JP6314665B2 - インダクタ素子 - Google Patents

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本発明は、磁性粉体の内部にコイルを埋設したインダクタ素子に関する。
インダクタ素子として、たとえばパソコンや携帯型電子機器などに搭載されるDC/DCコンバータ等の回路素子として使用される表面実装タイプのインダクタ素子が知られている。
従来のインダクタ素子は、例えば、バインダである熱硬化性樹脂と粉末状の磁性体である磁性粉体とを含む粉体を、空芯コイルを内蔵した状態で加圧成形することにより得られる(特許文献1等参照)。また、他のインダクタ素子として、空芯コイルの内部に、周辺部より透磁率の大きい磁性体を配置し、高インダクタンス特性を狙う技術も提案されている(特許文献2等参照)。
特開2010−10425号公報 特開2003−168610号公報
しかし、磁性粉体内にコイルを内蔵するインダクタ素子の製造方法では、加圧成形時に金型内の磁性粉体を均一に加圧することが難しい。そのため、従来のインダクタ素子は、特に空芯コイルの内側部分にクラックを生じ、特性劣化を引き起こす問題がある。また、内部に磁性体を埋め込む従来技術では、当該磁性体に隣接する圧縮方向の両側に、層状のクラックが生じる問題がある。
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、クラックの少ないインダクタ素子を提供することである。
上記目的を達成するために、本発明に係るインダクタ素子は、
コイル状に導体が巻回してある巻線部と、前記巻線部から引き出されたリード部とを有するコイルと、
前記巻線部における前記導体の巻回を支持する強磁性の巻芯体と、
前記巻線部及び前記巻芯体を覆っており、バインダ及び磁性粉体を含む圧縮成形体である外側コア部と、を有し、
前記巻芯体の軸方向における少なくとも一方の端面に、凹部が形成されている。
本発明に係るインダクタ素子は、空芯コイルを用いるのではなく、強磁性の巻芯体及びこれに巻回された巻線部が、外側コア部に内蔵されている。したがって、外側コア部を加圧成形する際に、巻線部等によりその内側部分への圧力伝達が阻害されるとしても、この部分に外側コア部とは別体である巻芯体が存在するため、巻線部の内側部分でのクラック発生を防止できる。また、巻芯体の端面に凹部が形成されているため、外側コア部の加圧成形時に、巻芯体に隣接する圧縮方向の両側に薄い層状のクラックの基点となる磁性流体の密度分布が形成される問題を防止できる。これにより、本発明に係るインダクタ素子は、巻芯体に隣接する両側での層状クラックの発生を防ぐことができる。また、凹部が形成されていることにより、巻芯体と外側コア部との接触面積が大きくなり、本発明に係るインダクタ素子は、巻芯体と外装コア部の密着性及び結合性に優れている。
また、例えば、前記巻芯体は柱状であってもよく、前記巻線部の内周面が押し当てられた外周面を有してもよく、
前記外周面には、前記巻線部の前記内周面の形状に沿う凹凸が形成されていてもよい。
本発明に係るインダクタ素子において、巻線部が巻回されている巻芯体は、外側コア部の加圧成形時における変形又は流動が少なく、また、巻線部の内周面は巻芯体の外周面に接触しているため、加圧成形時における巻線形状の乱れが防止され、巻乱れの少ないインダクタ素子を実現できる。また、巻芯体の外周面に形成された凹凸は、巻線部の内周面と巻芯体の外周面との密着度を高め、さらに、巻芯体と巻線部との結合を補強する。
また、例えば、前記巻芯体は、バインダ及び前記外側コア部に含まれる磁性粉体とは異なる磁性粉体を含む圧縮成形体であっても良い。
巻芯体と外側コア部とを、互いに異なる磁性粉体を含む圧縮成形体とすることにより、直流重畳特性や耐酸化性などの特性を向上させることが可能である。また、巻芯体を外側コア部と同様に圧縮成形体とすることにより、巻芯体と外側コア部との間に隙間やクラックが形成される問題を防止できる。
また、例えば、前記巻線部は、軸方向に関して、前記巻芯体における前記一方の端面から他方の端面までの間に配置されていても良い。
