以下、添付図面を参照しながら各実施例について詳細に説明する。
図1は、一例による可動範囲測定装置1の概略構成を模式的に示す図である。図1には、説明用に、ベッド上に仰向けで横たわった状態の被験者Sが示されている。以下では、説明の都合上、水平面をXY平面とし、被験者Sの足が伸びる方向をY方向、左右方向をX方向とし、上下方向をZ方向とする。
可動範囲測定装置1は、第1距離画像センサ21と、第2距離画像センサ22と、処理装置100とを含む。
第1距離画像センサ21は、被験者Sにとって右上方に設けられる。第1距離画像センサ21は、XY平面に対して第1方向R1から被験者Sの距離情報を含む第1距離画像を取得する。第1距離画像センサ21は、3次元画像センサであり、センサを用いて空間全体のセンシングを行って距離を計測し、デジタル画像のように画素単位でセンサからの距離の情報を持った距離画像を取得する。距離情報の取得方式は任意である。例えば、距離情報の取得方式は、特定のパターンを対象に投影してそれをイメージセンサで読み取り、投影パターンの幾何学的な歪みから三角測量の方式により距離を取得するアクティブステレオ方式であってもよい。また、レーザー光を照射してイメージセンサで反射光を読み取り、その位相のずれから距離を計測するTOF方式であってもよい。
第2距離画像センサ22は、被験者Sにとって左上方に設けられる。第2距離画像センサ22は、XY平面に対して第2方向R2から被験者Sの距離情報を含む第2距離画像を取得する。第2距離画像センサ22のセンサ構成自体は第1距離画像センサ21と同様であってよい。尚、以下では、特に第1距離画像と第2距離画像とを区別する必要がないときは、単に「距離画像」とも称する。
図2は、処理装置100のハードウェア構成の一例を示す図である。
図2に示す例では、処理装置100は、制御部101、主記憶部102、補助記憶部103、ドライブ装置104、ネットワークI/F部106、入力部107を含む。
制御部101は、主記憶部102や補助記憶部103に記憶されたプログラムを実行する演算装置であり、入力部107や記憶装置からデータを受け取り、演算、加工した上で、記憶装置などに出力する。
主記憶部102は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などであり、制御部101が実行する基本ソフトウェアであるOSやアプリケーションソフトウェアなどのプログラムやデータを記憶又は一時保存する記憶装置である。
補助記憶部103は、HDD(Hard Disk Drive)などであり、アプリケーションソフトウェアなどに関連するデータを記憶する記憶装置である。
ドライブ装置104は、記録媒体105、例えばフレキシブルディスクからプログラムを読み出し、記憶装置にインストールする。
記録媒体105は、所定のプログラムを格納する。この記録媒体105に格納されたプログラムは、ドライブ装置104を介して処理装置100にインストールされる。インストールされた所定のプログラムは、処理装置100により実行可能となる。
ネットワークI/F部106は、有線及び/又は無線回線などのデータ伝送路により構築されたネットワークを介して接続された通信機能を有する周辺機器と処理装置100とのインターフェースである。
入力部107は、カーソルキー、数字入力及び各種機能キー等を備えたキーボード、マウスやスライスパット等を有する。入力部107は、音声入力やジェスチャー等の他の入力方法に対応してもよい。
尚、図2に示す例において、以下で説明する各種処理等は、プログラムを処理装置100に実行させることで実現することができる。また、プログラムを記録媒体105に記録し、このプログラムが記録された記録媒体105を処理装置100に読み取らせて、以下で説明する各種処理等を実現させることも可能である。なお、記録媒体105は、様々なタイプの記録媒体を用いることができる。例えば、CD−ROM、フレキシブルディスク、光磁気ディスク等の様に情報を光学的,電気的或いは磁気的に記録する記録媒体、ROM、フラッシュメモリ等の様に情報を電気的に記録する半導体メモリ等であってよい。なお、記録媒体105には、搬送波は含まれない。
図3は、可動範囲測定装置1の機能ブロック図である。
図3に示す例では、可動範囲測定装置1は、第1身体部位位置計測装置210と、第2身体部位位置計測装置220と、処理装置100とを含む。
第1身体部位位置計測装置210は、第1距離画像センサ21と、距離画像保持部212と、関節位置推定部214と、学習データ保持部216とを含む。尚、距離画像保持部212、関節位置推定部214及び学習データ保持部216は、ハードウェアにより実現されてもよいし、ソフトウェアにより実現されてもよいし、双方で実現されてもよい。
距離画像保持部212は、第1距離画像センサ21により取得された第1距離画像を保存する。関節位置推定部214は、学習データ保持部216内の学習データと、第1距離画像とに基づいて、被験者Sの関節位置(座標)を表す関節位置情報を生成する。例えば、関節位置推定部214は、機械学習を用いた3次元身体部位位置推定手法により関節位置を推定し、関節位置情報を生成する。関節位置推定部214は、関節位置情報の信頼度が低下した場合に、信頼度が低下した関節位置情報にエラー情報を紐付けする(図8参照)。エラー情報は、関節位置情報の信頼度を表す情報であり、例えば関節位置情報が前回値である等を表す。
第2身体部位位置計測装置220は、第2距離画像センサ22と、距離画像保持部222と、関節位置推定部224と、学習データ保持部226とを含む。距離画像保持部222、関節位置推定部224及び学習データ保持部226は、ハードウェアにより実現されてもよいし、ソフトウェアにより実現されてもよいし、双方で実現されてもよい。
距離画像保持部222は、第2距離画像センサ22により取得された第2距離画像を保存する。関節位置推定部224は、学習データ保持部226内の学習データと、第2距離画像とに基づいて、被験者Sの関節位置(座標)を表す関節位置情報を生成する。例えば、関節位置推定部224は、機械学習を用いた3次元身体部位位置推定手法により関節位置を推定し、関節位置情報を生成する。関節位置推定部224は、関節位置情報の信頼度が低下した場合に、信頼度が低下した関節位置情報にエラー情報を紐付けする(図8参照)。
尚、距離画像保持部212、関節位置推定部214、学習データ保持部216、距離画像保持部222、関節位置推定部224及び学習データ保持部226の一部又は全部は処理装置100により実現されてもよい。
処理装置100は、身体部位位置計測装置切り替え部130と、関節角度算出部132と、関節角度保持部134と、可動域算出部136と、出力部138と、測定項目指定部140と、関節角度算出式保持部142と、可動域算出条件保持部144と、切り替え判定部146を含む。
