本発明の一実施形態に係る温熱環境再現システム100について説明する。なお、下記の実施形態は、本発明の具体例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。下記の実施形態は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
(1)全体構成
温熱環境再現システム100は、空調対象空間Rの定常温度分布に関する温度分布データと、空調対象空間R内の人間の位置に関する人間分布データと、を生成する。また、温熱環境再現システム100は、生成した温度分布データおよび人間分布データに基づいて、空調対象空間R内の、人間の位置の変化および温度分布の変化を同時に認識可能な動画を生成する。
空調対象空間Rは、ここではオフィスとして使用される空間である。ただし、これに限定されるものではなく、空調対象空間Rは、商業施設、学校、ホテル、住居等として使用される空間であってもよい。
温熱環境再現システム100は、図1のように、赤外線センサユニット20と、コンピュータ30と、を有する。
赤外線センサユニット20は、空調対象空間Rに設置されている。コンピュータ30は、空調対象空間Rとは別の場所、例えば、空調対象空間Rの存在する建物内の中央管理室に設置されている。赤外線センサユニット20と、コンピュータ30とは、LAN(Local Area Network)等の通信ネットワーク10により通信可能に接続されている(図1参照)。通信ネットワーク10は、有線であっても、無線であってもよい。
なお、コンピュータ30は、空調対象空間Rの存在する建物以外の場所、例えば遠隔地にある管理センターに配置されてもよい。また、コンピュータ30は、空調対象空間R内に配置されてもよい。また、通信ネットワーク10は、LANである必要はなく、例えばインターネット等のWAN(Wide Area Network)でもよい。
赤外線センサユニット20は、空調対象空間Rの温度分布を測定して、複数の画素から構成される熱画像データを取得する。また、赤外線センサユニット20は、取得した熱画像データから空調対象空間Rに存在する人間の影響を取り除いて、空調対象空間Rの定常温度の分布を示す温度分布データを抽出する。また、赤外線センサユニット20は、取得した熱画像データから、空調対象空間Rに存在する人間の分布を示す人間分布データを抽出する。赤外線センサユニット20は、抽出した温度分布データおよび人間分布データを、通信ネットワーク10を介してコンピュータ30に送信する。
コンピュータ30は、赤外線センサユニット20が生成した温度分布データおよび人間分布データを受信し、後述する記憶部34に記憶する。コンピュータ30の後述する動画生成部35aは、記憶部34に記憶された温度分布データおよび人間分布データに基づいて、空調対象空間R内の、人間の位置の変化および温度分布の変化を同時に認識可能な動画を生成する。
図2は、空調対象空間Rの一例である。図2は、空調対象空間Rを上方から見た概略図である。空調対象空間Rは、平面視において、5m×5mの正方形の部屋である。図2では、空調対象空間Rの天井に取り付けられる赤外線センサユニット20および空調室内機90を、二点鎖線で描画している。
赤外線センサユニット20は、空調対象空間Rの天井の中央付近に取り付けられている(図2参照)。また、空調対象空間Rの天井の中央付近には、天井カセット型の空調室内機90が設置されている(図2参照)。空調室内機90は、図示しない空調室外機と冷媒配管により接続され、空調室外機と共に空調装置として機能する。空調室内機90は、四方に吹出口(図示せず)を有し、空気調和された空気を四方に吹き出し可能である。空調室内機90の各吹出口には風向を調整するためのフラップ(図示せず)が設けられている。各フラップは、他のフラップと独立して制御可能に構成されている。また、空調対象空間Rには、図示しない換気ダクトが設けられている。換気ダクトには図示しない換気ファンが設けられている。空調対象空間Rは、換気ファンが動作させられることで、換気ダクトにより換気可能に構成されている。オフィスとして用いられる空調対象空間Rでは、通常、複数の人間が働く。図2では、人間を丸印で描画している。空調対象空間Rには、図2における下方側に窓Wが配置されている。また、空調対象空間Rには、図2における右方側上方に扉Dが配置されている。
なお、図2は空調対象空間Rの一例であり、空調対象空間Rの広さや形状、空調対象空間Rに設置される機器の種類、台数や配置等は例示であり、これに限定されるものではない。赤外線センサユニット20の配置や台数も例示であり、これに限定されるものではない。赤外線センサユニット20は、空調対象空間R全体について温度分布データおよび人間分布データが得られるように、適切な台数が、適切な位置に配置されればよい。
(2)詳細構成
以下に、赤外線センサユニット20およびコンピュータ30について説明する。
(2−1)赤外線センサユニット
赤外線センサユニット20は、空調対象空間Rの温度分布を測定して複数の画素から構成される熱画像データを取得する。また、赤外線センサユニット20は、取得した熱画像データから空調対象空間Rの定常温度分布に関する温度分布データと、空調対象空間R内の人間の位置に関する人間分布データと、を抽出する。赤外線センサユニット20は、空調対象空間Rの天井の中央部に設置されている(図2参照)。
赤外線センサユニット20は、センサ部21と、ユニット処理装置22とを主に有する(図3参照)。
(2−1−1)センサ部
センサ部21は、取得部の一例である。センサ部21は、空調対象空間Rの温度分布を測定して複数の画素から構成される熱画像データを複数の時点において取得する。具体的には、センサ部21は、空調対象空間Rの温度分布を測定して、256画素から構成される熱画像データを、3秒毎に取得する。
センサ部21は、サーモパイル型の赤外線センサアレイを有する。具体的には、センサ部21は、16列×16列(256個)の赤外線の検出素子21a(サーモパイル)を有する(図3参照)。各検出素子21aは、センサ部21の図示しないレンズにより集光された赤外線を検出し、検出した赤外線の量に応じた電圧を出力する。赤外線センサユニット20は、センサ部21の図示しないレンズが下方を向くような姿勢で、天井に取り付けられている。センサ部21は、16列×16列の検出素子21aを用いて、平面視において5m×5mの空調対象空間Rを縦横にそれぞれ16分割した各領域について、検出した赤外線の量に応じた電圧を取得する。
