(画像形成方法)
本発明の画像形成方法は、前処理工程と、画像形成工程とを含んでなる。前記画像形成方法は、後処理工程を適宜含んでいてもよい。
<前処理工程>
前記前処理工程は、支持体の少なくとも一方の面上に塗工層を有する記録用メディアの前記塗工層を有する面に、負の電荷を有する粒子を凝集させる性質を有する前処理液を塗布する工程である。
前記前処理工程としては、印刷用紙表面に前記前処理液を均一に塗布する塗布方法を用いればよく、特に制限はない。このような塗布方法として、例えば、ブレードコート法、グラビアコート法、グラビアオフセットコート法、バーコート法、ロールコート法、ナイフコート法、エアナイフコート法、コンマコート法、Uコンマコート法、AKKUコート法、スムージングコート法、マイクログラビアコート法、リバースロールコート法、4本乃至5本ロールコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スライドコート法、ダイコート法などが挙げられる。
前記前処理工程は、表面が充分乾燥されている印刷用紙に対して行っても、乾燥中の印刷用紙に対して行っても効果を発揮する。尚、前処理を施した印刷用紙に対し、必要に応じて乾燥工程を設けることができる。この場合、ロールヒーター、ドラムヒーターや温風により印刷用紙を乾燥することができる。
前記前処理工程における前処理液の印刷用紙へのウエット付着量は、0.1g/m2〜30.0g/m2であることが好ましく、0.2g/m2〜10.0g/m2であることがより好ましい。前記付着量が、0.1g/m2未満であると、画像品質(画像濃度、彩度、ビーディング及びカラーブリード)の向上が殆ど見られないことがあり、30.0g/m2を超えると、前処理液の乾燥性悪くなり、更にカールが発生することがある。
<<前処理液>>
前記前処理液は、水溶性凝集剤を含有してなり、更に必要に応じて、水溶性有機溶剤、無機金属塩化合物、界面活性剤及びその他の成分を含んでなる。
前記前処理液は、水溶性凝集剤を含有していることで、後述の負の電荷を有する粒子を凝集させる性質を有する。ここで、凝集するとは負の電荷を有する粒子同士が吸着集合する意味であり、粒度分布測定装置により確認することができる。前記水溶性凝集剤は、負の電荷を有する粒子の表面電荷にイオンが吸着することで表面電荷を中和し、分子間力による凝集作用を増強して、負の電荷を有する粒子を凝集させることができる。前記凝集を確認する方法の例としては、負の電荷を有する粒子濃度5質量%のインクジェット用インク5μLに、前処理液を30mL加えたときに、瞬時に着色剤が凝集するかを確認する方法が挙げられる。
前記前処理液のpHは5以上である。
前記前処理液は、更に必要に応じて、水溶性有機溶剤、無機金属塩化合物、界面活性剤及びその他の成分を含んでなる。
−水溶性凝集剤−
前記水溶性凝集剤は、少なくとも1つの分子量50〜500の水溶性凝集剤を含んでなり、更に必要に応じて、分子量500を超える水溶性凝集剤を含んでなる。前記分子量500を超える水溶性凝集剤を含んだ場合、前記前処理液における前記分子量500を超える水溶性凝集剤の含有率は10.0質量%以下である。
前記分子量50〜500の水溶性凝集剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、有機酸塩、有機モノアミン等の有機酸中和塩などが挙げられる。
前記分子量500を超える水溶性凝集剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水溶性カチオンポリマーなどが挙げられる。
−−有機酸塩−−
前記有機酸塩としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、水溶性脂肪族系有機酸の塩が好ましい。
前記水溶性脂肪族系有機酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、水溶性脂肪族系カルボキシル基含有有機酸、タウリン等の水溶性脂肪族系スルホ基含有有機酸が好ましい。ここで、脂肪族とは直鎖或いは分岐の炭化水素基を含むことを意味し、炭化水素基は飽和炭化水素基であっても不飽和炭化水素基でも良い。水溶性脂肪族系有機酸の炭素数は、特に限定されないが、溶媒への溶解性の点から1分子あたり2個以上、6個以下であることが好ましく、2個以上、4個以下であることがより好ましい。前記水溶性脂肪族系有機酸における酸基の数は、画像濃度の点から、1分子あたり3個以下であることが好ましく、1分子あたり2個以下がより好ましく、1分子あたり1個が更に好ましい。前記水溶性脂肪族系有機酸としては、次の一般式(I)〜(III)で表される水溶性脂肪族系カルボキシル基含有有機酸が好適に用いられる。
ただし、前記一般式(I)中、R1は水素原子、又は水酸基若しくはカルボキシル基により置換されたメチル基を示し、R2はメチル基、又は水酸基若しくはカルボキシル基により置換されたメチル基を示す。
ただし、前記一般式(II)中、nは0〜4の整数、好ましくは0〜2の整数を示す。
ただし、前記一般式(III)中、nは0〜4の整数、好ましくは0〜2の整数を示す。
前記一般式(I)で表される化合物としては、例えば、乳酸(pKa:3.83)、リンゴ酸(pKa:3.4)、クエン酸(pKa:3.13)、酒石酸(pKa:2.93)などが挙げられる。
前記一般式(II)で表される化合物としては、例えば、蓚酸(pKa:1.04)、マロン酸(pKa:2.05)、琥珀酸(pKa:4.21)、アジピン酸(pKa:4.42)などが挙げられる。
前記(III)式で表される化合物としては、例えば、酢酸(pKa:4.76)、プロピオン酸(pKa:4.87)、酪酸(pKa:4.82)、吉草酸(pKa:4.82)などが挙げられる。
前記一般式(I)〜(III)以外の前記水溶性脂肪族系有機酸としては、例えば、グルコン酸(pKa:2.2)、ピルビン酸(pKa:2.49)、フマル酸(pKa:3.02)などが挙げられる。
−−有機モノアミン−−
前記有機モノアミンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、水溶性有機モノアミンが好ましい。
前記水溶性有機モノアミンとしては、1級、2級、3級及び4級アミン及びそれらの塩のいずれであってもよい。前記水溶性有機モノアミンの炭素数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、溶媒への溶解性の点から1分子あたり2個以上、12個以下であることが好ましく、2個以上、6個以下であることがより好ましい。
前記水溶性有機モノアミンとしては、次の一般式(IV)〜(VI)で表される化合物が好適に用いられる。
ただし、前記一般式(IV)中、R3、R4、R5は水素原子、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜8のアルキル基、ヒドロキシエチル基、又はヒドロキシプロピル基を示す(ただし、全て水素原子である場合を除く)。
ただし、前記一般式(V)中、R6はヒドロキシメチル基を示し、R7はメチル基、エチル基、又はヒドロキシメチル基を示し、R8は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、又はヒドロキシメチル基を示す。
ただし、前記一般式(VI)中、R9、R10は独立して、炭素数1〜4のアルキル基を表す。
前記一般式(IV)で表される化合物としては、例えば、ジメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、t−ブチルアミン、sec−ブチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、トリブチルアミン、ペンチルアミン、ジペンチルアミン、トリペンチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、ジ−2−エチルヘキシルアミン、ジ−n−オクチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、1−アミノ−2−プロパノール、3−アミノ−1−プロパノール、N−メチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N−ブチルジエタノールアミン、N,N−ジブチルエタノールアミンなどが挙げられる。
前記一般式(V)で表される化合物としては、例えば、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールなどが挙げられる。
前記一般式(VI)式で表される化合物としては、例えば、3−メトキシプロピルアミン、3−エトキシプロピルアミンなどが挙げられる。
前記一般式(IV)〜(VI)式で表される化合物以外の水溶性有機モノアミン化合物としては、例えば、アリルアミン、ジアリルアミン、2−(2−アミノエトキシ)エタノール、コリンなどが挙げられる。
−−水溶性カチオンポリマー−−
前記水溶性カチオンポリマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、アミンとエピハロヒドリンとを含むモノマーを重合させてなる水溶性カチオンポリマーが好ましい。
前記モノマーを重合させてなる水溶性カチオンポリマーは、主鎖に水酸基やアンモニウムカチオンなどを含み、また、水溶液中でハロゲンアニオンを遊離することで、前記負の電荷を有する粒子と接触した場合に緩衝作用や顔料を凝集させる作用を高める働きを有すると考えられる。
前記水溶性カチオンポリマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ポリアミン−エピハロヒドリン共重合体、ポリアミド−エピハロヒドリン共重合体又はポリアミドポリアミン−エピハロヒドリン共重合体、アミン−エピハロヒドリン共重合体が好ましい。これらの中でも、下記の一般式(VII)で示される共重合体、一般式(VIII)で示される繰り返し単位を有する共重合体、及び、アミンモノマーと、下記構造式(IX)で示されるモノマーと、下記一般式(X)で示されるモノマーとを重合してなる共重合体がより好ましい。
前記水溶性カチオンポリマーとして、第4級アンモニウム塩型カチオンポリマーや、水分散性カチオンポリマーを用いてもよい。
ただし、前記一般式(VII)中、R1〜R8は、同一であっても異なっていても良く、炭素数が1〜8のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルケニル基、又はベンジル基のいずれかを示し、Xはハロゲン原子(例えば、F、Cl、Br、I等)を示し、nは1以上の整数を示す。
ただし、前記一般式(VIII)中、Xはハロゲン原子(例えば、F、Cl、Br、I等)を示し、mは1以上の整数を示す。
前記一般式(VIII)で示される共重合体の両末端は、繰り返し単位を構成するモノマーであっても、公知の開始剤などであってもよい。
ただし、前記一般式(X)中、Xはハロゲン原子(例えば、F、Cl、Br、I等)を示す。
前記アミンモノマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタアミン及びイミノビスプロピルアミンが挙げられるが、工業的製造されており容易に入手できる点で下記の構造式(XI)で示されるモノマーが好ましい。
−−−水溶性カチオンポリマーの製造方法−−−
前記水溶性カチオンポリマーの製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アミンと、エピハロヒドリンとを含むモノマーを重合する方法、アミンとカルボン酸とを含むモノマーを重合することにより得られたポリアミドにエピハロヒドリンを含むモノマーをグラフト重合する方法などが挙げられる。
−−−水溶性カチオンポリマーの物性−−−
水溶性カチオンポリマーの重量平均分子量は、共重合体の種類によって異なり、ポリアミン−エピハロヒドリン共重合体の場合は、500〜100,000が好ましく、ポリアミド−エピハロヒドリン共重合体、ポリアミドポリアミン−エピハロヒドリン共重合体の場合は、5,000,000以下が好ましく、アミン−エピハロヒドリン共重合体の場合は、700〜50,000が好ましい。
重量平均分子量が上記の各好ましい値の上限を超えると水溶液にならない場合があり、上記の各好ましい値の下限に満たないと前処理液による処理の効果が低下する場合がある。
−水溶性有機溶剤−
前記前処理液は、インクの浸透性制御及び金属の腐食防止性の目的で水溶性有機溶剤を含有することが好ましい。
前記水溶性有機溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類、多価アルコールアリールエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類、プロピレンカーボネート、炭酸エチレンなどが挙げられる。前記水溶性有機溶剤は、開放状態で放置されても多量の水分を保持することにより前処理液に流動性を付与する。この場合、前記水溶性有機溶剤として平衡水分量の高い水溶性有機溶剤を用いることにより、前処理液の水分が蒸発して平衡状態に達した場合にも極端な粘度上昇を抑えることができる。