身体部位位置計測装置切り替え部130は、切り替え判定部146からの切り替え指示に応じて、動作させる身体部位位置計測装置の切り替え処理を行う。即ち、身体部位位置計測装置切り替え部130は、切り替え判定部146からの切り替え指示に応じて、第1身体部位位置計測装置210及び第2身体部位位置計測装置220のうちの一方を動作させる。
関節角度算出部132は、第1身体部位位置計測装置210及び/又は第2身体部位位置計測装置220から得られる関節位置情報に基づいて、関節角度を算出する。関節角度保持部134は、関節角度算出部132により算出された関節角度を保存する。可動域算出部136は、関節角度保持部134に保存された関節角度に基づいて関節の可動域(可動範囲)を算出する。例えば、可動域算出部136は、ある測定項目に関して算出した関節角度の最大値を、その測定項目に係る関節の可動域(可動範囲)とする。
出力部138は、可動域算出部136により算出された関節の可動域を表す情報を表示部(図示せず)に出力する。尚、表示部は、CRT(Cathode-Ray Tube)ディスプレイや液晶ディスプレイ等の表示装置により実現されてよい。
測定項目指定部140は、入力部107からの測定項目に関する入力に従って、測定項目を指定する。ここでは、測定項目は、左右のそれぞれの股関節に関する外転/内転及び外旋/内旋を含む。
関節角度算出式保持部142は、関節角度算出部132で関節角度を算出する際に用いる関節角度算出式を保存する。関節角度算出式は、測定項目毎に予め用意されてよい。可動域算出条件保持部144は、関節の可動域に関する条件を保存する。可動域算出部136は、可動域算出条件保持部144で保存された条件を満たす範囲内の関節の可動域を算出する。関節の可動域に関する条件は、例えばXY平面内で動く等の条件であってよい。
切り替え判定部146は、第1身体部位位置計測装置210及び第2身体部位位置計測装置220のうちの一方の動作中に、距離画像に基づく関節位置情報の信頼度の低下を検出した場合に、切り替え指示を出力する。これについては後述する。
図4は、股関節に関する測定項目の説明図であり、(A)は、外転/内転の説明図であり、(B)は、外旋/内旋の説明図である。尚、図4においては、被験者Sは、仰向け状態の上面視で、下半身のみが模式的に図示されている。ここでは、右股関節の外転/内転及び外旋/内旋について説明するが、左股関節の外転/内転及び外旋/内旋についても同様である。
股関節に関する測定項目は、図4(A)に示すように、右足を伸ばした状態で左右に開く角度(外転/内転)と、図4(B)に示すように、右膝を直角に曲げて固定し、右膝より先の部分(可動部位の一例)を左右に動かした際の角度(外旋/内旋)とを含む。外転/内転に係る測定項目は、左足と右足のそれぞれ別であるとする。外旋/内旋に係る測定項目は、左足と右足のそれぞれ別であるとする。尚、以下では、可動域の角度の基準は、図4に示すように、Y方向に平行な方向(足の方向)とする。即ち、可動域の角度の原点は、図4に示すように、外旋/内旋や外転/内転の角度が0°の位置である。尚、図4に示すような測定項目は、日本整形外科学会および日本リハビリテーション医学会により示された「関節可動域表示ならびに測定法」内の測定項目として示されている。
ここで、外転/内転については、足を伸ばした状態で内側に動かす内転の際、内側に動かす足(可動部位の一例)を他方の足を上げて下を通すため、上面視(Z方向)で、内側に動かす足が他方の足と重なる。また、外旋/内旋については、膝を曲げて内側に動かす外旋の際、上面視で、内側に動かす足の膝より先の部分(可動部位の一例)が他方の足(下の足)と重なる。このような重なりが発生すると、関節位置推定部214,224での推定精度が悪化し、距離画像から精度の高い関節位置情報を得ることが困難となる(即ち距離画像に基づく関節位置情報の信頼度が低下する)。この結果、股関節の可動域の測定を正確に実現するのが困難となる。
尚、肩、肘等の立った姿勢で測定可能な項目については、被験者が身体部位位置計測装置(例えば被験者の正面に配置された身体部位位置計測装置)に対する向きを変えることで重なりを無くすことが一応は可能である。これに対して、股関節の測定は寝た姿勢で行う必要があり、被験者が自由に向きを変えられないため、上述の如く、股関節の可動域の測定を正確に実現するのが困難となる。
この点、本実施例では、上述の如く、第1身体部位位置計測装置210及び第2身体部位位置計測装置220のうちの一方の動作中に、距離画像に基づく関節位置情報の信頼度の低下を検出した場合に、切り替え判定部146により切り替え指示が出力される。切り替え判定部146からの切り替え指示が出力されると、第1身体部位位置計測装置210及び第2身体部位位置計測装置220の間の切り替えが実行される。この結果、例えば、身体部位位置計測装置切り替え部130は、右股関節の外転/内転および左股関節の外旋/内旋については、被験者から見て右上方の第1身体部位位置計測装置210を動作させることが可能となる。他方、身体部位位置計測装置切り替え部130は、左股関節の外転/内転および右股関節の外旋/内旋については、被験者から見て左上方の第2身体部位位置計測装置220を動作させることが可能となる。これにより、上述のような重なりが生じ難い態様で計測を行うことが可能となる。
尚、本実施例では、第1距離画像センサ21は、1つだけ設けられているが、異なる位置に複数個設けられてもよい。この場合、複数の異なる第1方向からの第1距離画像の取得が可能となる。同様に、第2距離画像センサ22は、1つだけ設けられているが、異なる位置に複数個設けられてもよい。この場合、複数の異なる第2方向からの第2距離画像の取得が可能となる。この場合、複数の第1距離画像センサ21間で切り替えが実行されてもよいし、複数の第2距離画像センサ22間で切り替えが実行されてもよい。
次に、切り替え判定部146の動作例について更に説明する。
図5は、切り替え判定部146の機能構成例を示す。
切り替え判定部146は、エラーカウント処理部1461と、誤推定カウント処理部1462と、可動範囲保持部1463と、重なり判定処理部1464とを含む。切り替え判定部146は、関節位置推定部214,224から関節位置、エラー情報及び距離画像を入力し、エラーカウント処理部1461、誤推定カウント処理部1462、重なり判定処理部1464によって切り替えが必要かどうかの判定を行う。切り替え判定部146は、切り替えが必要であると判定した場合は、切り替え指示(切替制御情報)を出力する。各部の機能については後述する。
図6は、切り替え判定部146の処理フローの一例を示す。図6に示すフローは、任意の所定周期毎に実行されてよい。例えば、第1身体部位位置計測装置210及び第2身体部位位置計測装置220がリアルタイム処理可能な装置である場合、通常1秒間に数十フレーム分関節位置情報及び距離画像が出力されるが、図6に示すフローは、1フレーム毎に実行されてよい。
