以下に、本発明にかかるロックボルト用スペーサーの好適な実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明に係るロックボルト用スペーサーが装着されたロックボルトを削孔内に挿入した状態を示す側断面図である。図2は、第1実施形態に係るロックボルト用スペーサーに適用される板材の概略を説明する正面図である。図3は、図1に示した板材の平面図である。図4は、第1実施形態に係るロックボルト用スペーサーを示す平面図である。図5は、図4中、A方向矢視図である。図6は、図4中、B方向矢視図である。
ロックボルト1は、地盤等の施工箇所2に穿設された削孔3内に挿入されて設置される。ロックボルト1は、削孔3内に挿入される際、削孔3の中心位置に挿入されるように、ロックボルト用スペーサー(以下、スペーサーという)4によって挿入操作が案内される。スペーサー4のおおよそ中心位置に、ロックボルト1が装着されると共に、スペーサー4の外縁4aが削孔3の内周面3aに移動自在に当接される。
スペーサー4が装着されたロックボルト1を削孔3に挿入すると、スペーサー4は、削孔3の内周面3aに当接される外縁4aにより、ロックボルト1を削孔3の中心位置に位置出しして保持しつつ、削孔3の内周面3aに沿ってスライド移動されて削孔3内奥へ送り込まれ、これにより、ロックボルト1の削孔3内への挿入操作を案内するようになっている。ロックボルト1の挿入を終えた削孔3内にセメント等のグラウト材が充填されることにより、ロックボルト1は削孔3内に定着される。
ロックボルト1は、その先端に穿孔ビットなどの穿孔部を備えて自ら穿孔していくタイプの自穿孔式と、予め穿孔機で削孔3が形成され、作成された削孔3に後から挿入されるタイプの他穿孔式とがある。以下に説明するスペーサー4は、いずれのタイプに対しても用いられる。
図2及び図3に示すように、第1実施形態に係るスペーサー4は、図2及び図3に示すように板材5を加工し、加工した板材5を、図4に示すように接合することによって構成される。板材5は、適度な弾性反発力を発揮するバネ鋼などの金属あるいは合成樹脂を素材として形成される。図示例では、外形輪郭が円形状の一枚の板材5が示されている。
以下説明上、いずれか一方向と、当該方向と直交する方向についてそれぞれ、上下方向と左右方向の文言を用いる。
円形状の板材5には、上下直径方向に、所定の幅寸法の帯状に基部7が設定される。基部7の左右幅方向両縁からは、基部7を基準とし、かつ基部7の表側もしくは裏側のいずれか一方に位置される配置で、基部7に対し斜め方向二方へ向かって、ガイド部6が延出形成される。斜め方向に延出されるガイド部6に対し、基部7は平坦面とされる。
ガイド部6は、金属製もしくは合成樹脂製であれば、基部7に対して折り曲げ加工することにより、合成樹脂製であれば、他の方法として、樹脂成形上、屈曲部を有するように成形加工することにより、形成される。ガイド部6は、基部7に対し、板材5を同一角度で折り曲げ、あるいは屈曲することで形成される。
加えて、板材5には、基部7の上下長さ方向上端部位置から下端部側に向かって所定長さで、かつ基部7から左右のガイド部6にわたる所定の一定の左右幅寸法で、ロックボルト1を挿入するための単一の凹部8が形成される。凹部8は、上端が板材5外方へ向かって開放され、下端が板材5部分で閉止されて形成される。凹部8の下端は、ロックボルト1の断面に合わせて、弧状に形成される。
凹部8は、板材5を折り曲げ加工する場合には、加工前に板材5に形成される。凹部8は、成形加工する場合には、板材5を成形する金型にセットされる型パーツにより、形成される。図示例にあっては、外形輪郭が円形の板材5が示されていて、円形の板材5を加工してスペーサー4を形成する場合、上下直径方向の上下端部付近のガイド部6が削孔3の内周面3aに当接可能となる。
板材5の形状や寸法は、折り曲げ加工や屈曲成形後の外形形態が削孔3内に収まる形態であればよい。従って、板材5の外形輪郭は、円形状に限らず、多角形状(不等辺多角形状を含む)の他、基部7が短軸上に位置される楕円形状やオーバル形状であってもよい。これら形状の方が、円形状の場合よりも、削孔3の内周面3aに当接させやすい。
