以下の実施の形態においては、便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明する。以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。なお、以下の実施の形態において、その構成要素(処理ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須ではない。
また、以下の実施の形態における各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路その他のハードウェアとして実現しても良い。また、後述する各構成、機能、処理部、処理手段等は、コンピュータ上で実行されるプログラムとして実現しても良い。すなわち、ソフトウェアとして実現しても良い。各構成、機能、処理部、処理手段等を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリやハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置、ICカード、SDカード、DVD等の記憶媒体に格納することができる。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一または関連する符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
<第一実施形態>
[システム構成]
第一実施形態は、鉱山においてショベルやホイールローダ等の積込機が積み込んだ土砂や鉱石を搬送する運搬車両と、積込機及び運搬車両の位置や走行状態を管制する管制センタとを無線通信ネットワークで接続した車両走行システムに係り、特に無線通信の基地局の通信品質を考慮して、運搬車両の走行区間を決定する点に特徴がある。以下、本発明の第一実施形態に係る車両走行システムについて、図面を参照しながら説明する。
まず、図1に基づいて第一実施形態に係る車両走行システムの概略構成について説明する。図1は、第一実施形態に係る車両指示システムの概略構成を示す図である。図1に示す車両走行システム1は、鉱山などの採石場で、土砂や鉱石の積込作業を行うショベル10−1、10−2と、土砂や鉱石等の積荷を搬送するダンプトラック(以下「ダンプ」と略記する)20−1、20−2と、採石場の近傍若しくは遠隔の管制センタ30に設置された運行管理サーバ31と、を含む。
各ダンプ20−1、20−2は、鉱山内であらかじめ設定された走行経路60に沿って、ショベル10−1又は10−2、及び図示しない放土場の間を往復し、積荷を搬送する。本実施形態ではダンプ20−1、20−2は、オペレータが搭乗することなく自律走行する無人ダンプを例に挙げて説明するが、オペレータが搭乗して運転する有人ダンプであっても本発明を適用することができる。
ショベル10−1、10−2、各ダンプ20−1、20−2、及び運行管理サーバ31は、無線通信回線40を介して互いに無線通信接続される。この無線通信接続を円滑に行うために、鉱山内には、複数の無線基地局41−1、41−2、41−3が設置される。そしてこれらの基地局を経由して、無線通信の電波が送受信される。電波は、各基地局41−1、41−2、41−3から距離が離れるに従って減衰する。図1の符号42−1、42−2、42−3は、各基地局41−1、41−2、41−3と各ダンプ20−1、20−2とが電波の送受信ができる範囲(以下「通信エリア」という)を示す。各基地局41−1、41−2、41−3は、通信エリア42−1、42−2、42−3が互いに重なるように設置されることで、走行経路60上であればどの地点からも無線通信回線40に接続できるようにすることが好ましい。図1では、通話エリアを円形に図示しているが、実際には、地形の影響を受けて円形にはならないこともある。
ショベル10−1、10−2及び各ダンプ20−1、20−2は、全地球航法衛星システム(GNSS:Global Navigation System)の少なくとも3つの航法衛星50−1、50−2、50−3から測位電波を受信して自車両の位置を取得するための位置算出装置(図1では図示を省略する)を備える。GNSSとして、例えばGPS(Global Positioning System)、GLONASS(Global Navigation Satellite System)、GALILEOを用いてもよい。以下、ショベル10−1、10−2、及び各ダンプ20−1、20−2について説明するが、ショベル10−1とショベル10−2、及びダンプ20−1と20−2とはそれぞれ同一の構成であるので、ショベル10−1及びダンプ20−1について説明し、ショベル10−2、ダンプ20−2については説明を省略する。
ショベル10−1は、超大型の油圧ショベルであって、走行体11と、この走行体11上に旋回可能に設けた旋回体12と、運転室13と、旋回体12の前部中央に設けたフロント作業機14と、を備えて構成される。フロント作業機14は、旋回体12に対し俯仰動可能に設けられたブーム15と、このブーム15の先端に回動可能に設けられたアーム16と、そのアーム16の先端に取り付けられたバケット17とを含む。ショベル10−1における見通しの良い場所、例えば運転室13の上部に、無線通信回線に接続するためのアンテナ18が設置されている。
ダンプ20−1は、本体を形成するフレーム21と、前輪22及び後輪23と、フレーム21の後方部分に設けられたヒンジピン(図示せず)を回動中心として上下方向に回動可能な荷台24と、この荷台24を上下方向に回動させる左右一対のホイストシリンダ(図示せず)と、を含む。また、ダンプ20−1は、見通しの良い場所、例えば、ダンプ20−1の上面前方に、無線通信回線40に接続するためのアンテナ25が設置される。
更にダンプ20−1には、運行管理サーバ31からの指示に従って自律走行をするための車載端末装置26が搭載される。
運行管理サーバ31は、無線通信回線40に接続するためのアンテナ32に接続される。そして、運行管理サーバ31は、アンテナ32、無線基地局41−4、41−2、41−3を経由してショベル10−1、10−2、及びダンプ20−1、20−2の其々と通信する。
次に図2を参照して、図1の運行管理サーバ31及び車載端末装置26のハードウェア構成について説明する。図2は、運行管理サーバ及び車載端末装置のハードウェア構成図である。
