WO2023243493A1 - インクジェット用処理液、並びに、それを用いたインクセット及び捺染方法 - Google Patents

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Abstract

本開示の一局面は、カチオン性ポリマー及びコハク酸を含有し、ハロゲンイオン濃度が5g/L以下であり、かつpHが7~9.5である、インクジェット用処理液に関する。

Description

インクジェット用処理液、並びに、それを用いたインクセット及び捺染方法
 本開示は、インクジェット用処理液に関する。さらには、それを用いたインクセット及び捺染方法に関する。
 インクジェット記録方式では、インク塗布に先立って、前処理液を塗布することが知られている。例えば、インク中の色材と凝集物を形成する成分として微粒子を含有する処理液を用いる方法が報告されている。
 特許文献1には、シリカ微粒子を含有する無色の液体を被記録材に付着させた後に、オイルブラックを含む非水系記録液を付着させるインクジェット記録方法が開示されている。また、特許文献2には、微粒子又は微粒子とバインダーポリマーを含有する溶液を処理液として使用することが開示されている。
 このような微粒子を含有する液体は反応性微粒子を分散状態で含有するため、大量の反応成分を添加することができる。しかしながら、上記反応性微粒子を含む液体組成物は、成分の製造過程で不可避に腐食性イオンが含有され、色材と反応性を有する成分の分散安定性を確保するために塩素イオンや酸といった腐食性イオンが副イオンとして添加されている等の理由により、腐食性イオンを高濃度に該液体組成物中に含有している。このため、該液体組成物をそのまま処理液の原材料として用いたとき、多くの場合該腐食性イオンによる接液上の問題が生じ、処理液を吐出するヘッドの金属系材料を溶かしてしまうおそれがあった。
 この腐食性イオンによる接液性の問題に対して、カチオン性ポリマーを含む処理液における塩素イオン濃度を3000ppm以下と規定することで接液性の改善がなされるという報告がある(特許文献3)。また、色材と反応性を有する成分を1種類以上含有する処理液を製造する際に、製造過程でイオン交換法によりイオンを置換するイオン交換法により、腐食性を有するイオン(ハロゲンイオン)を腐食性のより低いイオンに置換することを特徴とする処理液の製造法も報告されている(特許文献4)。
特開平4-259590号公報 特開平6-92010号公報 特開平10-237372号公報 特開2004-90456号公報
 本開示の一局面に関するインクジェット用処理液は、カチオン性ポリマー及びコハク酸を含有する。また、ハロゲンイオン濃度が5g/L以下であり、かつpHが7~9.5である。
図1は、本実施形態のインクジェット用処理液を使用して行う、インクジェット記録の一例である。 図2は、本開示の一実施形態に係る記録装置の全体構成を示す斜視図である。 図3は、図2のIII-III線の模式的な断面図である。 図4は、図2に示すキャリッジの拡大斜視図である。
 上述したような特許文献3の記載によれば、液体組成物を構成するカチオン性物質としては、カチオン性ポリマー、カチオン性界面活性剤等が用いられるが、これらの合成・精製の際に行われる酸処理等に起因する塩酸根等の塩素イオンを多少ではあるが含むとある(段落0008)。従って、この塩素濃度を3000ppm以下にした場合、色材との反応成分であるカチオン性ポリマーの添加量を高くすることができず、色材との凝集効果が十分に得られなくなると考えられる。
 また、特許文献4記載の技術のように、イオン交換法によってハロゲンイオンを除去すると、カチオン性ポリマーは熱に不安定になるため、加熱により処理液を塗布した箇所が黄変してしまうという問題があることがわかってきた。
 一方、上述した特許文献1~4はいずれも普通紙などの紙媒体への印刷を行うためのインクジェット用処理液であり、布等への捺染に使用されることは想定されていない。捺染に使用されるインクジェット記録の場合、通常は、前処理として結着樹脂を含む処理液を使用している。この結着樹脂が繊維の隙間に浸透し、繊維同士を結着してしまうため、生地がごわつき、肌触り等の風合いを損ねてしまうという捺染特有の問題もあった。
 以下、本開示に係る実施形態について具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
 [インクジェット用処理液]
 本開示の一実施形態に係るインクジェット用処理液(以下、単に「処理液」と称することもある)は、カチオン性ポリマー及びコハク酸を含有し、ハロゲンイオン濃度が5g/L以下であり、かつpHが7~9.5である。
 本実施形態の処理液は、インク塗布に先立って、記録対象に塗布される前処理液である。この処理液に含まれるカチオン性ポリマーが、その後に塗布されるインクに含まれる顔料と反応凝集し、優れた発色性を担保することができる。
 すなわち、本開示のインクジェッド用処理液によれば、インクジェット記録において、インクジェットヘッド部材の腐食及び記録媒体の黄変を抑制でき、優れた発色性(画像濃度)を得ることができる。さらに、本開示のインクジェット処理液を捺染に使用すると、生地の風合いも良好になるという利点がある。
 本実施形態の処理液では、ハロゲンイオン濃度が低いため、ハロゲンイオンによるインクジェットヘッド部材の腐食を抑制することができる。また、コハク酸を含み、pHが上記範囲であることによって、ハロゲン濃度の低いカチオン性ポリマーが黄変することを低減することができる。つまり、本実施形態では処理液の黄変を抑制できる。さらに、記録媒体の黄変を抑制できるため、例えば、捺染に本実施形態の処理液を使用する場合には、捺染対象の生地などの黄変を抑制できる。
 また、本実施形態の処理液はコハク酸を含むが、コハク酸塩は乳酸塩等と比較すると水系溶媒(水、及び、水に溶解する有機溶媒)に対する溶解性が高い。上述した処理液の効果を高めるためには前記カチオン性ポリマーの配合量を多くすることが好ましいが、乳酸塩などでは溶解性の観点から十分な量を配合できないおそれがある。この点、コハク酸塩は溶解性が高いことから、十分な量のカチオン性ポリマーを配合できるため、黄変を抑制しつつ、優れた発色性および生地の風合いを得ることが可能となる。
 すなわち、本実施形態のインクジェット用処理液によれば、インクジェット記録において、インクジェットヘッド部材の腐食及び記録媒体の黄変を抑制でき、優れた発色性(画像濃度)を得ることができる。さらに、本実施形態のインクジェット処理液を捺染に使用すると、生地の風合いも良好になるという利点がある。
