出銑滓流は、出銑口から取り出されるので、出銑口の下側部分付近に、堆積物が成長しやすい。この堆積物は、スラグおよび鉄の少なくとも一方を含むと考えられる。特許文献1に開示された技術は、出銑口付近の出銑滓流(言い換えれば、出銑口から出た直後の出銑滓流)の画像を用いて、出銑滓流の幅を算出する。出銑口の下側部分付近に堆積物が成長している場合、出銑口付近の出銑滓流の下側部分は、堆積物で覆われ、この状態で、画像に写る。出銑滓流と堆積物とは同じように見えるので、出銑滓流の下側部分と堆積物とは区別することが困難である。このため、出銑口の下側部分付近に堆積物が成長している場合、出銑滓流の幅を正確に算出できず、この結果、出銑滓流に含まれる溶滓の量の測定精度が低下することになる。
本発明の目的は、出銑口から取り出された出銑滓流の画像を基にして、出銑滓流に含まれる溶滓の量を測定する機能に加えて、出銑口の下側部分付近に堆積物が成長しているか否かを判定する機能を有する溶滓量測定装置および溶滓量測定方法を提供することである。
本発明の第1局面に係る溶滓量測定装置は、竪型炉の出銑口付近の出銑滓流が複数の時刻で撮像されることにより得られた複数の画像を取得する取得部と、前記取得部が取得した複数の画像を基にして、前記出銑滓流の速度および幅を算出し、前記速度および前記幅を変数として含む所定の式を用いて、前記出銑口から取り出された溶滓の量を算出する算出部と、前記取得部が取得した複数の画像に写された、前記出銑滓流の下側部分の像を基にして、前記出銑口の下側部分付近に堆積物が成長しているか否かを判定する判定部と、を備える。
本発明の第1局面に係る溶滓量測定装置は、竪型炉の出銑口付近の出銑滓流(竪型炉の出銑口から排出され、出銑口付近を流れる出銑滓流)が複数の時刻で撮像されることにより得られた複数の画像を基にして、出銑滓流の速度および幅を算出し、速度および幅を変数として含む所定の式を用いて、出銑口から取り出された溶滓の量を算出する。これは、例えば、特許文献1に開示された技術によって実現することができる。
出銑滓流の幅とは、出銑滓流が流れる方向と交差する方向の出銑滓流のサイズである。出銑滓流の速度および幅の算出に用いる複数の画像と、堆積物の成長の判定に用いる複数の画像とは、同じでもよいし、異なっていてもよい。
本発明者は、上記複数の画像に写された、出銑滓流の下側部分の像を基にすれば、出銑口の下側部分付近に堆積物が成長しているか否かを判定できることを見出した。これについて、詳しく説明する。出銑滓流の下側部分の像は、別の表現を用いれば、出銑滓流の像の下端であり、例えば、出銑滓流の像の中央より下に位置し、背景との境界を含む像である。本発明者は、短い時間間隔(例えば、100分の1秒以下)の場合、出銑滓流の下側部分の形状は変化するが、堆積物の形状は変化しないことを見出した(別の表現を用いれば、出銑滓流の下側部分は動くが、堆積物は動かない)。これは、以下の理由からと思われる。出銑口付近の出銑滓流は、出銑口から空間中に放出された状態であるので、出銑滓流の下側部分の形状は絶えず変化している。このため、短い時間間隔であっても、出銑滓流の下側部分の形状は変化している。これに対して、堆積物は、固体であり、堆積物が成長することにより、堆積物の形状は変化するが、短い時間間隔の場合、堆積物の形状はほとんど変化しない(又は変化しない)。
従って、所定時間間隔において、出銑滓流の下側部分の像の形状の変化が比較的大きいとき、出銑口付近の出銑滓流の下側部分が、堆積物で覆われていない状態であると見なすことができる。よって、判定部は、出銑口の下側部分付近に堆積物が成長していないと判定する。これに対して、所定時間間隔において、出銑滓流の下側部分の像の形状の変化が比較的小さいとき、出銑口付近の出銑滓流の下側部分が、堆積物で覆われている状態であると見なすことができる。よって、判定部は、出銑口の下側部分付近に堆積物が成長していると判定する。
