JP6310719B2 - マイクロ構造体の製造方法 - Google Patents

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本発明は、表面に微細な凹凸パターンを有するマイクロ構造体の製造方法に関する。
従来、この種のマイクロ構造体の製造方法として、例えば、注型法を利用した製造方法が知られている。この製造方法によれば、微細な凹凸パターンを有する型内に樹脂を有機溶媒で溶解させた溶液を流し込み、加熱により有機溶媒を除去して樹脂を固化させた後、離型することにより、型の凹凸パターンが表面に転写されたマイクロ構造体を得ることができる。
前記従来の製造方法では、微細な凹凸パターンを有する型内に樹脂を有機溶媒で溶解させた溶液を流し込むことが行われる。このとき、溶液は、液体であるので、型の微細な凹凸パターンに隙間なく充填されるようにも思える。
しかしながら、型の凹部の幅が例えば10μm以下のレベルまで小さくなると、溶液の表面張力によって、型の凹部内に溶液が充填されないことが起こり得る。この場合、凹凸パターンの転写性が低下することになる。この凹凸パターンの転写性の低下は、凹部のアスペクト比(幅/深さ)が大きいほど顕著になる。
また、従来の製造方法では、溶液はある程度の粘性を有するので、加熱により有機溶媒を除去して樹脂を固化させる際に、多数の気泡が樹脂内に残ることが起こり得る。
従って、本発明の目的は、前記課題を解決することにあって、凹凸パターンの転写性の低下を抑えるとともに、マイクロ構造体の内部に気泡が残存することを抑えることができるマイクロ構造体の製造方法を提供することにある。
前記目的を達成するために、本発明に係るマイクロ構造体の製造方法は、微細な凹凸パターンを有する型の表面にナノファイバを吹き付けて堆積させる工程と、前記堆積させたナノファイバを加熱溶融させた後、冷却して、ナノファイバフィルムを形成する工程と、を含む。
本発明に係るマイクロ構造体の製造方法によれば、凹凸パターンの転写性の低下を抑えるとともに、マイクロ構造体の内部に気泡が残存することを抑えることができる。
本発明の実施形態に係るマイクロ構造体の製造方法を示す説明図である。 図1に続く製造工程を示す模式断面図である。 図2に続く製造工程を示す模式断面図である。 図3に続く製造工程を示す模式断面図である。 図4に続く製造工程を示す模式断面図である。 本発明の実施例に係るマイクロ構造体の表面形状と、比較例に係るマイクロ構造体の表面形状とを示す図である。 凹凸パターンがL/Sパターンである型の構造を示す模式図である。 凹凸パターンが円柱パターンである型の構造を示す模式図である。 凹凸パターンが円孔パターンである型の構造を示す模式図である。 凹凸パターンがL/Sパターンである型の表面形状と、当該型を用いて製造した本実施例に係るマイクロ構造体及び比較例に係るマイクロ構造体の表面形状とを、走査電子顕微鏡で見た画像である。 凹凸パターンが円柱パターンである型の表面形状と、当該型を用いて製造した本実施例に係るマイクロ構造体及び比較例に係るマイクロ構造体の表面形状とを、走査電子顕微鏡で見た画像である。 凹凸パターンが円孔パターンである型の表面形状と、当該型を用いて製造した本実施例に係るマイクロ構造体及び比較例に係るマイクロ構造体の表面形状とを、走査電子顕微鏡で見た画像である。 本発明の実施形態に係るマイクロ構造体の製造方法の変形例を示す説明図である。
本発明の第1態様によれば、微細な凹凸パターンを有する型の表面にナノファイバを吹き付けて堆積させる工程と、
前記堆積させたナノファイバを加熱溶融させた後、冷却して、ナノファイバフィルムを形成する工程と、
を含む、マイクロ構造体の製造方法を提供する。
本発明の第2態様によれば、前記ナノファイバフィルム上にコーティング部材を形成する工程を含む、第1態様に記載のマイクロ構造体の製造方法を提供する。
本発明の第3態様によれば、前記ナノファイバフィルムの形成前に、前記堆積させたナノファイバ上にコーティング部材を形成する工程を含む、第1態様に記載のマイクロ構造体の製造方法を提供する。
本発明の第4態様によれば、前記ナノファイバと前記コーティング部材とは、同じ樹脂材料で構成されている、第2又は3態様に記載のマイクロ構造体の製造方法を提供する。
本発明の第5態様によれば、前記ナノファイバは、エレクトロスピニング法により前記型の表面に吹き付けられる、第1〜4態様のいずれか1つに記載のマイクロ構造体の製造方法を提供する。
