JP6313952B2 - 接着性樹脂組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、接着性樹脂組成物に関し、より詳しくは、結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂とを含有する接着性樹脂組成物に関する。
近年、固体電解質膜によって仕切られた反応空間の一方に酸素を供給するとともに他方に水素を供給し、この水素と酸素とを反応させることで電気を発生させる燃料電池と呼ばれる発電システムがクリーンなエネルギー源として広く用いられている。
この燃料電池の反応空間を外部環境から隔離すべく前記固体電解質膜の周囲においてシールを行うシール材としては、下記特許文献1(段落0016参照)に示すようにフッ素ゴムリングなどの弾性部材が用いられている。
一方で、下記特許文献2(段落0045参照)には、燃料電離における前記シールをホットメルトタイプの接着剤によって実施することが記載されている。
前記弾性部材は、接する相手材に細かな凹凸を有するような場合に十分なシール性能を発揮させ難い。
これに対してホットメルト接着剤は、相手材の表面形状への追従が容易で優れたシール性能を発揮させる上において有利であるといえる。
また、弾性部材が弾性変形に対する復元力によってシール性能を発揮するのに対してホットメルト接着剤は接着力によってシール性能が発揮されるために弾性部材のように厚みを必要とせずシール材を薄肉化させる上においても有利であるといえる。
ところで、燃料電池においては、通常、水素と酸素とが発熱を伴って反応するために、前記反応空間は、高温で湿度の高い状態になっている。
即ち、前記シール材は、湿熱劣化を受けやすい状況で使用されている。
このシール材は、シール面に湿熱劣化を生じさせてしまうとシール性能を大きく低下させるおそれを有する。
そのため、前記シールに利用される接着剤は、初期接着性に優れていることのみならず耐湿熱劣化性に優れることが要望される。
なお、接着性樹脂組成物に優れた初期接着性と耐湿熱劣化性とを発揮させることが要望されているのは、接着性樹脂組成物を燃料電池のシール材として利用する場合のみならず広く一般的に求められている事柄である。
しかし、従来の接着性樹脂組成物は、このような要望を満足させることが困難となっている。
特開2012−89330号公報 特開2007−66768号公報
本発明は、上記要望を満足すべくなされたものであり、初期接着性、及び、耐湿熱劣化性に優れた接着性樹脂組成物、並びに接着シートを提供することを課題としている。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、結晶性ポリエステル樹脂が接着性樹脂組成物に優れた初期接着力を発揮させるのに有効であること、及び、特定の結晶性ポリエステル樹脂とともにエポキシ樹脂と非晶性ポリエステル樹脂とを含有させることで接着性樹脂組成物に優れた耐湿熱劣化性を発揮させ得ることを見出し、且つ、これらのポリエステル樹脂を所定の相分離状態にさせることで初期接着力及び耐湿熱劣化性がそれぞれバランス良く発揮されることを見出して本発明を完成させるに至ったものである。
即ち、前記課題を解決するための接着性樹脂組成物に係る本発明は、結晶性ポリエステル樹脂、及び、非晶性ポリエステル樹脂を含む接着性樹脂組成物であって、エポキシ樹脂をさらに含有し、前記結晶性ポリエステル樹脂は、ガラス転移温度が0℃以下で、融点が135℃以下であり、該結晶性ポリエステル樹脂及び前記エポキシ樹脂を含むマトリックス相と前記非晶性ポリエステル樹脂を含むドメイン相とのマトリックス・ドメイン相構造を有していることを特徴としている。
本発明によれば、接着性樹脂組成物を初期接着性、及び、耐湿熱劣化性に優れたものとすることができる。
(a)一実施形態の接着シート(シール材)を示す概略平面図。 (b)前記平面図(a)におけるA−A’線矢視断面の様子を示した概略断面図。 (c)前記断面図(b)におけるz部を拡大した様子を模式的に示した該略拡大図。 実施例1の接着シートの透過型電子顕微鏡(TEM)写真。 実施例1の接着シートの顕微ラマンマッピング。 実施例3の接着シートのTEM写真。 比較例2の接着シートのTEM写真。
本発明の接着性樹脂組成物の一実施形態として、以下に接着シートを例に説明する。
また、本発明の実施形態として該接着シートが、平面視矩形の固体電解質膜の外周部に沿って周回するようにシール面を当接させるか、或いは、被着体が固体電解質膜ではなく電解質膜を外側から包囲するようにして配された部材で当該部材にシール面を当接させるかして固体電解質膜の周囲をシールするシール材として用いられる場合を例に挙げて説明する。
本実施形態において前記シール材として利用される接着シートは、図1に示すように、平面視における形状が矩形枠状となるシート状部材であり、ポリマーシートからなる基材層10と、該基材層10の両面に備えられた接着剤層20とを有する3層構造となっている。
そして、本発明の接着性樹脂組成物は、接着シート1(以下「シール材1」ともいう)の前記接着剤層20の形成に利用されている。
即ち、本実施形態の接着性樹脂組成物は、前記シール材1のシール面を形成すべく用いられている。
以下に、前記接着剤層を形成する接着性樹脂組成物について説明する。
前記接着剤層を形成する接着性樹脂組成物は、必須成分として結晶性ポリエステル樹脂、非晶性ポリエステル樹脂、及び、エポキシ樹脂を含有している。
また、本実施形態における接着性樹脂組成物は、任意成分としてイソシアネート系架橋剤をさらに含有している。
そして、本実施形態の前記結晶性ポリエステル樹脂及び前記非晶性ポリエステル樹脂は、前記イソシアネート系架橋剤によって架橋されて前記接着剤層に含有されている。