以上説明したように、本発明の第1局面に係る溶滓量測定装置によれば、出銑口から取り出された出銑滓流の画像を基にして、出銑滓流に含まれる溶滓の量を測定する機能に加えて、出銑口の下側部分付近に堆積物が成長しているか否かを判定する機能を有する。
ここで、出銑口から取り出された溶滓の量(溶滓量Ms)の算出の仕方の一例を説明する。算出部は、式(1)を用いて、単位時間当たりに出銑口から取り出される溶滓の量(溶滓量ms)を算出する。
溶銑量mfは、例えば、溶銑が入っているトピードカーの重量と溶銑が入っていないトピードカーの重量とを基にして、求めることができる。出銑滓流の半径rは、出銑滓流の流れ方向に垂直な出銑滓流の断面の半径であり、出銑滓流の幅の半分である。補正係数kは、例えば、0≦k≦1である。
算出部は、溶滓量msを時間積分することにより、溶滓量Msを算出する。
上記構成において、前記判定部は、前記所定時間間隔において、前記像の形状の変化が大きくなるに従って値が大きくなり、前記像の形状の変化が小さくなるに従って値が小さくなる指標値を、前記像を基にして算出し、前記指標値が、予め定められたしきい値を超えているとき、前記像の形状の変化が比較的大きいと見なし、前記出銑口の下側部分付近に前記堆積物が成長していないと判定し、前記指標値が前記しきい値以下のとき、前記像の形状の変化が比較的小さいと見なし、前記出銑口の下側部分付近に前記堆積物が成長していると判定する。
この構成は、出銑口の下側部分付近に堆積物が成長しているか否かの判定について、この判定の仕方の一例を規定している。指標値は、所定時間間隔において、出銑滓流の下側部分の像の形状の変化が大きくなるに従って、大きくなり、その像の形状の変化が小さくなるに従って、小さくなる。従って、指標値を用いれば、出銑口の下側部分付近に堆積物が成長しているか否かを判定することができる。なお、指標値と逆の変化を示す第2の指標値でもよい。第2の指標値は、所定時間間隔において、出銑滓流の下側部分の像の形状の変化が大きくなるに従って、小さくなり、その像の形状の変化が小さくなるに従って、大きくなる。判定部は、第2の指標値が、予め定められたしきい値以下のとき、出銑口の下側部分付近に堆積物が成長していないと判定し、第2の指標値が、しきい値を超えているとき、出銑口の下側部分付近に堆積物が成長していると判定する。
上記構成において、前記判定部が、前記出銑口の下側部分付近に前記堆積物が成長していると判定したとき、所定の報知をする報知部をさらに備える。
この構成によれば、溶滓量測定装置のユーザーに、出銑口の下側部分付近に堆積物が成長していることを報知することができる。
本発明の第2局面に係る溶滓量測定方法は、竪型炉の出銑口付近の出銑滓流が複数の時刻で撮像されることにより得られた複数の画像を取得する第1ステップと、前記第1ステップで取得した複数の画像を基にして、前記出銑滓流の速度および幅を算出し、前記速度および前記幅を変数として含む所定の式を用いて、前記出銑口から取り出された溶滓の量を算出する第2ステップと、前記第1ステップで取得した複数の画像に写された、前記出銑滓流の下側部分の像を基にして、前記出銑口の下側部分付近に堆積物が成長しているか否かを判定する第3ステップと、を備える。
本発明の第2局面に係る溶滓量測定方法は、本発明の第1局面に係る溶滓量測定装置を方法の観点から規定しており、本発明の第1局面に係る溶滓量測定装置と同様の作用効果を有する。
本発明によれば、出銑口から取り出された出銑滓流の画像を基にして、出銑滓流に含まれる溶滓の量を測定する機能に加えて、出銑口の下側部分付近に堆積物が成長しているか否かを判定する機能を有する溶滓量測定装置および溶滓量測定方法を提供することができる。
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳細に説明する。各図において、同一符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その構成について、既に説明している内容については、その説明を省略する。