本発明の第6態様によれば、前記ナノファイバフィルムの形成後、前記ナノファイバフィルムを、前記ナノファイバの溶融温度よりも低い温度で加熱して軟化させた後、前記型から離型する工程を含む、第1〜5態様のいずれか1つに記載のマイクロ構造体の製造方法を提供する。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施形態によって、本発明が限定されるものではない。
《実施形態》
本発明の実施形態に係るマイクロ構造体の製造方法について、図1〜図5を用いて説明する。図1〜図5は、本発明の実施形態に係るマイクロ構造体の製造方法を示す説明図である。
まず、図1及び図2に示すように、微細な凹凸パターンを有する型1の表面に、エレクトロスピニング法によりナノファイバ2を吹き付けて堆積させる。より具体的には、コレクタ電極3上に型1を配置するとともに、樹脂を有機溶媒で溶解させた紡糸溶液をシリンジ4内に充填する。その後、紡糸溶液とコレクタ電極3との間に電圧を印加(例えば、10kV)し、紡糸溶液をシリンジ4から型1に向けて噴射させる。シリンジ4から噴射された紡糸溶液は、型1に到達するまでの間に有機溶媒が揮発してナノファイバ2へと変化する。この紡糸溶液の噴射を、シリンジ4又は型1の少なくとも一方を移動させながら所定時間継続する。これにより、型1の表面にナノファイバ2が膜状に堆積(例えば、10μm以上)される。
次いで、図3に示すように、型1の表面に堆積させたナノファイバ2を加熱溶融(例えば、140℃)させた後、冷却して、ナノファイバフィルム5を形成する。
次いで、図4に示すように、ナノファイバフィルム5上に、コーティング部材の一例であるコーティングフィルム6を形成して、本実施形態に係るマイクロ構造体7を形成する。
次いで、図5に示すように、マイクロ構造体7を型1から離す(離型する)。これにより、本実施形態に係るマイクロ構造体7が製造される。
本実施形態に係るマイクロ構造体の製造方法によれば、型1の表面にナノファイバ2を吹き付けるようにしている。ナノファイバ2は、直径数nm〜数百nm以下の極細繊維であるので、図2に示すように、型1の表面の凹部1aの幅W1が例えば1μm〜10μm程度であっても、凹部1a内に配置することができる。また、ナノファイバ2は、凹部1aのアスペクト比が大きくても、凹部1a内に配置することができる。
また、本実施形態に係るマイクロ構造体の製造方法によれば、型1の表面に堆積させたナノファイバ2を加熱溶融させた後、冷却して、ナノファイバフィルム5を形成するようにしている。これにより、ナノファイバ2間の隙間を無くすことができ、多数の気泡がナノファイバフィルム5内に残存することを抑えることできる。
また、本実施形態に係るマイクロ構造体の製造方法によれば、エレクトロスピニング法によりナノファイバ2を吹き付けるようにしている。これにより、電気的な作用を利用してナノファイバ2を凹部1a内に引き入れることができ、より確実にナノファイバ2を凹部1a内に配置することができる。また、エレクトロスピニング法により吹き付けられるナノファイバ2は、型1に到達した時点ではほぼ固体になっている。すなわち、型1の表面には、粘性のある溶液はほぼ存在しない。従って、多数の気泡がナノファイバフィルム5内に残存することをより一層抑えることできる。
また、本実施形態に係るマイクロ構造体の製造方法によれば、ナノファイバフィルム5上にコーティングフィルム6を形成するようにしている。これにより、ナノファイバフィルム5をコーティングフィルム6により補強して、取扱い性を向上させることができる。
なお、図2では、ナノファイバ2が型1の凹部1aに隙間無く充填されるように示したが、本発明はこれに限定されない。ナノファイバ2と凹部1aとの間には隙間があってもよい。ナノファイバ2は、微細であり、型1に到達した時点ではほぼ溶媒が除去されている。このナノファイバ2を加熱溶融させることにより、前記隙間を埋めることができる。その結果、高い転写性を得ることができる。
なお、マイクロ構造体7の離型は、当該マイクロ構造体7を、ナノファイバ2の溶融温度(例えば、140℃)よりも低い温度(例えば、80℃)で加熱して軟化させてから行うことが好ましい。これにより、マイクロ構造体7の離型を容易に行うことができ、離型の際に凹凸パターンの転写性が低下してしまうことを抑えることができる。
