JP6300155B2 - 発光性ナノカーボン製造方法および製造装置 - Google Patents

発光性ナノカーボン製造方法および製造装置 Download PDF

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本発明は、エレクトロスプレーによるマイクロ反応場を利用した発光性ナノカーボン製造方法および製造装置に関する。
発光性ナノカーボン(カーボンドット)は、最近「すす」の中から発見された新規炭素ナノ材料である。発光性ナノカーボンは、グラフェンや他のナノカーボン材料と異なり強い発光性を示す。また、有機分子を炭素源として使用し、半導体量子ドットのように原料に硫化カドミウム(CdS)やセレン化カドミウム(CdSe)など毒性の高いカドミウム化合物やユーロピウムなどの希少金属を使用することはない。このため、毒性の懸念がある半導体量子ドットの代替となりうる新しい発光材料として注目されている。近年さまざまな発光性ナノカーボンの合成法が報告されている。従来の合成法としては、例えば、気相中で合成したすすを化学処理する方法や、液相中の反応を用いて発光性ナノカーボンを合成するバッチ式の方法などがある。
本発明の発明者らは、エレクトロスプレー(静電噴霧)によって合成した極微小液滴間の静電的相互作用を利用するマイクロ反応場形成装置(特許文献1)を用いた、発光性ナノカーボンの合成法について報告している(非特許文献1)。
特許文献1に記載の上記マイクロ反応場形成装置と類似の装置を利用した無機酸化物微粒子粉体の製造方法が報告されている(特許文献2、非特許文献2)。
国際公開第WO2012/173262号 国際公開第WO97/49484号
比江嶋他、化学工学会第78年会、O319(2013)講演要旨集 Borra et al, J. Aerosol. Sci., 30, 945 (1999)
しかし、従来の気相中および液相中の反応での生成物は雑多な副生成物を含んでおり、発光性ナノカーボンを得るためには、電気泳動や遠心分離や透析などの分離操作が必要であった。さらに、発光性ナノカーボンの合成機構や発光機構については未知の部分が多いため、反応条件によって、発光特性の異なる発光性ナノカーボンを選択的に合成することはこれまでに実現されていない。
本発明は、発光特性が異なる発光性ナノカーボンを選択的に合成できる発光性ナノカーボン製造方法および製造装置を提供することを目的としている。
本発明の発光性ナノカーボン製造方法は、正に帯電した第1溶液の正帯電液滴と、負に帯電した第2溶液の負帯電液滴とが静電的相互作用によって衝突するように噴霧して、前記正帯電液滴と前記負帯電液滴とを融合するマイクロミキシングステップと、前記マイクロミキシングステップによって生成された液滴を加熱して、前記第1溶液と前記第2溶液との反応生成物から発光性ナノカーボンを合成する加熱ステップと、前記発光性ナノカーボンを回収する回収ステップとを備えており、前記マイクロミキシングステップにおいて、噴霧される前記第1溶液および前記第2溶液の送液流量を5(μL/分)以上として、発光波長450nmの青色の成分の発光強度が、発光波長530nmの黄色の成分よりも大きい青色の発光性ナノカーボンを合成し、噴霧される前記第1溶液および前記第2溶液の送液流量を5(μL/分)未満として、発光波長450nmの青色の成分の発光強度が、発光波長530nmの黄色の成分よりも小さい黄色の発光性ナノカーボンを合成するものである。
本発明は、正帯電液滴と負帯電液滴とが融合した液滴が反応場となり、この反応場として機能する液滴を対象として制御することによって、発光特性の異なる発光性ナノカーボンを選択的に合成することが可能である。
本発明の実施形態である発光性ナノカーボン製造装置の概略構成を示す模式図 発光性ナノカーボンの発光スペクトルを示すグラフ(a)実施例1の測定結果、(b)実施例2の測定結果、(c)実施例3の測定結果 発光性ナノカーボンの発光強度と印加される印加電圧の関係を示すグラフ 発光性ナノカーボンの発光スペクトルを示すグラフ(a)実施例10の測定結果、(b)実施例11の測定結果 発光性ナノカーボンの発光スペクトルを示すグラフ(a)実施例12の測定結果、(b)実施例13の測定結果、(c)実施例14の測定結果 発光性ナノカーボンの発光スペクトルを示すグラフ(a)実施例15の測定結果、(b)実施例16の測定結果