ステップ600では、エラーカウント処理部1461は、第1身体部位位置計測装置210又は第2身体部位位置計測装置220から得られる関節位置情報に付加されるエラー情報に基づいて、エラーカウント処理を実行する。例えば、現在、第1身体部位位置計測装置210が動作中であるときは、エラーカウント処理部1461は、第1身体部位位置計測装置210から得られる関節位置情報に付加されるエラー情報に基づいて、エラーカウント処理を実行する。エラーカウント処理については後述する。
ステップ602では、切り替え判定部146は、上記ステップ600のエラーカウント処理結果に基づいて、第1身体部位位置計測装置210及び第2身体部位位置計測装置220の間の切り替えが必要であるか否かを判定する。本例では、切り替え判定部146は、上記ステップ600のエラーカウント処理結果が"切り替え有効"である場合は、切り替えが必要であると判定する。切り替えが必要であると判定した場合は、ステップ612に進み、それ以外の場合は、ステップ604に進む。
ステップ604では、誤推定カウント処理部1462は、誤推定カウント処理を実行する。誤推定カウント処理については後述する。
ステップ606では、切り替え判定部146は、上記ステップ604の誤推定カウント処理結果に基づいて、第1身体部位位置計測装置210及び第2身体部位位置計測装置220の間の切り替えが必要であるか否かを判定する。本例では、切り替え判定部146は、上記ステップ604の誤推定カウント処理結果が"切り替え有効"である場合は、切り替えが必要であると判定する。切り替えが必要であると判定した場合は、ステップ612に進み、それ以外の場合は、ステップ608に進む。
ステップ608では、重なり判定処理部1464は、重なり判定処理を実行する。重なり判定処理については後述する。
ステップ610では、切り替え判定部146は、上記ステップ608の重なり判定処理結果に基づいて、第1身体部位位置計測装置210及び第2身体部位位置計測装置220の間の切り替えが必要であるか否かを判定する。本例では、切り替え判定部146は、上記ステップ608の重なり判定処理結果が"切り替え有効"である場合は、切り替えが必要であると判定する。切り替えが必要であると判定した場合は、ステップ612に進み、それ以外の場合は、ステップ600に戻り、次の処理周期からステップ600の処理を開始する。
ステップ612では、切り替え判定部146は、第1身体部位位置計測装置210及び第2身体部位位置計測装置220の間の切り替え処理を行う。即ち、切り替え判定部146は、身体部位位置計測装置切り替え部130に切り替え指示を出力する。これを受けて、身体部位位置計測装置切り替え部130は、第1身体部位位置計測装置210及び第2身体部位位置計測装置220の間を切り替える。例えば、現在、第1身体部位位置計測装置210が動作中であるときは、身体部位位置計測装置切り替え部130は、第1身体部位位置計測装置210の動作を停止し、第2身体部位位置計測装置220を動作させる。本ステップ612の処理が終了すると、ステップ600に戻り、次の処理周期からステップ600の処理を開始する。
図6に示す処理によれば、エラーカウント処理、誤推定カウント処理及び重なり判定処理の3つの処理のいずれかで、第1身体部位位置計測装置210及び第2身体部位位置計測装置220の間の切り替えが有効と判定された場合に、切り替えが実行される。即ち、第1身体部位位置計測装置210及び第2身体部位位置計測装置220の間で切り替えが実行される。
尚、図6に示す処理では、エラーカウント処理、誤推定カウント処理及び重なり判定処理は、この順序で実行されているが、実行順序は任意である。また、エラーカウント処理、誤推定カウント処理及び重なり判定処理の3つの処理のうちの任意の1つまたは2つの組み合わせのみが実行されてもよい。
図7は、エラーカウント処理(図6のステップ600)の処理フローの一例を示す。図8は、関節位置情報に付加されるエラー情報の説明図である。
ステップ700では、エラーカウント処理部1461は、第1身体部位位置計測装置210及び第2身体部位位置計測装置220のうちの現在動作中の身体部位位置計測装置から関節位置情報を取得する。関節位置情報は、1フレーム毎に生成され、図8に示すように、関節毎の関節位置データ(座標)を含む。関節位置情報は、関節毎にエラー情報が紐付される。このように、本例では、関節位置推定部214,224からの出力として、各関節の座標情報は必ず出力され、同時にエラー情報が出力される場合がある。関節位置推定部214,224では、距離画像から関節位置の推定を行うが、体の一部が距離画像の領域外にはみ出している場合や別の物体により隠れている場合、その部分の関節位置を推定するための情報が得られないため、推定が不能になる場合が発生する。そのような場合、前フレームで推定した値を使う場合もあるが、エラーとして推定できないことを示すエラー情報を付加する場合がある。
ステップ702では、エラーカウント処理部1461は、各関節の関節位置情報を1つずつ読み出す。
ステップ704では、エラーカウント処理部1461は、上記ステップ702で読み出した関節位置情報にエラー情報が付加されているか否かを判定する。エラー情報が付加されている場合は、ステップ706に進み、それ以外の場合は、ステップ708に進む。
ステップ706では、エラーカウント処理部1461は、エラー回数を1だけインクリメントする。尚、エラー回数の初期値は0である。エラー回数は、測定項目が変化するときにクリアされてよい。
ステップ708では、エラーカウント処理部1461は、全ての関節について確認したか否かを判定する。全ての関節について確認した場合は、ステップ710に進み、それ以外の場合は、ステップ702に戻り、新たな関節の関節位置情報を読み出して処理を繰り返す。
ステップ710では、エラーカウント処理部1461は、エラー回数が所定の閾値を超えたか否かを判定する。所定の閾値は、第1身体部位位置計測装置210及び第2身体部位位置計測装置220の間の切り替えが有効となるときの関節位置情報の信頼度の低下を表す値であり、試験等により適合されてよい。エラー回数が所定の閾値を超えた場合は、ステップ712に進む。エラー回数が所定の閾値を超えない場合は、そのまま終了する。この場合、エラー回数はクリアされず、次のフレームの処理に引き継がれてよい。
ステップ712では、エラーカウント処理部1461は、エラー回数をクリアすると共に、"切り替え有効"を示す処理結果を出力する。