本実施形態における前記接着剤層は、図1(c)に模式的に示されているように内部にマトリックスMとドメインDとの相分離構造が形成されており、前記結晶性ポリエステル樹脂及びエポキシ樹脂を含むマトリックス相と前記非晶性ポリエステル樹脂を含むドメイン相とを有している。
言い換えると、前記接着剤層は、非晶性ポリエステル樹脂を含む樹脂粒子を結晶性ポリエステル樹脂とエポキシ樹脂との混合物中に分散させたマトリックス・ドメイン相構造を有している。
本実施形態においてマトリックス相を形成している結晶性ポリエステル樹脂は、常温下や加熱下、湿熱下において結晶部分の構造変化等が生じて接着力等に影響を及ぼすようになる。
本実施形態の前記接着剤層は、系全体が均一ではなく、マトリックス・ドメイン相構造を有することで、マトリックス相の結晶性ポリエステル樹脂と、ドメイン相の非晶性ポリエステル樹脂の特性が制御され、所望の接着特性が発揮され得る。
さらに、本実施形態の接着性樹脂組成物は、マトリックス相内にエポキシ樹脂を含有させることによって、結晶性ポリエステル樹脂の結晶の成長を抑制することができ、接着特性を安定化させるという作用を発揮する。
即ち、本実施形態における接着性樹脂組成物は、結晶性ポリエステル樹脂に構造変化が生じやすい環境下においても、エポキシ樹脂の存在によって結晶性ポリエステル樹脂の良好な接着性が維持されることになる。
一方、非晶性ポリエステル樹脂は、構造的にもガラス転移温度の点からも結晶性ポリエステル樹脂と比べて湿熱による疎化を生じにくく、むしろ適度な流動性、弾性率、タック感(粘着感)を発現する。
この適度な流動性、弾性率、タック感が非晶性ポリエステル樹脂に発現し、被着体への接着に有利となる傾向は、乾熱環境下よりも湿熱環境下の方が顕著に現れるものである。
即ち、非晶性ポリエステル樹脂は、通常、結晶性ポリエステル樹脂に比べて室温下で高弾性率であるために被着体に貼付した初期段階においては優れた接着性を発揮することはないが、湿熱が加わった状態では、優れた接着性を発揮するために必要な弾性率や流動性を有するように変化する。
従って、非晶性ポリエステル樹脂は、湿熱が加わった状態では、結晶性ポリエステル樹脂が接着性を低下させるのに比べて、優れた接着性を発揮するものである。
よって、前記接着剤層は、非晶性ポリエステル樹脂を含有することで前記界面に対する水蒸気の侵入を防止することができ、優れた耐湿熱劣化性が発揮されることになる。
そして、前記ドメイン相は、個々のドメインがどのような大きさとなっているかによって接着剤層に発揮させる耐湿熱劣化性をある程度異ならせる。
また、前記界面への水蒸気の侵入を抑制させる上においては、ドメイン相を形成している各ドメインがある程度以上の大きさを有していることが好ましい。
即ち、前記接着剤層は、前記ドメイン相に断面形状0.2μm以上30μm以下、好ましくは0.3μm以上28μm以下、さらに好ましくは1μm以上25μm以下の大きさとなるドメインを含有することが好ましく、断面形状0.2μm以上の大きさとなるドメインを複数有していることが好ましい。
なお、本明細書におけるドメイン粒子の断面形状の大きさとは、円相当径を意味していており、該断面形状が0.2μm以上の大きさであるか否かついては、例えば、前記接着剤層を厚み方向に切断してスライス片を作製し、該スライス片に対する透過型電子顕微鏡(TEM)での直接観察を実施して確認することができる。
即ち、スライス片のTEM写真を所定の倍率で撮影し、該TEM写真から各ドメインの断面積を求め、該断面積が直径0.2μmの円の面積以上のドメインが存在するようであれば、接着剤層に断面積が直径0.2μmのドメインが含有されていると判断することができる。
なお、結晶性ポリエステル樹脂などがドメイン粒子中に内包されて“海島湖構造”などと呼ばれる多重相分離構造が接着剤層に形成されているような場合は、ドメインの断面形状の大きさにおける“湖”部分(ドメイン中のマトリックス相成分粒子)の面積についてはこれを無視して考えることとする。
ドメイン相が上記のような形で接着剤層中に形成されていることが当該接着剤層に優れた耐湿熱劣化性を発揮させるのが重要であるのと同様に、前記結晶性ポリエステル樹脂は、優れた初期接着力を接着剤層に発揮させる上においてエポキシ樹脂とともにマトリックス相に含有されていることが重要である。
即ち、マトリックス・ドメインが逆転状態となるようでは接着剤層に優れた初期接着力と耐湿熱劣化性とを発揮させることが難しくなる。
このように前記結晶性ポリエステル樹脂をマトリックス相側の成分とし、前記非晶性ポリエステル樹脂をドメイン相側の成分とすることをより確実なものとし、且つ、断面形状0.2μm以上の大きさを有するドメインをより確実に形成させる上においては、前記結晶性ポリエステル樹脂と前記非晶性ポリエステル樹脂との合計に占める前記非晶性ポリエステル樹脂の割合は、5質量%以上50質量%以下とすることが好ましく、特に20質量%以上50質量%以下であることが好ましい。
また、前記エポキシ樹脂を含め、前記接着剤層に対して接着性を発揮させるために含有されている全てのポリマー中に占める前記非晶性ポリエステル樹脂の割合は、4質量%以上50質量%以下、特に20質量%以上40質量%以下であることが好ましい。
なお、マトリックス・ドメイン相構造におけるドメイン相の大きさが小さすぎると、非晶性ポリエステル樹脂の湿熱環境下での接着性向上という特性が接着剤層全体に反映されにくくなり、ドメイン相の大きさが大きすぎると、非晶性ポリエステル樹脂が室温下での接着性に乏しいという性質が接着剤層全体に反映されてしまう傾向を示す。
以下に接着剤層(接着性樹脂組成物)を形成させるための個々の成分について説明する。
(A)結晶性ポリエステル樹脂