〔発光性ナノカーボン製造装置〕
本発明の実施形態について、図を参照して以下に説明する。
図1は、本発明の実施形態である発光性ナノカーボン製造装置の概略構成を模式的に示した図である。同図に示すように、発光性ナノカーボン製造装置1は、第1噴霧手段11、第2噴霧手段12、反応管13、加熱手段14、液体トラップ(回収手段)15、送液流量調整手段(液滴制御手段)16、および電圧印加手段(液滴制御手段)17を備えている。
第1噴霧手段11は、正に帯電した第1溶液114の正帯電液滴115を噴霧するものであり、第1噴射ノズル111、第1容器112、および第1シリンジ113を備えている。第1噴射ノズル111は、電圧印加手段17に接続され、正電圧を印加されている。第1溶液114は、第1シリンジ113により第1噴射ノズル111に送られ、第1噴射ノズル111において電圧印加手段17により正電圧が印加されて、第1噴射ノズル111から正帯電液滴115として噴霧される。第1シリンジ113による第1溶液114の送液流量は、送液流量調整手段16により調整可能に構成されている。
第1噴射ノズル111に印加する正電圧や第1溶液114の送液流量を調整することにより、正帯電液滴115を制御することができる。印加する正電圧を大きくすることにより、正帯電液滴115の正電荷密度が大きくなり、液滴内の静電的反発によって正帯電液滴115のサイズが小さくなる。また、送液流量を大きくすれば、正電荷密度が小さくなり、静電的反発が小さくなるため、噴霧される正帯電液滴115のサイズが大きくなる。正帯電液滴115の大きさは、液滴20の大きさと関係するから、送液流量調整手段16と電圧印加手段17とは液滴制御手段として機能する。第1噴射ノズル111に印加される正電圧は、例えば、2kV〜20kVの範囲内で調整される。また、送液流量調整手段16による送液流量は、例えば、1分あたり0.001〜5mLの範囲内で調整される。
第2噴霧手段12は、負に帯電した第2溶液124の負帯電液滴125を噴霧するものであり、第2噴射ノズル121、第2容器122、および第2シリンジ123を備えている。第2噴霧手段12は、電圧印加手段17により第2噴射ノズル121に印加される電圧が正電圧ではなく負電圧である点を除いて、上述した第1噴霧手段11と同様に構成されている。
第1噴射ノズル111と第2噴射ノズル121とは、噴霧方向が対向するように配置されている。このため、噴霧された正帯電液滴115と負帯電液滴125とが、静電力により静電気的に引き合って、衝突、融合して、マイクロメーターサイズ(体積が1フェムトリットル程度)の液滴20が形成される。
図1の発光性ナノカーボン製造装置1は、第1噴霧手段11および第2噴霧手段12を各1つずつ備えているが、第1噴霧手段11および第2噴霧手段12をそれぞれ複数備えた構成としても良い。これらを複数備えた構成とすれば、複数箇所から正帯電液滴115および負帯電液滴125を噴射することができるから、より多くの液滴20を形成して発光性ナノカーボン22の収量を増やすことができる。
反応管13は、その一端が開放されており、その他端が液体トラップ15を介して、アスピレータに接続されている。開放されている一端は、アスピレータの吸引によりその内部に液滴20を取り込み可能な程度に、液滴20が形成される領域の近傍に配置されている。したがって、アスピレータで他端から吸引することにより、正帯電液滴115と負帯電液滴125とを融合させた液滴20を反応管13の内部に取り込むことができる。反応管13として、例えば、石英管等を用いることができる。
