JP2007115041A - 通風・温熱診断システム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 診断対象となる建物の設計情報41を取得する設計情報取得手段31と、この設計情報41から、建物の各部屋の開口の面積と位置と向きを示すデータを取得する開口データ取得手段32と、過去の気象データを取得する気象データ取得手段33と、過去の気象データ43から、該当する日時の建物の外壁に配置された開口付近の風向と風速を示すデータを取得する風関連データ取得手段34と、風関連データ44を使用して、各開口における風向と風量を表示する情報、及び各開口の位置を起点または終点に設定した曲線により、開口間を通過する当該建物内部の風の経路を表示する情報を、建物の間取り図上に描画する描画手段35と、描画手段35の描画した間取り図を出力する出力手段36を備える。
【選択図】図1
Description
炭酸ガスの大量排出による地球温暖化が近年深刻な問題になっている。従って、地球に優しい、環境への影響を最小限にした住宅の建設が望まれている。例えば、適切な開口を設けて、建物を適切なタイミングで換気することによって、大きなエネルギを消費する冷房機器の使用を最小限に抑えることができる。上記の既存技術によれば、換気のメカニズムを解析して、良好な換気効果を得る建物の設計を可能にする。しかしながら、既存技術に基づいて具体的な換気の効果を定量的に把握するには、複雑な計算を必要とする。1年を通じてさらに1日を通じて、気象条件は大きく変化するから、シミュレーションには大量の計算データが必要になる。また、高い能力のコンピュータにより長時間の計算が必要になる。こうした計算方法は、概略設計支援のためのツールや、顧客対応のためのプレゼンテーションデータをリアルタイムに表示するような用途には適さない。本発明は、以上の点に着目してなされたもので、換気効果を比較検討するために十分なものであって、高速で簡便な計算処理に適した、通風・温熱診断システムと通風・温熱診断プログラムとそのプログラムを記録した記録媒体を提供することを目的とする。
〈構成1〉
診断対象となる建物の設計情報を取得する設計情報取得手段と、上記建物の設計情報から、上記建物の各部屋の開口の面積と位置と向きを示すデータを取得する開口データ取得手段と、過去の気象データを取得する気象データ取得手段と、上記過去の気象データから、該当する日時の上記建物の外壁に配置された開口付近の風向と風速を示すデータを取得する風関連データ取得手段と、上記風関連データを使用して、上記各開口における風向と風量を表示する情報と、上記各開口の位置を起点または終点に設定した曲線により、上記開口間を通過する当該建物内部の風の経路を表示する情報とを、上記建物の間取り図上に描画する描画手段と、上記描画手段の描画した間取り図を出力する出力手段を備えたことを特徴とする建物の通風・温熱診断システム。
構成1に記載の建物の通風・温熱診断システムにおいて、風関連データ取得手段は、有効な開口を有する壁に囲まれた領域毎に、当該領域に流入する風量と流出する風量の総和が一致するように上記各開口における風量を算出することを特徴とする建物の通風・温熱診断システム。
診断対象となる建物の設計情報を取得する設計情報取得手段と、上記建物の設計情報から、上記建物の各部屋の開口の面積と位置と向きを示すデータを取得する開口データ取得手段と、シミュレーションの対象期間を指定する期間指定手段と、過去の気象データを取得する気象データ取得手段と、上記過去の気象データから、上記対象期間に含まれる該当する日時の、上記建物の外壁に配置された開口付近の風向と風速を示すデータを取得する風関連データ取得手段と、上記対象期間に含まれた日時毎に、上記気象データから、上記建物の蓄熱状態を示すデータを取得し、上記開口データ取得手段と風関連データ取得手段の取得したデータとを使用して、上記開口を開放した一定時間の換気の結果から得られる室内の快適性を判定する判定手段と、上記対象期間に含まれた日時に対応する所定形状のカラムを配列した診断表を生成し、上記判定手段の判定結果に基づいて、冷房が必要なときと、換気をすることにより冷房が不要なときとを区別できるように、上記カラムの表現の種類を選定する診断表生成手段と、上記診断表生成手段の生成した診断表を出力する出力手段とを備えたことを特徴とする建物の通風・温熱診断システム。