板材5は図4に示すように、上記寸法や角度などが同一に加工された、同じ形態の2枚一組が接合され、これによりスペーサー4が構成される。2枚の板材5は、ガイド部4が異なる斜め方向に向くようにして、平坦面の基部7が、位置を合わせてかつ重ね合わせて接合される。
基部7の接合は、図示例のように、ボルト9とナット10で接合してもよいし、接着剤で接着して接合してもよい。また、金属製の場合にはかしめ加工や溶接接合など、合成樹脂製の場合には熱融着などで接合しても良い。
基部7が接合された2枚の板材5からなるスペーサー4には、重ね合わされた基部7の左右方向両縁から、当該基部7に対し斜め四方へ向かって延出形成される4つのガイド部6が備えられる。4つのガイド部6は、スペーサー4を上から見下ろすと、隣り合うもの同士の間に、4つの空間S1,S2を区画形成する。スペーサー4には、基部7に面してその表裏に、同一開き角度の第1空間S1が区画形成される。スペーサー4には、基部7に対してその左右に、同一開き角度の第2空間S2が区画形成される。開き角度を90°すれば、第1及び第2空間S1,S2の開き角度は同一となる。開き角度を90°以外として、第1及び第2空間S1,S2の開き角度を異ならせるようにしても良い。
各板材5に形成される同一寸法の凹部8は、基部7の表裏に面して位置する一対の第1空間S1を連通すると同時に、基部7の左右に位置する一対の第2空間S2を連通し、すなわち第1及び第2空間S1,S2すべてと連通される。
このように構成されたスペーサー4を基部7に面するA方向から見ると、図5に示すように、凹部8が、基部7の表裏の一対の第1空間S1を連通することにより、当該第1空間S1を区画するガイド部6同士が規定する第1ロックボルト受容溝R1が形成されることになる。同時に、スペーサー4を基部7左右のB方向から見ると、図6に示すように、凹部8が、基部7の左右の一対の第2空間S2を連通することにより、当該第2空間S2を区画するガイド部6同士が規定する第2ロックボルト受容溝R2が形成されることになる。
第1ロックボルト受容溝R1の溝幅は、基部7を含んだ幅で形成され、第2ロックボルト受容溝R2の溝幅は、基部7を含まない幅で形成されることから、第1ロックボルト受容溝R1は、第2ロックボルト受容溝R2よりも大きな溝幅寸法で形成される。
これら第1ロックボルト受容溝R1及び第2ロックボルト受容溝R2は、基部7の左右方向幅寸法、基部7に対して折り曲げ加工もしくは屈曲成形されるガイド部6の加工・成形による角度(開き角度)、並びに凹部8の左右方向幅寸法が、使用する2種類のロックボルト1A,1Bの外径に適合する所定の寸法及び角度に設定されることで、所定の寸法で形成される。基部7に対して斜め方向四方へ延出形成される4つのガイド部6の、基部7に対する角度は、同一である限り、適宜な角度に設定してよい。
これにより、単一のスペーサー4でありながら、第1ロックボルト受容溝R1に対し、大きな外径寸法のロックボルト1Aが、第2ロックボルト受容溝R2に対し、小さな外径寸法のロックボルト1Bが、選択的に取り付けられる。
図4〜図6に示すように、ガイド部6には、第1及び第2空間S1,S2それぞれに突出させて、第1ロックボルト受容溝R1あるいは第2ロックボルト受容溝R2に装着されたロックボルト1A,1Bをスペーサー4に係止保持するために、弾性変形自在な係止突起11,12が一体的に形成される。
図示例では、第1ロックボルト受容溝R1に取り付けられるロックボルト1Aを係止保持するために、凹部8に面するガイド部6の縁辺から凹部8内方へ迫り出して、撓み変形可能な第1係止突起11が形成されている。また、第2ロックボルト受容溝R2に取り付けられるロックボルト1Bを係止保持するために、第2空間S2に面するガイド部6の表面から第2空間S2内方へ迫り出して、撓み変形可能な第2係止突起12が形成されている。
