JP6302228B2 - 溶融スラグ流量測定方法、溶融スラグ流量測定システム、及びコンピュータプログラム - Google Patents
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Description
高炉の安定操業を維持するためには、以上のような出銑口からの溶銑・溶融スラグの流出の滞りを的確に察知する必要がある。すなわち、タップ中に溶銑や溶融スラグの流出状況を常に監視しておくことが望ましい。
このような測定方法に類似した測定方法として、特許文献1に記載の技術がある。特許文献1では、溶銑なべの溶銑レベルを測定するマイクロ波レベル計の一定時間ごとの測定値から溶銑の流量を演算し、水砕設備で水砕されたスラグの質量を測定するコンベヤスケールの計測値から溶融スラグの流量を演算する方法が記載されている。
このように従来の技術では、水砕後の固化したスラグの質量を測定するため、タップ中の溶融スラグの流量を当該タップ中に正確に測定することが容易ではないという問題点があった。
<溶融スラグ流量測定システム>
図1は、溶融スラグ流量測定システムの構成の一例を示す図である。尚、図1では、高炉10全体のうち、出銑口10a付近の一部分のみを示している。
図1において、本実施形態の溶融スラグ流量測定システムは、出銑口10aから流出した出銑流20の熱画像(熱放射輝度の2次元分布)を撮像するCCDカメラ60と、CCDカメラ60で撮像された熱画像を処理する画像処理装置70とを有する。
また、出銑流20を鮮明に捉えるために、撮像された画像の分解能を2[mm]以下にするのが好ましい。
ところで、CCDカメラでは、0.4[μm]〜0.8[μm]程度の波長帯域の光についてのみ受光感度があり、しかもこの波長帯域内での受光感度は一定ではなく、特有の分光感度特性を有している。そこで、一定の狭い波長を有する光のみを透過する波長選択フィルタをCCDカメラ60に取り付けるようにするのが好ましい。具体的に本実施形態では、中心透過波長が0.65[μm]の光学バンドパスフィルタを波長選択フィルタとして、CCDカメラ60に取り付けた。
また、後述するように本実施形態では、時間的に連続する2枚の熱画像の画素値を2値化した2値化画像の絶対値差分をとった差分2値化画像を重ね合わせて表面波の領域を抽出する(図11を参照)。したがって、時間的に連続する熱画像を3枚以上撮像する。本発明者らは、このような表面波の領域を確実に抽出するために撮像枚数を10枚程度にするのが望ましいという知見を得た。
本実施形態では、出銑流20の形状を円筒形状に近似して、出銑流20の直径と移動速度とから定まる出銑流20の体積流量と、出銑流20における溶融スラグの混合比率と、溶融スラグの密度と、から、溶融スラグの質量流量を算出する。そのために本実施形態の画像処理装置70では、出銑流20の直径と、出銑流20の速度と、出銑流20における溶融スラグの混合比率と、を算出する。以下に、本実施形態の画像処理装置70の構成の一例を詳細に説明する。尚、以下の説明では、「質量流量」を必要に応じて「流量」と略称し、「出銑流20における溶融スラグの混合比率」、「出銑流20における溶銑の混合比率」を、それぞれ「溶融スラグ比率」、「溶銑比率」と称する。
図2は、画像処理装置70の機能的な構成の一例を示す図である。画像処理装置70のハードウェアは、例えば、CPU、ROM、RAM、HDD、及び各種のインターフェースを備えたコンピュータを用いることにより実現することができる。
熱画像入力部201は、前述したようにしてCCDカメラ60で撮像された出銑流20の熱画像のデータを入力して記憶する。
本実施形態では、CCDカメラ60により出銑流20の熱画像が得られる度に、CCDカメラ60から画像処理装置70(熱画像入力部201)に当該出銑流20の熱画像のデータが送信されるものとする。ただし、熱画像入力部201は、必ずしもこのようにして出銑流20の熱画像のデータを入力する必要はない。例えば、熱画像入力部201は、CCDカメラ60に、出銑流20の熱画像のデータの取得を要求し、この要求に応じて、CCDカメラ60が、出銑流20の熱画像のデータを、画像処理装置70(熱画像入力部201)に送信してもよい。
熱画像入力部201は、例えば、CPUが、CCDカメラ60から通信インターフェースを介して熱画像のデータを入力してHDD等に格納することにより実現される。
出銑流速度導出部202は、熱画像入力部201に入力された10枚単位の熱画像のデータを用いて、出銑流20の速度V[m/sec]を導出する。出銑流速度導出部202の詳細な機能については、図3、図4を参照しながら後述する。
出銑流速度導出部202は、例えば、CPUが、HDD等から、熱画像のデータを読み出して出銑流20の速度Vを算出し、そのデータをRAM等に記憶することによって実現される。
溶融スラグ比率導出部203は、熱画像入力部201に入力された10枚単位の熱画像のデータのうち、1枚の熱画像のデータを用いて、溶融スラグ比率R[−]を導出する。本実施形態では、熱画像入力部201に入力された10枚単位の熱画像のデータのうち、最も早い時間に得られた熱画像のデータを用いて、溶融スラグ比率Rを導出する。溶融スラグ比率導出部203の詳細な機能については、図5〜図7を参照しながら後述する。
溶融スラグ比率導出部203は、例えば、CPUが、HDD等から、熱画像のデータを読み出して溶融スラグ比率Rを算出し、そのデータをRAM等に記憶することによって実現される。
出銑流径導出部204は、熱画像入力部201に入力された10枚単位の熱画像のデータと、後述する表面波寄与率記憶部206に記憶された表面波寄与率k[−]とを用いて、出銑流20の実効直径(出銑流20の直径の想定値)Deffを導出する。出銑流径導出部204の詳細な機能については、図8〜図14等を参照しながら後述する。
出銑流径導出部204は、例えば、CPUが、HDD等から、熱画像のデータと表面波寄与率kのデータとを読み出して出銑流20の実効直径Deffを算出し、そのデータをRAM等に記憶することによって実現される。
表面波寄与率導出部205は、溶融スラグの流量の測定の対象となるタップよりも前のタップを対象としてCCDカメラ60で撮像されて熱画像入力部201に入力された10枚単位の熱画像のデータを用いて、表面波寄与率kを導出し、表面波寄与率記憶部206に記憶する。表面波寄与率kは、0以上1以下の範囲で実験的に定められるパラメータである。表面波寄与率kの詳細及び表面波寄与率導出部205の詳細な機能については、図15〜図17等を参照しながら後述する。
表面波寄与率導出部205は、例えば、CPUが、HDD等から、熱画像のデータを読み出して表面波寄与率kを算出することによって実現され、表面波寄与率記憶部206は、例えば、HDD等を用いることにより実現される。