構成3に記載の建物の通風・温熱診断システムにおいて、上記記憶装置は、代表的な風向で代表的な風速の場合の、診断対象となる建物の各開口における風向と風量を表示する情報と、上記各開口の位置を起点または終点に設定した曲線により、上記開口間を通過する当該建物内部の風の経路を表示する情報とを、予備計算した結果を記憶するものであり、上記描画手段は、該当する日時における上記風関連データ取得手段の取得した風関連データと近似する上記代表的な風向で代表的な風速の場合の予備計算結果を上記記憶装置から読み出して、建物の間取り図上に描画したものを出力するものであることを特徴とする建物の通風・温熱診断システム。
構成3または4に記載の建物の通風・温熱診断システムにおいて、上記記憶装置は、代表的な風向で代表的な風速の場合であって、代表的な蓄熱状態の場合の、上記室内の快適性を判定した予備計算結果を記憶するものであり、上記判定装置は、上記対象期間に含まれた日時毎に、該当する日時における上記風関連データ取得手段の取得した風関連データと近似する上記代表的な風向で代表的な風速の場合であって、当該日時の蓄熱状態と近似する上記代表的な蓄熱状態の場合の予備計算結果を上記記憶装置から読み出して、上記判定をするものであることを特徴とする建物の通風・温熱診断システム。
構成3に記載の建物の通風・温熱診断システムにおいて、該当する日時毎に、気象条件を所定の基準と比較して、その基準を満たさないときを、換気効果計算の対象から除外することを特徴とする建物の通風・温熱診断システム。
構成3に記載の建物の通風・温熱診断システムにおいて、上記判定手段は、所定の判断基準に従って代表室を特定し、当該代表室の室内の快適性を判定して、上記診断表生成手段は、当該代表室に関する診断表を生成するものであることを特徴とする建物の通風・温熱診断システム。
診断対象となる建物の設計情報を取得する設計情報取得手段と、上記建物の設計情報から、上記建物の各部屋の開口の面積と位置と向きを示すデータを取得する開口データ取得手段と、指定された気象データから、上記建物の外壁に配置された開口付近の風の向きと強さを示すデータを取得する風関連データ取得手段と、上記気象データから、上記建物の蓄熱状態を示すデータを取得し、上記開口データ取得手段と風関連データ取得手段の取得したデータとを使用して、上記開口を開放した一定時間の換気の結果から得られる室内の快適性を判定する判定手段と、上記判定手段の判定結果に基づいて、換気をすることにより冷房が不要なときと判定された場合に、上記風関連データを使用して、上記各開口における風向と風量を表示する情報と、上記各開口の位置を起点または終点に設定した曲線により、上記開口間を通過する当該建物内部の風の経路を表示する情報とを、上記建物の間取り図上に描画する描画手段と、上記描画手段の描画した間取り図を出力する出力手段を備えたことを特徴とする建物の通風・温熱診断システム。
コンピュータを、診断対象となる建物の設計情報を取得する設計情報取得手段と、上記建物の設計情報から、上記建物の各部屋の開口の面積と位置と向きを示すデータを取得する開口データ取得手段と、過去の気象データを取得する気象データ取得手段と、上記過去の気象データから、該当する日時の上記建物の外壁に配置された開口付近の風向と風速を示すデータを取得する風関連データ取得手段と、上記風関連データを使用して、上記各開口における風向と風量を表示する情報と、上記各開口の位置を起点または終点に設定した曲線により、上記開口間を通過する当該建物内部の風の経路を表示する情報とを、上記建物の間取り図上に描画する描画手段と、上記描画手段の描画した間取り図を出力する出力手段、として機能させる建物の通風・温熱診断プログラム。
コンピュータを、診断対象となる建物の設計情報を取得する設計情報取得手段と、上記建物の設計情報から、上記建物の各部屋の開口の面積と位置と向きを示すデータを取得する開口データ取得手段と、過去の気象データを取得する気象データ取得手段と、上記過去の気象データから、該当する日時の上記建物の外壁に配置された開口付近の風向と風速を示すデータを取得する風関連データ取得手段と、上記風関連データを使用して、上記各開口における風向と風量を表示する情報と、上記各開口の位置を起点または終点に設定した曲線により、上記開口間を通過する当該建物内部の風の経路を表示する情報とを、上記建物の間取り図上に描画する描画手段と、上記描画手段の描画した間取り図を出力する出力手段、として機能させる建物の通風・温熱診断プログラムを記録したコンピュータで読み取り可能な記録媒体。
