JP6292471B2 - 電子部品用金属薄膜および金属薄膜形成用Mo合金スパッタリングターゲット材 - Google Patents
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Description
現在、TFTにはSi半導体膜が用いられているところ、Si半導体膜に主配線材料であるCuが直接触れると、TFT製造中の加熱工程によりCuがSi半導体膜中に熱拡散して、TFTの電気特性を劣化させる。このため、CuとSi半導体膜の間に耐熱性に優れたMoやMo合金をバリア膜として形成した積層配線膜が用いられている。
また、TFTからつながる画素電極や携帯型端末やタブレットPC等に用いられているタッチパネルの位置検出電極には、一般的に透明導電膜であるITO(インジュウム−スズ酸化物)が用いられている。Cuは、ITOとのコンタクト性は得られるが、基板との密着性が低いことにより、基板との密着性を確保するためにCuをMoやMo合金で被覆した積層配線膜とする必要がある。
さらに、近年、非晶質Si半導体より高速駆動に適すると考えられている酸化物を用いた透明な半導体膜の適用検討が盛んに進んでおり、これら酸化物半導体の配線膜にもCuと純Moを用いた積層配線膜が検討されている。
しかし、FPDを製造する場合において、基板上に積層配線膜を形成した後に、次工程に移動する際に長時間大気中に放置される場合がある。また、利便性を向上させるために樹脂フィルムを用いた軽量でフレキシブルなFPD等においては、樹脂フィルムがこれまでのガラス基板等に比較して透湿性があるため、金属薄膜には高い耐湿性が求められている。
また、本発明者の検討によると、CuはAlより密着性、耐湿性や耐酸化性が大きく劣るため、密着性を確保するための下地膜や、Cuの表面を保護するキャップ膜となる金属薄膜を形成する場合がある。上述したMo−V、Mo−Nb合金等や純Moでは耐湿性や耐酸化性が十分でなく、FPDの製造工程中でCuのキャップ膜とした際に変色してしまうとともに酸素が透過し、Cuの電気抵抗値が大きく増加するという問題が発生する場合がある。キャップ膜の変色は、電気的コンタクト性を劣化させ、電子部品の信頼性低下に繋がる。
また、FPDの大画面化や高速駆動のために、TFT製造工程中の加熱温度は上昇する傾向にあり、より高い温度での加熱工程を経ると、キャップ膜である金属薄膜に含まれる合金元素が低抵抗なAlやCuの主配線膜に拡散してしまい、電気抵抗値が増加する場合があることを確認した。
このように、AlやCuの主導電膜と積層する金属薄膜には、新たに様々な環境に対応できる高い耐湿性や耐酸化性と低い電気抵抗値の維持が要求されている。
本発明では、前記組成式のx、yが、それぞれ20≦x≦35、15≦y≦30とすることが好ましい。
本発明では、前記組成式のx、yが、それぞれ20≦x≦35、15≦y≦30であることが好ましい。
本発明の重要な特徴は、Moに対してNiを10〜50原子%、Wを10〜40原子%、且つ両者合計で65原子%以下の範囲で添加することにより、耐湿性、耐酸化性を向上させ、例えば主導電膜を形成するCuやAl等との積層時の加熱工程において、低い電気抵抗値を維持できる新たな金属薄膜を見出した点にある。以下、本発明の金属薄膜について詳細に説明する。尚、以下の説明において「耐湿性」とは、高温高湿環境下における配線膜の電気抵抗値の変化のしにくさをいうものとする。また、「耐酸化性」とは、高温環境下における電気的コンタクト性の劣化のしにくさをいい、配線膜の変色により確認でき、例えば反射率によって定量的に評価することができる。
また、主導電膜を形成するCuは、大気中で加熱すると非常に酸化しやすい元素である。本発明の金属薄膜をCuからなる主導電膜のキャップ膜として用いる場合は、300℃以上の高温まで十分な耐酸化性と、低い電気抵抗値を確保するために、Niの添加量を20原子%以上にすることが好ましい。