実施形態では、竪型炉として、高炉を例にして説明する。図1は、高炉10の出銑口11から取り出された出銑滓流30の処理を説明する説明図である。出銑口11の下方には、出銑樋20の端部20aが位置している。出銑口11から取り出された出銑滓流30(出銑口11から排出された出銑滓流30)は、出銑樋20の所定箇所に落ちて、出銑樋20を流れる。この所定箇所には、出銑樋20を覆う出銑樋カバー21が配置されている。出銑樋カバー21により、所定箇所に落ちた出銑滓流30が外部に飛散することを防止する。出銑樋20を流れる出銑滓流30は、溶銑31と溶滓32とに分離される。溶銑31は、トピードカーに送られる。溶滓32は、水砕設備へ送られる。
出銑口11から取り出された出銑滓流30が、出銑口11から出銑樋20に到達するまでの空間が、出銑滓流30の撮像範囲に設定される。撮像範囲に出銑口11を含めているが、出銑口11が含まれていなくてもよい。出銑滓流30の下側部分30aは、出銑口11の下側部分付近11aを通る。
図2は、実施形態に係る溶滓量測定装置1の構成を示すブロック図である。溶滓量測定装置1は、撮像部3と、制御処理部5と、表示部7と、入力部9と、を備える。これらのうち、制御処理部5、表示部7、および、入力部9は、オペレータ室(不図示)に配置されている。
撮像部3は、赤色波長以上または近赤外波長以上の光を透過するバンドパスフィルターを備え、図1に示す出銑口11から出銑樋20までの空間にある出銑滓流30(出銑口11の付近にある出銑滓流30)の動画Vを撮像し、制御処理部5へ送る。このように、撮像部3は、高炉10の出銑口11の付近の出銑滓流30が複数の時刻で撮像されることにより得られた複数の画像を撮像し、制御処理部5へ送る。撮像部3は、例えば、CCDイメージセンサーまたはCMOSイメージセンサーを備えるカメラである。
制御処理部5は、機能ブロックとして、取得部51と、算出部52と、判定部53と、表示制御部54と、を備える。制御処理部5は、通信インターフェイス、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、および、HDD(Hard Disk Drive)等のハードウェア、上記機能ブロックの機能を実行するためのプログラムおよびデータ等によって実現される。
図1および図2を参照して、取得部51は、撮像部3から制御処理部5へ送られてきた動画Vを受信する。このように、取得部51は、高炉10の出銑口11の付近の出銑滓流30が複数の時刻で撮影されることにより得られた複数の画像を取得する。
算出部52は、取得部51が取得した複数の画像の基にして、出銑滓流30の速度および幅を算出し、速度および幅を変数として含む所定の式を用いて、出銑口11から取り出された溶滓32の量を算出する。算出部52について詳しく説明する。算出部52は、取得部51が受信した動画Vの中から、連続する2つの画像(フレーム)を取り出す。図3は、連続する2つの画像のうち、先に撮像された画像の例を示す第1画像Im1−aの画像図である。図4は、連続する2つの画像のうち、後に撮像された画像の例を示す第1画像Im1−bの画像図である。第1画像Im1−a,Im1−bにおいて、x方向は水平方向を示し、y方向は鉛直方向を示す。y方向を出銑滓流30の幅方向とする。第1画像Im1−a,Im1−bには、出銑滓流30の像(以下、出銑滓流像300)が写されている。出銑滓流30の撮像範囲は、上述したように、出銑口11から取り出された出銑滓流30が、出銑口11から出銑樋20に到達するまでの空間である。
図3を参照して、算出部52は、画像Im1−aに、出銑滓流30の幅を求めるための第1関心領域ROI1を設定する。第1関心領域ROI1のサイズは、例えば、x方向が40画素であり、y方向が240画素である。算出部52は、第1関心領域ROI1の画素の画素値を二値化処理する。例えば、判別分析法で二値化処理がされる。
