JP6302183B2 - アディポサイトカイン産生バランス調整剤及び脂肪組織の炎症・酸化ストレス抑制剤並びに脂肪組織のマクロファージ浸潤抑制剤 - Google Patents

アディポサイトカイン産生バランス調整剤及び脂肪組織の炎症・酸化ストレス抑制剤並びに脂肪組織のマクロファージ浸潤抑制剤 Download PDF

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Description

この発明は、内臓肥満によるインスリン抵抗性によってもたらされる疾患、例えば脂質代謝異常、糖代謝異常、アディポサイトカインの産生バランス異常、脂肪組織に対する酸化ストレスの亢進などを予防し改善するためのインスリン抵抗性改善剤およびインスリン抵抗性疾患予防用の健康補助食品に関する。
メタボリックシンドロームは、内臓肥満、耐糖能異常、高血圧および脂質異常症を特徴とする病態であり、2型糖尿病や動脈血栓症の主要な原因ともなることが知られている。
内臓肥満とインスリン抵抗性は、メタボリックシンドロームの端緒と考えられており、肥満とインスリン抵抗性を予防すると共に、その治療も可能な新規物質の開発は極めて重要である。
また、肥満の病態には慢性炎症が認められ、全身の炎症マーカーの上昇は、肥満とインスリン抵抗性に深く関連し、臨床的には動脈硬化の主要な予測マーカーとして炎症マーカーが利用される。
脂肪組織は、レプチン、アディポネクチン、腫瘍壊死因子(TNF-α)、単球走化因子(MCP-1)およびプラスミノゲンアクチベータインヒビター1(PAI-1)など、アディポサイトカインと総称される多くの生理活性物質を放出する重要な内分泌臓器であることが近年の研究で明らかになった。
そして、内臓肥満で蓄積した脂肪組織には、炎症性および抗炎症性アディポサイトカインの産生バランスの破綻が認められることから、脂肪組織における炎症性変化がメタボリックシンドロームの様々な症状の進展に関与し、特に2型糖尿病や血栓症の原因になると考えられている。
ところで、健康を増進させる保健栄養食品として、生体に必要な諸成分を体内で効率よく生成するように代謝活性を高め、またTリンパ球を幼若化させて免疫機能を増強する作用のある発酵代謝物エキスとして市販のエンザミン(登録商標)が知られている(特許文献1)。
この発酵代謝物エキスであるエンザミン(登録商標)は、高温もしくは低温の生育環境、紫外線もしくはX線が照射され、または酸性化された生育環境などにおいて継代培養を繰り返して選抜された特定のバチルス・ズブチリスAK株が産生する抽出物であり、この発酵代謝物エキスについて、本願の発明者らは、マウスの生体内レベルおよび血管内皮細胞を用いた細胞レベルで、線溶活性亢進作用などの抗血栓効果を有することを開示した(特許文献2)。
特許第3902015号公報 特開2012−143187号公報
しかし、上記したように公知技術では、上記の発酵代謝物エキスであるエンザミン(登録商標)について内臓肥満に伴うインスリン抵抗性に関する知見はなく、インスリン抵抗性の改善効果を確実に有している薬剤や食品として利用されていなかった。
そこで、この発明の課題は、上記した問題点を解決して所定発酵代謝物エキスを新規な用途で実施が可能であるように、すなわち所定の発酵代謝物エキスであるエンザミン(登録商標)が、内臓肥満によるインスリン抵抗性による疾患に対して改善作用を奏することを明らかにし、インスリン抵抗性による疾患を広く予防できるように、インスリン抵抗性改善剤およびそれを用いたインスリン抵抗性疾患を予防可能な健康補助食品を作出することである。
本願の発明者らは、肥満モデルマウスのdb/dbマウスを用い、インスリン抵抗性やアディポサイトカインの分泌破綻状態に対して所定発酵代謝物エキスを含有するエンザミン(登録商標)の作用を詳細に研究し、脂質代謝異常、糖代謝異常、アディポサイトカインの産生バランス異常、脂肪組織に対する酸化ストレスの亢進などを改善することを証明し、新たな用途に適用可能であることを見出すことにより、この発明を完成させたものである。
すなわち、この発明においては、上記課題を解決して所定の発酵代謝物エキスを新規な用途に適用し、澱粉をアミラーゼで加水分解した糖化物を培地用基材とし、これに酵母エキスを添加して発酵用培地を調製し、この培地にバチルス・ズブチリスAK(受託番号:FERM P−18291)を接種し、発酵および熟成させた後、生成した液状成分を有効成分として含有するインスリン抵抗性改善剤としたのである。
この発明に係る上記構成のインスリン抵抗性改善剤は、所定の条件で発酵および熟成した発酵代謝物を有効成分として含有し、それによって種々の要因によるインスリン抵抗性を改善できる。
この発明のインスリン抵抗性改善剤としては、例えば脂質代謝異常または糖代謝異常によるインスリン抵抗性を改善するものであり、また脂肪組織における炎症性アディポサイトカインの産生亢進または抗炎症性アディポサイトカインの産生低下によるインスリン抵抗性を改善するものであり、また脂肪組織における炎症またはマクロファージの浸潤によるインスリン抵抗性を改善するものであり、または脂肪組織に対する酸化ストレスの亢進によるインスリン抵抗性を改善するインスリン抵抗性改善剤になる。