このような平衡水分量の高い水溶性有機溶剤としては、温度23℃、湿度80%RH環境中の平衡水分量が30質量%以上、好ましくは40質量%以上である水溶性有機溶剤が挙げられる(以後、水溶性有機溶剤Aと言う)。なお、平衡水分量とは、水溶性有機溶剤と水との混合物を一定温度、湿度の空気中に開放して、溶液中の水の蒸発と空気中の水の水溶性有機溶剤への吸収が平衡状態になったときの水分量を言う。具体的には、塩化カリウム飽和水溶液を用いデシケーター内の温湿度を温度23±1℃、湿度80±3%に保ち、このデシケーター内に各水溶性有機溶剤を1gずつ秤量したシャーレを質量変化がなくなるまでの期間保管し、次の式により平衡水分量を求めることができる。
本実施形態で好適に用いられる水溶性有機溶剤Aとしては、温度23℃、湿度80%RH環境中の平衡水分量が30質量%以上の多価アルコール類が挙げられる。このような水溶性有機溶剤Aの具体例としては、1,2,3−ブタントリオール(bp175℃/33hPa、38質量%)、1,2,4−ブタントリオール(bp190−191℃/24hPa、41質量%)、グリセリン(bp290℃、49質量%)、ジグリセリン(bp270℃/20hPa、38質量%)、トリエチレングリコール(bp285℃、39質量%)、テトラエチレングリコール(bp324−330℃、37質量%)、ジエチレングリコール(bp245℃、43質量%)、1,3−ブタンジオール(bp203−204℃、35質量%)などが挙げられる。この中でもグリセリン、1,3−ブタンジオールは水分を含んだ場合に低粘度化することや顔料分散体が凝集せず安定に保てるなどの理由により特に好適に用いられる。上記水溶性有機溶剤Aを水溶性有機溶剤全体の50質量%以上用いた場合、吐出安定性確保やインク吐出装置の維持装置での廃インク固着防止に優れるため好ましい。
前記前処理液は、前記水溶性有機溶剤Aの一部に代えて又は前記の水溶性有機溶剤Aに加えて、23℃、80%での平衡水分量が30質量%未満の水溶性有機溶剤(以後水溶性有機溶剤Bと言う)を併用することができる。このような水溶性有機溶剤Bとしては、例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類、多価アルコールアリールエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン、その他の水溶性有機溶剤などが挙げられる。
前記多価アルコール類の具体例としては、例えば、ジプロピレングリコール(bp232℃)、1,5−ペンタンジオール(bp242℃)、3−メチル−1,3−ブタンジオール(bp203℃)、プロピレングリコール(bp187℃)、2−メチル−2,4−ペンタンジオール(bp197℃)、エチレングリコール(bp196−198℃)、トリプロピレングリコール(bp267℃)、ヘキシレングリコール(bp197℃)、ポリエチレングリコール(粘調液体〜固体)、ポリプロピレングリコール(bp187℃)、1,6−ヘキサンジオール(bp253−260℃)、1,2,6−ヘキサントリオール(bp178℃)、トリメチロールエタン(固体、mp199−201℃)、トリメチロールプロパン(固体、mp61℃)などが挙げられる。
前記多価アルコールアルキルエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル(bp135℃)、エチレングリコールモノブチルエーテル(bp171℃)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(bp194℃)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(bp197℃)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(bp231℃)、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル(bp229℃)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(bp132℃)などが挙げられる。
前記多価アルコールアリールエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノフェニルエーテル(bp237℃)、エチレングリコールモノベンジルエーテルなどが挙げられる。
前記含窒素複素環化合物としては、例えば、2−ピロリドン(bp250℃、mp25.5℃、47−48質量%)、N−メチル−2−ピロリドン(bp202℃)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(bp226℃)、ε−カプロラクタム(bp270℃)、γ−ブチロラクトン(bp204−205℃)などが挙げられる。
前記アミド類としては、例えば、ホルムアミド(bp210℃)、N−メチルホルムアミド(bp199−201℃)、N,N−ジメチルホルムアミド(bp153℃)、N,N−ジエチルホルムアミド(bp176−177℃)などが挙げられる。
前記アミン類としては、例えば、モノエタノールアミン(bp170℃)、ジエタノールアミン(bp268℃)、トリエタノールアミン(bp360℃)、N,N−ジメチルモノエタノールアミン(bp139℃)、N−メチルジエタノールアミン(bp243℃)、N−メチルエタノールアミン(bp159℃)、N−フェニルエタノールアミン(bp282−287℃)、3−アミノプロピルジエチルアミン(bp169℃)などが挙げられる。
前記含硫黄化合物類としては、例えば、ジメチルスルホキシド(bp139℃)、スルホラン(bp285℃)、チオジグリコール(bp282℃)などが挙げられる。
その他の固体水溶性有機溶剤としては、糖類が好ましい。
前記糖類としては、例えば、単糖類、二糖類、オリゴ糖類(三糖類、四糖類を含む)、多糖類、それらの誘導体などが挙げられる。具体的には、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトトリオースなどが挙げられる。ここで、多糖類とは広義の糖を意味し、α−シクロデキストリン、セルロースなど自然界に広く存在する物質を含む意味に用いることとする。
また、前記糖類の誘導体としては、前記糖類の還元糖(例えば、糖アルコール(一般式:HOCH2(CHOH)nCH2OH(ただし、nは2〜5の整数を表す)で表わされる。)、酸化糖(例えば、アルドン酸、ウロン酸など)、アミノ酸、チオ酸などが挙げられる。これらの中でも、糖アルコールが好ましく、具体例としてはマルチトール、ソルビットなどが挙げられる。
前記水溶性有機溶剤の前記前処理液中における含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、10質量%〜80質量%が好ましく、15質量%〜60質量%が更に好ましい。前記含有量が80質量%より大きいと、水溶性有機溶剤の種類によって、前処理後の記録用メディアが乾燥しにくくなることがあり、10質量%より小さいと、前処理中に水分蒸発が生じ、前処理液の組成が大きく変わってしまうことがある。
−無機金属塩化合物−
前記前処理液に無機金属塩化合物を添加すると、顔料が記録用メディア表面に留まりやすくなり、塩析効果が向上するために画像濃度が増加する。
前記無機金属塩化合物としては、例えば、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸マンガン、硫酸ニッケル、硫酸鉄(II)、硫酸銅(II)、硫酸亜鉛、硝酸鉄(II)、硝酸鉄(III)、硝酸コバルト、硝酸ストロンチウム、硝酸銅(II)、硝酸ニッケル(II)、硝酸鉛(II)、硝酸マンガン(II)、塩化ニッケル(II)、塩化カルシウム、塩化スズ(II)、塩化ストロンチウム、塩化バリウム、塩化マグネシウムが挙げられる。前記水溶性1価アルカリ金属塩化合物としては、例えば、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸リチウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウムなどが挙げられる。
前記無機金属塩化合物の含有量としては、前処理液全体の0.1質量%〜30質量%が好ましく、1質量%〜20質量%がより好ましい。前記含有量が、30質量%を超えると、無機金属塩化合物が十分に溶解せずに析出することがあり、0.1質量%未満であると、画像濃度向上効果が小さくなることがある。
−界面活性剤−
前記前処理液は、記録用メディア表面の濡れ性を改質し、画像形成物の画像濃度、彩度及び白ポチを改良するために界面活性剤を用いることができる。この場合、記録用メディア表面の濡れ及びインクの浸透性を向上させるために前記界面活性剤により前処理液の静的表面張力を30mN/m以下に調整することが好ましい。
前記界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、ベタイン系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤が好適が好ましく、表面張力を30mN/m以下に下げることが可能な点で、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤がより好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記フッ素系界面活性剤としては、フッ素置換した炭素数が2〜16であるものが好ましく、フッ素置換した炭素数が4〜16であるものがより好ましい。前記フッ素置換した炭素数が2未満であると、フッ素系界面活性剤特有の効果が得られないことがあり、16を超えると保存性などの問題が生じることがある。
前記フッ素系界面活性剤としては、例えば、ノニオン系フッ素系界面活性剤、アニオン系フッ素系界面活性剤、両性フッ素系界面活性剤などが挙げられる。
前記ノニオン系フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物などが挙げられる。これらの中でも、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物は起泡性が少ないため好ましく、特に下記の一般式(1)式で表わされるフッ素系界面活性剤が好ましい。
ただし、前記一般式(1)で表される化合物において、水溶性を付与するためにmは0〜10が好ましく、nは0〜40が好ましい。
前記アニオン系フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物などが挙げられる。前記パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩などが挙げられる。前記パーフルオロアルキルカルボン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩などが挙げられる。前記パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルリン酸エステルの塩などが挙げられる。前記パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩などが挙げられる。これらフッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、Li、Na、K、NH4、NH3CH2CH2OH、NH2(CH2CH2OH)2、NH(CH2CH2OH)3などが挙げられる。
前記フッ素系界面活性剤の具体例としては、下記一般式(2)〜(10)で表わされる化合物が好適に用いられる。
(1)アニオン系フッ素系界面活性剤
ただし、前記一般式(2)中、Rfは、下記構造式で表わされるフッ素含有疎水基の混合物を表す。Aは、−SO3X、−COOX、又は−PO3X(ただし、Xは対アニオンであり、具体的には、水素原子、Li、Na、K、NH4、NH3CH2CH2OH、NH2(CH2CH2OH)2、又はNH(CH2CH2OH)3が挙げられる)を表す。
ただし、前記一般式(3)中、Rf’は下記構造式で表わされるフッ素含有基を表す。Xは、前記一般式(2)のXと同じ意味を表す。nは1又は2の整数、mは2−nを表す。
ただし、前記構造式中、nは3〜10の整数を表す。
ただし、前記一般式(4)中、Rf’及びXは、前記一般式(3)のRf’、前記一般式(2)のXと同じ意味を表す。
ただし、前記一般式(5)中、Rf’及びXは、前記一般式(3)のRf’、前記一般式(2)式のXと同じ意味を表す。
(2)ノニオン系フッ素系界面活性剤
ただし、前記一般式(6)中、Rfは、前記一般式(2)のRfと同じ意味を表す。nは5〜20の整数を表す。
ただし、前記一般式(7)中、Rf’は、前記一般式(3)のRf’と同じ意味を表す。nは1〜40の整数を表す。
(3)両性フッ素系界面活性剤
ただし、前記一般式(8)中、Rfは、前記一般式(2)のRfと同じ意味を表す。
(4)オリゴマー型フッ素系界面活性剤
ただし、前記一般式(9)中、Rf”は、下記構造式で表わされるフッ素含有基を表す。nは0〜10の整数を表す。Xは、前記一般式(2)のXと同じ意味を表す。
ただし、前記構造式中、nは1〜4の整数を表す。
ただし、前記一般式(10)中、Rf”は、前記一般式(9)式のRf”と同じ意味を表す。lは0〜10の整数、mは0〜10の整数、nは0〜10の整数をそれぞれ表す。