巻線部が、軸方向に関して、巻芯体の一方の端面から他方の端面の間に配置されていることにより、巻線部の全体について、外側コア部の加圧成形時における形状の乱れが防止され、より巻乱れの少ないインダクタ素子を実現できる。
また、例えば、前記巻芯体は磁性粉体を含む圧縮成形体であり、
前記巻芯体における磁性粉体の密度は4.5〜7.0g/cmであり、前記外側コア部における磁性粉体の密度は4.0〜6.5g/cmであっても良い。
巻芯体及び外側コア部における磁性粉体の密度を上記の範囲とすることにより、クラックが少なく、電気・磁気的な特性も良好なインダクタ素子を実現できる。
また、例えば、本発明に係るインダクタ素子において、前記巻線部のうち軸方向の中心位置を含む軸方向全体長さの50%以上の部分が、当該巻線部の内径が一定である定内径部分であってもよい。
本発明に係るインダクタ素子は、外側コア部とは別体である巻芯体に巻線部が巻回されているため、加圧成形時においても巻線部の変形が少なく、特に巻線部の内径が一定である定内径部分が巻線部全体の50%以上を占めることにより、電気特性のばらつきを抑制できる。
図1は本発明の一実施形態に係るインダクタ素子の全体斜視図である。 図2は図1に示すII−II線に沿う概略断面図である。 図3は図2の部分拡大図である。 図4は本発明のインダクタ素子の製造過程を示すフローチャートである。 図5は本発明のインダクタ素子の製造過程を示す概念図である。 図6は本発明のインダクタ素子の巻芯体の概略斜視図である。 図7は、巻芯体の変形例を表す平面図及び断面図である。 図8は、巻芯体の他の変形例を表す概略斜視図である。
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
図1および図2に示すように、本発明の一実施形態におけるインダクタ素子10は、磁性体粉を含む圧縮成形体である外側コア部40と、外側コア部40に内蔵された巻芯体30と、同じく外側コアに内蔵された巻線部22を有するコイル20と、外側コア部40に取り付けられており、コイル20のリード部24の端部が接続される端子電極50とを有する。
本実施形態では、外側コア部40の下面は、相互に垂直なX軸およびY軸を通る平面と略平行に形成してあり、巻線部22の巻軸が、X軸およびY軸を通る平面と垂直なZ軸に対して略平行になっている。本実施形態では、外側コア部40の上面は、その下面に対して略平行であり、外側コア部40の側面は、これらの上面および下面に対して略垂直となっている。ただし、外側コア部40及びインダクタ素子10の外形状は特に限定されず、六面体、円柱形、楕円柱及び多角柱などが例示されるが、実装スペースなどを考慮して任意の形状とすることができる。
本実施形態のインダクタ素子10のサイズは、特に限定されないが、たとえばX軸方向幅が1.0〜20mm、Y軸方向幅が1.0〜20mm、高さ1.0〜10mmである。
このインダクタ素子10は、表面実装可能であり、たとえばパソコンや携帯型電子機器などに搭載されるDC/DCコンバータ等の回路素子などとして用いることができる。
図2及び図3に示すように、コイル20の巻線部22は、巻芯体30の外周面32に、導体20aがコイル状に巻回してある。リード部24は、巻線部22から引き出された導体20aで構成してある。導体20aは、たとえば、導線と、必要に応じて導線の外周を被覆してある絶縁被覆層とで構成してある。
図2に示すように、巻線部22は、1本以上の導体20aがコイル状に巻回してある部分であり、巻線部22からは導体20aの両端である少なくとも一対のリード部24が、外側コア部40の外部に引き出される。図示する実施形態では、巻線部22からは、X軸方向に沿って一対のリード部24が引き出され、外側コア部40の外部に位置するリード部24の先端が外側コア部40の外面に沿って折り曲げられ、一対の端子電極50にそれぞれ接続してある。リード部24の先端は、溶接または導電性接着剤により、端子電極50に接続してある。各端子電極50は、本実施形態では、コの字状の断面形状を有する導電性板材で構成してあり、外側コア部40の上面、側面および下面に密着して接合してある。