これら係止突起11,12は、板材5が適度な弾性反発力を発揮する金属あるいは合成樹脂を素材として形成されることにより、第1または第2ロックボルト受容溝R1,R2に挿入されるロックボルト1A,1Bで弾性変形され、その後弾性復原されることによって、ロックボルト1A,1Bをロックボルト受容溝R1,R2内に係止保持する。
係止突起11,12については、撓み変形可能に弾性変形自在に形成される場合に限らず、例えば、ガイド部6に、凹部8内方へ凸状に突出する形態で形成するようにし、ガイド部6自体にその素材の特性により備えられる弾性復原力によって、ロックボルト1A,1Bを凹部8、すなわち受容溝R1,R2に係止保持するようにしても良い。あるいは、係止突起11,12を形成することなく、番線等で結束してロックボルト1A,1Bをスペーサー4に固定するようにしても良い。
また、ガイド部6には、削孔3内に充填されるセメント等のグラウト材の流通を確保するために、これを貫通して適宜に穴部13が形成され、また穴部13を仕切るサポート部14により、枠体状に形成してもよい。枠体状に形成されることにより、スペーサー4は、高剛性かつ軽量であると共に、削孔3への挿入作業の際、適度に面外方向に弾性変形可能とされて、挿入の融通性が高まるように構成される。
第1実施形態に係るロックボルト用スペーサー4の作用について説明する。スペーサー4をロックボルト1A,1Bに装着する際には、スペーサー4を、使用するロックボルト1A,1Bの外径寸法に適合するもしくは合致する第1及び第2ロックボルト受容溝R1,R2のいずれかがロックボルト1A,1Bに対向するようにして、ロックボルト1A,1Bの側方に配置し、そして、ロックボルト1A,1Bの長さ方向と交差する側方から装着する。以下、図1を参照して、大きな外径のロックボルト1Aを第1ロックボルト受容溝R1に装着した場合について説明する。小さな外径のロックボルト1Bを第2ロックボルト受容溝R2に装着する場合も同じである。
スペーサー4は、ロックボルト受容溝R1が開放された形態であるので、ロックボルト1Aの長さ方向の適宜位置に、側方から取り付けることができる。ロックボルト受容溝R1内に装着されたロックボルト1Aは、係止突起11により、スペーサー4に係止保持される。
スペーサー4が装着されたロックボルト1Aを削孔3内に挿入していくと、スペーサー4は、削孔3の内周面3aに当接されるガイド部6の外縁4aにより、ロックボルト1Aを削孔3の中心位置に位置出しして保持しつつ、削孔3の内周面3aに沿ってスライド移動されて削孔3内奥へ送り込まれ、これにより、ロックボルト1Aの削孔3内への挿入操作を案内することができる。
ロックボルト1Aの挿入を終えた削孔3内に注入されるグラウト材は、ガイド部6の穴部13によって円滑に流通され、これにより、ロックボルト1Aを削孔3内に確実に定着させることができる。
第1実施形態に係るロックボルト用スペーサー4にあっては、上下方向に帯状に形成された基部7と、基部7の左右方向両縁から、当該基部7に対し斜め方向四方へ向かって延出形成され、隣り合うもの同士の間に、基部7に面してその表裏に同一開き角度で形成される第1空間S1及び基部7に対してその左右に同一開き角度で形成される第2空間S2を区画すると共に、削孔3の内周面3aに外縁4aが当接可能な4つのガイド部6と、第1空間S1及び第2空間S2すべてと連通するように、基部7からガイド部6にわたり上下方向に一つ形成され、ロックボルト1A,1Bが挿入される凹部8とを備え、凹部8により、基部7の表裏の第1空間S1を区画するガイド部6同士が規定する大きな溝幅寸法の第1ロックボルト受容溝R1が形成されると同時に、基部7の左右の第2空間S2を区画するガイド部6同士が規定する小さな溝幅寸法の第2ロックボルト受容溝R2が形成されるので、単一のスペーサー4に大小二つのロックボルト受容溝R1,R2を形成でき、2種類の外径寸法のロックボルト1A,1Bに対応できて部品としての汎用性を高めることができ、これにより仕様数を半減できてコストダウンを図ることができる。