センサ部21は、検出素子21aの出力するアナログの電圧データを、デジタルの温度データに変換する変換部21bを有する(図3参照)。変換部21bは、主に、CPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等のメモリと、を有する。変換部21bでは、CPUがメモリに記憶されているプログラムを実行することで、各検出素子21aから出力される電圧を温度に変換する処理を行う。変換には、メモリに記憶されている変換情報、例えば、電圧を温度に変換するための変換式や、電圧と温度とを関係付けた変換テーブル等が用いられる。変換部21bが256個の検出素子21aから出力される電圧の値を温度に変換することで、センサ部21は、16列×16列の画素から構成される(256画素から構成される)熱画像データを取得する。熱画像データの各画素は、温度の値を情報として有する。
(2−1−2)ユニット処理装置
ユニット処理装置22は、センサ部21の取得した熱画像データから、温度分布データおよび人間分布データを抽出する装置である。言い換えれば、ユニット処理装置22は、センサ部21の取得した熱画像データから、温度分布データおよび人間分布データを生成する装置である。熱画像データから抽出された温度分布データおよび人間分布データは、コンピュータ30に送信される。
ユニット処理装置22は、主に、CPUと、ROMやRAM等のメモリと、を有する。ユニット処理装置22では、CPUがメモリに記憶されているプログラムを実行することで、各種処理を実行する。ユニット処理装置22は、センサ部21と同一の筐体(図示せず)内に収容されている。
ユニット処理装置22は、機能部として、ユニット通信部23と、ユニット記憶部24と、ユニット処理部25と、を主に有する(図3参照)。
(2−1−2−1)ユニット通信部
ユニット通信部23は、ユニット処理装置22と通信ネットワーク10との接続を可能にする。ユニット処理装置22は、ユニット通信部23を介して、コンピュータ30と通信を行う。
(2−1−2−2)ユニット記憶部
ユニット記憶部24には、ユニット処理部25が実行するためのプログラムが記憶されている。また、ユニット記憶部24には、後述するユニット処理部25が温度分布データや人間分布データを生成するために用いる、センサ部21により取得された熱画像データが記憶される。
(2−1−2−3)ユニット処理部
ユニット処理部25は、ユニット記憶部24に記憶されているプログラムを実行することで、赤外線センサユニット20の各部を制御する。
また、ユニット処理部25は、ユニット記憶部24に記憶されているプログラムを実行することで、センサ部21により取得された熱画像データから、空調対象空間Rに存在する人間の影響を取り除いて、空調対象空間Rの定常温度分布を示す温度分布データを抽出する。言い換えれば、ユニット処理部25は、センサ部21により取得された熱画像データから、空調対象空間Rに存在する人間の影響を取り除いた、空調対象空間Rの定常温度分布を示す温度分布データを生成する。
また、ユニット処理部25は、ユニット記憶部24に記憶されているプログラムを実行することで、センサ部21により取得された熱画像データから、空調対象空間R内の人間の位置に関する人間分布データを抽出する。言い換えれば、ユニット処理部25は、センサ部21により取得された熱画像データから、空調対象空間R内の人間の位置に関する人間分布データを生成する。
ユニット処理部25は、温度分布データおよび人間分布データの抽出に関連するサブ機能部として、温度分布データ抽出部25aと、人間分布データ抽出部25bと、を主に有する(図3参照)。
(2−1−2−3−1)温度分布データ抽出部
温度分布データ抽出部25aは、ユニット記憶部24に記憶されている熱画像データから、温度分布データを抽出する処理を主に実行する。温度分布データ抽出部25aは、熱画像データに含まれる温度ピークを示す画素を、人間の影響を示す画素と判断し、人間の影響を示す画素の値を排除することで、人間の影響を取り除く。
なお、ここでは、熱画像データに含まれる温度ピークを示す画素には、時間的な温度ピークを示す画素と、空間的な温度ピークを示す画素と、の両方を含む。
時間的な温度ピークを示す画素とは、複数の時点において取得された複数の熱画像データについて、空調対象空間Rの同じ位置(領域)を表す画素の温度の値を経時的に観察した場合に、一時的に温度が上昇している画素を意味する。
空間的な温度ピークを示す画素とは、1の熱画像データにおいて、温度の値が周辺の画素に比べ局所的に上昇している画素を意味する。
温度分布データ抽出部25aが実行する、熱画像データからの温度分布データの抽出処理については後述する。
(2−1−2−3−2)人間分布データ抽出部
人間分布データ抽出部25bは、ユニット記憶部24に記憶されている熱画像データからの、人間分布データの抽出処理を主に実行する。
人間分布データ抽出部25bは、人間の温度が、空調対象空間R内の空気の温度よりも相対的に高く現れる事を利用して、熱画像データから、空調対象空間Rに存在する人間の分布を示す人間分布データを抽出する。例えば、具体的には、特許文献1(特開平6−160507号公報)に記載の方法を利用することで、熱画像データから人間の位置を把握し、人間分布データを抽出する(人間分布データを生成する)ことができる。ただし、熱画像データから人間分布データを抽出する方法は、特許文献1(特開平6−160507号公報)に記載の方法に限定されるものではなく、他の方法が用いられてもよい。
(2−2)コンピュータ
コンピュータ30は、赤外線センサユニット20により生成された温度分布データおよび人間分布データを受信し、後述する記憶部34(図3参照)に蓄積して記憶する。また、コンピュータ30の後述する処理部35(図3参照)は、記憶部34に記憶された温度分布データおよび人間分布データを用いて、空調対象空間R内の、人間の位置の変化および温度分布の変化を同時に認識可能な動画を生成する。また、コンピュータ30は、生成した動画を、後述する出力部33(図3参照)に提示する。
コンピュータ30は、主に、CPU、ROMやRAM等のメモリ、HDD(Hard Disc Drive)等の補助記憶装置、および入出力デバイスを有する。
コンピュータ30は、機能部として、通信部31、入力部32、出力部33、記憶部34、および処理部35を主に有する(図3参照)。
(2−2−1)通信部
通信部31は、コンピュータ30と通信ネットワーク10との接続を可能にする。コンピュータ30は、通信部31を介して、赤外線センサユニット20と通信を行う。
(2−2−2)入力部
入力部32は、主としてキーボード、マウス等を有する。入力部32は、温熱環境再現システム100のユーザ等から、各種指令や各種情報を受け付ける。
入力部32は、後述する処理部35の動画生成部35aに対する動画生成要求を、動画の作成対象期間(以後、特定期間と呼ぶ)の指定と共に受け付ける。なお、特定期間は、動画生成要求の受付時より過去の期間であって、記憶部34の後述する温度分布データ記憶領域34aおよび人間分布データ記憶領域34bに、それぞれ温度分布データおよび人間分布データが記憶されている範囲内の期間である。例えば、特定期間は、空調対象空間Rの使用者からの温熱環境に関する苦情の発生した時刻を含む期間である。例えば、特定期間は、温熱環境に関する苦情の発生した時刻の前後30分を含む期間である。
