理の手順の一例を示すフローチャートである。以下の説明においてS201,S202,…は、制御部8におけるMPU81、走査制御部83、発光制御部84および画像処理部85が実行する各工程の識別符号を表す。
制御部8は、MPU81が前記開走査モードを表す動作モード信号Mdを出力した際に、図4に示される処理を開始する。
<工程S201,S202,S205>
動作モードが前記開走査モードである場合の前記画像読取処理において、第1発光制御部841が、発光部112の状態を前記基準光量で発光する前記基準状態にする(S201)。
さらに、発光部112が前記基準状態であるときに、第1走査制御部831が、前記往路走査モードで画像走査部11を動作させる(S202)。これにより、画像走査部11は、前記画像読取処理を実行し、発光部112の前記基準状態に対応する前記第1画像データ列を出力する。
また、第1走査制御部831は、副走査方向R2における前記起点から前記終点までの走査が終了したか否かを随時判別する(S205)。そして、第1発光制御部841および第1走査制御部831は、前記全走査範囲の走査が終了するまで、工程S201,S202の処理を継続する。
即ち、第1発光制御部841および第1走査制御部831は、発光部112の状態を前記基準状態にするとともに画像走査部11に前記画像読取処理を実行させることにより、副走査方向R2の全走査範囲について複数の前記第1画像データ列を画像走査部11に出力させる(S201,S202,S205)。出力された複数の前記第1画像データ列は、画像処理部85における不図示のデータバッファーに一時記憶される。
以上に示した工程S201,S202,S205の処理は、前述の工程S101〜S103の処理と同様である。
さらに、画像走査部11が前記往路走査モードで動作しているときに、前記線状領域各々に対応する前記第1画像データ列が得られるごとに、画像処理部85およぶMPU81が、以下に示される工程S203,S204の処理を実行する。
<工程S203>
まず、画像処理部85の代表値導出部851が、工程S202で得られた1つの前記第1画像データ列の代表値を導出する(S203)。前述したように、前記代表値が、前記第1画像データ列の度数分布における最も度数の大きな階級の値であることが考えられる。本実施形態において、代表値導出部851は、前記線状領域ごとに得られる複数の前記第1画像データ列ごとに1つの前記代表値を導出する。
<工程S204>
さらに、MPU81が、前記第1画像データ列が予め定められた条件を満たすか否かに応じて、発光部112の前記線状領域ごとの前記比較状態として前記消灯状態および前記増光状態のいずれか一方を選択する(S204)。MPU81は、状態選択プログラムPr2を実行することによって本工程の処理を実行する。なお、状態選択プログラムPr2を実行するMPU81が前記状態選択部の一例である。
より具体的には、MPU81は、工程S105と同様に、前記代表値が前記しきい光量よりも小さな光量を示す値である場合に前記比較状態として前記増光状態を選択し、そうでない場合に前記比較状態として前記消灯状態を選択する。選択結果は、対応する前記線状領域を識別可能な状態で不図示のデータバッファーに一時記憶される。
工程S204において、前記状態選択部として機能するMPU81は、前記第1画像データ列各々に基づいて前記線状領域ごとに発光部112の前記比較状態を個別に選択する処理を行う。
<工程S206,S207,S212>
工程S103〜S105の終了後、発光制御部84の一部である第2発光制御部842が、発光部112の状態を工程S204で選択された前記比較状態にする(S206)。工程S206において、第2発光制御部842は、発光部112の状態を工程S205において前記線状領域ごとに個別に選択された前記比較状態にする。
さらに、発光部112が前記比較状態であるときに、走査制御部83の一部である第2走査制御部832が、前記復路走査モードで画像走査部11を動作させる(S207)。これにより、画像走査部11は、前記画像読取処理を実行し、発光部112の前記比較状態に対応する前記第2画像データ列を出力する。
また、第2走査制御部832は、副走査方向R2における前記終点から前記始点までの走査が終了したか否かを随時判別する(S212)。そして、第2発光制御部842および第2走査制御部832は、前記全走査範囲の走査が終了するまで、工程S206,S207の処理を継続する。
さらに、画像走査部11が前記復路走査モードで動作しているときに、前記線状領域各々に対応する前記第2画像データ列が得られるごとに、画像処理部85が、以下に示される工程S208〜S211の処理を実行する。
<工程S208>
まず、画像処理部85の減算部852が、工程S107で順次得られる前記第2画像データ列各々とそれに対応する前記第1画像データ列との差分ΔBを算出する(S108)。工程S208の処理は、前述の工程S108の処理と同じである。
<工程S209>
次に、画像処理部85の領域判定部853が、減算部852が算出する差分ΔBに基づいて前記画素各々を前記原稿領域画素と前記原稿外領域画素とに区分する前記領域区分処理を実行する(S209)。この工程S209の処理は、前述の工程S208の処理と同じである。
<工程S210>