加熱手段14は、反応管13を加熱するためのものである。反応管13を加熱することにより、反応管13内の液滴20の溶媒を蒸発させ、第1溶液114と第2溶液124との反応生成物21を加熱し、脱水および炭化反応により発光性ナノカーボン22を合成することができる。加熱手段14としては、例えば、熱電ヒーター、マイクロ波加熱装置などが挙げられる。加熱手段14を用いた加熱方法は、反応管13内を均一に加熱するものに限られず、反応管13内に温度勾配が生じるように加熱し温度勾配を用いて反応を制御するものとしてもよい。
液体トラップ15は、発光性ナノカーボン22を回収するためのものであり、冷却用液体(液体)151が入っている本体152、導入管153、および吸引管154を備えている。導入管153は、一端が反応管13に接続されており、他端が本体152内の冷却用液体151に浸かっている。吸引管154は、一端が本体152上方の空間に接続されており、他端が図示しないアスピレータに接続されている。このため、アスピレータにより吸引管154を吸引すると、反応管13内で合成された発光性ナノカーボン22は、導入管153を経て、本体152内の冷却用液体151中に回収される。この回収によって、合成された発光性ナノカーボン22が急激に冷却されるから、炭化が過剰に進行して副生成物(不純物)となることを防止できる。
導入管153の本体152の外にある部分は、高温で焼成された発光性ナノカーボン22から保護するため冷却手段155により覆われている。高温で焼成された発光性ナノカーボン22の一部は、冷却用液体151に到達する前に、導入管153内で急激に冷却され、回収される。導入管153内における冷却は、冷却用液体151中の冷却とは異なり、導入管153内の位置によって冷却条件の異なる冷却勾配(温度勾配)のあるものとなる。温度勾配を付けて冷却することにより、導入管153内の位置に応じて発光特性の異なる発光性ナノカーボンを選択的に回収することができる。
送液流量調整手段16は、第1噴霧手段11および第2噴霧手段12への第1溶液114および第2溶液124の送液流量を変化させることにより液滴20のサイズを制御する。送液流量を変化させることにより発光特性の異なる発光性ナノカーボン22が合成される。送液流量が発光性ナノカーボン22の発光特性に影響する理由は、発光性ナノカーボン22の反応場としての液滴20の大きさ(サイズ)が変化することによると推測できる。すなわち、第1溶液114と第2溶液124が融合して液滴20となり、発光性ナノカーボン22が合成されるまでの一連の反応に液滴20の大きさが影響するためと考える。送液流量調整手段16としては、例えば、第1シリンジ113、第2シリンジ123を押し込む速さを変化させる構成が挙げられる。
第1溶液114および第2溶液124としては、酸溶液と塩基溶液の組合せを用いることができる。酸溶液としては、例えば、クエン酸や安息香酸等の有機酸溶液、塩酸等の無機酸溶液が挙げられる。塩基溶液としては、例えば、エチレンジアミン等のアミン溶液、水酸化ナトリウム等の無機アルカリ溶液が挙げられる。
〔発光性ナノカーボン製造方法〕
本発明は、発光性ナノカーボン製造方法として実施することもできる。発光性ナノカーボン製造方法は、例えば、上述した図1の発光性ナノカーボン製造装置を用いて実施できる。
本実施形態の発光性ナノカーボン製造方法は、正に帯電した第1溶液114の正帯電液滴115と、負に帯電した第2溶液124の負帯電液滴125とが衝突するように噴霧することにより、正帯電液滴115と負帯電液滴125とを融合させて液滴20とするマイクロミキシングステップと、液滴20を加熱することにより、第1溶液114と第2溶液124との反応生成物21から発光性ナノカーボン22を合成する加熱ステップと、発光性ナノカーボン22を液体トラップ15により回収する回収ステップとを備えており、反応生成物の反応場として機能する液滴20を制御することにより、発光性ナノカーボン22の発光特性を制御するものである。