一方、Niは、MoよりCuに対して熱拡散しやすい元素である。MoへのNiの添加量が50原子%を越えると、FPD等の電子部品を製造する際の加熱工程において、金属薄膜に含まれるNiが容易に主導電膜のCuに拡散してしまい、低い電気抵抗値を維持しづらくなる。このため、Niの添加量は10〜50原子%とする。
また、Cuからなる主導電膜とNiの添加量が35原子%を越える金属薄膜とを積層し、350℃より高温で加熱する場合は、金属薄膜に含まれるNiが主導電膜のCuに拡散しやすくなり、電気抵抗値が上昇する場合がある。本発明の金属薄膜において、低い電気抵抗値と耐酸化性を維持するためは、Niの添加量は20〜35原子%が好ましい。
本発明の金属薄膜をAlからなる主導電膜のキャップ膜として用いる場合は、Niの添加量が25原子%を越えると、FPD等の電子部品を製造する際の350℃程度の加熱工程において、キャップ膜に含まれるNiが主導電膜のAlに拡散してしまい、低い電気抵抗値を維持しづらくなる。このため、本発明の金属薄膜をAlからなる主導電膜のキャップ膜として用いる場合は、Niの添加量を25原子%以下にすることが好ましい。
一方、Wの添加量が40原子%を越えると、エッチング速度が低下し、Cuとの積層膜のエッチング時に残渣が生じたり、エッチングができなくなったりする。このため、本発明ではWの添加量を10〜40原子%とする。より容易にエッチングするためには、Wの添加量を30原子%以下にすることが好ましい。
また、本発明の金属薄膜に添加されるNiとWは、原子比でNi/Wが1以上であることが好ましい。上述したように、Wは、耐湿性の向上に寄与する元素であるものの、耐酸化性の改善効果は低い。本発明者の検討によれば、金属薄膜中のNiの添加量よりWの添加量が多い場合は、耐酸化性の向上効果を得にくくなることを確認した。このため、本発明の金属薄膜は、原子比でNi/Wが1以上となるように、それぞれ添加することが好ましく、これにより金属薄膜の耐湿性と耐酸化性を安定的に得ることが可能となる。好ましくは、原子比でNi/Wは3以下である。
また、本発明の金属薄膜の膜厚は、30nm以上がより好ましい。これにより、350℃以上の高温で加熱しても、主導電膜のCuの酸化に伴う電気抵抗値の上昇を抑制することができる。また、本発明の金属薄膜の膜厚は、70nm以下がさらに好ましい。これにより、350℃以上の高温で加熱しても、主導電膜のCuへの原子拡散による電気抵抗値の増加を抑制することができる。
本発明の金属薄膜形成用Mo合金スパッタリングターゲット材は、原子比における組成式がMo100−x−y−Nix−Wy、10≦x≦50、10≦y≦40、x+y≦65で表され、残部が不可避的不純物からなる。また、Niを20〜35原子%、Wを10〜30原子%含有させることが好ましい。
また、Mo−10原子%Nb合金、Mo−15原子%Ni合金、Mo−15原子%Wからなるスパッタリングターゲット材も同様に作製した。
また、Ni−20原子%W合金のスパッタリングターゲット材は、電解Niと塊状のW原料を所定量に秤量した後、真空誘導加熱炉にて溶解してインゴットを作製し、機械加工を施して作製した。
また、純Wのスパッタリングターゲット材は、株式会社高純度化学研究所製のものを用いた。
25mm×50mmのガラス基板上に、表1に示す各組成の金属薄膜を200nm形成し、試料を得た。尚、Mo−Ni−W合金からなる金属薄膜の形成は、上記で作製したスパッタリングターゲット材を同時にスパッタするコスパッタ法により形成した。スパッタ条件はAr雰囲気で圧力0.3Paとし、各々のスパッタリングターゲット材に加える電力を変化させて成膜した。得られた金属薄膜の組成分析は、株式会社島津製作所製のICP(誘導結合プラズマ発光分析装置)ICPV−1017で分析した。