図7に示す処理によれば、関節位置情報に付加されうるエラー情報を利用して、関節位置情報の信頼度の低下を判定することができる。特に、エラー情報は、上述のような重なりが発生した場合に頻発することになる。この点、図7に示す処理によれば、上述のような重なりに起因した関節位置情報の信頼度の低下が検出された場合に、第1身体部位位置計測装置210及び第2身体部位位置計測装置220の間の切り替えを行うことが可能となる。これにより、関節の可動域の測定精度を高めることが可能となる。
尚、図7に示す処理では、全ての関節に関する関節位置情報のエラー情報を考慮しているが、測定項目に関連する関節に関する関節位置情報のエラー情報のみを考慮してもよい。即ち、エラー情報の有無を判定する関節は、測定対象の関節とその関節に隣接する関節のみとしてもよい。例えば、測定項目が右股関節に関する場合(例えば右股関節の外転/内転時の可動範囲)は、エラー情報の有無を判定する関節は、右股関節及び右足の膝の関節(及び/又は右足の足首の関節)としてもよい。
また、図7に示す処理では、フレーム間でのエラー情報の連続性を考慮していないが、フレーム間でのエラー情報の連続性を考慮してもよい。例えば、所定の関節に関する関節位置情報に、所定フレーム以上連続してエラー情報が付加された場合に、"切り替え有効"を示す処理結果を出力することとしてもよい。
図9は、誤推定カウント処理(図6のステップ604)の処理フローの一例を示す。尚、図9の処理フローは、一例として、膝と足首の範囲を確認しているが、確認する関節は測定項目によって異なる。
ステップ900では、誤推定カウント処理部1462は、第1身体部位位置計測装置210及び第2身体部位位置計測装置220のうちの現在動作中の身体部位位置計測装置から関節位置情報を取得する。
ステップ902では、誤推定カウント処理部1462は、上記ステップ900で取得した関節位置情報から膝の関節(図8参照)に関する座標を読み出す。このとき、測定項目が右股関節に関する場合(例えば右股関節の外転/内転時の可動範囲)は、誤推定カウント処理部1462は、右の膝の関節に関する座標を読み出す。また、測定項目が左股関節に関する場合は、誤推定カウント処理部1462は、左の膝の関節に関する座標を読み出す。
ステップ904では、誤推定カウント処理部1462は、上記ステップ902で読み出した膝関節に関する座標が所定の基準可動範囲(図10参照)内であるか否かを判定する。所定の基準可動範囲は、膝関節に関する座標が取り得る基準範囲を表し、試験等により導出されてもよい。所定の基準可動範囲は、測定項目毎に設定されてよい。これは、測定項目に応じて膝関節に関する座標が取り得る基準範囲が変化するためである。膝関節に関する座標が所定の基準可動範囲内である場合は、ステップ908に進み、それ以外の場合は、ステップ906に進む。
ステップ906では、誤推定カウント処理部1462は、エラー回数を1だけインクリメントする。尚、エラー回数の初期値は0である。エラー回数は、測定項目が変化するときにクリアされてよい。
ステップ908では、誤推定カウント処理部1462は、上記ステップ900で取得した関節位置情報から足首の関節に関する座標を読み出す。このとき、測定項目が右股関節に関する場合(例えば右股関節の外転/内転時の可動範囲)は、誤推定カウント処理部1462は、右の足首の関節に関する座標を読み出す。また、測定項目が左股関節に関する場合は、誤推定カウント処理部1462は、左の足首の関節に関する座標を読み出す。
ステップ910では、誤推定カウント処理部1462は、上記ステップ908で読み出した足首関節に関する座標が所定の基準可動範囲(図10参照)内であるか否かを判定する。所定の基準可動範囲は、足首関節に関する座標が取り得る基準範囲を表し、試験等により導出されてもよい。尚、当然ながら、足首関節に関する所定の基準可動範囲は、膝関節に関する所定の基準可動範囲とは異なる。所定の基準可動範囲は、測定項目毎に設定されてよい。これは、測定項目に応じて足首関節に関する座標が取り得る基準範囲が変化するためである。足首関節に関する座標が所定の基準可動範囲内である場合は、ステップ914に進み、それ以外の場合は、ステップ912に進む。
ステップ912では、誤推定カウント処理部1462は、エラー回数を1だけインクリメントする。
ステップ914では、誤推定カウント処理部1462は、エラー回数が所定の閾値を超えたか否かを判定する。所定の閾値は、第1身体部位位置計測装置210及び第2身体部位位置計測装置220の間の切り替えが有効となるときの関節位置情報の信頼度の低下を表す値であり、試験等により適合されてよい。エラー回数が所定の閾値を超えた場合は、ステップ916に進む。エラー回数が所定の閾値を超えない場合は、そのまま終了する。この場合、エラー回数はクリアされず、次のフレームの処理に引き継がれてよい。
ステップ916では、誤推定カウント処理部1462は、エラー回数をクリアすると共に、"切り替え有効"を示す処理結果を出力する。
図9に示す処理によれば、膝関節に関する座標が、対応する基準可動範囲内にない場合や、足首の関節に関する座標が、対応する基準可動範囲内にない場合に、関節位置情報の信頼度の低下を判定することができる。特に、膝関節に関する座標が、対応する基準可動範囲内にない場合等は、上述のような重なりが発生したことに起因して関節位置情報に誤りがある可能性が高いことを意味する。この点、図9に示す処理によれば、上述のような重なりに起因した関節位置情報の信頼度の低下が検出された場合に、第1身体部位位置計測装置210及び第2身体部位位置計測装置220の間の切り替えを行うことが可能となる。これにより、関節の可動域の測定精度を高めることが可能となる。
図10は、基準可動範囲(図9のステップ904、ステップ910参照)の例の説明図であり、(A)は、右股関節の外転/内転時の基準可動範囲の例を示し、(B)は、右股関節の外旋/内旋時の基準可動範囲の例を示す。図10では、図4と同様、被験者Sは、下半身のみが模式的に図示されている。図10において、基準可動範囲は、ハッチングが付与された領域S1〜S3により指示されている。図10において、P0は、右股関節を表し、P1は、右足の膝の関節を表し、P2は、右足の爪先部分(例えば足首の関節)を表す。尚、股関節、膝及び足首の各関節位置は、初期姿勢認識時に股関節、膝、足首の関節位置情報から導出可能である。
右股関節の外転/内転時の右足の膝関節P1に係る基準可動範囲S1は、図10(A)に示すように、右股関節P0を中心とした膝関節P1の動きにより決まる。基準可動範囲S1は、股関節から膝までの長さを半径とした円周であって、股関節を中心とした円周上の領域周辺となる。同様に、右股関節の外転/内転時の右足の足首関節P2に係る基準可動範囲S2は、図10(A)に示すように、右股関節P0を中心とした足首関節P2の動きにより決まる。基準可動範囲S2は、股関節から足首までの長さを半径とした円周であって、股関節を中心とした円周上の領域周辺となる。同様に、右股関節の外旋/内旋時の右足の足首関節P2に係る基準可動範囲S3は、図10(B)に示すように、右股関節P0(足首関節P2)を中心とした足首関節P2の動きにより決まる。基準可動範囲S3は、膝から足首までの長さを半径とした円周上の領域周辺となる。各基準可動範囲S1〜S3は、公差を吸収するために、それぞれ適切なマージンを有してよい。