コンピュータを、診断対象となる建物の設計情報を取得する設計情報取得手段と、上記建物の設計情報から、上記建物の各部屋の開口の面積と位置と向きを示すデータを取得する開口データ取得手段と、シミュレーションの対象期間を指定する期間指定手段と、過去の気象データを取得する気象データ取得手段と、上記過去の気象データから、上記対象期間に含まれる該当する日時の、上記建物の外壁に配置された開口付近の風向と風速を示すデータを取得する風関連データ取得手段と、上記対象期間に含まれた日時毎に、上記気象データから、上記建物の蓄熱状態を示すデータを取得し、上記開口データ取得手段と風関連データ取得手段の取得したデータとを使用して、上記開口を開放した一定時間の換気の結果から得られる室内の快適性を判定する判定手段と、上記対象期間に含まれた日時に対応する所定形状のカラムを配列した診断表を生成し、上記判定手段の判定結果に基づいて、冷房が必要なときと、換気をすることにより冷房が不要なときとを区別できるように、上記カラムの表現の種類を選定する診断表生成手段と、上記診断表生成手段の生成した診断表を出力する出力手段、として機能させる建物の通風・温熱診断プログラム。
コンピュータを、診断対象となる建物の設計情報を取得する設計情報取得手段と、上記建物の設計情報から、上記建物の各部屋の開口の面積と位置と向きを示すデータを取得する開口データ取得手段と、シミュレーションの対象期間を指定する期間指定手段と、過去の気象データを取得する気象データ取得手段と、上記過去の気象データから、上記対象期間に含まれる該当する日時の、上記建物の外壁に配置された開口付近の風向と風速を示すデータを取得する風関連データ取得手段と、上記対象期間に含まれた日時毎に、上記気象データから、上記建物の蓄熱状態を示すデータを取得し、上記開口データ取得手段と風関連データ取得手段の取得したデータとを使用して、上記開口を開放した一定時間の換気の結果から得られる室内の快適性を判定する判定手段と、上記対象期間に含まれた日時に対応する所定形状のカラムを配列した診断表を生成し、上記判定手段の判定結果に基づいて、冷房が必要なときと、換気をすることにより冷房が不要なときとを区別できるように、上記カラムの表現の種類を選定する診断表生成手段と、上記診断表生成手段の生成した診断表を出力する出力手段、として機能させる建物の通風・温熱診断プログラムを記録したコンピュータで読み取り可能な記録媒体。
図のシステムは、ネットワーク10に接続されている。建物の通風・温熱診断システムの制御は、診断用のコンピュータ20により実行される。ネットワーク10には、建物設計用のコンピュータ11が接続されている。このコンピュータ11の記憶装置12には、診断対象となる建物のCADデータ13が記憶されている。このCADデータ13等の設計情報が、換気効果診断に利用される。
図2(a)は開口データ42の内容を示す。開口データ42は、例えば、各開口を識別するための開口識別コードと、開口の種類と位置と面積といった情報を含む。開口の種類は、例えば、ドアとか窓とか欄間といった内容のデータである。開口の位置は、例えば、開口が設けられた室名や、開口を取り付けた壁面、開口の位置座標などを含むとよい。これらの情報に基づいて、開口の通風効果が計算される。
図1に示した記憶装置40には、判定テーブル49が記憶されている。判定テーブル49は、演算処理を高速化するために利用される。図4において、建物の換気効果の診断処理計算では、ある日時110が指定されたときに、その日時の風向図113を生成したり、診断表48の中に配置された該当する日時に対応するカラムの色114を選択する。判定テーブル49は、該当する日時の風向と風速を示すデータ111が入力されると、対応する風関連データ識別コードを出力する演算テーブルデータである。この風関連データ識別コードにより、該当する風関連データ44と風向描画データ45と風量描画データ46が読み出される。これらを間取りデータ47に適用すれば、風向図113が生成される。また、風向と風速を示すデータと、気象データ43に含まれる日照関連データ112を入力すると、該当するカラムの色を出力する演算テーブルデータである。期間指定115に従って、例えば、一年分のカラムの色114を出力させて、診断表48を生成する。次に、風向図113や診断表48の具体的な内容を説明する。
