以下に、本発明にかかるロックボルト用スペーサの好適な実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。図1〜図9には、本発明に係るロックボルト用スペーサの第1実施形態が示されている。図1は、第1実施形態に係るロックボルト用スペーサを示す斜視図、図2は、図1に示したロックボルト用スペーサの上面図、図3は、図1に示したロックボルト用スペーサの正面図、図4は、図1のロックボルト用スペーサを構成するボルト保持部分を示す斜視図、図5は、図4に示したボルト保持部分を構成する一方の分割ピースを示す斜視図、図6は、図4に示したボルト保持部分を構成する他方の分割ピースを示す斜視図、図7は、図1のロックボルト用スペーサが、節を有するロックボルトに装着された状態を示す斜視図、図8は、図7の要部拡大図、図9は、図1のロックボルト用スペーサが装着されたロックボルトと当該ロックボルト用スペーサの包囲体部分との位置関係を説明するための説明図である。
ロックボルト1は図7及び図8に示すように、一般周知のように、ネジ節鉄筋や異形鉄筋など、その長さ方向(以下、ボルト軸方向という)に多数の節1aを有し、節1aと節1aの間に節溝1bを有して形成される。ロックボルト1は例えば、地山等の法面に形成されたロックボルト挿入用の削孔(図示せず)内に挿入され、当該削孔内に充填されるグラウト材等で法面に定着される。
ロックボルト1の削孔内への挿入操作を案内すると共に、ロックボルトと削孔の内周面との間に間隔を確保するために、本発明に係るロックボルト用スペーサ2が用いられる。ロックボルト用スペーサ2は、削孔へ挿入可能な大きさで形成され、ロックボルト1に装着されて使用に供される。
図1〜図3、図7及び図8に示すように、第1実施形態に係るロックボルト用スペーサ2は、ロックボルト1を保持する機能を備えるボルト保持部分3と、削孔内に挿入されたロックボルト1と削孔の内周面との間に間隔を確保する、すなわち削孔内でグラウト材等に埋設されるロックボルト1の被り厚を確保する機能を備える包囲体部分4とを備えて構成される。
ボルト保持部分3と包囲体部分4は共に、ロックボルト1を保持し得、当該ロックボルト1の削孔内への挿入案内機能を確保し得る必要強度が得られ、かつ曲面加工や折り曲げ加工、打ち抜き加工等の板金加工が可能な肉薄な鋼製板材、例えばバネ鋼板で形成される。
ボルト保持部分3は、追って詳述するが、図4にも示すように、3次元立体構造(おおよそ筒状)のフレーム構造体であって、図示した斜め上方から見下ろすと、その上面3a及び下面3bが環状形態で形成される。ロックボルト用スペーサ2は、ロックボルト1をそのボルト軸X回りに回すことで、上面3a及び下面3bは、上下反対になったり、傾いたり、左右に向くこともある。
具体的には、ボルト保持部分3の当該上面3a及び下面3bは、放射状のスポーク部3cと、スポーク部3cを一連に連結する環状のリム部3dとで構成される。上面3aは、ほぼ板形態で形成される一方、下面3bには、その周縁からほぼ筒状の周側壁部3eが立ち上げ形成されて、ほぼ皿形態で形成される。
ボルト保持部分3の上面3aと下面3bとの間には、後述するロックボルト挿通部5が備えられる。このロックボルト挿通部5にロックボルト1を挿通可能とし、かつ後述する第1係合部6及び第2係合部7をロックボルト1に係合させるスリット部8を形成するために、ボルト保持部分3の上面3aと下面3bとは、一方の面積が他方の面積よりも小さく、かつ面積の小さい方が大きいものの領域の中に納まる関係、図示例では、上面3aまたは下面3bのいずれか一方がほぼ円形に形成され、他方は、この円形と同心で当該円形の領域に納まる楕円形で形成される。上面3aと下面3bの形状が異なることから、それを利用して、周側壁部3eにロックボルト1が挿通されるスリット部8が形成される。
包囲体部分4も追って詳述するが、帯板状に形成され、図面表記上、ボルト保持部分3をその上方及び下方から取り囲む環状形態に形成される。ボルト保持部分3の上面3a及び下面3b同様、包囲体部分4が取り囲む向きも変わり得る。本実施形態では、包囲体部分4には、帯板状の補助脚部9が一体的に接合して設けられる。