前記フッ素系界面活性剤としては、市販品を使用してもよい。前記市販品としては、例えば、サーフロンS−111、S−112、S−113、S−121、S−131、S−132、S−141、S−145(いずれも、旭硝子株式会社製);フルラードFC−93、FC−95、FC−98、FC−129、FC−135、FC−170C、FC−430、FC−431(いずれも、住友スリーエム株式会社製);メガファックF−470、F−1405、F−474(いずれも、大日本インキ化学工業株式会社製);ゾニール(Zonyl)TBS、FSP、FSA、FSN−100、FSN、FSO−100、FSO、FS−300、UR(いずれも、DuPont社製);FT−110、FT−250、FT−251、FT−400S、FT−150、FT−400SW(いずれも、株式会社ネオス社製)、ポリフォックスPF−136A,PF−156A、PF−151N、PF−154、PF−159(オムノバ社製)などが挙げられる。これらの中でも、良好な印字品質、特に発色性、紙に対する均染性が著しく向上する点から、DuPont社製のFS−300、株式会社ネオス製のFT−110、FT−250、FT−251、FT−400S、FT−150、FT−400SW、及びオムノバ社製のポリフォックスPF−151Nが好ましい。
前記シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられる。これらの中でも、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤が水系界面活性剤として良好な性質を示す点で好ましい。
このような界面活性剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。前記市販品としては、例えば、ビックケミー株式会社、信越化学工業株式会社、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社、日本エマルジョン株式会社、共栄社化学などから容易に入手できる。
前記ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、下記一般式(11)で表わされるポリアルキレンオキシド構造をジメチルポリシロキサンのSi部側鎖に導入した化合物、などが挙げられる。
ただし、前記一般式(11)中、m、n、a、及びbは整数を表す。R及びR’はアルキル基、アルキレン基を表す。
前記ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、市販品を用いることができ、例えば、KF−618、KF−642、KF−643(信越化学工業株式会社)、EMALEX−SS−5602、SS−1906EX(日本エマルジョン株式会社)、FZ−2105、FZ−2118、FZ−2154、FZ−2161、FZ−2162、FZ−2163、FZ−2164(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社)、BYK−33、BYK−387(ビックケミー株式会社)などが挙げられる。
前記アニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩などが挙げられる。
前記ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミドなどが挙げられる。
前記界面活性剤の前記前処理液中における含有量は、0.001質量%〜5質量%が好ましく、0.05質量%〜1質量%がより好ましい。前記含有量が、0.001質量%未満であると、界面活性剤を添加した効果が小さくなることがあり、5質量%を超えると、添加量を増やしても効果に違いが見られないことがある。
−その他成分−
前記前処理液は、浸透性と水への溶解性を両立させるために、浸透剤として炭素数8〜11の非湿潤剤性ポリオール化合物又はグリコールエーテル化合物を少なくとも1種を含有してもよい。ここで、非湿潤剤性とは、25℃の水中において0.2質量%〜5.0質量%の間の溶解度を有することを意味する。これらの浸透剤の中でも、下記一般式(12)で表される1,3−ジオール化合物が好ましく、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール[溶解度:4.2%(25℃)]、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール[溶解度:2.0%(25℃)]がよりに好ましい。
ただし、一般式(12)中、R’はメチル基又はエチル基であり、R’’は水素又はメチル基であり、R’’’はエチル基又はプロピル基である。
その他の非湿潤剤性ポリオール化合物として、脂肪族ジオールとしては、例えば、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、3,3−ジメチル−1,2−ブタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジメチル−2,4−ペンタンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、5−ヘキセン−1,2−ジオールなどが挙げられる。
その他の併用できる浸透剤としては、前処理液中に溶解し、所望の物性に調整できるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールクロロフェニルエーテル等の多価アルコールのアルキル及びアリールエーテル類、エタノール等の低級アルコール類などが挙げられる。
前記浸透剤の前記前処理液における含有量としては、0.1質量%〜5.0質量%が好ましい。前記含有量が、0.1質量%未満であると、前処理液を浸透させる効果がなくなることがあり、5.0質量%を超えると、溶媒への溶解性が低いために溶媒から分離して浸透性を向上させる効果が飽和してしまうことがある。
前記前処理液には必要により、後記のインクジェット用インクに用いられる防腐剤、防錆剤等を用いてもよい。
前記前処理液のpHは、5以上であり、5以上9.5以下が好ましい。前記前処理液のpHが5未満の場合には、中和が不充分であり、画像品質を改良する効果が十分に得られない可能性があり、pHが9.5よりも大きい場合には、遊離したアミンにより画像濃度が低下する可能性がある。
<画像形成工程>
前記画像形成工程は、前記記録用メディアの前処理液を塗布した前記塗工層面上に、負の電荷を有する粒子が分散されたインクジェット用水性インクをインクジェット法により吐出させて画像を形成する工程である。
前記画像形成工程は、前記インクジェット用インクに、刺激(エネルギー)を印加し、前記前処理液を塗布した記録用メディアに、前記インクジェット用インクを飛翔させて印刷用紙に画像を形成する工程である。前記インク飛翔工程において印刷用紙に前記インクジェット用インクを飛翔させて印刷用紙に画像を形成する方法としては、公知のあらゆるインクジェット記録方法を適用できる。このような方法としては、ヘッドを走査する方式のインクジェット記録方法や、ライン化されたヘッドを用いることにより、ある枚葉の印刷用紙において、画像記録を行うインクジェット記録方法が挙げられる。
前記画像形成工程において、インク飛翔手段である記録ヘッドの駆動方式には特に限定はなく、PZT等を用いた圧電素子アクチュエータ、熱エネルギーを作用させる方式、静電気力を利用したアクチュエータ等を利用したオンディマンド型のヘッドを用いることもできるし、連続噴射型の荷電制御タイプのヘッドで記録することもできる。
<<インクジェット用インク>>
本実施形態の画像形成方法に用いられるインクジェット用インクは、前記負の電荷を含有する粒子及び水を含有してなり、前記前処理液により凝集する性質を有する。
前記インクジェット用インクは、更に必要に応じて、水溶性有機溶剤、界面活性剤、浸透剤、及びその他の成分を含有してなる。
−負の電荷を含有する粒子−
前記負の電荷を含有する粒子とは、顔料が、水中に分散された状態で負の電荷を有しているものである。
この場合、前記顔料を水に分散させる形態として、例えば、以下の第1〜第3の形態が挙げられる。
前記第1の形態は、ポリマー微粒子に水不溶乃至水難溶性の色材を含有させてなる分散質(「樹脂により被覆された顔料」とも言う。)を分散媒である水に分散させてポリマーエマルジョン(色材を含有させたポリマー微粒子の水分散物)とする形態である。
この場合、分散質に固体を含むが、以下「エマルジョン」と言うこととする。
前記第2の形態は、表面に少なくとも1種の親水基を有し、分散剤の不存在下で水分散性を示す顔料(「自己分散性顔料」とも言う)を水に分散させる形態である。
前記第3の形態は、顔料をアニオン系分散剤又はノニオン系分散剤で水に分散させる形態である。
−−第1の形態−−
第1の形態で用いられる前記ポリマーエマルジョンとしては、例えば、ポリマー微粒子中に顔料を封入させた分散質、又はポリマー微粒子の表面に顔料を吸着させた分散質を分散媒に分散させたものが挙げられる。
この場合、全ての顔料が封入又は吸着されている必要はなく、本発明の効果が損なわれない範囲で顔料がエマルジョン中に分散していてもよい。
ポリマーエマルジョンを形成するポリマー(ポリマー微粒子におけるポリマー)としては、例えば、アニオン性のビニル系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ポリウレタン系ポリマーなどが挙げられる。これらの中でも、ビニル系ポリマー及びポリエステル系ポリマーが好ましい。前記ビニル系ポリマー及びポリエステル系ポリマーとしては、例えば、特開2000−53897号公報、特開2001−139849号公報等に開示されているポリマーなどが挙げられる。
−−第2の形態−−
前記第2形態の自己分散性顔料は、顔料の表面に少なくとも1種の親水基が直接若しくは他の原子団を介して結合するように表面改質されたものである。前記表面改質は、顔料の表面に、ある特定の官能基(スルホン基やカルボキシル基等の官能基)を化学的に結合させるか、あるいは、次亜ハロゲン酸又はその塩の少なくともいずれかを用いて湿式酸化処理するなどの方法が用いられる。これらの中でも、顔料の表面にカルボキシル基が結合され、水中に分散している形態が好ましい。このように顔料が表面改質され、カルボキシル基が結合していると、分散安定性が向上するばかりではなく、高品位な印字品質が得られるとともに、印字後の記録用メディアの耐水性がより向上する。
このような自己分散性顔料としては、イオン性を有する自己分散性顔料(例えば、カーボンブラック)が好ましく、特にアニオン性親水基を有しアニオン性に帯電した自己分散性カーボンブラックが好ましい。
前記アニオン性親水基としては、例えば、−COOM、−SO3M、−PO3HM、−PO3M2、−SO2NH2、−SO2NHCOR(ただし、Mは、アルカリ金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを表す。Rは、炭素原子数1〜12のアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基、又は置換基を有してもよいナフチル基を表す)などが挙げられる。これらの中でも、−COOM、−SO3Mがカラー顔料表面に結合されたものが好ましい。ここで、前記親水基中における「M」のアルカリ金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウムなどが挙げられる。前記親水基中における「M」の有機アンモニウムとしては、例えば、モノ乃至トリメチルアンモニウム、モノ乃至トリエチルアンモニウム、モノ乃至トリメタノールアンモニウムなどが挙げられる。
前記アニオン性に帯電したカラー顔料を得る方法としては、例えば、カラー顔料表面に−COONaを導入する方法としての、カラー顔料を次亜塩素酸ソーダで酸化処理する方法、スルホン化による方法、ジアゾニウム塩を反応させる方法などが挙げられる。
前記アニオン性親水基は、他の原子団を介してカーボンブラックの表面に結合されていてもよい。他の原子団としては、例えば、炭素原子数1〜12のアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基又は置換基を有してもよいナフチル基などが挙げられる。前記置換基の具体例としては、例えば、−C2H4COOM(ただし、Mは、アルカリ金属、又は第4級アンモニウムを表す)、−PhSO3M(ただし、Phはフェニル基を表す。Mは、アルカリ金属、又は第4級アンモニウムを表す)などが挙げられる。
前記自己分散性顔料の体積平均粒径(D50)としては、分散安定性、及び吐出信頼性の点から、インクジェット用インク中において0.01μm〜0.16μmが好ましい。
前記水不溶性顔料の前記インクジェット用インクにおける含有量は、固形分で2質量%〜15質量%が好ましく、3質量%〜12質量%がより好ましい。前記含有量が、2質量%未満であると、インクの発色性及び画像濃度が低くなってしまうことがあり、15質量%を超えると、インクが増粘して吐出性が悪くなってしまうことがあり好ましくない。
−−第3の形態−−
前記第3の形態においては、顔料がアニオン系分散剤又はノニオン系分散剤によって分散される(以下、「顔料分散体」と称する)。