また、ナノファイバ2とコーティングフィルム6とは、同じ樹脂材料で構成されることが好ましい。この場合、ナノファイバフィルム5とコーティングフィルム6との界面を無くす、或いは目立たなくして、マイクロ構造体7の光学特性を向上させることができる。
なお、マイクロ構造体7は、樹脂型、樹脂フィルム、樹脂シート、部品など様々な用途に使用することができる。
また、型1は、種々の材質のものを使用することができる。例えば、型1として、シリコンやステンレス製の型を使用することができる。
(転写性の評価試験)
次に、本実施形態に係るマイクロ構造体の製造方法が、凹凸パターンの転写性の低下を抑制する効果を有することを確認するために行った試験結果について説明する。
ここでは、本発明の実施例に係るマイクロ構造体を、以下のようにして製造した。
まず、ポリメタクリル酸メチル樹脂(シグマアルドリッチ(株)製)を、N,N−ジメチルホルムアミド(キシダ化学(株)製)とクロロホルム(キシダ化学(株)製)とで溶解した紡糸溶液を作製した。このとき、ポリメタクリル酸メチル樹脂の濃度は17重量%とした。また、N,N−ジメチルホルムアミドとクロロホルムとの重量比は6:4とした。
その後、エレクトロスピニング法を用いたナノファイバ紡糸装置((株)メック製、商品名:NANON−01A)のシリンジに、前記紡糸溶液を注入した。
その後、3.6ks(キロ秒)間、電場を与えてナノファイバを紡糸し、シリコン製のナノインプリント用の型((株)協同インターナショナル製、商品名:DTM−1−3、縦20mm×横20mm)の表面にナノファイバを膜状に積層した。ここで、シリコン製の型は、半導体フォトリソグラフィ・エッチングにより作製した。型の凹部の幅は50μmとし、型の凹部の深さは10μmとした。
その後、前記積層したナノファイバを、熱風乾燥機((株)いすゞ製作所製、商品名:MRN−111)により140℃の温度で60分間、加熱溶融させた後、室温まで冷却することにより、ナノファイバフィルムを作製した。
その後、ナノファイバの作製に使用した紡糸溶液を、ナノファイバフィルム上に塗布し、前記熱風乾燥機により80℃の温度で加熱した後、室温まで冷却することにより、マイクロ構造体を作製した。
その後、マイクロ構造体をナノインプリント型から離型した。これにより、本実施例に係るマイクロ構造体を得た。
次に、比較例に係るマイクロ構造体を注型法により製造した。なお、比較例に係るマイクロ構造体の製造において、溶液は前記紡糸溶液を使用し、型は前記シリコン製の型を使用した。また、有機溶媒の除去のための加熱には、前記熱風乾燥機を使用し、加熱温度は140℃とした。
次に、本実施例に係るマイクロ構造体の表面と比較例に係るマイクロ構造体の表面とを、デジタルマイクロスコープ(オリンパス(株)製、商品名:DSX500)を用いて測定した。図6は、本実施例に係るマイクロ構造体の表面形状と、比較例に係るマイクロ構造体の表面形状とを示す図である。図6において、実線は本実施例に係るマイクロ構造体の表面形状を示し、一点鎖線は比較例に係るマイクロ構造体の表面形状を示している。また、図6において、点線は型の凹部の形状を示している。
図6に示すように、本実施例に係るマイクロ構造体の表面形状は、型の凹部の形状を略反転させた凸形状になっている。一方、比較例に係るマイクロ構造体の表面形状は、本実施例に係るマイクロ構造体の凸形状に比べて、幅が広く且つ先端部が欠損した凸形状になっている。これにより、本実施例に係るマイクロ構造体の表面には、比較例に係るマイクロ構造体の表面に比べて、型の凹部の形状が良好に転写されていることが分かる。
以上の試験結果により、本実施形態に係るマイクロ構造体の製造方法が、凹凸パターンの転写性の低下を抑制する効果を有することが確認された。
次に、本実施例に係るマイクロ構造体と比較例に係るマイクロ構造体とを、型の凹凸パターン及び凹部の幅を変えてそれぞれ複数製造し、それらのマイクロ構造体の表面観察を行った結果について説明する。
ここでは、型の凹凸パターンは、図7Aに示すL/Sパターン(ラインアンドスペースパターン)と、図7Bに示す円柱パターンと、図7Cに示す円孔パターンの3種類の凹凸パターンとした。また、型の凹部の幅W1は、1μm、5μm、10μm、50μmの4種類の幅とした。また、型の凹部の深さD1は全て10μmとし、型の厚みT2は全て1mmとした。