図2に示すように、運行管理サーバ31は、サーバ側制御装置311、サーバ側入力装置312、サーバ側表示装置313、サーバ側通信装置314、通信バス315、マスタ地図情報データベース(以下データベースを「DB」と略記する)316、通信品質情報DB317、及び運行管理情報DB318を含んで構成される。
サーバ側制御装置311は、運行管理サーバ31の各構成要素の動作を制御するものであり、CPU(Central Processing Unit)等の演算・制御装置、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)等の記憶装置を含むハードウェアと、サーバ側制御装置311により実行されるソフトウェアとを含んで構成される。これらのハードウェアがソフトウェアを実行することにより、運行管理サーバ31の各機能が実現される。
サーバ側入力装置312は、マウス、キーボードなどの入力装置により構成され、オペレータからの入力操作を受け付けるインターフェースとして機能する。
サーバ側表示装置313は、液晶モニタ等により構成され、オペレータに対して情報を表示して提供するインターフェースとして機能する。
サーバ側通信装置314は、Wi‐Fi(Wireless Fidelity)やIEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)の規格に適合した無線通信装置を用いてもよい。
通信バス315は、各構成要素を互いに電気的に接続する。
マスタ地図情報DB316は、HDDなど固定的に記憶する記憶装置を用いて構成され、走行経路60上の各地点(以下「ノード」という)の位置情報と、各ノードを連結するサブリンクとにより定義された走行経路情報を記憶する。また、鉱山の地形情報や、各ノードの絶対座標(測位電波を基に算出される3次元実座標)を含んでもよい。各ノードには、そのノードを固有に識別する位置識別情報(以下「ノードID」という)が付与される。
通信品質情報DB317は、HDDなど固定的に記憶する記憶装置を用いて構成され、走行経路60上の各地点におけるダンプ20−1及び運行管理サーバ31間の接続状況の良否レベルを示す通信品質指標値を、ノードIDと対応付けて記憶する。ここでいう「通信品質指標値」とは、運行管理サーバ31及びダンプ20−1間の無線通信接続の確立のしやすさを示す通信品質情報であり、例えば、各ノードにおける無線接続に使用される電波強度を示す受信電力値や、運行管理サーバ31とダンプ20−1との間の無線通信接続の成功率である。なお、「成功率」は、通信接続のエラー率と言い換えてもよい。この場合、後述する閾値判定の不等号の向きは成功率を用いた場合とは逆向きになる。通信品質指標値の詳細については後述する。
運行管理情報DB318は、HDDなど固定的に記憶する記憶装置を用いて構成され、各ダンプの現在位置、走行速度などのダンプの運行情報を記憶する。
運行管理サーバ31は有線通信回線33を介してアンテナ32と接続され、無線通信回線40を介して無線基地局41−1、41−2、41−3と接続される。なお、上記の各データベースは、マスタ地図情報、通信品質情報、運行管理情報を記憶する記憶部だけを備え、サーバ側制御装置311がそれらのデータベースの更新・検索処理を行ってもよいし、各データベースに上記記憶部の情報の更新・検索処理を行うエンジンを搭載したものでもよい。後述する各種データベースについても同様である。
次に、ダンプ20−1に搭載される車載端末装置26は、端末側制御装置261、端末側入力装置262、端末側表示装置263、端末側通信装置264、通信バス265、端末側地図情報DB266、走行制御装置267、外界センサ装置268、及び位置算出装置269を含んで構成される。
端末側制御装置261は、車載端末装置26の各構成要素の動作を制御するものであり、CPU等の演算・制御装置、ROMやRAM、HDD等の記憶装置を含むハードウェアと、サーバ側制御装置311により実行されるソフトウェアとを含んで構成される。これらのハードウェアがソフトウェアを実行することにより、車載端末装置26の各機能が実現される。
端末側入力装置262は、タッチパネルや各種スイッチなどの入力装置により構成され、オペレータからの入力操作を受け付けるインターフェースとして機能する。
端末側表示装置263は、液晶モニタ等により構成され、オペレータに対して情報を表示して提供するインターフェースとして機能する。
端末側通信装置264も、Wi‐FiやIEEEの規格に適合した汎用品である無線通信装置を用いてもよい。
通信バス265は、各構成要素を互いに電気的に接続する。
端末側地図情報DB266は、HDDなど固定的に記憶する記憶装置を用いて構成され、マスタ地図情報DB316に格納された地図情報と同じ地図情報を格納する。
走行制御装置267は、ダンプ20−1の加速・減速装置、制動装置、及びステアリング装置等、ダンプ20−1の走行に関わる駆動装置(以下「走行駆動装置」という)に対し、加減速量、制動量、ステアリング角度を伝達するための制御装置である。
外界センサ装置268は、ミリ波レーダや前方カメラなど、ダンプ20−1の走行方向(進行方向)前方の障害物を検知するためのセンサであり、その種類は問わない。外界センサ装置268の検知結果は、ダンプ側制御装置261に出力され、通常時は走行経路から離脱しないように走行位置の監視や加減速に用いられ、緊急時には緊急回避行動に必要な制動動作に用いられる。
位置算出装置269は、航法衛星50−1、50−2、50−3(図1参照)からの測位電波を基に自車両の現在位置を算出する。
次に図3を参照して、図1の運行管理サーバ31及び車載端末装置26の機能構成について説明する。図3は、運行管理サーバ及び車載端末装置の主な機能を示す機能ブロック図である。
図3に示すように、運行管理サーバ31のサーバ側制御装置311は、走行許可区間設定部311a、通信品質判定部311b、サーバ側通信制御部311c、及び通信インターフェース(以下「通信I/F」と略記する)311dを備える。