溶融スラグ流量導出部207は、出銑流速度導出部202により導出された出銑流20の速度Vと、溶融スラグ比率導出部203により導出された溶融スラグ比率Rと、出銑流径導出部204により導出された出銑流20の実効直径Deffと、予め設定されている溶融スラグの密度ρs[ton/m3]とを用いて、溶融スラグの流量Qs[ton/sec]を導出する。前述したように本実施形態では、出銑流20の形状を円筒形状に近似しているので、溶融スラグ流量導出部207は、以下の(1)式により、溶融スラグの流量Qsを導出する。
Qs=(Deff÷2)2×π×V×R×ρs ・・・(1)
溶融スラグ流量導出部207は、例えば、CPUが、HDD等から、出銑流20の速度Vのデータと、溶融スラグ比率Rのデータと、溶融スラグの密度ρsのデータとを読み出して溶融スラグの流量Qsを算出することによって実現される。
溶融スラグ流量出力部208は、溶融スラグ流量導出部207により導出された溶融スラグの流量Qsを出力する。溶融スラグの流量Qsの出力の形態としては、例えば、表示装置に対する表示、可搬型の記憶媒体への記憶、及び外部装置への送信の少なくとも何れか1つが挙げられる。
溶融スラグ流量出力部208は、例えば、CPUが、HDD等から、溶融スラグの流量Qsのデータを読み出して、表示データを作成する等の出力処理を行うことにより実現される。
図3は、時間的に連続して撮像された3枚の熱画像の一例を示す図である。図3において、熱画像310が撮像されてから5[msec]後に熱画像320が撮像され、熱画像320が撮像されてから5[msec]後に熱画像330が撮像されている。
また、図3において、熱画像の黒の領域は、出銑流20の背景を表し、濃いグレーの領域は、(溶融スラグよりも放射率が低い)溶銑の領域を表し、薄いグレーの領域は、(溶銑よりも放射率が高い)溶融スラグの領域を表す。このように、熱画像に含まれる出銑流20の熱画像は、まだら模様を有する。
[[画像選択部401]]
画像選択部401は、熱画像入力部201で得られた10枚単位の熱画像のうち、時間的に連続する2枚の熱画像を順次選択する。例えば、図3において、画像選択部401は、熱画像310、320を選択した後、熱画像320、330を選択する。ここでは、熱画像入力部201で10枚単位の熱画像が得られるので、画像選択部401は、このような熱画像の選択を、熱画像入力部201で得られた10枚の熱画像について行い、2枚の熱画像の組を9つ選択することになる。
[[テンプレート切り出し部402]]
テンプレート切り出し部402は、画像選択部401で選択された時間的に連続する2枚の熱画像のうち、先に得られた熱画像からパターンマッチングのテンプレートを切り出す。例えば、図3において、熱画像310、320が選択された場合、テンプレート切り出し部402は、熱画像310のうちの、予め位置、サイズを決めておいた一部領域をテンプレート311として切り出す。同様に、熱画像320、330が選択された場合、テンプレート切り出し部402は、熱画像320からテンプレート321を切り出す。尚、熱画像330のテンプレート331は、熱画像330と当該熱画像330の次に得られた熱画像が選択された際に用いられる。
探索部403は、画像選択部401で選択された時間的に連続する2枚の熱画像のうち、先に得られた熱画像から切り出したパターンマッチングのテンプレートが、後に得られた熱画像のどこに存在するのかをパターンマッチング処理で検出する。パターンマッチング処理は、画像上でテンプレートと類似する箇所を画素毎の相関演算で探査する処理である。パターンマッチング処理は、例えば、画像処理ハンドブック(財団法人東京大学出版会発行)等に記載されている公知の技術で実現できるので、ここでは、詳細な説明を省略する。例えば、図3において、熱画像310、320が選択された場合、探索部403は、熱画像310のテンプレート311が熱画像320のどこに存在するのかを探索する。
移動距離算出部404は、画像選択部401で選択された時間的に連続する2枚の熱画像に対するパターンマッチング処理において、当該2枚の熱画像でマッチングするテンプレート(パターン)が検出されると、それら2枚の熱画像でテンプレートが移動した距離から、実空間における出銑流20の移動距離dを算出する。
ここで、熱画像上での移動量(画素数)と実際の移動距離との関係は、CCDカメラ60の被写体距離とレンズ画角とで決まるので、予め求めておけばよい。テンプレートが熱画像上で水平方向、垂直方向にそれぞれpx[画素]、py[画素]移動したとすると、出銑流20の移動距離d[m]は、以下の(2)式で表される。
d=U×(px 2+py 2)1/2 ・・・(2)
(2)式において、U[m/画素]は、熱画像上の画素数と実際の距離とを対応づける係数である。
出銑流速度算出部405は、移動距離算出部404で算出された出銑流20の移動距離dと撮像間隔Δt[sec]とに基づいて、出銑流20の速度D´[m/sec]を導出する。出銑流20の速度D´は、以下の(3)式で表される。
D´=d÷Δt ・・・(3)
本実施形態では、出銑流速度算出部405は、このような出銑流20の速度D´の計算を、画像選択部401で選択された時間的に連続する2枚の熱画像のそれぞれについて行う。そして、出銑流速度算出部405は、出銑流20の速度D´の算術平均値を出銑流20の速度Dとして導出する。
出銑流20の速度D´の代表値を求めるようにしていれば、必ずしも出銑流20の速度D´の算術平均値を出銑流20の速度Dとする必要はない。例えば、出銑流20の速度D´の中央値を出銑流20の速度Dとしてもよい。また、画像選択部401で選択された時間的に連続する2枚の熱画像の1つについてのみ、熱画像の選択とテンプレートの切り出しと、出銑流20の移動距離dの導出と、出銑流20の速度D´の導出とを行い、当該出銑流20の速度D´を出銑流20の速度Dとしてもよい。
また、必ずしも熱画像を用いて出銑流20の速度Dを求めなくてもよい。例えば、レーザドップラー速度計等の測定装置を用いて、出銑流20の速度を測定してもよい。
図5は、溶融スラグ比率導出部203の機能的な構成の一例を示す図である。本実施形態では、特許第4714607号公報に記載の技術を用いて溶融スラグ比率Rを導出する場合を例に挙げて説明する。そこで、以下に、溶融スラグ比率導出部203の機能として、特許第4714607号公報に記載の技術の概要を説明するが、詳細については、特許第4714607号公報を参照することにより、特許第4714607号公報の機能を実現することができる。
濃度ヒストグラム算出部501は、熱画像入力部201に入力された10枚単位の熱画像のうち、時間的に最初に得られた熱画像のデータから、濃度ヒストグラムを算出する。
図6は、濃度ヒストグラムの一例を示す図である。ここで、濃度とは、256階調の画像の明暗(すなわち、画像上の輝度)のことを指す。この濃度と、出銑流における熱放射輝度との関係は、リニアな関係にある。この濃度の値が熱画像の各画素の画素値となる。図6に示す濃度ヒストグラム600では、熱画像の背景に相当する部分(濃度が小さい領域)の図示を省略している
