JP6314618B2 - スパークプラグおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
ガソリンエンジンなどの火花点火エンジンには、燃焼室における混合気の着火にスパークプラグを用いる。
スパークプラグは、中心電極と接地電極との間に火花放電ギャップが形成されるものであり、中心電極に高電圧が印加されることで中心電極と接地電極との間で火花放電がなされる。
電極母材に貴金属チップを溶接することで、電極母材と貴金属チップとの間には、溶融部が形成される。
中心電極と接地電極の間で火花放電を生じさせた場合、貴金属チップで生じていた火花放電が溶融部に「飛び火」する可能性がある。
具体的には、エンジンの気筒内に生じる強い気流(スワール流やタンブル流等)によって火花放電が流され、火花放電長が伸張して貴金属チップで生じていた火花放電が溶融部に「飛び火」する場合がある。
火花放電が溶融部に飛び火する割合(飛び火率)が増えると、溶融部の摩耗が増加し、貴金属チップの接合強度が低下する懸念がある。
この特許文献1の技術は、
・「一方の電極の端縁」から「他方の電極の端縁」を結ぶ傾斜角をAとし、
・「一方の電極の端縁」から「他方の電極の溶融部の最外部」を結ぶ傾斜角をBとした場合、
B−A<5°
の関係を満足するように設けるものである。
即ち、特許文献1に示すように、寸法の最適設計のみでは、気流によって流される火花放電を制御することができず、火花放電が溶融部に飛び火して溶融部の摩耗が増加してしまう。
図1、図2を参照して実施例1を説明する。
この実施例1のスパークプラグは、車両走行用の火花点火エンジン(ガソリンエンジン等)に搭載されるものであり、このエンジンは気筒内に高速流が生じる可能性がある。
具体的な一例として、この実施例1のエンジンは、ターボチャージャ等の過給機付きエンジンであり、高回転時等において気筒内に高速流が生じる場合がある。あるいは、気筒内にタンブル流やスワール流などの旋回流を強制的に生じさせる旋回流コントロール手段(タンブル流コントロールバルブ等)を搭載するエンジンであり、旋回流コントロール手段の作動により気筒内に高速流が生じる場合がある。
・中心部に貫通した軸孔を有する絶縁碍子と、
・軸孔の内部に固定配置され、軸孔の先端側(燃焼室側)から一部が露出する中心電極1と、
・軸孔の内部に固定配置され、軸孔の後端側から一部が露出する端子金具と、
・絶縁碍子の外周に固定装着される主体金具(取付金具)と、
・この主体金具の先端に設けられて中心電極1との間に火花放電ギャップを形成する接地電極2(外側電極)とを備える。
中心電極1は、インコネル(商標名)、ニッケル、ニッケル合金から形成される電極母材3の内部に、電極母材3よりも熱電導率の高い銅または銅合金からなる芯材4を埋設したものであり、略棒状を呈する。
電極母材3の先端面には、耐火花消耗性を向上する目的で、貴金属チップ5が溶接により固定されている。
貴金属チップ5は、イリジウム、白金、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、レニウムなどの高溶点の貴金属を用いた略円柱体である。なお、電極母材3と貴金属チップ5の溶接箇所の詳細については後述する。
ここで、シリンダヘッドに主体金具を締結することで、主体金具がシリンダヘッドに対して電気的に接続される。エンジンはアース接地されて車載バッテリのマイナス端子と電気的に接続されている。このため、主体金具をシリンダヘッドに締結することで、主体金具を介して接地電極2がアース接地される。
なお、接地電極2は、中心電極1と同様、貴金属チップが溶接されるものであるが、この実施例1では接地電極2側の貴金属チップおよび溶接技術の説明は割愛する。
スパークプラグは、上述したように、中心電極1の電極母材3と、貴金属チップ5とが溶接により結合されるものであり、電極母材3と貴金属チップ5の間には溶接による溶融部6が形成される。