本実施形態の接着性樹脂組成物を構成する前記結晶性ポリエステル樹脂としては、多価カルボン酸(a1)とポリオール(a2)とを脱水縮合させてなるものを採用することができる。
(a1)多価カルボン酸
該結晶性ポリエステル樹脂を構成する前記多価カルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;p−オキシ安息香酸、p−(ヒドロキシエトキシ)安息香酸等の芳香族オキシカルボン酸;コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸;フマル酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和脂肪族ジカルボン酸;テトラヒドロフタル酸等の不飽和脂環族ジカルボン酸;ヘキサヒドロフタル酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸;トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸等のトリカルボン酸が挙げられる。
(a2)ポリオール
前記多価カルボン酸とともに結晶性ポリエステル樹脂を構成する前記ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール等の脂肪族グリコール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のオリゴアルキレングリコール;1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレンエーテルグリコール;トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトールなどのトリオール;ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物やプロピレンオキサイド付加物、水素化ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物やプロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。
結晶性ポリエステル樹脂は、その結晶領域においては非晶領域に比べて分子鎖が水による攻撃を受け難く、加水分解等による劣化が生じにくいと考えられる。
従って、前記結晶性ポリエステル樹脂としては、融点が高く、結晶化度が高い方が接着剤層を耐湿熱劣化性に優れたものとし得る点において有利であるといえる。
その一方で、結晶性ポリエステル樹脂を過度に高融点なものとすると接着剤層を高温に加熱しないと被着体に接着させることができなくなるおそれを有する。
従って、結晶性ポリエステル樹脂は、融点が135℃以下で、ガラス転移温度(以下、「Tg」ともいう)が0℃以下であることが重要である。
また、例えば燃料電池における固体電解質膜周囲のシール材として接着性樹脂組成物を用いる場合には、優れた耐湿熱性と優れた接着作業性とを兼ね備えたものとし得る点において、前記結晶性ポリエステル樹脂は、融点が90℃を超え130℃未満であることが特に好ましい。
また、前記結晶性ポリエステル樹脂は、そのガラス転移温度(以下、「Tg」ともいう)が、−100℃以上0℃以下の範囲、さらには−70℃以上0℃以下の範囲にあることが好ましい。
なお、接着剤層は、Tgが上記の範囲の結晶性ポリエステル樹脂を用いることにより、一層ゴム弾性が発揮され凝集力に優れたものとなる。
即ち、接着剤層は、結晶性ポリエステル樹脂のTgを0℃以下とすることにより、耐寒性に優れたものとなる。
また、接着剤層は、結晶性ポリエステル樹脂のTgを0℃以下とすることにより、低温接着特性が良好なものとなるとともに、溶融粘度が低くなって低い温度で接着可能となる。
このような好適な結晶性ポリエステル樹脂をシール材の接着剤層に含有させた場合には、該シール材を使って燃料電池の固体電解質膜の周囲をシールする際に前記固体電解質膜を熱で損傷させてしまうおそれを抑制しつつ確実なシールを施すことができる。
また、前記結晶性ポリエステル樹脂として、Tgが−100℃以上、より好ましくは−70℃以上のものを採用することにより、接着剤層が柔軟になり過ぎることを抑制させることができる。
しかも、上記のような結晶性ポリエステル樹脂を採用することで接着性樹脂組成物の軟化点が低くなり過ぎることを抑制させることができ、常温または、加熱された状況においても前記接着剤層に高い接着強度を発揮させ得る。
また、上記のような結晶性ポリエステル樹脂を採用することで加熱時における接着性樹脂組成物の流れ性が大きくなり過ぎることを抑制させることができる。
即ち、上記のような結晶性ポリエステル樹脂を採用することで接着温度、接着時間などといった使用条件が狭い範囲となることをも抑制させることができ前記シール材を使って前記固体電解質膜の周囲をシールする際の作業性を良好なものとさせ得る。
なお、この前記融点(Tm)やガラス転移温度(Tg)は、例えば、示差走査熱量計装置(DSC)を用いて測定することができる。
より具体的には、予測される融点やガラス転移温度の30K以上低い温度から30K以上高い温度まで窒素ガスを流しながら5℃/minの昇温速度で試料(結晶性ポリエステル樹脂)を昇温させた際に得られるDSC曲線から融点やガラス転移温度を求めることができる。
なお、ガラス転移温度については、JIS K7121:1987「プラスチックの転移温度測定方法」に記載されている方法に基づいて中間ガラス転移温度(Tmg)を決定して求めることができる。
融点についても上記JIS規格に記載されている方法に基づいて融解ピーク(Tpm)を決定して求めることができる。