図6において、濃度階調が80以上のところに、溶銑に起因する濃度分布610と、溶融スラグに起因する濃度分布620とが存在している。
溶銑ピーク濃度導出部502は、濃度ヒストグラム算出部501により算出された濃度ヒストグラム600に含まれる溶銑に起因するピークでの濃度値PMを自動検出する。背景は、常温近傍で温度変化がないため、濃度ヒストグラムにおける背景に起因する濃度分布は、常にほぼ同一形状である。そこで、本実施形態では、溶銑ピーク濃度導出部502は、以下のようにして溶銑に起因するピークでの濃度値PMを求める。
スラグピーク濃度導出部503は、溶銑に起因するピークでの濃度値PMの値を用いて、溶融スラグに起因するピークでの濃度値PSを求める。
図6から分かるように濃度ヒストグラム600では、溶融スラグに起因するピークが明確に出現していないので、溶銑に起因するピークでの濃度値PMを算出したようにして溶融スラグに起因するピークでの濃度値PSを演算することは困難である。
そこで、スラグピーク濃度導出部503は、溶銑と溶融スラグとが乱流状態で混在した出銑流に於いては溶銑と溶融スラグとの温度がほぼ等しいと見なせることから、溶銑に起因するピークでの濃度値PMに、溶銑及び溶融スラグの分光放射率により定められる定数を乗じることにより、溶融スラグに起因するピークでの濃度値PSを求める。
PS=1.45×PM ・・・(4)
図6に示した例では、熱画像に濃度値が27のバイアス(光の入射が無い時のCCDカメラ60の画像輝度)があったので、溶融スラグに起因するピークでの濃度値PSは、123(=(93−27)×1.45+27)となる。
分別部504は、溶銑に起因する濃度分布610と、溶融スラグに起因する濃度分布620とにガウス関数をフィッティングする。
本実施形態では、以下の3種類のガウス関数を使用した。具体的に、溶銑に起因する濃度分布610のうちの濃度値PMよりも低濃度側(左側)を表現するためのガウス関数GM1と、溶銑に起因する濃度分布610のうちの濃度値PMよりも高濃度側(右側)を表現するためのガウス関数GM2と、溶融スラグに起因する濃度分布620の全体を表現するためのガウス関数GSとを用いた。溶銑に起因する濃度分布610に於いて、濃度値PMよりも低濃度側(左側)を表現するためのガウス関数GM1と、溶銑に起因する濃度分布610の濃度値PMよりも高濃度側(右側)を表現するためのガウス関数GM2と、を異ならせているのは、低濃度側と高濃度側とで、溶銑の濃度分布を生じさせている物理現象が異なると考えられるためである。
図7に示す例では、溶銑に起因する濃度分布610に対してフィッティングして得られたガウス関数GM(=GM1+GM2)におけるピークでの高さ(画素数)は、1740である。また、ガウス関数GMにおける低濃度側での標準偏差σは46であり、高濃度側での標準偏差σは93である。さらに、溶融スラグに起因する濃度分布620に対してフィッティングして得られたガウス関数GSにおけるピークでの高さ(画素数)は、512であり、このガウス関数GSにおける標準偏差σは552である。尚、図7中のGA("○"のプロット)は、ガウス関数GMとガウス関数GSの画素数の加算値であり、GAが観測値にほぼ一致することが確認できる。
スラグ比率算出部505は、分別部504によりガウス関数GM、GSが得られると、ガウス関数GM、GSの面積SM、SSを求める。
ガウス関数GM、GSは、画像濃度Pの関数であるので、以下の(5)式及び(6)式を用いることにより、ガウス関数GM、GSの面積SM、SSを求めることができる。
以上のようにして得られたガウス関数GMの面積SMは、溶銑の表面積を表し、ガウス関数GSの面積SSは溶融スラグの表面積を表す。ここで、出銑口10aから流出した出銑流20は乱流であるので、溶銑と溶融スラグとの混合比率は、出銑流20の表面と内部とで均一であると仮定することができる。そうすると、熱画像として観察して得られる溶銑の表面積と溶融スラグの表面積との比率が、溶銑の体積と溶融スラグの体積との比率に等しいとすることができる。即ち、ガウス関数GM、GSの面積SM、SSの比率が、溶銑の体積と溶融スラグの体積との比率に相当する。従って、ガウス関数GM、GSの面積SM、SSの比率を求めれば、出銑口10aから流出した溶銑と溶融スラグとの混合比率を求めることができる。
図6に示した例では、ガウス関数GMの面積SMは、2.5×104であり、ガウス関数GSの面積SSは、2.1×104であるので、溶融スラグ比率Rは0.46となる。
必ずしも、濃度ヒストグラム600に対するフィッティングにガウス関数を用いる必要はなく、χ2乗分布関数、F分布関数、又はt分布関数等の分布関数を用いることもできる。
本実施形態では、前述したように、溶融スラグに起因する濃度分布620については、濃度値PSよりも高濃度側の分布と、濃度値PSよりも低濃度側の分布とが対称であるとして、1つのガウス関数GSを用いるようにしたが、溶融スラグに起因する濃度分布620についても、溶銑に起因する濃度分布610と同様に、濃度値PSよりも低濃度側の分布と濃度値PSよりも高濃度側の分布とが非対称であるとして2つのガウス関数を用いるようにしてもよい。
まず、以下に説明するようにして、出銑流20の実効直径Deffを導出する方法を見出した背景について説明する。
図8に示す熱画像800において、出銑流の表面に表面波810(波打っている部分)が写し出されており、また、出銑流20の下方には、滞留スラグ820が写し出されている。
図10は、出銑流径導出部204の機能的な構成の一例を示す図である。図11は、出銑流径導出部204における処理の内容の一例を概念的に示す図である。尚、前述したように本実施形態では、熱画像入力部201は、10枚単位の熱画像を入力するが、図11では、表記の都合上、6枚の熱画像についてのみ示す。図11に示す熱画像は、熱画像1、熱画像2、熱画像3、熱画像4、熱画像5、熱画像6の順で時間的に連続して撮像されたものである。尚、図11の熱画像及び2値化画像内に示されている矩形状の枠は、出銑流径導出部204で使用されるものではない。
2値化画像生成部1001は、熱画像入力部201により、10枚単位の熱画像のデータが入力されると、それらの熱画像のデータの夫々に対して、2値化処理を行う。ここでは、2値化処理により、熱画像において、撮像対象となる出銑流20の背景となっている暗い領域と、温度が高温であることにより発光している出銑流20の領域とを分離する。したがって、これらの領域が分離されるように(すなわち、出銑流20の領域の画素値が「1」、背景となっている領域の画素値が「0」となるように)、2値化処理における閾値を定める必要がある。
