JP6314546B2 - 排気還流装置 - Google Patents

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Description

本発明は、内燃機関の排気還流装置に関する。
車両用の内燃機関において、燃費性能の向上等を目的として排気ガスの一部を吸気側に還流させる排気還流装置(EGR装置)が知られている。特許文献1には、低温の排気ガスを大量に還流させることを目的として、排気浄化装置を通過した排気ガスをターボ過給機のコンプレッサより上流側の吸気通路に還流させる低圧EGR装置が開示されている。
特開2009‐264339号公報
ところで、上記文献1のように、排気ガスをターボ過給機の上流側かつエアフローセンサの下流側に合流させる低圧EGR装置では、排気ガスの還流を実行すると内燃機関が失火する場合があることがわかった。この失火の原因は次のように考えられる。
EGR装置により還流する排気ガス(EGRガス)の量は計算により推定されており、エアフローセンサの検出値とEGRガス量とに基づいて、燃料噴射量が算出される。しかし、吸気通路の曲がり部分における吸気流れの剥離により発生した乱流渦が、EGRガスの合流によって増幅されて、その一部が逆流してエアフローセンサを通過し、エアフローセンサの検出値が実際の吸入空気量よりも大きなものとなる。そして、実際の吸入空気量より大きな検出値に基づいて算出された燃料が噴射されて、リッチ失火が生じる。
そこで本発明では、排気ガスの還流を実行しても、エアフローセンサが正確な吸入空気量を検出し得る低圧EGR装置を提供することを目的とする。
本発明のある態様によれば、内燃機関の排気ガスの一部を、ターボ過給機のコンプレッサよりも吸気流れ上流側かつエアフローセンサより吸気流れ下流側の吸気通路に還流させる排気還流通路と、吸気通路に還流させる排気ガスの量を調整する還流制御弁とを備える排気還流装置が提供される。
排気還流装置の吸気通路は少なくとも一つの屈曲部を有し、排気還流通路の吸気通路への接続部は、吸気流れの剥離が発生していない領域で排気ガスと吸気とが合流するように設けられている。剥離が発生していない領域は、前記屈曲部より吸気流れ下流側の吸気通路の流路から、前記屈曲部の曲率と前記内燃機関の最大吸入空気量とに基づいて定まる剥離領域を除外した領域である。
上記態様によれば、排気ガスと吸気とが吸気流れの剥離が発生していない領域で合流するので、排気ガスの合流による吸気流れの乱れの増幅を防止でき、その結果、吸気の逆流に起因するエアフローセンサの誤計測を防止できる。
図1は、EGR装置を備えるシステムの概略構成図である。 図2は、比較例としてのコンプレッサ上流側通路の構造を示す図である。 図3は、図2のコンプレッサ上流側通路の、軸線を含む断面図である。 図4は、図3のIV−IV線に沿った断面図である。 図5は、本実施形態のコンプレッサ上流側通路の構造を示す図である。 図6は、図5のコンプレッサ上流側通路の、軸線を含む断面図である。 図7は、図3のVII−VII線に沿った断面図である。 図8は、本実施形態の効果を説明するための図である。
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明における「上流側」、「下流側」は、それぞれ吸気流れ(又は排気流れ)の上流側、下流側を意味する。
図1は、本発明の実施形態に係るEGR装置(排気還流装置)を備えるシステムの概略構成図である。内燃機関1に供給される空気(以下、吸入空気ともいう)は、エアクリーナ9から吸入され、エアフローセンサ10を通過し、コンプレッサ上流側通路3を通ってターボ式過給機2のコンプレッサ2Aに流入する。コンプレッサ2Aで過給された吸入空気は、コンプレッサ下流側通路4に介装されたインタークーラ5で冷却されてから内燃機関1に流入し、燃焼する。燃焼後に内燃機関1から排出された排気ガスは、排気通路6に介装されたターボ式過給機2のタービン2Bを回転させ、排気浄化用触媒11で浄化されてから大気中に排出される。
また、排気浄化用触媒11を通過した排気ガスの一部は、EGR通路(排気還流通路)7を通って上流側通路3に還流する。なお、EGR通路7には、EGR通路7を通る排気ガス(以下、EGRガスともいう)の量を調整し得るEGR弁(還流制御弁)が介装されている。
上記のように、本実施形態におけるEGR装置は、排気浄化用触媒11の下流側からコンプレッサ2Aの上流側にEGRガスを還流させる、いわゆる低圧EGR装置である。
図2は、本実施形態の比較例としての低圧EGR装置における、コンプレッサ上流側通路3の構造を示す図である。