走行許可区間設定部311aは、マスタ地図情報DB316の地図情報と、運行管理情報DB318とを参照し、各ダンプ20−1からの要求に応じて、走行経路60上におけるダンプ20−1の現在位置よりも前方の地点に前方境界地点を設定し、ダンプ20−1の現在位置又はそれよりも前方にあって、かつ前方境界地点よりも走行方向後方の地点に後方境界地点を設定する。そして、前方境界地点及び後方境界地点の間の走行経路60を、要求を出したダンプ20−1に対して走行を許可する走行許可区間として設定する。更に前方境界地点又は後方境界地点のどちらかを基準として、ダンプ20−1から要求を送信する地点である許可要求地点を算出し、この許可要求地点により定まる許可要求区間の通信品質が所定の品質を満たしているとみなせる条件(通信環境が良好と判断できるための条件)を充足している場合に、走行許可区間を設定する。
通信品質判定部311bは、通信品質情報DB317を参照し、ダンプ20−1及び運行管理サーバ31間の接続状況の良否レベルを示す通信品質指標値に基づいて、許可要求地点で定まる許可要求区間の通信品質を判定する。本実施形態では、許可要求区間内に少なくとも一つ以上、通信指標値が閾値を超える地点が含まれているか否かを通信良否の判定基準として説明するが、この判定基準は上記には限らない。例えば、閾値よりも所定のマージン内に収まる程度(通信不良とまでは言えない程度の許容範囲内)の通信不良地点が連続して複数連なる場合は、その地点間では通信を繰り返すと通信が確立する可能性が比較的高いので、区間としては通信量良好と判定するようにしてもよい。
サーバ側通信制御部311cは、各ダンプ20−1の要求の内容を示す許可要求情報を受信するとともに、その要求に応じて設定された走行許可区間を示す許可応答情報を送信する制御を行う。
次に車載端末装置26について説明する。車載端末装置26の端末側制御装置261は、走行制御部261a、端末側通信制御部261b、及び通信I/F261cを備える。
走行制御部261aは、位置算出装置269から自車両の現在位置を取得し、端末側地図情報DB266の地図情報を参照して、走行許可要求に対し運行管理サーバ31が応答した許可応答情報に含まれる走行許可区間に従って、自車両を走行させるための制御を、走行制御装置267に対して行う。また、走行制御部261aは、外界センサ装置268の検知結果に基づいて前方障害物の有無を判定し、障害物との干渉、衝突の回避動作の有無も判定し、必要があれば制動動作のための制御を行う。
端末側通信制御部261bは、運行管理サーバ31に対し、次の走行許可区間を要求するための許可要求情報を送信するとともに、運行管理サーバ31から、許可要求情報に応じて設定した走行許可区間を示す許可応答情報を受信する制御を行う。
次に図4に基づいて、運行管理サーバ及自律走行ダンプ間の無線通信処理について説明する。図4は、運行管理サーバと走行ダンプ間で送受信される情報フォーマットの構成を示す図であって、(a)は、ダンプから運行管理サーバに対して送信する許可要求情報フォーマットを示し、(b)は、運行管理サーバからダンプに対して送信する許可応答情報フォーマットを示し、(c)は、ダンプから運行管理サーバに対して送信する受信確認情報フォーマットを示す。
図4の(a)に示すように、許可要求情報フォーマット400は、許可要求情報を固有に識別するための要求識別情報401、及び許可要求情報を発信したダンプのダンプ情報402を含む。ダンプ情報402は、許可要求情報を送信したダンプを固有に識別するダンプID402a、測位電波に基づいて算出された上記ダンプの現在位置を示すダンプ現在位置情報402b、及び走行速度やタイヤ空気圧等ダンプの状態を示す状態情報402cを含む。
また、図4の(b)に示すように、許可応答情報フォーマット410は、応答情報を固有に識別するための応答識別情報411、及び走行許可区間に関する情報を示す走行許可区間情報412を含む。応答識別情報411は、どの許可要求情報に対する応答であるかを一意に識別可能な情報である。これにより、無線通信回線40を通じて運行管理サーバ31からブロードキャスト送信された場合であっても、各ダンプが応答識別情報411を受信して、自車両が発行した許可要求情報に対応する応答情報であるかを識別することができる。
走行許可区間情報412は、前方境界地点座標412a、後方境界地点座標412b、及び制限速度情報412cを含む。
また、図4の(c)に示すように、受信確認情報フォーマット420は、受信確認情報を固有に識別するための受信確認識別情報421、及び受信確認に関する情報を含む受信確認情報422を含む。
受信確認情報422は、受信確認を送信するダンプを固有に識別するダンプID422a、どの許可応答情報を受信したかを示すための応答識別情報422bと、受信確認情報を送信したときのダンプの現在位置を示すダンプ現在位置情報422cと、を含む。
次に、図5を参照して運行管理サーバが保持する通信品質情報DBに格納される通信品質情報のテーブル構成について説明する。図5は、第一実施形態に係る通信品質情報テーブルの構成を示す図である。
図5に示すように、通信品質情報テーブル500は、「要求送信地点情報」レコード501、「受信成功回数」レコード502、「通信品質指標」レコード503、「送信元ID」レコード504、及び「通信発生時刻」レコード505を含む。
ダンプ20−1が走行する走行経路60(図1参照)は、走行経路上の各地ノードと、隣り合うノード同士を連結したサブリンクとにより構成される。各ノードには、そのノードの地点座標が1対1で対応付けられており、各地点の3次元実座標又はノードIDを指定することで、走行経路上の地点を一意に指定することができる。
そこで、「要求送信地点情報」レコード501は、ダンプ20−1が走行許可要求情報を発信したときのノードIDを登録する。許可要求情報フォーマット400のダンプ現在位置402bが示す現在位置情報がノードIDを示すときにはこのノードIDを、ダンプの現在位置情報が3次元実座標で表されるときには、この実座標に対応するノードIDを登録する。
「受信成功回数」レコード502は、ダンプ20−1から、走行許可要求を受信すると1カウントアップする。また受信確認情報が受信できた場合は、許可応答情報と受信確認情報とがそれぞれ相手方に送受信できたことを示すので、2カウントアップする。なお、同一のノードIDに対して2カウントアップが、これは、許可応答情報及び受信確認情報の送受信に要する時間は短時間(ミリ秒単位)であるので、この間にダンプ20−1が別のノードに移動することはない、すなわち同じノードで許可応答情報を受信し、受信確認情報を送信していることを前提としている。