図12において、出銑流20の背景となっている領域に対応する濃度分布(背景濃度分布1201)と、出銑流20の領域に対応する濃度分布(溶銑の領域に対応する濃度分布(溶銑濃度分布1202)及び溶融スラグの領域に対応する濃度分布(スラグ濃度分布1203))と、を分離するためには、背景濃度分布1201と、溶銑濃度分布1202との間に生じている谷間(画素数が0(ゼロ)に近い値を示す領域)の画素濃度の範囲内で閾値を設定すればよい。
2値化画像生成部1001は、画素値が閾値以上の画素の画素値を「1」とし、画素値が閾値未満の画素の画素値を「0」とすることを、熱画像入力部201により入力された10枚単位の熱画像のデータのそれぞれについて行うことにより2値化画像を生成する。例えば、図11に示す熱画像1〜6からは2値化画像1〜6が生成される。
差分2値化画像生成部1002は、2値化画像生成部1001により生成された2値化画像であって、時間的に連続する2枚の2値化画像の相互に対応する画素の画素値の絶対値差分をとることを、それら2値化画像の全ての画素について行って、差分2値化画像を生成する。すなわち、差分2値化画像生成部1002は、時間的に連続する2枚の2値化画像の相互に対応する画素の画素値が異なれば、当該画素の画素値が「1」となり、時間的に連続する2枚の2値化画像の相互に対応する画素の画素値が同じであれば、当該画素値の画素値が「0」となる画像である差分2値化画像を生成する。
合成差分2値化画像生成部1003は、差分2値化画像生成部1002により生成された複数枚の差分2値化画像の相互に対応する画素の画素値の論理和をとることを、それら複数枚の差分2値化画像の全ての画素について行って、合成差分2値化画像を生成する。すなわち、合成差分2値化画像生成部1003は、差分2値化画像生成部1002により生成された複数枚の差分2値化画像の相互に対応する画素の画素値の少なくとも1つが「1」であるならば当該画素の画素値を「1」とし、そうでなければ当該画素の画素値を「0」として合成差分2値化画像を生成する。
出銑流内径算出部1004は、合成差分2値化画像生成部1003により生成された合成差分2値化画像から、合成差分2値化画像における出銑流20の内径Din´を導出する。合成差分2値化画像における出銑流20の内径Din´は、合成差分2値化画像における出銑流20の定常的な領域の直径であり、合成差分2値化画像の上下の白い領域(画素値が「1」の領域)の間の、出銑流20の噴出方向に垂直な方向における長さである。
図13は、合成差分2値化画像における出銑流20の内径Din´を導出する方法の概念の一例を説明する図である。図13を参照しながら、出銑流内径算出部1004の処理の一例の詳細を説明する。
また、本実施形態では、始点1301の位置は、図13に示すように、合成差分2値化画像の左下の位置を原点としたときのx軸の座標とy軸の座標で表されるものとする。ここで、x軸の座標は、合成差分2値化画像の横方向の座標であり、y軸の座標は、合成差分2値化画像の縦方向の座標である。
L1=Lup1+Ldown1 ・・・(8)
Din´=L1×cosθ ・・・(9)
図13に示すように、出銑流20の空中での移動方向(図13の噴出方向)は、x軸に平行(水平方向)ではない。したがって、(9)式の計算を行うことにより、始点1301を通り、且つ、出銑流20の空中での移動方向(図13の噴出方向)に対して直交する直線に沿う方向における、表面波を示す領域の間の距離(画素サイズを単位とする長さ)を、合成差分2値化画像における出銑流20の内径Din´として得ることができる。
出銑流外径算出部1005は、合成差分2値化画像生成部1003により生成された合成差分2値化画像から、合成差分2値化画像における出銑流20の外径Dout´を導出する。合成差分2値化画像における出銑流20の外径Dout´は、合成差分2値化画像における表面波の領域を含む出銑流20の直径である。具体的に出銑流20の外径Doutは、合成差分2値化画像の白い領域(画素値が「1」の領域)のうち、上にある方の領域の上端と、下にある方の領域の下端との間の、出銑流20の空中での移動方向に垂直な方向における長さを実空間における長さに変換したものである。
まず、出銑流外径算出部1005は、出銑流内径算出部1004により設定された始点1301となる画素から、y軸の正の方向に、1画素ずつ画素値を読み出し、画素値が「1」となった後、初めて画素値が「0」となる画素の位置(座標)を読み出す。そして、出銑流外径算出部1005は、始点1301となる画素から、読み出した画素の1つ前の画素までの距離(画素数)を求める。以下の説明では、このようにして求めた距離(画素数)を必要に応じて「始点表面波上端間上方向距離Lup2」と称する。始点表面波上端間上方向距離Lup2は、始点1301から表面波の上端の領域までの、合成差分2値化画像の鉛直上方向における距離を示す。
L2=Lup2+Ldown2 ・・・(10)
Dout´=L2×cosθ ・・・(11)
(11)式の計算を行うことにより、始点1301を通り、且つ、出銑流20の空中での移動方向(図14の噴出方向)に対して直交する直線に沿う方向における、出銑流20の上側の表面波の上端と下側の表面波の下端との間の距離(画素サイズを単位とする長さ)を、合成差分2値化画像における出銑流20の外径Dout´として得ることができる。
尚、本実施形態では、出銑流20の空中での移動方向とx軸とのなす角度θとして、出銑流内径算出部1004で用いたものと同じものが用いられるものとする。
出銑流実効直径算出部1006は、出銑流内径算出部1004により算出された合成差分2値化画像における出銑流20の内径Din´と、合成差分2値化画像における出銑流20の外径Dout´と、後述する表面波寄与率記憶部206に記憶された表面波寄与率kとを用いて、以下の(12)式の計算を行って、合成差分2値化画像における出銑流20の実効直径Deff´を算出する。
Deff´=Din´+(Dout´−Din´)×k ・・・(12)
ここでは、時間的に連続する2枚の2値化画像の絶対値差分をとって差分2値化画像を生成する場合を例に挙げて説明した。しかしながら、必ずしも時間的に連続する2枚の2値化画像で差分2値化画像を生成する必要はない。連続的に撮像された、すなわち、表面波の様子が大きく変化しない時間内で撮像された複数枚の熱画像を用いて生成された複数枚の2値化画像を用いる組み合わせであれば、差分2値化画像を生成するための2枚の2値化画像の組み合わせは限定されない。このとき、連続的に撮像された複数枚の熱画像を用いて生成された複数枚の2値化画像の全てを少なくとも一度は用いる組み合わせとしてもよいし、当該複数枚の2値化画像の一部を用いる組み合わせとしてもよい。例えば、図11において、2値化画像1と2値化画像3、2値化画像2と2値化画像3、2値化画像2と2値化画像4といった、異なる時間に撮像された2枚の2値化画像の異なる組み合わせで差分2値化画像を求めてもよい。
Deff=Din+(Dout−Din)×k ・・・(13)