前記アニオン系分散剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩;アルキルベンゼンスルホン酸塩(NH4塩、Na塩,Ca塩等);アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩(NH4塩、Na塩,Ca塩等);ジアルキルサクシネートスルホン酸Na塩;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物Na塩;ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸のエステル塩(NH4塩、Na塩等)、ラウリル酸塩;ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェート塩、オレイン酸塩などが挙げられる。これらの中でも、ジオクチルスルホコハク酸Na塩、ポリオキシエチレンスチレンフェニルエーテルスルホン酸NH4塩が好ましい。
前記ノニオン系分散剤としては、HLB値10〜20のノニオン系分散剤が好ましい。前記HLB値10〜20のノニオン系分散剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、アセチレングリコールなどが挙げられる。これらの中でも、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン−β−ナフチルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンスチレンフェニルエーテルが好ましい。
前記ノニオン系分散剤を用いた場合にも、負に帯電している樹脂エマルジョンと併用することにより、インクを系全体として負に帯電させることができる。
第3の形態における顔料分散体は、水系媒体中に前記アニオン系分散剤又は前記ノニオン系分散剤を溶解させ、次に有機顔料、又は無機顔料を加えて充分に湿潤させた後、ホモジナイザーによる高速撹拌、ビーズミルやボールミルのようなボールを用いた分散機、ロールミルのような剪断力を用いた混練分散機、超音波分散機等を用いる方法などによって作製される。ただし、このような混練分散工程の後には粗大粒子が含まれていることが多く、記録装置のノズルや供給経路の目詰まりの原因となる。したがって、作製後に、フィルターや遠心分離器を用いて粒径1μm以上の粒子を除去する必要がある。
前記分散剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、顔料100質量部に対して、1質量部〜100質量部が好ましく、10質量部〜50質量部がより好ましい。前記含有量が1質量部より少ないと、顔料を充分に微細化することができないことがある。一方、前記含有量が100質量部より多いと、顔料に吸着されない分散剤の過剰成分がインクの物性に影響を与え、記録される画像の滲みや、耐水性、耐擦性の劣化を招くことがある。
前記第3の形態の顔料分散体を用いる場合、記録媒体上での色材の定着性(耐擦性)の向上、発色性の向上のため、後述の水分散性樹脂を含有することが好ましい。
更に、前記顔料分散体を安定化するために、平均分子量30,000以下の水溶性高分子化合物を併用することができる。
前記水溶性高分子化合物としては、例えば、分子量30,000以下の水溶性スチレン−アクリル樹脂、水溶性アクリル樹脂、水溶性ポリウレタン、水溶性ポリエステル、水溶性スチレン−マレイン酸共重合体、水溶性α−オレフィン−マレイン酸共重合体が挙げられる。これらの中でも、水溶性ポリウレタン、水溶性ポリエステル、及び下記の一般式(12)で示される水溶性α−オレフィン−マレイン酸共重合体が好ましい。
但し、前記一般式(12)中、Rは炭素数6〜22のアルキル基を表し、nは30〜100の整数を表す。
前記水溶性α−オレフィン−マレイン酸共重合体の酸価としては、100mg KOH/g〜400mg KOH/gが好ましい。前記酸価が100mg KOH/g未満であると、水溶性α−オレフィン−マレイン酸共重合体の溶解性が劣ることがある。一方、前記酸価が400mg KOH/gを超えると、顔料分散体の粘度が高くなり、インクの吐出性が悪化したり、顔料分散体の分散安定性が低下することがある。
前記水溶性α−オレフィン−マレイン酸共重合体の重量平均分子量としては、5,000〜20,000が好ましい。前記重量平均分子量が5,000未満であると、顔料分散体の分散安定性が低下することがある。一方、前記重量平均分子量が20,000を超えると溶解性が低下し、顔料分散体の粘度が高くなることがある。
前記水溶性高分子化合物の含有量としては、前記顔料分散体100質量部に対して、1質量部〜100質量部(固形分換算)が好ましく、5質量部〜50質量部がより好ましい。前記含有量が1質量部未満であると、顔料顔料分散体の分散安定性を向上させる効果が不足することがある。一方、前記含有量が100質量部を超えると、インク粘度が高くなり吐出安定性が低下したり、それ以上添加量を増やしても分散安定性を改良する効果が変わらなくなることがある。
前記顔料の体積平均粒径(D50)としては、インク中において150nm以下が好ましく、100nm以下がより好ましい。前記体積平均粒径(D50)が150nmを超えると急激に吐出安定性が低下し、ノズル詰まりやインクの曲がりが発生し易くなることがある。一方、前記体積平均粒径(D50)が100nm以下であれば、吐出安定性が向上し、画像の彩度も向上する。
インク中の顔料の含有量としては、1質量%〜15質量%が好ましく、より好ましくは2質量%〜12質量%である。また、アニオン性のポリマー微粒子を顔料に被覆させた第1の形態のポリマーエマルジョン、第2の形態の自己分散性顔料、及び第3の形態の顔料分散体を混合し併用することもできる。
−−顔料−−
前記顔料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、黒色用、或いはカラー用の無機顔料や有機顔料などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記無機顔料としては、例えば、酸化チタン及び酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエローに加え、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックなどが挙げられる。
前記有機顔料としては、例えば、アゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料などを含む)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ぺリレン顔料、ぺリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどが挙げられる。これらの中でも、水と親和性の良いものが好ましい。
前記顔料において、より好ましく用いられる顔料の具体例としては、黒色用としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、又は銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料が挙げられる。
更に、カラー用としては、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83、95、97、98、100、101、104、408、109、110、117、120、128、138、150、151、153、183、C.I.ピグメントオレンジ5、13、16、17、36、43、51、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22、23、31、38、48:2、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3、48:4、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、185、190、193、209、219、C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、3、5:1、16、19、23、38、C.I.ピグメントブルー1、2、15、15:1、15:2、15:3(フタロシアニンブルー)、16、17:1、56、60、63、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36などが挙げられる。
前記自己分散性顔料の体積平均粒径(D50)は、分散安定性及び吐出信頼性の理由により、インクジェット用インク中において0.01μm〜0.16μmが好ましい。
前記水不溶性顔料の前記インクジェット用インクにおける含有量は、固形分で2質量%〜15質量%が好ましく、3質量%〜12質量%がより好ましい。前記含有量が、2質量%未満であると、インクの発色性及び画像濃度が低くなってしまうことがあり、15質量%を超えると、インクが増粘して吐出性が悪くなってしまうことがあり好ましくない。
−水溶性有機溶剤−
前記インクジェット用インクに用いられる水溶性有機溶剤としては、前記前処理液に用いられる水溶性有機溶剤が好適に用いられる。前記インクジェット用インクにおける前記負の電荷を有する粒子と前記水溶性有機溶剤との質量比は、ヘッドからのインク吐出安定性に影響を与える。例えば、負の電荷を有する粒子の固形分が高いのに水溶性有機溶剤の配合量が少ないとノズルのインクメニスカス付近の水分蒸発が進み吐出不良をもたらすことがある。前記水溶性有機溶剤の前記インクジェット用インク中における含有量は、20質量%〜50質量%が好ましく、20質量%〜45質量%がより好ましい。前記含有量が、20質量%未満であると、吐出安定性が低下したりインクジェット記録装置の維持装置で廃インク固着したりする可能性がある。一方、前記含有量が、50質量%を超えると、紙面上での乾燥性に劣り更に普通紙上の文字品位が低下することがある。
−界面活性剤−
前記インクジェット用インクに用いられる界面活性剤としては、前記前処理液に用いられる界面活性剤が好適に用いられる。特に、前記界面活性剤としては、着色剤の種類や水溶性有機溶剤の組み合わせによって分散安定性が損なわれず、表面張力が低く、浸透性、レベリング性の高いものが好ましい。このような界面活性剤として、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤から選択される少なくとも1種が挙げられ、これらの中でも、シリコーン系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤が特に好ましい。
前記界面活性剤の前記インクジェット用インクにおける含有量は、0.01質量%〜3.0質量%が好ましく、0.5質量%〜2質量%がより好ましい。前記含有量が0.01質量%未満であると、界面活性剤を添加した効果が無くなることがあり、3.0質量%を超えると、記録用メディアへの浸透性が必要以上に高くなり、画像濃度の低下や裏抜けが発生することがある。
−浸透剤−
前記インクジェット用インクに用いられる浸透剤としては、前記前処理液に用いられる浸透剤が好適に用いられる。前記浸透剤の前記インクジェット用インクにおける含有量は、0.1質量%〜4.0質量%が好ましい。前記含有量が0.1質量%未満であると、速乾性が得られず滲んだ画像となることがあり、4.0質量%を超えると、着色剤の分散安定性が損なわれ、ノズルが目詰まりしやすくなったり、また記録用メディアへの浸透性が必要以上に高くなり画像濃度の低下や裏抜けが発生したりすることがある。
−水分散性樹脂−
前記インクジェット用インクは、記録用メディアへの顔料定着性の理由により水分散性樹脂を含有することが好ましい。前記水分散性樹脂としては、造膜性(画像形成性)に優れ、かつ高撥水性、高耐水性、高耐候性を備えて、高耐水性で高画像濃度(高発色性)の画像記録に有用である。例えば、縮合系合成樹脂、付加系合成樹脂、天然高分子化合物などが挙げられる。
前記縮合系合成樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリ(メタ)アクリル樹脂、アクリル−シリコーン樹脂、フッ素系樹脂などが挙げられる。前記付加系合成樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルエステル系樹脂、ポリアクリル酸系樹脂、不飽和カルボン酸系樹脂などが挙げられる。前記天然高分子化合物としては、例えば、セルロース類、ロジン類、天然ゴムなどが挙げられる。この中でも、特にポリウレタン樹脂微粒子、アクリル−シリコーン樹脂微粒子及びフッ素系樹脂微粒子が好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記フッ素系樹脂としては、フルオロオレフィン単位を有するフッ素系樹脂微粒子が好ましく、これらの中でも、フルオロオレフィン単位及びビニルエーテル単位から構成されるフッ素含有ビニルエーテル系樹脂微粒子が特に好ましい。前記フルオロオレフィン単位としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば−CF2CF2−、−CF2CF(CF3)−、−CF2CFCl−などが挙げられる。前記ビニルエーテル単位としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、下記構造式で表されるものなどが挙げられる。