このようなインスリン抵抗性改善剤を含有する食品は、安全であって日常的に上記有効成分を摂取することができるものであり、インスリン抵抗性による様々な疾患を予防できる健康補助食品となる。
この発明は、所定条件で発酵および熟成した発酵代謝物を有効成分として含有するインスリン抵抗性改善剤としたので、所定の発酵代謝物エキスが新規な用途で利用されることになり、例えば脂質代謝異常もしくは糖代謝異常、または脂肪組織における炎症性アディポサイトカインの産生亢進もしくは抗炎症性アディポサイトカインの産生低下、脂肪組織における炎症またはマクロファージの浸潤、または脂肪組織に対する酸化ストレスの亢進というインスリン抵抗性によってもたらされる疾患に対して改善効果が奏されるインスリン抵抗性改善剤になる利点がある。
また、このようなインスリン抵抗性改善剤を含有する食品は、インスリン抵抗性による疾患を広く予防できるものとなり、当該疾患を予防する新規な健康補助食品となる利点がある。
(a)各試験マウス群の体重を示す図表、(b)各試験マウス群の体脂肪率を示す図表、(c)各試験マウス群の内臓脂肪量を示す図表、(d)各試験マウス群の試験後の皮下脂肪量を示す図表 (a)各試験マウス群の血清トリグリセリド濃度を示す図表、(b)各試験マウス群の血清総コレステロール濃度を示す図表、(c)各試験マウス群の血漿グルコース濃度を示す図表、(d)各試験マウス群の血漿インスリン濃度を示す図表 (a)グルコース負荷テストの結果を示し、各試験マウス群の試験時間と血漿グルコース濃度との関係を示す図表、(b)インスリン負荷テストの結果を示し、各試験マウス群の試験時間と血漿グルコース濃度との関係を示す図表 (a)各試験マウス群のTNF-αのmRNA発現量を示す図表、(b)各試験マウス群のMCP-1のmRNA発現量を示す図表、(c)各試験マウス群のIL-6のmRNA発現量を示す図表、(d)各試験マウス群のPAI-1のmRNA発現量を示す図表、(e)各試験マウス群の血清TNF-α濃度を示す図表、(e)各試験マウス群の血清アディポネクチン濃度を示す図表 (a)db+mマウス(コントロール群)の脂肪組織の免疫染色写真、(b)db/dbマウス(コントロール群)の脂肪組織に対する免疫染色写真、(c)db/dbマウス(エンザミン0.1%添加群)の脂肪組織に対する免疫染色写真、(d)db/dbマウス(エンザミン1.0%添加群)の脂肪組織に対する免疫染色写真 (a)各試験マウス群のF4/80陽性細胞率を示す図表、(b)各試験マウス群のF4/80mRNA量を示す図表、(c)各試験マウス群のCD68mRNA量を示す図表、(d)各試験マウス群のTLR-4 mRNA量を示す図表 (a)各試験マウス群のNox2 mRNA量を示す図表、(b)各試験マウス群のP22phoxmRNA量を示す図表、(c)各試験マウス群のP47hoxmRNA量を示す図表 各試験マウス群のTNF-α mRNA量を示す図表
この発明のインスリン抵抗性改善剤は、澱粉を所定の菌によって発酵熟成させた液状成分を有効成分として含有し、その有効成分は、コーンスターチ等を含む澱粉をアミラーゼで加水分解した糖化物を培地用基材とし、これに窒素源として酵母エキスを添加して発酵用培地を調製し、この培地に所定の納豆菌であるバチルス・ズブチリスAK(受託番号:FERM P−18291)を接種し、発酵および熟成させた後、生成した液状成分を分取したものである。
ここで、発酵用培地の基材として用いる糖化物は、トウモロコシ子実から分離、精製したコーンスターチ等を含む澱粉をアミラーゼで加水分解したものを用いることができる。また、精製したコーンスターチの代わりに粗精製のコーンスターチを使用することもできる。また、コーンスターチの他に、大豆粉や米糠またはこれらの混合物を加水分解したものを培地用基材として使用することもできる。
先ず、発酵用培地の窒素源として使用する酵母エキスは、ビール酵母(Saccharomyces cerevisiae Meyen)の菌体を消化して抽出した水溶性成分を乾燥したものなど、一般的に食品の発酵や醸造などの細菌培養において窒素源として添加できるものを使用できる。
また、有効成分の製造に用いる発酵用培地には、上記した糖化物および酵母エキスの他にも、必要に応じてタンパク質等の有機物や無機塩類などを配合することができる。有機物としては、大豆タンパク質やその他の植物性タンパク質が挙げられ、無機塩類としては、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、リン酸ナトリウムなどが挙げられる。
培地用基材としての澱粉をアミラーゼで加水分解した糖化物に対して、さらに糖分を添加することも好ましく、そのような糖分としては、例えばショ糖、グルコース(ブドウ糖)、水飴などが挙げられる。
上述したように調製された発酵用培地に接種する発酵菌は、納豆菌であるバチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)AKであり、バチルス・ズブチリスAKは、特許微生物寄託センター(NPMD)に「(受託番号)FERM P−18291」として寄託されている。