図11は、図10のY部(点線で囲まれた部分)における基準可動範囲データの例を示す。以下、図11に示すような基準可動範囲を表すデータを「インデックス画像」とも称する。
インデックス画像は、距離画像の画素と一対一で対応する整数の2次元配列を有し、0を範囲外、整数値を各関節のインデックスを示す値として、各関節の基準可動範囲に相当する画素部分に関節インデックス値を保持する。図11に示す例では、整数値"2"は、足首関節P2の関節インデックス値である。図11に示す例では、図10の点線で囲んだ部分Yが足首の可動範囲の右端付近となるため、一部が足首可動範囲を示す"2"であり、それ以外が"0"となっている。尚、インデックス画像の画素数は、必ずしも距離画像と一致させる必要はなく、例えば演算量削減のために、距離画像の複数画素にインデックス画像の1要素を対応付けてもよい。
このようなインデックス画像は、図9に示したステップ904及びステップ910の判定処理において使用することができる。例えば、ステップ904では、誤推定カウント処理部1462は、上記ステップ902で読み出した膝関節に関する座標に対応するインデックス画像の画素の関節インデックス値が、膝関節に係る関節インデックス値であるか否かを判定すればよい。同様に、ステップ910では、誤推定カウント処理部1462は、上記ステップ908で読み出した足首関節に関する座標に対応するインデックス画像の画素の関節インデックス値が、足首関節に係る関節インデックス値であるか否かを判定すればよい。このようなインデックス画像は、可動範囲保持部1463に保存される。
図12は、インデックス画像の生成処理の処理フローの一例を示す。図13は、図12のインデックス画像の生成処理の説明図である。ここでは、一例として、外転/内転の測定項目に係るインデックス画像を生成をする場合の処理について説明する。図13に示すように、この例では距離画像の左下を原点O(0,0)とした2次元座標系を定義し、そこで計算を行っている。初期姿勢認識時の股関節の座標をH(xhip,yhip)、股関節から膝までの長さをlthigh、股関節から足首までをlleg、股関節から垂直に下ろした直線(初期姿勢時の位置)を基準として外転の限界可動角度をθab、内転の限界可動角度をθadとする。また、股関節からの距離を判定する際のマージンをα、チェック対象画素をP(x,y)、PとHを結んだ線と基準線(可動域の角度の原点となる線)とのなす角度をθとする。
図12に示すフローは、測定項目毎に開始され、最初に初期姿勢を認識した時点で1回だけ実行される。そのため、被験者が変わった場合でもその被験者の体格に合わせてインデックス画像を生成することになるため、正確な測定を行うことが可能である。
ステップ1200では、誤推定カウント処理部1462は、第1身体部位位置計測装置210及び第2身体部位位置計測装置220のうちの現在動作中の身体部位位置計測装置から関節位置情報を取得する。
ステップ1202では、誤推定カウント処理部1462は、初期姿勢を認識したか否かを判定する。初期姿勢は、測定前の姿勢であり、例えば外転/内転の場合は図10(A)に示す0°の位置に足がある姿勢であってよく、外旋/内旋の場合は図10(A)に示す0°の位置に足がある姿勢であってよい。初期姿勢を認識した場合は、ステップ1204に進み、それ以外の場合は、ステップ1200の戻る。即ち、誤推定カウント処理部1462は、初期姿勢を認識するまで、関節位置推定部214又は224から関節位置を取得し、初期姿勢の条件を満たしているか否かを繰り返し確認する。
ステップ1204では、誤推定カウント処理部1462は、初期姿勢を認識したときの関節位置情報に基づいて、股関節、膝関節及び足首関節のそれぞれの座標を初期座標として保存する。
ステップ1206では、誤推定カウント処理部1462は、第1身体部位位置計測装置210及び第2身体部位位置計測装置220のうちの現在動作中の身体部位位置計測装置から得られる距離画像から1画素ずつ画素をチェック対象画素として読み出す。尚、処理効率を高めるために、y座標が股関節のyhip以上の場合は範囲外のためチェックせず、y座標がyhipより小さい画素のみチェックすることとしてもよい。
ステップ1208では、誤推定カウント処理部1462は、チェック対象画素についてθ(図13参照)がθabとθadの範囲に収まっているか否かを判定する。図13に示すように、x<xhipの場合、θは、以下のとおりである。
この場合、誤推定カウント処理部1462は、θ<θabの場合、範囲内と判定する。他方、xhip<xの場合、θは、以下のとおりである。
この場合、誤推定カウント処理部1462は、θ<θadの場合、範囲内と判定する。θがθabとθadの範囲に収まっている場合は、ステップ1210に進み、それ以外の場合は、ステップ1214に進む。
ステップ1210では、誤推定カウント処理部1462は、膝の可動範囲内かどうか確認するための距離チェックを行う。具体的には、誤推定カウント処理部1462は、まず、股関節とPの距離PHを以下で算出する。
次いで、誤推定カウント処理部1462は、距離PHが、初期姿勢での関節位置情報から求められるlthighを用いた以下の条件を満たすか否かを判定する。
lthigh-α < PH < lthigh+α
距離PHが上記の条件を満たす場合は、ステップ1218に進み、それ以外の場合は、ステップ1212に進む。
ステップ1212では、誤推定カウント処理部1462は、足首の可動範囲内かどうか確認するための距離チェックを行う。具体的には、誤推定カウント処理部1462は、距離PHが、初期姿勢での関節位置情報から求められるllegを用いた以下の条件を満たすか否かを判定する。
lleg-α < PH< lleg+α
距離PHが上記の条件を満たす場合は、ステップ1216に進み、それ以外の場合は、ステップ1214に進む。
ステップ1214では、誤推定カウント処理部1462は、インデックス画像における今回のチェック対象画素に対応する画素位置のインデックス値として、"範囲外インデックス値"、例えば"0"をセットする。
ステップ1216では、誤推定カウント処理部1462は、インデックス画像における今回のチェック対象画素に対応する画素位置のインデックス値として、"足首の関節インデックス値"、例えば"2"をセットする。
ステップ1218では、誤推定カウント処理部1462は、インデックス画像における今回のチェック対象画素に対応する画素位置のインデックス値として、"膝の関節インデックス値"、例えば"1"をセットする。