巻線部22は、外側コア部40とは別体である巻芯体30に巻回されているため、圧縮成形体である外側コア部40に内蔵されているにもかかわらず、巻乱れが少ない。特に、巻線部22のうち巻軸方向の中心位置Aを含む軸方向全体長さLの50%以上の部分が、巻線部22の内径Dが一定である定内径部分であることが好ましく、軸方向全体長さLの5%以上の部分が定内径部分であることがさらに好ましい。本明細書において、巻線部22の内径Dが一定である定内径部分とは、内径D(内半径の2倍)の最大値と最小値との差が、導体20aの直径以下の部分であると定義される。
導線は、たとえばCu、Al、Fe、Ag、Au、リン青銅などで構成してある。絶縁被覆層は、たとえばポリウレタン、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエステル−イミド、ポリエステル−ナイロンなどで構成してある。導体20aの横断面形状は、特に限定されず、円形、平角形状などが例示される。
図2に示すように、巻線部22の内側には巻芯体30が配置されている。巻芯体30は、巻線部22における導体20aの巻回を支持する。巻芯体30は、外側コア部40とは別体に成形されたものであって、巻線部22の内周面22aが押し当てられた外周面32を有している。図6に示すように、巻芯体30の外形状は円柱状である。しかし、巻芯体30の外形状は、導体20aを巻回して巻線部22を形成可能な柱状であれば特に限定されず、楕円柱状、多角柱状等、その他の形状であっても良い。また、巻芯体の角部のワレ、カケを低減する目的で、巻芯体にC面を設けても良い。
図2及び図6に示すように、巻芯体30における巻軸方向(Z軸方向)の端面である上端面34a及び下端面34bには、上端面34a及び下端面34bの中央部に位置する凹部35が形成されている。図7(a)に示すように、凹部35は、巻芯体30の中心側に凹んだ形状となっていればよく、深さ及び大きさは特に限定されないが、凹部35の深さは巻芯体30の巻軸方向長さの1/4〜1/40程度、凹部35の開口直径は端面34a、34bの直径の30%〜80%程度とすることができる。
図3に示すように、巻芯体30の外周面32には、巻線部22の内周面22aの形状に沿う凹凸32aが形成されている。凹凸32aの高さ(凹凸32aにおいて最も中心軸に近い凹み部分の底から、最も中心軸から離れた凸部分の頂点までの径方向長さ)は、特に限定されないが、導体20aの直径の1/10〜1/2程度である。巻線部22の内周面22aに沿う凹凸32aが形成されているため、巻芯体30の外周面32が巻線部22の内周面22aに食い込む状態となっており、巻線部22と巻芯体30の密着性及び結合性が向上する。なお、図3を除く他の図では、外周面32の凹凸32aは、詳細構造であるため図示を省略している。
図2に示すように、巻線部22は、巻線部22の巻軸方向(Z軸方向)に関して、巻芯体30における巻軸方向(Z軸方向)上端面34aから下端面34bまでの間に配置されていることが好ましい。図示する実施形態とは異なり、上端面34aより上方又は下端面34bより下方に巻線部22の一部が存在する場合、当該部分については、巻芯体30が導体20aを径方向に支持することが難しい。それに対して、図2に示す実施形態のように、上端面34aから下端面34bまでの間に巻線部22を配置することにより、巻芯体30は、巻線部22を構成する導体20aの巻回を支持し、巻線部22の全体に対して、巻芯として機能する。
巻芯体30の磁気特性は強磁性であり、特に磁心材料として好適な軟磁性体であることが好ましい。実施形態の巻芯体30は、バインダ及び磁性粉体を含む圧縮成形体であり、磁性粉体としては、特に限定されないが、純鉄(Fe)、Mn−Zn系フェライトやNi−Cu−Zn系フェライトなどのフェライト、センダスト(Fe−Si−Al系合金)、Fe−Si−Cr系合金、パーマロイ(Fe−Ni系合金)などが例示される。バインダとしては、特に限定されないが、たとえばエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド、シリコン樹脂、これらを組み合わせたものなどが例示される。なお、例示する各材料には、要求特性を満足する範囲内で不純物が含まれる場合がある。