(2−2−3)出力部
出力部33は、主としてディスプレイを有する。出力部33は、提示部の一例である。出力部33には、後述する処理部35により生成された動画に基づいた温度環境情報が表示される。ここでは、出力部33には、後述する動画生成部35aにより生成された、特定期間における、空調対象空間R内の、人間の位置の変化および温度分布の変化を同時に認識可能な動画が提示される。ただし、動画に基づいた温度環境情報は、動画そのものである必要はない。
(2−2−4)記憶部
記憶部34は、ROMおよびRAM等のメモリや、HDD等の補助記憶装置から構成されている。
記憶部34には、処理部35が実行するためのプログラムが記憶されている。
また、記憶部34には、各種情報が記憶されている。記憶部34は、情報を記憶する領域として、温度分布データ記憶領域34aと、人間分布データ記憶領域34bと、空間情報記憶領域34cと、動画生成用画像記憶領域34dと、を有する。
(2−2−4−1)温度分布データ記憶領域
温度分布データ記憶領域34aには、赤外線センサユニット20から定期的に(ここでは1分毎に)送信されてくる、空調対象空間R内の温度分布に関する温度分布データが、時系列の情報として蓄積して記憶される。
(2−2−4−2)人間分布データ記憶領域
人間分布データ記憶領域34bには、赤外線センサユニット20から定期的に(ここでは1分毎に)送信されてくる、空調対象空間R内の人間の位置に関する人間分布データが、時系列の情報として蓄積して記憶される。
(2−2−4−3)空間情報記憶領域
空間情報記憶領域34cには、空調対象空間Rに関する各種情報が記憶されている。
空間情報記憶領域34cには、例えば、温熱環境再現システム100の導入時に、入力部32を介して入力された空調対象空間Rに関する各種情報が記憶される。
空間情報記憶領域34cに記憶される空調対象空間Rに関する各種情報には、例えば、空調対象空間Rの仕様に関する情報が含まれる。空調対象空間Rの仕様に関する情報には、空調対象空間Rが存在する建物の所在地、建設年、建物構造等に関する情報や、空調対象空間Rの面積や用途等の情報等を含む。また、空調対象空間Rの仕様に関する情報には、空調対象空間Rの平面図も含まれる。また、空調対象空間Rに関する各種情報には、空調対象空間R内の、窓Wや扉Dの位置や、仕様に関する情報が含まれる。
また、空間情報記憶領域34cに記憶される空調対象空間Rに関する各種情報には、例えば、空調対象空間Rで使用される機器の仕様に関する情報が含まれる。なお、ここでは、空調対象空間Rで使用される機器は、空調対象空間Rのために用いられる機器を意味し、必ずしも空調対象空間R内に設置されている機器である必要はない。空調対象空間Rで使用される機器には、例えば、空調対象空間Rの暖房および冷房を行う空調装置を含む。空調対象空間Rで使用される機器の仕様には、例えば、空調装置の容量(能力)、型式等の情報を含む。
また、空間情報記憶領域34cに記憶される空調対象空間Rに関する各種情報には、例えば、空調対象空間Rの定員(空調対象空間Rにいることが想定される人数)に関する情報が含まれる。
なお、ここで示した空調対象空間Rに関する情報は例示であって、これに限定されるものではない。例えば、空間情報記憶領域34cには、上記以外の情報が記憶されていてもよく、上記の情報の一部が記憶されていなくてもよい。
(2−2−4−4)動画生成用画像記憶領域
動画生成用画像記憶領域34dには、後述する動画生成部35aにより生成された、特定期間の動画(特定期間の動画を構成する、時系列の複数の画像)が記憶される。出力部33は、動画生成用画像記憶領域34dに記憶されている画像を、時間順に次々と表示することで、特定期間の動画を提示する。
(2−2−5)処理部
処理部35は、記憶部34に記憶されているプログラムを実行することで、各種処理を実行する。
処理部35は、動画生成に関するサブ機能部として、動画生成部35aを有する。動画生成部35aは、入力部32が、特定期間の指定と共に、動画生成要求の入力を受け付けると、特定期間における、空調対象空間R内の、人間の位置の変化および温度分布の変化を、同時に認識可能な動画を生成する。
具体的には、動画生成部35aは、温度分布データ記憶領域34aおよび人間分布データ記憶領域34bにそれぞれ記憶されている、特定期間における温度分布データおよび人間分布データに基づいて、特定期間における、空調対象空間R内の、人間の位置の変化および温度分布の変化を、同時に認識可能な動画を生成する。
(3)赤外線センサユニットの動作
赤外線センサユニット20の動作について説明する。
赤外線センサユニット20のセンサ部21は、複数の時点において(ここでは3秒毎に)熱画像データを取得する。赤外線センサユニット20のユニット処理装置22のユニット処理部25は、所定時間毎に(ここでは1分毎に)、複数の熱画像データから、温度分布データを抽出する(温度分布データを生成する)。また、ユニット処理部25は、所定時間毎に(ここでは1分毎に)、熱画像データから、人間分布データを抽出する(人間分布データを生成する)。赤外線センサユニット20は、所定時間毎に(ここでは1分毎に)、ユニット通信部23を介して、コンピュータ30に温度分布データおよび人間分布データを送信する。
なお、コンピュータ30は、コンピュータ30が1分毎に温度分布データおよび人間分布データを受信すると、記憶部34の温度分布データ記憶領域34aおよび人間分布データ記憶領域34bに、これらを蓄積して記憶する。
なお、ここで示したセンサ部21の熱画像データの取得頻度や、ユニット処理部25の温度分布データの生成頻度や、赤外線センサユニット20の温度分布データおよび人間分布データの送信頻度は、例示であり、これに限定されるものではない。
赤外線センサユニット20の具体的な動作について、図4のフローチャートを用いて説明する。
赤外線センサユニット20の動作の制御では、後述するように、2つの時間カウンタT1、T2が所定時間をカウントしたか否かにより、所定の動作を実行するか否かが判断される。赤外線センサユニット20に電源が投入されると、ステップS0では、0にリセットされている時間カウンタT1、T2のカウントが開始される。
ステップS1では、センサ部21が熱画像データを取得する。センサ部21により取得された熱画像データは、その熱画像データの取得時刻と共に、ユニット処理装置22のユニット記憶部24に記憶される。
図5は、センサ部21により取得される熱画像データの一例である。図5は、図2に示した空調対象空間R(人間が図2に丸印で描画されている位置にいる空調対象空間R)の温度分布を測定して取得された熱画像データである。図5は、暖房時に空調対象空間Rの温度分布を測定することで得られる熱画像データの一例である。