包囲体部分4と補助脚部9とは、ボルト保持部分3の上面3a上方及び下面3b下方それぞれにおいて、十字形状に組まれた3次元立体構造(おおよそ球面状)を構成するように、それらの最上部位置及び最下部位置で互いに交差する配置で接合される。
ボルト保持部分3及び補助脚部9が組み込まれた包囲体部分4は、別々の部品として形成しても良いし、一体的に形成しても良い。別々の部品として形成した場合には、これらボルト保持部分3と包囲体部分4とは互いに取り付け取り外し自在に構成される。
ボルト保持部分3には、これを貫通してロックボルト1が挿通される。ロックボルト1は、その節1aを介して、言い換えれば凸部である節1aと凹部である節溝1bを利用して、ボルト保持部分3に係合可能に挿通される。
ボルト保持部分3は上述したように、環状形態を呈する、おおよそ筒状の3次元立体構造で形成され、当該環状形態は、ボルト保持部分3に挿通されるロックボルト1のボルト軸Xを含む平面において現れるように形成される。すなわち、ボルト保持部分3は、ロックボルト1のボルト軸Xを含む平面において、環状形態に形成される。ボルト軸Xとは、軸体状のロックボルト1の断面中心を当該ロックボルト1の長さ方向に通る軸を言う。
図示によって説明すれば、ロックボルト1は、筒状3次元立体構造のボルト保持部分3の上面3aと下面3bとの間の周側壁部3eを貫通するように、ボルト保持部分3に挿通される。そのために、ボルト保持部分3には、ロックボルト1を挿通するためのロックボルト挿通部5が形成される。
ロックボルト挿通部5は、ボルト保持部分3に、ロックボルト1のボルト軸Xを含む平面において、ボルト軸方向に相対向する位置に位置させて、2つ一組で形成される。言い換えれば、真っ直ぐなロックボルト1が筒状のボルト保持部分3の周側壁部3eを、その一方側面からこれと向かい合う他方側面へ貫通される配置で、2つ一組のロックボルト挿通部5が形成される。
ロックボルト挿通部5は、筒状3次元立体構造のボルト保持部分3の周方向に間隔を隔てて複数、図示例では四組形成される。上述したロックボルト1のボルト軸Xを含む平面は、これら複数のロックボルト挿通部5について、共通とされる。すなわち、環状形態のボルト保持部分3における、ロックボルト1のボルト軸Xを含む平面は単一のものとして一義的に規定され、ボルト保持部分3に挿通されるいずれのロックボルト1も、当該同一の平面に含まれる。
そしてこれらロックボルト挿通部5は、ボルト保持部分3に係合可能に挿通される種々の外径寸法のロックボルト1個々に対応するように、図示例では4つの異なる外径寸法のロックボルト1に対応させて、個々に異なる寸法で形成される。
詳細には、大きな外径寸法のロックボルト1に対しては、それが係合可能(小さな外径寸法のロックボルト1は係合不能)なように、ロックボルト挿通部5は大きな寸法で形成され、小さな外径寸法のロックボルト1に対しても、それが係合可能(大きな外径寸法のロックボルト1は挿通不能)なように、ロックボルト挿通部5は小さな寸法で形成される。
ロックボルト挿通部5は、ボルト保持部分3の周側壁部3eの半周領域において、異なる寸法のものが配列される。ロックボルト挿通部5には、それら複数個のうちのいずれか1つに、1本のロックボルト1が挿通され、ロックボルト1は、ロックボルト用スペーサ2が備える環状形態の、本実施形態ではおおよそ筒状の3次元立体構造のボルト保持部分3に保持される。
ボルト保持部分3に備えられるロックボルト挿通部5個々は、図4〜図8に示すように、ボルト保持部分3に形成された上記スリット部8と上記第1係合部6及び第2係合部7とから構成される。第1係合部6と第2係合部7は、スリット部8を介して挿通されるロックボルト1の外回りに互いに間隔を隔てて、具体的には、第1係合部6はボルト保持部分3の上面3a側に、第2係合部7はボルト保持部分3の下面3b側に、ロックボルト1を挟んで互いに向かい合うように間隔を隔てて設けられる。
本実施形態では、ボルト保持部分3の上面3aが下面3bの領域に納まる形態であることから、第1係合部6と第2係合部7とは、ロックボルト1のボルト軸方向にも間隔を隔てて設けられる。