前述したように、溶銑の生成量(質量)は、タップ毎にトーピードカーの質量変化を秤量器で測定することにより得られる。これに対し、溶融スラグの質量については、水砕後でしか測定することができない。そこで、本実施形態では、以下に説明するようにして算出される溶銑の質量がタップ毎に測定された溶銑の生成量(質量)に一致する(最も近くなる)ように表面波寄与率kを合わせ込むようにした。以下に、かかる処理を行う表面波寄与率導出部205の機能の一例について説明する。
[[溶銑流量算出部1501]]
溶銑流量算出部1501は、溶融スラグの流量の測定の対象となるタップよりも前のタップを対象としてCCDカメラ60で撮像されて熱画像入力部201に入力された10枚単位の熱画像のデータを入力する。本実施形態では、溶銑流量算出部1501は、複数のタップからなるタップ群で連続的に得られた10枚単位の熱画像のデータを全て入力するものとする。尚、前述の様に、本実施形態では、CCDカメラ60は、出銑口10aから流出した出銑流20の熱画像を5[msec]の撮像間隔で10枚撮像することを、10[sec]の周期で周期的に行う。ここでは、この様な撮像を複数のタップについて行う。
Qi=(Deff÷2)2×π×V×R×ρi ・・・(14)
溶銑質量算出部1502は、同一の表面波寄与率kの値から溶銑流量算出部1501で10[sec]周期で算出された各タップにおける溶銑の流量Qiの値を各タップの全体について積算した値を、溶銑の質量として算出することを、表面波寄与率kの複数の候補のそれぞれについて行う。以下の説明では、このようにして算出された溶銑の質量を、必要に応じて「溶銑の質量の計算値」と称する。
溶銑質量取得部1503は、前記複数のタップのそれぞれにおいて前述した秤量器の測定の結果から得られる溶銑の質量のデータを取得する。溶銑の質量のデータの取得の形態としては、例えば、オペレータによる入力操作、可搬型記憶媒体からの読み出し、外部装置からの送信の少なくとも1つが挙げられる。そして、溶銑質量取得部1503は、各タップにおける溶銑の質量を積算し、各タップにおける溶銑の質量を算出する。以下の説明では、このようにして算出された溶銑の質量を、必要に応じて「溶銑の質量の実測値」と称する。
表面波寄与率決定部1504は、溶銑質量算出部1502により算出された溶銑の質量の計算値と、溶銑質量取得部1503により得られた溶銑の質量の実測値とを用いて、表面波寄与率kを決定する。
図16は、溶銑の質量の実測値と計算値との関係の一例を示す図である。具体的に、図16(a)、図16(b)、図16(c)は、それぞれ、表面波寄与率kの値が「0」、「0.3」、「0.6」の場合の溶銑の質量の実測値と計算値との関係を示す図である。尚、前述したように、溶銑の質量の実測値と計算値のうち、表面波寄与率kによって値が変わるのは、計算値のみである。
このように、溶銑の質量の計算値と、溶銑の質量の実測値との関係から、実測値に最も近い計算値が得られたときに採用した表面波寄与率kを導出すれば、出銑流径導出部204により出銑流20の実効直径Deffを正確に導出することができる(すなわち、(12)式におけるkの値を実測値に合わせることができる)。
表面波寄与率導出部205の機能は、画像処理装置70の内部になくてもよい。このようにする場合、画像処理装置70とは別の情報処理装置に表面波寄与率導出部205の機能を持たせ、当該情報処理装置で得られた表面波寄与率kを表面波寄与率記憶部206に記憶させてもよい。
また、溶銑の質量の計算値と測定値との差を評価する手法を用いていれば、必ずしも残差平方和を、溶銑の質量の計算値と測定値との差を評価する手法として用いる必要はない。
また、溶銑の質量の計算値を、1つのタップの単位で求めなくてもよい。例えば、複数のタップ毎に、溶銑の質量の計算値を求めるようにしてもよい。
次に、図18のフローチャートを参照しながら、溶融スラグの流量Qsを導出する際の画像処理装置70の処理の概要の一例を説明する。
まず、ステップS1801において、熱画像入力部201は、5[msec]の撮像間隔で撮像された10枚の出銑流20の熱画像のデータを、10[sec]の周期で繰り返し入力する。
次に、ステップS1802において、出銑流速度導出部202は、出銑流20の速度Vを導出する出銑流速度導出処理を実行する。出銑流速度導出処理の詳細は、図19を参照しながら後述する。
次に、ステップS1804において、出銑流径導出部204は、出銑流20の実効直径Deffを導出する出銑流実効直径導出処理を実行する。出銑流実効直径導出処理の詳細は、図21を参照しながら後述する。
次に、ステップS1806において、溶融スラグ流量出力部208は、ステップS1805で導出された溶融スラグの流量Qsを出力する。
そして、ステップS1807において、溶融スラグの流量Qsの測定を終了すると判定されると、図18のフローチャートによる処理を終了する。
まず、ステップS1901において、画像選択部401は、図18のステップS1801で得られた10枚単位の熱画像のうち、時間的に連続する2枚の熱画像の組を全て選択する。
次に、ステップS1903において、探索部403は、ステップS1901で選択された時間的に連続する2枚の熱画像のうち、先に得られた熱画像から切り出したパターンマッチングのテンプレートに対応する領域が、後に得られた熱画像のどこに存在するのかをパターンマッチング処理で検出する。探索部403は、このようなテンプレートの探索を、ステップS1901で選択された時間的に連続する2枚の熱画像の組の全てについて行う。
そして、図19のフローチャートによる処理を終了する。
まず、ステップS2001において、濃度ヒストグラム算出部501は、ステップS1801で入力された10枚単位の熱画像のうち、時間的に最初に得られた熱画像のデータから、濃度ヒストグラムを算出する(図6を参照)。
次に、ステップS2002において、溶銑ピーク濃度導出部502は、ステップS2001で算出した濃度ヒストグラムにおける溶銑に起因するピークでの濃度値PMを、前述したピーク検出処理を行って演算する。
次に、ステップS2004において、分別部504は、ステップS2002で演算した、溶銑に起因するピークでの濃度値PMと、ステップS2003で求めた、溶融スラグに起因するピークでの濃度値PSとを用いて、濃度ヒストグラム600(溶銑に起因する濃度分布610と、溶融スラグに起因する濃度分布620)に合うガウス関数GM1、GM2、GSのパラメータを定める最適化計算を行う。即ち、濃度ヒストグラム600にガウス関数GM1、GM2、GSをフィッティングする処理を行う。
次に、ステップS2006において、スラグ比率算出部505は、ステップS2004で得られたガウス関数GSの面積SSを算出する((6)式を参照)。
次に、ステップS2007において、スラグ比率算出部505は、ステップS2005、S2006で算出されたガウス関数GM、GSの面積SM、SSを用いて(7)式の計算を行って、溶融スラグ比率Rを算出する。