すなわち、ロックボルト1A,1Bやアンカーの多様な外径それぞれに対し、少なくとも2種類について対応することができ、スペーサー4の仕様数を削減できる。製品仕様が抑えられることにより、製造上、在庫管理上、そしてまた品質管理上も、コスト低減を達成することができる。
また、ロックボルト1A,1Bやアンカーに装着する際に、ガイド部6に対して平坦な基部7が見えるか見えないかで、目視で容易に見分けることができ、ロックボルト1A,1Bへの取付作業性を向上することができる。
第1ロックボルト受容溝R1あるいは第2ロックボルト受容溝R2に装着されたロックボルト1A,1Bを係止保持するために、ガイド部6に係止突起11,12が一体的に形成されるので、ロックボルト1A,1Bの削孔3への挿入作業中などに、スペーサー4がロックボルト1A,1Bから抜け出て脱落してしまうことを防止できる。
ガイド部6が、サポート部14で仕切られることで、穴部13を有する枠体状に形成されるので、グラウトの削孔3内への円滑な充填、スペーサー4の高剛性化・軽量化を確保できると共に、削孔3への挿入作業の際、スペーサー4が適度に面外方向に弾性変形して、挿入の融通性を向上することができる。
第1実施形態では、2枚の板材5を用い、各板材5にガイド部6を2つずつ形成する場合について説明したが、これに限らず、基部7の左右幅方向一側縁から、ガイド部6を1つずつ延出形成した4枚の板材5を、これらを図4のように組み合わせ、そしてこれら4枚の板材5の基部7を一括して接合して構成するようにしてもよい。さらには、ガイド部6を2つ形成した板材5と、ガイド部6を1つずつ形成した2枚の板材5の、3枚の板材5の組み合わせで構成してもよい。
第1実施形態に係るロックボルト用スペーサー4は、合成樹脂で成形する場合、2枚の板材5を接合して形成する場合に限らず、単一の基部7から斜め方向四方へ4つのガイド部6が延出形成される一体の樹脂成形品として形成することもできる。
図7及び図8には、上記第1実施形態の変形例が示されている。図7は、第1実施形態の図4に対応する平面図、図8は、上記実施形態の第2ロックボルト受容溝R2を示す、図6に対応するB方向矢視図である。
この変形例のスペーサー4は、少なくとも二枚の板材5が基部7で重ね合わせて接合される構成を前提として、基部7には、板材5間に挟み込んで、第2ロックボルト受容溝R2の溝幅寸法を拡大する増厚用部材15が設けられる。増厚用部材15としては、ライナーや隙間調整用シム等の金属部品や樹脂部品を用いればよい。
増厚用部材15により、単に基部7同士を重ね合わせて接合する場合に比して、2枚の板材5の基部7と基部7との間に厚みを確保することができ、基部7同士の接合箇所の厚さ寸法を変更して、これにより、第2ロックボルト受容溝R2の溝幅寸法を適宜に大きくすることができる。
従って、増厚用部材15を用いることにより、第2ロックボルト受容溝R2の溝幅寸法を飛躍的に多種多様に確保することができ、さらに汎用品化することができ、製品仕様数を減少させることができる。また、増厚用部材15が見えるか見えないかで、目視で容易に見分けることができ、ロックボルト1Bへの取付作業性を向上することができる。
図9〜図11には、本発明に係るロックボルト用スペーサーの第2実施形態が示されている。以下、第1実施形態と異なる点について説明する。図9は、第2実施形態に係るロックボルト用スペーサー4を示す平面図である。図10は、図9中、C方向矢視図である。図11は、図9中、D方向矢視図である。
第2実施形態に係るスペーサー4は、第1実施形態が円形状の板材5に帯状の基部7を備えることに代えて、上下直径方向全長にわたり、折曲角度θが90°以外の折曲部16が設定される。板材5を折曲加工したり、折曲成形することにより、斜め方向二方へ向かって、ガイド部6が延出形成される。
また、第1実施形態と同様に、板材5には、折曲部16及びその左右近傍にわたる範囲で、上下長さ方向上端部位置から下端部側に向かって所定長さで、かつ一定の左右幅寸法で、ロックボルト1A,1Bを挿入するための単一の凹部8が形成される。