ここで、液滴20を制御するとは、液滴20の形状に影響する形状パラメータを変化させること、および液滴20の形状には影響しないものの、液滴20内で生じる化学反応に影響する化学反応パラメータを変化させることのいずれをも含む。ここで、液滴20自体の形状に影響する形状パラメータとは、マイクロミキシングステップにおいて生成される液滴20の形状を変化させるものをいう。また、化学反応パラメータとは、マイクロミキシングステップにおいて生成される液滴20の形状を変化させるものではないが、液滴20内で生じる化学反応に影響を及ぼすものをいう。
マイクロミキシングステップにおいて生成される液滴20の形状を制御対象とする液滴形状パラメータとしては、例えば、反応場となる液滴20の大きさ等の反応場としての環境に影響する、第1噴射ノズル111および第2噴射ノズル121に印加する印加電圧の大きさや極性、第1溶液114および第2溶液124の送液流量、溶媒などが挙げられる。また、第1噴射ノズルと第2噴射ノズルの相対的な位置関係や口径(内径および外径)を変更すること等によっても、ノズル間に生じる電場を調整し、液滴20のサイズを制御することが可能である。
化学反応パラメータとしては、第1溶液114および第2溶液124の反応基質(原料物質)の種類、基質濃度、基質濃度比、反応温度、反応時間などが挙げられる。
本発明の発光性ナノカーボン製造方法において、マイクロサイズの反応場である液滴を制御することにより、発光性ナノカーボンの発光特性がどのように変化するのかを調べた結果を以下に示す。
〔実験方法〕
実験装置として、図1に示した発光性ナノカーボン製造装置1を用いた。原料としての第1溶液114および第2溶液124として、クエン酸の1−プロパノール溶液およびエチレンジアミンの1−プロパノール溶液(以下、クエン酸溶液およびエチレンジアミン溶液という。)を使用した。第1噴霧手段11と第2噴霧手段12とを対向させて設置し、第1噴射ノズル111および第2噴射ノズル121には、電圧印加手段17により所定の電圧を印加した。正帯電液滴115と負帯電液滴125とは、互いにクーロン引力により引き合い融合して液滴20となる。
液滴20中には、クエン酸とエチレンジアミンとの酸塩基反応による反応生成物21としての塩が析出する。この塩を含んだ液滴20をアスピレータによって反応管13の内部に吸引する。反応管13の内部は加熱手段14により所定の温度まで加熱されているため、反応管13内に吸引された液滴20は、急速に加熱されて、溶媒である1−プロパノールが蒸発する。そして、残留した塩の微粒子が脱水および炭化して発光性ナノカーボン22(カーボンドット)となる。このようにして合成した発光性ナノカーボン22を、液体トラップ15により回収した。
液体トラップ15の導入管153としてシリコンチューブを用い、冷却手段155として水を含ませた紙製ウエス(キムワイプ(登録商標))を用いてシリコンチューブを覆った。回収した発光性ナノカーボン22は、水中に分散させて、分光蛍光光度計(島津製作所 RF-5300PC)を用いて発光スペクトルを測定した。
上述した実験方法を用いて、種々のパラメータを変化させて発光性ナノカーボン22を合成し、合成した発光性ナノカーボン22の発光スペクトルを測定することにより、反応場としての液滴20の制御と発光性ナノカーボン22の発光スペクトルとの関係を調べた。
〔送液流量による発光スペクトルの変化〕
上記の実験方法を用いて第1溶液および第2溶液の送液流量を変化させて発光性ナノカーボンを合成し、発光スペクトルを測定した。
(実施例1)
正電圧を印加する第1溶液としてクエン酸溶液(濃度:1M=1(mol/L))、負電圧を印加する第2溶液としてエチレンジアミン溶液(濃度:1M=1(mol/L))を用いた。
電圧印加手段により印加される印加電圧Vを±4kV、送液流量を10(μL/分)、反応管内の温度を550℃として発光性ナノカーボンを合成した。
(実施例2)
送液流量を5(μL/分)とした以外は、実施例1と同じ条件で発光性ナノカーボンを合成した。
(実施例3)
送液流量を2(μL/分)とした以外は、実施例1と同じ条件で発光性ナノカーボンを合成した。