図1及び図2に示すように、外側コア部40は、コイル20の巻線部22及び巻芯体30を覆っている。外側コア部40の上面及び下面には、両端部に端子電極50が係合する電極用凹部が形成されている。
外側コア部40は、バインダ及び磁性粉体を含む圧縮成形体であり、磁性粉体としては、特に限定されないが、Mn−Zn系やNi−Cu−Zn系などのフェライト、センダスト(Fe−Si−Al系合金)、Fe−Si−Cr系合金、パーマロイ(Fe−Ni系合金)などが例示される。バインダとしては、特に限定されないが、たとえばエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド、シリコン樹脂、これらを組み合わせたものなどが例示される。外側コア部40の磁気特性は、巻芯体30と同様に強磁性であり、磁心材料として好適な軟磁性体であることが好ましい。
巻芯体30に含まれる磁性粉体と、外側コア部40に含まれる磁性粉体は、同じであっても良いが、異なっていても良い。巻芯体30が、外側コア部40に含まれる磁性粉体とは異なる磁性粉体を含むことにより、巻芯体30と外側コア部40の特性を調整し、インダクタ素子10の性能を改善できる。例えば、巻芯体30に含まれる磁性粉体を純鉄とし、外側コア部40に含まれる磁性粉体としてFe及びSiを含む合金を用いることにより、インダクタ素子10のコアロスを低減し、直流重畳特性を向上させるとともに、耐酸化性を向上させることができる。
また、巻芯体30及び外側コア部40における磁性粉体の密度は特に限定されないが、例えば、巻芯体30における磁性粉体の密度が4.5〜7.0g/cmであり、外側コア部40における磁性粉体の密度が4.0〜6.5g/cmであることが好ましい。巻芯体30及び外側コア部40における磁性粉体の密度を所定の範囲に調整することにより、インダクタ素子10におけるクラックの発生を防止し、初透磁率を高め、直流重畳特性を向上させることが可能である。
次に、図1〜図3に示すインダクタ素子10の製造方法について、図4および図5に基づき説明する。
図4は、インダクタ素子10の製造方法の一例を表すフローチャートであり、図5(a)〜図5(e)は、フローチャートが示す製造方法を表す概念図である。ステップS01では、導体20aを巻くための巻芯体を準備する。図5(a)は、ステップS01で準備される巻芯体である硬化前の巻芯体130の断面を表している。硬化前の巻芯体130は、後述する外周面の形状を除き、ほぼ硬化後の巻芯体30と同様の形状を有しており、その上端面134a及び下端面134bの中央部には、凹部135が形成されている。硬化前の巻芯体130は、例えば磁性粉体およびバインダで構成される顆粒を加圧成形して得られる。
巻芯体130の加圧成形(ステップS01)で用いる顆粒に含まれる磁性粉体は、金属磁性粒子(好ましくはFe粒子)であり、その粒子外周は、絶縁被膜してあることが好ましい。絶縁被膜としては、金属酸化物被膜、樹脂被膜などが例示される。磁性粉体の粒径は、好ましくは0.5〜50μmである。硬化前の巻芯体130を形成する際の加圧力は、好ましくは0.5〜6ton/cm(4.9×10〜5.88×10MPa)以下である。
磁性粉体に対するバインダの含有割合は、磁性粉体100重量部に対して、バインダが2.0〜5.0重量部程度が好ましい。また、顆粒には、磁性粉体およびバインダ以外に、溶剤、可塑剤、滑材、酸化防止剤、難燃剤、熱安定剤などが含まれていても良い。
ステップS02では、硬化前の巻芯体130に対して導体20aを巻回し、巻線部22及びリード部24を有するコイル20を形成する(図5(b))。導体20aの巻回は、例えば巻芯体130の外周面に導体20aを押し当てながら開始され、巻線部22の内周面22aを形成した後、必要に応じて外周側に重ねて導体20aを巻き付けることにより進行する。なお、実施形態のステップS02でコイル20が形成された時点では、巻芯体130の外周面は平坦であり、図3に示すような凹凸32aは形成されていない。