「通信品質指標」レコード503は、運行管理サーバ31及びダンプ20−1間の無線通信接続の確立のしやすさを示す指標値を記憶する。指標値は、例えば運行管理サーバ31及びダンプ20−1の間の通信成功率や、基地局からの電波強度で示すことができる。成功率は、下式(1)で示される。
E={(Σ_est)/(Σ_req)}×100・・・(1)
但し、
Σ_est:運行管理サーバ31及びダンプ20−1の間で無線通信接続が確立した全回数
Σ_req:運行管理サーバ31又はダンプ20−1から無線通信接続を要求した全回数
E:通信成功率
式(1)のうち、運行管理サーバ31又はダンプ20−1から無線通信接続を要求した全回数(Σ_req)は、実際には正確な値を得にくいことがある。例えばダンプ20−1から無線送信した許可要求情報が、どの無線基地局にも届かない場合には、無線基地局41−1、41−2、41−3及び運行管理サーバ31は、無線通信接続が要求されたという情報を得られない。
そこで、運行管理サーバ31又はダンプ20−1から無線通信接続を要求した全回数(Σ_req)を通信品質指標値として用いてもよい。この場合、「受信成功回数」レコード502と「通信品質指標値」レコード503とは、同じ値を示すのでどちらか一つだけでよい。
また、通信品質指標値503として、車載端末装置26が受信した電波強度を示す受信電力値信号(通信I/Fが受信した電波を変換した電圧を示す信号)を用いてもよい。
「送信元ID」レコード504は、送信元のダンプを固有に識別するダンプIDが記録される。
「通信発生時刻」レコード505は、ダンプ20−1が無線通信を送信した時刻が含まれる。
[処理動作・効果]
以下、図6及び図7を参照して、本実施形態に係る車両走行システムの処理動作について説明する。図6は、本実施形態に係る車両走行システムにおける走行許可区間の設定処理を示す図であって、(a)は走行許可区間nを走行中の状態を示し、(b)は、許可要求地点に到達した状態を示し、(c)は、解放区間及び最初の前方境界地点の設定状態を示し、(d)は、次の前方境界地点の設定状態を示す。図7は、本実施形態に係る車両走行システムにおける走行許可区間の設定処理の流れを示すシーケンス図である。
図6の(a)に示すように、走行経路60は、複数の地点(ノード)61及び少なくとも一つ以上のサブリンク62を含んで定義される。走行許可区間とは、各ダンプに対して付与された、自律走行してもよい区間である。図6の(a)は、7つのノード61及び隣接するノード間を連結する6つのサブリンク62を含む走行許可区間nを示す。走行許可区間nは、この直前の走行許可区間n−1(図示を省略)を走行中にダンプ20−1が許可要求情報を送信し、これに応じて運行管理サーバ31から送信された許可応答情報に含まれる走行許可区間情報(図4の(b)符号412参照)により定義されたものである。
図6では、走行許可区間nの後方境界地点はBP_bn、前方境界地点はBP_fnで示す。許可要求区間は、前方境界地点BP_fnを基準とし、これを含んで4つ後方のノードまでと定義する。なお、許可要求区間の定め方はこれに限定されず、後方境界地点を基準として定めてもよい。また、許可要求区間のうち、最も後方に位置するノードは、ダンプ20−1が許可要求情報の送信を開始する地点であり、以下、許可要求地点(図ではRPと図示)という。
図6の(b)に示すように、ダンプ20−1は、許可要求地点RPに到達すると、無線通信回線40を介して運行管理サーバ31に対し、次の走行許可区間情報を要求するための情報(許可要求情報)の送信を行う。
運行管理サーバ31は、許可要求情報を受信すると、図6の(c)に示す解放区間の設定処理を行う。解放区間とは、運行管理サーバ31が前回の走行許可要求に応じて走行許可区間として設定した区間を、他のダンプに対して走行許可が行えるように解放した区間である。運行管理サーバ31は、ダンプ20−1が許可要求情報を送信したノードから所定距離以後を解放区間として設定する。
次に運行管理サーバ31は、新たな走行許可区間を設定する。運行管理サーバ31は、新しい走行許可区間n+1の後方境界地点BP_bn+1を解放区間のうちの最前端ノードに設定する。
また、新しい走行許可区間n+1の前方境界地点を、ダンプ20−1の現在位置(解放区間の最前端のノード)よりも前方のノードの1つ、BP_f1に仮設定する。そして、予め定められた条件(上記では、前方境界地点BP_fnを基準とし、これを含んで4つ後方のノードまでを許可要求区間とする)に従って、仮設定したBP_f1を基準とする許可要求地点RP_1を算出し、RP_1〜BP_f1間に含まれるノードの通信品質を判定する。いずれのノードの通信品質指標値も所定値を超えない場合、すなわち成功率が閾値よりも低い場合、その地点で無線通信を行うと信頼性が低下する。そこで、仮設定した前方境界地点BP_f1とは異なる地点、図6の(d)では、BP_f1よりも更に前方のノードを前方境界地点BP_f2として再度仮設定する。
そして、前方境界地点BP_f2を基準とする許可要求地点RP_2からBP_f2の区間の通信品質を確認する。この地点の通信品質が良好な場合、例えば成功率が閾値以上の場合、再度仮設定された前方境界地点BP_f2を、新たな走行許可区間n+1の前方境界地点とする。その結果、後方境界地点BP_bn+1から前方境界地点BP_f2までが新たな走行許可区間n+1として設定される。その結果を、ダンプに対して許可応答情報として送信する。
すなわち、上記許可応答情報では、図4の(b)に示す走行許可情報フォーマットにおいて「前方境界地点座標」412aはノードBP_f2の座標、「後方境界地点座標」412bはノードBP_bn+1が含まれる。制限速度412cは、前方車両との車両間隔や、地形情報に応じて定められる。
次に図7の各ステップ順に沿って、ダンプ20−1及び管理サーバ31間の処理動作について説明する。
ダンプ20−1は、前回の走行許可要求に対して運行管理サーバ31から応答があった走行許可区間nを自律走行する(S701)。
ダンプ20−1が許可要求地点に到達すると(S702)、ダンプ20−1は運行管理サーバ31に対して許可要求情報の送信を開始する(S703)。より具体的には、端末側通信制御部261dは通信I/F261c及び端末側通信装置264を介して許可要求情報を送信する。送信後も、ダンプ20−1は走行許可区間n内を走行し続ける。