この図は、間取りデータ47の一例である。説明を簡単にするために、単純なモデルを利用した。図の間取りは、リビングとキッチンと階段室とトイレのみを備えたものである。建物の外壁や内壁には、図に示すように開口61〜76が設けられている。窓や開き戸の他に階段の出入り口75、76なども開口部である。この建物にある日時に矢印51の方向に秒速2メートルの風が吹いたとする。この時、各開口にそれぞれ矢印の方向に風が流入し、あるいは、風が外に排出される。その計算と検証は予備計算であるから時間をかけて実行すればよい。この図の例では、各矢印の部分にその開口部における風速を示す数値を描画している。
この間取りデータ47中の代表室(建物の中で最も人のいる時間が長いであろう部屋)の開口61、62、63、71、72、67、68の各部分には、それぞれ、矢印81、82、83、84、85、86、87が表示されている。これらの矢印の間を概略的な滑らかな曲線89で結ぶ。矢印81は、代表室に風が流入することを示している。他の矢印82、83、84、85、86、87は、代表室から風が排出されることを示している。曲線89は、風が流入する矢印と風が排出される矢印の間を結ぶだけでよい。風が流入する矢印が複数あっても同様である。概略的な風の流れを示すのには、これで充分である。この風向図113を出力することによって、建物の利用者は、どのような気象条件の時にどの開口を開いて換気をすればよいかを理解できる。また、建物の間取りや開口の設計時に、適当なタイミングでこの風向図113を出力して、開口の種類や配置の最適化をすることができる。
この診断表48は、1年間を各月毎に上旬、中旬、下旬に分けて、毎月3日の計算対象日を設けたものである。各対象日は、日の出前の6時から23時までの18個のカラムで区分けしたものである。図の横軸には年間の各月の対象日を表示し、縦軸に、対象日の時刻を表示し、縦横に正方形のカラム92を18×36個配列した。これらのカラム92について、ひとつずつ、上記の判定を行う。この例では、塗りつぶし93の部分が換気をしても効果がなく、冷房が必要な日時を示す。その周りの部分は、開口を開放すれば換気の効果によって冷房をしなくて済む日時である。なお、換気をしなくても快適な日時と換気をすれば快適な日時を区別するために、別の色で塗り分けをするとより便利である。また、この診断表48には、冬の期間で暖房が必要な部分を、塗りつぶし94で示している。
換気効果については、出力フォームが縦横に配列したカラムの集合となっていることから、カラム単位で計算を実行する。各カラムは、冷房が必要なときと、換気をすることにより冷房が不要なときと、換気が不要なときとを区別できるように、それぞれ異なる色で塗り分けている。この判定には、室内の快適性を評価する上で一般的に利用されている「PMV」という指標を用いて行う。「PMV」とは温冷感指標ともいい、「室温」「平均放射温度」「相対湿度」「平均風速」という物理的な4要素と「在室者の着衣量」「在室者の仕事量」という人間側の2要素の、あわせて6要素をもとに−3〜+3の7段階で室の快適性を数値化して表す指標である。上記の物理的な4要素は、通風計算の結果より熱負荷計算を行うことで取得する。上記人間側の2要素は、室の用途と関係付けたスケジュールデータ(在室人数や各在室者の発熱量)から引き当てて求める。上記のPMVが「±1」の範囲内の部屋を「快適」、それ以外を「不快」として判定を行う。即ち、通風無しで指標「PMV」の演算を実行して、結果が適値「±1」の範囲にあれば、換気が不要なときである。通風計算の結果を指標「PMV」の演算式に入力して、結果が適値「±1」の範囲にあれば換気をすることにより冷房が不要になるときである。通風計算の結果を指標「PMV」の演算式に入力して、結果が温度や湿度が高いために不快という結果がでたときは、冷房が必要なときである。
このツールは、住宅の販売前は、例えば、住宅展示場で顧客へのピーアールに使用される。また、顧客の要望に応じて間取りを提案するときに使用される。設計者が住宅の個別設計をするときにもそのつど確認のために使用される。例えば、ネットを通じてウエブ上での計算も考えられる。こうした要求に応えるには、計算をリアルタイムで実行し、ほぼ待ち時間無しに結果を表示させることが好ましい。そこで、計算回数を最小限にする制御を行う。開口を備えた部屋であっても、通常は窓を開けない部屋や開口数が1個の部屋を計算の対象から予め除外しておく。外気温と室内温度とを比較して、窓を開放すると快適という結果が出易い日時のカラムのみを計算の対象にする。風が一定以上強い日時のカラムと無風や微風の日時のカラムは、計算の対象から除外する。即ち、カラム毎の気象条件を所定の基準と比較して、その基準を満たさないときを、換気効果計算の対象から除外する。さらに、既に説明したような予備計算をして、その計算結果を記憶装置に記憶させておく。実際の計算要求があったときは、判定テーブルを利用して、瞬時に結果を出力する。