 本実施形態のインクジェット用処理液に含まれるカチオン性ポリマーは、プラスに帯電するカチオン性ポリマーであれば特に限定はされないが、例えば、アンモニウム含有ポリマー、アミン含有ポリマー、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリイミン、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリビニルピリジン、アミノアセタール化ポリビニルアルコール、イオネンポリマー、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルベンジルホスホニウム、ポリアルキルアリルアンモニウム、ポリアミジン、ポリアミンスルホン等のカチオン性ポリマーが挙げられる。これらの中でも、より優れた発色性が得られるという観点から、4級アンモニウム含有ポリマー、ジアリルジメチルアンモニウム二酸化硫黄共重合体、ジアリルジメチルアンモニウムクロリドアクリルアミド共重合体、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド重合体、ジメチルアミン・アンモニア・エピクロルヒドリン重縮合物、ジメチルアミン・アンモニア・エピクロルヒドリン重縮合物等が特に好ましく例示される。これらは、1種単独で、または、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
 本実施形態で使用するカチオン性ポリマーの重量平均分子量は、特に限定はされないが、1000~10000程度であることが好ましい。前記分子量がこの範囲であれば、インクジェットヘッドからの吐出性がより良好となると考えられる。
 前記カチオン性ポリマーの含有量は、処理液全体に対して、0.3重量%以上35重量%以下であることが好ましい。カチオン性ポリマーの含有量が前記範囲であることにより、発色性(画像濃度)がより高まり、また、記録媒体の黄変をより抑制できると考えられる。前記カチオン性ポリマーの含有量のより好ましい下限値は、0.5重量%以上であり、さらには1重量%以上である。また、より好ましい上限値は、29.5重量%以下であり、さらには20重量%以下である。
 本実施形態の処理液は、さらにコハク酸を含むが、コハク酸はコハク酸イオンの形態で含有されていてもよい。
 前記コハク酸の含有量は、処理液全体に対して、20重量%以下であることが好ましい。コハク酸の含有量が前記範囲であることにより、発色性(画像濃度)がより高まり、また、記録媒体の黄変をより抑制できると考えられる。前記コハク酸の含有量のより好ましい上限値は、18重量%以下であり、さらには15重量%以下である。
 また、コハク酸含有量の下限値については特に限定はされないが、カチオンポリマーを安定化させる効果を得るという観点から0.5重量%以上であることが好ましく、1重量%以上であることがより好ましい。
 本実施形態の処理液において、前記カチオン性ポリマーと前記コハク酸との重量比(カチオン性ポリマー/コハク酸)は0.20以上3.50以下であることが好ましい。それにより、カチオンポリマーを安定化させるといった利点がある。前記重量比のより好ましい範囲は、0.25以上3.00以下である。
 本実施形態の処理液において、上述した成分以外の残部は、通常、水、あるいは、水と有機溶剤からなる水性溶媒である。
 処理液が含有することができる有機溶剤としては、グリコール類、アルコール類、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ケトン類、エステル類、エーテル類、植物油等が挙げられる。水溶性有機溶媒としては、例えば、多価アルコール、多価アルコールのエーテル化合物、含窒素化合物、アルコール化合物、含硫黄化合物、炭酸プロピレン及び炭酸エチレンが挙げられる。
 多価アルコールとしては、例えば、炭素原子数5以上8以下の第1ジオール化合物、炭素原子数2以上4以下の第2ジオール化合物、1,2,6-ヘキサントリオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、糖アルコール(例えば、キシリトール)、及び糖類(例えば、キシロース、グルコース及びガラクトース)が挙げられる。
 第1ジオール化合物としては、例えば、2-メチルペンタン-2,4-ジオール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、及び1,2-ヘキサンジオールが挙げられる。
 第2ジオール化合物としては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ブチレングリコール及びジエチレングリコールが挙げられる。
 多価アルコールのエーテル化合物としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル及びジグリセリンのエチレンオキシド付加物が挙げられる。
 含窒素化合物としては、例えば、ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン及びトリエタノールアミンが挙げられる。
 アルコール化合物としては、例えば、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール及びベンジルアルコールが挙げられる。
 含硫黄化合物としては、例えば、チオジエタノール、チオジグリセロール、スルフォラン及びジメチルスルホキシドが挙げられる。
 上述した有機溶剤の中でも、プロピレングリコール等のグリコール類、等を使用することが好ましい。これらは、1種単独で、または、2種以上を組み合わせて使用することができる。
 処理液が有機溶剤を含む場合、その含有量は、処理液全体に対し、3重量%以上、50重量%以下であることが好ましい。有機溶剤を前記範囲で含有することによって、安定な吐出が可能な粘度の処理液が提供可能である、また、処理液の乾燥を低減できるといった利点がある。
 さらに、本実施形態の処理液には、適正な表面張力に調整するという目的で、界面活性剤が含有されていてもよい。使用できる界面活性剤に特に限定はなく、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤等が例示として挙げられる。
 処理液が界面活性剤を含む場合、その含有量は、処理液全体に対し、0.1重量%以上、5重量%以下であることが好ましい。界面活性剤を前記範囲で含有することによって、安定な吐出が可能な表面張力の処理液が提供可能であるといった利点がある。
 本実施形態の処理液には、本実施形態の効果を損なわない限り、その他の添加剤を含有させてもよい。添加剤としては、例えば溶解安定剤、乾燥防止剤、酸化防止剤、粘度調整剤、pH調整剤及び防カビ剤等が挙げられる。
 本実施形態の処理液においては、上述したように、ハロゲンイオン濃度が上述したように5g/L以下であり、かつpHが7~9.5である。ハロゲンイオン濃度の調整は、後述のように、イオン交換樹脂を用いてハロゲンイオン濃度が調整されたカチオン性ポリマーを得ることによって行うことができる。
 また、処理液のpHの調整は、例えば、コハク酸の添加量の調整によって行うことが可能である。
 処理液のハロゲンイオン濃度はより好ましくは3g/L以下である。また、処理液のより好ましいpH範囲は7~9である。
 [処理液の製造方法]
 本実施形態の処理液の製造方法については、特に限定はないが、一例を説明する。まず、カラムに塩基性イオン交換樹脂を充填し、カチオン性ポリマーを通過させて、ハロゲンイオン濃度を下げた調整カチオン性ポリマーを得る。
 得られた調整カチオン性ポリマーと、コハク酸と、水性溶媒、および、必要に応じて添加される成分(例えば、界面活性剤等)を混合することによって、本実施形態の処理液を得ることができる。
 [処理液を用いたインクジェット記録方法]