無線基地局41−1は、運行管理サーバ31に許可要求情報を転送する(S704)。
運行管理サーバ31の通信品質判定部311bは、走行許可要求を受信すると、通信品質情報DB317の書き込みを行う(S705)。詳細は、後述する。
走行許可区間設定部311aは、受信した許可要求情報に含まれるダンプ現在位置情報(図4の(a)の符号402参照)に示す地点よりも後方の区間を解放区間して設定する(S706)。ここで解放区間として設定された区間は、他のダンプが走行可能な領域となる。
次に走行許可区間設定部311aは新たな走行許可区間n+1を決定する(S707)。この処理の詳細は後述する。
サーバ側通信制御部311cは、通信I/F311d及びサーバ側通信装置314を介してダンプ20−1に対し、新たな走行許可区間n+1を示す情報(許可応答情報)を送信し(S708)、無線基地局41−1は、許可応答情報を転送する(S709)。なお、許可応答情報は、後程、受信結果情報と照合するために一時的に運行管理サーバ31に保存しておく。
ダンプ20−1は、許可応答情報を受信し、新たな走行許可区間n+1を自律走行するとともに(S710)、許可応答情報を受信したこと示す受信結果情報を送信する(S711)。無線基地局41−1は、受信結果情報を運行管理サーバ31に転送する(S712)。
運行管理サーバ31の通信品質判定部311bは、一時保存された許可応答情報を参照し、受信結果情報がどの許可応答情報について通信が確立したものを示すものかを判断する。そして、通信品質判定部311bは許可応答情報及び受信結果情報を送受信したノードIDに一致する通信品質情報DB317の「受信成功回数」レコード502の値を2インクリメントする。
次に、図8に基づいて、図7で述べた一連の処理を実現するための運行管理サーバの処理について説明する。図8は、運行管理サーバによる走行許可区間の設定処理の流れを示すフローチャートである。
運行管理サーバ31は主電源投入後に処理を開始し(S801)、ダンプ20−1からの許可要求情報の受信待ち(S802)を行う。許可要求情報を受信したことが確認できなければ(S803/No)、ステップS802へ戻り、引き続き許可要求情報の受信を待つ。許可要求情報を受信したことを確認すると(S803/Yes)、通信品質判定部311bは、通信品質情報DB317への書き込みを行う(S804、図7のステップS705に相当する)。
次いで、走行許可区間設定部311aは、許可要求情報に含まれるダンプの現在位置情報を確認(S805)し、ダンプの現在位置報情報に基づき、後方の解放区間を決定(S806、図7のS706に相当)する。後方境界点は、解放区間の最前地点に仮設定する。なお、本実施形態でいう「仮設定」とは、新たな走行許可区間の境界点として用いることが確定するまでの状態を意味し、仮設定された前方境界点、後方境界点、許可要求地点の変更の有無には問わない。従って、新たな走行許可区間が設定されるまでの前方境界点、後方境界点、及び許可要求地点は全て仮設定された状態である。
走行許可区間設定部311aは、新たな走行許可区間の境界地点を仮設定(S807)し、その境界地点から逆算した許可要求区間、及び許可要求地点を算出(S808)する。本実施形態では前方境界地点を仮設定し、許可要求区間・地点を算出する。
通信品質判定部311bは、通信品質情報DB317に格納された通信品質テーブル500を参照し、許可要求区間の通信品質が良好であるか、換言すると前記通信品質指標値が前記所定の閾値以上となる地点が含まれているかを判定し、前記許可要求区間に前記通信品質指標値が前記所定の閾値以上となる地点が含まれているか否かを判定する。通信品質判定部311bが、許可要求区間に含まれる少なくとも一つの地点の通信品質指標値が閾値より高いと判定すると(S809/Yes)、走行許可区間設定部311aは、仮設定した境界地境界地点、解放区間の最前端を後方境界地点とする走行許可区間n+1を新たな走行許可区間として設定し、許可応答情報を生成して通信制御部311cからダンプ20−1に対して無線通信回線40を介して通知する(S810)。
通信品質判定部311bが、許可要求区間の通信品質が不良、換言すると区間内に含まれる全ての地点の通信品質指標値が閾値未満と判定すると(S809/No)、走行許可区間設定部311aは、前方境界地点が変更可能であるかを確認し、変更可能でない場合(S811/No)は、走行許可区間設定部311aはダンプ20―1へ停止命令を送信する(S812)。
変更可能である場合(S811/Yes)は、仮設定した前方境界地点を前方または後方へ変更し、再度仮設定する(S813)。このとき、前方に変更することを優先するほうが望ましい。これにより、ダンプ20−1が自律走行をし続けている結果、新たに仮設定した前方境界地点をダンプ20−1が通過してしまうといった不都合を抑止しやすくなる。
その後、ステップS808へもどり、再度仮設定した前方境界地点に基づく許可要求区間及び許可要求地点を計算し、通信品質を評価する(S809)。
以上に説明した処理を繰り返すことで、ダンプは通信品質が良好な場所で無線通信を行うことができる。また良好な通信品質が得られる場所がない場合でも、サーバからの停止命令によって安全に停止することが可能となる。
次に図9に基づいて、図7で述べた一連の処理を実現するためのダンプ側の処理の流れについて説明する。図9は、ダンプの走行制御処理の流れを示すフローチャートである。
ダンプ20−1は、前回の走行許可応答で決められた走行許可区間内を走行中(S901)において、位置算出装置269によって常に自己位置を認識している。そして、走行制御部261aは、現在位置が許可要求地点に到達したかどうかを判定する(S902)。ダンプ20−1が許可要求地点に到達していないと認識した場合(S902/No)、ステップS902に戻り、許可要求地点に到達したかを判定し続ける。
走行制御部261aが許可要求地点に到達したと判定すると(S902/Yes)、通信制御部261bが許可要求情報を運行管理サーバ31に対して送信(S903)する。通信制御部261bは、許可要求情報を送信してからの経過時間の計測を開始する。
そして許可要求情報に対する許可応答情報が運行管理サーバ31から送信されてくるまで受信待ち(S904)を行う。