また、所望により、バチルス・ズブチリスAKの増殖を阻害しない乳酸桿菌であるラクトバチルス(Lactobacillus)や乳酸球菌であるストレプトコッカス(Streptococcus)、酵母(Saccharomyces cerevisiae)や麹菌(Aspergillus oryzae)の菌体、菌抽出物または菌発酵エキスをバチルス・ズブチリスAKに加えて接種することができる。さらに、本発明の食品の有効成分の製造に用いる発酵用培地には、所望により、バチルス・ズブチリスAKの増殖を阻害しない、ハクサイ、キャベツ、ニンジン、薬用ニンジン、パセリ、セロリ、タマネギなどの植物抽出物を添加することができる。
バチルス・ズブチリスAKは、通常の納豆菌であるバチルス・ズブチリスを、紫外線、X線照射、高・低温環境(100℃、0℃)、乳酸菌との競合、芽胞を作りやすい培地[肉エキス5.0重量%、ペプトン10.0重量%、塩化ナトリウム5.0重量%、寒天15.0重量%、野菜(キャベツ、ニンジン、セロリ、パセリ)圧搾汁65.0重量%]などの諸条件に付して継代培養を繰り返し選抜して発見した耐性菌である。
このようにして得られたバチルス・ズブチリスAK菌株は、以下のような菌学的性質を有しており、バチルス・ズブチリスであると確認できた。
(a)形態学的性質
1 細胞の形および大きさ
桿菌 1.0〜1.2×3.0〜50μm
2 細胞の多形性の有無
無し
3 運動性の有無
有り (周毛性の鞭毛)
4 芽胞の有無
有り 楕円 菌体のほぼ中央
(b)培養的性質
1 肉汁寒天平板培養
円形集落 白濁
2 肉汁液体培養
上部または下部 菌凝体
(c)生化学的性質
1 グラム染色 陽性
2 硝酸塩の還元 陽性
3 MRテスト 陰性
4 VPテスト 陽性
5 インドールの生成 陰性
6 硫化水素の生成 陰性
7 クエン酸の利用 陽性
8 カタラーゼ 陽性
9 生育の範囲
pH 5.5〜7.0
温度 25℃〜40℃
この発明で採用することが好ましい発酵条件は、pH4.5〜6.5、28〜32℃の条件で2ヶ月以上である。発酵条件が、上記より強い酸性域で所定温度未満の条件では、2ヶ月以上発酵させても、この発明に用いる所定の納豆菌が効率よく糖および窒素源を資化しないと推定され、得られた食品に所期した効果が充分得られない。上記の酸性域を越えて中性またはアルカリ性の条件で所定温度を超えて高温では発酵不充分で所定の納豆菌が効率よく糖および窒素源を資化せず、得られた保健栄養食品は上記同様に所期した効果が充分得られないものになる。
また、この発明で採用することが好ましい熟成条件は、pH4.0〜6.0、13〜17℃で4ヶ月以上である。上記より強い酸性域で所定温度未満の条件では、4ヶ月以上熟成させても、発酵生産物として各種の活性を有するアミノ酸、リポ蛋白、リポ多糖(リポポリサッカライド)、リピッドなどが充分に低分子量化しないと推定され、所期した効果が充分得られない場合がある。上記の酸性域を越えて中性またはアルカリ性の条件で所定温度を超えて高温で熟成させると、活性が低下すると推定され、得られた健康補助食品は所期した効果が充分に得られない場合がある。
生成した液状成分を分取するには、ろ過または遠心分離などの周知の分離手段を採用すればよく、得られた食品用原液は、そのまま使用できるが、流通や保存のために濃縮しておき、適宜に希釈して使用してもよい。
この発明のインスリン抵抗性改善剤の有効成分は、前記したような製造工程で製造可能なものであるが、市販品を利用することもできる。その場合は、株式会社エンザミン研究所により製造されたエンザミン(登録商標)の原液(ENM:商品名)の他、その20倍濃縮エキスであるエンザミン濃縮液(ENM−HL:商品名)を原液濃度に換算して使用することができる。
この発明のインスリン抵抗性改善剤は、上記したエンザミン濃縮液(ENM−HL:商品名)を所定の液状成分として、水または賦形剤等の飲食可能な材料に0.1〜1.0質量%配合し、マウスに摂食させるときに有効性が確認されている。
このとき、エンザミン濃縮液(ENM−HL:商品名)を濃度0.1質量%で摂食させると平均0.5mg/kg体重/日/マウスの摂取量になり、濃度1.0質量%で節食させると平均5.0mg/kg体重/日/マウスの摂取量になり、それぞれ有効性が認められる。
この摂取量をヒトの場合について換算すると、体表面積から換算してマウス用量の15分の1程度になるので、成人(体重60kg)でのエンザミン(登録商標)の原液(ENM:商品名)の1回/日の摂取量は、20×(2〜20mg)すなわち、40〜400mgが確認された有効成分量である。
この発明のインスリン抵抗性による疾患予防用の健康補助食品は、上記のようにして調製した有効成分と食品分野で慣用的に使用されている賦形剤(例えば、澱粉あるいはデキストリン、セルロース、乳糖、麦芽糖、還元乳糖、還元麦芽糖、ソルビトール、マンニトール、エリスリトール、キシリトール等)や補助剤(例えば、溶媒、分散媒質、被覆剤、安定剤、希釈剤、保存剤、防腐剤、殺菌剤、抗真菌試薬、等浸透圧試薬、吸収抑制試薬、崩壊剤、乳化剤、結合剤、潤滑剤、色素等)と混合し、健康補助食品の分野で慣用的に使用されている製剤方法によって、例えば、錠剤、カプセル、顆粒、粉末、抽出液、溶液、シロップ、懸濁液、乳濁液の形態に製造し得るものである。