図5(c)は、ステップS03の状態における金型160の概略断面図である。図5(c)〜図5(e)に示すように、本実施形態の金型160は、巻軸方向であるZ軸方向の上下に相対移動自在可能な下側パンチ162と上側パンチ164とを有する。下側パンチ162、上側パンチ164及び外枠を組み合わせることにより、キャビティが形成される。
ステップS03では、外側コア部40を形成する顆粒142の第1充填を行う。顆粒142の第1充填では、図5(c)に示すように、最終的にキャビティの内部に充填すべき顆粒の全量の一部を充填する。その後、ステップS04では、硬化前の巻芯体130及び巻芯体130に巻回された巻線部22を有するコイル20を、キャビティの内部に設置する。
図5(d)は、ステップS05の状態における金型160の概略断面図である。ステップS05では、外側コア部40を形成する顆粒142の第2充填を行う。顆粒142の第二充填では、図5(d)に示すように、キャビティの内部に充填すべき顆粒の全量のうちの残りを充填する。
第1充填(ステップS03)及び第2充填(ステップS05)で用いる顆粒142は、相互に同じ磁性粉体およびバインダで構成してあり、磁性粉体の種類、粒径、構造および含有割合が同じであり、バインダの種類および含有割合も同じである。顆粒142に含まれる磁性粉体は、金属磁性粒子(好ましくはFe及びSiを含む合金の粒子)であり、その粒子外周は、絶縁被膜してあることが好ましい。絶縁被膜としては、金属酸化物被膜、樹脂被膜などが例示される。磁性粉体の粒径は、好ましくは0.5〜50μmである。
磁性粉体に対するバインダの含有割合は、ステップS01で用いる顆粒と同様に、磁性粉体100重量部に対して、バインダが2.0〜5.0重量部程度が好ましい。また、顆粒142には、磁性粉体およびバインダ以外に、溶剤、可塑剤、滑材、酸化防止剤、難燃剤、熱安定剤などが含まれていても良い。ただし、巻芯体130に用いる顆粒に含まれる磁性粉体は、外側コア部40を形成する顆粒142に含まれる磁性粉体とは異なることが好ましい。例えば、巻芯体130に含まれる磁性粉体を純鉄の粉体とし、外側コア部40に含まれる磁性粉体をFe−Si−Cr系合金の粉体とすることができる。
図4に示すステップS06では、金型160による加圧成形を実施する。図5(e)に示すように、上下のパンチ162、164を相互に近接する方向に移動させ、キャビティの内部を加圧する。この場合の加圧力は、好ましくは4.0ton/cm(3.92×10MPa)以下である。
ステップS06の加圧により、顆粒142は、流動及び圧縮され、外側コア部40の形状に成形される。また、巻芯体130についても、この段階では完全に硬化していないため、ステップS06の加圧により変形及び構成粒子の流動を生じる場合があり、これにより巻芯体130の外周面に、硬化後に凹凸32aとなる凹凸形状が形成される。ただし、硬化前の巻芯体130は事前に加圧成形されているため、巻芯体130で生じる流動は、外側コア部40を形成する顆粒142の流動と比較して小さい。
ここで、図5(e)に示すように、顆粒142と比較して十分に流動が少ないか、若しくはおおむね流動しない巻芯体が金型内部に配置されている場合、仮に巻芯体に凹部が形成されていなければ、巻芯体の端面とパンチ162、164の間に、薄い層状のクラックの基点となる磁性流体の密度分布が、加圧成形により形成される問題がある。特に、巻芯体の上下端面からパンチ162、164までの距離が短い場合に、この部分にクラックが発生しやすい。しかし、実施形態の巻芯体130における端面134a、134bには、凹部135が形成されているため、端面134a、134bとパンチ162、164との間における磁性流体の密度分布が、巻軸垂直方向に沿って一定となりにくい。このように、端面134a、134bに形成された凹部135は、巻芯体130の端面134a、134bとパンチ162、164の間に、薄い層状のクラックの基点となる磁性流体の密度分布が形成されることを防止できる。