その間もダンプ20−1は走行を続けているため、走行制御部261aは、現在位置が走行許可区間を超えたかどうかの判定(S905)を行う。ダンプ20−1の現在位置が与えられた走行許可区間の終端に接近している場合は(S905/Yes)、他のダンプと衝突する可能性があるため、走行制御部261aが走行制御装置267に対して走行停止命令を出力し、走行制御装置207が車両を停止させるための走行駆動装置を制御する(S906)。
現在位置が走行許可区間の終端から十分離れている場合は(S905/No)、そのまま自律走行を継続する。
通信制御部261bは、許可応答情報の受信待ち時間が予め設定したタイムアウト時間を超えたかどうかも判定し、タイムアウト時間を超えた場合(S907/Yes)、何らかの理由で許可要求情報が運行管理サーバ31へ届かなかった可能性があるため、S903へ戻り、再度許可要求情報を送信する。このとき、タイムカウンタの値も0に戻し、計時を再開する。
タイムアウト時間前に(S907/No)、通信制御部261bが許可応答情報を受信すると(S908/Yes)、受信した情報に基づいて新しい走行許可区間へと更新し(S909)、自律走行を継続する。タイムアウト時間前に(S907/No)、通信制御部261bが走行許可応答を受信しなければ(S908/No)、ステップS904へ戻り許可応答情報の受信を待機する。
次に、図10に基づいて、図7で述べた運行管理サーバの処理について説明する。図10は、運行管理サーバが通信品質情報を蓄積、保持する処理の流れを示すフローチャートである。
運行管理サーバ31が許可要求情報を受信するまでは、図8のステップS801〜S803と同様の処理を実行するので、ステップ番号を流用する。すなわち、運行管理サーバ31は、処理開始(S801)後、走行許可命令の受信待ちを開始(S802)する。許可要求情報を受信するまでは(S803/No)ステップS802に戻り、許可要求情報の受信待ちを継続する。
走行許可要求を受信したら(S803/Yes)、受信してからの経過時間の計測を開始(S1001)する。許可要求情報に含まれるダンプの現在位置情報を確認(S1002)し、データを受信できた地点(以下「受信地点」という)を特定する。この受信地点は、ダンプが要求を発信した地点であり、このときのノードIDを用いて受信地点を特定する。
受信地点が既に通信品質情報テーブル500に含まれていれば(S103/Yes)、該当する要求送信地点情報に対応するレコードを更新する。(S1004)
具体的には、許可要求情報に含まれる「ダンプ現在位置」402bに含まれるノードIDが既に通信品質情報DB317「要求送信地点情報」レコード501に登録されていれば、そのノードIDに対応する「受信成功回数」レコード502の値を1インクリメントする。また、許可要求情報に例えば電波の受信値が含まれていれば「通信品質指標」レコード503を更新する。受信成功回数を通信品質指標として用いる場合には、受信成功回数の更新が通信品質指標の更新となる。更に、走行許可要求に含まれるダンプIDを「送信元ID」レコード504に書き込む。また、通信制御部311cは、走行許可要求を受信した時刻を「通信発生時刻」に書き込む。
要求送信地点情報が通信品質情報テーブル500に含まれていない場合(S1003/No)は、新しく要求送信地点情報を追加し(S1005)、ステップS1004へ進む。
受信確認情報を受信したら(S1006/Yes)、該当する要求送信地点情報に含まれる受信成功回数(図5の符号502)を2つカウントアップ(S1007)し、経過時間の計測を終了・タイムカウンタの値を0に戻して、ステップS802へ戻る。
受信確認情報を受信しない状態で(S1006/No)、受信確認結果の待ち時間以内の場合は(S1008/No)、ステップS1006へ戻り受信確認情報の待機を続ける。受信確認結果の待ち時間を超えると(S1006/Yes)、経過時間の計測を終了し、タイムカウンタの値を0に戻して、ステップS802へ戻る。図10に示す一連の処理により、運行管理サーバ31は各地点で発生した無線通信の履歴を収集し、それらを通信品質情報として利用することができる。
本実施形態によれば、通信品質情報を考慮して走行許可区間の設定が行える。これにより、走行許可要求・応答の送受信ができないことによるダンプの停車を防ぎ、ダンプの稼働率の向上を図ることができる。
更に、本実施形態では、無線通信のタイミングではなく、通信品質そのものを考慮して走行許可区間を設定するので、無線装置の通信方式に関わらず、どのような無線装置に対しても、本発明を適用することができる。そのため、Wi‐FiやIEEE適合品等の汎用品の無線機を用いてもよいので、専用機を用いる場合に比べてコストが下がり、無線技術の進歩によって高速大容量の通信方式を採用した新しい無線機が出た場合でも、新しい無線機への交換も容易に行える。
<第二実施形態>
[システム構成]
第一実施形態では運行管理サーバのみが通信品質情報を保持し、走行許可区間の決定に用いていたが、第二実施形態では、ダンプ側でも通信品質情報を収集、保持し、それを運行管理サーバに通知する。サーバ側とダンプ側の両方で通信品質情報を収集、保持することで、より精度の高い通信品質の判定を行うことができ、それらの情報を元に走行許可区間を決定することができる。サーバ側のみで通信品質情報を保持することの問題点として、サーバ側では受信が成功した事実を認識できるが、ダンプが送信したにも関わらず、信号そのものが届かなかった場合は、その事実を認識することができない。本実施形態では、その課題を解決するために、ダンプ側で送信した通信履歴を保持しておき、送信履歴情報をサーバへ送信するという処理を行う。以下、図11乃至図14を用いて、第二実施形態に係る車両走行システムの構成について説明する。図11は、第二実施形態に係る車載端末装置のハードウェア構成図である。図12は、第二実施形態に係る通信品質情報テーブルの構成を示す図である。図13は、第二実施形態に係る許可要求情報フォーマットの構成を示す図である。図14は、第二実施形態に係る通信品質情報テーブルの別態様の構成を示す図である。
図11に示すように、第二実施形態に係るダンプ20−1に搭載する車載端末装置26aは、第一実施形態に係る車載端末装置26の構成に加え、端末側通信品質情報DB1101を備える点に特徴がある。その他の構成は第一実施形態と同様であるので説明を省略する。