また、この発明のインスリン抵抗性による疾患予防用の健康補助食品は、上記した所定の液状成分であるエンザミン(登録商標)の原液(ENM:商品名)を、上記の1日当たりの有効成分量を目安にして、補助食品全体の重量に対して、例えば約0.05〜100質量%、好ましくは約0.1〜90質量%、より好ましくは約1〜85質量%、さらに好ましくは約5〜80質量%、最も好ましくは約10〜50質量%含有することができる。
[インスリン抵抗性改善剤の有効成分の調製]
イエローコーンスターチ2.3kg、大豆ペプトン0.5kg、米糠汁0.5kg、塩化カルシウム80g、食塩150gに精製水50kgを加え、加熱して溶解した。次いでこれを冷却し、アミラーゼ40gを加えて充分に糖化させた。糖化終了後、グラニュー糖1.5kg、グルコース(ブドウ糖)1.5kg、酵母エキス450g、水飴1.5kg、リン酸ナトリウム80g、野菜の圧搾汁(キャベツ、ニンジン、セロリ、パセリの合計)5kg、および精製水を加えて全量を150kgにした。
そして、水酸化ナトリウムを添加してpHを7.3〜7.8の範囲内に調整し、これを培養缶に入れて120℃で20分間高圧滅菌した。これを冷却した後、バチルス・ズブチリスAK株を接種し、温度30±2℃の恒温室でpH4.5〜6.5で60日間発酵させ、次いで温度15±2℃の恒温室でpH4.0〜6.0の条件下で180日間熟成させて培養液を透明化させた。これをフィルターによってろ過し、125リットルの液状の保健栄養食品の原液(以下、培養濾液と称する。)を得た。
得られたインスリン抵抗性改善剤の液状有効成分の原液100g中の一般分析結果を以下の表1中に示す。なお、表中の記号φは、検出限界以下の微量を示している。
また、得られた液状成分または同成分のエンザミン(登録商標)が含まれる食品の経口安全性については、特許第3902015公報の段落0031にも記載されているように、ウィスター系ラットを用いた経口LD50値が雄雌共に42.0ml/kg以上と高いものであり、この発明に用いる有効成分は高い安全性を有していることが明らかである。
次に、上記の液状成分の原液の20倍濃縮液(エンザミン研究所社製:ENM−HL、以下の実施例1、2、比較例、これらの試験の説明および図表中の説明において、これをエンザミンと称する。)を有効成分とする実施例1、2、比較例(コントロール)の各インスリン抵抗性改善剤を調製し、それらを以下の試験によって評価した。
なお、以下の試験結果は、平均値±標準誤差で示し、%の記載は質量%であり、有意差検定は、一元配置分散分析法(one-way ANOVA)を用い、特に示さない限りp<0.05を有意差ありとした。また、統計解析は全て StatView version 5.0 software (米国SAS Institute社製)を用いて行なった。
[実施例1、2、比較例]
<脂質代謝異常のインスリン抵抗性改善剤、糖代謝異常のインスリン抵抗性改善剤>
上記のようにして得られた有効成分のエンザミンを0.1質量%濃度で含有する飲料水(実施例1)、エンザミンの1.0質量%濃度の飲料水(実施例2)、エンザミンを全く含まない水(比較例)を調製し、マウスへの経口摂取による実施例1、2の脂質代謝異常または糖代謝異常のインスリン抵抗性改善剤としての適性を評価した。
[マウスの経口摂取]
日本チャールス・リバー社より購入した5週齢の雄性db/dbマウスとヘテロのdb/+mマウスのうち、db/dbマウスに標準固形食とエンザミンを0.1%(平均0.5mg/kg体重/日/マウス)および1.0%(平均5.0mg/kg体重/日/マウス)で混ぜた飲水(実施例1、2)を6週齢より8週間与えた。比較例(コントロール)として、エンザミンを全く含まない水を与えた。
なお、餌および飲水は自由摂取とし、やせのコントロールとしてdb/+mマウスを用い、これに標準固形食と飲水を同じ期間、自由に摂取させた。これらのマウスは、12時間の明暗サイクルで飼育し、すべての動物実験は、学校法人近畿大学医学部動物実験指針に従って行なった。
上記した実施例、比較例の発明の効果を評価するに当たり、その前提として、エンザミン投与によりdb/dbマウスの体重および体脂肪量に影響がないことを確認するため、供試マウスに対する実施例1、2の経口摂取と全く同じ条件で経口摂取したマウスについて、体重、体脂肪率、皮下脂肪率の増減を調べ、その結果を図1に示した。なお、図中に記した%は質量%である。また、体脂肪率、内臓脂肪量、皮下脂肪量の測定については、以下の体組成解析試験を行なった。
[体組成解析試験]
体脂肪組成の解析をコンピュータ断層撮影法(CT解析)で行なった。すなわち、マウスをイソフルランで麻酔した後、実験動物CT解析装置(日立アロカメディカル社製:ラシータ LCT-200)を用いて体脂肪組成を測定した。その際、実験動物の第1腰椎から第5腰椎の間を1mmの間隔でスキャンし、連続したスライス断層画像を作成した後、ラシータソフトウェア(version 3.40)を用いて定量化した。内臓脂肪と皮下脂肪は、腹筋の位置により区別し、総脂肪量、内臓脂肪重量および皮下脂肪重量は、全スライス画像を積算することで算出した。
図1に示された結果からも明らかなように、0.1%濃度および1%濃度のエンザミン投与による体重への影響は認められず、CT画像から計算した体脂肪率、内臓脂肪量および皮下脂肪量、肝脂肪量においてもエンザミン投与による変化は認められなかった。