また、この結晶性ポリエステル樹脂の数平均分子量は、10000〜50000であることが好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂がこのような分子量であることが好ましいのは、結晶性ポリエステル樹脂の分子量を10000以上とすることにより、接着剤層が脆くなるおそれを抑制させることができ接着剤層に優れた靱性を付与させ得るためである。
一方で結晶性ポリエステル樹脂として数平均分子量が50000以下のものを採用することにより、接着性樹脂組成物の軟化点が高くなり過ぎることを抑制でき、シール材を低温接着性に優れたものとすることができる。
即ち、このような結晶性ポリエステル樹脂を採用することで、シール材を、燃料電池の電解質膜を熱で損傷してしまうおそれを抑制しつつ優れたシール性を発揮可能なものとすることができる。
なお、結晶性ポリエステル樹脂の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によるスチレン換算値として求めることができる。
上記のような特性を示す結晶性ポリエステル樹脂としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ブタンジオール、及び、ポリオキシテトラメチレングリコールを反応させてなるものが好適である。
なかでも、テレフタル酸が25〜40mol%、イソフタル酸が10〜20mol%、ブタンジオールが35〜50mol%、平均繰り返し数が10〜20のポリオキシテトラメチレングリコールが5〜15mol%の割合で構成されている結晶性ポリエステル樹脂が好ましい。
(B)非晶性ポリエステル樹脂
前記接着剤層の形成に用いられる接着性樹脂組成物に前記結晶性ポリエステル樹脂とともに含有される非晶性ポリエステル樹脂は、DSCによる測定で明確な結晶化あるいは結晶融解ピークを持たないポリエステル樹脂である。
本実施形態の非晶性ポリエステル樹脂は、結晶性ポリエステル樹脂と同様に多価カルボン酸(a1)とポリオール(a2)とを脱水縮合させてなるものであり、前記多価カルボン酸(a1)と前記ポリオール(a2)とのいずれか一方、又は両方に複数種のものを採用して結晶性が発現しないようにさせたものである。
本実施形態の接着性樹脂組成物は、その凝集力を増大させ、しかも結晶性ポリエステル樹脂のゴム弾性を調整する役割を発現すべく非晶性ポリエステル樹脂が配合されている。
即ち、本実施形態においては、接着性樹脂組成物に非晶性ポリエステル樹脂を配合することにより、接着剤層の柔軟性(硬さ)を調整して被着体から当該接着剤層が剥離することを防止させている。
例えば、本実施形態のシール材は、燃料電池のシール材として利用された場合において、燃料電池の運転時にシール材の一面側に接する部材と他面側に接する部材とに熱膨張差が生じて当該シール材に応力が加わるような場合に接着剤層内に適度な応力緩和を生じさせて接着している部材から剥離することが防止され得る。
また、該非晶性ポリエステル樹脂は、前記のように接着剤層にドメイン相を形成させるもので、該接着剤層が湿熱環境下に置かれた場合に生じる熱歪みを吸収すべくドメインの形状を変化させ、接着剤層と被着体との界面に水蒸気などが侵入することを防止すべく機能するものである。
本実施形態における非晶性ポリエステル樹脂は、Tgが50℃以上100℃以下の範囲にあることが好ましく、Tgが60℃以上75℃以下の範囲内であることが特に好ましい。
この非晶性ポリエステル樹脂のTgが50℃以上であることが好ましく、60℃以上であることが特に好ましいのは、通常の保管状態においてタック性が発現しないようにさせ得るためであり、接着剤層を露出させた状態で保管していた場合などにおいて該接着剤層に塵埃などが付着して外観が悪化したり、接着剤層どうしが接着してブロッキングしたりすることを抑制させうるためである。
即ち、非晶性ポリエステル樹脂のTgが50℃以上であることが好ましく、60℃以上であることが特に好ましいのは、シール材に良好なる取り扱い性を付与し得るためである。
一方、非晶性ポリエステル樹脂のTgが100℃以下であることが好ましく、75℃以下であることが特に好ましいのは、接着性樹脂組成物の軟化点が高温となること、ならびに溶融状態の接着性樹脂組成物の粘度が高くなりすぎることを防止することができ、シール材を使用する際の接着温度などの接着条件が高温に制限されることを抑制させ得るためである。
すなわち、Tgが100℃以下の非晶性ポリエステル樹脂を接着性樹脂組成物に含有させることにより、本実施形態のシール材を接着作業性に優れ、シール性に優れたものとすることができる。
また、本実施形態の接着剤層の形成に用いられる非晶性ポリエステル樹脂は、その数平均分子量が10000〜35000であることが好ましい。
数平均分子量が10000以上の非晶性ポリエステル樹脂は、接着剤層に優れた靭性を付与することができ、該接着剤層を凝集力、接着強さに優れたものとさせ得る。
また、数平均分子量が35000以下の非晶性ポリエステル樹脂は、シール材を使用する際の接着温度が高温に制限されることを抑制させ得る。
上記のような特性を示す非晶性ポリエステル樹脂としては、テレフタル酸、イソフタル酸、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、及び、ジエチレングリコールを反応させてなるものが好適である。
なかでも、テレフタル酸が20〜30mol%、イソフタル酸が20〜25mol%、エチレングリコールが20〜30mol%、ネオペンチルグリコールが20〜30mol%、ジエチレングリコールが0.1〜5mol%の割合で構成されている非晶性ポリエステル樹脂が好ましい。