そして、図20のフローチャートによる処理を終了する。
まず、ステップS2101において、2値化画像生成部1001は、ステップS1801で入力された10枚の熱画像のデータの夫々に対して、2値化処理を行い、2値化画像を生成する(図11に示す2値化画像1〜6を参照)。
次に、ステップS2102において、差分2値化画像生成部1002は、ステップS2101で生成された2値化画像であって、時間的に連続する2枚の2値化画像から、差分2値化画像を生成する(図11に示す差分2値化画像1〜5を参照)。
次に、ステップS2104において、出銑流内径算出部1004は、ステップS2103で生成された合成差分2値化画像から、合成差分2値化画像における出銑流20の内径Din´を導出する。図13を参照しながら前述したように、本実施形態では、合成差分2値化画像における出銑流20の内径Din´の導出に際して、始点1301の設定と、始点表面波間上方向距離Lup1、始点表面波間下方向距離Ldown1、及び表面波間縦方向距離L1の導出と、合成差分2値化画像における出銑流20の内径Din´の導出とが行われる((8)式、(9)式を参照)。
次に、ステップS2107において、出銑流実効直径算出部1006は、ステップS2104で算出された合成差分2値化画像における出銑流20の内径Din´と、ステップS2105で算出された合成差分2値化画像における出銑流20の外径Dout´と、ステップS2106で読み出した表面波寄与率kとを用いて、(12)式の計算を行って、合成差分2値化画像における出銑流20の実効直径Deff´を算出する。次に、出銑流実効直径算出部1006は、合成差分2値化画像における出銑流20の実効直径Deff´を実空間における長さに換算することで、実空間における出銑流20の実効直径Deffを導出する。
そして、図21のフローチャートによる処理を終了する。
まず、ステップS2201において、熱画像入力部201は、5[msec]の撮像間隔で撮像された10枚の出銑流20の熱画像のデータを、10[sec]の周期で繰り返し入力する。
次に、ステップS2202において、溶銑流量算出部1501は、ステップS2201で入力した10枚の熱画像のデータを用いて、出銑流20の速度Vを算出する。ステップS2202の処理の詳細は、図19のフローチャートにより実現される。
次に、ステップS2204において、溶銑流量算出部1501は、予め設定されている表面波寄与率kの複数の候補のうち、未選択の候補を1つ選択する。
次に、ステップS2205において、溶銑流量算出部1501は、ステップS2201で入力した10枚の熱画像データと、ステップS2204で選択した表面波寄与率kの候補とを用いて、出銑流20の実効直径Deffを算出する。ステップS2205の処理の詳細は、図21のフローチャートにより実現される。
次に、ステップS2207において、溶銑流量算出部1501は、表面波寄与率kの複数の候補の全てを選択したか否かを判定する。この判定の結果、表面波寄与率kの複数の候補の全てを選択していない場合には、ステップS2204の処理に戻り、未選択の表面波寄与率kの候補を1つ選択し、当該表面波寄与率kの候補の場合の溶銑の流量Qiを算出する。
そして、表面波寄与率kの複数の候補の全てを選択すると、ステップS2208に進む。
そして、1つのタップに対する処理が終了すると、ステップS2209に進む。
次に、ステップS2210において、溶銑質量取得部1503は、予め設定されている複数のタップに対するステップS2201〜S2109の処理が終了したか否かを判定する。この判定の結果、複数のタップに対する処理が終了していない場合には、ステップS2201に戻る。そして、表面波寄与率kの全ての候補の溶銑の質量の計算値が、全てのタップについて得られるまで、ステップS2201〜S2110の処理を繰り返す。
ステップS2211に進むと、溶銑質量取得部1503は、予め設定されている複数のタップごとに、溶銑の質量の実測値を算出する。溶銑の質量の実測値は、各タップにおける秤量器の測定の結果から得られる溶銑の質量の値を取得して積算することにより得られる。
次に、ステップS2213において、表面波寄与率決定部1504は、ステップS2209で算出された溶銑の質量の計算値のうち、ステップS2212で選択した表面波寄与率kの候補における値と、ステップS2210で算出した溶銑の質量の実測値とを用いて、当該表面波寄与率kの候補における、溶銑の質量の計算値と実測値の残差平方和を算出する。
そして、表面波寄与率kの複数の候補の全てを選択すると、ステップS2215に進む。
ステップS2215に進むと、表面波寄与率決定部1504は、残差平方和と表面波寄与率kとの関係を表す関数を算出する。
次に、ステップS2216において、表面波寄与率決定部1504は、残差平方和と表面波寄与率kとの関係を表す関数から、残差平方和が最小になるときの表面波寄与率kを導出する。
次に、ステップS2217において、表面波寄与率決定部1504は、ステップS2216で導出した表面波寄与率kを表面波寄与率記憶部206に記憶する。
そして、図22のフローチャートによる処理を終了する。
次に、本発明の実施例を説明する。
ここでは、出銑口10aから噴出する出銑流20(約1550[℃]の溶銑と溶融スラグの混合液体)を、中心透過波長が650[nm]の光学バンドパスフィルタを波長選択フィルタとして備えたモノクロCCDカメラで撮像した。また、モノクロCCDカメラの露光時間を1/10000[sec]とした。このようなモノクロCCDカメラにより、出銑流20の熱画像を5[msec]の撮像間隔で10枚撮像することを、30[sec]を1周期として周期的に繰り返し、約2[hour]続くタップ中に出銑口10aから噴出する出銑流20の熱画像を撮像した。
図23に、以上のようにして得られた熱画像のデータから、前述した処理によって得られた、出銑流20の速度V(図23(a))、溶融スラグ比率R(図23(b))、出銑流20の実効直径Deff(図23(c))、溶銑の流量Qi(図23(d))、溶融スラグの流量Qs(図23(e))を示す。
尚、溶銑の流量Qiは、図23(a)〜図23(c)に示す結果を(14)式に代入することにより得られる。このように、溶融スラグの流量Qsと共に溶銑の流量Qiを画像処理装置70においてリアルタイムで算出するようにしてもよい。また、図23(a)〜(e)では、10[sec]毎に離散的に得られる値に対して補間処理を行った結果を示す。
また、図23(b)に示す結果を含む複数のタップ(1日)における溶融スラグ比率Rの測定結果の平均値が、原料装入量のマスバランスから計算される溶銑と溶融スラグの質量比である1対0.3と略一致した。したがって、本実施形態における溶融スラグ比率Rの測定(計算)は、正しく行われていると判断できる。