 次に、本実施形態の処理液の使用方法等について説明する。本実施形態の処理液は、例えば、図1に示すようなインクジェット記録装置10において、前処理液として使用することができる。
 具体的には、図1に示すインクジェット記録装置10は、処理ヘッド1と記録ヘッド2を有し、記録ヘッド2は、第1記録ヘッド2a、第2記録ヘッド2b、第3記録ヘッド2c、第4記録ヘッド2dを備えていてもよい。
 処理ヘッド1は、記録対象Pの少なくとも画像形成領域に、画像形成前の前処理のために処理液を吐出する。ここで使用される処理液は、上述した処理液である。処理ヘッド1としては、特に限定されないが、例えば、ピエゾ方式ヘッド及びサーマルインクジェット方式ヘッドが挙げられる。本実施形態のインクジェット捺染装置10はさらに、前記処理液を収容する処理液タンク(図示せず)を1つ以上備えていてもよく、その場合、当該処理液タンクから前記処理ヘッド2に処理液が供給される。
 記録ヘッド2は、記録対象Pの画像形成領域に、インクを吐出する。記録ヘッド2が有する、第1記録ヘッド2a、第2記録ヘッド2b、第3記録ヘッド2c、及び第4記録ヘッド2dは、それぞれ、異なる色のインク(例えば、イエローインク、マゼンタインク、シアンインク、及びブラックインク)を吐出する。記録ヘッドの数は4つに限定されるわけではなく、記録ヘッドの数が1~3個又は5個以上であってもよい。記録ヘッド2としては、特に限定されないが、例えば、ピエゾ方式ヘッド及びサーマルインクジェット方式ヘッドが挙げられる。
 載置台3には、記録対象Pが載置される。記録対象Pに処理液及びインクが吐出可能なように、載置台3の上方に、処理ヘッド1及び記録ヘッド2が配設されている。モーター(不図示)の駆動により、載置台3は、処理ヘッド1から記録ヘッド2に向かう方向(例えば、図1の左方向)に、水平に移動する。載置台3が水平に移動することにより、載置台3上の記録対象Pが搬送される。
 本実施形態において、記録対象Pは、特に限定はされず、普通紙などの媒体でもよいが、本実施形態の処理液は、捺染用途で使用されることにより、さらなる効果を発揮できる。よって、記録対象Pは、捺染対象となり得る媒体であることが好ましい。
 インクジェット記録の形成においては、まず、記録対象Pを載置した載置台3が水平に移動して、処理ヘッド1と対向する位置に、記録対象Pが搬送される。処理ヘッド1から記録対象Pに処理液が吐出される。処理ヘッド1は、記録対象Pの画像形成領域のみに処理液を吐出してもよく、記録対象Pの画像形成領域よりも広い領域に処理液を吐出してもよく、記録対象Pの全面に処理液を吐出してもよい。処理液の使用量を低減させて捺染物の触感の低下を抑制するために、処理ヘッド1は、記録対象Pの画像形成領域のみに処理液を吐出することが好ましい。
 処理ヘッド1から処理液が吐出された後、記録対象Pを載置した載置台3が更に水平に移動して、記録ヘッド2と対向する位置に、記録対象Pが搬送される。そして、記録ヘッド2から、記録対象Pの画像形成領域に、インクが吐出される。このようにして、記録対象Pの画像形成領域に、インクによって画像が形成される。
 図示はしていないが、前記記録ヘッド2によりインクが吐出された後、記録対象Pを載置した載置台3が更に水平に移動して、別の処理ヘッドから後処理液が吐出されてもよい。後処理液とは、同様に記録対象Pに付着しても発色しない非発色性の処理液であって、記録ヘッド2により記録対象P上に印画されたインク画像の定着性や堅牢性(擦れや削れに対する耐性)を高める機能を発現する処理液である。このような後処理液としては、シリコーン系の処理液等を用いることができる。このようにして、記録対象Pの画像形成領域に形成された画像上に、後処理液によって処理膜が形成される。
 後処理液が吐出された後、記録対象Pを載置した載置台3が更に水平に移動して、加熱部(不図示)と対向する位置に、記録対象Pが搬送され、加熱部が記録対象Pを加熱することにより、インク及び処理液が乾燥する。加熱温度は、例えば、120℃以上180℃以下である。加熱時間は、例えば、1分以上10分以下である。加熱により、インク及び処理液に含まれる揮発成分が乾燥し、記録対象Pへのインク及び処理液の固定が促進される。その結果、インクにより画像が形成され且つ処理液により処理された記録対象Pが形成される。
 なお、本実施形態の処理液は、上記インクジェット記録装置10への使用に限定されず、例えば、以下の変形例で示すように変更可能である。例えば、インクジェット記録装置10は、処理液を吐出する処理ヘッド1の代わりに、処理液を散布するスプレーを備えていてもよい。あるいは、処理液による処理は、処理液が貯留されている槽に記録対象Pを浸漬することにより実施されてもよい。また、上記インクジェット記録装置10においては載置台3が水平に移動したが、載置台3が固定された状態で、処理ヘッド1及び記録ヘッド2が水平に移動してもよい。あるいは、記録対象Pの搬送方向に、載置台3が水平に移動、又は処理ヘッド1及び記録ヘッド2が水平に移動すると共に、処理ヘッド1及び記録ヘッド2が、記録対象Pの搬送方向と直行する方向に水平に移動してもよい。
 すなわち、処理ヘッド1及び記録ヘッド2を備えている限り、インクジェット記録装置の様式に関わらず、本実施形態の処理液を用いることによる効果を得ることができる。
 [インク]
 本実施形態の処理液と共にインクジェット記録に用いられるインクは特に限定はされないが、例えば、顔料と、水性媒体とを含有するインクを使用できる。インクは、必要に応じて、界面活性剤、ポリオール、及びバインダー樹脂粒子からなる群から選択される少なくとも1種を更に含有してもよい。
 顔料は、例えば、水性媒体に分散して存在する分散性顔料を使用できる。画像濃度、色相、及び色の安定性に優れたインクを得る観点から、顔料の体積中位径(D50)は、30nm以上250nm以下であることが好ましく、70nm以上160nm以下であることがより好ましい。なお、本明細書において、体積中位径(D50)の測定値は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製「LA-950」)を用いて測定されたメディアン径である。
 顔料としては、例えば、黄色顔料、橙色顔料、赤色顔料、青色顔料、紫色顔料、及び黒色顔料が挙げられる。黄色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー(74、93、95、109、110、120、128、138、139、151、154、155、173、180、185、及び193)が挙げられる。橙色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ(34、36、43、61、63、及び71)が挙げられる。赤色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド(122及び202)が挙げられる。青色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー(15、より具体的には15:3)が挙げられる。紫色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントバイオレット(19、23、及び33)が挙げられる。黒色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブラック(7)が挙げられる。