図12に示すように、端末側通信品質情報DB1101に格納される端末側通信品質情報テーブル1201は、「要求送信地点情報」レコード1201、「応答受信地点情報」レコード1202、「通信品質指標」レコード1203、「送信先ID」レコード1204、及び「送信発生時刻」レコード1205を含む。
「要求送信地点情報」レコード1200は、ダンプが許可要求情報を送信した時点の位置情報(ノードID)を格納する。「応答受信地点情報」レコード1202は、ダンプ20−1が許可応答情報を受信した時点の位置情報(ノードID)を格納する。「通信品質指標」レコード1203は、受信したときの受信電力値や、通信成功か失敗かの結果などを格納する。
「送信元ID」レコード1204は、許可要求情報の送信元のダンプのIDを格納する。但し、車載端末装置26aは、一度ダンプに搭載すると基本的にはそのダンプに搭載し続けるので、この送信元IDに記録されるダンプの固有情報は、全てのレコードにおいて同じ値が登録される。しかし、運行管理サーバ31に端末側通信品質情報テーブル1201を送信(又は出力)した際に、どのダンプからの通信品質情報であるかを判別するときに有用である。
「送信発生時刻」レコード1205は、許可要求情報を送信した時刻を格納する。
図13は、ダンプ20−1が運行管理サーバ31へ送信する走行許可情報フォーマットの例を示す。走行許可情報フォーマット1300は、第一実施形態の走行許可情報フォーマット400に、ダンプ情報402として通信品質情報テーブル1200に保存された通信品質情報1301の一部もしくは全体を送信することで、運行管理サーバ31はダンプ側の通信品質情報を利用することが可能となる。
また、第二実施形態に係る通信品質指標テーブルの別態様として、図14に示すように、図12の通信品質指標テーブル1200の構成に加え、ダンプ20−1が許可要求情報、または受信確認情報を実際に送信した回数を記録する「要求発信回数」レコード1401を備えてもよい。この場合、図13の走行許可情報フォーマット1300に「要求発信回数」レコード1401の記録情報を追加する。
「要求受信回数」レコード1401は、運行管理サーバ31が走行許可要求を受信した回数を記録する。ダンプ20−1から運行管理サーバ31に許可要求情報を発信した回数を、既述の式(1)におけるΣ_reqとして適用することにより、成功率を算出してもよい。
[処理動作・効果]
次に、図15に基づいて、第二実施形態における運行管理サーバの処理動作について説明する。図15は、第二実施形態における運行管理サーバの処理の流れを示すフローチャートである。
図15の処理は、第一実施形態に係る運行管理サーバ31の図10のステップS1002に続いて実行される。すなわち、ダンプの現在位置の確認(S1002)後、受信した許可要求情報の送信地点が、通信品質情報DBに登録されている要求送信地点情報1201のノードIDと一致するかを判定する(S1501)。この処理は、ダンプ側の送信履歴と、サーバ側の受信履歴とを一致させることを目的としている。一致するデータがなければ(S1501/No)、新規ノードIDを追加する(S1502)。
一致するデータが存在する場合は(S1501/Yes)、送信情報と受信情報を対応付けて、通信品質情報DBを更新する(S1503)。許可要求情報に、通信品質指標として受信電力値が含まれる場合は、通信品質情報DBの「通信品質指標」レコード1203を書き換える。また、許可要求情報に、許可要求情報の受診回数を用いる場合には、サーバ側通信品質情報DBに予め備えられた「要求発信回数」レコード1401の値を1カウントアップする。なお、受信確認情報を運行管理サーバ31が受信した場合には、「要求発信回数」レコード1401の値は2カウントアップする。これは、サーバ側からの許可応答情報の発信と、ダンプ側からの受信確認情報の発信とを合算して2カウントアップするためである。
運行管理サーバ31の通信品質判定部311bは、通信品質指標値の再計算を行う(S1504)。通信品質判定部311bは、サーバ側の通信品質情報DB317の受信成功回数を要求発信回数で除算して通信品質指標値を更新登録する。なお、受信電力値のように、計算で求めなくてよい指標値を用いる場合は、本ステップを省略することができる。次いで、図10のステップS1006進み、受信確認情報に関する処理を行う。
本実施形態によれば、サーバはダンプ側の送信履歴とサーバ側の受信履歴を対応させた通信履歴を保持することができ、より詳細な通信履歴情報を元に、精度の高い通信品質情報を用いた許可区間の決定を行うことができる。
<第三実施形態>
[システム構成]
第三実施形態に係る車両走行システムは、通信品質情報の収集方法として、ダンプ自身が通信品質情報を収集するのではなく、一般車両に各種センサを搭載した航則車が別途通信品質情報を収集する実施形態である。以下、図16及び図17を参照して、第三実施形態について説明する。図16は、第三実施形態に係る車載端末装置のハードウェア構成図である。図17は、航則車による通信品質情報の収集処理の流れを示すフローチャートである。
図16に示すように、航則車に搭載する車載端末装置26bは、航則車側制御装置1601、航則車側入力装置1602、航則車側表示装置1603、航則車側通信装置1604、通信バス1605、航則車側地図情報DB1606、外界センサ装置1607、及び航則車側通信品質情報DB1608を含んで構成される。これらの各構成の機能は、既述のダンプ20−1に搭載する車載端末装置26の対応する各構成の機能と同一であるので、重複説明を省略する。
[処理動作・効果]
次に、図17の各ステップに沿って、航則車の通信品質情報収集の処理動作について説明する。航則車は、走行経路上を走行しながら(S1701)、定期的な周期に一致する時点において(S1702/Yes)、通信確認のための信号(「通信確認信号」という)を送信し、送信してからの経過時間の計測を開始する(S1703)。定期的な周期に一致しない時点では(S1702/No)、ステップS1701に戻る。
通信確認信号を送信すると、無線基地局からの通信確認応答信号の受信待ち状態に移行する(S1704)。通信確認応答信号を受信すると(S1705/Yes)、通信が成功したことをその地点の位置情報とともに航則車に搭載された航則車側通信品質情報DB1608に記録(S1706)する。