図5は、空調対象空間Rに対して得られる熱画像データに、温度の異なる画素が存在することを示すための図であり、ここではハッチングの種類により、相対的な温度の分布を描画している。実際には、熱画像データの各画素は、温度の値を情報として有している。図5では、温度が相対的に高い画素を、ドットを付して描画している。ここでは、ドットの密度が高い画素ほど、その画素の温度が比較的高いことを意味している。また、図5では、温度が相対的に低い画素を、斜線を付して描画している。ここでは、斜線の間隔が狭い画素ほど、その画素の温度が比較的低いことを意味している。ドットも斜線も付されていない画素は、相対的に中間的な温度であることを意味している。図5では、人間がいる位置に対応する画素、および、その画素に隣接する画素に、温度が相対的に高いことを示すドットが付されている。また、空調対象空間Rに設けられた窓Wの周辺に対応する画素に、温度が相対的に低いことを示す斜線が付されている。
ステップS2では、時間カウンタT2の値が1分であるか否かが判定される。つまり、ステップS2では、0にリセットされた時間カウンタT2がカウントを開始してから、1分が経過したか否かが判定される。ステップS2で、時間カウンタT2の値が1分であると判定されるとステップS5およびステップS6に進む。一方、ステップS2で、時間カウンタT2の値が1分ではない(1分に達していない)と判定されると、ステップS3に進む。
ステップS3では、時間カウンタT1の値が3秒であるか否かが判定される。つまり、ステップS3では、0にリセットされた時間カウンタT1がカウントを開始してから、3秒が経過したか否かが判定される。ステップS3は、時間カウンタT1の値が3秒であると判定されるまで繰り返し実行される。ステップS3で、時間カウンタT1の値が3秒であると判定されると、ステップS4に進む。
ステップS4では、時間カウンタT1の値が0にリセットされ、再度カウントを開始する。その後、ステップS1へと戻る。
ステップS5では、時間カウンタT1およびT2の値が0にリセットされ、再度カウントを開始する。その後、ステップS1へと戻る。
ステップS6では、温度分布データおよび人間分布データの生成処理のため、ユニット記憶部24に記憶されている熱画像データが読み出される。具体的には、ユニット記憶部24に記憶されている熱画像データのうち最も古い情報から順に、1分間分の熱画像データが読み出される。上記のように、センサ部21は3秒毎に熱画像データを取得しているため、ステップS6では、20個の(複数の時点における)熱画像データがユニット記憶部24から読み出される。
なお、ステップS6の処理と、後述するステップS7〜ステップS11の処理とは、ステップS1〜ステップS4の処理と独立して実行される。つまり、ステップS6〜ステップS11の処理が行われている間にも、センサ部21により熱画像データが取得される。
ステップS6の終了後、ステップS7およびステップS9へと進む。ステップS7およびステップS8と、ステップS9と、は並行して実行される。
ステップS7およびステップS8では、熱画像データから、空調対象空間Rに存在する人間の影響を取り除いて、空調対象空間Rの定常温度の分布を示す温度分布データを抽出する処理が行われる。
まず、ステップS7では、温度分布データ抽出部25aは、ステップS6でユニット記憶部24から読み出された熱画像データに含まれる時間的な温度ピークを示す画素を、人間の影響を示す画素と判断し、人間の影響を示す画素の値を排除することで、人間の影響を取り除く。具体的には、ステップS7では、温度分布データ抽出部25aは、時間ピーク排除熱画像データ生成処理を実行する。
温度分布データ抽出部25aが実行する時間ピーク排除熱画像データ生成処理について、具体的に説明する。
温度分布データ抽出部25aは、ユニット記憶部24から読み出された、所定期間に(1分間に)、複数の時点において(3秒毎に)取得された熱画像データの、各画素の値(各画素の温度の値)の時系列的な最小値を、各画素の所定期間における温度を表す値とする時間ピーク排除熱画像データを生成する。
図6を用いて、時間ピーク排除熱画像データの生成処理について具体的に説明する。なお、各熱画像データは、上記のように256画素の画像データであるが、図6では、その内の1つの画素のみに着目している。
温度分布データ抽出部25aは、ステップS6でユニット記憶部24から読み出された、全ての(20個の)熱画像データの、空調対象空間Rの同じ位置(領域)を示す画素について、温度の値を把握する。例えば、温度分布データ抽出部25aは、図6の上段のように、空調対象空間Rの同じ位置を示す画素の、20個の温度の値(25.1,25.1,28.1,25.0,・・・25.0)を把握する。そして、温度分布データ抽出部25aは、20個の温度の値の比較を行い、図6の下段のように、最小値(ここでは25.0)を把握する。温度分布データ抽出部25aは、このような処理を256画素全てについて行うことで、各画素の最小値を把握し、その最小値を各画素の温度の値とする1の熱画像データを生成する。このようにして生成される熱画像データを、時間ピーク排除熱画像データと呼ぶ。
空調対象空間R内を人間が移動した場合、センサ部21により3秒毎に取得される複数の熱画像データの、人間が通った進路上の位置に対応する画素には、温度の値が一時的に高温になる(時間的に温度ピークを示す)画素が含まれる場合がある。ここでは、温度分布データ抽出部25aが、時間ピーク排除熱画像データの生成処理を行うことで、一時的な温度ピークを(例えば、図6であれば、上段の左から3番目に描画された時点で見られる28.1℃という温度の一時的な上昇)を排除できる。そのため、温度分布データ抽出部25aが、時間ピーク排除熱画像データの生成処理を行うことで、人間の影響を取り除いた、より具体的には、特に空調対象空間R内を移動する人間の影響を取り除いた温度分布データを抽出することが可能となる。
ステップS7で時間ピーク排除熱画像データが生成された後、ステップS8へと進む。
ステップS8では、温度分布データ抽出部25aは、熱画像データに含まれる空間的な温度ピークを示す画素を、人間の影響を示す画素と判断し、人間の影響を示す画素の値を排除することで、人間の影響を取り除く。具体的には、ステップS8では、温度分布データ抽出部25aは、ステップS7で生成された時間ピーク排除熱画像データに含まれる空間的な温度ピークを示す画素を、人間の影響を示す画素と判断し、人間の影響を示す画素の値を排除することで、人間の影響を取り除く。より具体的には、ステップS8では、温度分布データ抽出部25aは、空間ピーク排除熱画像データ生成処理を実行する。
温度分布データ抽出部25aが実行する空間ピーク排除熱画像データ生成処理について、具体的に説明する。
まず、温度分布データ抽出部25aは、ステップS7で熱画像データを基に生成された時間ピーク排除熱画像データを構成する16列×16列(256個)の画素を、近接する複数の画素からなる区画に区分けする処理を行う。例えば、温度分布データ抽出部25aは、ステップS7で取得された時間ピーク排除熱画像データの16列×16列の画素を、4列×4列の16個の画素を1つの区画として、16個の区画に区分けする。(図7参照)。