第1係合部6は、ボルト保持部分3の上面3aのリム部3dに、ロックボルト1に向かって下方に折り曲げることで形成された爪状であり、この第1係合部6は、ロックボルト1の節溝1bに挿入されて、節1aにその径方向外方一方側から係合される。第1係合部6は、四組のロックボルト挿通部5として8箇所に形成されるが、これら8箇所の第1係合部6は、これらを連続的につなげた形態で形成してもよい。
第2係合部7は、ボルト保持部分3の下面3bのリム部3dからロックボルト1に向かって上方に折り曲げることで形成された周側壁部3eに形成された切り欠き状であり、この第2係合部7も、ロックボルト1の節溝1bに挿入されて、節1aに対し、第1係合部6とは異なる径方向外方他方側から係合される。これにより、ロックボルト1はその節1aを介して、当該ロックボルト1周りにかつボルト軸方向に異なる位置で、ボルト保持部分3に係合された状態で挿通される。
本実施形態では、ボルト保持部分3はさらに、図4〜図6に示すように、これに挿通される複数のロックボルト1のボルト軸Xによって規定される当該ボルト軸Xを含む単一の平面もしくはこれとほぼ並行な平面で2つ割りされた一対の分割ピース3X,3Yで構成される。
言い換えれば、分割ピース3X,3Yは、周側壁部3eに配列される複数のロックボルト挿通部5すべてについて、これらを一括して分かつようにして形成される。具体的には、分割ピース3X,3Yはそれぞれ、板形態の上面3a側部分と、周側壁部3eを含む下面3b側部分とされる。
これら分割ピース3X,3Yには、図5及び図6に示すように、筒状3次元立体構造の周側壁部3eに形成された係合穴10と、上面3aのリム部3dに、下面3b側に向かって折り曲げることで形成され、係合穴10に係脱自在に係合される弾性変形可能な鈎状部11とが形成され、これら鈎状部11と係合穴10とを係合することにより、周側壁部3e上縁及び上面3aのリム部3d外縁を接合端3fとしてこれら分割ピース3X,3Yが互いに接合され、接合された分割ピース3X,3Yにより、ボルト保持部分3が構成される。
従って、ボルト保持部分3が分割ピース3X,3Yから構成されることを考慮した場合、第1係合部6は、一方の分割ピース3Xの接合端3fであるボルト保持部分3の上面3aのリム部3dに設けられ、第2係合部7は、他方の分割ピース3Yの接合端3fであるボルト保持部分3の周側壁部3eに設けられる。
そして、ロックボルト1は、2つ割りに開いた状態の分割ピース3X,3Yの間に位置させておくことで、これら一対の分割ピース3X,3Yをそれらの接合端3fで互いに接合してボルト保持部分3を構成するときに、当該ボルト保持部分3のロックボルト挿通部5に係合状態で挿通される。
本実施形態ではさらに、一対の分割ピース3X,3Y間に、ロックボルト挿通部5を開閉式とするように、これら分割ピース3X,3Y相互を結合保持する構成が備えられる。もちろん、上記鈎状部11と係合穴10の構成だけをボルト保持部分3の周方向に2つ以上備えて、一対の分割ピース3X,3Yをバラバラに分離できる組み立て式としても良い。
一方の分割ピース3Xを構成する板形態を呈する上面3aのリム部3d及び他方の分割ピース3Yを構成する皿形態を呈する下面3b側の周側壁部3eには、ヒンジ突起12がそれぞれ形成されると共に、これらヒンジ突起12相互を貫通してヒンジピン13が設けられ、これにより、分割ピース3X,3Y同士を互いに回動自在に連結して開閉式に接離可能とするヒンジ機構14が構成される。
この場合、上記係合穴10と上記鈎状部11とは、分割ピース3X,3Y同士を係脱可能に係止して、これら分割ピース3X,3Yを接合状態にロックする係止手段15として機能される。
次に、包囲体部分4について説明すると、当該帯板状の包囲体部分4は図1〜図3及び図7に示すように、ボルト保持部分3に挿通されるロックボルト1のボルト軸Xと直交する断面形態が削孔の内周面全周に沿う環状に形成される。また、包囲体部分4は、ロックボルト1のボルト軸Xが当該環状の断面形態の中心を含む中央領域に位置するように、ボルト軸X周りにロックボルト1の外周囲を取り囲むように配置される。
包囲体部分4は断面形態が環状に形成されるので、それは中心を有し、その中心にボルト軸Xが位置すれば、包囲体部分4の当該中心位置にロックボルト1が挿通されるが、それに限らず、ほぼ中心位置という意味で、中心を含む中央領域にロックボルト1が挿通される位置関係であればよい。
