JP6300341B2 - アルミニウムフィン材 - Google Patents
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以下、本発明に係るアルミニウムフィン材を実現するための形態について説明する。
アルミニウムフィン材は、フィンに成形する前の板材であり、所定の寸法に切断してプレス加工にて成形されて熱交換器用フィンに製造される。図1(a)に示すように、本発明に係るアルミニウムフィン材10は、基板1、およびその両面に形成されて最表面を被覆する親水性皮膜4を備える。以下、アルミニウムフィン材および基板について、親水性皮膜が形成される面を、単に表面という。
基板1は、通常の熱交換器用のフィン材に適用されるアルミニウムまたはアルミニウム合金(以下、総称してアルミニウムという)で形成され、熱伝導性および加工性の点からJIS H4000規定の1000系のアルミニウムが好適に用いられ、より好ましくは合金番号1200のアルミニウムが用いられる。これらの材料は、鋳造、熱間圧延、冷間圧延、調質等の公知の方法で所望の厚さの板材に製造される。基板1の厚さは、特に規定するものではなく、製造される熱交換器の仕様等に合わせて、要求される熱伝導性や強度および耐食性等に対応可能な厚さとすればよく、具体的には板厚0.06〜0.3mm程度の板材が好適に使用される。
親水性皮膜4は親水性樹脂を含有し、本発明に係るアルミニウムフィン材10において、その表面に親水性を付与する皮膜、あるいは水に徐々に溶出して主に潤滑性を付与する皮膜である。親水性皮膜4は、アルミニウムフィン材10において、面積あたりの付着量で0.01〜3g/m2となるように形成されることが好ましく、当該親水性皮膜4を形成する樹脂の比重を1程度とみなすと、膜厚が平均0.01〜3μmの範囲となることが好ましい。親水性皮膜4は、薄過ぎると十分な親水性または潤滑性が得られず、一方、厚過ぎると、形成時の塗布作業性が低下し、特に基板1がコイル状のアルミニウム板(条材)である場合は塗膜の形成が困難になる。また、アルミニウムフィン材10は、主に樹脂からなる親水性皮膜4が厚いと熱交換の効率が低下するので、親水性皮膜4は十分な親水性や潤滑性が得られる範囲で薄く形成されることが好ましい。
図1(b)に示すアルミニウムフィン材10において、中間親水性皮膜3は、前記の親水性皮膜4における親水性樹脂材料を適用することができる。中間親水性皮膜3は、EO基含有化合物を含有してもよく、この場合はさらに、親水性を阻害しない程度に熱分解抑制剤を添加されてもよく、また、親水性皮膜4と同様にアルカリ金属化合物を添加されてもよい。また、中間親水性皮膜3は、膜厚や面積あたりの付着量が、前記の親水性皮膜4についての範囲に準じるとするが、親水性皮膜4との合計すなわち2層で5μm以下とすることが、熱交換の効率上、好ましい。さらに、アルミニウムフィン材10は、中間親水性皮膜3を備える場合は、その効果(親水性)を当該アルミニウムフィン材10の表面で発現させ易くするために、最表面の親水性皮膜4の膜厚を前記した範囲内で薄くすることがより好ましい。
疎水性皮膜2は、アルミニウムからなる基板1(アルミニウムフィン材10)に耐食性を付与するために基板1表面を被覆する疎水性樹脂からなる皮膜であり、親水性皮膜4と同様に、塗料を基材表面に塗布することにより形成される。塗料に使用される疎水性樹脂は、例えば、ポリエステル系、ポリオレフィン系、エポキシ系、ウレタン系の各種樹脂が挙げられ、これらの1種または2種以上を混合したものが適用される。疎水性皮膜2は、膜厚等は特に限定されないが、基板1に十分な耐食性を付与するためには、面積あたりの付着量で0.01g/m2以上が好ましく、0.05g/m2以上がより好ましい。一方、親水性皮膜4と同様に、樹脂からなる疎水性皮膜2が厚いと熱交換の効率が低下するので、付着量で8g/m2以下が好ましく、4g/m2以下がより好ましい。膜厚では0.1〜3μmとすることが好ましい。