なお本実施形態における前記接着剤層には、結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂との相溶性の違い、例えば、採用する結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂との溶解度パラメータ(SP値)の相違などに基づいてドメイン相とマトリックス相との相構造(ドメイン粒子の大きさなど)の調整を図りうる他に、後述するように接着剤層の形成時における条件によっても前記相構造を調整することができる。
(C)エポキシ樹脂
本実施形態における前記エポキシ樹脂は、通常、前記結晶性ポリエステル樹脂とともにマトリックス相を形成するものである。
本実施形態の接着性樹脂組成物は、エポキシ樹脂が含まれていることから単に結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂とをブレンドしたものに比べて耐湿熱劣化性において優れたものとなっている。
本実施形態の接着性樹脂組成物は、含有させる前記エポキシ樹脂を、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂などとすることができる。
なかでも、前記エポキシ樹脂は、接着性樹脂組成物へのタック性や靭性の付与、及び、優れた耐湿熱性の付与に有効である点においてビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましい。
本実施形態の接着性樹脂組成物に含有させるエポキシ樹脂は、前記接着剤層の凝集力を強化させること、接着剤層に未反応なエポキシ基を多く存在させることを勘案すると、JIS K 7234の環球法によって求められる軟化点が前記結晶性ポリエステル樹脂の融点よりも高い温度を示すものが好ましい。
より具体的に説明すると、本実施形態の接着シートを接着させた被着体を加熱した場合を考えると、接着剤層に含有させるエポキシ樹脂をある程度軟化点の高いものとすることで前記接着剤層の凝集力が低下しにくく、当該接着シートに高耐熱性を付与することができる。
また、例えば、結晶性ポリエステル樹脂を含むマトリックス相および非晶性ポリエステル樹脂を含むドメイン相とのマトリックス・ドメイン相構造を有する接着性樹脂組成物を後述するイソシアネート系架橋剤によって架橋させて接着剤層を形成させる際などにおいて、前記架橋剤のイソシアネート基がエポキシ基との反応に消費されてポリエステル樹脂の水酸基との反応に十分に有効活用されなくなることも懸念されるので、このような現象を防止すべく結晶性ポリエステル樹脂の融点よりも高い軟化点を有するエポキシ樹脂を採用することが好ましい。
例えば、前記結晶性ポリエステル樹脂の融点(Tm)が105℃を超え130℃未満である場合には、前記エポキシ樹脂の軟化点は、135℃以上150℃以下で且つ(Tm+5℃)〜(Tm+40℃)であることが好ましく、135℃以上150℃以下で且つ(Tm+10℃)〜(Tm+30℃)であることがより好ましい。
このように結晶性ポリエステル樹脂の融点よりも高い軟化点を有するエポキシ樹脂を含有させることで、当該エポキシ樹脂をエポキシ基が未反応な状態で有効に接着剤層に含有させることができる。
従って、接着剤層が湿熱劣化して接着力や引張強度などの物性が低下することがエポキシ基の存在によって抑制されることになると思われる。
接着剤層中に未反応のエポキシ基が存在する事は、フーリエ変換赤外分光光度計(FTIR)を用いて分析した際に、エポキシ基の存在を示すピークが925〜899cm-1に現れることで確認することができる。
また、925〜899cm-1に現れるピークがエポキシ基によるものかどうかについては、接着剤層の被着体への熱接着前後において当該ピーク高さと、3650〜3140cm-1に現れる水酸基によるピーク高さとが関連して変化することで確認することができる。
上記のような場合、前記エポキシ樹脂は、分子量が3000〜5000であることが好ましく、そのエポキシ当量が2000〜3500g/eqであることが好ましい。
一方で、湿熱環境下における接着剤層と被着体との界面接着力の低下を抑制する上においては、結晶性ポリエステル樹脂の融点よりも僅かに前記軟化点が低いエポキシ樹脂を採用することが好ましい。
この点をより具体的に説明すると、例えば、本実施形態の接着シートを接着させた被着体を熱水浸漬したような場合を考えると、接着剤層に含有させるエポキシ樹脂の軟化点が低い方が、マトリックス相を形成している結晶性エポキシ樹脂との相溶性が向上し、被着体表面における接着剤層の濡れが良好になり、接着シートと被着体との界面への熱水の侵入を阻止し易くなる。
従って、湿熱環境下における接着力の低下をより確実に抑制する上においては、例えば、前記結晶性ポリエステル樹脂の融点(Tm)が105℃を超え130℃未満である場合には、前記エポキシ樹脂の軟化点は、80℃以上100℃以下で且つ(Tm−50℃)〜(Tm−30℃)であることが好ましい。
なお、この場合には、前記エポキシ樹脂は、分子量が900〜1800であることが好ましく、そのエポキシ当量が450〜900g/eqであることが好ましい。
従って、本実施形態においては、結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂とによって接着剤層にある程度以上の凝集力を発揮させることが可能な場合には、軟化点の低いエポキシ樹脂を採用して界面の接着力強化を図ればよく、逆に、結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂とによって接着剤層と被着体との間にある程度以上の界面接着力を発揮させることが可能な場合には、軟化点の高いエポキシ樹脂を採用して接着剤層の凝集力を向上させるようにすればよい。
なお、このエポキシ樹脂のエポキシ当量は、JIS K 7236により求めることができる。