前記フルオロオレフィン単位及びビニルエーテル単位から構成されるフッ素含有ビニルエーテル系樹脂微粒子としては、上記フルオロオレフィン単位とビニルエーテル単位が交互に共重合してなる交互共重合体が好ましい。このようなフッ素系樹脂微粒子としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。前記市販品としては、例えば、大日本インキ化学工業株式会社製のフルオネートFEM−500、FEM−600、ディックガードF−52S、F−90、F−90M、F−90N,アクアフランTE−5A;旭硝子株式会社製のルミフロンFE4300、FE4500、FE4400、アサヒガードAG−7105、AG−950、AG−7600、AG−7000、AG−1100などが挙げられる。
前記水分散性樹脂は、ホモポリマーとして使用されても、コポリマーを使用して複合系樹脂として用いてもよく、単相構造型及びコアシェル型、パワーフィード型エマルジョンのいずれのものも使用できる。
前記水分散性樹脂としては、樹脂自身が親水基を持ち自己分散性を持つもの、樹脂自身は分散性を持たず界面活性剤や親水基をもつ樹脂にて分散性を付与したものが使用できる。これらの中でも、ポリエステル樹脂やポリウレタン樹脂のアイオノマーや不飽和単量体の乳化及び懸濁重合によって得られた樹脂粒子のエマルジョンが好ましい。不飽和単量体の乳化重合の場合には、不飽和単量体、重合開始剤、界面活性剤、連鎖移動剤、キレート剤、及びpH調整剤などを添加した水にて反応させ樹脂エマルジョンを得るため、容易に水分散性樹脂を得ることができ、樹脂構成を容易に替えやすいため目的の性質を作りやすい。
前記不飽和単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、単官能又は多官能の(メタ)アクリル酸エステル単量体類、(メタ)アクリル酸アミド単量体類、芳香族ビニル単量体類、ビニルシアノ化合物単量体類、ビニル単量体類、アリル化合物単量体類、オレフィン単量体類、ジエン単量体類、不飽和炭素を持つオリゴマー類などを単独及び複数組み合わせて用いることができる。これらの単量体を組み合わせることで柔軟に性質を改質することが可能であり、オリゴマー型重合開始剤を用いて重合反応、グラフト反応を行うことで樹脂の特性を改質することもできる。
前記不飽和カルボン酸類としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸などが挙げられる。
前記単官能の(メタ)アクリル酸エステル単量体類としては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、n−アミルメタクリレート、イソアミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、デシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、メタクリロキシエチルトリメチルアンモニウム塩、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n−アミルアクリレート、イソアミルアクリレート、n−へキシルアクリレート、2−エチルへキシルアクリレート、オクチルアクリレート、デシルアクリレート、ドデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート、シクロへキシルアクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート、グリシジルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、アクリロキシエチルトリメチルアンモニウム塩などが挙げられる。
前記多官能の(メタ)アクリル酸エステル単量体類としては、例えば、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ポリブチレングリコールジメタクリレート、2,2’−ビス(4−メタクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2,2’−ビス(4−アクリロキシプロピロキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)プロパントリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、ジトリメチロールテトラアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどが挙げられる。
前記(メタ)アクリル酸アミド単量体類としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、メチレンビスアクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等が挙げられる。前記芳香族ビニル単量体類としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、4−t−ブチルスチレン、クロルスチレン、ビニルアニソール、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン等が挙げられる。前記ビニルシアノ化合物単量体類としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。前記ビニル単量体類としては、例えば、酢酸ビニル、塩化ビニリデン、塩化ビニル、ビニルエーテル、ビニルケトン、ビニルピロリドン、ビニルスルホン酸又はその塩、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどが挙げられる。
前記アリル化合物単量体類としては、例えば、アリルスルホン酸その塩、アリルアミン、アリルクロライド、ジアリルアミン、ジアリルジメチルアンモニウム塩などが挙げられる。
前記オレフィン単量体類としては、例えば、エチレン、プロピレンなどが挙げられる。
前記ジエン単量体類としては、例えば、ブタジエン、クロロプレンなどが挙げられる。
前記不飽和炭素を持つオリゴマー類としては、例えば、メタクリロイル基を持つスチレンオリゴマー、メタクリロイル基を持つスチレン−アクリロニトリルオリゴマー、メタクリロイル基を持つメチルメタクリレートオリゴマー、メタクリロイル基を持つジメチルシロキサンオリゴマー、アクリロイル基を持つポリエステルオリゴマーなどが挙げられる。
前記水分散性樹脂は、強アルカリ性、強酸性下では分散破壊や加水分解などの分子鎖の断裂が引き起こされるため、pHは4〜12が好ましく、特に水分散着色剤との混和性の点からpHは6〜11がより好ましく、7〜9が更に好ましい。
前記水分散性樹脂の平均粒径(D50)は、分散液の粘度と関係しており、組成が同じものでは粒径が小さくなるほど同一固形分での粘度が大きくなる。インク化したときに過剰な高粘度にならないためにも水分散性樹脂の平均粒子径(D50)は50nm以上が好ましい。また、粒径が数十μmになるとインクジェットヘッドのノズル口より大きくなるため使用できない。ノズル口より小さくとも粒子径の大きな粒子がインク中に存在すると吐出性を悪化させる。そこで、インク吐出性を阻害させないために平均粒子径(D50)は200nm以下が好ましく、150nm以下がより好ましい。
また、前記水分散性樹脂は、前記水分散着色剤を紙面に定着させる働きを有し、常温で被膜化して色材の定着性を向上させることが好ましい。そのため、前記水分散性樹脂の最低造膜温度(MFT)は30℃以下であることが好ましい。また、前記水分散性樹脂のガラス転移温度が−40℃以下になると樹脂皮膜の粘稠性が強くなり印字物にタックが生じるため、ガラス転移温度が−30℃以上の水分散性樹脂であることが好ましい。前記水分散性樹脂の前記インクジェット用インクにおける含有量は、固形分で1質量%〜15質量%が好ましく、2質量%〜7質量%がより好ましい。尚、前記インクジェット用インクの固形分含有量は、例えば、インクジェット用インク中から負の電荷を有する粒子と水分散性樹脂分のみを分離する方法により測定することができる。また、負の電荷を有する粒子として顔料を用いる場合には、熱質量分析により質量減少率を評価することで着色剤と水分散性樹脂との比率を測定できる。また、負の電荷を有する粒子の分子構造が明らかな場合には、顔料や染料ではNMRを用いて着色剤の固形分量を定量することが可能であり、重金属原子、分子骨格に含まれる無機顔料、含金有機顔料、含金染料では蛍光X線分析を用いることで着色剤の固形分量を定量することが可能である。
−その他成分−
前記インクジェット用インクに用いられるその他の成分としては、特に制限はなく、必要に応じて適宜選択することができ、例えば、pH調整剤、防腐防黴剤、キレート試薬、防錆剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、酸素吸収剤、光安定化剤、などが挙げられる。
前記pH調整剤としては、調合されるインクジェット用インクに悪影響を及ぼさずにpHを7〜11に調整できるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルコールアミン類、アルカリ金属元素の水酸化物、アンモニウムの水酸化物、ホスホニウム水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩などが挙げられる。前記pHが7未満及び11を超えるとインクジェットのヘッドやインク供給ユニットを溶かし出す量が大きく、インクの変質や漏洩、吐出不良などの不具合が生じることがある。
前記アルコールアミン類としては、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール等など挙げられる。
前記アルカリ金属元素の水酸化物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。
前記アンモニウムの水酸化物としては、例えば、水酸化アンモニウム、第4級アンモニウム水酸化物、第4級ホスホニウム水酸化物などが挙げられる。
前記アルカリ金属の炭酸塩としては、例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどが挙げられる。
前記防腐防黴剤としては、例えば、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウムなどが挙げられる。
前記キレート試薬としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、ウラミル二酢酸ナトリウムなどが挙げられる。
前記防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオジグリコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムニトライトなどが挙げられる。
前記酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む)、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤などが挙げられる。
前記紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、ニッケル錯塩系紫外線吸収剤などが挙げられる。
−インクジェット用インクの製造方法−
前記インクジェット用インクは、負の電荷を有する粒子、水溶性有機溶剤、界面活性剤、浸透剤及び水、更に必要に応じてその他の成分を水性媒体中に分散又は溶解し、更に必要に応じて攪拌混合して製造する。前記攪拌混合は、例えば、サンドミル、ホモジナイザー、ボールミル、ペイントシェイカー、超音波分散機等により行うことができ、攪拌混合は通常の攪拌羽を用いた攪拌機、マグネチックスターラー、高速の分散機等で行うことができる。
−インクジェット用インク物性−
前記インクジェット用インクの物性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粘度、表面張力等が以下の範囲であることが好ましい。
前記インクジェット用インクの25℃での粘度としては、5mPa・s〜20mPa・sが好ましい。前記インク粘度が5mPa・s以上とすることによって、印字濃度や文字品位を向上させる効果が得られる。一方、前記インク粘度を20mPa・s以下に抑えることで、吐出性を確保することができる。
ここで、前記粘度は、例えば、粘度計(RE−550L、東機産業株式会社製)を使用して25℃で測定することができる。
前記インクジェット用インクの静的表面張力としては、25℃での静的表面張力が20mN/m〜35mN/mが好ましく、20mN/m〜30mN/mがより好ましい。前記静的表面張力が20mN/m〜35mN/mの場合には、浸透性を高めることでブリーディングの低減に効果が高く、普通紙印字での乾燥性が良好となる。前処理層に濡れ易いということで、発色性が良く白ポチも改良される。前記静的表面張力が、35mN/mを超えると、被記録剤上のインクのレベリングが起こり難く、乾燥時間の長時間化を招くことがある。