ボルト保持部分3には、複数のロックボルト挿通部5が形成され、それらのいずれかのロックボルト挿通部5に単一のロックボルト1が挿通されることに対応するため、包囲体部分4は、複数のロックボルト1のボルト軸Xと直交し得る幅の帯板状に形成される。
図9は、図1のロックボルト用スペーサ2が装着されたロックボルト1と包囲体部分4との位置関係を説明するための説明図であって、図9(A)は、4組のロックボルト挿通部5のうち、2組のロックボルト挿通部5を対象とした包囲体部分4の配置状態を説明する図、図9(B)は、他の2組のロックボルト挿通部5を対象とした包囲体部分4の配置状態を説明する図である。
図9(A)では、図示の関係でおおよそ左右方向に挿通される2種類のロックボルト1P,1Qのボルト軸XP,XQに対し、包囲体部分4が、それら双方に対して直交する断面位置SP,SQ(当該位置では包囲体部分4は断面円形、分割ピース3X,3Yの構成を備えた場合では断面半円形)を有する幅を備えることが示されている。
図9(B)でも、図示の関係でおおよそ上下方向に挿通される他の2種類のロックボルト1R,1Sのボルト軸XR,XSに対し、包囲体部分4のボルト保持部分3への設置位置を変えること、すなわち90°変えることで、包囲体部分4が、それら双方に対して直交する断面位置SR,SS(当該位置では包囲体部分4は断面円形、分割ピース3X,3Yの構成を備えた場合では断面半円形)を有する幅を備えることが示されている。
これにより、ボルト保持部分3に保持されるロックボルト1は、包囲体部分4によって、3次元立体構造のロックボルト用スペーサ2のほぼ中心位置を経過するように挿通される。
包囲体部分4はまた、図示しないけれども、削孔の内周面に摺接可能な寸法の環状形態に形成され、ロックボルト用スペーサ2は、その包囲体部分4が削孔の内周面に対して摺れ合うことが可能な状態で移動されることで、削孔内へ挿入される。従って、ロックボルト1は、削孔内への挿入が案内される際、ロックボルト用スペーサ2の中心位置に保持されることにより、削孔の中心軸である孔軸の位置に合わせて、削孔内へ挿入され得る。
包囲体部分4は、本実施形態にあっては、分割ピース3X,3Yに合わせて二つ割りにされ、環状形態が、ボルト保持部分3の上面3a側と下面3b側とでアーチ状形態とされて形成される。補助脚部9も、包囲体部分4と同様に、ボルト保持部分3の上面3a側と下面3b側とに分けて、アーチ状形態で形成される。
包囲体部分4は、アーチ状形態の弾性変形可能な補助脚部9の両端に形成した引っ掛け部16を、ボルト保持部分3の上面3a及び下面3bそれぞれに互いに向かい合う配置で設けた掛け止め部17に係脱自在に掛け止めすることにより、ボルト保持部分3に取り付け取り外し自在に設けられる。
掛け止め部17は図示例では、ボルト保持部分3の周方向に沿って90°間隔で4つ設けられ、これにより、補助脚部9及び包囲体部分4は90°位置を変えて、ボルト保持部分3に取り付けることができるようになっている。ボルト保持部分3に、補助脚部9を有する包囲体部分4を取り付けることにより、フレーム構造体で成る、ほぼ中空球体状の三次元立体構造のロックボルト用スペーサ2が構成される。
また、ロックボルト用スペーサ2は、これに挿通されたロックボルト1に対し、削孔へ充填されるグラウト材等が流れ込んでその周囲を埋め尽くすように、全体がロックボルト1周りに空隙を形成するフレーム構造体として構成される。すなわち、グラウト材等は、十字状形態の包囲体部分4及び補助脚部9、包囲体部分4に形成した流通孔18、スポーク部3cやリム部3d、スリット部8等を含むボルト保持部分3を通じて、ロックボルト用スペーサ2内部にスムーズに流入し得るようになっている。
次に、第1実施形態に係るロックボルト用スペーサ2の作用について説明する。ロックボルト1をロックボルト用スペーサ2に装着する際には、まず、包囲体部分4を取り外した状態で、ボルト保持部分3を構成する一対の分割ピース3X,3Yを、ヒンジ機構14を介して、2つ割りに開いた状態にする。これにより、すべてのロックボルト挿通部5も二つ割りとされる。