板材5は図9に示すように、上記寸法や角度などが同一に加工された、同じ形態の2枚一組が接合され、これによりスペーサー4が構成される。2枚の板材5は、ガイド部6が異なる斜め方向に向くようにして、2つの折曲部16が、位置を合わせてかつ重ね合わせて接合される。2つの折曲部16が接合されることにより、斜め方向四方から4つのガイド部6が交差する交差部17が形成される。
折曲部16の接合は、接着剤で接着して接合される。金属製の場合にはかしめ加工や溶接接合など、合成樹脂製の場合には熱融着などで接合しても良い。
4つのガイド部6は、スペーサー4を上から見下ろすと、隣り合うもの同士の間に、交差部17回りに沿って、4つの空間S1,S2を区画形成する。スペーサー4には、折曲部16で形成された2つのガイド部6に挟まれて、同一開き角度の第2空間S2が区画形成される。スペーサー4には、異なる板材5,5の2つのガイド部6に挟まれて、同一開き角度の第1空間S1が区画形成される。これら第1空間S1及び第2空間S2は、交差部17回りに沿って交互に形成される。
また、折曲部16の折曲角度θが90°以外であるため、第1空間S1の開き角度と第2空間S2の開き角度とは異なる。言い換えれば、ガイド部6が交差する交差部17は、開き角度90°以外で斜め方向四方から4つのガイド部6が交差されて構成されている。図示例では、第1空間S1の開き角度が第2空間S2の開き角度よりも大きく設定されている。そして、各板材5に形成される同一寸法の凹部8は、一対の第1空間S1を連通すると同時に、一対の第2空間S2を連通し、すなわち第1及び第2空間S1,S2すべてと連通される。
このように構成されたスペーサー4を、開き角度が大きな第1空間S1側から見ると、図10に示すように、凹部8が、一対の第1空間S1を連通することにより、当該第1空間S1を区画するガイド部6同士の開き角度が規定する第1ロックボルト受容溝R1が形成されることになる。同時に、スペーサー4を、開き角度が小さい第2空間S2側から見ると、図11に示すように、凹部8が、一対の第2空間S2を連通することにより、当該第2空間S2を区画するガイド部6同士の開き角度が規定する第2ロックボルト受容溝R2が形成されることになる。
第1ロックボルト受容溝R1の溝幅は、開き角度が大きなガイド部6間に形成され、第2ロックボルト受容溝R2の溝幅は、開き角度が小さなガイド部6間に形成されることから、第1ロックボルト受容溝R1は、第2ロックボルト受容溝R2よりも大きな溝幅寸法で形成される。
これら第1ロックボルト受容溝R1及び第2ロックボルト受容溝R2は、折曲加工もしくは折曲成形されるガイド部6の加工・成形による角度θと、凹部8の左右方向幅寸法が、使用する2種類のロックボルト1A,1Bの外径に適合する所定の寸法及び角度に設定されることで、所定の寸法で形成される。
これにより、第2実施形態にあっても、単一のスペーサー4でありながら、第1ロックボルト受容溝R1に対し、大きな外径寸法のロックボルト1Aが、第2ロックボルト受容溝R2に対し、小さな外径寸法のロックボルト1Bが、選択的に取り付けられる。ガイド部6は第1実施形態と同様に、削孔3の内周面3aに外縁4aが当接可能に形成される。
以上説明した第2実施形態にあっても、上記実施形態と同様の作用効果を奏することはもちろんである。また、ロックボルト受容溝R1,R2の識別は、スペーサー4を上方または下方から見て、ガイド部6の開き角度を確認することで、目視で容易に見分けることができ、ロックボルト1A,1Bへの取付作業性を向上することができる。
第2実施形態に係るロックボルト用スペーサー4は、合成樹脂で成形する場合、2枚の板材5を接合して形成する場合に限らず、単一の交差部17から斜め方向四方へ4つのガイド部16が延出形成される一体の樹脂成形品として形成してもよい。