次に、脂質代謝異常または糖代謝異常のインスリン抵抗性改善剤による所期した直接的なインスリン抵抗性による効果を調べるため、実施例1、2、比較例に対し、以下の代謝マーカーによる解析試験を行ない、その結果を図2、3に示した。なお、図中、%は質量%である。
[代謝マーカーによる解析試験(1)]
db/dbマウスを用いた実施例1、2、比較例、およびdb/+mマウスを用いたコントロールについて、血清トリグリセロール、血清総コレステロール、血漿グルコース、血漿インスリンの濃度は、それぞれトリグリセライドEテスト(和光純薬工業社製)、コレステロールEテスト(和光純薬工業社製)、グルテストエース(三和化学研究所製)、超高感度マウスインスリン測定キット(森永生科学研究所製)を用いて測定した。
[脂質代謝異常によるインスリン抵抗性の改善]
図2(a)に示した結果からも明らかなように、db/dbマウスにおける血清トリグリセリドの測定結果から、db/dbマウスの空腹時の血清トリグリセリド濃度(158.1±12.4mg/ml)は、db/+mマウス(コントロール群:図中mで示す。)の血清トリグリセリド濃度(59.9±6.7mg/dl)に比べて、有意(p<0.01)な高値を示した。
また図2(a)から、0.1%濃度のエンザミン投与により、db/dbマウスにおける血清トリグリセリド濃度は137.0±8.0mg/dlであり、コントロール群の158.1±12.4mg/dlに比べて有意差はないが減少傾向を示し、さらに1%濃度のエンザミン投与群(122.0 ± 8.4 mg/dl)では、エンザミン非投与のdb/dbマウス群に比べて有意(p<0.05、図中に*印を付す。)な減少が認められた。
同様に図2(b)からも明らかなように、db/dbマウスの空腹時の血清総コレステロール濃度(217.9±8.7mg/dl)と比べて、0.1%濃度のエンザミン投与群(181.4±8.3mg/dl)には減少傾向が認められ、1%濃度エンザミン投与群には有意(p<0.05)な減少が認められた。
これらの結果から、有効成分のエンザミンは、血清トリグリセリドおよび総コレステロール濃度を投与濃度依存的に減少させており、有効成分の摂取によってdb/dbマウスにおける脂質代謝が改善されることが明らかになった。
<糖代謝異常によるインスリン抵抗性の改善剤>
次に、db/dbマウスの糖代謝異常に対するエンザミンの効果を検討した。
図2(c)に示す結果からも明らかなように、db/dbマウスの空腹時血漿グルコース濃度(758.7±24.7mg/dl)は、db/+mマウス(コントロール群54.6±1.5mg/dl:図中mで示す)に比べて、著明な増加を示した(p<0.01)。
また、0.1%濃度のエンザミン投与群のdb/dbマウスの血漿グルコース濃度は減少傾向を示し、1.0%濃度のエンザミン投与群(643.0±34.0mg/dl)は有意(p<0.05)な減少を示した。
図2(d)に示す結果からも明らかなように、血漿インスリン濃度は、db/+mマウス(図中mで示す。0.12±0.04ng/ml)に比較し、db/dbコントロール群で2.05±0.22ng/mlであり、著明な高値を示したが(p<0.01)、0.1%エンザミン投与群(2.72±0.27ng/ml)、1.0%エンザミン投与群(2.72±0.30ng/ml)であり、エンザミン投与による血漿インスリン値に対する影響が認められなかった。
さらに、エンザミンの糖代謝に対する効果を詳細に検討するため、グルコース負荷テスト(intraperitoneal glucose tolerance test (IPGTT))およびインスリン負荷テスト(intraperitoneal insulin tolerance test (IPITT))を行ない、それらの結果を図3(a)(b)に示した。
先ず、グルコース負荷テストを行うために、マウスを16時間絶食させ、その後、腹腔にグルコースを1.5mg/kg体重の濃度で投与した。この結果を図3(a)に示した。
また、インスリン負荷テストを行うためには、マウスを6時間絶食させた後、腹腔にレギュラーヒトインスリンを1U/kg体重の濃度で腹腔に投与した。この結果を図3(b)に示した。血液サンプルは、投与前と投与後に採取し、血中グルコース濃度はグルテストエース(三和化学研究所製)を用いて測定し、投与前(0分)と投与後(30〜90分)の結果を図3(b)に示した。
なお、図3の折れ線グラフ中の記号については、○:db/+mマウス、●:エンザミン非投与db/dbマウス(コントロール)、△:0.1%エンザミン投与db/dbマウス、□:1.0%エンザミン投与db/dbマウスの各群の結果を示している。
図3(a)の結果からも明らかなように、腹腔内へのグルコース投与後の血漿グルコース濃度は、db/dbマウスにおいてdb/+mマウスに比較して著明に上昇しており、著明な耐糖能異常を示した。1.0%濃度のエンザミン投与により、db/dbマウスにおけるグルコース注入30分後、60分後および90分後の血漿グルコース濃度の上昇が有意に抑制された。なお、0.1%濃度のエンザミン投与では有意差はなかったが、血漿グルコース濃度の上昇の抑制傾向が認められた。これらのことから、エンザミン投与により、db/dbマウスにおける耐糖能異常が改善されていることがわかる。