使用するロックボルト1を、その外径寸法に合致するいずれか1つのロックボルト挿通部5に配置する。配置する際には、ロックボルト1を一方の分割ピース、例えばボルト保持部分3の下面3bを備える分割ピース3Yに対し、当該ロックボルト1を下面3bと重なり合うように配置し、これにより、第2係合部7にロックボルト1の節溝1bを係合させるようにする。
次いで、ヒンジ機構14を介して一対の分割ピース3X,3Yを閉じるようにし、さらに、係合穴10に鈎状部11を係止して、分割ピース3X,3Yを接合状態とする。分割ピース3X,3Yを接合状態とすると、第1係合部6がロックボルト1の節溝1bに係合されると同時に、ボルト保持部分3のロックボルト挿通部5にロックボルト1が係合可能に挿通される。
次いで、挿通を完了したロックボルト1のボルト軸方向と直交する断面形態が環状となる向きで、包囲体部分4をボルト保持部分3に取り付ける。包囲体部分4を取り付ける際には、補助脚部9の引っ掛け部16を、ボルト保持部分3の掛け止め部17に掛け止めする。これにより、図7に示したように、節1aを有するロックボルト1に、ロックボルト挿入用の削孔へのロックボルト1の挿入を案内するためのロックボルト用スペーサ2が装着される。
ロックボルト1と包囲体部分4との向きが分かっている場合には、ボルト保持部分3にロックボルト1を挿通する前に予め、包囲体部分4を分割ピース3X,3Y、ひいてはボルト保持部分3に取り付けておいても良い。
ロックボルト1を地山等に施工する際には、ロックボルト用スペーサ2を装着したままで、ロックボルト1を削孔内方へ挿入していく。ロックボルト用スペーサ2により、削孔の孔軸位置に合うように、ロックボルト1の挿入操作が案内される。
ボルト保持部分3に挿通されたロックボルト1は、環状の包囲体部分4によって、そのボルト軸Xが包囲体部分4の中心もしくはその近辺に位置され、かつ当該ボルト軸X周りにその外周囲が取り囲まれると同時に、包囲体部分4が削孔の内周面に摺接可能であるので、第1に、ロックボルト1には、それより包囲体部分4まで、当該ロックボルト1の外周囲全周にわたって均等な被り厚を確保することができ、第2に、包囲体部分4が削孔の内周面全周と摺接する場合には、ロックボルト1の外周囲に、削孔内周面全周で均等な被り厚を確保することができる。
第2の場合には、削孔の孔軸とロックボルト1のボルト軸Xが一致した状態での挿入操作を確保することができる。
ロックボルト1の削孔への挿入操作が完了した後は、ロックボルト用スペーサ2を残したままで、削孔内にグラウト材等が充填され、このグラウト材等により、ロックボルト1が削孔内部に定着される。
フレーム構造体で成るロックボルト用スペーサ2には、上述したようにその各所に空隙が備えられていて、グラウト材等は空隙を介してロックボルト1の外周囲に流れ込むことができ、これにより、グラウト材等にその全周囲が接触した状態でロックボルト1を削孔中に埋設することができる。
以上説明した第1実施形態に係るロックボルト用スペーサ2にあっては、ロックボルト1がその節1aを介して係合可能に挿通されるボルト保持部分3と、ボルト保持部分3に挿通されるロックボルト1の外周囲を取り囲むと共に、削孔の内周面に摺接可能な包囲体部分4とを備え、ボルト保持部分3は、ロックボルト1のボルト軸Xを含む平面において、環状形態に形成され、ボルト保持部分3には、これに係合可能に挿通されるロックボルト1のボルト軸Xを含む平面におけるボルト軸方向に相対向する位置に位置させて、2つで一組のロックボルト挿通部5が、当該ボルト保持部分3の周方向に間隔を隔てて複数形成され、これらロックボルト挿通部5は、異なる外径寸法のロックボルト1それぞれに対応する異なる寸法で形成されるので、1つのロックボルト用スペーサ2を複数異なる外径寸法のロックボルト1に適用することができる。
ロックボルト挿通部5は、ボルト保持部分3に形成されたスリット部8と、ボルト保持部分3に、スリット部8に挿通されるロックボルト1周りに互いに間隔を隔てて形成された第1係合部6及び第2係合部7とから構成され、第1係合部6は、ロックボルト1の節溝1bにその径方向外方一方側から係合されると共に、第2係合部7は、ロックボルト1の節溝1bにその径方向外方他方側から係合されるので、削孔内への挿入を案内する際に、ロックボルト1がロックボルト用スペーサ2に対し強固に固定されてボルト軸方向に位置ずれすることを確実に防止でき、挿入操作を容易かつ的確に実施することができる。