図2(a)、図2(b)、図2(c)はこの順に、実施例1、実施例2、実施例3の発光性ナノカーボンについて発光スペクトルを測定した結果を示している。縦軸が発光強度を横軸が発光した光の波長をそれぞれ示している。複数の曲線は異なる励起光に対する発光スペクトルであり、励起光の波長を各曲線の左端付近に示している。なお、縦軸および横軸の意義、ならびに励起光については、図4〜図6のグラフにおいても同様である。
実施例1〜3と後述する実施例10の測定結果により、少なくとも20(μL/分)以下の範囲内では、送液流量を少なくすることにより、発光性ナノカーボンの短波長側の発光が抑制されることが示された。すなわち、送液流量により液滴を制御すれば、発光スペクトルの異なる発光性ナノカーボンを選択的に合成できることが分かった。
図2(a)、図2(b)に示す、実施例1および実施例2の発光性ナノカーボンは、450nm付近の青色の成分が相対的に大きく、530nm付近の黄色の成分が相対的に小さい青色の発光性ナノカーボンである。これに対して、図2(c)に示す実施例3の発光性ナノカーボンは、450nm付近の青色の成分が相対的に小さく、530nm付近の黄色の成分が相対的に大きい黄色の発光性ナノカーボンである。このように、送液流量を制御することにより、青色の発光性ナノカーボンと黄色の発光性ナノカーボンを作り分けることができた。実施例3において黄色の発光性ナノカーボンが得られたことは、送液流量を少なくしたことにより反応場としての液滴が微小化し、反応管内において反応生成物から発光性ナノカーボンとなる脱水および炭化反応が効率的に進行したことによるものと推測する。
〔印加電圧による発光強度変化〕
上記の実験方法を用いて、第1溶液および第2溶液に印加する印加電圧を変化させて発光性ナノカーボンを合成し、発光スペクトルを測定した。
第1溶液としてエチレンジアミン溶液(濃度:1M)、第2溶液としてクエン酸溶液(濃度:1M)を用いた。送液流量を20(μL/分)、反応管内の温度を600℃とし、電圧印加手段により印加される印加電圧Vを±2.5kVから±7.0kVまで変化させて、発光性ナノカーボンを合成した。
(実施例4)
印加電圧Vを±2.5kVとして、発光性ナノカーボンを合成した。
(実施例5)
印加電圧Vを±3.0kVとして、発光性ナノカーボンを合成した。
(実施例6)
印加電圧Vを±4.0kVとして、発光性ナノカーボンを合成した。
(実施例7)
印加電圧Vを±5.0kVとして、発光性ナノカーボンを合成した。
(実施例8)
印加電圧Vを±6.0kVとして、発光性ナノカーボンを合成した。
(実施例9)
印加電圧Vを±7.0kVとして、発光性ナノカーボンを合成した。
図3は、365nmの紫外光で励起した発光スペクトルの積分強度と印加電圧の関係を示しており、縦軸が積分強度により示した発光強度I365を示し、横軸が印加された印加電圧Vを示している。この測定結果により、適切な印加電圧を選択することで発光性ナノカーボンの収率を最大化できることが分かった。最適な印加電圧の値は電極配置(噴射ノズルの相対的な位置関係や口径)に依存するが、今回の実験配置では、印加電圧Vは7.0kV以下とすることが好ましく、6.0kV以下とすることがより好ましく、5.0kV以下とすることがさらに好ましい。また、印加電圧Vは2.5kV以上とすることが好ましい。噴霧状態の観察より、低電圧条件では液滴の分裂が不十分で粗大液滴が生成すること、高電圧条件では液滴同士の静電的反発が大きくミキシングが不十分になることが収率低下の原因であると推定される。
〔印加電圧の極性による発光スペクトルの変化〕
上記の実験方法を用いて、第1噴射ノズルおよび第2噴射ノズルに印加する印加電圧の極性を変化させて発光性ナノカーボンを合成し、発光スペクトルを測定した。
(実施例10)
第1噴射ノズルにおいて正電圧を印加する第1溶液として、クエン酸溶液(濃度:1M)、第2噴射ノズルにおいて負電圧を印加する第2溶液として、エチレンジアミン溶液(濃度:1M)を用いた。電圧印加手段により印加される印加電圧Vを±4kV、送液流量を20(μL/分)、反応管内の温度を550℃として発光性ナノカーボンを合成した。
(実施例11)
