JP6286733B2 - 交流電動機のデジタル式回転子位相速度推定装置 - Google Patents

交流電動機のデジタル式回転子位相速度推定装置 Download PDF

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本発明は、駆動基本周波薮より高い周波数の高周波電圧の印加に対し回転子が突極特性を示す交流電動機(例えば、回転子に永久磁石を有する永久磁石同期電動機、巻線形同期電動機、同期リラクタンス電動機、回転子に永久磁石と界磁巻線をもつハイブリッド界磁形同期電動機、誘導電動機など)のための駆動制御装置に使用される回転子の位相(位置と同義)、速度を位置速度センサを利用することなく、すなわちセンサレスで推定するためのデジタル式回転子位相速度推定装置に関する。特に、印加高周波電圧は空間的に回転し、かつ印加高周波電圧の周波数は電力変換器のスイッチング周波数(PWMによる場合には搬送波周波数)の数分の一程度(より具体的には、1/2から1/10程度)という限界的に高い周波数とするデジタル式回転子位相速度推定装置に関する。
交流電動機の高性能な制御は、いわゆるベクトル制御法により達成することができる。ベクトル制御法には、回転子の位相あるいはこの微分値である速度の情報が必要であり、従前よりエンコーダ等の位置速度センサが利用されてきた。しかし、この種の位置速度センサの利用は、信頼性、軸方向の容積、センサケーブルの引回し、コスト等の観点において、好ましいものではなく、位置速度センサを必要としない、いわゆるセンサレスベクトル制御法の研究開発が長年行なわれてきた。
有力なセンサレスベクトル制御法として、駆動基本周波数より高い周波数の高周波電圧を電動機に強制印加し、これに対応した高周波電流(応答高周波電流)を処理して回転子位相を推定する方法(いわゆる高周波電圧印加法)が、これまで、種々、開発・報告されてきた。なお、本明細書では、固定子電圧、固定子電流の構成周波数成分を、駆動用基本波成分と高周波成分とに2分して捕えている。駆動用基本波成分は、電動機の回転速度と直接的に関係した成分(すなわち、回転子の速度(電気速度)と同程度の周波数成分)であり、高周波成分は、駆動用基本波成分よりはるかに高い周波数(周波数の値は既知)の成分である。特に、本発明においては、高周波成分は、電力変換器のスイッチング周波数(PWMによる場合には搬送波周波数)の数分の一程度(より具体的には、1/2から1/10程度)という限界的に高い周波数の成分を意味する(後掲の図5参照)。
推定すべき回転子位相は回転子の任意の位置に定めてよいが、回転子の負突極位相または正突極位相の何れかを回転子位相に選定するのが一般的である。当業者には周知のように、負突極位相と正突極位相の間には、電気的に±π/2(rad)の位相偏差があるに過ぎず、何れかの位相が判明すれば、他の位相は自ずと判明する。以上を考慮の上、以降では、特に断らない限り、回転子の負突極位相を回転子位相とする。また、回転子位相と位相偏差なく同期したd軸、d軸と直交したq軸から構成される2軸直交座標系をdq同期座標系と呼ぶ(図1参照)。
高周波電圧印加法の技術的な分類は幾つか考えられるが、第1の分類方法は、印加高周波電圧に基づく分類方法(変調に基づく方法)である。高周波電圧印加法は、高周波電圧を印加する座標系上でみた場合、空間的に回転するものと、非回転のものとに大別される。本発明が対象とする高周波電圧印加法は、高周波電圧を印加する座標系上でみた場合、空間的に回転する高周波電圧(以下、空間回転高周波電圧と略記)を印加する方法に関するものである。なお、高周波電圧印加の工程は、一般に、「変調」と呼ばれる
高周波電圧印加法では、印加高周波電圧の応答である高周波電流の処理を通じて、回転子位相推定値を生成している(一般に、本工程は「復調」と呼ばれる)。高周波電圧印加法の第2の技術的分類方法は、復調に基づく方法である。復調方法は、大きくは、固定子電流からフィルタ等を用いた高周波電流の分離抽出を必要とするものと、高周波電流の分離抽出を必要としないものとに分類される。本発明の方法は、高周波電流の分離抽出を必要としない変調方法に関する。