 顔料の含有率は、インク全体の重量に対して、1重量%以上12重量%以下であることが好ましく、1重量%以上7重量%以下であることがより好ましい。顔料の含有率が1重量%以上であることで、形成される記録物の画像濃度を向上できる。また、顔料の含有率が12重量%以下であることで、流動性の高いインクが得られる。
 特に、本実施形態のインクは、アニオン性の顔料を含有していることが好ましい。それにより、上述した処理液に含まれるカチオン性ポリマーと、アニオン性顔料が、記録対象の表面で電気的に反応凝集を起こすため、インクに含まれる結着樹脂(後述のバインダー樹脂)が記録媒体に浸透することを抑制できる。これは、記録媒体が生地である場合に、結着樹脂が繊維の隙間に浸透し、繊維同士を結着してしまうことを低減することができる。それにより、捺染対象の生地の風合い(肌触り等)を高めることができる。
 アニオン性の顔料としては、具体的には、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、フェニルスルホン酸基、フェニルカルボキシル基等のアニオン基を有するアニオン性顔料がより好ましい。
 本実施形態のインクに含有される水性媒体は、水を主成分とする媒体である。水性媒体は、溶媒として機能してもよく、分散媒として機能してもよい。水性媒体の具体例としては、水、又は水と極性溶媒との混合液が挙げられる。水性媒体に含有される極性溶媒の例としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、及びメチルエチルケトンが挙げられる。水性媒体における水の含有率は、90重量%以上であることが好ましく、100重量%であることが特に好ましい。水性媒体の含有率は、インク全体の重量に対して、5重量%以上70重量%以下であることが好ましく、40重量%以上60重量%以下であることがより好ましい。
 さらに、インクが界面活性剤を含有することで、記録対象に対するインクの濡れ性が向上する。界面活性剤としては、例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、及び両性界面活性剤が挙げられる。インクに含有される界面活性剤は、非イオン界面活性剤であることが好ましい。非イオン界面活性剤は、アセチレングリコール構造を有する界面活性剤であることが好ましく、アセチレンジオールエチレンオキサイド付加物であることがより好ましい。界面活性剤のHLB値は、3以上20以下であることが好ましく、6以上16以下であることがより好ましく、7以上10以下であることが更に好ましい。界面活性剤のHLB値は、例えば、グリフィン法により式「HLB値=20×(親水部の式量の総和)/分子量」から算出される。画像のオフセットを抑制しつつ、画像濃度を向上させるために、界面活性剤の含有率は、インク全体の重量に対して、0.1重量%以上5.0重量%以下であることが好ましく、0.5重量%以上2.0重量%以下であることがより好ましい。
 さらに、インクがポリオールを含有することで、インクの粘度が好適に調整される。インクに含有されるポリオールとしては、ジオール又はトリオールが好ましい。ジオールとしては、例えば、グリコール化合物が挙げられ、より具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコ-ル、及びテトラエチレングリコールが挙げられる。トリオールとしては、例えば、グリセリンが挙げられる。
 インクがポリオールを含有する場合、インクの粘度を好適に調整するために、ポリオールの含有率は、インク全体の重量に対して、5以上60重量%以下であることが好ましく、20重量%以上50重量%以下であることがより好ましい。
 本実施形態のインクに含まれるバインダー樹脂粒子は、水性媒体中に分散した状態で存在する。バインダー樹脂粒子は、捺染対象と顔料とを結合させるバインダーとして機能する。このため、インクがバインダー樹脂粒子を含有することで、顔料の定着性に優れた捺染物を得ることができる。
 バインダー樹脂粒子が含有する樹脂としては、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、スチレン-(メタ)アクリル樹脂、スチレン-マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン-(メタ)アクリル酸共重合体、及びビニルナフタレン-マレイン酸共重合体が挙げられる。バインダー樹脂粒子が含む樹脂としては、ウレタン樹脂が好ましい。バインダー樹脂粒子におけるウレタン樹脂の含有率は、80重量%以上であることが好ましく、100重量%であることがより好ましい。
 バインダー樹脂の含有率は、インク全体の重量に対して、1重量%以上20重量%以下であることが好ましく、2重量%以上10重量%以下であることがより好ましい。バインダー樹脂粒子の含有率が1重量%以上であると、顔料の定着性に優れた記録対象を得ることができる。一方、バインダー樹脂粒子の含有率が20重量%以下であると、記録対象にインクを安定的に吐出できる。
 さらに本実施形態のインクは、必要に応じて、公知の添加剤(より具体的には、溶解安定剤、乾燥防止剤、酸化防止剤、粘度調整剤、pH調整剤、及び防カビ剤等)を更に含有してもよい。
 本実施形態で使用するインクは、例えば、攪拌機を用いて、顔料と、水性媒体と、必要に応じて添加される成分(例えば、界面活性剤、ポリオール、及びバインダー樹脂粒子)とを混合することにより製造される。混合時間は、例えば、1分以上30分以下である。
 [インクセット]
 本実施形態には、上述したインクジェット用処理液と、インクジェット用インクとを含むインクセットも包含される。
 インクジェット用インクとしては、アニオン性顔料を含むインクであることが好ましく、さらに、アニオン性顔料とバインダー樹脂を含むインクであることが好ましい。
 特に、本実施形態のインクセットは、捺染用に使用した場合に、特に、捺染対象の風合いを高めるという優れた効果を発揮するため、捺染用インクセットであることが好ましい。
 [捺染方法]
 本実施形態には、上述したインクジェット用処理液と、インクジェット用インクとを用いる捺染方法も包含される。
 多くの布種に対して印刷を可能とする顔料インクを用いる場合、顔料を生地表面に固定する必要がある。生地表面に固定できないと摩擦堅ろう性に劣る。一方で、顔料とバインダー樹脂が生地の表面に留まらず、奥深くに浸透すると発色性に劣るだけでなく、繊維間にインクやバインダー樹脂が入り込むことで、手触りが固くなる、つまり風合が悪化するという問題もある。
 本実施形態の捺染方法によれば、上述の処理液を使用することで、前記問題を改善できる。
 具体的な方法は、上述の「処理液を用いたインクジェット記録方法」で記載した記録方法と、記録対象を捺染対象に変更する以外は、実質的に同じ方法で行うことができる。捺染対象としてはあらゆる布が含まれ、具体的には、織物であってもよいし、編み物であってもよいし、不織布であってもよい。例えば、綿生地、絹生地、麻生地、アセテート生地、レーヨン生地、ナイロン生地、ポリウレタン生地、及びポリエステル生地が挙げられる。