第1噴射ノズルおよび第2噴射ノズルにおいて印加する電圧の極性を変えて、クエン酸溶液に負電圧を印加し、エチレンジアミン溶液に正電圧を印加した以外は、実施例10と同じ条件で、発光性ナノカーボンを合成した。
図4(a)、図4(b)はこの順に、実施例10、実施例11の発光性ナノカーボンについて発光スペクトルを測定した結果を示している。この測定結果により、印加する極性を変化させることによって、発光スペクトルが変化することが分かった。これは、印加する電圧の極性変化により生じた電気化学反応の影響を受けて、クエン酸の還元反応、エチレンジアミンの酸化反応が生じたためであると推測する。
〔反応温度による発光スペクトルの変化〕
上記の実験方法を用いて、反応管内の温度を変化させて発光性ナノカーボンを合成し、合成した発光性ナノカーボンの発光スペクトルを測定した。
(実施例12)
正電圧を印加する第1溶液として、クエン酸溶液(濃度:1M)、負電圧を印加する第2溶液として、エチレンジアミン溶液(濃度:1M)を用いた。電圧印加手段により印加される印加電圧Vを±4kV、送液流量を20(μL/分)、反応管内の温度を400℃として発光性ナノカーボンを合成した。
(実施例13)
反応管内の温度を500℃とした以外は、実施例12と同じ条件で発光性ナノカーボンを合成した。
(実施例14)
反応管内の温度を600℃とした以外は、実施例12と同じ条件で発光性ナノカーボンを合成した。
図5(a)、図5(b)、図5(c)はこの順に、実施例12、実施例13、実施例14の発光性ナノカーボンについて発光スペクトルを測定した結果を示している。この測定結果により、反応管内の温度を変化させることによって、発光特性の異なる発光性ナノカーボンが得られることが分かった。
〔基質濃度比による発光スペクトルの変化〕
上記の実験方法を用いて、第1溶液と第2溶液の基質濃度比を変化させて発光性ナノカーボンを合成し、発光スペクトルを測定した。
(実施例15)
第1溶液としてクエン酸溶液(濃度:1M)、第2溶液としてエチレンジアミン溶液(濃度:1M)を用いた。電圧印加手段により印加される電圧Vを±4kV、送液流量を20(μL/分)、反応管内の温度を550℃として発光性ナノカーボンを合成した。
(実施例16)
第2溶液として、濃度の高いエチレンジアミン溶液(濃度:2M)を用いた以外は、実施例15と同じ条件で発光性ナノカーボンを合成した。
図6(a)、図6(b)はこの順に、実施例15、実施例16の発光性ナノカーボンについて発光スペクトルを測定した結果を示している。この測定結果により、反応基質であるクエン酸とエチレンジアミンの濃度比を変化させることによって、発光特性の異なる発光性ナノカーボンが得られることが分かった。
従来、発光性ナノカーボン合成法は、気相反応やバッチ式の液相反応が中心であった。これら従来の反応では、発光性ナノカーボンの反応場の大きさは通常一定であり変化させることができない。これに対して、本発明の発光性ナノカーボン製造方法および製造装置では、エレクトロスプレーによるマイクロサイズの液滴を作り、これを反応場とする。このため、種々なパラメータを用いて反応場を変化させることができる。
実施例の結果から、マイクロミキシングステップにおいて生成される液滴自体の形状に影響する液滴形状パラメータを制御対象とした実施例1〜3のほうが、液滴自体の形状に影響しない化学反応パラメータを制御した実施例10〜16よりも、発光性ナノカーボンの発光特性の変化が大きく、液滴形状パラメータの中でも、特に送液流量が発光性ナノカーボンの発光特性に大きく影響することが分かった。また、実施例4〜9の結果から印加電圧が発光性ナノカーボン合成の収率に大きく影響することが分かった。
このため、反応生成物の反応場として機能する液滴を制御する本発明の発光性ナノカーボン製造方法および製造装置によれば、発光色が異なる発光性ナノカーボンを選択的に合成することが可能となる。また、従来よりも多くの要素(パラメータ)を用いて、反応を制御することができるから、発光性ナノカーボンの発光特性を細かく調整すること(カラーチューニング)が可能となる。