本明細書では、▲1▼空間回転高周波電圧を印加し、▲2▼印加高周波電圧の周波数は、電力変換器のスイッチング周波数(PWMによる場合には搬送波周波数)の数分の一程度(より具体的には、1/2から1/10程度)という高い周波数である、と言う2条件を満たした変調方法を採用した高周波電圧印加法を、簡単に、「回転形限界高周波電圧印加法」と呼称する。本発明が属する回転形限界高周波電圧印加法の先行発明としては、わずかに、先行技術文献欄に列挙した特許文献1、非特許文献1があるにすぎないようである。特許文献1と非特許文献1は、同一発明者によるものであり、内容的には実質同一である。以下、特許文献1の技術を図面を用いて、先行発明の要点を説明する。
本明細書の図10は、特許文献1の図1、図2に示された、永久磁石同期電動機を対象とした駆動制御システムに関し、回転形限界高周波電圧印加法に基づくデジタル式回転子位相速度推定装置を備えたデジタル式駆動制御装置の構成例である。特に、同図(a)はデジタル式駆動制御装置の全体構成を示している。同図(a)より理解されるように、位置推定用電圧発生器(12)(破線枠で明示)で生成された高周波電圧指令値はuvw座標系上で駆動用電圧指令値に重畳され、これに対応した高周波電圧が電力変換器を介して電動機に印加されている。同図(b)は位置推定用電圧発生器(12)で生成された高周波電圧指令値をu相、v相、w相ごとに示したものである。各相の高周波電圧指令値は、2制御周期相当分の時間シフトを示しており、「特許文献1の高周波電圧印加法は、制御周期の6倍周期をもつ空間回転高周波電圧をuvw座標系上で印加する回転形限界高周波電圧法の1種である」ことが理解される。
図10の復調工程を実現した位置推定手段(4)においては、第1処理工程に、電流抽出器(6)(第1フィルタ、高周波電流成分抽出用フィルタ、破線枠で明示)が設置されており、「特許文献1の高周波電圧印加法における復調は、uvw座標系上の三相の固定子電流より三相の高周波電流をフィルタを用い分離抽出するものである」ことが確認される。
また、復調工程を実現した位置推定手段(4)の第2処理工程には、移動平均用積分器(第2フィルタ、直流成分抽出用フィルタ、破線枠で明示)(10)も設置されてり、「特許文献1の高周波電圧印加法における復調は、フィルタ処理を多用するものである」ことも確認される。
以上の説明より既に明らかなように、回転形限界高周波電圧印加法に基づくデジタル式回転子位相速度推定装置に関する先行発明は、フィルタ処理を多用するものである。フィルタ処理を多用する先行発明では、信号成分選択を適切に遂行するためのフィルタに関連して以下の問題が発生した。▲1▼信号成分の選択性の向上には、フィルタ帯域幅を狭める必要がある。フィルタ帯域幅の狭小化に応じて、フィルタの速応性(応答の速さ)が低下する。ひいては、追随性のよいデジタル式回転子位相速度推定装置、駆動制御システムの構築が不可能となる。▲2▼追従性の向上には、フィルタの帯域幅を向上すればよいが、この場合には、高周波電流成分、直流成分の効果的なフィルタ抽出が困難となり、ひいては位相推定誤差が増大する。▲3▼デジタル式回転子位相速度推定装置、駆動制御システムは元来非線形システムである。フィルタの多用に伴い、デジタル式回転子位相速度推定装置、駆動制御システムの非線形性が増大し、ひいては、デジタル式回転子位相速度推定装置、駆動制御システムが不安定化しやすくなる。
伊藤正人・金原義彦・谷本政則:「回転電機の制御装置および制御方法」、再表第2010/109520号(2009−3−25)
伊藤正人・金原義彦:「高周波電圧を用いた突極形PMモータの直接位置推定法」、電気学会論文誌D、131巻、6号、pp.785−792(2011−6)
本発明は上記背景の下になされたものであり、その目的は、回転形限界高周波電圧印加法に基づく位相速度推定において、フィルタ処理を行うことなく位相速度推定を遂行し、ひいては、安定性と速応性を同時に達成できるデジタル式回転子位相速度推定装置(位相速度推定器)を提供することにある。