 捺染時のインクジェット用インクとしては、上述したインクのうち、アニオン性顔料を含むインクを用いることが好ましく、さらに、アニオン性顔料とバインダー樹脂を含むインクを用いることが好ましい。
 本実施形態の捺染方法によれば、インクジェットヘッド部材の腐食、及び、捺染対象の黄変を抑制しつつ、優れた発色性を得ることができ、さらに、捺染対象である生地の風合いの劣化も抑えることができるため、産業利用上、非常に有用である。
 本実施形態において、前記処理液は生地に前もってパディングドライする等の手間が必要なく、インクジェットシステムで生地に載せることで、生地の調整の手間を大きく削減することができるという利点もある。
 [記録装置]
 さらに、図1で示した記録装置10について詳述する。以下では、記録装置の具体例として、広幅で長尺の記録媒体に画像形成用のインクを吐出するインクヘッドを備えたインクジェット式プリンターを例示する。インクジェット式プリンターは、織物や編物等の生地からなる記録媒体に、文字類や模様等の画像をインクジェット方式で印刷するデジタル捺染印刷に好適である。もちろん、本開示に係る記録装置は、紙シートや樹脂シート等の記録媒体に各種の画像を印刷する用途にも用いることができる。
 ・インクジェット式プリンターの全体構成
 図2は、本開示の第1実施形態に係るインクジェット式プリンター100の全体構成を示す斜視図であり、図3は、図2のIII-III線の模式的な断面図である。インクジェット式プリンター100は、広幅且つ長尺のワークW(記録媒体)にインクジェット方式で画像を印刷するプリンターである。一例として、ワークWの幅は、数メートルに及ぶ。プリンター100は、装置フレーム11と、この装置フレーム11に組み込まれたワーク搬送部20及びキャリッジ300とを含む。なお、本実施形態では、左右方向がワークWに対する印刷の際の主走査方向S(図4)、後方から前方に向かう方向が副走査方向(主走査方向Sと交差する方向であるワークWの搬送方向F)である。
 装置フレーム11は、インクジェット式プリンター100の各種構成部材を搭載するための骨組みを形成している。ワーク搬送部20は、インクジェット印刷処理が行われる印刷領域においてワークWが、後方から前方に向かう搬送方向Fに進行するように、当該ワークWを間欠送りする(搬送する)機構である。キャリッジ300は、インクヘッド4、前処理液ヘッド5、後処理液ヘッド6及びサブタンク7を搭載し、前記インクジェット印刷処理の際にワークWの搬送方向Fと交差する主走査方向S(左右方向)に往復移動する。
 装置フレーム11は、中央フレーム111、右フレーム112及び左フレーム113を含む。中央フレーム111は、インクジェット式プリンター100の各種構成部材を搭載するための骨組みを形成しており、ワーク搬送部20に応じた左右幅を有している。右フレーム112及び左フレーム113は、それぞれ中央フレーム111の右隣、左隣に立設されている。右フレーム112と左フレーム113との間が、ワークWに対して印刷処理が実行される印刷エリア12である。
 右フレーム112は、メンテナンスエリア13を形成する。メンテナンスエリア13は、前記印刷処理が実行されないときに、キャリッジ300を退避させるエリアである。メンテナンスエリア13では、インクヘッド4、前処理液ヘッド5及び後処理液ヘッド6のノズル(吐出孔)のクリーニング処理、パージ処理等が行われ、またキャップが被嵌される。左フレーム113は、キャリッジ300の折り返しエリア14を形成する。折り返しエリア14は、前記印刷処理において右方から左方へ印刷エリア12を主走査したキャリッジ300が、逆方向の主走査を行う際に一時的に入る領域である。
 装置フレーム11の上方側には、キャリッジ300に左右方向の往復移動を行わせるためのキャリッジガイド15が組み付けられている。キャリッジガイド15は、左右方向に長い平板状の部材であり、ワーク搬送部20の上方に配置されている。キャリッジガイド15には、タイミングベルト16が左右方向(主走査方向)に周回移動が可能に組み付けられている。タイミングベルト16は、無端ベルトであって、左方向又は右方向に周回移動するよう駆動される。
 キャリッジガイド15には、キャリッジ300を主走査方向Sに往復移動が可能な状態で保持する上下一対のガイドレール17が、左右方向に平行に延在するように装備されている。キャリッジ300は、ガイドレール17と係合している。また、キャリッジ300は、タイミングベルト16に固定されている。キャリッジ300は、タイミングベルト16の左方向又は右方向の周回移動に伴って、ガイドレール17に案内されつつ、キャリッジガイド15に沿って左方向又は右方向に移動する。
 図3を主に参照して、ワーク搬送部20は、印刷前のワークWを繰り出す送り出しローラー21と、印刷後のワークWを巻き取る巻き取りローラー22とを含む。送り出しローラー21は、装置フレーム11の後方下部に配置され、印刷前のワークWの巻回体である送り出しロールWAの巻き取り軸である。巻き取りローラー22は、装置フレーム11の前方下部に配置され、印刷処理後のワークWの巻回体である巻き取りロールWBの巻き取り軸である。巻き取りローラー22には、当該巻き取りローラー22を軸回りに回転駆動し、ワークWの巻き取り動作を実行させる第1モーターM1が付設されている。
 送り出しローラー21と巻き取りローラー22との間であって印刷エリア12を通る経路が、ワークWの搬送経路となる。この搬送経路には、上流側から順に第1テンションローラー23、ワークガイド24、搬送ローラー25及びピンチローラー26、折り返しローラー27、第2テンションローラー28が配置されている。第1テンションローラー23は、搬送ローラー25の上流側において、ワークWに所定の張力を付与する。ワークガイド24は、ワークWの搬送方向を上方向から前方向に変更し、ワークWを印刷エリア12へ搬入させる。
 搬送ローラー25は、印刷エリア12においてワークWを間欠送りする搬送力を発生するローラーである。搬送ローラー25は、第2モーターM2により軸回りに回転駆動され、ワークWがキャリッジ300に対向する印刷エリア12(画像形成位置)を通過するように、ワークWを前方向(所定の搬送方向F)に間欠的に搬送する。ピンチローラー26は、搬送ローラー25に対して上方から対向するように配置され、搬送ローラー25と搬送ニップ部を形成している。
 折り返しローラー27は、印刷エリア12を通過したワークWの搬送方向を前方向から下方向に変更し、印刷処理後のワークWを巻き取りローラー22へ導く。第2テンションローラー28は、搬送ローラー25の下流側において、ワークWに所定の張力を付与する。印刷エリア12においてワークWの搬送経路の下方には、プラテン29が配置されている。
 キャリッジ300は、ガイドレール17に片持ち支持された状態で、搬送方向Fと交差(本実施形態では直交)する主走査方向S(本実施形態では左右方向)に往復移動する。キャリッジ300は、キャリッジフレーム30と、このキャリッジフレーム30に搭載されるインクヘッド4、前処理液ヘッド5、後処理液ヘッド6及びサブタンク7(図4)とを備える。キャリッジフレーム30は、ヘッド支持フレーム31及びバックフレーム32を含む。