次に、温度分布データ抽出部25aは、各区画に含まれる画素の値(温度の値)の最小値を、各区画に含まれる画素の温度を表す値とする、空間ピーク排除熱画像データを生成する。
図8を用いて、空間ピーク排除熱画像データの生成処理について具体的に説明する。なお、時間ピーク排除熱画像データは、温度分布データ抽出部25aにより図7のように16個の区画に区分けされるが、図8では、その内の1つの区画のみに着目している。
温度分布データ抽出部25aは、時間ピーク排除熱画像データの1つの区画に含まれる16個の画素について、温度の値を把握する。例えば、温度分布データ抽出部25aは、図8の上段のように、区画内の16個の画素の温度の値(25.0,25.2,25.0,25.0,25.1,28.1,26.2,・・・)を把握する。そして、温度分布データ抽出部25aは、16個の温度の値の比較を行い、図8の下段のように、最小値(ここでは25.0)をこの区画の温度の値(この区画に含まれる画素の温度の値)として把握する。温度分布データ抽出部25aは、このような処理を全ての区画(16区画)について行う。そして、温度分布データ抽出部25aは、全ての区画の温度を把握することで、4列×4列の区画で構成される、1の空間ピーク排除熱画像データを生成する。この空間ピーク排除熱画像データが、熱画像データから抽出される温度分布データである。
所定時間(ここでは1分間)、空調対象空間R内のある位置(熱画像データのある画素に対応する位置)に人間が留まっている場合、例えば人間が椅子に座って作業をしている場合を考える。この場合、時間ピーク排除熱画像データには、人間の位置に対応する画素に(場合によっては、更にその画素に近接する画素に)、周辺の画素に比べ局所的に温度の値が大きな(空間的な温度ピークを示す)画素が現れる。ここでは、温度分布データ抽出部25aが、空間ピーク排除熱画像データの生成処理を行うことで、空間的な温度ピーク(例えば、図8の上段の例であれば、中央部左上側の28.1℃という周辺の温度に対して局所的に大きな値)を排除できる。そのため、温度分布データ抽出部25aが、空間ピーク排除熱画像データの生成処理を行うことで、人間の影響を取り除いた、より具体的には、特に空調対象空間R内の同じ位置で所定時間(ここでは1分間)静止している人間の影響を取り除いた温度分布データを抽出できる。
図9は、温度分布データ抽出部25aにより生成される空間ピーク排除熱画像データ(温度分布データ抽出部25aにより抽出された温度分布データ)の一例である。なお、温度分布データでは、各区画が温度の値を情報として有している。図9では、空調対象空間Rの窓Wに隣接する位置に、相対的に温度が低い区画が存在する。温度分布データからは、人間の影響が取り除かれているため、温度分布データには、人間の存在を表す相対的に温度が高い区画は存在しない(図9参照)。
ステップS9では、人間分布データ抽出部25bが、ステップS6でユニット記憶部24から読み出された20個の熱画像データのそれぞれについて、人間分布データの抽出処理を実行する。具体的には、人間分布データ抽出部25bは、人間の温度が、空調対象空間Rの空気の温度よりも相対的に高く現れる事を利用して、各熱画像データから、空調対象空間Rに存在する人間の位置を特定し、人間の分布を示す人間分布データを抽出する。その結果、人間分布データ抽出部25bは、20個の(3秒毎の)人間分布データを生成する。
図10は、人間分布データ抽出部25bにより生成される人間分布データの一例である。図10は、図2に示した空調対象空間Rの(人間が図2に丸印で描画されている位置にいる場合の)、人間分布データを表している。斜線を示した画素が人間の存在を示す画素である。なお、人間分布データには、温度の情報は含まれていない。
ステップS10では、ユニット処理部25は、ユニット通信部23を介して、ステップS8で抽出された空間ピーク排除熱画像データを、空調対象空間Rの定常温度の分布を示す温度分布データとしてコンピュータ30に送信する。なお、コンピュータ30に対して送信される温度分布データは、その温度分布データの取得時刻と関連付けられた情報である。言い換えれば、コンピュータ30に対して送信される温度分布データは、その温度分布データの取得時刻の情報を含むデータである。なお、温度分布データの取得時刻は、例えば、その温度分布データを抽出するために用いられた複数の熱画像データの中で、最先に取得された熱画像データの取得時刻と定められる。コンピュータ30は、コンピュータ30が受信した温度分布データを、時系列の温度分布データとして、記憶部34の温度分布データ記憶領域34aに記憶する。
また、ステップS10では、ユニット処理部25は、ユニット通信部23を介して、ステップS9で抽出された複数の(20個の)人間分布データを、コンピュータ30に送信する。なお、コンピュータ30に対して送信される各人間分布データは、その人間分布データの取得時刻と関連付けられた情報である。言い換えれば、コンピュータ30に対して送信される人間分布データは、その人間分布データの取得時刻に関する情報を含むデータである。なお、人間分布データの取得時刻は、例えば、各人間分布データを抽出するために用いられた熱画像データの取得時刻と定められる。コンピュータ30は、コンピュータ30が受信した複数の人間分布データを、時系列の人間分布データとして、記憶部34の人間分布データ記憶領域34bに記憶する。
なお、ユニット処理装置22から送信され、記憶部34に記憶される温度分布データおよび人間分布データは、データ圧縮されている。データ圧縮されることで、ユニット処理装置22からコンピュータ30へのデータの送信時間が短縮される。また、データが記憶される記憶部34の記憶容量も抑制することができる。
その後、ステップS11では、温度分布データおよび人間分布データの抽出処理が終了した熱画像データが、ユニット記憶部24から消去される。
ステップS6〜ステップS11の処理は、再び時間カウンタT2が1分になったとステップS2で判定された時に実行される。
なお、ここで説明した赤外線ユニットの動作は、赤外線センサユニットの動作の一例であって、これに限定されるものではない。
例えば、ここでは、ステップS7およびステップS8と、ステップS9と、は並行して実行されるが、これに限定されるものではなく、ステップS7およびステップS8の実行後にステップS9が実行されてもよい。
また、例えば、ステップS9は、1分経過後に実行される必要はなく、センサ部21が熱画像データを取得するたびに人間分布データが生成されてもよい。さらに、この場合には、人間分布データは、ステップS10でまとめてコンピュータ30に送信される代わりに、人間分布データが生成されるたびにコンピュータ30に送信されるように構成されてもよい。