二値化処理された第1関心領域ROI1の画素の画素値は、二次元データである。算出部52は、この二次元データを、y方向に投影処理することにより、一次元データにする。投影処理は、二次元データにおいて、例えば、y座標が同じである画素の画素値の平均値を求める処理である(平均でなくてもく、例えば、加算でもよい)。算出部52は、この一次元データと所定のしきい値(例えば、0.5)とを用いて、出銑滓流像300の幅を規定する2つのy座標y1,y2を算出する(y1<y2)。y座標y1とy座標y2との差分が、出銑滓流像300の幅であり、算出部52は、この差分を基にして、出銑滓流30の幅を算出する。
算出部52は、第1画像Im1−aに写された出銑滓流像300の中に第2関心領域ROI2を設定する。第2関心領域ROI2は、第1関心領域ROI1内に設定されているが、第1関心領域ROI1外に設定されてもよい。出銑滓流30は、流れているので、第2関心領域ROI2内の像は、出銑滓流30が流れている方向に移動する。算出部52は、第2関心領域ROI2内の像について、図4に示す第1画像Im1−bに写された出銑滓流像300上での位置を特定する。これは、例えば、パターンマッチングによって実現できる。算出部52は、第1画像Im1−aと第1画像Im1−bとにおいて、第2関心領域ROI2内の像の移動量を算出し、これを基にして、出銑滓流30の速度を算出する。出銑滓流30の速度を算出するために、撮像部3が撮像する動画Vのフレームレートは、100fps以上(例えば、180fps)が好ましい。
出銑滓流30の幅の算出に用いられた画像は、出銑滓流30の速度の算出に用いられた第1画像Im1−aであるが、出銑滓流30の速度の算出に用いられた第1画像Im1−bでもよいし、これらの第1画像以外の画像でもよい。
図1および図2を参照して、算出部52は、式(1)を用いて、単位時間当たりに出銑口11から取り出された溶滓32の量(溶滓量ms)を算出する。
出銑滓流30の半径rは、出銑滓流30が流れ方向に垂直な出銑滓流30の断面の半径であり、出銑滓流30の幅の半分である。溶銑量mfは、例えば、溶銑31が入っているトピードカーの重量と溶銑31が入っていないトピードカーの重量とを基にして、求めることができる。補正係数kは、例えば、0≦k≦1である。
算出部52は、溶滓量msを時間積分することにより、出銑口11から取り出された溶滓量Msを算出する。
本発明者は、動画Vに写された、出銑滓流30の下側部分30aの像を基にすれば、出銑口11の下側部分付近11aに堆積物が成長しているか否かを判定できることを見出した。詳しく説明すると、本発明者は、短い時間間隔(例えば、100分の1秒以下)の場合、出銑滓流30の下側部分30aの形状は変化するが、堆積物の形状は変化しないことを見出した(別の表現を用いれば、出銑滓流30の下側部分30aは動くが、堆積物は動かない)。これは、以下の理由からと思われる。出銑口11の付近の出銑滓流30は、出銑口11から空間中に放出された状態であるので、出銑滓流30の下側部分30aの形状は絶えず変化している。このため、短い時間間隔であっても、出銑滓流30の下側部分30aの形状は変化している。これに対して、堆積物は、固体であり、堆積物が成長することにより、堆積物の形状は変化するが、短い時間間隔の場合、堆積物の形状はほとんど変化しない(又は変化しない)。
判定部53は、取得部51が取得した複数の画像(取得部51が受信した動画V)に写された、出銑滓流30の下側部分30aの像を基にして、出銑口11の下側部分付近11aに堆積物が成長しているか否かを判定する。具体的には、判定部53は、所定時間間隔において、出銑滓流30の下側部分30aの像の形状変化が比較的大きいとき、出銑口11の下側部分付近11aに堆積物が成長していないと判定し、所定時間間隔において、その像の形状変化が比較的小さいとき、出銑口11の下側部分付近11aに堆積物が成長していると判定する。