 ヘッド支持フレーム31は、上掲のヘッド4~6を保持する水平板である。バックフレーム32は、ヘッド支持フレーム31の後端縁から上方に延びる垂直板である。上述したように、タイミングベルト16は、バックフレーム32に固定されている。また、ガイドレール17は、バックフレーム32に係合されている。すなわち、本実施形態では、バックフレーム32がガイドレール17に片持ち状態で保持される係合部である。ヘッド支持フレーム31は、その後端側が前記係合部によってガイドレール17に片持ち支持された水平板である。
 なお、片持ち状態とは、キャリッジ300において、保持部材であるガイドレール17に保持されている部分である係合部(バックフレーム32)が、搬送方向Fにおいて、キャリッジ300の中央から上流側、若しくは下流側の片側のみに存在し、係合部が存在する側の反対側には、他の係合部が存在しない状態を表す。係合部は、さらに、搬送方向Fにおいて、インクヘッド4及び処理ヘッドが配置されている範囲以外に配置されていてもよい。すなわち、係合部は、搬送方向Fにおいて、インクヘッド4及び処理ヘッドが配置されている範囲に対して、上流側のみ、若しくは下流側のみに配置されていてもよい。
 ・キャリッジの詳細
 キャリッジ300について、さらに説明を加える。図4は、図2に示すキャリッジ300の拡大斜視図である。図4には、ワークWの搬送方向F(副走査方向)と、キャリッジ300の移動方向である主走査方向Sとが示されている。図4では、ワークWに対して画像形成用のインクを吐出する複数のインクヘッド4と、非発色性の処理液を吐出する前処理液ヘッド5及び後処理液ヘッド6と、これらのヘッド4~6に前記インク及び前記処理液を供給する複数のサブタンク7とが、キャリッジ300に搭載されている例を示している。
 インクヘッド4の各々は、例えばピエゾ素子を用いたピエゾ方式、加熱素子を用いたサーマル方式等の吐出方式でインク滴を吐出する多数のノズル(インク吐出孔)と、このノズルにインクを導くインク通路とを備える。インクとしては、例えば、上述したようなインクを用いることができる。本実施形態における複数のインクヘッド4は、8色のインクを吐出することが可能である。インクヘッド4は、主走査方向Sに二列で並ぶように、キャリッジ300のヘッド支持フレーム31に搭載されている。各色のインクヘッド4は、それぞれ2個のヘッドを有している。
 具体的に、インクヘッド4は、第1上流インクヘッド41Aと、第1下流インクヘッド41Bとを有する。これらのインクヘッド4はイエロー色のインクを吐出する。また、インクヘッド4は、第2上流インクヘッド42Aと、第2下流インクヘッド42Bとを有する。これらのインクヘッド4はマゼンタ色のインクを吐出する。同様に、図4に示すように、同じ色のインクを吐出する2つのインクヘッド4が搬送方向Fおよび主走査方向Sにおいて相互にずれた位置に配置されている。これらの2つのインクヘッド4を一組として、計8組のインクヘッド4(41A~48A、41B~48B)は互いに異なる色のインクを吐出する。
 前処理液ヘッド5及び後処理液ヘッド6は、搬送方向Fにおいてインクヘッド4とは異なる位置に配置されている。前処理液ヘッド5は、搬送方向Fにおいてインクヘッド4の上流側に配置されている。図4では、1個の前処理液ヘッド5がインクヘッド4の配列体の左端部付近に配置されている例を示している。同様に、後処理液ヘッド6は、搬送方向Fにおいてインクヘッド4の下流側に配置されている。図4では、1個の後処理液ヘッド6がインクヘッド4の配列体の右端部に配置されている例を示している。他の実施形態において、複数の前処理液ヘッド5または複数の後処理液ヘッド6が配置されてもよい。キャリッジ300には、少なくとも一つ前処理液ヘッド5および少なくとも一つの後処理液ヘッド6がそれぞれ備えられることが望ましいが、他の実施形態において、前処理液ヘッド5および後処理液ヘッド6は配置されていなくてもよい。
 なお、インクヘッド4、前処理液ヘッド5及び後処理液ヘッド6により構成されている、主走査方向Sに沿ったヘッドの連なりをヘッドの列、或いは単に列と称する。また、インクヘッド4、前処理液ヘッド5及び後処理液ヘッド6により構成されている、搬送方向Fに沿ったヘッドの連なりを、ヘッドの行、或いは単に行と称する。
 前処理液ヘッド5は、ワークWに対して所定の前処理を施すための前処理液を吐出する。前処理液は、インクヘッド4からワークWの、まだインクヘッド4からインクが吐出されていない位置に、前処理液ヘッド5から吐出される。前処理液としては、本実施形態の処理液を用いる。それにより処理液あるいは処理液の成分が黄変することを抑制できる。さらに、記録媒体の黄変を抑制できるため、例えば、捺染に本実施形態の装置を使用する場合には、捺染対象の生地などの黄変を抑制できる。
 後処理液ヘッド6は、インクが付着したワークWに対して所定の後処理を施すための後処理液を吐出する。後処理液は、ワークWの、インクヘッド4からインクが吐出された後の位置に、後処理液ヘッド6から吐出される。後処理液は、同様にワークWに付着しても発色しない非発色性の処理液であって、インクヘッド4によりワークW上に印画されたインク画像の定着性や堅牢性(擦れや削れに対する耐性)を高める機能を発現する処理液である。このような後処理液としては、シリコーン系の処理液等を用いることができる。なお、後処理液と前処理液とは異なる処理液である。具体的には、後処理液と前処理液とでは、含まれる成分が異なる。
 ここで、非発色性の処理液とは、記録媒体に単独で印刷した場合に、人に肉眼では発色したと認識されないものを表す。ここでの色とは、黒、白及び灰色などの彩度が0のものも含める。非発色性の処理液は、基本的には、透明な液体であるが、例えば、1リットルの処理液を液体の状態で見ると、完全に透明ではなく、わずかに白色などに見えることもある。そのような色は、非常に薄いので、記録媒体に単独で印刷した場合に、人が肉眼で発色したとは認識できない。なお、処理液の種類によっては、記録媒体に単独で印刷した場合に、記録媒体に光沢が生じるなどの変化があることもあるが、そのような状態は、発色ではない。
 本実施形態では、前処理液及び後処理液は、ワークWの略全面に吐出してもよいし、前処理液及び後処理液は、インクと同様に、印刷する画像に合わせて、選択的に吐出してもよい。
 続いて、前処理液及び後処理液を選択的に吐出する場合について説明する。上述したように、画像に合わせて色を印刷する部分のワークWには、前処理液、インク、後処理液の順で吐出される。この場合、インクは、一色であったり、複数の色であったりする。色を印刷しない部分、すなわち、インクが吐出されない部分には、基本的には前処理液及び後処理液も吐出されない。なお、印刷する画像の画質や、ワークWの風合いなどを調整するために、前処理液及び後処理液の吐出の選択の一部を、インクの吐出と異ならせてもよい。
 図4に示すように、ヘッド支持フレーム31のヘッドの配置箇所には、開口31Hが設けられている。インクヘッド4、前処理液ヘッド5及び後処理液ヘッド6は、各々の開口31Hに嵌め込まれるように、ヘッド支持フレーム31に組み付けられている。各開口31Hからは、各ヘッド4、5、6の下端面に配置されているノズルがそれぞれ露出している。