ステップ1220では、誤推定カウント処理部1462は、全ての画素をチェックしたか否かを判定する。全ての画素をチェックした場合は、終了となり、インデックス画像が完成する。インデックス画像は、可動範囲保持部1463に保存され、図9に示したステップ904及びステップ910の判定処理において使用される。他方、全ての画素をチェックしていない場合は、ステップ1206に戻り、新たな画素をチェック対象画素として読み出し、処理を繰り返す。
図12に示す処理によれば、被験者の初期姿勢に基づいて、基準可動範囲(インデックス画像)を生成することができる。これにより、計測時の被験者の位置の差異に起因した誤差要因を排除することができる。また、基準可動範囲(インデックス画像)は、初期姿勢での関節位置情報から求められるlthigh等のような被験者の身体サイズを用いて生成されるので、被験者毎に異なり得る身体サイズに起因した誤差要因を排除することができる。従って、被験者が変わった場合でもその被験者の体格に合わせてインデックス画像を生成することになるため、正確な測定を行うことが可能となる。
図14は、他の例による第1身体部位位置計測装置210Aの機能構成例を示す。第1身体部位位置計測装置210Aは、上述した第1身体部位位置計測装置210に対して、誤推定検出部219と、可動範囲保持部218とを追加的に含む点が異なる。尚、第2身体部位位置計測装置220についても同様の変更が可能である。
誤推定検出部219の処理は、図15を参照して後述する。可動範囲保持部218は、初期姿勢における関節位置と、測定項目に応じて決まる関節の基準可動範囲を示すデータ(インデックス画像)を保持する。可動範囲保持部218は、可動範囲保持部1463と共通であってもよい。
図15は、誤推定検出部219の誤推定検出処理の処理フローの一例を示す。図15のフローは、第1身体部位位置計測装置210Aの動作中に、1フレーム毎に実行されてよい。
ステップ1500では、誤推定検出部219は、関節位置推定部214から関節位置情報を取得する。
ステップ1502では、誤推定検出部219は、誤推定検出部219は、上記ステップ1500で取得した関節位置情報から膝の関節(図8参照)に関する座標を読み出す。このとき、測定項目が右股関節に関する場合(例えば右股関節の外転/内転時の可動範囲)は、誤推定検出部219は、右の膝の関節に関する座標を読み出す。また、測定項目が左股関節に関する場合は、誤推定検出部219は、左の膝の関節に関する座標を読み出す。
ステップ1502では、誤推定検出部219は、現在の測定項目に対応するインデックス画像を可動範囲保持部218から読み出し、インデックス画像における対応する画素のインデックス値を抽出する。インデックス画像における対応する画素とは、上記ステップ1502で読み出した膝関節に関する座標に対応する位置の画素である。誤推定検出部219は、抽出したインデックス値が、"膝の関節インデックス値"であるか否かを判定する。尚、抽出したインデックス値が"膝の関節インデックス値"であることは、膝関節に関する座標が基準可動範囲内であることを意味する。インデックス値が"膝の関節インデックス値"である場合は、ステップ1508に進み、それ以外の場合(インデックス値が0か"膝の関節インデックス値"以外の値の場合)は、ステップ1506に進む。
ステップ1506では、誤推定検出部219は、今回のフレームに係る膝関節に関する座標を、直近のフレームに係る膝関節に関する座標であって、基準可動範囲内の座標に置き換える(補正する)。尚、誤推定検出部219は、エラーとして位置情報を出力しないこととしてもよい。
ステップ1508では、誤推定検出部219は、上記ステップ1500で取得した関節位置情報から足首の関節に関する座標を読み出す。このとき、測定項目が右股関節に関する場合(例えば右股関節の外転/内転時の可動範囲)は、誤推定検出部219は、右の足首の関節に関する座標を読み出す。また、測定項目が左股関節に関する場合は、誤推定検出部219は、左の足首の関節に関する座標を読み出す。
ステップ1510では、誤推定検出部219は、上記ステップ1508で読み出した足首関節に関する座標に基づいて、インデックス画像における対応する画素のインデックス値を抽出する。誤推定検出部219は、抽出したインデックス値が、"足首の関節インデックス値"であるか否かを判定する。尚、抽出したインデックス値が"足首の関節インデックス値"であることは、足首関節に関する座標が基準可動範囲内であることを意味する。インデックス値が"足首の関節インデックス値"である場合は、ステップ1514に進み、それ以外の場合は、ステップ1512に進む。
ステップ1512では、誤推定検出部219は、今回のフレームに係る足首関節に関する座標を、直近のフレームに係る足首関節に関する座標であって、基準可動範囲内の座標に置き換える(補正する)。尚、誤推定検出部219は、エラーとして位置情報を出力しないこととしてもよい。
図15に示す処理によれば、膝関節に関する座標が、対応する基準可動範囲内にない場合や、足首の関節に関する座標が、対応する基準可動範囲内にない場合に、関節位置情報を直近の基準可動範囲内の座標に置き換えて出力することができる。これにより、関節位置情報の精度が一時的に低下した場合でも、関節の可動域の測定精度を維持することが可能となる。
図16は、重なり検出処理(図6のステップ608)の処理フローの一例を示す。図17は、重なり検出処理の説明図であり、(A)は、初期姿勢の状態を模式的に示し、(B)は、重なり発生時の状態を模式的に示す。図17は、一例として右足の外転/内転の測定する際の各状態を示す図であり、図4と同様、被験者Sは、下半身のみが模式的に図示されている。
ステップ1600では、重なり判定処理部1464は、第1身体部位位置計測装置210及び第2身体部位位置計測装置220のうちの現在動作中の身体部位位置計測装置から得られる距離画像から1画素ずつ画素を読み出す。
ステップ1602では、重なり判定処理部1464は、上記ステップ1600で読み出した画素が足の領域を示す画素と隣接し、且つ、足の領域内の距離と距離が同等であるか否かを判定する。足の領域を示す画素は、初回の処理周期では、股関節の位置の画素のみとする。肯定判定の場合は、ステップ1604に進み、否定判定の場合は、ステップ1600に戻り、新たな画素を読み出し、処理を繰り返す。
ステップ1604では、重なり判定処理部1464は、上記ステップ1600で読み出した画素を足の領域として足領域フラグデータをセットする。足領域フラグデータは、距離画像と同じ画素数の配列を有し、足の領域かどうかを示すフラグを保持する。
ステップ1606では、重なり判定処理部1464は、上記ステップ1600で読み出した画素の部位の股関節位置からの距離を算出する。