建物内部の風の流れは、既に既存技術で紹介した特許文献2等に記載された方法や、これに類似した方法により求めることができる。なお、建物の内部の風の流れや熱量は部屋毎に異なる。しかし、全ての部屋について個別に同じ計算を繰り返すと、計算が長時間になる。そこで、「居間」や「DK」など、建物の中で最も人のいる時間が長いであろう部屋を代表室とする。CADで入力された間取り(部屋)の部屋属性情報から、自動的に代表室を選定するとよい。シミュレーションはこの代表室について行う。もちろん、要求に応じて任意の部屋について、換気効果診断のための計算をして構わない。
日照関連データを使用して、建物内部の風による熱的影響を計算するときは、例えば、次のようにする。風速が強、中、弱の場合をそれぞれ、風速3、風速2、風速1と呼ぶことにする。換気効果計算の対象から除外されたカラムを除き、建物内部の熱量を計算する。日照による熱量だけでなく、照明器具や在室者による発熱量を計算に反映させるようにするとよい。ここで、「風速3」の場合を計算する。「風速3」の場合は、一定時間だけ所定の開口部を開放すると、建物内部の空気は全て外気と置き換わる。従って、建物内部は外気と同じ環境条件になる。風速が1とか2の場合は、建物内部の熱量と一定時間の換気により排出されるエネルギの差分を求める。その結果から室内の快適性を判定する。温度や湿度が高くて不快ならば、冷房が必要ということになる。この計算も予備計算をしておけば、判定テーブル49を利用して高速にカラムの色114を出力できる。
対象期間に含まれた所定の日時は、日と時間で特定するとよい。例えば、8月1日の午前9時から10時までという特定の方法でもよいし、8月初旬のいずれかの日の午前9時から10時までという特定の方法でもよい。日付は数日とか一週間とか、上旬、中旬といった単位で特定するとよい。時刻は、1時間とか2時間区切りに、特定するとよい。所定形状のカラムで区分して出力することで、日時単位で、冷房が必要なときと、換気をすることにより冷房が不要なときとを表形式で区別できる。表現の種類としては、カラムの形状、模様、色彩等、任意の表現が採用できる。もちろん、設計者専用であれば、数値の列挙により表現しても構わない。出力手段は、ディスプレイやプリンタを用いて診断表を出力するとよい。
以下のフローチャートにより、上記のシステムを制御するコンピュータプログラムの実施例を説明する。予備計算では、予め、代表的な風向と代表的な風速とを決めておく。代表的な風向は、既に説明したように、16方位である。代表的な風速は、強の時、中の時、及び弱の時の3段階とする。これらの全てのケースについて、指定された建物の間取り図の各開口における風の方向と風の量を予め計算しておく。これを判定テーブル49に記憶する。具体的には次の手順でこの処理が実行される。
ここでは、まず、ステップS31で、熱量計算の対象となる代表室を、例えば、リビングルームに決定する。次に、ステップS32で、代表日照関連データの選択をする。例えば、外気温は25度から35度まで1度おきに、湿度は30%以上、10%おきに代表値を定める。その他の環境熱量も含めて、予備計算をする代表日照関連データを定めておけばよい。ステップS33で、代表室の熱量計算をすると、ステップS34で、既に予備計算済みの風関連データを選択する。そして、ステップS35で、PMV判定を行う。
まず、ステップS41において、ポインタを初期値に設定する。このポインタは、診断表の各カラムを指し示すもので、1つのカラムについての計算が終了すると、次のカラムにポインタが移り、全てのカラムについての計算を残り無く実行するように制御する。ステップS42では、ポインタを1つ進める。そして、ステップS43でそのポインタにより指定されたカラムを選択する。ステップS44では、そのカラムの日時が計算対象外のものかどうかを判断する。例えば、1月から5月までは無条件に計算範囲から除外する。11月以降も無条件に計算範囲から除外する。また、時刻に着目し、例えば、夜間は無条件に計算範囲から除外する。