さらに、MPU81が、前記原稿領域画素の区分の結果を領域判定部853から取得し、画像出力に適した記録シート9のサイズを特定する(S210)。工程S210は、副走査方向R2における走査の最初の段階で1回のみ実行される。工程S210の処理は、前述の工程110の処理と同じである。
<工程S211>
さらに、画像処理部85の背景置換部854が、工程S202で前記データバッファーに記録された前記第1画像データ列各々における前記原稿外領域画素に区分された前記画素のデータ各々を一の背景データに置換する(S211)。工程S211の処理は、前述の工程S111の処理と同じである。
前記原稿外領域画素のデータが置換された後の前記第1画像データ列は、画像処理部85によって最後の後処理が施され、前記背景置換処理が施された後の前記第1画像データ列に相当する画像が画像形成装置2によって記録シート9に形成される。
そして、工程S212において、第2走査制御部832が前記復路走査モードによる全走査範囲の走査が終了したと判別すると、制御部8による前記画像読取処理が終了する。
第2実施形態においても、原稿台カバー12が開かれた状態で原稿90の走査が行われる場合に、原稿90の下地の状態に関わらず、外光の影響によって前記原稿外領域にノイズ画像が現れることを回避できる。
また、第2実施形態によれば、前記標本データの採取およびその標本データに基づく発光部112の前記比較状態の選択処理が、副走査方向R2における各位置について実行される。即ち、副走査方向R2の各位置ごとに適切な発光部112の前記比較状態が選択される。その結果、原稿90の下地の濃さが副走査方向R2において不均一である場合でも、前記原稿領域および前記原稿外領域が正しく区分される。
[画像処理結果の具体例]
続いて、図5〜7を参照しつつ、画像処理装置10が実行する画像処理によって得られる具体的な二次元画像の一例について説明する。図5は、原稿90の一例を示す図である。図6〜8は、画像処理装置10において、原稿台カバー12が開かれた状態で原稿台13上の原稿90が前記開走査モードで走査されたときに得られる前記第1画像データ列から合成された二次元画像を示す。
図6は、発光部112が前記基準状態であるときに得られる前記第1画像データ列から合成された二次元画像の一例を示す図である。図7は、発光部112が前記消灯状態であるときに得られる前記第1画像データ列から合成された二次元画像の一例を示す図である。図8は、前記背景データが黒色に相当するデータである場合における前記背景置換処理後の前記第1画像データ列から合成された二次元画像の一例を示す図である。
画像処理装置10において、図5が示す2つの原稿90が前記開走査モードで走査された場合を考える。2つの原稿90のうちの一方は、一部に開口900が形成された原稿である。
図5が示す2つの原稿90が前記開走査モードで走査された場合、発光部112の前記基準状態に対応する前記第1画像データ列の合成によって得られる二次元画像は、例えば図6が示すような画像になる。
図6が示すように、前記発光部112が前記基準状態であるときの画像は、2つの原稿90の画像と原稿外領域の画像とを含む画像である。また、図6が示す例では、前記原稿外領域の画像が、外光の像および外光を遮る物体の陰の像などを含むノイズ画像Ngを含む。
一方、図7が示すように、前記発光部112が前記消灯状態であるときの画像は、2つの原稿90の陰の画像と原稿外領域の画像とを含む画像である。また、図6および図7が示すように、前記原稿外領域の画像は、前記発光部112が前記基準状態であるときと前記消灯状態であるときとでほぼ同じである。
そして、前記背景置換処理によって前記原稿外領域の画素が黒色画素に置換された後の画像は、図8が示すような画像になる。図8が示すように、画像読取装置1によれば、前記原稿領域と前記原稿外領域とが正しく区分される。
なお、前記発光部112の前記比較状態として前記増光状態が選択された場合、前記発光部112が前記比較状態であるときの画像は、図7に示される画像とは異なる。
前記発光部112が前記増光状態であるときの前記原稿領域の画像は、図6に示される画像よりもより明るい画像になる。一方、前記発光部112が前記増光状態であるときの前記原稿外領域の画像は、図6,7に示される画像と同等である。
そして、前記発光部112の前記比較状態として前記増光状態が選択された場合も、図8が示すように、前記原稿領域と前記原稿外領域とが正しく区分される。
[応用例]
以上に示された画像読取装置1において、発光部112を前記比較状態にして行われる前記画像走査処理(S107,S207)が、前記往路走査モードで行われることも考えられる。この場合、工程S106,S107,S206,S207の処理は、第2走査制御部832が副走査方向R2における画像走査部11の走査位置を前記起点に戻した後に実行される。
また、以上に示された画像処理部85の処理が、コンピュータープログラムを実行するプロセッサーによって実現されることも考えられる。例えば、MPU81または画像処理用の他のMPUが、記憶部82に予め記憶されたプログラムを実行することにより、画像処理部85の処理と同等の処理を実行することが考えられる。
なお、本発明に係る画像読取装置、画像処理装置および画像読取装置の制御方法は、各請求項に記載された発明の範囲において、以上に示された実施形態及び応用例を自由に組み合わせること、或いは実施形態及び応用例を適宜、変形する又は一部を省略することによって構成されることも可能である。