図12〜図16には、ガイド部6にロックボルト1A,1Bを係止突起11,12で係止保持する構成の変形例が示されている。図12〜図14には、上記第1実施形態に変形例を適用した場合が示され、図15及び図16には、上記第2実施形態に変形例を適用した場合が示されている。
図12は、第1実施形態に、変形例に係る構成を備えたロックボルト用スペーサーの平面図、図13は、図12中、A方向矢視図、図14は、図12中、B方向矢視図である。この変形例にあっても、板材5は、適度な弾性反発力を発揮するバネ鋼などの金属あるいは合成樹脂を素材として形成される。
本変形例では、第1及び第2係止突起11,12は、一例として下記のように形成されている。しかしながら、これら係止突起11,12の形態は、ロックボルト1A,1Bをロックボルト用スペーサー4に係止保持できる限り、どのような形態であってもよい。
第1係止突起11は、凹部8に面するガイド部6の縁辺に、互いに向かい合う配置で、当該ガイド部6に一体的に形成した凸部を、第1空間S1、すなわち第1ロックボルト受容溝R1へ向かって迫り出すように、ガイド部6に対して折曲することで形成される。
第2係止突起12は、小さな外径寸法のロックボルト1Bに対応させて、第1係止突起11の形成位置よりも下方において、凹部8に面するガイド部6の縁辺に、互いに向かい合う配置で、当該ガイド部6に一体的に形成した凸部を、第2空間S2、すなわち第2ロックボルト受容溝R2へ向かって迫り出すように、ガイド部6に対して折曲することで形成される。
これにより、第1係止突起11または第2係止突起12は、第1ロックボルト受容溝R1もしくは第2ロックボルト受容溝R2に挿入されたロックボルト1A,1Bをロックボルト用スペーサー4に係止保持するようになっている。
第1ロックボルト受容溝R1に、大きな外径寸法のロックボルト1Aを挿入する際には、図12に矢印Pで示すように、板材5の弾性復原力を利用して、基部7の両側に位置する一対の第2空間S2が共に窄まるように、ガイド部6を弾性変形させる。
ガイド部6に第2空間S2を窄ませる力を加えると、基部7及びその周辺の剛性が凹部8やその周辺よりも大きいので、図13に矢印Qで示すように、基部7及びその周辺を支点として、凹部8が拡開される。これにより、向かい合う一対の第1係止突起11同士の間の隙間が広げられ、ロックボルト1Aが第1ロックボルト受容溝R1に円滑に挿入される。
その後、第2空間S2を窄めるようにガイド部6に加えていた力と取り除くと、板材5が復原するので、第1ロックボルト受容溝R1に挿入したロックボルト1Aを第1係止突起11で強固に係止保持することができる。
第2ロックボルト受容溝12に図14に示すように、小さな外径寸法のロックボルト1Bを挿入する際には、上記と同様にして、一対の第1空間S1を窄ませるように、ガイド部6を弾性変形させ、ロックボルト1Bの挿入完了後に、第1空間S1を窄ませていた力を取り除けば、板材5の復原作用で、第2ロックボルト受容溝R2に挿入したロックボルト1Bを第2係止突起12で強固に係止保持することができる。
基部7とガイド部6との境界位置もしくはその周辺に、凹部8からスペーサーの外縁4aに向かう方向へスリット18を適宜に形成し、このスリット18により、ガイド部6を容易に弾性変形させることができるようにしてもよい。
さらに、スリット18を形成した場合には、図12に示した矢印P方向に力を加えて第1または第2空間S1,S2を窄めるようにガイド部6を弾性変形させなくても、図13に示した矢印Q方向に加力するだけでも、基部7等を支点としてガイド部6、ひいてはロックボルト用スペーサー4を弾性変形させることができて、これによって第1係止突起11同士または第2係止突起12同士の間の隙間を広げて、ロックボルト1A,1Bをロックボルト受容溝R1,R2に挿入することができる。
図15は、第2実施形態に、上記変形例に係る構成を備えたロックボルト用スペーサーの正面図、図16は、その側面図である。これら図に示したように、図12〜図14で説明した変形例は、第2実施形態に対しても同様に適用することができ、これにより第1実施形態に適用した場合と同様の作用効果を得ることができる。