また、例えば、ユニット記憶部24の熱画像データは、ステップS11で消去されなくてもよく、ユニット記憶部24に記憶される熱画像データの量が、ユニット記憶部24の記憶容量を超過する場合に、最先の熱画像データから順に消去されるように構成されてもよい。
(4)コンピュータによる動画生成処理
コンピュータ30の動画生成部35aによる動画生成処理について、図11のフローチャートを用いて説明する。動画生成処理は、入力部32から、動画の作成対象期間である特定期間と共に、動画生成要求が入力された場合に実行される。
まず、ステップS21では、動画生成部35aは、記憶部34の温度分布データ記憶領域34aおよび人間分布データ記憶領域34bから、特定期間の、時系列の温度分布データおよび時系列の人間分布データを読み出す。ここでは、温度分布データは1分毎のデータであり、人間分布データは3秒毎のデータである。
次にステップS22では、動画生成部35aは、ステップS21で読み出した温度分布データと人間分布データとを重ねあわせた画像を生成する処理を行う。つまり、動画生成部35aは、ステップS21で読み出した温度分布データの上に、人間分布データを重ねて表示した画像を生成する処理を行う。具体的には、動画生成部35aは、取得時刻が同一の、温度分布データと人間分布データとを重ねあわせた画像を生成する処理を繰り返し行う。なお、上記のように、温度分布データが1分毎に1個生成されるのに対し、人間分布データは1分毎に20個生成される。そのため、ここでは、取得時刻が分単位まで一致する温度分布データと人間分布データとを重ねあわせた画像を生成する処理が、繰り返し行われる。そのため、ここでは、温度分布は同一で、人間の位置だけが異なる画像が、20個ずつ生成される。
次に、ステップS23では、動画生成部35aは、ステップS23で得られた画像に、空間情報記憶領域34cに記憶された、空調対象空間Rの平面図と、空調対象空間R内の熱源の位置と、を更に重ねあわせる処理を行う。なお、ここでの熱源とは、空調対象空間Rの温度分布に影響を与える温熱源および冷熱源である。具体的には、ここでの熱源は、温風や冷風を吹き出す空調室内機90と、空調対象空間Rと空調対象空間Rの外部の空間との間で熱の出入りが発生しやすい窓Wおよび扉Dである。
次に、ステップS24では、ステップS23で生成された画像(温度分布データと、人間分布データと、空調対象空間Rの平面図と、空調対象空間R内の熱源位置とが重ね合わされた画像)が、記憶部34の動画生成用画像記憶領域34dに、時系列のデータとして書き込まれる。動画生成用画像記憶領域34dに記憶される一連の画像が、動画生成部35aが生成する動画を構成する。
なお、ここで説明した動画生成処理のフローは、一例であり、動画生成処理のフローはこれに限定されるものではない。
例えば、動画生成部35aは、特定期間中の一部期間(例えば1分)のデータだけを読み出して、ステップS22およびステップS23の処理を行い、その一部期間について画像が生成された時点で、動画生成用画像記憶領域34dに画像を記憶してもよい。そして、動画生成部35aは、特定期間全体についての動画が生成されるように、データの読み出し、画像の生成、および画像の書き込みを繰り返し実行してもよい。
図12は、動画生成部35aにより生成される、動画を構成する画像の一例である。動画生成部35aにより生成される画像では、空調対象空間R内の温度分布を容易に把握できるように、温度分布データの各区画が温度別に異なる色で着色されている。図12では、各区画を着色する代わりに、ハッチングの斜線の密度を変更して、温度分布を示している。また、図12では、丸印で人間の位置が表示されている。また、熱源(ここでは、空調室内機90、窓Wおよび扉D)の位置は、例えば、熱源の位置を熱源の種類別に異なる種類の枠線で囲んで表示している。ただし、図12は動画を構成する画像の一例であって、画像による温度分布、人間の位置、および、熱源の位置の表示方法はこれに限定されるものではない。動画生成部35aにより生成される、動画を構成する画像には、温度分布、人間の位置、および、熱源の位置が、温熱環境再現システム100のユーザ等が認識容易に表示されればよい。
出力部33は、動画生成用画像記憶領域34dに記憶される多数の画像を、時間順に、次々と切り替えて表示することで、特定期間における、空調対象空間R内の、人間の位置の変化および温度分布の変化を同時に認識可能な動画と、空調対象空間R内の冷熱源および温熱源の熱源位置に関する情報とを提示する。
(5)特徴
(5−1)
本実施形態に係る温熱環境再現システム100は、記憶部34と、動画生成部35aと、を備える。記憶部34は、空調対象空間R内の人間の位置に関する人間分布データと、空調対象空間R内の温度分布に関する温度分布データと、を蓄積して記憶する。動画生成部35aは、特定期間における人間分布データおよび温度分布データに基づいて、特定期間における、空調対象空間R内の、人間の位置の変化および温度分布の変化を、同時に認識可能な動画を生成する。
ここでは、人間分布データおよび温度分布データに基づいて、人間の位置および温度分布の変化を同時に認識可能な動画が生成される。これにより、空調対象空間Rで温熱環境に関する苦情が発生した場合に、温熱環境に関する苦情の原因解明のための環境計測やヒアリング等が不要で、調査に必要な費用を抑制できる。また、生成された動画を見ることで、温熱環境に関する苦情の原因を認識し、対策を検討することが容易である。また、動画を対象空間の使用者等への原因説明のための資料として利用すれば、説明資料の作成を簡易化できる。
(5−2)
本実施形態に係る温熱環境再現システム100では、提示部としての出力部33を更に備える。出力部33は、特定期間における、空調対象空間R内の、人間の位置の変化および温度分布の変化を同時に認識可能な動画と、空調対象空間R内の冷熱源および温熱源の熱源位置に関する情報とを提示する。ここでの、冷熱源および温熱源は、空調室内機90、窓W、および扉Dである
ここでは、出力部33に、人間の位置および温度分布の変化を表す動画に加え、冷熱源/温熱源(空調室内機90、窓W、および扉D)の位置も提示されるため、温熱環境に関する苦情の発生原因を把握することが更に容易である。
(5−3)
本実施形態に係る温熱環境再現システム100では、温度分布データは、空調対象空間Rに存在する人間の影響を取り除いた、空調対象空間Rの定常温度の分布である。
ここでは、温度分布データから空調対象空間Rに存在する人間の影響が取り除かれているため、人間の影響により誤って定常温度分布を認識し、温熱環境に関する苦情の原因を誤って認識する可能性が低減される。
(6)変形例
以下に上記実施形態の変形例を示す。以下の変形例は、互いに矛盾しない範囲で、他の変形例の一部又は全部と組合せて用いられてもよい。
(6−1)変形例A