判定部53について詳しく説明する。判定部53は、取得部51が受信した動画Vの中から、連続する2つの画像(フレーム)を取り出す。連続する2つの画像は、出銑滓流30の速度の算出に用いられた2つの画像でもよいし、別の2つの画像でもよい。実施形態では、前者(すなわち、図3に示す第1画像Im1−aと図4に示す第1画像Im1−b)を例にして説明する。
図1〜図4を参照して、第1画像Im1−a,Im1−bは、出銑口11の下側部分付近11aに堆積物が成長していない状態で撮像されている。判定部53は、y座標y1を含む第3関心領域ROI3を、第1画像Im1−a,Im1−bに設定する。y座標y1は、出銑滓流像300の幅を規定する2つのy座標y1,y2のうち、出銑滓流30の下側部分30a側のy座標である。図5は、第3関心領域ROI3が設定された第1画像Im1−aを示す画像図である。図6は、第3関心領域ROI3が設定された第1画像Im1−bを示す画像図である。第1画像Im1−aに設定される第3関心領域ROI3の位置、サイズと、第1画像Im1−bに設定される第3関心領域ROI3の位置、サイズとは、同じである。第3関心領域ROI3のx方向のサイズ、y方向のサイズは、それぞれ、例えば、40画素である。第3関心領域ROI3のy座標は、第1関心領域ROI1のy座標と同じにされているが、異なっていてもよい。第3関心領域ROI3内の像が出銑滓流30の下側部分30aの像となる。
判定部53は、第1画像Im1−a,Im1−bから第3関心領域ROI3の部分を切り出し、切り出された画像に対して、所定の画像処理をする。図7は、この画像処理を説明する説明図である。第2画像Im2−aは、図5に示す第1画像Im1−aから第3関心領域ROI3の部分を切り出して得られた画像である。第2画像Im2−bは、図6に示す第1画像Im1−bから第3関心領域ROI3の部分を切り出して得られた画像である。第2画像Im2−a,Im2−bは、出銑滓流30の下側部分30aの像である。
判定部53は、第2画像Im2−aを二値化処理することにより、第3画像Im3−aを生成する。判定部53は、第2画像Im2−bを二値化処理することにより、第3画像Im3−bを生成する。例えば、判別分析法で二値化処理がされる。出銑滓流像300は、黒画素で示されている。背景は、白画素で示されている。黒画素の画素値は、0である。白画素の画素値は、1である。第3画像Im3−a,Im3−bは、出銑滓流30の下側部分30aの像である。
判定部53は、第3画像Im3−aと第3画像Im3−bとにおいて、同じ位置にある画素に対して排他的論理和を求める処理をすることにより、第4画像Im4−1を生成する。第1画像Im1−a(図5)が撮像された時刻から第1画像Im1−b(図6)が撮像された時刻までの期間(所定時間間隔)において、白画素から黒画素に変化した画素、または、黒画素から白画素に変化した画素は、白画素で示される。所定時間間隔において、白画素の状態が続いている画素、または、黒画素の状態が続いている画素は、黒画素で示される。白画素(所定時間間隔において、画素値が変化した画素)は、所定時間間隔において、出銑滓流30の下側部分30aの像のうち、形状が変化した箇所(動いた箇所)を示す。黒画素(所定時間間隔において、画素値が変化しない画素)は、所定時間間隔において、出銑滓流30の下側部分30aの像のうち、形状が変化していない箇所(動いていない箇所)を示す。白画素の数が多いことは、出銑滓流30の下側部分30aの像の形状変化が比較的大きいことを意味する。これに対して、白画素の数が少ないことは、出銑滓流30の下側部分30aの像の形状変化が比較的小さいことを意味する。判定部53は、第4画像Im4−1に含まれる白画素の数をカウントする。白画素の数は、130である。