上記のような建物の換気効果診断を実行しても、その建物の利用者が、その建物の優れた換気機能を認識しないと、無駄に冷房装置を作動させてしまうことになる。そこで、例えば、図1に示したコンピュータ20がウェブサーバとして動作し、ネットワークを通じて、建物の換気効果を示す情報を発信することが可能である。この場合には、まず、例えば利用者のブラウザに、図11に示すような画面120を表示する。この画面120には、利用者が求める換気情報を選択するためのオプションボタン121が表示されている。
以上のシミュレーションにより、設計者に対しては、開口の面積、開口の数、開口の配置、間取り、扉の構造、窓の構造、欄間や換気孔を含めた住宅構造を解析するためのデータを提供できる。従って、設計をした建物について、年間冷暖房負荷予測を求め、例えば、エアコンの能力を必要最小限に設計し、省エネ住宅の提案をすることが可能になる。また、居住者に対しては、植木の配置と種類の選定したり、風向と風速に応じた開放すべき窓、開放の程度、開放時刻、開放時間、開放回数を提示したり、通風を妨げない家具の配置等のために重要な情報を提供できる。エアコンの運転状態や設定温度を指示して、過剰な冷房を抑制することもできる。実施例のように、当日の気象観測衛星の情報を取得して、その日一日の最適な換気方法を通知する処理を実行するプログラムが役立つ。インターネットのウェブページによる情報提供サービスもできる。どんな気象条件のときはどの窓を何時から何時まで開けると冷房が不要になるかといった情報の提供を受けることができる。また、温度センサ、湿度センサ、風向、風速センサ等の出力を受け入れて適切な換気方法をパーソナルコンピュータにリアルタイムに表示したり、窓や扉のある場所に配置したディスプレイやLEDにより、換気方法を表示することも可能になる。
診断対象となる建物の立地により、年間を通じて風向きが一定の方向に限定されることもある。本発明は特に、冷房装置が必要かどうか、換気で足りるかどうかを診断することを目的としている。従って、夏期の風向き傾向を解析したものを図のように出力する。即ち、例えば、5月から10月の半年間、その建物近傍の風向を、気象情報から取得する。約180日のうち、同じ方向に風が吹く日の割合を、半径方向の目盛り(単位%)で示した。この図の例では、合計35%は南、南南東、南東方向の風で、合計20%は北北東か北東の風である。この傾向を考慮して開口部を配置すると、換気を有効に生かした建物設計ができる。また、この風向説明図を顧客に提示することで、建物の設計の優れている点を主張できる。また、上記のシステムでは、月の上旬、中旬、下旬というように期間を区切って診断をした。従って、この期間毎に図12のような風向図を同時に出力し、図6に示した通風図や図7に示した診断表と対比させて提示することが好ましい。
20 診断用のコンピュータ
11 設計用のコンピュータ
12 記憶装置
13 CADデータ
15 気象衛星
18 気象データ
16 サーバ
17 記憶装置
21 本体制御部
22 ディスプレイ
23 キーボード
24 マウス
25 プリンタ
30 演算処理装置
40 記憶装置
31 設計情報取得手段
32 開口データ取得手段
33 気象データ取得手段
34 風関連データ取得手段
35 描画手段
36 出力手段
37 期間指定手段
38 判定手段
39 診断表生成手段
41 設計情報
42 開口データ
43 気象データ
44 風関連データ
45 風向描画データ
46 風量描画データ
47 間取りデータ
48 診断表
Claims (12)
- 診断対象となる建物の設計情報を取得する設計情報取得手段と、
前記建物の設計情報から、前記建物の各部屋の開口の面積と位置と向きを示すデータを取得する開口データ取得手段と、
過去の気象データを取得する気象データ取得手段と、
前記過去の気象データから、該当する日時の前記建物の外壁に配置された開口付近の風向と風速を示すデータを取得する風関連データ取得手段と、
前記風関連データを使用して、前記各開口における風向と風量を表示する情報と、前記各開口の位置を起点または終点に設定した曲線により、前記開口間を通過する当該建物内部の風の経路を表示する情報とを、前記建物の間取り図上に描画する描画手段と、