ステップ1608では、重なり判定処理部1464は、上記ステップ1606で算出した距離が、これまでに求めた最大値より大きいか否かを判定する。上記ステップ1606で算出した距離が最大値より大きい場合は、ステップ1610に進み、それ以外の場合は、ステップ1612に進む。
ステップ1610では、重なり判定処理部1464は、上記ステップ1606で算出した距離により、距離の最大値を更新する。この距離の最大値は、足領域の長さの最大値を表す。
ステップ1612では、重なり判定処理部1464は、全ての画素をチェックしたか否かを判定する。全ての画素をチェックした場合は、ステップ1614に進み、それ以外の場合は、新たな画素を読み出し、処理を繰り返す。
ステップ1614では、重なり判定処理部1464は、今回の距離画像から得られた距離の最大値が、足の長さよりも有意に短いか否かを判定する。足の長さは、初期姿勢での関節位置情報から求められてよい。具体的には、初期姿勢認識時に股関節の位置、第1距離画像センサ21又は第2距離画像センサ22から足までの距離、股関節の位置と足首関節の位置から足の長さを算出しておく。距離の最大値が、足の長さよりも有意に短いか否かは、距離の最大値が、足の長さの所定割合(例えば、50%から90%内の割合)以下であるか否かを判定することにより実現されてもよい。距離の最大値が足の長さよりも有意に短い場合は、ステップ1616に進み、それ以外の場合は、そのまま終了する。
ステップ1616では、重なり判定処理部1464は、足の重なりを検出したと判断し、"切り替え有効"を示す処理結果を出力する。
図16に示す処理によれば、フレーム毎に足の領域(センサからの距離が略同じで連続した領域)を求め、その領域内で股関節から最も遠い部分までの長さが足の長さより短い場合、重なったと判定して切り替えが必要と判断する。即ち、距離画像で足の領域は、第1距離画像センサ21又は第2距離画像センサ22から見てほぼ同じ距離であることを利用し、距離画像において、股関節の位置の画素からスタートして1画素毎に足の領域であるかどうかを判定していく。そして、ほぼ等しい距離で連続した領域を求め、股関節からその領域の最も遠い画素までの長さを求めて、初期姿勢認識時の足の長さと比較する。そしてその最も遠い画素までの長さが足の長さより短い時に重なっていると判定する。これは、図17(B)に示すように重なりが発生した場合は、最も遠い画素までの長さ(距離の最大値)は、P0〜P5までの長さになり、足の長さ(図17(A)のP0〜P2までの長さ参照)よりも有意に短くなるためである。具体的には、図17(B)に示すように、右側の重なり発生時の場合、左足が右足の上に重なっているため、距離画像で見ると、右足の領域は左足によって分割される形となる。従って、かかる分割を検出できれば、分割="重なっている"と判断することが可能となる。そのため、距離画像から下側の足の股関節を含む領域の長さを求められれば、その長さが初期姿勢時に求めた長さより短くなっていることで重なっていると判断できる。
このようにして図16に示す処理によれば、足の重なりを距離画像から直接的に検出することができる。尚、この点は、足の重なりを間接的に検出することが可能な図7及び図9に示した処理とは異なる。同様に、図16に示す処理によれば、上述のような重なりに起因した関節位置情報の信頼度の低下が検出された場合に、第1身体部位位置計測装置210及び第2身体部位位置計測装置220の間の切り替えを行うことが可能となる。これにより、関節の可動域の測定精度を高めることが可能となる。
図18は、他の一例による可動範囲測定装置2の概略構成を模式的に示す正面図である。図18には、説明用に、ベッドに仰向けで横たわった状態の被験者Sが、足裏方向から視た正面視で示されている。
可動範囲測定装置2は、距離画像センサ24と、処理装置100A(図9には図示されず)とを含む。
距離画像センサ24は、被験者Sの距離情報を含む距離画像を取得する。距離画像センサ24は、上述した第1距離画像センサ21及び第2距離画像センサ22に対して、センサとしての構成自体は同様であってよい。
距離画像センサ24は、位置(向き)を可変制御可能である。即ち、第2方向に係る角度θs(以下、この角度を「センサ角度」とも称する)が可変である。この構成は任意であるが、図18に示す例では、距離画像センサ24は、XZ面内の円弧状(被験者Sを中心とした円弧状)のレール26上を移動可能な可動部25に設けられる。距離画像センサ24は、レール26に沿って可動部25が移動することで位置が変化される。尚、距離画像センサ24の移動のための動力は、可動部25における任意のアクチュエータ(図示せず)により生成されてよい。アクチュエータは、電気モータ等であってよい。
図19は、可動範囲測定装置2の機能ブロック図である。図3と同様であってよい構成要素については、同一の参照符号を付している。
図19に示す例では、可動範囲測定装置2は、身体部位位置計測装置240と、処理装置100Aとを含む。
身体部位位置計測装置240は、距離画像センサ24と、可動部25と、距離画像保持部242と、関節位置推定部244と、学習データ保持部246と、可動部制御部248とを含む。距離画像保持部242、関節位置推定部244、学習データ保持部246及び可動部制御部248は、ハードウェアにより実現されてもよいし、ソフトウェアにより実現されてもよいし、双方で実現されてもよい。尚、身体部位位置計測装置240は、可動部25と可動部制御部248とを含む点以外は、図14に示した第1身体部位位置計測装置210Aと同様の構成であってもよい。
距離画像保持部242は、距離画像センサ24により取得された距離画像を保存する。関節位置推定部244は、学習データ保持部246内の学習データと、距離画像とに基づいて、被験者Sの関節位置を表す関節位置情報を生成する。
可動部制御部248は、可動部25を制御して距離画像センサ24の位置(図18のセンサ角度θs)を変化させる。可動部制御部248は、例えば移動する方向と移動距離を可動部25に入力することにより、可動部25を目標位置へ移動させる。或いは、可動部25に加速度センサを搭載し、その値を可動部制御部248が読み出して角度を算出し、目標位置となるよう可動部25を制御する構成であってもよい。この場合、加速度センサからは加速度情報を可動部制御部248に送り、可動部制御部248からは移動方向と移動のON/OFFの情報を可動部25に入力することにより移動制御を行うこととしてよい。
尚、距離画像保持部242、関節位置推定部244、学習データ保持部246及び可動部制御部248の一部又は全部は処理装置100Aにより実現されてもよい。
処理装置100Aのハードウェア構成自体は、図2を参照した説明した処理装置100のハードウェア構成と同様であってよい。