前記インクジェット用インクの着色としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックなどが挙げられる。これらの着色を2種以上併用したインクセットを使用して記録を行うと、多色画像を形成することができ、全色併用したインクセットを使用して記録を行うと、フルカラー画像を形成することができる。
<後処理工程>
前記後処理工程は、前記記録用メディアの前記インクジェット用インクを飛翔させた面上に、後処理液を塗布し又は飛翔させて透明な保護層を形成する工程である。
前記後処理工程では、後処理液を塗布法又は飛翔(インクジェット吐出)させることができる。
前記後処理工程では、記録用メディアの画像表面の全体にわたって付与しても、画像表面の特定の部分のみに付与してもよい。前記後処理液を付与する方法としては、特に制限はなく後処理液の種類によって各種方法が適宜選択されるが、前記前処理液の塗布方法と同様の方法又は前記インクジェット用インクを飛翔させる方法のいずれかを好適に用いることができる。これらの中でも、装置構成や後処理液の保存安定性の点からインクジェット吐出法が特に好ましい。前記後処理工程は、形成された画像表面に乾燥付着量が0.5g/m2〜10g/m2となるように透明な樹脂を含む後処理液を付与して保護層を形成する工程である。
前記後処理液の乾燥付着量は0.5g/m2〜10g/m2が好ましく、2g/m2〜8g/m2がより好ましい。前記付着量が、0.5g/m2未満であると、画像品質(画像濃度、彩度、光沢度及び定着性)向上が殆ど見られず、10g/m2を超えると、保護層の乾燥性が低下し、画像品質向上効果も飽和していることから経済的にも不利となる。
本実施形態の画像形成方法においては、必要に応じて前記後処理液を塗布し又は飛翔させた前記記録用メディアを、加熱手段により100℃〜150℃に加熱し、前記インクジェット用インクを記録用メディアに熱定着させる定着工程を設けても良い。前記定着工程を設けることにより、画像記録物の光沢性及び定着性が向上する。ここで加熱手段としては、加熱されたローラやドラムヒーター等が好適に用いられ、前記加熱手段により熱定着する場合は、画像表面にロールヒーター、ドラムヒーターの平滑部を接触させることができる。加熱温度については、前記保護層に使用する熱可塑性樹脂の軟化点以上が好ましい
。しかし、画像品質、安全性及び経済性を考えると100℃〜150℃に加熱された定着ローラが好ましい。
<<後処理液>>
後処理液としては、記録用メディア上に透明な保護層を形成し得る成分を含有し、例えば、水分散性樹脂、界面活性剤、水、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。前記後処理液は、塗布又は飛翔させる方法によっても異なるが、画像部光沢性を出すために、又は画像部を樹脂層で保護する為に(光沢性・定着性向上)、紫外線照射により高分子化する成分を含んでなる樹脂組成物及び熱可塑性樹脂が好ましい。特に、光沢性・定着性向上の理由により熱可塑性樹脂エマルジョン(水分散性樹脂ともいう)が好ましい。なお、インクジェット記録装置により後処理液を飛翔させる場合には、湿潤剤を適当量含有することが好ましい。
−水分散性樹脂−
前記水分散性樹脂は、そのガラス転移温度(Tg)が−30℃以上であることが好ましく、−20℃〜100℃の範囲がより好ましい。前記水分散性樹脂の最低造膜温度(MFT)は50℃以下が好ましく、35℃以下がより好ましい。前記水分散性樹脂のガラス転移温度(Tg)が−30℃未満であると、水分の蒸発後も粘着剤の様にタック性があり、実使用が困難となることがある。前記水分散性樹脂の最低造膜温度(MFT)が50℃を超えると、ヒーター、温風等の乾燥手段を用いても短時間で成膜できないため、実使用が困難となることがある。前記水分散性樹脂のガラス転移温度は、例えばTMA法、DSC法及びDMA法(引張り法)により測定することができる。前記水分散性樹脂の最低造膜温度(MFT)は、例えば最低造膜温度測定装置(MFT型)により測定することができる。
前記水分散性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル−シリコーン樹脂、フッ素樹脂などが挙げられる。これらの水分散性樹脂は、前記インクジェット用インクに用いられる水分散性樹脂と同様のものを適宜選択して用いることができる。前記水分散性樹脂の前記保護層における含有量は、固形分で1質量%〜50質量%が好ましく、インクジェット記録装置により飛翔させる場合は1質量%〜30質量%が好ましい。前記樹脂含有量が50質量%を超えると、粘度が高くなる可能性があり、前記樹脂含有量が1質量%未満であると、成膜性が落ちたり、水分蒸発のためのエネルギーも多く必要になったりする。
前記後処理液の水分散性樹脂の平均粒径(D50)は、後処理液の粘度と関係しており、組成が同じものでは粒径が小さくなるほど同一固形分での粘度が大きくなる。後処理液にした時に過剰な高粘度にならないためにも水分散性樹脂の平均粒子径(D50)は50nm以上が好ましい。また、粒径が数十μmになると後処理液を飛翔させる装置のヘッドのノズル口より大きくなるため好ましくない。ノズル口より小さくとも粒子径の大きな粒子が後処理液中に存在すると吐出性を悪化させる。そこで、インク吐出性を阻害させないために後処理液の平均粒子径(D50)は200nm以下がより好ましく、150nm以下が更に好ましい。
前記界面活性剤としては、特に制限はなく、前記インクジェット用インクに用いられる界面活性剤と同様のものから目的に応じて適宜選択することができる。前記その他の成分としては、例えば、防カビ剤、消泡剤、pH調整剤などが挙げられる。
<記録用メディア>
本実施形態の画像形成方法に用いられる記録用メディアとしては、吸液特性が一定範囲内であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、要求される画像品質を考えると、塗工紙、グロス紙、コート紙、アート紙、スーパーアート紙と呼ばれる汎用印刷用紙が好適である。
これらの中でも、画像品質(画像濃度、彩度、ビーディング、カラーブリード)に優れ、かつ光沢性が高く、更にスミア定着性にも優れた画像が記録できる点から、吸液特性が一定範囲内の一般印刷用紙が好適であり、具体的には、動的走査吸液計で測定した接触時間100msにおける純水の記録用メディアへの転移量が1mL/m2〜10mL/m2である印刷用紙が用いられる。前記接触時間100msでの前記前処理液、前記インク及び純水の転移量が少なすぎると、ビーディング(濃度ムラ)及びカラーブリード(色間の滲み)が発生しやすくなることがあり、多すぎると、記録後のインクドット径が所望の径よりも小さくなり、ベタ画像が上がらないことがある。
ここで、前記動的走査吸液計(dynamic scanning absorptometer;DSA,紙パ技協誌、第48巻、1994年5月、第88〜92頁、空閑重則)は、極めて短時間における吸液量を正確に測定できる装置である。前記動的走査吸液計は、吸液の速度をキャピラリー中のメニスカスの移動から直読する、試料を円盤状とし、この上で吸液ヘッドをらせん状に走査する、予め設定したパターンに従って走査速度を自動的に変化させ、1枚の試料で必要な点の数だけ測定を行う、という方法によって測定を自動化したものである。紙試料への液体供給ヘッドはテフロン(登録商標)管を介してキャピラリーに接続され、キャピラリー中のメニスカスの位置は光学センサで自動的に読み取られる。具体的には、動的走査吸液計(K350シリーズD型、協和精工株式会社製)を用いて、純水の転移量を測定した。接触時間100msにおける転移量は、それぞれ接触時間の近隣接触時間における転移量の測定値から補間により求めることができる。
前記吸液特性が一定範囲内の印刷用紙としては、市販品を用いることができ、該市販品としては、例えば、リコービジネスコーグロス100(株式会社リコー製)、OKトップコート+、OK金藤+、SA金藤+(王子製紙株式会社製)、スーパーMIダル、オーロラコート、スペースDX(日本製紙株式会社製)、αマット、ミューコート(北越製紙株式会社製)、雷鳥アート、雷鳥スーパーアート(中越パルプ工業株式会社製)、パールコートN(三菱製紙株式会社製)などが挙げられる。また、前記吸液特性が一定範囲内の一般印刷用紙としては、以下に説明する、支持体の少なくとも一方の面上に塗工層を有するものが好適である。
−支持体−
前記支持体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、木材繊維主体の紙、木材繊維及び合成繊維を主体とした不織布のようなシート状物質などが挙げられる。
前記紙としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、木材パルプ、古紙パルプなどが用いられる。前記木材パルプとしては、例えば、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、NBSP、LBSP、GP、TMPなどが挙げられる。
前記古紙パルプの原料としては、財団法人古紙再生促進センターの古紙標準品質規格表に示されている、上白、罫白、クリーム白、カード、特白、中白、模造、色白、ケント、白アート、特上切、別上切、新聞、雑誌などが挙げられる。具体的には、情報関連用紙である非塗工コンピュータ用紙、感熱紙、感圧紙等のプリンタ用紙;PPC用紙等のOA古紙;アート紙、コート紙、微塗工紙、マット紙等の塗工紙;上質紙、色上質、ノート、便箋、包装紙、ファンシーペーパー、中質紙、新聞用紙、更紙、スーパー掛け紙、模造紙、純白ロール紙、ミルクカートン等の非塗工紙、などの紙や板紙の古紙で、化学パルプ紙、高歩留りパルプ含有紙などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記古紙パルプは、一般的に、以下の4工程の組み合わせから製造される。
(1)離解は、古紙をパルパーにて機械力と薬品で処理して繊維状にほぐし、印刷インキを繊維より剥離する。
(2)除塵は、古紙に含まれる異物(プラスチックなど)及びゴミをスクリーン、クリーナー等により除去する。
(3)脱墨は、繊維より界面活性剤を用いて剥離された印刷インキをフローテーション法、又は洗浄法で系外に除去する。
(4)漂白は、酸化作用や還元作用を用いて、繊維の白色度を高める。
前記古紙パルプを混合する場合、全パルプ中の古紙パルプの混合比率は、記録後のカール対策から40%以下が好ましい。
前記支持体に使用される内添填料としては、例えば、白色顔料として従来公知の顔料が用いられる。前記白色顔料としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、リトポン、ゼオライト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム等のような白色無機顔料;スチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン、マイクロカプセル、尿素樹脂、メラミン樹脂等のような有機顔料、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記支持体を抄造する際に使用される内添サイズ剤としては、例えば、中性抄紙に用いられる中性ロジン系サイズ剤、アルケニル無水コハク酸(ASA)、アルキルケテンダイマー(AKD)、石油樹脂系サイズ剤などが挙げられる。これらの中でも、中性ロジンサイズ剤又はアルケニル無水コハク酸が特に好適である。前記アルキルケテンダイマーは、そのサイズ効果が高いことから添加量は少なくて済むが、記録用メディア表面の摩擦係数が下がり滑りやすくなるため、インクジェット記録時の搬送性の点からは好ましくない場合がある。
前記支持体の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50μm〜300μmが好ましい。また、支持体の坪量は、45g/m2〜290g/m2が好ましい。
−塗工層−
前記塗工層は、顔料及びバインダー(結着剤)を含有してなり、更に必要に応じて、界面活性剤、その他の成分を含有してなる。前記顔料としては、無機顔料、若しくは無機顔料と有機顔料を併用したものを用いることができる。
前記無機顔料としては、例えば、カオリン、タルク、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、非晶質シリカ、チタンホワイト、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、クロライトなどが挙げられる。これらの中でも、カオリンは光沢発現性に優れており、オフセット印刷用の用紙に近い風合いとすることができる点から特に好ましい。前記カオリンには、デラミネーテッドカオリン、焼成カオリン、表面改質等によるエンジニアードカオリン等があるが、光沢発現性を考慮すると、粒子径が2μm以下の割合が80質量%以上の粒子径分布を有するカオリンが、カオリン全体の50質量%以上を占めていることが好ましい。前記カオリンの添加量は、前記バインダー100質量部に対し50質量部以上が好ましい。前記添加量が50質量部未満であると、光沢度において十分な効果が得られないことがある。前記添加量の上限は特に制限はないが、カオリンの流動性、特に高せん断力下での増粘性を考慮すると、塗工適性の点から、90質量部以下がより好ましい。