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、駆動基本周波数より高い周波数の高周波電圧の印加に対し回転子が突極特性を示す交流電動機のための、電力変換器と固定子電流検出器とを用いた周期Tsの固定子電流デジタル制御機能を備えたデジタル式駆動制御装置に使用されるデジタル式回転子位相速度推定装置であって、Nhを3から10の整数とするとき、周期Th=Nh*Tsで空間的に回転する高周波電圧を、固定子電流の離散時間検出時刻と同期した形で印加するようにした空間回転高周波電圧印加手段と、該固定子電流検出器を用いて周期Tsで離散時間検出された、空間回転高周波電圧の印加に起因する高周波電流成分を含む固定子電流を、周期Tsごとに時間差分して、時間差分固定子電流を生成する時間差分固定子電流生成手段と、該時間差分固定子電流と該空間回転高周波電圧に起因する高周波信号とを用いて、回転子位相の推定値あるいは回転子位相と基本的に微積分関係にある回転子速度の推定値の少なくとも何れかの推定値を、周期Tsごとに生成する回転子位相速度推定値生成手段と、を備えることを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1記載のデジタル式回転子位相速度推定装置であって、回転子位相に位相偏差ゼロで同期を目指したγ軸とこれに直交したδ軸とで構成されるγδ準同期座標系上で、空間的に回転する高周波電圧を印加するようにして該空間回転高周波電圧印加手段を構成したことを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1記載のデジタル式回転子位相速度推定装置であって、回転子位相に位相偏差ゼロで同期を目指したγ軸とこれに直交したδ軸とで構成されるγδ準同期座標系上で、固定子電流を周期Tsごとに時間差分して、時間差分固定子電流を生成するようにして、該時間差分固定子電流生成手段を構成したことを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項1記載のデジタル式回転子位相速度推定装置であって、位相同期ループまたは位相同期ループと等価なフィードバックループを構成するようにして、該回転子位相速度推定値生成手段を構成したことを特徴とする。
以下に示す本発明の効果等に関する説明は、駆動基本周波数より高い周波数の高周波電圧の印加に対し回転子が突極特性を示す交流電動機であれば、回転子に永久磁石を有する永久磁石同期電動機、巻線形同期電動機、同期リラクタンス電動機、ハイブリッド界磁形同期電動機、誘導電動機などの何れの交流電動機にも適用される。埋込磁石形永久磁石同期電動機、同期リラクタンス電動機等は、駆動用電圧・電流に対して突極特性を示す。これらの電動機は、高周波電圧の印加に対しても同様に突極特性を示す。一方、駆動用電圧・電流に対しては突極特性を示さない表面磁石形永久磁石同期電動機、誘導電動機は、高周波電圧の印加に対しては突極特性を示す。ハイブリッド界磁形同期電動機は、永久磁石形と巻線形の両同期電動機の特性を有しており、高周波電圧印加に対して突極特性を示し得る。特に、自励式ハイブリッド界磁同期電動機は、突極性が強い。
図1に示したように、制御設計者が指定した座標系速度ωγで回転するγδ一般座標系を考える。ただし、座標系速度ωγの最高速度は、高々、回転子速度の最高速度程度とする。座標系速度ωγをゼロとし、位相θγを位相θαとする場合には、γδ一般座標系は、αβ固定座標系となる。また、座標系速度ωγを回転子速度真値ω2nとし、位相θγをゼロとする場合には、γδ一般座標系は、dq同期座標系となる。また、座標系速度ωγを回転子速度の推定値とし、位相θγのゼロ収斂を目指す場合には、γδ一般座標系は、dq同期座標系への位相差ゼロでの収斂を目指したγδ準同期座標系となる。
主軸(γ軸)から副軸(δ軸)への回転を正方向とする。以下に扱う交流電動機の物理量を表現した2x1ベクトル信号は、特に断らない限り、すべてγδ一般座標系上で定義されているものとする。なお、以降の数式表現においては、2x1ベクトル信号は太文字を利用して表記するようにしている。
先ず、請求項1の発明の効果を説明する。電動機駆動用の電圧に、位相推定用の高周波電圧を重畳印加することを考える。この場合には、次のように、固定子の電圧v1、電流i1、鎖交磁束φ1は、大きくは2成分の合成ベクトルとして表現することができる。
Figure 0006286733