ボルト保持部分3は、これに挿通されるロックボルト1のボルト軸Xを含む平面もしくはこれと並行な平面で二つ割りされた一対の分割ピース3X,3Yの接合端3fを互いに接合して構成されるので、ロックボルト1をロックボルト挿通部5に差し込むように挿通する煩雑さを避けて、ボルト保持部分3を割って開いた状態を利用して、ロックボルト1をボルト保持部分3に簡単に挿通することができる。
一対の分割ピース3X,3Yの一方の接合端3fには第1係合部6が設けられ、他方の分割ピース3Yの接合端3fには第2係合部7が設けられるので、分割ピース3X,3Yを接合する操作を利用して、第1係合部6及び第2係合部7をロックボルト1に係合させることができ、軽い操作でロックボルト1を分割ピース3X,3Y、ひいてはボルト保持部分3に係合させることができる。
一対の分割ピース3X,3Yの間には、これら分割ピース3X,3Yを結合してボルト保持部分3を構成するために、これら分割ピース3X,3Y同士を互いに回動自在に連結して接離可能とするヒンジ機構14と、これら分割ピース3X,3Y同士を係脱可能に係止する係止手段15とが設けられるので、一般的な容器の開閉蓋を開け閉めする要領で、スピーディかつ容易に軽快な操作でロックボルト1をロックボルト用スペーサ2に装着することができる。
図10〜図12には、本発明に係るロックボルト用スペーサの第2実施形態が示されている。図10は、第2実施形態に係るロックボルト用スペーサを示す正面図、図11は、図10に示したロックボルト用スペーサが、包囲体部分を一体的に備える分割ピースに二つ割りされた状態を示す正面図、図12は、図10のロックボルト用スペーサが、節を有するロックボルトに装着された状態を説明するための説明図である。
第2実施形態に係るロックボルト用スペーサ2は、ボルト保持部分3に包囲体部分4が一体的に形成されて、全体が中空球体状に形成され、各分割ピース3X,3Yはそれを2つ割りした中空半球状に形成される。ボルト保持部分3及び包囲体部分4は、上記第1実施形態と同様の機能を備え、同様の作用効果を奏する。分割ピース3X,3Yも、第1係合部6及び第2係合部7を備えていないことを除き、上記第1実施形態とほぼ同様に構成され、同様の作用効果を奏する。
図示例では、ロックボルト1のボルト軸Xは、中空球体状のロックボルト用スペーサ2の中心位置を含む平面に含まれる。第2実施形態では、ロックボルト挿通部5は、ボルト保持部分3に貫通して形成された穴19で構成される。第2実施形態では、ボルト保持部分3には、第1実施形態の上面及び下面に相当する部位は備えられていない。
穴19は、複数の異なる外径寸法のロックボルト1を挿入可能とするために、それらロックボルト1の外径寸法それぞれに対応する異なる穴径で形成される。ボルト保持部分3は、穴19であっても、その穴縁にロックボルト1の節1aが係合可能である。ボルト保持部分3は、ヒンジ機構14で開閉式に接離される一対の分割ピース3X,3Yを接合して構成され、分割ピース3X,3Yの接合端3fには、これら分割ピース3X,3Yが接合されることで穴19を形成する切り欠き20が形成される。
また、第2実施形態に係るロックボルト用スペーサ2には、中空球体状のその内部へのグラウト材等の充填を確保するために、適宜箇所に流通孔18が形成される。
第2実施形態に係るロックボルト用スペーサ2にあっては、ロックボルト挿通部5が、ボルト保持部分3に、これを貫通して形成された穴19であるので、容易に製作することができる。
各分割ピース3X,3Yの接合端3fそれぞれには、これら分割ピース3X,3Yが接合されることで穴19を形成する切り欠き20が形成されるので、切断加工のみで、ロックボルト挿通部5を簡単に作成することができる。
ボルト保持部分3に包囲体部分4を一体的に形成したので、これらの組み立てを行うことなく、ロックボルト用スペーサ2を形成できる。