また、図3(b)の結果からも明らかなように、db/dbマウスでは、耐糖能異常と共に、インスリン感受性が著明な障害が認められた。すなわち、db/+mマウスに比較して、db/dbマウスではインスリン投与後の血漿グルコース濃度の低下が著しく抑制されていた。0.1%濃度のエンザミン投与では効果は認められなかったが、1.0%濃度のエンザミンの投与(□印)では、インスリン投与後のdb/dbマウスにおける血漿グルコース濃度の低下が30分、60分、90分および120分後がコントロール群(●印)に比べて有意に亢進していた。これらのことから、エンザミンの投与がdb/dbマウスにおけるインスリン抵抗性を改善させることがわかる。
<脂肪組織における炎症性アディポサイトカインの産生亢進または抗炎症性アディポサイトカインの産生低下によるインスリン抵抗性改善剤>
実施例1、2のアディポサイトカイン発現・分泌に対するエンザミンの効果を調べ、これらの効果を奏するインスリン抵抗性改善剤としての適性を評価した。
すなわち、前記同様のマウスへの経口摂取試験を行ない、db/dbマウスを用いた実施例1、2、比較例、およびdb/+mマウスを用いたコントロールについて、以下の試験を行ない、その結果を図4に示した。
[代謝マーカーの解析試験(2)]
エンザミン投与(8週間)によるインスリン抵抗性改善効果の機序を検討するために、実施例1、2、比較例のdb/dbマウスの脂肪組織における炎症性アディポサイトカインと抗炎症性アディポサイトカインの発現および分泌に対するエンザミンの効果を検討した。
血清アディポネクチンおよび血清TNFα濃度は、それぞれアディポネクチンELISAキット(大塚製薬社製)およびQuantikine TNF-alpha ELISA kit (米国R&Dシステムズ社製)を用いて測定した。
図4の(a)〜(f)は、順にTNF-α, MCP-1, IL-6 , PAI-1 のmRNA発現量、各群のマウスにおける血清TNF-α濃度、血清アディポネクチン濃度を示し、各図中のm印はdb/+mマウス(やせのコントロール(n=6))の脂肪組織、−印はエンザミン非投与(n=10)db/dbマウスの脂肪組織、0.1はエンザミン投与0.1%(n=9)の実施例1のdb/dbマウスの脂肪組織であり、1.0は、エンザミン投与1.0%(n=8)の実施例2のdb/dbマウスの脂肪組織である。これらの結果は平均値±標準誤差で表し、エンザミン非投与 db/dbマウスに対してp<0.05で有意差のあるものは*印で示し、p<0.01で有意差のあるものは**印で示した。)なお、図中、%は質量%を示している。
図4(a)の結果からも明らかなように、db/dbマウスの脂肪組織におけるTNFαの発現はdb/+mマウスのそれに比較して、5倍に増加しており、db/dbマウスの脂肪組織において炎症が誘発されていることを確認した。
特筆すべきことは、投与したエンザミンの濃度依存的にdb/dbマウスの脂肪組織におけるTNF-αのmRNAの発現量の抑制が認められたことである。特に、1.0%濃度のエンザミン投与では、コントロール群に比較して、TNF-αのmRNAの発現を40%抑制した。
また、図4(b)、(c)の結果からも明らかなように、1.0%濃度のエンザミン投与によって、単球走化因子(Monocyte chemoattractant protein 1(MCP-1))とインターロイキン6(IL-6)の発現が、コントロール群に比較してそれぞれ50%、60%抑制された。
また、図4(d)の結果からも明らかなように、プラスミノゲンアクチベータインヒビター1(Plasminogen activator inhibitor-1 (PAI-1))の発現は、0.1%および1.0%濃度のエンザミン投与の両方で有意な抑制が認められた。
これらの結果から、エンザミンの投与はdb/dbマウスの脂肪組織における炎症を抑制するものと認められる。
さらに、全身の炎症状態に対するエンザミンを有効成分とするインスリン抵抗性改善剤の効果を検討するために、db/dbマウスにおける血中TNF-α濃度を測定した。図4(e)の結果からも明らかなように、コントロール群(−印)の45.2±6.5pg/mlに比べて1.0%濃度のエンザミン投与をした実施例2では、血中TNF-α濃度が27.2±6.4pg/mlになるという有意な抑制が認められた(p<0.05)。従って、エンザミンを有効成分とするインスリン抵抗性改善剤は、脂肪組織の炎症抑制効果と同様に、全身の炎症も抑制することがわかる。
図4(f)の結果からも明らかなように、抗炎症性アディポサイトカインである血中アディポネクチン濃度は、エンザミンの投与濃度依存的に増加し、特に1.0%濃度のエンザミンの投与においては、11.4±0.8μg/mとなっており、db/dbコントロール群の8.1±0.7μg/mlに対してl1.4倍の増加が認められた。これらのことから、エンザミンを有効成分とするインスリン抵抗性改善剤が、肥満マウスにおけるアディポサイトカインの産生破綻を改善していることがわかる。
<脂肪組織におけるマクロファージの浸潤によるインスリン抵抗性の改善剤>