また、本実施形態の接着性樹脂組成物における前記エポキシ樹脂の配合割合は、前記結晶性ポリエステル樹脂、及び、前記非晶性ポリエステル樹脂の合計100質量部に対して10質量部以上50質量部以下となっていることが好ましく、20質量部以上30質量部以下であることが特に好ましい。
エポキシ樹脂の配合割合が上記のような範囲であることが好ましいのは、結晶性ポリエステル樹脂及び非晶性ポリエステル樹脂の合計100質量部に対するエポキシ樹脂の配合量を10質量部以上とすることにより、接着性樹脂組成物の耐湿熱劣化性をより確実に向上させ得るためであり、エポキシ樹脂の配合量を50質量部以下とすることで、接着性樹脂組成物に適度な溶融粘度を付与することができるためである。
(X)イソシアネート系架橋剤
前記イソシアネート系架橋剤は、結晶性ポリエステル樹脂、及び、非晶性ポリエステル樹脂が有する水酸基などの極性基などとの反応性を有するものを用いることができ、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)などの脂肪族イソシアネートや、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)などの芳香族イソシアネートを挙げることができる。
また、本実施形態の接着性樹脂組成物における前記イソシアネート系架橋剤としては、キシリレンジイソシアネートが好ましく、該イソシアネート系架橋剤の配合割合は、前記結晶性ポリエステル樹脂、及び、前記非晶性ポリエステル樹脂の合計100質量部に対して0.1質量部以上15質量部以下となっていることが好ましく、1質量部以上8質量部以下であることが特に好ましい。
(Z)その他の成分
本実施形態の接着性樹脂組成物には、上記に示した、結晶性ポリエステル樹脂、非晶性ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂以外の樹脂成分を本発明の効果を損ねない範囲において含有させることができ、例えば、初期タック性が求められるような場合においては、テルペン系樹脂などの粘着性付与剤を添加することができる。
また、その他に老化防止剤、酸化防止剤、難燃剤、充填剤、着色剤、加工助剤などといった一般的なプラスチック配合剤を本発明の効果を損ねない範囲において適宜含有させることができる。
なかでも、接着剤層の凝集力を向上させるとともに水蒸気バリア性やガスバリア性を向上させる上においては、板状鉱物粒子のような無機充填材を含有させることが好ましい。
特に、平均粒子径(レーザー回折法によるメジアン径)が1〜10μmのタルク粉末は、安価に入手可能である点において好適である。
また、接着性樹脂組成物にタルク粉末を含有させる際には、該タルク粉末は、脂肪酸やシランカップリング剤などによって表面処理されたものであっても良いが、その表面の官能基を利用して接着剤層の凝集力を向上させる上においては無処理のものを用いることが好ましい。
なお、タルク粉末を接着性樹脂組成物に含有させる場合には、結晶性ポリエステル樹脂及び非晶性ポリエステル樹脂の合計100質量部に対して10質量部以上50質量部以下の割合となるように含有させることが好ましく、20質量部以上30質量部以下となるように含有させることが好ましい。
本実施形態のシール材は、図1に示すように、前記基材層10の一面側に形成させる接着剤層20(以下「第一接着剤層20a」ともいう)と他面側に形成させる接着剤層20(以下「第二接着剤層20b」ともいう)とを同じ接着性樹脂組成物によって形成させる必要はなく、第一接着剤層20aと第二接着剤層20bとを配合内容の異なる接着性樹脂組成物によって形成させても良い。
また、第一接着剤層20a及び第二接着剤層20bは、その厚みを共通させても異ならせていてもよい。
なお、第一接着剤層20a及び第二接着剤層20bは、シール材を燃料電池のシールに利用する場合には、通常、10μm以上200μm以下の厚みとされる。
このような接着剤層を両面に担持させる前記基材層は、通常、接着性樹脂組成物との親和性の良好な樹脂からなるフィルム状シートや前記樹脂からなる繊維シートにより構成させることができる。
なかでも、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂からなるフィルムや不織布で、且つ厚みが10μm以上200μm以下のものが前記基材層の構成材料として好適である。
なお、このようなポリエステル系樹脂シートのみならず、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂などの他の樹脂、シリコーンゴムやフッ素ゴムなどのポリマーからなるポリマーシートを基材層の構成材料として用いることも可能である。
さらに、異なる材質のものがラミネートされてなるラミネートシートを前記基材層の形成材料として採用しても良い。
本実施形態のシール材は、結晶性ポリエステル樹脂、非晶性ポリエステル樹脂及びエポキシ樹脂と共に、必要によりイソシアネート系架橋剤、無機充填材などの接着性樹脂組成物を構成させるための配合剤を、例えば、前記結晶性ポリエステル樹脂の融点以上の温度、且つ前記エポキシ樹脂の軟化点未満の温度で溶融混練し、必要に応じて有機溶媒を加えるなどして塗工液を調製し、該塗工液をポリマーシートの両面に塗布して形成させることができる。
なお、前記結晶性ポリエステル樹脂及び前記非晶性ポリエステル樹脂の架橋については、前記塗工液の調整に際する加熱により、ポリエステル樹脂の水酸基と架橋剤のイソシアネート基とを反応させることで実施させることができる。
前記のように本実施形態の接着剤層は、その形成に際してマトリックス・ドメイン相構造の調整を図ることができる。
前記接着剤層は、例えば、ポリマーシートに塗工する前記塗工液に対して高いシェアストレスが加わるように攪拌を実施することで、通常、ドメインをマトリックス中に微分散させた状態とすることができる。