処理装置100Aは、上述した可動範囲測定装置1の処理装置100に対して、切り替え判定部146が切り替え判定部146Aに置換された点が主に異なる。切り替え判定部146Aは、切り替え判定部146と同様の態様で切り替え指示を生成する。切り替え判定部146Aは、切り替え指示を可動部制御部248に出力する。可動部制御部248は、これを受けて、可動部25を制御して距離画像センサ24の位置(図18のセンサ角度θs)を変化させる。これにより、上述した可動範囲測定装置1における2つの距離画像センサ(第1距離画像センサ21及び第2距離画像センサ22)の機能が1つの距離画像センサ24により実現される。
尚、切り替え判定部146Aは、切り替え指示として、現在のセンサ角度θsと、実現すべき目標のセンサ角度θsとの関係に基づいて、距離画像センサ24の移動する方向と移動距離(角度)を指示してもよい。実現すべき目標のセンサ角度θsは、そのセンサ位置から被験者を視たときに外転/内転や外旋/内旋の測定中に足の重なりが可動域の全体に亘って生じないように決定されてもよい。
以上、各実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。
例えば、上述した実施例では、測定対象は人体の関節の可動域であるが、ロボットのような人体以外の関節を有する測定対象物に適用されてもよい。この場合は、測定対象は、同様に、例えばロボットの、関節の可動域であってよい。
また、上述した実施例では、XY平面は水平面であるが、測定対象によっては、XY平面は、他の面(例えば鉛直面や斜めの面)であってもよい。
また、上述した実施例では、関節の可動範囲を測定しているが、他の可動範囲を測定することとしてもよい。例えば、単に腕、足などの可動部位の可動範囲を、関節位置情報に基づいて測定してもよい。また、測定対象は、可動範囲に限られず、測定対象は、例えば単に腕、足などの可動部位の位置や速度等であってもよい。
なお、以上の実施例に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)
第1方向から測定対象物の第1距離画像と、前記第1方向とは異なる第2方向から前記測定対象物の第2距離画像とを取得するセンサと、
前記第1距離画像及び前記第2距離画像のうちのいずれか一方に基づいて得られる前記測定対象物の所定部位の位置情報の信頼度の低下を検出した場合に、前記第1距離画像及び前記第2距離画像のうちの他方に切り替えて前記所定部位の位置情報を取得する処理装置とを含む、測定装置。
(付記2)
前記処理装置は、前記センサの位置から前記測定対象物を視たときに前記測定対象物の可動部位が前記測定対象物の他の部位に重なる場合に前記位置情報の信頼度の低下を検出する、付記1に記載の測定装置。
(付記3)
前記センサは、前記第1距離画像を取得する第1センサと、前記第1センサとは異なる第2センサであって前記第2距離画像を取得する第2センサとを含む、付記1に記載の測定装置。
(付記4)
前記センサは、前記第1距離画像を取得する第1位置と、前記第2距離画像を取得する第2位置との間で移動可能であり、
前記処理装置は、前記第1距離画像及び前記第2距離画像の間の切り替えに伴って、前記センサの位置を前記第1位置と前記第2位置の間で切り替える、付記1に記載の測定装置。
(付記5)
前記測定対象物の所定部位は、前記測定対象物の関節を含み、
前記処理装置は、前記位置情報に基づいて前記関節の可動域を算出する、付記1〜4のうちのいずれか1項に記載の測定装置。
(付記6)
前記処理装置は、前記第1距離画像及び前記第2距離画像のうちのいずれか一方に基づいて前記測定対象物の初期姿勢に応じた基準可動範囲を設定し、前記第1距離画像及び前記第2距離画像のうちのいずれか一方に基づく前記所定部位の位置が、前記基準可動範囲内であるか否かに基づいて、前記位置情報の信頼度の低下の有無を判定する、付記1又は2に記載の測定装置。
(付記7)
前記処理装置は、前記所定部位の位置が前記基準可動範囲外となる回数が所定閾値以上である場合に、前記位置情報の信頼度の低下を検出する、付記6に記載の測定装置。
(付記8)
前記処理装置は、前記所定部位の位置が前記基準可動範囲外である場合、前記位置情報を、前記所定部位の位置が前記基準可動範囲内であるときの直近の前記位置情報に基づいて補正する、付記6に記載の測定装置。
(付記9)
前記測定対象物は、被験者の人体であり、
前記処理装置は、前記第1距離画像及び前記第2距離画像に基づいて、複数の測定項目に係る前記被験者の関節の可動範囲を算出し、
前記処理装置は、前記測定項目に基づいて、前記基準可動範囲を設定する、付記6に記載の測定装置。
(付記10)
前記測定項目に係る可動範囲は、右股関節の外転/内転時の可動範囲であって、まっすぐ伸ばした状態の右足の股関節を中心として右足を左右方向に動かすときの可動範囲、及び、左股関節の外旋/内旋時の可動範囲であって、膝を曲げた状態の左足の膝を中心とした膝から先を左右方向に動かすときの可動範囲、左股関節の外転/内転時の可動範囲であって、まっすぐ伸ばした状態の左足の股関節を中心として左足を左右方向に動かすときの可動範囲、及び、右股関節の外旋/内旋時の可動範囲であって、膝を曲げた状態の右足の膝を中心とした膝から先を左右方向に動かすときの可動範囲、のうちの少なくともいずれか1つである、付記9に記載の測定装置。
(付記11)
前記測定対象物は、被験者の人体であり、
前記所定部位は、前記被験者の膝又は足首であり、
前記処理装置は、前記第1距離画像及び前記第2距離画像のうちのいずれか一方に基づいて算出した前記被験者の足の長さが所定基準長さよりも有意に短い場合に、前記位置情報の信頼度の低下を検出する、付記1又は2に記載の測定装置。
(付記12)
前記第1距離画像及び前記第2距離画像のうちのいずれか一方に基づいて前記測定対象物の複数の所定部位の位置を算出してそれぞれの前記位置情報を生成する第2処理装置であって、前記所定部位の位置の算出が不能な場合にエラー情報を、対応する前記位置情報に付加する第2処理装置を更に含み、
前記処理装置は、前記エラー情報の発生回数が所定閾値以上である場合に、前記位置情報の信頼度の低下を検出する、付記1又は2に記載の測定装置。
(付記13)
第1方向から測定対象物の第1距離画像に基づいて得られる前記測定対象物の所定部位の位置情報を取得し、
前記位置情報の信頼度の低下を検出した場合に、前記第1方向とは異なる第2方向から前記測定対象物の第2距離画像に基づいて得られる前記測定対象物の所定部位の位置情報を取得することを含む、測定方法。
(付記14)
第1方向から測定対象物の第1距離画像に基づいて得られる前記測定対象物の所定部位の位置情報を取得し、
前記位置情報の信頼度の低下を検出した場合に、前記第1方向とは異なる第2方向から前記測定対象物の第2距離画像に基づいて得られる前記測定対象物の所定部位の位置情報を取得する、
処理をコンピューターに実行させるプログラム。