 複数のサブタンク7は、図略の保持フレームを介して、ヘッド4、5、6の上方側においてキャリッジ300に支持されている。複数のサブタンク7は、ヘッド4、5、6の各々に対応して設けられる。各サブタンク7には、インク及び処理液が収容されている後記のメインタンク90からインク又は処理液が供給され、これらをヘッド4、5、6の各々に供給する。各サブタンク7とヘッド4、5、6とは、図4では図略の管路によって接続される。
 具体的に、複数のサブタンク7は、後側において主走査方向Sに沿って配置された第1供給サブタンク71A~第8供給サブタンク78A、前処理供給サブタンク7FA、後処理供給サブタンク7RAを有する。更に、複数のサブタンク7は、前側において主走査方向Sに沿って配置された第1回収サブタンク71B~第8回収サブタンク78B、前処理回収サブタンク7FB、後処理回収サブタンク7RBを有する。
 キャリッジ300の最も左側に位置する第1供給サブタンク71Aおよび第1回収サブタンク71Bは、顔料を含むイエロー色のインクを貯留している。第1供給サブタンク71Aは、第1上流インクヘッド41Aおよび第1下流インクヘッド41B(いずれも供給先ともいう)に対してイエロー色インクを供給する。一方、第1回収サブタンク71Bは、第1上流インクヘッド41Aおよび第1下流インクヘッド41Bから回収したイエロー色インクを貯留する。なお、前述のように、一部のイエロー色インクは、第1上流インクヘッド41Aおよび第1下流インクヘッド41BからワークWに向かって吐出される。同様に、第2供給サブタンク72Aは、第2上流インクヘッド42Aおよび第2下流インクヘッド42Bに対してマゼンタ色インクを供給する。一方、第2回収サブタンク72Bは、第2上流インクヘッド42Aおよび第2下流インクヘッド42Bから回収したマゼンタ色インクを貯留する。その他の各第3サブタンクから各第8サブタンクまでも、上記と同様の構造および機能を有している。
 また、前処理供給サブタンク7FAは前処理液ヘッド5に対して前処理液を供給し、前処理回収サブタンク7FBは前処理液ヘッド5から前処理液を回収する。また、後処理供給サブタンク7RAは後処理液ヘッド6に対して後処理液を供給し、後処理回収サブタンク7RBは後処理液ヘッド6から後処理液を回収する。
 以上の通り、本実施形態に係るインクジェット式プリンター100は、インクヘッド4、前処理液ヘッド5及び後処理液ヘッド6の3種類のヘッドが、一つのキャリッジ300に搭載されたオールインワン型のプリンターである。このインクジェット式プリンター100によれば、例えばデジタル捺染印刷における、生地にインクジェット印刷を行う印捺工程において、前処理液の吐出工程及び後処理液の吐出工程を一体的に実行させることができる。従って、捺染工程の簡素化、捺染装置のコンパクト化を図ることができる。
 なお、本実施形態に係るインクジェット式プリンター100は、シリアル印刷方式でワークWに対して印刷処理を行う。具体的に、ワークWが幅広のサイズを有するものである場合、当該ワークWを連続的に送りながら印刷を行うことはできない。シリアル印刷方式は、各色のインクヘッド4を搭載したキャリッジ300の主走査方向Sへの往復移動と、ワークWの搬送方向Fへの間欠送りとを繰り返す印刷方式である。
 具体的に、キャリッジ300が主走査方向Sのうちの一の方向である往路方向に移動しながら、帯状画像の印刷が行われる。この往路方向の主走査の際、ワークWの送りは停止される。前記帯状画像の印刷後、ワークWは所定のピッチだけ搬送方向Fに送り出される。この際、キャリッジ300は、左端側の折り返しエリア14で待機する。ワークWの送り出し後、キャリッジ300はタイミングベルト16の反転移動に伴って、前記往路方向とは反対の復路方向に折り返す。ワークWは停止状態である。そして、キャリッジ300は復路方向に移動しつつ、前記帯状画像の上流側に、次の帯状画像を印刷する。以下、同様の動作が繰り返される。
 以下に、実施例により本開示をさらに具体的に説明するが、本開示は実施例により何ら限定されるものではない。
 (実施例1)
 ・カチオン性ポリマーの調整
 カラムに強塩基性イオン交換樹脂(OH型)0.5Lを充填し、「PAS-A5」(ニットーボーメディカル社製)1Lを流速50ml/minで通過させ、調整カチオン性ポリマー液1を得た。PAS-A5は4級アンモニウム塩のカチオン性ポリマー(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド・二酸化硫黄共重合体)である。得られた調整カチオン性ポリマー液1の固形分は40%であった。
 ・処理液の調製
 上記で得られた調整カチオン性ポリマー液1:3重量部(固形分)、コハク酸:2重量部、非イオン性界面活性剤「サーフィノール440」(日信化学工業社製):1重量部、プロピレングリコール:10重量部、残部:水を混合したのち、5μmのフィルターでろ過を行い、処理液1を得た(pH8.0、塩化物イオン濃度4.5g/L)。
 (実施例2)
 実施例1の調整カチオン性ポリマー液1を3重量部から0.5重量部に変更する以外は実施例1と同様にして処理液2を得た(pH7.9、塩化物イオン濃度1.0g/L)。
 (実施例3)
 実施例1のコハク酸を2重量部から1重量部に変更する以外は実施例1と同様にして処理液3を得た(pH7.9、塩化物イオン濃度3.5g/L)。
 (実施例4)
 ・カチオン性ポリマーの調整
 実施例1で得た調整カチオン性ポリマー液1をもう一度、カラムに流速50ml/minで通過させ、調整カチオン性ポリマー液2を得た。得られた調整カチオン性ポリマー液2の固形分は40%であった。
 ・処理液の調製
 調整カチオン性ポリマー液1の代わりに、上記で得た調整カチオン性ポリマー液2を30重量部(固形分)用いて、コハク酸の量を18重量部に変更する以外は、実施例1と同様にして処理液8を得た(pH8.9、塩化物イオン濃度4.5g/L)。
 (比較例1)
 「PAS-A5」(ニットーボーメディカル社製):3重量部(固形分)、1Nの水酸化ナトリウム:1%、非イオン性界面活性剤「サーフィノール440」(日信化学工業社製):1重量部、プロピレングリコール:10重量部、残部:水を混合したのち、5μmのフィルターでろ過を行い、処理液8を得た(pH7.3、塩化物イオン濃度5.6g/L)。
 (比較例2)
 調整カチオン性ポリマー液1:3重量部(固形分)、乳酸:0.5重量部、非イオン性界面活性剤「サーフィノール440」(日信化学工業社製):1重量部、プロピレングリコール:10重量部、残部:水を混合したのち、5μmのフィルターでろ過を行い、処理液9を得た(pH10.0、塩化物イオン濃度4.6g/L)。
 (比較例3)
 調整カチオン性ポリマー液1:3重量部(固形分)、非イオン性界面活性剤「サーフィノール440」(日信化学工業社製):1重量部、プロピレングリコール:10重量部、残部:水を混合したのち、5μmのフィルターでろ過を行い、処理液10を得た(pH10.9、塩化物イオン濃度4.6g/L)。
 (比較例5)
 調整カチオン性ポリマー液1:3重量部(固形分)、酢酸:0.8重量部、非イオン性界面活性剤「サーフィノール440」(日信化学工業社製):1重量部、プロピレングリコール:10重量部、残部:水を混合したのち、5μmのフィルターでろ過を行い、処理液11を得た。(pH8.4、塩化物イオン濃度4.6g/L)。