エッチング性の評価は、上記で得た各試料を関東化学株式会社製のAl用エッチャントに10分間浸漬して、基板上に金属薄膜の残りがあるかを評価した。エッチング可能であった試料および残渣はあったがエッチングされた試料を○、エッチングされず残った試料を×とし、その状況を表記した。その結果を表1に示す。
Mo−10原子%Nb合金からなる金属薄膜の反射率は、大気中で加熱すると300℃で大きく低下し、350℃では金属薄膜が酸化物となって透過した。また、Mo−15原子%WおよびMo−35原子%W合金からなる金属薄膜の反射率は、350℃で急激に低下してしまい、耐酸化性が低いことを確認した。また、Mo−15原子%Ni合金からなる金属薄膜は、高温高湿雰囲気に放置した際の反射率が100時間放置すると大きく低下し、耐酸化性が低いことを確認した。
また、比較例となるMo−20原子%Ni−45原子%Wからなる金属薄膜は、耐酸化性は改善しているが、エッチングすることができなかった。
これらに対して、本発明のMoに特定範囲のNiとWを加えたMo合金からなる金属薄膜は、大気中の加熱、高温高湿雰囲気に放置しても反射率の低下は少なく、耐酸化性および耐酸化性に優れ、Al用エッチャントでのエッチングも可能であることが確認できた。
このため、本発明の金属薄膜は、Alを主導電膜とする積層膜の金属薄膜に適用することも可能である。
エッチング性の評価は、上記で得た各試料を関東化学株式会社製のCu用エッチャントCu02に10分間浸漬して、基板上に金属薄膜の残りがあるかを評価した。エッチング可能であった試料および残渣はあったがエッチングされた試料を○、エッチングされず残った試料を×とし、その状況を表記した。その結果を表2に示す。
また、表2に示すように、比較例となるMo−15原子%Niからなる金属薄膜を用いた積層配線膜は、高温高湿雰囲気に放置すると、純Mo同様に100時間で反射率が大きく低下し、電気抵抗値も増加し、耐湿性および耐酸化性が低いことを確認した。
また、比較例となるWの添加量が40原子%を越える金属薄膜を用いた積層配線膜は、エッチングできなくなることが確認された。
エッチング性の評価は、上記で得た各試料を関東化学株式会社製のAl用エッチャントに10分間浸漬して、基板上に金属薄膜の残りがあるかを評価した。エッチング可能であった試料および残渣はあったがエッチングされた試料を○、エッチングされず残った試料を×とし、その状況を表記した。その結果を表3に示す。
また、Mo、Mo−35原子%W、Mo−15原子%Niの金属薄膜を用いた積層配線膜は高温高湿雰囲気に放置すると、純Mo同様に100時間で反射率が大きく低下し、電気抵抗値も増加し、耐湿性が低いことを確認した。また、MoにNiが60原子%含有した合金膜と積層すると350℃で加熱すると反射率の増加は少ないが、電気抵抗値が大きく増加することも確認した。
2 金属薄膜(下地膜)
3 主導電膜
4 金属薄膜(キャップ膜)
Claims (4)
- 原子比における組成式がMo100−x−y−Nix−Wy、10≦x≦50、10≦y≦40、x+y≦65で表され、残部が不可避的不純物からなることを特徴とする電子部品用金属薄膜。
- 前記組成式のx、yが、それぞれ20≦x≦35、15≦y≦30であることを特徴とする請求項1記載の電子部品用金属薄膜。
- 請求項1に記載の電子部品用金属薄膜を形成するためのMo合金スパッタリングターゲット材であって、原子比における組成式がMo100−x−y−Nix−Wy、10≦x≦50、10≦y≦40、x+y≦65で表され、残部が不可避的不純物からなることを特徴とする金属薄膜形成用Mo合金スパッタリングターゲット材。
- 前記組成式のx、yが、それぞれ20≦x≦35、15≦y≦30であることを特徴とする請求項3記載の金属薄膜形成用Mo合金スパッタリングターゲット材。
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