本発明に係るアルミニウムフィン材10は、化成処理した基板1の表面に、親水性皮膜4を形成する塗料を塗布して、自然乾燥や温風等で乾燥させて(焼付け処理をして)製造することができる。さらに、親水性皮膜4を形成する前に、同様に中間親水性皮膜3を形成してもよいし、あるいは基板1の表面に疎水性樹脂塗料を塗布して疎水性皮膜2を形成してもよい。なお、アルミニウムフィン材10は、中間親水性皮膜3を設ける場合は、当該中間親水性皮膜3を形成した(焼付け処理をした)後に、その表面を水洗してから、最表面の親水性皮膜4を形成する(塗料を塗布する)ことが好ましい。中間親水性皮膜3のような親水性の下塗り塗膜を設ける場合は、水洗して下塗り塗膜の水溶性成分を除去しておくことにより、上塗り塗装において塗装面を均一に形成し易く、また、上塗り塗膜(親水性皮膜4)の密着性が向上する。さらに、中間親水性皮膜3の焼付けで、熱分解して低分子有機酸が生成した等の場合には、水溶性成分として除去する効果もある。
(基板、化成処理)
アルミニウムフィン材の供試材における基板として、厚さ0.10mmのJIS H4000 A1200アルミニウム板を適用した。この基板の表面を、アルカリ性薬剤(サーフクリーナー(登録商標)EC370、日本ペイント社製)で脱脂し、化成処理液として日本ペイント社製アルサーフ(登録商標)401KB−2/45KBを使用して、リン酸クロメート処理を施して化成処理皮膜を形成した。波長分散型蛍光X線装置(島津製作所製、LAB CENTER XRF−1800)で測定した化成処理皮膜のCr換算値は20mg/m2であり、膜厚約20nmとなった。
以下の樹脂塗料を、固形分濃度が10%となるように適宜稀釈したものを、バーコーターで基板に塗布し、熱風乾燥炉にて基板到達温度約220℃で焼付けをして、空冷し、膜厚約1μmの疎水性皮膜を形成した。
ウレタン系:ウレタン変性樹脂エマルジョン、東邦化学社製、ハイテック(登録商標)S−6254
エポキシ系:水系エポキシ樹脂、加熱硬化型、アニオン系、株式会社アデカ製、アジカレジン(登録商標)EMシリーズEM−0434AN
アクリル系:ポリアクリル酸エステル共重合体、日本純薬株式会社製、ジュリマー(登録商標)AT−210
表1に示す種類の樹脂塗料を、合計の固形分濃度が10%となるように、表1に示す配合で混合し、適宜稀釈したものを、疎水性樹脂の形成と同様に、バーコーターで基板に塗布し、熱風乾燥炉にて基板到達温度約220℃で焼付けをして、水洗して冷却しながら溶出分を除去し、膜厚約0.5μmの中間親水性皮膜を形成した。
親水性皮膜用の樹脂塗料として、次のように親水性樹脂水溶液を調製した。まず、ポリアクリル酸ナトリウムおよびカルボキシメチルセルロースナトリウムを、等量固形分量の水溶液(各固形分濃度10%)を基本組成とし、表1に示す種類のEO基含有化合物を、前記水溶液中に固形分濃度で1%となるように添加した。この水溶液に、表1に示す種類および前記水溶液における固形分濃度のアルカリ金属化合物を添加した。さらに、表1に熱分解抑制剤の種類を記載した供試材について、その種類の熱分解抑制剤を、親水性皮膜における含有量が0.5質量%となるように、親水性樹脂水溶液に添加した。
ポリアクリル酸ナトリウム(PAANa):東亜合成株式会社製、アロンA−20L(登録商標)
カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMCNa):第一工業製薬製株式会社製、セロゲン7A(登録商標)
アクリル酸/スルホン酸系モノマー共重合体塩(AASF):株式会社日本触媒製、アクアリック(登録商標)GL
ポリエチレングリコール(PEG):三洋化成工業株式会社製、PEG−6000S(登録商標)
ポリエチレングリコール(PEG):三洋化成工業株式会社製、PEG−6000S(登録商標)