(1)式右辺の信号の脚符f、hは、それぞれ駆動基本周波数、高周波の成分であることを示している。特に、(1)式各3式の第2項であるv1h、i1h、φ1hの3信号が、本発明と深く関係する、印加された高周波電圧、この応答としての高周波電流、印加高周波電圧に起因した高周波磁束、を各々示している。なお、位相推定用に重畳印加した高周波電圧の周波数ωhは、次の(2)式の関係が成立する十分に高いものとする。
Figure 0006286733
以降では、記号sは微分演算子d/dtを、Iは2x2単位行列を、Jは次式で定義された2x2交代行列を意味するものとする。
Figure 0006286733
(2)式が成立する場合には、高周波電圧の印加に対し回転子が突極特性を示す交流電動機における固定子の高周波成分に関しては、次の(4)〜(6)式の関係が成立する。
Figure 0006286733
Figure 0006286733
Figure 0006286733
ここに、Li、Lmは固定子の同相インダクタンス、鏡相インダクタンスであり、d軸、q軸インダクタンスとは次の関係を有する。
Figure 0006286733
なお、鏡相インダクタンスLmは、回転子位相として負突極位相を選定する場合には負となる。
以上の準備の下で、請求項1の発明の第1手段である空間回転高周波電圧印加手段を説明する。請求項1の発明では、印加高周波電圧として、周期Th、平均速度ωhで空間的に回転する高周波電圧(空間回転高周波電圧)を印加する。本電圧の代表的なものは、一定振幅をもつ次の真円形高周波電圧である。
Figure 0006286733
本発明における空間回転高周波電圧とは、高周波電圧を印加する座標系上において空間的に回転する高周波電圧を意味する。たとえば、uvw座標系上で高周波電圧を印加する場合には、uvw座標系上で空間的に回転する高周波電圧を意味し、αβ固定座標系上で高周波電圧を印加する場合には、αβ固定座標系上で空間的に回転する高周波電圧を意味し、γδ準同期座標系上で高周波電圧を印加する場合には、γδ準同期座標系上で空間的に回転する高周波電圧を意味する。なお、(8b)式における記号<>は平均処理を意味する。
また、印加した空間回転高周波電圧の周期Thは、制御周期Tsの3〜10倍とする。すなわち、
Figure 0006286733
(2)式の関係が成立する場合、(4)、(5)式より、印加した高周波電圧とこの応答である高周波電流の間には、次の関係が近似的に成立する。
Figure 0006286733
本発明のデジタル式回転子位相速度推定装置に備える空間回転高周波電圧印加手段は、(9)式、(10)式の性質を備えた(8)式に代表される空間回転高周波電圧印加のための電圧指令値を生成する手段を意味する(後掲の図3、図6、図7、図9を参照)。空間回転高周波電圧は、電圧指令値に従い、電力変換器(インバータ)を介して、電動機に印加されるものとしている(後掲の図2、図8を参照)。
つづいて、請求項1の発明の第2手段である時間差分固定子電流生成手段を説明する。固定子電流は、(1)式に明示しているように、駆動基本周波数、高周波の2成分を有している。固定子電流が、固定子電流検出器により制御周期Tsごとに離散時間検出され、時間差分される場合、(10)式より、次の関係が成立する。
Figure 0006286733
ここに、電流の脚符kはt=k*Tsでの離散時間検出時刻を意味し、電圧の脚符k−1は時間t=(k−1)*Ts〜k*Tsの間に印加された電圧を意味する(後掲の図5参照)。
時間差分固定子電流生成手段では、(11a)式右辺に従い、(11a)式左辺の時間差分固定子電流(すなわち、固定子電流検出器により制御周期Tsごとに離散時間検出された固定子電流を、時間差分した信号)を生成する。時間差分固定子電流生成手段で生成された時間差分固定子固定子電流は、解析式たる(11b)式の最終式が示しているように、回転子位相情報を有する。なお、解析式たる(11b)式においては、「制御周期Tsの間の駆動基本周波数成分の変化は実質的に無視できる」と仮定している。本仮定は、低回転の状況下では、一般に成立する。
つづいて、請求項1の発明の第3手段である回転子位相速度推定値生成手段を説明する。連続した2制御周期にわたって(11b)式を適用するならば、次式を得る。
Figure 0006286733