図8は、出銑口11の下側部分付近11aに堆積物が成長している状態で撮像された、連続する2つの画像のうち、先に撮像された画像の例を示す第1画像Im1−cの画像図である。図9は、これらの2つの画像のうち、後に撮像された画像の例を示す第1画像Im1−dの画像図である。判定部53は、第1画像Im1−a,Im1−bと同様にして、第1画像Im1−c,Im1−dに第3関心領域ROI3を設定する。出銑滓流像300の幅を規定するy座標y1(図5)は、第1画像Im1−a,Im1−bと第1画像Im1−c,Im1−dとで必ずしも一致しない。このため、第1画像Im1−a,Im1−bに設定される第3関心領域ROI3の位置と、第1画像Im1−c,Im1−dに設定される第3関心領域ROI3の位置とは、必ずしも一致しない。
判定部53は、第1画像Im1−a,Im1−bと同様に、第1画像Im1−c,Im1−dから第3関心領域ROI3の部分を切り出す。判定部53は、切り出された画像に対して、第1画像Im1−a,Im1−bに対して実行された画像処理と同様の画像処理をする。図10は、この画像処理を説明する説明図である。第2画像Im2−cは、図8に示す第1画像Im1−cから第3関心領域ROI3の部分を切り出して得られた画像である。第2画像Im2−dは、図9に示す第1画像Im1−dから第3関心領域ROI3の部分を切り出して得られた画像である。第2画像Im2−c,Im2−dは、出銑滓流30の下側部分30aの像である。
判定部53は、第2画像Im2−cを二値化処理することにより、第3画像Im3−cを生成する。判定部53は、第2画像Im2−dを二値化処理することにより、第3画像Im3−dを生成する。
判定部53は、第3画像Im3−cと第3画像Im3−dとにおいて、同じ位置にある画素に対して排他的論理和を求める処理をすることにより、第4画像Im4−2を生成する。第1画像Im1−c(図8)が撮像された時刻から第1画像Im1−d(図9)が撮像された時刻までの期間(所定時間間隔)において、白画素から黒画素に変化した画素、または、黒画素から白画素に変化した画素は、白画素で示される。所定時間間隔において、白画素の状態が続いている画素、または、黒画素の状態が続いている画素は、黒画素で示される。判定部53は、第4画像Im4−2に含まれる白画素の数をカウントする。白画素の数は、13である。
図7に示すように、出銑口11の下側部分付近11aに堆積物が成長していない場合、第4画像Im4−1に含まれる白画素の数は比較的多い(130個)。これに対して、図10に示すように、出銑口11の下側部分付近11aに堆積物が成長している場合、第4画像Im4−2に含まれる白画素の数は比較的少ない(13個)。第4画像Im4に含まれる白画素の数は、指標値の一例である。指標値は、所定時間間隔において、出銑滓流30の下側部分30aの像の形状変化が大きくなるに従って、大きくなり、その像の形状変化が小さくなるに従って、小さくなる。
判定部53は、指標値が、予め定められたしきい値Thを超えているとき、出銑滓流30の下側部分30aの像の形状変化が比較的大きいと見なし、出銑口11の下側部分付近11aに堆積物が成長していないと判定し、指標値がしきい値Th以下のとき、その像の形状変化が比較的小さいと見なし、出銑口11の下側部分付近11aに堆積物が成長していると判定する。
しきい値Thの算出方法について説明する。溶滓量測定装置1のユーザーは、溶滓量測定装置1を用いて、第4画像Im4−1のサンプルを多数生成し、各サンプルについて、白画素の数(指標値)を計測し、出銑口11の下側部分付近11aに堆積物が成長していない場合において、第4画像Im4−1に含まれる白画素の数の分布を示す第1のグラフを生成する。同様に、ユーザーは、溶滓量測定装置1を用いて、第4画像Im4−2のサンプルを多数生成し、各サンプルについて、白画素の数(指標値)を計測し、出銑口11の下側部分付近11aに堆積物が成長している場合において、第4画像Im4−2に含まれる白画素の数の分布を示す第2のグラフを生成する。第1のグラフおよび第2のグラフは、正規分布になると思われる。第1のグラフの平均値は、第2のグラフの平均値より高くなる。ユーザーは、第1のグラフと第2のグラフとを用いて、出銑口11の下側部分付近11aに堆積物が成長していない場合と成長している場合とを分けるしきい値Thを決定する。ユーザーは、決定したしきい値Thを判定部53に設定する。