応答信号を受信することなく(S1705/No)、受信タイムアウト時間を超えると(S1707/Yes)、通信エラーを記録(S1708)する。受信タイムアウト時間以内は(S1706/No)、ステップS1704へ戻り、応答信号の受信を待つ。
以上の処理を繰返しながら鉱山の搬送路を走行することで、航則車が鉱山エリア内の通信品質情報を予め収集し、これを運行管理サーバに出力することにより、走行許可区間の設定処理において活用することができる。
本実施形態によれば、航則車が通信品質情報を収集することで、運行管理サーバ及びダンプ間の無線送受信データから走行に直接関係のないデータを削減することができる。これにより、データ通信量を下げ、無線通信回線上の混雑を緩和することができる。
上記では、航則車及び無線通信局の間の通信確認信号の送受信結果を航則車が収集し、その送受信結果を通信品質情報として用いたが、無線基地局がダンプとの間の無線通信の送受信結果をログ情報として格納するログ記憶部を備え、航則車からの通信確認信号を受信すると、ログ情報を航則車に送信し、このログ情報を通信品質情報として用いてもよい。この場合、無線基地局がログ情報を送信した後、ログ記憶部からログ情報を削除するように構成してもよい。これにより、定期的に無線基地局のログ記憶部の記憶領域を整理(リフレッシュ)することができる。また、ログ記憶部の記憶領域が満杯になると、送受信履歴の古い順に上書きをするように構成してもよい。これにより、ログ記憶部の記憶容量に関らず、最新のログ情報を無線基地局に残しておくことができる。
<第四実施形態>
[システム構成]
第四実施形態に係る車両走行システムは、許可要求地点の通信品質が良好になるように走行許可区間の境界地点を決定するのではなく、境界地点は固定したままで、通信品質が良好場所に許可要求地点そのものを設定する実施形態である。装置構成は第一実施形態と同様であるので説明を省略する。
[処理動作・効果]
以下、図18及び図19に基づいて、第四実施形態に係る処理動作について説明する。図18は、第四実施形態における走行許可区間の設定処理を示す図であって、(a)は仮設定した許可要求地点の通信品質指標値が閾値未満である場合を示し、(b)は、次に仮設定した許可要求地点の通信品質指標値が閾値以上である状態を示す。図19は、第四実施形態に係る運行管理サーバによる走行許可区間の設定処理の流れを示すフローチャートである。
図18の(a)に示すように、本実施形態では、走行許可区間設定部311aは、まず、新しい走行許可区間n+1の前方境界地点BP_fn+1を設定する。後方境界地点BP_bは、第一実施形態と同様、解放区間の最前地点のノードに設定する。
そして、前方境界地点BP_fn+1は固定したままで、許可要求地点RP_1と許可要求地点RP_2(図18の(b)参照)において通信品質が良好である地点を決定し、ダンプへ通知することを特徴としている。前の区間に別のダンプが存在しており、安全上、走行許可区間の境界地点を変更することができない場合や、ダンプ台数を増やし、稼働率を向上させるために走行許可区間を変更したくない場合などに、本実施形態は特に有効である。
次に、図19の各ステップ順に沿って本実施形態に係る運行管理サーバの処理動作を説明する。本実施形態に係る運行管理サーバの処理動作は、主電源投入(図8のステップS801)から、後方の解放区間を設定するまでの処理(図8のステップS806)は、第一実施形態における運行管理サーバの走行許可区間決定処理と同じであるので、図8のステップ番号を図19においても流用し、重複説明を省略する。
本実施形態では、走行区間設定部311aが前方境界地点BP_fn+1を設定すると(S1901)、予め定められた条件に沿って、設定された前方境界地点BP_fn+1を基準とする許可要求値地点RP_1を算出する(S1902)。
許可要求区間内の通信品質が良好な場合、すなわち区間内に含まれる各地点の中の少なくとも一つの地点の通信品質指標値が閾値以上である場合(S1903/Yes)は、ステップS1901で決定した前方境界地点BP_fn+1からステップS806で決定した後方境界地点BP_bn+1の最前端の地点までを新たな走行許可区間n+1として設定し、ダンプへ通知(S1904)する。このとき、新たな走行許可区間n+1における許可要求地点の位置情報も併せて通知する。
区間内に含まれる全ての地点の通信品質が良好でない場合、すなわち区間内に含まれる全ての地点の通信品質指標値が閾値未満の場合は(S1903/No)、他の許可要求地点へ変更可能であるかを確認し(S1905)、変更不可の場合は(S1905/No)、ダンプへ走行停止命令を送信する(S1907)。変更可能な場合は(S1905/Yes)、許可要求地点を後方または前方へ変更し(S1906)、再度通信品質の確認を行う(S1903)。この一連の処理によって、通信品質が良好な地点に許可要求地点を設定することができる。
本実施形態によれば、走行許可区間の境界地点を変更することなく、許可要求地点を通信品質が良好な地点に設定することで、次の走行許可区間を設定できる。これにより、ダンプの走行許可区間に影響を与えることなく、無線通信の接続状態を確保し、無線通信が途絶えることによるダンプの稼働率低下を抑止することができる。
なお、上記した実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明の範囲を上記実施形態に限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、他の様々な態様で本発明を実施することできる。
例えば、上記第一実施形態に第二実施形態及び第三実施形態の少なくとも一つを組み合わせてもよいし、第四実施形態に第二実施形態及び第三実施形態の少なくとも一つを組み合わせてもよい。
更に、上記において後方境界地点は解放区間の最前端の地点に設定したが、これに限らず、最前端の地点よりもさらに前に設定してもよい。
また、上記において、走行許可区間は、前方境界地点及び後方境界点の間として説明したが、前方境界地点からダンプの現在位置までの走行許可区間としてもよい。すなわち、走行許可設定部は、後方が解放された走行許可区間を設定してもよい。この場合、前方境界点を基準として許可要求地点を算出すればよい。そして、ダンプが前進することを前提とすると、ダンプは、現在位置から前方境界地点までが走行可能となる。この場合においても、無線品質を考慮して前方境界点を設定することで、本発明の効果を奏することができる。