以上のように本実施形態では、CCDカメラ60で撮像された熱画像のデータから、出銑流20の速度V、溶融スラグ比率R、実空間における出銑流20の実効直径Deffを導出し、これらと、溶融スラグの密度ρsから、出銑流20の形状を円筒形状と近似して、溶融スラグの流量Qiを算出する。
したがって、出銑口10aから乱流の表面波を伴って流出する溶融スラグの可及的に正確な流量をリアルタイムで(当該タップ中に)連続的に知ることができる。また、画像計測を行うため、遠隔測定が可能であり、測定装置が比較的安価になる。このように従来では正確な測定手段が無かった溶融スラグの流量を時々刻々とモニタリングできれば、タップを終了するタイミングを、より適切に判断できるようになり、高炉の操業をより安定させることができる。また、溶融スラグの流量の変化から炉内の異常や非定常性を迅速に検知することが可能になる。
また、以上説明した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
(請求項1、8、9)
撮像工程(手段)は、例えば、CCDカメラ60により熱画像が撮像されることにより実現される。
出銑流速導出工程(手段)は、例えば、ステップS1901〜S1905(出銑流速度導出部202)により実現される(出銑流速度導出部202の変形例も参照)。
混合比率導出工程(手段)は、例えば、ステップS2001〜S2007(溶融スラグ比率導出部203)により実現される(溶融スラグ比率導出部203の変形例も参照)。
出銑流実効直径導出工程(手段)は、例えば、ステップS2101〜S2107(出銑流径導出部204)により実現される。
スラグ流量導出工程(手段)は、例えば、ステップS1805(溶融スラグ流量導出部207)により実現される。
(請求項2)
2値化画像生成工程は、例えば、ステップS2101(2値化画像生成部1001)により実現される。
差分2値化画像生成工程は、例えば、ステップS2102(差分2値化画像生成部1002)により実現される。
合成差分2値化画像生成工程は、例えば、ステップS2103(合成差分2値化画像生成部1003)により実現される。
出銑流内径導出工程は、例えば、ステップS2104(出銑流内径算出部1004)により実現される。
出銑流外径導出工程は、例えば、ステップS2105(出銑流外径算出部1005)により実現される。
出銑流実直径算出工程は、例えば、ステップS2107(出銑流実効直径算出部1006)により実現される(出銑流径導出部204の変形例、表面波寄与率導出部205の変形例も参照)。
(請求項3)
表面波寄与率導出工程は、例えば、ステップS2201〜S2216により実現される。
表面波寄与率記憶工程は、例えば、ステップS2217により実現される。
第1の工程は、例えば、ステップS2202により実現される。
第2の工程は、例えば、ステップS2203により実現される。
第3〜第9の工程は、例えば、ステップS2204、S2205、S2207により実現される。
第10の工程は、例えば、ステップS2204、S2206、S2207により実現される。
第11の工程は、例えば、ステップS2209により実現される。
第12の工程は、例えば、ステップS2211により実現される。
第13の工程は、例えば、ステップS2212〜S2116により実現される。
(請求項5)
移動距離導出工程は、例えば、ステップS1901〜S1904により実現される。
出銑流速度導出工程は、例えば、ステップS1905により実現される。
(請求項6)
濃度分布分別工程は、例えば、ステップS2001〜S2006により実現される。
溶銑スラグ混合比率導出工程は、例えば、ステップS2007により実現される。
10a 出銑口
20 出銑流
30 出銑樋
40 滞留スラグ
50 樋カバー
60 CCDカメラ
70 画像処理装置
201 熱画像入力部
202 出銑流速度導出部
203 溶融スラグ比率導出部
204 出銑流径導出部
205 表面波寄与率導出部
206 表面波寄与率記憶部
207 溶融スラグ流量導出部
208 溶融スラグ流量出力部
Claims (5)
- 高炉に形成された出銑口から流出した溶融物の噴流である出銑流を含む領域の熱放射輝度の2次元分布を、当該熱放射輝度に対応する画素毎の画素値を持つ各画素から構成される熱画像として撮像する撮像工程と、
前記出銑流の速度を導出する出銑流速導出工程と、
前記溶融物に含まれる溶銑及び溶融スラグの混合比率を導出する混合比率導出工程と、
前記出銑流の実効直径を導出する出銑流実効直径導出工程と、
前記出銑流の実効直径と、前記出銑流の速度と、前記溶銑及び溶融スラグの混合比率と、前記溶融スラグの密度と、に基づいて、前記溶融スラグの質量流量を導出するスラグ流量導出工程と、
を有し、
前記出銑流実効直径導出工程は、
前記撮像工程により連続的に撮像された3枚以上の前記熱画像を用いて、全ての当該熱画像の対応する位置の画素に前記出銑流が撮像されている熱画像上の部分である内層部と、当該熱画像の対応する位置に、前記出銑流が撮像されている画素と撮像されていない画素とが存在する熱画像上の部分である表面波部とを特定し、
前記内層部の直径である前記出銑流の内径と、前記表面波部の厚みと当該出銑流の内径とを加算した値である前記出銑流の外径とを導出し、
前記出銑流の内径以上であり、前記出銑流の外径以下である値として、前記出銑流の熱画像上の実効直径を導出し、
前記出銑流の熱画像上の実効直径と、前記熱画像の画素寸法と当該画素に対応する被撮像対象の寸法との関係とから、前記出銑流の実空間における実効直径を、前記出銑流の実効直径として導出することを特徴とする、溶融スラグ流量測定方法。 - 前記出銑流実効直径導出工程は、
前記撮像工程により連続的に撮像された3枚以上の熱画像のそれぞれの画素値を2値化して、当該熱画像にそれぞれ対応する2値化画像を生成する2値化画像生成工程と、
前記2値化画像生成工程により生成された2値化画像のうち、異なる時間に撮像された2枚の前記熱画像に基づいて生成された2枚の2値化画像に基づいて、当該2枚の2値化画像の相互に対応する画素の画素値の差分の絶対値を画素値として有する差分2値化画像を2枚以上生成する差分2値化画像生成工程と、
前記差分2値化画像生成工程により導出された2枚以上の差分2値化画像のそれぞれの対応する画素の画素値の論理和を画素値として有する合成差分2値化画像を生成する合成差分2値化画像生成工程と、
前記合成差分2値化画像における前記出銑流に対応する領域のうち、画素値が「0」の部分である内層部の、前記出銑流の移動方向に垂直な方向に沿う長さを、前記合成差分2値化画像における前記出銑流の内径として導出する出銑流内径導出工程と、
前記合成差分2値化画像における、前記出銑流に対応する画素のうち、画素値が「1」の部分である表面波部と、前記内層部とを合わせた領域の、前記出銑流の移動方向に垂直な方向に沿う長さを、前記合成差分2値化画像における前記出銑流の外径として導出する出銑流外径導出工程と、