図2を参照して、表示制御部54は、所定の情報を示す画像を表示部7に表示させる。例えば、表示制御部54は、溶滓量測定装置1によって測定された溶滓量を示す画像を表示部7に表示させる。また、判定部53が出銑口11の下側部分付近11aに堆積物が成長していると判定した場合、表示制御部54は、その旨を報知する画像を表示部7に表示させる。表示制御部54および表示部7により、報知部が構成される。
表示部7は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ(Organic Light Emitting Diode display)等によって実現される。
入力部9は、ユーザーが溶滓量測定装置1に命令(例えば、溶滓量の測定開始、溶滓量の測定終了)等を入力するための装置である。入力部9は、キーボード、マウス、タッチパネル等によって実現される。
算出部52は、出銑口11から出銑滓流30を取り出している全期間中において、第1の時間間隔で、出銑口11から取り出された溶滓量を算出する。判定部53は、その全期間中において、第2の時間間隔で、出銑口11の下側部分付近11aに堆積物が成長しているか否かを判定する。第1の時間間隔の長さと第2の時間間隔の長さとは、同じでもよいし、異なっていてもよい。算出部52が、出銑口11から取り出された溶滓量を算出するタイミングと、判定部53が、出銑口11の下側部分付近11aに堆積物が成長しているか否かを判定するタイミングとは、同じでもよいし、異なっていてもよい。
溶滓量測定装置1が、出銑口11の下側部分付近11aに堆積物が成長しているか否かを判定する動作について説明する。図11は、これを説明するフローチャートである。図2および図11を参照して、判定部53は、出銑口11の下側部分付近11aに堆積物が成長しているか否かを判定するタイミングに到達したか否かを判断する(ステップS1)。判定部53が、このタイミングに到達していないと判断したとき(ステップS1でNo)、判定部53は、ステップS1の処理を繰り返す。
判定部53が、このタイミングに到達したと判断したとき(ステップS1でYes)、判定部53は、出銑口11の下側部分付近11aに堆積物が成長しているか否かを判定する(ステップS2)。
判定部53が、出銑口11の下側部分付近11aに堆積物が成長していないと判定したとき(ステップS2でNo)、判定部53は、ステップS1の処理に戻る。
判定部53が、出銑口11の下側部分付近11aに堆積物が成長していると判定したとき(ステップS2でYes)、表示制御部54は、堆積物が成長していることを示す画像を表示部7に表示させる(ステップS3)。これにより、ユーザーに、出銑口11の下側部分付近11aに堆積物が成長していることが報知される。
出銑口11の下側部分付近11aに堆積物が成長している場合、算出部52を用いた溶滓量の測定では、溶滓量を正確に測定することができない。この場合、溶滓量測定装置1は、過去に測定された溶滓量が時系列に並ぶデータに対して、外挿をすることにより、溶滓量を推定してもよい。または、溶滓量測定装置1は、出銑口11の下側部分付近11aに堆積物が成長していると判定された状態、および、この後、堆積物が除去された状態で、測定された溶滓量が時系列に並ぶデータに対して、内挿をすることにより、溶滓量を推定してもよい。または、水砕設備で水砕スラグ量が測定されている場合、水砕スラグ量を溶滓量としてもよい。