次に、エンザミンを有効成分とするインスリン抵抗性改善剤の脂肪組織へのマクロファージ浸潤に対するインスリン抵抗性の効果を検討するために、肥満マウスの脂肪組織におけるF4/80(成熟マクロファージのマーカー)に対する組織免疫学的解析を行なった。
[組織免疫学的解析]
マウスの精巣上体白色脂肪組織を4℃の条件下で12〜16時間、4%パラホルムアルデヒドを用いて固定し、4μm厚のパラフィン切片を作製し、ラットモノクローナル抗F4/80抗体(米国AbD Serotec社製)と反応させた。そして、西洋ワサビペルオキシダーゼを結合した二次抗体と反応させた。チラミドシグナル増幅システム(米国パーキンエルマー社製)を用いて、陽性シグナルを可視化した。また、切片を4′,6-ジアミノ-2-フェニルインドール(DAPI)で後染色し、蛍光顕微鏡(キャノン社製:E800)とCCDカメラ(キーエンス社製)を用いて観察した。それぞれのマウス個体より作製したパラフィン切片中の10視野を観察し、F4/80発現陽性細胞の核の数とすべての細胞の核の数を、画像解析ソフト(NIHイメージ)を用いてカウントし、全細胞数対するF4/80陽性細胞の割合を算出した。
図5の免疫染色像が示すように、まず、db/+mマウス(図5(a))に比較して、db/dbマウス(図5(b))では、脂肪組織におけるF4/80陽性細胞の数が著明に増加しており、これはマクロファージの脂肪組織への浸潤が著明に増加していることを示している。
そして、図5(c)、(d)からも明らかなように、エンザミンを有効成分とするインスリン抵抗性改善剤の0.1%、1.0%投与により、濃度依存的にF4/80陽性細胞の数の減少が観察された。
また図6(a)に示すように、F4/80陽性細胞の数をカウントし、全体の細胞に対する割合を算出したところ、0.1%のエンザミンの投与(47.4±5.1%)では、db/dbコントロール群(54.5±2.4%)に比べて有意差(p<0.05)は認められなかったが、脂肪組織へのマクロファージ浸潤を抑制する傾向が認められ、さらに1.0%のエンザミン投与(42.8±2.3%)では、マクロファージ浸潤の有意な抑制が認められた。
さらに、マクロファージの活性化および脂肪組織の炎症を確認するため、以下のように
「細胞培養」を行ない、「定量リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応」による遺伝子発現定量解析を行なった。
[細胞培養]
マウスマクロファージ培養細胞のRAW264.7細胞(ATCC)を10%ウシ胎児血清(FBS)および100mg/mLのペニシリンストレプトマイシンを含むダルベッコ変法培地で37℃、5%CO条件下で培養維持した。RAW264.7細胞を1×10cells/ウェルで6ウェルプレートに播主し、24時間培養後、0.01%および0.1%のエンザミンをそれぞれ添加し、さらに1μg/mlの濃度でリポポリサッカライド(LPS)を添加し、12時間反応させた。リン酸生理食塩緩衝液(PBS)で2回洗浄後、細胞からRNAを抽出し、定量リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(定量RT-PCR反応)による遺伝子発現解析を行なった。
[定量リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応]
マウスの精巣上体白色脂肪組織(100mg)およびRAW264.7細胞よりRNAをRNeasy Mini kit (キアゲン社製)を用いて抽出した。そして、cDNA(環状DNA)をSuper Script III逆転写キット(ライフテクノロジーズ社製)を用いて合成した。発光試薬としてSYBR GREEN PCR Master Mixを用い、StepOne PlusリアルタイムPCR装置(ライフテクノロジーズ社製)にて、遺伝子発現定量解析を行なった。遺伝子発現解析により定量化されたmRNA量は、内部標準として18sリボソーマルRNAにより標準化し、単位は任意単位で表した。
図6(b)に示すように、上記のマーカー遺伝子の発現定量解析の結果は、1.0%濃度のエンザミン投与群では、コントロール群に比較して、脂肪組織におけるEmr1(F4/80)mRNAの発現が40%抑制されていた。
さらに図6(c)(d)に示すように、マクロファージの活性化マーカーおよび炎症状態のマーカーであるCD68およびToll like receptor 4(TLR4)の発現もそれぞれ40%抑制されていた。
これらの結果から、エンザミンを有効成分とするインスリン抵抗性改善剤がdb/dbマウスの脂肪組織への炎症性マクロファージの浸潤を抑制していることがわかる。
<脂肪組織における酸化ストレスによるインスリン抵抗性の改善剤>
脂肪組織における酸化ストレスに対するエンザミンを有効成分とするインスリン抵抗性改善剤の効果を評価するため、db/dbマウスの精巣上体白色脂肪組織におけるニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)オキシダーゼのサブユニット(Nox2, p22phox 及び p47phox)の遺伝子(mRNA)発現量を検討した。