また、結晶性ポリエステル樹脂に対する非晶性ポリエステル樹脂の溶解性は、接着性樹脂組成物の温度が高温である方が通常高くなる。
そのため、結晶性ポリエステル樹脂の融点未満の温度においては、前記攪拌を高温で実施する方がドメインを微分散させ易い。
その一方で、結晶性ポリエステル樹脂の融点を超えた温度域などにおいては接着性樹脂組成物の溶融粘度が大きく低下することでドメインが移動しやすくなり複数のドメインを集合させて粗大なドメインを形成させやすい状態になる。
即ち、結晶性ポリエステル樹脂の融点を超えた温度域などにおいては、接着性樹脂組成物の温度を高温にさせる方が大きなドメインを形成させ易くなる。
さらに、前記塗工液に有機溶媒を含有させる場合であれば、該有機溶媒の揮発性などによってもドメインの大きさの調整を図り得る。
即ち、塗工液中のドメインは、通常、ポリマーシートなどへの塗工直後よりも微細化することはなく、互いに合体して大サイズ化する一方となるために蒸発までに時間を要する有機溶媒を塗工液に含有させると当該塗工液が乾燥されるまでに大きく成長することになる。
なお、本実施形態においては、接着性樹脂組成物について、結晶性ポリエステル樹脂、非晶性ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、及び、イソシアネート系架橋剤の4成分を含有する場合を主として説明したが、本発明の接着性樹脂組成物は、その必須成分として結晶性ポリエステル樹脂、非晶性ポリエステル樹脂、及び、エポキシ樹脂のみを含有していれば良い。
また、本実施形態においては、接着シートを基材層の両面に接着性樹脂組成物による接着剤層を設けた3層構成のものを例示しているが、例えば、基材層の片面にのみ接着剤層を形成した構成や、基材層のない接着剤層だけの構成も本発明の接着シートとして意図する範囲のものである。
なお、基材層を有さない接着剤層のみ接着シートや、基材の片面に接着剤層を形成した接着シートの場合は、使用に供するまでの間、接着剤層の露出面を覆うようにセパレータを剥離可能に積層しておくことが好ましい。
さらに、本実施形態においては、燃料電池のシール材として用いられる接着シートの接着剤層の形成に接着性樹脂組成物を利用する場合を例示しているが、本発明の接着シートは、その用途が燃料電池のシール材に限定されるものではない。
そして、本発明の接着性樹脂組成物は、その用途が接着シートの接着剤層に限定されるものではなく、本発明の特性(効果)が要求される用途であれば適宜使用できるものである。
また、本発明の接着シート(シール材)やその形成に用いる接着性樹脂組成物は、本発明の効果を著しく損なわない範囲において上記本実施形態に例示された事項以外に、従来これらの技術分野において公知の技術事項を採用することができる。
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(評価実験1)
(使用材料)
以下に、接着性樹脂組成物の評価実験1に利用した原材料の略称と、その詳細について説明する。
(結晶性ポリエステル樹脂(A))
(A1)
数平均分子量:約35000、比重(30℃):1.15、Tg:−70℃、Tm:126℃の結晶性ポリエステル樹脂

(非晶性ポリエステル樹脂(B))
(B1)
数平均分子量:約23000、比重(30℃):1.26、Tg:67℃の非晶性ポリエステル樹脂

(エポキシ樹脂(C))
(C1)
分子量:約3800、軟化点:144℃のビスフェノールA型エポキシ樹脂

(イソシアネート系架橋剤(X))
(X1)キシリレンジイソシアネート

(その他の添加剤(Z))
(Z1)タルク粉末
(実施例1)
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(接着シートの作製)
(A1)の結晶性ポリエステル樹脂、(B1)非晶性ポリエステル樹脂、(C1)のエポキシ樹脂、(X1)のイソシアネート系架橋剤、及び、(Z1)のタルク粉末が、質量割合で、75:25:25:2:25(A1:B1:C1:X1:Z1)となるように有機溶媒に分散・溶解させた塗工液を調製し、該塗工液を表面離型処理された剥離フィルムにコーティングした後に乾燥させて、乾燥厚み約50μmの接着剤層を形成させた。
この接着剤層を剥離フィルムから剥離して接着剤層のみからなる単層の接着シートを作製した。
(相構造の確認)
凍結超薄切片法により接着シートのTEM観察用試料を作製した。
なお、TEM観察用の超薄片試料は、切断方向が接着シートの厚み方向となるようにして作製し、重金属染色処理を施した後にTEM(日立ハイテクノロジーズ社製、型名「H−7650」)にセットして100kVの加速電圧で観察した。
そして、接着シート内部にマトリックス・ドメイン相構造が形成されているかどうか、0.2μm以上の大きさを有するドメイン粒子が複数存在するか否かといったことをTEM写真で確認した。
なお、この実施例1の接着シートから採取したTEM観察用試料について撮影したTEM写真を図2に示す。
この図2からもわかるように、実施例1の接着シートは、マトリックス・ドメイン相構造が形成されており、0.2μm以上の大きさを有するドメイン粒子が複数存在するものであった。
そして、マトリックス・ドメイン相構造において、非晶性ポリエステル樹脂が主としてドメイン相に含有されているのかマトリックス相に含有されているのかについても下記条件による顕微ラマンマッピングにて確認を行った。
実施例1の接着シートによって作製した試料に対して顕微ラマンマッピングを行った結果を図3に示す。
そして顕微ラマンマッピングの結果、図3において濃色で示されているドメインが非晶性ポリエステルで、淡色で示されているマトリックスが結晶性ポリエステルで形成されていることが確認できた。