エアフローセンサ10は、エアクリーナ9を収めるケースの出口側に取り付けられている。コンプレッサ上流側通路3は、樹脂またはゴム等の可撓性の素材で形成されたパイプ部3Aと、鋳鉄等で形成されたエルボー部3Bと、を含んで構成されている。エルボー部3Bは、下流端にコンプレッサ2Aとの接続用のフランジ部20を備える。また、エルボー部3BにはEGR通路7が接続されている。
ところで、ターボ式過給機2は吸排両通路と接続する必要があり、さらには排気ガスを高エネルギの状態で流入させたいという要請もあるため、その配置は制約を受ける。また、エアクリーナ9及びエアフローセンサ10の配置も、高いメンテナンス性を確保したいという要請や、高温になる場所を避けたいという要請等により制約を受ける。これらにより、エアフローセンサ10からコンプレッサ2Aまで曲がりのない配管で接続することは難しい。そして、コンプレッサ2Aに対しては、吸入空気をコンプレッサ2Aの回転軸方向に沿って流入させることが望ましい。その結果、コンプレッサ上流側通路3は、図2に示すように軸線が湾曲した形状となる。
図3は、比較例としての低圧EGR装置のエルボー部3Bの、コンプレッサ上流側通路3の軸線(図中の破線)を含む平面で切った断面図である。図4は図3のIV−IV線に沿った断面図である。図中の矢印Mはコンプレッサ上流側通路3内の吸気の主流を示している。図中の領域Aは、後述する剥離領域を示している。図中の破線で示した円は、EGR通路7の接続部を示している。
出願人が図2に示すEGR装置を用いて実験したところ、EGRガスの還流を実行すると内燃機関1で失火が生じる場合があった。この失火の原因については、次のように考えられる。
図3のようにS字状に屈曲するエルボー部3Bでは、吸気流が通路壁面に追従できなくなることで屈曲部の下流側に剥離領域Aが生じる。剥離領域Aは乱流状態であり、逆流渦が発生している。そして、図3、4に示すように、流入するEGRガスが剥離領域Aに合流するようにEGR通路7を接続すると、EGRガスの合流によって乱流状態がさらに促進され、逆流した吸気の一部がエアフローセンサ10をコンプレッサ2A側からエアフローセンサ10側へ通過する。エアフローセンサ10が逆流した吸気を計測することで、計測値は実際の吸入空気量よりも大きくなり、計測値に基づいて決定される燃料噴射量は実際に必要な噴射量よりも多くなる。その結果リッチ失火が生じる。
これに対し、エアフローセンサ10が吸入空気量を正確に計測し、リッチ失火を防止し得る構成が、本実施形態のEGR装置である。コンプレッサ2A、エアフローセンサ10、及びエアクリーナ9の配置は、上述したように種々の制約があるため、変更することは難しい。そこで、本実施形態では以下に説明する構成により、リッチ失火を防止し得る構成とした。
図5は、本実施形態のEGR装置における、コンプレッサ上流側通路3の構造を示す図である。図6は、本実施形態に係るエルボー部3Bの、コンプレッサ上流側通路3の軸線を含む平面で切った断面図である。図7は図6のVII−VII線に沿った断面図である。図中の矢印Mはコンプレッサ上流側通路3内の吸気の主流を示している。図中の領域Aは、後述する乱流領域を示している。図中の破線で示した円は、EGR通路7の接続部を示している。
図6、7に示すように、EGR通路7のエルボー部3Bへの接続部は、EGRガスがエルボー部3B内を流れる主流に合流する位置に設けられている。EGRガスがエルボー部3B内の主流と合流する場合は、剥離領域Aに合流する場合に比べて合流部での圧力差が小さくなるので、合流するEGRガスの流速も剥離領域Aに合流する場合に比べて低くなる。合流するEGRガスの流速が高いほど、合流によって吸気の流れを阻害して乱流を生じさせ易いが、本実施形態ではEGRガスの流速が低く抑えられるので、乱流が生じにくい。
また、EGRガスが乱流状態の剥離領域Aに合流すると、上述したように乱流状態が促進されてしまうが、本実施形態のように主流に合流させると、EGRガスは主流に引かれてスムーズに流れる。
上述したように、EGRガスがエルボー部3Bの乱流状態を促進することなくスムーズに流れるので、逆流がエアフローセンサ10を通過することがなく、エアフローセンサ10は正確な吸気量を計測できる。
なお、EGR通路7の接続部は、EGRガスが剥離領域Aに合流しない位置であればよく、図5、6に示す位置に限られるわけではない。例えば、図7の破線矢印で示した範囲であれば同様の効果が得られる。さらには、図6に示す位置から、エルボー部3Bの軸線に沿ってコンプレッサ2Aの方向またはエアフローセンサ10の方向にずらしてもよい。