なお、図5および図6において、図2および図4よりも、全体的に発光強度が低くなっていることは、それぞれの発光スペクトルの測定条件として、分光器の感度設定と測定試料の濃度(加えた水の量)が異なることの影響である。ただし、同じ図中に示されている結果は、同じ測定条件で測定されたものである。
従来の方法では、雑多な混合物として得られる合成物から目的合成物を取り出すために、種々の分離操作が必要であった。例えば、気相反応を用いた反応の場合、合成物から副生成物を取り除く操作、および目的合成物に含まれる発光特性の異なる発光性ナノカーボンを分離する操作が必要であった。対して、本発明の発光性ナノカーボン製造方法および製造装置によれば、回収手段として液体トラップを用いることにより、副生成物の合成を抑制し、かつ、所望の発光特性を有する発光性ナノカーボンを選択的に合成することができる。
上述したとおり、液滴を制御することにより、発光性ナノカーボンの発光特性を制御することができた。発光特性の制御条件を検討した段階において、発光特性の異なる発光性ナノカーボンが同時に生成された。この検討段階において得られた発光性ナノカーボンのうち、導入管内において捕捉された発光性ナノカーボンを紫外線照射下で観察すると、導入管内の位置により発光特性が異なる虹のような発光色の分布が観察された。この結果から、導入管内における温度分布(温度勾配)を制御して、より緩やかに温度を低下させることにより、発光特性の異なる粒子を分離回収することができると考えられる。
本発明は、照明やディスプレイ、光通信デバイス、低毒性であることが要求される生体用の蛍光プローブ等に用いられる発光性ナノカーボンの製造方法、製造装置として利用することができる。
1 発光性ナノカーボン製造装置
11 第1噴霧手段
111 第1噴射ノズル
112 第1容器
113 第1シリンジ
114 第1溶液
115 正帯電液滴
12 第2噴霧手段
121 第2噴射ノズル
122 第2容器
123 第2シリンジ
124 第2溶液
125 負帯電液滴
13 反応管
14 加熱手段
15 液体トラップ(回収手段)
151 冷却用液体(液体)
152 本体
153 導入管
154 吸引管
155 冷却手段
16 送液流量調整手段(液滴制御手段)
17 電圧印加手段(液滴制御手段)
20 液滴
21 反応生成物
22 発光性ナノカーボン

Claims (5)

  1. 正に帯電した第1溶液の正帯電液滴と、負に帯電した第2溶液の負帯電液滴とが静電力によって衝突するように噴霧して、前記正帯電液滴と前記負帯電液滴とを融合させるマイクロミキシングステップと、
    前記マイクロミキシングステップによって生成された液滴を加熱して、前記第1溶液と前記第2溶液との反応生成物から発光性ナノカーボンを合成する加熱ステップと、
    前記発光性ナノカーボンを回収する回収ステップとを備えており、
    前記マイクロミキシングステップにおいて、
    噴霧される前記第1溶液および前記第2溶液の送液流量を5(μL/分)以上として、発光波長450nmの青色の成分の発光強度が、発光波長530nmの黄色の成分よりも大きい青色の発光性ナノカーボンを合成し、
    噴霧される前記第1溶液および前記第2溶液の送液流量を5(μL/分)未満として、発光波長450nmの青色の成分の発光強度が、発光波長530nmの黄色の成分よりも小さい黄色の発光性ナノカーボンを合成する発光性ナノカーボン製造方法。
  2. 前記送液流量を20(μL/分)以下の範囲内で調整する請求項1に記載の発光性ナノカーボン製造方法。
  3. 前記回収ステップが、前記発光性ナノカーボンを液体中に回収するものである請求項1または2に記載の発光性ナノカーボン製造方法。
  4. 前記第1溶液および前記第2溶液が、酸溶液および塩基溶液の組合せよりなる請求項1〜3のいずれか一項に記載の発光性ナノカーボン製造方法。
  5. 前記酸溶液がクエン酸溶液であり、前記塩基溶液がエチレンジアミン溶液である請求項4に記載の発光性ナノカーボン製造方法。
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