細胞培養試験および定量リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応についは、上記した「脂肪組織におけるマクロファージの浸潤によるインスリン抵抗性の改善」についての実験操作と同じ手順で行ない、Nox2、p22phox およびp47phox mRNAの発現量を調べた。
図7(a)(b)(c)に示す結果からも明らかなように、Nox2、p22phox およびp47phox の各mRNAの発現量は、db/dbマウスにおいてdb/+mマウスに比較して、顕著に増加しており、db/dbマウスの脂肪組織における酸化ストレスが亢進していることがわかる。
0.1%濃度のエンザミン投与では、エンザミン非投与に対する有意差(P<0.05)は認められなかったが、これらNADPHオキシダーゼサブユニットの発現量を抑制する傾向が認められた。さらに1.0%濃度のエンザミン投与では、Nox2, p22phox およびp47phoxの遺伝子発現上昇をそれぞれ40%、30%および40%ほど有意に抑制した。
これらの結果から、エンザミンを有効成分とするインスリン抵抗性改善剤が、db/dbマウスの脂肪組織における酸化ストレスを抑制することがわかる。
<脂肪組織におけるLPS誘導性の炎症反応によるインスリン抵抗性の改善剤>
次に、マクロファージにおける炎症反応に対するエンザミンを有効成分とするインスリン抵抗性改善剤のLPS誘導性の炎症反応の効果を検討するために、マウスマクロファージ培養細胞のRAW264.7細胞を用いて、LPS刺激時のTNF-αの発現上昇に対するエンザミンを有効成分とするインスリン抵抗性改善剤添加効果を検討した。
細胞培養試験および定量リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応についは、上記した「脂肪組織におけるマクロファージの浸潤によるインスリン抵抗性の改善」についての実験操作と同じ手順で行ない、TNF-αのmRNAの発現量を調べた。
すなわち、RAW264.7細胞におけるLPS(1μg/ml)の存在下、非存在下における0.01%および0.1%エンザミンを有効成分とするインスリン抵抗性改善剤の12時間の添加効果を調べ、その結果は、図8に平均値±標準誤差で示し、図中の**はp<0.01(各群n=3)での有意差があることを示している。
図8の結果からも明らかなように、LPS非存在下(−印)においては、0.1%のエンザミンの添加により、RAW264.7細胞におけるTNF-αの発現量をわずかに増加した。
しかし、LPSにより著明に発現が誘導されたTNF-αmRNAを0.01%および0.1%濃度のエンザミンを有効成分とするインスリン抵抗性改善剤の添加群では有意に抑制された。これらのことから、エンザミンを有効成分とするインスリン抵抗性改善剤がマクロファージにおける炎症反応を抑制することがわかる。
インスリン抵抗性改善剤は、内臓肥満によるインスリン抵抗性によってもたらされる疾患の予防または治療に利用できるものであり、例えば脂質代謝異常、糖代謝異常、アディポサイトカインの産生バランス異常、脂肪組織に対する酸化ストレスの亢進などを予防し改善するためのインスリン抵抗性改善剤となるものである。より具体的には、肥満細胞組織に対する脂質代謝異常の抑制剤または糖代謝異常の抑制剤、アディポサイトカイン産生バランス調整剤、肥満脂肪組織の炎症・酸化ストレス抑制剤、肥満細胞組織のマクロファージ阻害(浸潤抑制)剤などである。
また、この発明のインスリン抵抗性改善剤を様々な飲食品に含有させれば、インスリン抵抗性疾患予防用の健康補助食品になり、例えば脂質代謝異常予防用の健康補助食品または糖代謝異常予防用の健康補助食品、アディポサイトカイン産生失調予防用の健康補助食品、肥満脂肪組織の炎症・酸化ストレス予防用の健康補助食品、肥満細胞組織のマクロファージ阻害(浸潤抑制)予防用の健康補助食品などである。

Claims (3)

  1. 澱粉をアミラーゼで加水分解した糖化物を培地用基材とし、これに酵母エキスを添加して発酵用培地を調製し、この培地にバチルス・ズブチリスAK(受託番号:FERM P−18291)を接種し、発酵および熟成させた後、生成した液状成分を有効成分として成人1日当たりの摂取量40〜400mg含有するアディポサイトカイン産生バランス調整剤(ただし、糖尿病の予防や進行抑制のための血糖値上昇抑制剤を除く。)
  2. 澱粉をアミラーゼで加水分解した糖化物を培地用基材とし、これに酵母エキスを添加して発酵用培地を調製し、この培地にバチルス・ズブチリスAK(受託番号:FERM P−18291)を接種し、発酵および熟成させた後、生成した液状成分を有効成分として成人1日当たりの摂取量40〜400mg含有する脂肪組織の炎症・酸化ストレス抑制剤(ただし、糖尿病の予防や進行抑制のための血糖値上昇抑制剤を除く。)
  3. 澱粉をアミラーゼで加水分解した糖化物を培地用基材とし、これに酵母エキスを添加して発酵用培地を調製し、この培地にバチルス・ズブチリスAK(受託番号:FERM P−18291)を接種し、発酵および熟成させた後、生成した液状成分を有効成分として成人1日当たりの摂取量40〜400mg含有する脂肪組織のマクロファージ浸潤抑制剤(ただし、糖尿病の予防や進行抑制のための血糖値上昇抑制剤を除く。)
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