図8は、EGR率ごとに、エアフローセンサ10の計測値に対する実際の吸入空気量の割合を算出した結果を示す図である。縦軸の「AFM誤差」が、エアフローセンサ10の計測値に対する実際の吸入空気量の割合であり、エアフローセンサ10が実際の吸気量を正確に計測した場合には、AFM誤差は1となる。つまり、エアフローセンサ10の計測値が実際の吸入空気量より大きくなるほど、AFM誤差の値は小さくなる。図中の黒丸が本実施形態のEGR装置の結果であり、図中の四角が比較例としての図2の構成のEGR装置の結果である。
EGR率がゼロの場合は、本実施形態及び比較例のいずれもAFM誤差は1であるが、EGRガスを還流させると、本実施形態は比較例と比較して、AFM誤差の落ち込みが小さい。すなわち、EGRガスの還流を実行した場合には、本実施形態の方が実際の吸入空気量に近い計測値であることがわかる。
また、本実施形態の構成によるAFM誤差程度であれば、計測値に基づいて算出された燃料噴射量に、AFM誤差に応じた補正係数を用いて補正することで、実際に必要な燃料噴射量を噴射できる。これに対し、比較例のようにAFM誤差が小さくなると、燃料噴射量の補正可能範囲を超えている。
次に、上述した本実施形態の作用効果についてまとめる。
本実施形態の低圧EGR装置は、コンプレッサ上流側通路3は少なくとも一つの屈曲部を有し、EGR通路7のコンプレッサ上流側通路3への接続部は、吸気流れの剥離が発生していない領域でEGRガスと吸気とが合流するように設けられている。これにより、EGRガスが合流することにより吸気流れの乱れが増幅されることを防止できるので、エアフローセンサ10の誤計測によるリッチ失火を防止できる。
コンプレッサ上流側通路3は、コンプレッサ側の端部の上流側に二つの屈曲部が設けられたエルボー部3Bを備え、EGR通路7の接続部は、二つの屈曲部の間に設けられている。これにより、吸気流れの乱れを増幅させることなく、EGRガスをコンプレッサ2Aのより近くに合流させることができる。
剥離が発生していない領域を、屈曲部より吸気流れ下流側の吸気通路の流路から、屈曲部の曲率と吸気流量とに基づいて定まる剥離領域Aを除外した領域として特定する。例えば、屈曲部の曲率が大きい程、広い剥離領域Aが特定され、吸気流量が多い程、広い剥離領域Aが特定される。これにより、EGRガスの合流による吸気流れの乱れの増幅を的確に防止できる。
剥離領域Aを算出する際に用いる吸気流量は、内燃機関1の最大吸気流量である。剥離領域Aの広さは運転状態により変動するが、最大吸気流量に基づいて剥離領域Aを特定すれば、内燃機関1の運転状態にかかわらず吸気流の乱れの増幅を防止し、エアフローセンサ10の誤計測によるリッチ失火を防止できる。
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されるわけではなく、特許請求の範囲に記載の技術的思想の範囲内で様々な変更を成し得ることは言うまでもない。
1 内燃機関
2 ターボ式過給機
3 コンプレッサ上流通路
4 コンプレッサ下流通路
5 インタークーラ
6 排気通路
7 EGR通路
8 EGRバルブ
9 エアクリーナ
10 エアフローセンサ
11 排気浄化用触媒

Claims (4)

  1. 内燃機関の排気ガスの一部を、ターボ過給機のコンプレッサよりも吸気流れ上流側かつエアフローセンサより吸気流れ下流側の吸気通路に還流させる排気還流通路と、
    前記吸気通路に還流させる排気ガスの量を調整する還流制御弁と、
    を備える排気還流装置において、
    前記吸気通路は少なくとも一つの屈曲部を有し、
    前記排気還流通路の前記吸気通路への接続部は、吸気流れの剥離が発生していない領域で前記排気ガスと吸気とが合流するように設けられており、
    前記剥離が発生していない領域は、前記屈曲部より吸気流れ下流側の吸気通路の流路から、前記屈曲部の曲率と前記内燃機関の最大吸入空気量とに基づいて定まる剥離領域を除外した領域であることを特徴とする排気還流装置。
  2. 請求項1に記載の排気還流装置において、
    前記吸気通路は、前記コンプレッサ側の端部の上流側に二つの屈曲部が設けられ、
    前記接続部は、前記二つの屈曲部の間に設けられていることを特徴とする排気還流装置。
  3. 請求項1または2に記載の排気還流装置において、
    前記屈曲部の曲率が大きい程、前記剥離領域が広いことを特徴とする排気還流装置。
  4. 請求項1から3のいずれかに記載の排気還流装置において、
    前記最大吸入空気量が多い程、前記剥離領域が広いことを特徴とする排気還流装置。
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