図8〜図10は、型の表面形状と、当該型を用いて製造した本実施例に係るマイクロ構造体及び比較例に係るマイクロ構造体の表面形状とを、走査電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジーズ製、商品名:SU1510)で見た画像である。
図8〜図10に示すように、本実施例に係るマイクロ構造体には、比較例に係るマイクロ構造体に比べて、型の凹凸パターンが良好に転写されていることが分かる。
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施できる。例えば、前記では、ナノファイバフィルム5とコーティングフィルム6とでマイクロ構造体7が構成されるものとしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、ナノファイバフィルム5のみでマイクロ構造体を構成するようにしてもよい。但し、この場合、取り扱い性の観点から、ナノファイバフィルム5の厚みを厚く(例えば、100μm以上)する必要がある。ナノファイバフィルム5の厚みを厚くするには、ナノファイバ2の堆積厚さT1(図2参照)を厚くする必要があり、当該ナノファイバ2の形成に相当の時間を要することになる。このため、ナノファイバフィルム5とコーティングフィルム6とでマイクロ構造体7を構成することが好ましい。これにより、製造時間を短縮することができる。
また、前記では、ナノファイバフィルム5の形成後に、コーティングフィルム6を形成するようにしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、図11に示すように、ナノファイバフィルム5の形成前において、型1の表面に堆積させたナノファイバ2上にコーティングフィルム6を形成するようにしてもよい。
また、前記では、コーティング部材としてコーティングフィルムを用いたが、本発明はこれに限定されない。例えば、コーティング部材としてセロファンテープを用いてもよい。
また、前記では、図5に示すように、マイクロ構造体7を型1から離型させたが、本発明はこれに限定されない。例えば、エッチング等により型1を消失させるようにしてもよい。
本発明に係るマイクロ構造体の製造方法は、凹凸パターンの転写性の低下を抑えるとともに、マイクロ構造体の内部に気泡が残存することを抑えることができるので、特に、凹部の幅が10μm以下であるマイクロ構造体の製造方法として有用である。
1 型
2 ナノファイバ
3 コレクタ電極
4 シリンジ
5 ナノファイバフィルム
6 コーティングフィルム
7 マイクロ構造体

Claims (6)

  1. 微細な凹凸パターンを有する型の表面にナノファイバを吹き付けて堆積させる工程と、
    前記堆積させたナノファイバを加熱溶融させた後、冷却して、ナノファイバフィルムを形成する工程と、
    前記ナノファイバフィルム上にコーティング部材を形成する工程と、
    を含むマイクロ構造体の製造方法。
  2. 微細な凹凸パターンを有する型の表面にナノファイバを吹き付けて堆積させる工程と、
    前記堆積させたナノファイバ上にコーティング部材を形成する工程と、
    前記堆積させたナノファイバを加熱溶融させた後、冷却して、ナノファイバフィルムを形成する工程と、
    を含む、マイクロ構造体の製造方法。
  3. 前記ナノファイバと前記コーティング部材とは、同じ樹脂材料で構成されている、請求項又はに記載のマイクロ構造体の製造方法。
  4. 前記ナノファイバは、エレクトロスピニング法により前記型の表面に吹き付けられる、請求項1〜のいずれか1つに記載のマイクロ構造体の製造方法。
  5. 微細な凹凸パターンを有する型の表面にナノファイバを吹き付けて堆積させる工程と、
    前記堆積させたナノファイバを加熱溶融させた後、冷却して、ナノファイバフィルムを形成する工程と、
    を含む、マイクロ構造体の製造方法であって、
    前記ナノファイバは、エレクトロスピニング法により前記型の表面に吹き付けられる、マイクロ構造体の製造方法。
  6. 前記ナノファイバフィルムの形成後、前記ナノファイバフィルムを、前記ナノファイバの溶融温度よりも低い温度で加熱して軟化させた後、前記型から離型する工程を含む、請求項1〜5のいずれか1つに記載のマイクロ構造体の製造方法。
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