図4に示すステップS07では、ステップS06で形成された成形体を金型160から取り出し、熱処理を実施する。ステップS07での熱処理により、巻芯体130及び顆粒142に含まれるバインダが硬化し、図4に示す巻芯体30及び外側コア部40が形成される。
その後、ステップS08では、図1及び図2に示す端子電極50の外側コア部40への取り付け及びリード部24の端子電極50への接続を行うことにより、図1〜図3に示すインダクタ素子10を得る。リード部24と端子電極50との接続は、溶接、導電性接着剤による接着、はんだ付け等により行うことができるが、導通が確保できる接続方法であれば特に限定されない。
上述したインダクタ素子10は、別途加圧成形された硬化前の巻芯体130を用いてコイル20を形成し、これをキャビティ内に配置してインサート成形するため、外側コア部40相当部分の加圧成形時(ステップS007)に生じる巻芯体130の圧縮量が小さく、巻線部22の内側部分が加圧不足となる問題も解消される。したがって、巻線部22の内側部分でのクラック発生を防止でき、さらに巻線部22の内周面22aが、変形の少ない巻芯体30の外周面32に支持されるため、加圧成形時における巻線形状の乱れが防止され、巻乱れの少ないインダクタ素子10を実現できる。また、硬化前の巻芯体130を用いてコイル20の形成を行い、巻芯体30に含まれるバインダの硬化を、外側コア部40に含まれるバインダの硬化と同時に行うことにより、巻芯体30と外側コア部40の界面でのクラック発生を防止できる。
さらに、巻芯体30、130における端面34a、34b、134a、134bには、凹部35、135が形成されているため、巻芯体30の端面34a、34bの巻軸方向両側に位置する外側コア部40に、薄い層状のクラックが形成されることを防止できる。また、凹部135により巻芯体30と外側コア部40との接触面積が大きくなるため、インダクタ素子10は、巻芯体30と外側コア部40の密着性及び結合性に優れている。
またインダクタ素子10は、コアの内部に存在するコイル状の導体20aに過度な加圧力が印加されず、コイル状の導体20aが潰されるおそれが少なく、したがって、コイル状の導体20aにおける絶縁被覆破壊が発生するおそれが少なく、ショート不良が発生し難い。さらに、巻芯体30の外周面32に形成された凹凸32aは、巻線部22の内周面22aと巻芯体30の外周面32との密着度を高め、巻芯体30と巻線部22との結合を補強する。
さらに、本実施形態の方法により得られたインダクタ素子10では、巻芯体30及び外側コア部40の磁性粉体の密度を所定の範囲とすることにより、初透磁率や直流重畳特性を向上させることができる。巻芯体30と外側コア部40における磁性粉体の密度は、含まれる磁性粉体の粒径を巻芯体30と外側コア部40とで異ならせたり、硬化前の巻芯体130を成形する際(ステップS01)の圧力とインサート成形時(ステップS06)の圧力とを異ならせることにより、適切な範囲内とすることができる。
上述した製造方法では、キャビティ内部に充填すべき顆粒142の全量の一部を、キャビティ内に充填した後、金型160の内部に、インサート部材としての巻芯体130及びこれに巻回されたコイル20を配置し、その後に、キャビティ内を顆粒142で満たす。このような順序で顆粒142をキャビティ内に充填することで、スペーサなどを用いること無く、巻線部22及び巻芯体130を有するインサート部材をキャビティ内に配置しやすくなり、製造コストの低減に寄与する。
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
たとえば、上述した実施形態では、金型160の下側パンチ162及び上側パンチ164をZ軸方向に沿って鉛直方向の上下に配置したが、Z軸方向に沿って水平方向、あるいは鉛直と水平との間の角度方向に配置しても良い。