前記描画手段の描画した間取り図を出力する出力手段とを備えたことを特徴とする建物の通風・温熱診断システム。 - 請求項1に記載の建物の通風・温熱診断システムにおいて、
風関連データ取得手段は、有効な開口を有する壁に囲まれた領域毎に、当該領域に流入する風量と流出する風量の総和が一致するように前記各開口における風量を算出することを特徴とする建物の通風・温熱診断システム。 - 診断対象となる建物の設計情報を取得する設計情報取得手段と、
前記建物の設計情報から、前記建物の各部屋の開口の面積と位置と向きを示すデータを取得する開口データ取得手段と、
シミュレーションの対象期間を指定する期間指定手段と、
過去の気象データを取得する気象データ取得手段と、
前記過去の気象データから、前記対象期間に含まれる該当する日時の、前記建物の外壁に配置された開口付近の風向と風速を示すデータを取得する風関連データ取得手段と、
前記対象期間に含まれた日時毎に、前記気象データから、前記建物の蓄熱状態を示すデータを取得し、前記開口データ取得手段と風関連データ取得手段の取得したデータとを使用して、前記開口を開放した一定時間の換気の結果から得られる室内の快適性を判定する判定手段と、
前記対象期間に含まれた日時に対応する所定形状のカラムを配列した診断表を生成し、前記判定手段の判定結果に基づいて、冷房が必要なときと、換気をすることにより冷房が不要なときとを区別できるように、前記カラムの表現の種類を選定する診断表生成手段と、
前記診断表生成手段の生成した診断表を出力する出力手段とを備えたことを特徴とする建物の通風・温熱診断システム。 - 請求項3に記載の建物の通風・温熱診断システムにおいて、
前記記憶装置は、代表的な風向で代表的な風速の場合の、診断対象となる建物の各開口における風向と風量を表示する情報と、前記各開口の位置を起点または終点に設定した曲線により、前記開口間を通過する当該建物内部の風の経路を表示する情報とを、予備計算した結果を記憶するものであり、
前記描画手段は、該当する日時における前記風関連データ取得手段の取得した風関連データと近似する前記代表的な風向で代表的な風速の場合の予備計算結果を前記記憶装置から読み出して、建物の間取り図上に描画したものを出力するものであることを特徴とする建物の通風・温熱診断システム。 - 請求項3または4に記載の建物の通風・温熱診断システムにおいて、
前記記憶装置は、代表的な風向で代表的な風速の場合であって、代表的な蓄熱状態の場合の、前記室内の快適性を判定した予備計算結果を記憶するものであり、
前記判定装置は、前記対象期間に含まれた日時毎に、該当する日時における前記風関連データ取得手段の取得した風関連データと近似する前記代表的な風向で代表的な風速の場合であって、当該日時の蓄熱状態と近似する前記代表的な蓄熱状態の場合の予備計算結果を前記記憶装置から読み出して、前記判定をするものであることを特徴とする建物の通風・温熱診断システム。 - 請求項3に記載の建物の通風・温熱診断システムにおいて、
該当する日時毎に、気象条件を所定の基準と比較して、その基準を満たさないときを、換気効果計算の対象から除外することを特徴とする建物の通風・温熱診断システム。 - 請求項3に記載の建物の通風・温熱診断システムにおいて、
前記判定手段は、所定の判断基準に従って代表室を特定し、当該代表室の室内の快適性を判定して、前記診断表生成手段は、当該代表室に関する診断表を生成するものであることを特徴とする建物の通風・温熱診断システム。 - 診断対象となる建物の設計情報を取得する設計情報取得手段と、
前記建物の設計情報から、前記建物の各部屋の開口の面積と位置と向きを示すデータを取得する開口データ取得手段と、
指定された気象データから、前記建物の外壁に配置された開口付近の風の向きと強さを示すデータを取得する風関連データ取得手段と、
前記気象データから、前記建物の蓄熱状態を示すデータを取得し、前記開口データ取得手段と風関連データ取得手段の取得したデータとを使用して、前記開口を開放した一定時間の換気の結果から得られる室内の快適性を判定する判定手段と、
前記判定手段の判定結果に基づいて、換気をすることにより冷房が不要なときと判定された場合に、前記風関連データを使用して、前記各開口における風向と風量を表示する情報と、前記各開口の位置を起点または終点に設定した曲線により、前記開口間を通過する当該建物内部の風の経路を表示する情報とを、前記建物の間取り図上に描画する描画手段と、