上記実施形態では、赤外線センサユニット20により温度分布データおよび人間分布データが取得されるが、これに限定されるものではない。
温熱環境再現システム100は、例えば、空調対象空間Rに配置される多数の温度センサと、空調対象空間Rの全範囲を撮像可能な1台又は複数台の全方位カメラと、を備えてもよい。そして、温度センサにより温度分布データと同様の情報を、全方位カメラにより人間分布データと同様の情報を、それぞれ取得可能に構成されてもよい。ただし、上記実施形態のように、赤外線センサユニット20から得られる熱画像データから温度分布データおよび人間分布データを取得する方が、温熱環境再現システム100を構成する機器を減らすことが可能で経済的である。
また、例えば、温熱環境再現システム100は、温度分布データおよび人間分布データを取得する機器を構成として有していなくてもよい。例えば、温熱環境再現システム100は、赤外線センサユニット20を有する代わりに、温度分布データおよび人間分布データと同様の情報を記憶している外部データベースと通信ネットワーク10を介して通信可能に接続されてもよい。コンピュータ30の処理部35は、外部データベースを記憶部として利用することで、特定期間の、空調対象空間R内の、人間の位置の変化および温度分布の変化を同時に認識可能な動画を生成してもよい。
(6−2)変形例B
上記実施形態では、赤外線センサユニット20が有するユニット処理装置22のユニット処理部25が、温度分布データおよび人間分布データを抽出するが、これに限定されるものではない。例えば、コンピュータ30が、センサ部21が取得した熱画像データを受け付け、コンピュータ30の処理部35が、熱画像データから温度分布データおよび人間分布データを抽出する処理を行ってもよい。
(6−3)変形例C
上記実施形態では、温度分布データから、空調対象空間Rに存在する人間の影響が取り除かれているが、これに限定されるものではない。温度分布データからは、空調対象空間Rに存在する人間の影響が取り除かれていなくてもよい。ただし、温度分布データから空調対象空間Rに存在する人間の影響が取り除かれていない場合には、空調対象空間Rの温度分布を誤って把握するおそれがあるため、温度分布データから、空調対象空間Rに存在する人間の影響が取り除かれていることが好ましい。
(6−4)変形例D
上記実施形態では、出力部33に動画生成部35aにより生成された動画が提示されるが、これに限定されるものではなく、出力部33には動画は提示されなくてもよい。例えば、温熱環境再現システム100は、通信部31を介してコンピュータ30と通信可能に構成される携帯情報端末等に、動画が提示されるように構成されてもよい。
また、上記実施形態では、入力部32が、動画生成要求を受け付けるが、これに限定されるものではない。温熱環境再現システム100は、通信部31を介してコンピュータ30と通信可能に構成される携帯情報端末等から、動画生成要求を受け付けるように構成されてもよい。
(6−5)変形例E
上記実施形態では、動画生成部35aにより生成される動画を構成する画像には、温度分布、人間の位置、および、熱源の位置の情報が含まれるが、これに限定されるものではない。動画生成部35aにより生成される動画を構成する画像には、熱源の位置の情報は含まれていなくてもよい。
そして、例えば、出力部33は、空間情報記憶領域34cに記憶された、空調対象空間Rの平面図と、空調対象空間R内の熱源の位置と、を背景画像として表示し、これに、人間の位置の変化および温度分布の変化を同時に認識可能な動画を重ねあわせて表示してもよい。
また、出力部33には、人間の位置の変化および温度分布の変化を同時に認識可能な動画だけが表示され、空調対象空間Rの平面図や、空調対象空間R内の熱源の位置は、表示されなくてもよい。ただし、温熱環境に関する苦情の原因究明等を目的とする場合には、出力部33に、人間の位置の変化および温度分布の変化を同時に認識可能な動画と共に、空調対象空間R内の熱源の位置が表示されることが好ましい。
(6−6)変形例F
上記実施形態に係る温熱環境再現システム100では、熱源の例として、空調室内機90、窓W、および扉Dを挙げたが、熱源の種類はこれらに限定されるものではない。例えば、熱源には、空調対象空間R内に設置されるコピー機や、サーバ等の機器を含んでもよい。例えば、空間情報記憶領域34cに、これらの機器の位置も予め情報として記憶しておけば、動画生成部35aは、空間情報記憶領域34cからこれらの機器の位置の情報を読み出すことで、人間の位置の変化および温度分布の変化を同時に認識可能な動画と共に、これらの機器の位置を出力部33に提示できる。
(6−7)変形例G
上記実施形態に係る温熱環境再現システム100の処理部35は、図13のように、対策不要エリア決定部35bを更に備えていてもよい。対策不要エリア決定部35bは、人間分布データに基づいて、空調対象空間R内の、温熱環境改善の対策が不要な対策不要エリアを決定する。対策不要エリアの決定処理について、以下に説明する。
対策不要エリア決定部35bは、入力部32に特定期間と共に動画生成要求が入力された場合に、人間分布データ記憶領域34bに記憶されている特定期間の人間分布データに基づいて、特定期間における人数分布図を以下のようにして生成する。人数分布図は、特定期間に、空調対象空間R内の、どの位置に、どの程度の頻度で人間がいたかを把握可能な図である。
人数分布図を生成するため、対策不要エリア決定部35bは、初めに、図10のように16列×16列の画素(256画素)から構成される人間分布データを、近接する複数の画素からなる区画に区分けする処理を行う。例えば、対策不要エリア決定部35bは、人間分布データを、4列×4列の画素を1つの区画として、16個の区画に区分けする。
次に、対策不要エリア決定部35bは、16個の区画にグループ分けされた人間分布データに対し、各区画内に存在する人間の人数を把握する。例えば、区画内に人間が検出されている画素が1つあれば、その区画内に存在する人間の人数を1人と把握し、区画内に人間が検出されている画素が2つあれば、その区画内に存在する人間の人数を2人と把握し、区画内に人間が検出されている画素がなければ、その区画内に存在する人間の人数を0人と把握する。対策不要エリア決定部35bは、特定期間の全ての人間分布データ(20個の人間分布データ)に対して区画への区分けと、各区画内の人数の把握を行う。
次に、対策不要エリア決定部35bは、特定期間の全ての人間分布データに対して行われた、各区画内の人数の算出結果を、区画毎に積算する。つまり、対策不要エリア決定部35bは、特定期間の複数の人間分布データを用いて、区画毎に、その区画に存在した延べ人数を算出する。