また、硬化前の巻芯体130は、加圧成形後であってコイル20が形成される前に、乾燥又は予備的熱処理が施されることにより、巻芯体130に含まれる顆粒の流動性が調整されていても良い。ただし、コイル20形成前における硬化前の巻芯体130に対する熱処理温度(第1の温度)は、巻芯体130に含まれるバインダを完全に硬化させない温度であることが好ましく、例えば、外側コア部40形成の際(ステップS07)における熱処理温度(第2の温度)より低温であることが好ましい。
また、上述した実施形態において、凹部35、135は、巻芯体30の両方の端面34a、34b、134a、134bに形成されているが、いずれか一方のみに形成されていてもよい。例えば、巻芯体30がインダクタ素子10の中心から上下いずれかに偏って配置されている場合などは、偏って配置されている方向の端面のみに凹部35が形成されていてもよい。さらに、巻芯体の端面に形成される凹部の形状は、図7(a)に示す凹部35のように円錐台状に凹んだ形状に限定されず、任意の形状とすることができる。例えば、図7(b)に示す凹部81のように円柱状に凹んだ形状や、図7(c)に示す凹部82のようにすり鉢状の形状や、図7(d)に示す凹部83のように角錐状又は円錐状に凹んだ形状などが例示される。
また、凹部は、巻芯体の端面における中央部に配置しても良いが、図8に示す巻芯体85、88のように、巻芯の中央以外の位置に、凹部を配置しても良い。巻芯体85では、端面86aにおける直径に沿って2つの凹部87が配置されている。2つの凹部87は、端面86aの中心から略等距離の位置に配置されている。巻芯体88では、端面89aの直径に沿って略等間隔に3つの凹部が配置されている。3つの凹部のうち、真ん中の凹部90は、端面89aの中心に配置されている。
また、巻芯体は、コイル形成時に既に硬化されていても良く、また、圧縮成形体以外の鋳造や加工により形成されたものであっても良い。
10… インダクタ素子
20… コイル
20a… 導体
22… 巻線部
24… リード部
30… 巻芯体
32… 外周面
32a… 凹凸
35… 凹部

Claims (6)

  1. コイル状に導体が巻回してある巻線部と、前記巻線部から引き出されたリード部とを有するコイルと、
    前記巻線部における前記導体の巻回を支持する強磁性の巻芯体と、
    前記巻線部及び前記巻芯体を覆っており、バインダ及び磁性粉体を含む圧縮成形体である外側コア部と、を有し、
    前記巻芯体の軸方向における少なくとも一方の端面に、凹部が形成されていることを特徴とするインダクタ素子。
  2. 前記巻芯体は柱状であり、前記巻線部の内周面が押し当てられた外周面を有しており、
    前記外周面には、前記巻線部の前記内周面の形状に沿う凹凸が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のインダクタ素子。
  3. 前記巻芯体は、バインダ及び前記外側コア部に含まれる磁性粉体とは異なる磁性粉体を含む圧縮成形体である請求項1又は請求項2に記載のインダクタ素子。
  4. 前記巻線部は、軸方向に関して、前記巻芯体における前記一方の端面から他方の端面までの間に配置されていることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかに記載のインダクタ素子。
  5. 前記巻芯体は磁性粉体を含む圧縮成形体であり、
    前記巻芯体における磁性粉体の密度は4.5〜7.0g/cmであり、前記外側コア部における磁性粉体の密度は4.0〜6.5g/cmであることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかに記載のインダクタ素子。
  6. 前記巻線部のうち軸方向の中心位置を含む軸方向全体長さの50%以上の部分が、当該巻線部の内径が一定である定内径部分であることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれかに記載のインダクタ素子。
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