前記描画手段の描画した間取り図を出力する出力手段を備えたことを特徴とする建物の通風・温熱診断システム。 - コンピュータを、
診断対象となる建物の設計情報を取得する設計情報取得手段と、
前記建物の設計情報から、前記建物の各部屋の開口の面積と位置と向きを示すデータを取得する開口データ取得手段と、
過去の気象データを取得する気象データ取得手段と、
前記過去の気象データから、該当する日時の前記建物の外壁に配置された開口付近の風向と風速を示すデータを取得する風関連データ取得手段と、
前記風関連データを使用して、前記各開口における風向と風量を表示する情報と、前記各開口の位置を起点または終点に設定した曲線により、前記開口間を通過する当該建物内部の風の経路を表示する情報とを、前記建物の間取り図上に描画する描画手段と、
前記描画手段の描画した間取り図を出力する出力手段、
として機能させる建物の通風・温熱診断プログラム。 - コンピュータを、
診断対象となる建物の設計情報を取得する設計情報取得手段と、
前記建物の設計情報から、前記建物の各部屋の開口の面積と位置と向きを示すデータを取得する開口データ取得手段と、
過去の気象データを取得する気象データ取得手段と、
前記過去の気象データから、該当する日時の前記建物の外壁に配置された開口付近の風向と風速を示すデータを取得する風関連データ取得手段と、
前記風関連データを使用して、前記各開口における風向と風量を表示する情報と、前記各開口の位置を起点または終点に設定した曲線により、前記開口間を通過する当該建物内部の風の経路を表示する情報とを、前記建物の間取り図上に描画する描画手段と、
前記描画手段の描画した間取り図を出力する出力手段、
として機能させる建物の通風・温熱診断プログラムを記録したコンピュータで読み取り可能な記録媒体。 - コンピュータを、
診断対象となる建物の設計情報を取得する設計情報取得手段と、
前記建物の設計情報から、前記建物の各部屋の開口の面積と位置と向きを示すデータを取得する開口データ取得手段と、
シミュレーションの対象期間を指定する期間指定手段と、
過去の気象データを取得する気象データ取得手段と、
前記過去の気象データから、前記対象期間に含まれる該当する日時の、前記建物の外壁に配置された開口付近の風向と風速を示すデータを取得する風関連データ取得手段と、
前記対象期間に含まれた日時毎に、前記気象データから、前記建物の蓄熱状態を示すデータを取得し、前記開口データ取得手段と風関連データ取得手段の取得したデータとを使用して、前記開口を開放した一定時間の換気の結果から得られる室内の快適性を判定する判定手段と、
前記対象期間に含まれた日時に対応する所定形状のカラムを配列した診断表を生成し、前記判定手段の判定結果に基づいて、冷房が必要なときと、換気をすることにより冷房が不要なときとを区別できるように、前記カラムの表現の種類を選定する診断表生成手段と、
前記診断表生成手段の生成した診断表を出力する出力手段、
として機能させる建物の通風・温熱診断プログラム。 - コンピュータを、
診断対象となる建物の設計情報を取得する設計情報取得手段と、
前記建物の設計情報から、前記建物の各部屋の開口の面積と位置と向きを示すデータを取得する開口データ取得手段と、
シミュレーションの対象期間を指定する期間指定手段と、
過去の気象データを取得する気象データ取得手段と、
前記過去の気象データから、前記対象期間に含まれる該当する日時の、前記建物の外壁に配置された開口付近の風向と風速を示すデータを取得する風関連データ取得手段と、
前記対象期間に含まれた日時毎に、前記気象データから、前記建物の蓄熱状態を示すデータを取得し、前記開口データ取得手段と風関連データ取得手段の取得したデータとを使用して、前記開口を開放した一定時間の換気の結果から得られる室内の快適性を判定する判定手段と、
前記対象期間に含まれた日時に対応する所定形状のカラムを配列した診断表を生成し、前記判定手段の判定結果に基づいて、冷房が必要なときと、換気をすることにより冷房が不要なときとを区別できるように、前記カラムの表現の種類を選定する診断表生成手段と、
前記診断表生成手段の生成した診断表を出力する出力手段、
として機能させる建物の通風・温熱診断プログラムを記録したコンピュータで読み取り可能な記録媒体。
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