 (比較例6)
 調整カチオン性ポリマー液1:3重量部(固形分)、コハク酸:0.5重量部、非イオン性界面活性剤「サーフィノール440」(日信化学工業社製):1重量部、プロピレングリコール:10重量部、残部:水を混合したのち、5μmのフィルターでろ過を行い、処理液9を得た(pH10.2、塩化物イオン濃度4.6g/L)。
 (インクの調製)
 顔料濃度20%のアニオン性顔料分散体「AE-2078F」(山陽色素社製)、固形分38%のウレタン分散液「スーパーフレックス470」(第一工業製薬株式会社)、非イオン性界面活性剤「サーフィノール440」(日信化学工業株式会社製)、プロピレングリコール、水を用いてインクを作製した。
 具体的なインクの配合は、顔料:4重量%、ウレタン:8重量%、プロピレングリコール:30重量%、界面活性剤:1重量%、残部:水であった。前記割合で混合したのち、5μmのフィルターでろ過を行い、インクを得た。
 (後処理液の調製)
 シリコーンオイル含有率39%のシリコーンオイルのエマルジョン「POLON-MF-51」(信越化学工業社製)、プロピレングリコール、水を用いて後処理液を作製した。具体的な配合は、シリコーンオイル:10重量%、プロピレングリコール:30重量%、残部:水であった。前記割合で混合したのち、5μmのフィルターでろ過を行い、後処理液を得た。
 <印刷>
 インクジェット印刷には、京セラ製KJ4Bヘッドを搬送方向に並べたフラットベッド式印刷ジグを用いた。1つ目ヘッドに前処理液、2つ目のヘッドにインク、3つ目ヘッドに後処理液を投入し、以下の条件でインクジェット印刷を行った。なお、比較例4のみ前処理液なしで印刷を行った。
使用した布:ポリエステル トロピカル
布/ヘッド距離:3mm、ヘッド温度:25℃
乾燥:150℃3分(オーブン)
 <評価試験>
 (画像濃度)
 蛍光分光測色計FD-5(コニカミノルタ社製)を用いて測色した。評価の基準は以下の通りとした。
画像濃度(OD)1.3以上       「優良」発色性非常に良好
画像濃度(OD)1.25以上1.3未満 「良」発色性良好
画像濃度(OD)1.25未満      「不良」発色性不良
 (生地の黄変)
 蛍光分光測色計FD-5(コニカミノルタ社製)を用いて生地そのものの濃度と、前処理液の載った部位との濃度(Yellow)を測定し、両者の差をΔODとした。評価の基準は以下の通りである。
ΔOD:0.05未満       「優良」黄変が目視で分からず非常に良好
ΔOD:0.05以上0.10未満 「良」黄変が軽微であり良好
ΔOD:0.10以上       「不良」黄変
 (風合い)
 未使用の捺染対象を経糸に沿って(長さ方向に)に二つ折りにし、折り目における下側の生地と上側の生地との間の距離(ループ高さ)を測定した。測定された未使用の捺染対象のループ高さを、捺染前のループ高さとした。次に、評価用捺染物のソリッド画像が形成された領域を、経糸に沿って(長さ方向に)に二つ折りにし、ループ高さを測定した。測定された評価用捺染物のループ高さを、捺染後のループ高さとした。式「ループ高さの変化率=100×捺染後のループ高さ/捺染前のループ高さ」に従って、捺染前後におけるループ高さの変化率(単位:%)を算出した。ループ高さの変化率が低い程、捺染後も捺染対象が硬くならずふくらまないため、捺染物の触感の低下が抑制されていることを示す。評価基準は以下の通りとした。
130%未満 「良」風合いの変化が小さく良好
130%以上 「不良」風合いが固く変化し不良
 (金属部材の腐食)
 SUS430の約0.1gの片を精秤し、50mlのガラス瓶に処理液50gを計量した中に浸し、ガラス瓶の蓋をして、60℃で1か月間放置する。1か月後SUS430片を取り出し、イオン交換水をかけて洗浄した後、乾燥させ、重量を測定した。そして、以下の式で重量変化率を求めた。
放置後重量/放置前重量×100=重量変化率(%)
評価基準は以下の通りとした。
重量変化率(%):98-100% 「良」腐食無く重量変化が極小さい
重量変化率(%):98%未満   「不良」腐食が進み重量の減少が大きい
 以上の評価試験の結果を表1にまとめる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000001
 (考察)
 表1の結果から、本開示の処理液では、金属部材の腐食が抑制できることが確認できた。また、本開示の処理液を用いて印刷を行った場合、発色性(画像濃度)に優れ、生地の黄変も抑制できて、風合いにも優れる印刷物が得られることが示された。特に、実施例1~3と実施例4との比較から、カチオンポリマー量を少なくすることによって、より生地の黄変が抑制されることがわかった。
 一方、コハク酸を含有せず、ハロゲンイオン(塩化物イオン)濃度が5g/Lを超えていた処理液を用いた比較例1では金属部材の腐食が起こった。また、pHが9を超える処理液を使用した比較例2、比較例3及び比較例6では、生地の黄変が発生した。前処理液を使用しなかった比較例4では、画像濃度が落ち、風合いにも劣る結果となった。さらには、コハク酸の代わりに酢酸を使用した処理液を用いた比較例5でも、黄変が発生してしまった。このように、比較例は実施例に対する相対的な評価において劣る結果であったものの、比較例の実施内容そのものを排除もしくは放棄するものではない。
 1   処理ヘッド
 2   記録ヘッド
 2a  第1記録ヘッド
 2b  第2記録ヘッド
 2c  第3記録ヘッド
 2d  第4記録ヘッド
 3   載置台
 10  インクジェット記録装置
 P   記録対象

Claims (9)

  1.  カチオン性ポリマー及びコハク酸を含有し、ハロゲンイオン濃度が5g/L以下であり、かつpHが7~9.5である、インクジェット用処理液。
  2.  前記カチオン性ポリマーが4級アンモニウム含有カチオン性ポリマーを含む、請求項1に記載のインクジェット用処理液。
  3.  前記カチオン性ポリマーの含有量が、処理液全体に対して、0.3重量%以上35重量%以下である、請求項1に記載のインクジェット用処理液。
  4.  前記コハク酸の含有量が、処理液全体に対して、0.5重量%以上20重量%以下である、請求項1に記載のインクジェット用処理液。
  5.  前記カチオン性ポリマーと前記コハク酸の重量比(カチオン性ポリマー/コハク酸)が0.20以上3.50以下である、請求項1に記載のインクジェット用処理液。
  6.  捺染用である、請求項1~5のいずれかに記載のインクジェット用処理液。
  7.  アニオン性顔料を含むインクジェット用インクを使用する捺染用である、請求項6に記載のインクジェット用処理液。
  8.  請求項1~5のいずれか1項に記載のインクジェット用処理液と、
     アニオン性顔料を含むインクジェット用インクと、を有する、インクセット。
  9.  捺染対象に請求項1~5のいずれか1項に記載のインクジェット用処理液を塗布し、その後、前記インクジェット用処理液が塗布された領域にアニオン性顔料を含むインクジェット用インクを塗布することを含む、捺染方法。
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