前記有機顔料としては、例えば、スチレン−アクリル共重合体粒子、スチレン−ブタジエン共重合体粒子、ポリスチレン粒子、ポリエチレン粒子等の水溶性ディスパージョンがある。これら有機顔料は2種以上が混合されてもよい。
前記有機顔料の添加量は、前記塗工層の全顔料100質量部に対し2質量部〜20質量部が好ましい。前記有機顔料は、光沢発現性に優れていることと、その比重が無機顔料と比べて小さいことから、嵩高く、高光沢で、表面被覆性の良好な塗工層を得ることができる。前記添加量が、2質量部未満であると、前記効果がでなくなることがあり、20質量部を超えると、塗工液の流動性が悪化し、塗工操業性の低下に繋がることと、コスト面からも経済的ではない。前記有機顔料には、その形態において、密実型、中空型、ドーナツ型等があるが、光沢発現性、表面被覆性及び塗工液の流動性のバランスを鑑み、平均粒子径(D50)は0.2μm〜3.0μmが好ましく、より好ましくは空隙率40%以上の中空型が採用される。
前記バインダーとしては、水性樹脂を使用するのが好ましい。前記水性樹脂としては、水溶性樹脂及び水分散性樹脂の少なくともいずれかを好適に用いられる。前記水溶性樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、アセタール変性ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコールの変性物;ポリウレタン;ポリビニルピロリドン及びポリビニルピロリドンと酢酸ビニルの共重合体、ビニルピロリドンとジメチルアミノエチル・メタクリル酸の共重合体、四級化したビニルピロリドンとジメチルアミノエチル・メタクリル酸の共重合体、ビニルピロリドンとメタクリルアミドプロピル塩化トリメチルアンモニウムの共重合体等のポリビニルピロリドンの変性物;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース;カチオン化ヒドロキシエチルセルロース等のセルロースの変性物;ポリエステル、ポリアクリル酸(エステル)、メラミン樹脂、又はこれらの変性物、ポリエステルとポリウレタンの共重合体等の合成樹脂;ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリルアミド、酸化澱粉、燐酸エステル化澱粉、自家変性澱粉、カチオン化澱粉、又は各種変性澱粉、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリル酸ソーダ、アルギン酸ソーダ、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、インク吸収性の観点から、ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、アセタール変性ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエステルとポリウレタンの共重合体が特に好ましい。
前記水分散性樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル系重合体、酢酸ビニル−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、ポリビニルエーテル、シリコーン−アクリル系共重合体、などが挙げられる。また、メチロール化メラミン、メチロール化尿素、メチロール化ヒドロキシプロピレン尿素、イソシアネート等の架橋剤を含有してよいし、N−メチロールアクリルアミドなどの単位を含む共重合体で自己架橋性を持つものでもよい。これら水性樹脂の複数を同時に用いることも可能である。
前記水性樹脂の添加量は、前記顔料100質量部に対し、2質量部〜100質量部が好ましく、3質量部〜50質量部がより好ましい。前記水性樹脂の添加量は記録用メディアの吸液特性が所望の範囲に入るように決定される。
前記着色剤として水分散性の着色剤を使用する場合には、塗工層にカチオン性有機化合物は必ずしも配合する必要はないが、塗工層に配合されるカチオン性有機化合物は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択使用することができる。前記塗工層に配合されるカチオン性有機化合物としては、例えば、水溶性インク中の直接染料や酸性染料中のスルホン酸基、カルボキシル基、アミノ基等と反応して不溶な塩を形成する1級〜3級アミン、4級アンモニウム塩のモノマー、オリゴマー、ポリマーなどが挙げられる。これらの中でも、オリゴマー又はポリマーが好ましい。
前記カチオン性有機化合物としては、例えば、ジメチルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物、ジメチルアミン・アンモニア・エピクロルヒドリン縮合物、ポリ(メタクリル酸トリメチルアミノエチル・メチル硫酸塩)、ジアリルアミン塩酸塩・アクリルアミド共重合物、ポリ(ジアリルアミン塩酸塩・二酸化イオウ)、ポリアリルアミン塩酸塩、ポリ(アリルアミン塩酸塩・ジアリルアミン塩酸塩)、アクリルアミド・ジアリルアミン共重合物、ポリビニルアミン共重合物、ジシアンジアミド、ジシアンジアミド・塩化アンモニウム・尿素・ホルムアルデヒド縮合物、ポリアルキレンポリアミン・ジシアンジアミドアンモニウム塩縮合物、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド、ポリジアリルメチルアミン塩酸塩、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド・二酸化イオウ)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド・ジアリルアミン塩酸塩誘導体)、アクリルアミド・ジアリルジメチルアンモニウムクロライド共重合物、アクリル酸塩・アクリルアミド・ジアリルアミン塩酸塩共重合物、ポリエチレンイミン、アクリルアミンポリマー等のエチレンイミン誘導体、ポリエチレンイミンアルキレンオキサイド変性物、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、ジメチルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物、ポリアリルアミン塩酸塩等の低分子量のカチオン性有機化合物と他の比較的高分子量のカチオン性有機化合物、例えば、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)等とを組み合わせて使用するのが好ましい。併用により、単独使用の場合よりも画像濃度を向上させ、フェザリングが更に低減される。
前記カチオン性有機化合物のコロイド滴定法(ポリビニル硫酸カリウム、トルイジンブルー使用)によるカチオン当量は3meq/g〜8meq/gが好ましい。前記カチオン当量がこの範囲であれば上記乾燥付着量の範囲で良好な結果が得られる。ここで、前記コロイド滴定法によるカチオン当量の測定に当たっては、カチオン性有機化合物を固形分0.1質量%となるように蒸留水で希釈し、pH調整は行わないものとする。
前記カチオン性有機化合物の乾燥付着量は0.3g/m2〜2.0g/m2が好ましい。前記カチオン性有機化合物の乾燥付着量が0.3g/m2より低いと、充分な画像濃度向上やフェザリング低減の効果が得られないことがある。
前記塗工層に必要に応じて含有される界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、アニオン活性剤、カチオン活性剤、両性活性剤、非イオン活性剤のいずれも使用することができる。これらの中でも、非イオン活性剤が特に好ましい。前記界面活性剤を添加することにより、画像の耐水性が向上するとともに、画像濃度が高くなり、ブリーディングが改善される。
前記非イオン活性剤としては、例えば、高級アルコールエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、高級脂肪族アミンエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドエチレンオキサイド付加物、油脂のエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、グリセロールの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、ソルビトール及びソルビタンの脂肪酸エステル、ショ糖の脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル、アルカノールアミン類の脂肪酸アミド等が挙られる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記多価アルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリット、ソルビトール、ショ糖などが挙げられる。また、エチレンオキサイド付加物については、水溶性を維持できる範囲で、エチレンオキサイドの一部をプロピレンオキサイドあるいはブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドに置換したものも有効である。置換率は50%以下が好ましい。前記非イオン活性剤のHLB(親水性/親油性比)は4〜15が好ましく、7〜13がより好ましい。
前記界面活性剤の添加量は、前記カチオン性有機化合物100質量部に対し、10質量部以下が好ましく、0.1質量部〜1.0質量部がより好ましい。
前記塗工層には、本発明の目的及び効果を損なわない範囲で、更に必要に応じて、その他の成分を添加することができる。前記その他の成分としては、アルミナ粉末、pH調整剤、防腐剤、酸化防止剤等の添加剤が挙げられる。
前記塗工層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記支持体上に塗工層液を含浸又は塗布する方法により行うことができる。前記塗工層液の含浸又は塗布方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、コンベンショナルサイズプレス、ゲートロールサイズプレス、フィルムトランスファーサイズプレス、ブレードコーター、ロッドコーター、エアーナイフコーター、カーテンコーターなど各種塗工機で塗工することも可能であるが、コストの点から、抄紙機に設置されているコンベンショナルサイズプレス、ゲートロールサイズプレス、フィルムトランスファーサイズプレスなどで含浸又は付着させ、オンマシンで仕上げてもよい。 前記塗工層液の付着量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、固形分で、0.5g/m2〜20g/m2が好ましく、1g/m2〜15g/m2がより好ましい。
前記含浸又は塗布の後、必要に応じて乾燥させてもよく、この場合の乾燥の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、100℃〜250℃程度が好ましい。
前記記録用メディアは、更に支持体の裏面にバック層、支持体と塗工層との間、また、支持体とバック層間にその他の層を形成してもよく、塗工層上に保護層を設けることもできる。これらの各層は単層であっても複数層であってもよい。
<装置>
本実施形態の画像形成方法において、前記前処理液を記録用メディアに付与し、前記インクジェット用インクで画像を形成するための装置について、図1の具体例を用いて説明する。図1の装置は、インクジェット記録用ヘッドを走査して画像形成するタイプの記録装置である。
図1の前処理付与及びインクジエット記録装置において、記録用メディア6は給紙ローラ7によって送り出され、付与ローラ4とカウンタローラ5によって前処理液1が記録用メディア6に均一に薄く付与される。前処理液1は汲み上げローラ3によって汲み上げられ、膜厚制御ローラ2によって付与ローラ4に均一に付与される。前処理液1を付与された記録用メディア6はインクジェット記録ヘッド20のある記録走査部まで送られる。
前処理液付与動作の終了部(図1A部)から記録走査開始部(図1B部)までの用紙経路の長さは記録用メディアの送り方向の長さより長く設定されているので記録用メディアが記録走査開始部に到達した時点では前処理液の付与を完全に終了することができる。この場合、前処理液の付与は、インクジェット記録ヘッド20が印字のための走査を開始し、記録用メディア6が間欠的に搬送される前に実施できるため、記録用メディア6の搬送速度が一定の状態で連続的に付与でき、ムラのない均一な付与が可能となる。なお、図1の装置例では前処理の必要な記録用メディア6は下段のカセットから、必要のないか処理されては困る記録用メディア17は上段のカセットから供給するようになっているため、記録用メディア搬送経路を長く設けるのに好都合である。