前記合成差分2値化画像における前記出銑流の外径から前記合成差分2値化画像における前記出銑流の内径を引いた値に、0以上1以下の値を有する表面波寄与率を掛けた値と、前記合成差分2値化画像における前記出銑流の内径とを加算した値を、前記合成差分2値化画像における前記出銑流の熱画像上の実効直径として算出して、当該出銑流の熱画像上の実効直径と、前記熱画像の画素寸法と当該画素に対応する被撮像対象の寸法との関係とから、前記出銑流の実空間における実効直径を、前記出銑流の実効直径として算出する出銑流実効直径算出工程と、
を更に有することを特徴とする請求項1に記載の溶融スラグ流量測定方法。 - 前記スラグ流量導出工程に先立ち、前記撮像工程により撮像された3枚以上の前記熱画像を用いて前記表面波寄与率を導出する表面波寄与率導出工程と、
前記表面波寄与率を記憶する表面波寄与率記憶工程と、
を更に有し、
前記表面波寄与率導出工程は、
前記出銑流の速度を導出する第1の工程と、
前記溶銑及び前記溶融スラグの混合比率を導出する第2の工程と、
前記撮像工程により連続的に撮像された3枚以上の熱画像のそれぞれの画素値を2値化して、当該熱画像にそれぞれ対応する2値化画像を生成する第3の工程と、
前記第3の工程により生成された2値化画像のうち、異なる時間に撮像された2枚の前記熱画像に基づいて生成された2枚の2値化画像に基づいて、当該2枚の2値化画像の相互に対応する画素の画素値の差分の絶対値を画素値として有する差分2値化画像を2枚以上生成する第4の工程と、
前記第4の工程により導出された2枚以上の差分2値化画像のそれぞれの対応する画素の画素値の論理和を画素値として有する合成差分2値化画像を生成する第5の工程と、
前記合成差分2値化画像における前記出銑流に対応する領域のうち、画素値が「0」の部分である内層部の、前記出銑流の移動方向に垂直な方向に沿う長さを、前記合成差分2値化画像における前記出銑流の内径として導出する第6の工程と、
前記合成差分2値化画像における、前記出銑流に対応する画素のうち、画素値が「1」の部分である表面波部と、前記内層部とを合わせた領域の、前記出銑流の移動方向に垂直な方向に沿う長さを、前記合成差分2値化画像における前記出銑流の外径として導出する第7の工程と、
前記合成差分2値化画像における前記出銑流の外径から前記合成差分2値化画像における前記出銑流の内径を引いた値に、前記表面波寄与率の候補を掛けた値と、前記合成差分2値化画像における前記出銑流の内径とを加算した値を、前記合成差分2値化画像における前記出銑流の熱画像上の実効直径として導出することを、複数の前記表面波寄与率の候補のそれぞれについて行う第8の工程と、
前記合成差分2値化画像における前記出銑流の熱画像上の実効直径と、前記熱画像の画素寸法と当該画素に対応する被撮像対象の寸法との関係とから、前記出銑流の実空間における実効直径を、前記出銑流の実効直径として導出することを、前記複数の表面波寄与率の候補のそれぞれについて行う第9の工程と、
前記出銑流の実効直径と、前記出銑流の速度と、前記溶銑及び前記溶融スラグの混合比率と、前記溶銑の密度と、に基づいて、前記溶銑の質量流量を導出することを、前記複数の表面波寄与率の候補のそれぞれについて行う第10の工程と、
前記溶銑の質量流量を積算して前記溶銑の質量の計算値を導出することを、前記複数の表面波寄与率の候補のそれぞれについて行う第11の工程と、
前記溶銑の質量の実測値を取得する第12の工程と、
前記溶銑の質量の計算値が、前記溶銑の質量の実測値と最も近いときの前記表面波寄与率の候補を、前記表面波寄与率として決定する第13の工程と、
を更に有することを特徴とする請求項2に記載の溶融スラグ流量測定方法。 - 高炉に形成された出銑口から流出した溶融物の噴流である出銑流を含む領域の熱放射輝度の2次元分布を、当該熱放射輝度に対応する画素毎の画素値を持つ各画素から構成される熱画像として撮像する撮像手段と、
前記出銑流の速度を導出する出銑流速導出手段と、
前記溶融物に含まれる溶銑及び溶融スラグの混合比率を導出する混合比率導出手段と、
前記出銑流の実効直径を導出する出銑流実効直径導出手段と、
前記出銑流の実効直径と、前記出銑流の速度と、前記溶銑及び溶融スラグの混合比率と、前記溶融スラグの密度と、に基づいて、前記溶融スラグの質量流量を導出するスラグ流量導出手段と、
を有し、
前記出銑流実効直径導出手段は、
前記撮像手段により連続的に撮像された3枚以上の前記熱画像を用いて、全ての当該熱画像の対応する位置の画素に前記出銑流が撮像されている熱画像上の部分である内層部と、当該熱画像の対応する位置に、前記出銑流が撮像されている画素と撮像されていない画素とが存在する熱画像上の部分である表面波部とを特定し、
前記内層部の直径である前記出銑流の内径と、前記表面波部の厚みと当該出銑流の内径とを加算した値である前記出銑流の外径とを導出し、
前記出銑流の内径以上であり、前記出銑流の外径以下である値として、前記出銑流の熱画像上の実効直径を導出し、
前記出銑流の熱画像上の実効直径と、前記熱画像の画素寸法と当該画素に対応する被撮像対象の寸法との関係とから、前記出銑流の実空間における実効直径を、前記出銑流の実効直径として導出することを特徴とする、溶融スラグ流量測定システム。 - 高炉に形成された出銑口から流出した溶融物の噴流である出銑流を含む領域の熱放射輝度の2次元分布を、当該熱放射輝度に対応する画素毎の画素値を持つ各画素から構成される熱画像として撮像する撮像手段により撮像された前記熱画像を取得する取得手段と、
前記出銑流の速度を導出する出銑流速導出手段と、
前記溶融物に含まれる溶銑及び溶融スラグの混合比率を導出する混合比率導出手段と、
前記出銑流の実効直径を導出する出銑流実効直径導出手段と、
前記出銑流の実効直径と、前記出銑流の速度と、前記溶銑及び溶融スラグの混合比率と、前記溶融スラグの密度と、に基づいて、前記溶融スラグの質量流量を導出するスラグ流量導出手段と、
してコンピュータに機能させ、
前記出銑流実効直径導出手段は、
前記撮像手段により連続的に撮像された3枚以上の前記熱画像を用いて、全ての当該熱画像の対応する位置の画素に前記出銑流が撮像されている熱画像上の部分である内層部と、当該熱画像の対応する位置に、前記出銑流が撮像されている画素と撮像されていない画素とが存在する熱画像上の部分である表面波部とを特定し、
前記内層部の直径である前記出銑流の内径と、前記表面波部の厚みと当該出銑流の内径とを加算した値である前記出銑流の外径とを導出し、
前記出銑流の内径以上であり、前記出銑流の外径以下である値として、前記出銑流の熱画像上の実効直径を導出し、
前記出銑流の熱画像上の実効直径と、前記熱画像の画素寸法と当該画素に対応する被撮像対象の寸法との関係とから、前記出銑流の実空間における実効直径を、前記出銑流の実効直径として導出することを特徴とする、コンピュータプログラム。
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