そして、対策不要エリア決定部35bは、この積算人数(延べ人数)を基に人数分布図を生成する。図14は、人数分布図の一例である。図14の人数分布図では、数字ではなく、ハッチングにより各区画に人間が存在した頻度を表現している。図14において、斜線でハッチングされた区画は、特定期間に人間がいた区画を表す。そして、区画に付されたハッチングの斜線の密度が高いほど、特定期間にその区画にいた積算人数(延べ人数)が多いこと、つまり、その区画に人間が存在した頻度が高いことを表す。図14において、ハッチングが付されていない区画は、特定期間に人間がいなかったことを表す。
対策不要エリア決定部35bは、人数分布図に基づいて、特定期間に人間がいない、あるいは、特定期間に人間がいる頻度が所定頻度より低い、と判断される人間分布データの区画に対応する空調対象空間R内の領域を、対策不要エリアと決定する。
ここでは、対策不要エリア決定部35bにより、人間がいる頻度が低い(人間がいない場合も含む)ため、温熱環境の改善のための対策が不要であると判断される対策不要エリアが決定されるため、不必要な温熱環境に関する対策に、費用が費やされることを防止できる。
動画生成部35aは、上記実施形態のようにして生成された動画を構成する画像上に、対策不要エリア決定部35bにより決定された対策不要エリアを表す表示を更に重ねあわせて、動画(動画を構成する画像)を生成してもよい。例えば、動画生成部35aは、上記実施形態のようにして生成された動画を構成する画像に対し、対策不要エリアに該当する部分を黒く塗りつぶす処理を行う。このように構成されることで、動画生成部35aで生成される動画から、温熱環境の苦情の原因になる可能性が低いエリアを予め排除できる。この場合、出力部33に表示される動画を見る温熱環境再現システム100のユーザ等は、温熱環境の苦情の原因になる可能性のあるエリアの動画だけを見ればよいので、温熱環境に関する苦情の原因を把握することが容易である。
なお、対策不要エリア決定部35bは、特定期間以外の期間について、人数分布図を生成してもよい。例えば、対策不要エリア決定部35bは、特定期間より長期間、例えば1日分の人数分布図を生成してもよい。対策不要エリア決定部35bは、その人数分布図に基づいて、人間がいなかった、あるいは、人間がいる頻度が所定頻度より低い、と判断される人間分布データの区画に対応する空調対象空間R内の領域を、対策不要エリアと決定してもよい。このように構成されることで、例えば、特定期間には人間がいなかったものの、普段は人間が存在する領域が、対策不要エリアとして初めから排除されることを防止できる。
(6−8)変形例H
上記実施形態に係る温熱環境再現システム100の処理部35は、図15のように、要注意エリア決定部35cを更に備えていてもよい。要注意エリア決定部35cは、特定期間における、人間分布データおよび温度分布データに基づいて、特定期間について、空調対象空間R内の温熱環境に対する苦情が発生する可能性のある要注意エリアを決定する。要注意エリアの決定処理について具体的に説明する。
要注意エリア決定部35cは、入力部32から、特定期間と共に動画生成要求が入力された場合に、温度分布データ記憶領域34aに記憶されている、特定期間における、各温度分布データについて、温度が、許容温度範囲(設定値)を外れる区画(許容温度範囲外区画)を検出する。
次に、要注意エリア決定部35cは、温度分布データにおける許容温度範囲外区画と、その温度分布データとデータの取得時刻が同一の人間分布データと、を重ねあわせ、許容温度範囲外区画内に人間が存在するかを、人間分布データ毎に判断する。なお、ここでは、取得時刻が分単位まで一致する温度分布データおよび人間分布データを、取得時刻が同一の温度分布データおよび人間分布データと呼ぶ。
そして、要注意エリア決定部35cは、許容温度範囲外区画内に人間を表す画素が存在する場合、許容温度範囲外区画内に存在する、人間分布データの人間を表す画素を囲む、所定の大きさの正方形内に対応する空調対象空間R内の領域を、温熱環境に対する苦情が発生する可能性のある要注意エリアと決定する。図16を用いて具体的に説明する。
例えば、図16のように、ある時刻の人間分布データには丸印を付した画素に人間を表す画素H1,H2,H3,H4が存在したとする。また、その人間分布データとデータ取得時刻が同一の温度分布データでは、4列×4列の区画のうち、左下角の1の区画が、許容温度範囲外区画Pであるとする。この場合、許容温度範囲外区画P内に存在する、人間分布データの人間を表す画素H3を囲む、所定の大きさの正方形Q内(ハッチング部参照)に対応する、空調対象空間R内の領域が、温熱環境に対する苦情が発生する可能性のある要注意エリアと、要注意エリア決定部35cにより決定される。なお、図16に示された正方形Qの大きさは例示であり、正方形Qの大きさはこれに限定されるものではない。
動画生成部35aは、上記実施形態のようにして生成された動画を構成する画像上に、要注意エリア決定部35cにより決定された要注意エリアを表す表示を、更に重ねあわせて、動画を構成する画像を生成してもよい。例えば、動画生成部35aは、上記実施形態のようにして生成された画像に対し、要注意エリア決定部35cに該当する部分を枠線で囲んで、動画を構成する画像を生成する。このように構成されることで、動画生成部35aが生成する動画には、温熱環境の苦情の原因になる可能性が高いエリアが強調して表示される。ここでは、出力部33に表示される動画を見る温熱環境再現システム100のユーザ等が、温熱環境の苦情が発生しそうな場所を容易に認識できるため、温熱環境に関する苦情の発生した原因を究明することが容易である。
(6−9)変形例I
また、変形例Hに係る温熱環境再現システム100の処理部35は、図17のように、要注意エリア決定部35cに加え、判断部35dを更に備えていてもよい。また、記憶部34は、図17のように、要注意エリア情報記憶領域34eを備えてもよい。
ここでは、要注意エリア決定部35cは、定期的に、人間分布データおよび温度分布データに基づいて、空調対象空間R内の温熱環境に対する苦情が発生する可能性のある要注意エリアを決定する。例えば、要注意エリア決定部35cは、1分おきに、直近1分間の人間分布データと、最新の温度分布データと、に基づいて、空調対象空間R内の温熱環境に対する苦情が発生する可能性のある要注意エリアを決定する。要注意エリア決定部35cにより要注意エリアが決定されると、都度、その要注意エリアの位置情報が要注意エリア情報記憶領域34eに書き込まれ、蓄積される。
判断部35dは、所定期間(例えば1時間)に要注意エリア情報記憶領域34eに書き込まれた要注意エリアの位置情報を用いて、空調対象空間R内で、所定回数以上(例えば100回以上)要注意エリアと決定された領域において、温熱環境に関する苦情が発生する可能性が高いと判断する。つまり、判断部35dは、空調対象空間R内の、ある領域(第1エリア)が、要注意エリアと決定される割合が所定割合以上の場合に、その領域において、温熱環境に関する苦情が発生する可能性が高いと判断する。
このように構成されることで、温熱環境再現システム100を用いて、将来の温熱環境に関する苦情の発生を予想し、苦情の発生を予め防止することができる。