図2は本実施形態の画像記録方法を実現するための装置の別の具体例である。図2の装置例も、インクジェット記録用ヘッドを走査して画像形成するタイプの記録装置である。図1の装置に比べ、コンパクトな装置構成とした例である。記録用メディア17は給紙ローラ7によって送り出され付与ローラ4とカウンタローラ5によって前処理液1が記録用メディアに均一に薄く付与される。前処理液は汲み上げローラ3によって汲み上げられ、膜厚制御ローラ2によって付与ローラ4に均一に付与されている。記録用メディア17は前処理液1を付与されながらインクジェット記録ヘッド20のある記録走査部を通過し、記録用メディアが前処理液の塗布を完了するまで送られ、記録用メディアが前処理液の付与を完了した時点で再び記録用メディア先頭が記録走査開始位置に至るまで戻される。付与完了は、例えば、前処理液付与装置の出口近傍に、公知の記録用メディア検知手段(図示されず)を設けることにより検出することができる。この検知手段は必ずしも必要が無く、あらかじめ記録用メディアの長さの情報をコントローラにインプットし、モータの回転数を制御することにより、記録用メディアの搬送ローラの外周の送り量を記録用メディアの長さに対応するようなシステム構成としてもよい。
前処理液1が付与された記録用メディア17は、前処理液が乾燥固化する前に、再び記録走査位置に搬送されてくるが、この際には、インクジエット記録ヘッド20の走査とタイミングを合わせて、間欠的に搬送される。記録用メディアを戻すとき送られてきた経路と同じ経路を戻すと記録用メディアの後端が前処理液付与装置に逆進入することになり塗りムラや汚れ、記録用メディアジャムなどの不具合が起こるが、記録用メディアを戻すときは記録用メディアガイド31で方向を切り替える。すなわち、記録用メディア17に前処理液1を付与した後、記録用メディアを逆送する時には、記録用メディアガイド31を図の点線の位置に、ソレノイドやモータなどの公知の手段で移動せしめる。これにより、記録用メディア17は、記録用メディア戻しガイド34の位置に搬送されるので、記録用メディアを汚したり、ジャムが生じたりすることを防止できる。
前処理工程は連続的に、10mm/s〜1,000mm/sの一定の線速度で行うことが好ましい。このために、この装置の例では、枚葉の記録用メディアを用い、ある枚葉の記録用メディアについてみると、記録用メディアに前処理液を付与する工程をその枚葉について終了した後に、インクジェット記録方法により画像を記録する工程を始める。このように装置においては、前処理液付与の速度と画像記録との速度が殆どの場合に一致しないので、その枚葉の記録開始部と記録終了部とでは、前処理液が付与されてから画像が記録されるまでの時間に差があることになる。この差がかなり大きくなった場合にも、水よりも沸点が高く、蒸発速度の小さな親水性の溶媒を多量に含み、プリンタを使用している環境での空気中の水分と平衡する量に近い水分比率に調製されている前処理液では、液からの水分蒸発が著しく抑制されるため、枚葉の記録用メディアの、記録開始部と記録終了部で生じる画像品質の差を、少なくとも目視で観察できる水準以下にすることができる。
この装置での記録用メディアの搬送工程からも明らかなように、前処理液を付与した後、画像を形成するために、前処理液の付与された記録用メディアをローラ、コロ、ガイドなどの記録用メディアに接触する手段で記録用メディアを搬送することが必要になる場合が多い。このような場合に、記録用メディアに付与された前処理液が記録用メディアの搬送部材に転写してしまうと、搬送機能に障害を生じたり、汚れが蓄積したりして、画像品質が低下してしまうという問題を生じる。この問題を防止するには、装置側から、例えばガイドを波板にしたり、コロを拍車状にしたり、ローラの表面を撥水性の材料にしたりするという手段を講じ、問題の発生を軽減することができる。
しかしながら、記録用メディアに付与された前処理液は、極力速やかに記録用メディアに吸収され、見かけ上は乾燥された状態にすることが望ましい。この目的を達成するためには、前処理液の表面張力を30mN/m以下として、速やかに液が記録用メディアに浸透するようにすることが有効である。前処理液付与後の「乾燥固化」は、上記のように、記録用メディアに前処理液が吸収されて、見かけ上乾燥したようになることを意味するものではなく、水分など前処理液中液状化合物が蒸発し、液体状態を保てなくなり固化することを意味している。前記前処理液を上記のように前処理液付与装置と画像記録装置がセットになった記録装置を用いることにより、前処理液が記録用メディアに吸収され、見かけ上は乾燥している状態になっていても、前処理液が固化していない状態で、インクジェット記録を行うことができ、前処理液の付与量が極めて少ない量においても、画像品質を著しく向上できる。
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、実施例中において使用する「部」、「%」はそれぞれ、全て「質量部」、「質量%」を表す。
(調製例1)
−水溶性カチオン性ポリマーの作製−
攪拌機、温度計、還流冷却管及び窒素ガス導入管を付した500mLの四つ口フラスコに水95.1g、58%トリメチルアミン塩酸塩水溶液131.8g(0.8モル)を仕込み、窒素ガス導入下で40℃を越えないように冷却しながらエピクロロヒドリン74.0g(0.8モル)を3時間かけて滴下した。
滴下終了後、80℃まで昇温させ1時間かけて反応させた。
その後、30℃に冷却し、50%ジメチルアミン水溶液36.1g(0.4モル)と水酸化カルシウム14.8g(0.2モル)とを加え、80℃まで昇温させ1時間かけて反応させた。
その後、塩酸及び水にて反応液をpH4.0、固形分濃度50%となるように調整し、水溶性カチオン性ポリマーを得た。
(調製例2)
−水溶性カチオン性ポリマーの作製−
攪拌機、温度計、及び窒素ガス導入管を付した1,000mLのガラス製オートクレーブ反応器に50%ジメチルアミンを200.0g(2.218モル)、30%トリメチルアミンを174.8g(0.887モル)仕込み、窒素置換後40℃に冷却しながらエピクロロヒドリン246.0g(2.659モル)を2時間かけて導入し、同温度で1時間、更に80℃まで昇温させ3時間熟成させた。
冷却後、35%塩酸46.2g、及び75%リン酸0.87gを用いてpHを5.0に調整し、更に固形分濃度が60%になるように純水で希釈して水溶性カチオン性ポリマーを得た。
(調製例3〜17)
−前処理液の作製−
各前処理液の製造は、以下の手順で行った。まず、表1に示す材料を1時間攪拌し均一な混合を得た。この混合物を平均孔径5.0μmのポリビニリデンフロライドメンブランフィルターにて加圧濾過し、不溶物等のごみを除去して、調製例3〜17の各前処理液を作製した。
下記に表1で用いた材料の情報(製造会社名)を示す。
* 乳酸アンモニウム塩 : 株式会社武蔵野化学研究所製
* 乳酸 : 扶桑化学工業株式会社製
* リンゴ酸 : 扶桑化学工業株式会社製
* 1−アミノ−2−プロパノール : 東京化成工業株式会社製
* 2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール : 東京化成工業株式会社製
* 2−(メチルアミノ)エタノール : 東京化成工業株式会社製
* ジエチルアミノエタノール : 東京化成工業株式会社製
* 3−メトキシプロピルアミン : 東京化成工業株式会社製
* エマルゲン LS−106 : 花王株式会社製
[評価1:金属腐食性]
金属腐食性について、前処理液1〜15中にステンレス片(規格名:SUS303)を浸漬し、室温環境下(評価環境:温度23±1℃、湿度50±10%)で2週間放置し、金属腐食性を下記評価基準により、目視で判定した。結果を表2に示す(実施例1〜11、比較例1〜4)。
◎ : 全く腐食なし
○ : 金属光沢が僅かに減少
△ : 僅かに腐食あり
× : 明らかな腐食あり
前処理液1〜11を用いた実施例1〜11については、前処理液の金属腐食性が認められなかった。
これに対して、そのpHが5より低い前処理液12を使用した比較例1、あるいは、分子量500を超える水溶性カチオンポリマーの含有量が10.0%を超えた前処理液13〜15を使用した比較例2〜4については、前処理液が顕著な金属腐食性を示した。
(調製例18〜25)
−記録用インクの作製−
実施例及び比較例で用いた水性インクを以下のようにして調製した。
インク調製例で用いた顔料分散体の製品名、製造会社名は以下の通りである。
下記表3に示すように、水溶性有機溶剤(湿潤剤)、浸透剤、界面活性剤、防黴剤、及び水を混合し、1時間攪拌を行い均一に混合した。顔料分散体、消泡剤、及びpH調整剤を添加し、1時間攪拌した。この分散液を平均孔径5.0μmのポリビニリデンフロライドメンブランフィルターにて加圧濾過し、粗大粒子及びごみを除去して、調製例18〜25の各記録用インク(インク1〜8)を作製した。
下記に表3中の略号、用いた材料の情報(製造会社名)等を示す。
* ブラック分散体 : PABK49M、花王株式会社製
* シアン分散体 : PAC205、花王株式会社製
* マゼンタ分散体 : PAM206、花王株式会社製
* イエロー分散体 : PAY204、花王株式会社製
なお、上記各分散体は水性インク中で着色剤を含む負の電荷を有する粒子として分散する。
* ゾニールFS−300 : デュポン社製
* ユニセーフA−LM : 日油株式会社製
* プロキセルLV :アベシア社製
* シリコーン消泡剤 KF−640 : 信越化学株式会社製
* シリコーン消泡剤 KF−630 : 信越化学株式会社製
[評価2:ビーディング、評価3:定着性]
塗工層を有する記録媒体(ルミアートグロス 90gsm、STORA ENSO社製)に対し、その塗工層面に、前処理液1〜15を、ローラ塗布法により1.9g/m2付与した。次に、前記各前処理液で処理された前記記録媒体上に、水性インクジェット法により、負の電荷を有する顔料粒子が分散されたインクを、解像度600dpi×600dpi、シングルパス方式で吐出して、評価画像を形成した(実施例12〜22、比較例5〜8)。
その際、形成した評価画像は全て同じで、シアン(記録用インク1)とイエロー(記録用インク5)を1.2:1.0の比率で用いた、インク付着量3.2×10−6g/m2のグリーンベタ画像であった。
ビーディングを下記評価基準により、目視で判定した。結果を表4に示す。
◎ : ビーディングがみられない
○ : 目を凝らすと、僅かにビーディングがみられる
△ : ビーディングが少しみられる
× : 明らかなビーディングあり
上記ビーディングの評価で用いた画像を1日室温下で自然放置した後、記録媒体(ルミアートグロス 90gsm、STORA ENSO社製)を用いて画像部を擦り、インクの転写を下記評価基準により目視で判定した。結果を表4に示す。
◎ : インクの転写がみられない
○ : 目を凝らすと、僅かにインクの転写がみられる
△ : 転写が少しみられる
× : 明らかな転写あり
画像のビーディングの発生は、前処理液中の凝集剤の含有量(分子量50〜500の凝集剤と分子量500を超える凝集剤の含有量の合計)に依存する傾向を示した。
画像の定着性は、分子量500を超える凝集剤の含有量が大きくなると、定着性が悪化する傾向を示した。
本発明の画像形成方法は、シングルパス方式を用いる、前処理を施した塗工紙へのインクジェット印刷に適用しても、ビーディングが起こらず、定着性にも優れ、後処理工程を必要としないことが分かった。
本発明の態様としては、以下のとおりである。
<1> 担持体の少なくとも一方の面上に塗工層を有する記録用メディアの前記塗工層を有する面に、負の電荷を有する粒子を凝集させる性質を有する前処理液を塗布する前処理工程と、
前記前処理液を塗布した前記塗工層面上に、前記負の電荷を有する粒子が分散されたインクジェット用水性インクをインクジェット法により吐出させて画像を形成する画像形成工程と、を含む画像形成方法であって、
前記前処理液は水溶性凝集剤を含有し、前記水溶性凝集剤のうち少なくとも1つが分子量50〜500の水溶性凝集剤であり、更に分子量500を超える水溶性凝集剤を含有する場合においては、前記前処理液における、前記分子量500を超える水溶性凝集剤の含有率が10.0質量%以下であり、
前記前処理液のpHは5以上であることを特徴とする画像形成方法である。
<2> 分子量50〜500の水溶性凝集剤が有機酸とモノアミンからなる有機酸中和塩である前記<1>に記載の画像形成方法である。
<3> モノアミンが下記一般式(I)〜(III)で示されるモノアミンのいずれかである前記<2>に記載の画像形成方法である。
ただし、前記一般式(I)において、R1、R2、及びR3はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜8のアルキル基、ヒドロキシエチル基、及びヒドロキシプロピル基のいずれかを表す。
ただし、前記一般式(II)において、R4は炭素数1〜4のアルキル基を有するヒドロキシ基を表し、R5はメチル基、エチル基、及びヒドロキシメチル基のいずれかを表し、R6は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、及びヒドロキシメチル基のいずれかを表す。
ただし、前記一般式(III)中、R7、R8はそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基を表す。
<4> 有機酸が乳酸である前記<2>から<3>のいずれかに記載の画像形成方法である。
<5> 分子量500を超える水溶性凝集剤が水溶性カチオンポリマーである前記<1>から<4>のいずれかに記載の画像形成方法である。
<6> 前処理液のpHが5〜8である前記<1>から<5>のいずれかに記載の画像形成方法である。
<7> 前記<1>から<6>のいずれかに記載の画像形成方法により形成されたことを特徴とする画像形成物である。