<顕微ラマンマッピング条件>
装置:
SNOM/AFM/Raman複合機(WItec社製、alpha300RSA)
励起波長:
532nm
これらの結果を表1に示す。
なお、表1には、マトリックス・ドメイン相構造や0.2μm以上の大きさを有するドメイン粒子についてTEM写真で確認できた場合を「○」判定とし、これらの確認ができなかった場合を「×」判定として示す。
また、表1には、非晶性ポリエステル樹脂がドメイン相側に主として含有されていると見られる場合を「D」判定とし、マトリックス相側に主として含有されていると見られる場合を「M」判定として示した。
(接着性評価用テストピースの作製)
50μm厚みの前記接着シートを、厚みが100μmのポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)フィルムと、厚みが50μmのポリイミド樹脂(PI)フィルムとの間に挟んで熱プレスし、PPSフィルム/接着シート/PIフィルムの積層シートを形成させた。
なお、熱プレスは、PPSフィルム側に35℃の熱板を当接させるとともにPIフィルム側に160℃の熱板を当接させ、これらの熱板で0.2MPaの圧力を30秒間加えることにより実施した。
そして、前記熱プレス後、前記積層シートを23℃の環境下において3日間保持し、該積層シートを10mm巾にカットして短冊状のテストピースを作製した。
(初期接着性評価)
前記テストピースの長手方向一端部において、PPSフィルムを接着シートから剥離し、このPPSフィルムの剥離を10mm/分の速度で継続した場合の剥離力を初期接着力として測定した。
なお、この初期接着力の測定は、23℃の温度条件下、180度の剥離角度(180度ピーリング)で実施した。
(耐湿熱劣化性評価)
前記テストピースを98度の熱水中に、所定時間(100時間、250時間)浸漬させ、前記熱水から引き上げて23℃の環境下に1日間保持した後、前記の初期接着性評価と同様に180度剥離試験を実施した。
そして、このとき測定された剥離力を初期の剥離力で除して接着力の維持率を算出した。
結果を、表1に示す。
(実施例2〜4、比較例1〜5)
接着シートの配合内容を、表1、2に示す通りとしたこと以外は、実施例1と同様に接着シートを作製し、実施例1と同様に評価を実施した。
結果を表1、2にそれぞれ示す。
また、図4に、実施例3の接着シートから採取したTEM観察用試料について撮影したTEM写真を示す。
さらに、図5に、比較例2の接着シートから採取したTEM観察用試料について撮影したTEM写真を示す。
上記のように非晶性ポリエステル樹脂を含有させていない比較例1の接着シートは、熱水浸漬250時間後に接着力が殆ど失われてしまっている。
また、非晶性ポリエステル樹脂がマトリックス相を形成している比較例2〜5の接着シートは、初期接着力の評価結果において当該接着力が低い値となっている。
これに対し、実施例1〜9の接着シートは、高い初期接着力を示し、且つ、熱水浸漬250時間後においてもある程度の接着力を有している。
即ち、上記結果からも、本発明によれば初期接着性、及び、耐湿熱劣化性に優れた接着性樹脂組成物、並びに接着シートが提供されることがわかる。
(評価実験2)
接着性樹脂組成物の評価実験1に利用した(A1)、(B1)、(C1)、(X1)及び(Z1)に加え、下記のような原材料を下記表3に示すような割合で用いて前記の評価実験1と同様に接着性と湿熱劣化性との評価を実施した。

(結晶性ポリエステル樹脂(A))
(A2)
数平均分子量:約30000、比重(30℃):1.15、Tg:−60℃、Tm:107℃の結晶性ポリエステル樹脂
(A3)
数平均分子量:約30000、Tg:8℃、Tm:138℃の結晶性ポリエステル樹脂

(非晶性ポリエステル樹脂(B))
(B2)
数平均分子量:約23000、比重(30℃):1.20、Tg:7℃の非晶性ポリエステル樹脂
(B3)
数平均分子量:約23000、比重(30℃):1.25、Tg:47℃の非晶性ポリエステル樹脂
(B4)
数平均分子量:約18000、比重(30℃):1.28、Tg:79℃の非晶性ポリエステル樹脂

(エポキシ樹脂(C))
(C2)
分子量:約1300、軟化点:89℃のビスフェノールA型エポキシ樹脂
上記結果からも、本発明によれば初期接着性、及び、耐湿熱劣化性に優れた接着性樹脂組成物、並びに接着シートが提供されることがわかる。
1 シール材
10 基材層
20 接着剤層

Claims (3)

  1. 結晶性ポリエステル樹脂、及び、非晶性ポリエステル樹脂を含み、シール材のシール面の形成に用いられる接着性樹脂組成物であって、
    エポキシ樹脂をさらに含有し、
    前記結晶性ポリエステル樹脂は、ガラス転移温度が0℃以下で、融点が135℃以下であり、
    該結晶性ポリエステル樹脂及び前記エポキシ樹脂を含むマトリックス相と前記非晶性ポリエステル樹脂を含むドメイン相とのマトリックス・ドメイン相構造を有しており、前記結晶性ポリエステル樹脂、前記非晶性ポリエステル樹脂、及び、前記エポキシ樹脂の内の1以上が架橋剤で架橋されており、
    水素と酸素との反応により発電される燃料電池における固体電解質膜周囲のシールに用いられることを特徴とする接着性樹脂組成物。
  2. 前記結晶性ポリエステル樹脂と前記非晶性ポリエステル樹脂との合計に占める前記非晶性ポリエステル樹脂の割合が20質量%以上50質量%以下であり、前記ドメイン相には、断面形状が0.2μm以上の大きさのドメインが含有されている請求項1記載の接着性樹脂組成物。
  3. 前記架橋剤がイソシアネート系架橋剤である請求項2記載の接着性樹脂組成物。
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