ポリオキシエチレンアルキルエーテル(AE):日本乳化剤株式会社製、ニューコールNT−12(登録商標)
ポリオキシアルキレンエーテル硫酸エステル塩(AES):ライオン株式会社製、サンノール(登録商標)PP−2030
カルバジド化合物:明成化学工業株式会社製、MS−3000(登録商標)
フェノール系化合物:ジブチルヒドロキシトルエン、関東化学株式会社製
供試材を、10cm×10cmに切り出して試験片とし、この試験片を熱交換器の加熱脱脂工程を想定して160℃で10分間の加熱処理を実施した。加熱処理した試験片を、25℃のイオン交換水50mlに10分間浸漬して上澄み液30mlを抽出水とした。この抽出水のpHを測定して、表1に示す。
作製した供試材について、表面の親水性、耐食性、および銅に対する蟻の巣状腐食の抑制効果を評価した。
親水性の指標として、室温での水接触角を測定した。供試材を160℃で10分間加熱して加熱脱脂相当の熱処理を実施後、イオン交換水に24時間浸漬して室温で乾燥した。この供試材を、評価面を上に水平に載置し、表面に約0.5μLの純水を滴下し、ゴニオメータにて接触角を測定した。接触角が50°以下を親水性合格とし、20°以下を優良として「◎」、20°を超え50°以下を良好として「○」で、表1に示す。接触角が50°を超えるものを不合格として「×」で表1に示す。
耐食性は、JIS Z2371に準じた塩水噴霧試験を480時間行った後、供試材の腐食の程度によって評価した。噴霧液として5質量%の塩化ナトリウム水溶液を用い、噴霧環境温度は35℃、噴霧量は面積80cm2で1時間毎に1.5ミリリットルとした。腐食面積率によって腐食の程度を定量化するレイティングナンバ法に準拠して数値化して、レイティングナンバが9.0以上を合格とし、9.5以上を優良として「◎」、9.0以上9.5未満を良好として「○」で、表1に示す。また、9.0未満を不合格として「×」で表1に示す。
銅に対する蟻の巣状腐食の抑制効果を評価するために、親水性皮膜からの抽出水のpH値の測定に使用した、供試材を浸漬したイオン交換水(抽出水)を使用した。前記抽出水に、φ9.52mm、肉厚0.23mm、長さ100mmのりん脱酸銅管(平滑管O材)を浸漬し、これらを収容した容器をさらに別の容積1リットルの密封容器内で、室温(20℃)で20日間保管した。その後、銅管の気液境界部断面を観察して、貫通孔があるものを不合格として「×」で、貫通孔に至らなかったものを合格として「○」で、表1に示す。
1 基板
2 疎水性皮膜
3 中間親水性皮膜
4 親水性皮膜
Claims (4)
- アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる基板、および表面に形成された、エチレンオキサイド基を構造単位とする化合物を含有する親水性皮膜を備えるアルミニウムフィン材であって、
前記親水性皮膜は、当該親水性皮膜からの抽出水がpH5以上となるように、加水分解時にアルカリ性を示す、水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩から選択されるアルカリ金属またはアルカリ土類金属の化合物をさらに含有することを特徴とするアルミニウムフィン材。 - 前記親水性皮膜は、熱分解抑制剤をさらに含有することを特徴とする請求項1に記載のアルミニウムフィン材。
- 前記基板の表面に、疎水性皮膜をさらに備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のアルミニウムフィン材。
- 成分が前記親水性皮膜と異なる中間親水性皮膜をさらに備え、前記中間親水性皮膜上に前記親水性皮膜が形成されることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のアルミニウムフィン材。
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