そして、この実施例1では、貴金属チップ5の表面と、溶融部6の表面との境界部に、絶縁材料による絶縁体αを設けている。貴金属チップ5の表面と溶融部6の表面との境界部に絶縁体αを設ける技術は限定するものではないが、一例としてこの実施例の絶縁体αは、溶融部6から析出して設けられる。即ち、溶融部6の貴金属チップ5側の端に絶縁体αを析出させて、貴金属チップ5と溶融部6との間に絶縁体αを設け、貴金属チップ5と溶融部6が表面上にて直接地続きにならないようにしている。
この実施例1の絶縁体αは、溶融部6からアルミナを析出させ、アルミナ(絶縁材料の一例)によって絶縁体αを設けるものである。この絶縁体αの抵抗率は、106 オームcm以上である。
この実施例1の溶接技術は、レーザ溶接を用いるものであり、中心電極1の電極母材3と貴金属チップ5がレーザ溶接により溶接されるものである。レーザ溶接による溶接箇所は、電極母材3と貴金属チップ5の接触箇所の周囲であり、接触箇所の全周がレーザ溶接により溶接される。なお、レーザ溶接は周知なものであり、CWレーザ(連続波発振レーザ)やPWレーザ(パルス波発振レーザ)を用いたものである。
(i)粉末状のアルミナを添加した電極母材3を用いて溶接を行う第1製造方法と、
(ii)粉末状のアルミナを添加した貴金属チップ5を用いて溶接を行う第2製造方法と、
(iii)電極母材3に近い側の外周面(レーザ溶接される箇所)に粉末状のアルミナを添加した貴金属をクラッドした貴金属チップ5を用いて溶接を行う第3製造方法と、
のいずれかを採用する。
このため、溶接後に溶融部6が冷えて固化することで、図1に示すように、貴金属チップ5と溶融部6の間に、アルミナによる絶縁体αを略帯状に全周に亘って設けることができる。
この実施例1のスパークプラグは、上述したように、貴金属チップ5の表面と溶融部6の表面との間に絶縁体αを介在させている。
このように、貴金属チップ5の表面と溶融部6の表面との間に絶縁体αを設けることで、貴金属チップ5から溶融部6へ火花放電が飛び火し難くなる。このため、エンジンの気筒内に生じた高速流によって火花放電が流されても、火花放電が溶融部6に飛び火するのを絶縁体αによって阻止することができる。
この実施例1のスパークプラグは、気筒内に高速気流が生じても飛び火による溶融部6の摩耗が抑えられるため、長期に亘って貴金属チップ5の脱落を防止することができ、スパークプラグの信頼性を高めることができる。
この実施例1では、絶縁体αの境界幅Lを好ましくは0.1mm以上、さらに好ましくは0.15mm以上に設けている。
その理由を図2を参照して説明する。
・図2の実線Aは、溶融部6に絶縁体αの析出が無い場合の飛び火率を示し、
・図2の実線Bは、絶縁体αの境界幅Lが0.05mmの場合の飛び火率を示し、
・図2の実線Cは、絶縁体αの境界幅Lが0.1mmの場合の飛び火率を示し、
・図2の実線Dは、絶縁体αの境界幅Lが0.15mmの場合の飛び火率を示す。
なお、この境界幅Lは、全周の中から安定した幅の部分を選び、気流の流れ方向がその部分で飛び火するように一定に制御して飛び火率を求めた値を、その境界幅Lでの飛び火率とした。
また、実線Dから解るように、貴金属チップ5と溶融部6との間に0.15mm幅の絶縁体αを析出させることで、気筒内に高速気流が生じた場合(例えば、流速が40m/sを超えた場合)であっても飛び火率を略ゼロに抑えることができる。
さらに、絶縁体αの境界幅Lを0.15mm以上に設けることで、高速気流に対する溶融部6の耐摩耗性をさらに向上することができる。
なお、絶縁体αの境界幅Lは、上述した第1〜第3製造方法のいずれかにおける絶縁粉末の添加割合の増減等によって調整するものである。
もちろん、中心電極1と接地電極2の両方に本発明を適用しても良い。