ロックボルト用スペーサ2を中空球体状に形成したので、いずれのロックボルト挿通部5にロックボルト1を挿通しても、ロックボルト1のボルト軸Xと直交する断面形態が必ず、削孔の内周面全周に沿う環状の包囲体部分4を確保することができる。
その他の構成は、上記第1実施形態とほぼ同様である。このような第2実施形態にあっても、上記第1実施形態と同様の作用効果を奏することはもちろんである。
図13〜図16には、本発明に係るロックボルト用スペーサの第3実施形態が示されている。図13は、第3実施形態に係るロックボルト用スペーサを示す斜視図、図14は、図13に示したロックボルト用スペーサの正面図、図15は、図13のロックボルト用スペーサのボルト保持部分を構成する一方の分割ピースを示す斜視図、図16は、図13のロックボルト用スペーサのボルト保持部分を構成する他方の分割ピースを示す斜視図である。
第3実施形態に係るロックボルト用スペーサ2は、ボルト保持部分3を構成する分割ピース3X,3Yに関し、一対の分割ピース3X,3Yが共に、反転可能な中空筒体状に形成される。すなわち、分割ピース3X,3Yはそれぞれ、中空筒体状で形成され、当該中空筒体状の軸方向について、これら分割ピース3X,3Yは両端に、上述のロックボルト1のボルト軸Xを含む平面に対し反転可能な接合端3fを有する。反転可能とは、反転しても分割ピース3X,3Y同士の接合に変わりがないことを意味する。分割ピース3X,3Yは、中空筒体状の軸方向両端、図示に従えば上下高さ方向両端が接合端3fとされる。
各分割ピース3X,3Yには、それらの筒面に形成された上記係合穴10と、それらの筒面から互いに他方の分割ピース3Y,3Xの係合穴10位置に向かって突設され、係合穴10に係脱自在に係合される弾性変形可能な上記鈎状部11とが形成され、これら鈎状部11と係合穴10とを係合させることにより、中空筒体状の軸方向両端を接合端3fとして、これら分割ピース3X,3Yが互いに接合され、接合された分割ピース3X,3Yにより、中空筒状を呈するボルト保持部分3が構成される。
従って、第3実施形態に係るロックボルト用スペーサ2では、開閉式に操作するヒンジ機構等は備えられておらず、ボルト保持部分3は、鈎状部11を係合穴10へ差し込む方式で組み立てられる。ロックボルト挿通部5は、第2実施形態と同様に、穴19で構成される。従って、各分割ピース3X,3Yには、第2実施形態と同様に、それらの接合端3fに、これら分割ピース3X,3Yが接合されることで穴19を形成する切り欠き20が形成される。
第3実施形態の分割ピース3X,3Yには、中空筒体状の軸方向両端が接合端3fとされるので、当該軸方向両端それぞれに切り欠き20が形成される。そして、第3実施形態では、2つの接合端3fを有してそれらに切り欠き20を有する分割ピース3X,3Yを反転して接合することが可能なので、換言すれば、反転可能であることにより、ロックボルト1のボルト軸Xを含む平面が、中空筒体状の分割ピース3X,3Yの軸方向両端の2つの接合端3fに対応して、2つ備えられる。
このため、第3実施形態では、接合端3fが単一の分割ピース3X,3Yを用いる第1実施形態とは異なり、より数多くのロックボルト挿通部5を分割ピース3X,3Y、ひいてはボルト保持部分3に備えて、より多くの異なる外径寸法のロックボルト1に適用することができる。
言い換えれば、第3実施形態に係るロックボルト用スペーサ2であれば、同数のロックボルト挿通部5を備える場合、ボルト保持部分3の寸法を、第1実施形態よりも、よりコンパクトに形成することができる。
第3実施形態のボルト保持部分3には、第2実施形態と同様に、第1実施形態のボルト保持部分の上面及び下面は備えられていない。その他の構成は、上記第1実施形態とほぼ同様である。このような第3実施形態にあっても、上記第1実施形態と同様の作用効果を奏することはもちろんである。
第3実施形態で説明した反転可能方式は、上記第1実施形態に適用してもよいことはもちろんである。また、第1及び第2実施形態で説明したヒンジ機構14等による開閉方式は、各分割ピース3X,3Yの反転される接合端3fそれぞれにヒンジ突起12を設けると共に、ヒンジピン13を着脱自在として、第3実施形態に適用してもよいことはもちろんである。