あるいは、図5に示すように、貴金属チップ5の溶融部6に近い側の外周面にリング状の絶縁体αを設け、この絶縁体αと溶融部6の間に貴金属チップ5が露出する範囲Mを設けても良い。
3 電極母材
5 貴金属チップ
6 溶融部
α 絶縁体
L 絶縁体の境界幅
Claims (8)
- 中心電極(1)または接地電極(2)の電極母材(3)と、この電極母材(3)に溶接により結合された貴金属チップ(5)とを備え、
前記電極母材(3)と前記貴金属チップ(5)の間に溶接による溶融部(6)が存在するスパークプラグにおいて、
前記貴金属チップ(5)の表面と前記溶融部(6)の表面との境界部に、絶縁性の絶縁体(α)が設けられており、
前記絶縁体(α)の抵抗率は、10 6 オームcm以上であることを特徴とするスパークプラグ。 - 中心電極(1)または接地電極(2)の電極母材(3)と、この電極母材(3)に溶接により結合された貴金属チップ(5)とを備え、
前記電極母材(3)と前記貴金属チップ(5)の間に溶接による溶融部(6)が存在するスパークプラグにおいて、
前記貴金属チップ(5)の表面と前記溶融部(6)の表面との境界部に、絶縁性の絶縁体(α)が設けられており、
前記絶縁体(α)は、前記溶融部(6)から析出して設けられており、
前記絶縁体(α)の抵抗率は、10 6 オームcm以上であることを特徴とするスパークプラグ。 - 中心電極(1)または接地電極(2)の電極母材(3)と、この電極母材(3)に溶接により結合された貴金属チップ(5)とを備え、
前記電極母材(3)と前記貴金属チップ(5)の間に溶接による溶融部(6)が存在するスパークプラグにおいて、
前記貴金属チップ(5)の表面と前記溶融部(6)の表面との境界部に、絶縁性の絶縁体(α)が設けられており、
前記絶縁体(α)の境界幅(L)は、0.1mm以上に設けられており、
前記絶縁体(α)の抵抗率は、10 6 オームcm以上であることを特徴とするスパークプラグ。 - 中心電極(1)または接地電極(2)の電極母材(3)と、この電極母材(3)に溶接により結合された貴金属チップ(5)とを備え、
前記電極母材(3)と前記貴金属チップ(5)の間に溶接による溶融部(6)が存在するスパークプラグにおいて、
前記溶融部(6)の表面は、絶縁性の絶縁層(β)によって覆われており、
前記絶縁体(α)の抵抗率は、10 6 オームcm以上であることを特徴とするスパークプラグ。 - 請求項1または請求項2に記載のスパークプラグにおいて、
前記絶縁体(α)の境界幅(L)は、0.1mm以上に設けられていることを特徴とするスパークプラグ。 - 請求項1〜請求項5のいずれか1つに記載のスパークプラグにおいて、
前記金属チップ(5)は、Ir、Rh、Ru、Reのいずれかを主成分としていることを特徴とするスパークプラグ。 - 請求項1〜請求項6のいずれか1つに記載のスパークプラグにおいて、
前記絶縁体(α)または前記絶縁層(β)は、Al2O3、MgO、Y2O3、Cr2O3のいずれかを主成分としていることを特徴とするスパークプラグ。 - 中心電極(1)または接地電極(2)の電極母材(3)と、この電極母材(3)に溶接により結合された貴金属チップ(5)とを備え、
前記電極母材(3)と前記貴金属チップ(5)の間に溶接による溶融部(6)が存在し、
前記貴金属チップ(5)の表面と前記溶融部(6)の表面との境界部に、絶縁性の絶縁体(α)が設けられ、
前記絶縁体(α)が前記溶融部(6)から析出して設けられるスパークプラグは、
絶縁体粉末を添加した電極母材(3)を用いて溶接を行う第1製造方法、
絶縁体粉末を添加した貴金属チップ(5)を用いて溶接を行う第2製造方法、
電極母材(3)に近い側の外周面に、絶縁体粉末を添加した貴金属をクラッドした貴金属チップ(5)を用いて溶接を行う第3製造方法、
のいずれかを採用して製造されることを特徴とするスパークプラグの製造方法。
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