なお、上式は、「(k−1)時点とk時点の2つの時間差分固定子電流が生成される間、回転子位相は実質的に不変」と言う仮定の下に構築している。本仮定は、制御周期に比較して、回転子速度が十分に低ければ、一般に成立する。
印加高周波電圧は空間回転高周波電圧であるので、(12)式右辺の2×2高周波電圧行例は、常時正則となる。すなわち、常時この逆行列が存在する。逆行列の存在条件を(12)式に用いると、請求項1の発明の最重要な原理式である次式を得る。
Figure 0006286733
(13)式においては、印加された高周波電圧は同指令値(頭符*で表示)で近似されるものとしている。
(13)式は、「同式左辺に従い、時間差分固定子固定子電流と高周波電圧指令値(空間回転高周波電圧に起因する高周波信号の代表的1種)とを処理するならば、同式右辺の2×2インダクタンス行列が特定され、ひいては回転子位相θγが特性される」ことを意味している。インダクタンス行列の特定が、回転子位相の特定を意味すことは、(13)式を書き改めた次式より容易に理解される。
Figure 0006286733
上の(14b)式は、「(14a)式の第1式に基づき時間差分固定子固定子電流と高周波電圧指令値とから特定された4要素より、ただちに回転子位相が特定される」ことを明快に示している。なお、以降では、(14a)式左辺の4要素を基本信号と呼称する。
(11)〜(14)式を用いた上の説明より既に明らかなように、請求項1の発明によれば、フィルタ等を用いた高周波電流検出を一切行なうことなく、固定子電流の離散時間検出値から直接的に回転子位相を推定できるという効果が得られる。回転子位相推定値の生成には、フィルタ等を一切使用していないので、フィルタ使用に伴う安定性の低下もなく、高い速応性を備えた位相推定が可能となるという効果も得られる。回転子速度と回転子位相とは、互いに微積分の関係にある。したがて、微積分関係を利用することにより、回転子速度推定値を、回転子位相推定値からこれと同様な効果をもった形で生成することができる(速度推定値生成の具体例は、後掲の図7、図9を用いた実施例を通じ示す)。
(11)〜(14)式は、γδ一般座標系上の関係式である。したがって、本関係式は、γδ一般座標系の特別の場合であるαβ固定座標系上の信号にも適用できる。より具体的には、請求項1の発明に、αβ固定座標系上の固定子電流等を適用するならば、固定座標系のα軸からみた回転子位相θαの推定値を得ることができる(図1参照)。また、本関係式は、γδ一般座標系の特別の場合であるγδ準同期座標系上の信号にも適用できる。より具体的には、請求項1の発明に、γδ準同期座標系上の固定子電流等を適用するならば、γδ準同期座標系のγ軸からみた回転子位相θγの推定値を得ることができる(図1参照)。当然のことながら、このときの推定値生成には上に述べた効果が伴う。
続いて、請求項2の発明による効果について説明する。(1)式に明示しているように、固定子電圧には、駆動用基本周波数成分と高周波成分との2成分が含まれている。良好な推定値を得るには、両成分の周波数の差は可能な限り大きくすることが望まれる。請求項2の発明では、γδ準同期座標系上で高周波電圧を印加するようにしている。一方、γδ準同期座標系上では、駆動用基本周波数成分の周波数は実質的にはゼロである。したがって、請求項2の発明に従って空間回転高周波電圧印加手段を構成するならば、印加高周波電圧の周波数を両成分の周波数の差とすることができ、ひいては最大の周波数差を得ることができると言う効果が得られる。この結果、請求項1の効果を、一層高めることができるという効果が得られる。
続いて、請求項3の発明による効果について説明する。(1)式に明示しているように、固定子電流には、駆動用基本周波数成分と高周波成分との2成分が含まれている。回転子位相情報を保有しているのは、2成分のうちの高周波成分すなわち高周波電流である。本発明は、固定子電流に含まれる駆動用基本周波数成分の除去を固定子電流の差分処理で行なうものである(請求項1の効果に関する説明を参照)。差分処理を通じた駆動用基本周波数成分の除去は、駆動用基本周波数成分の周波数が実質的にゼロ周波数であれば、理想的に遂行される((11b)式参照)。請求項3の発明に基づく時間差分固定子電流生成手段よれば、固定子電流の差分処理をγδ準同期座標系上で遂行することになる。γδ準同期座標系上では、電動機が高速回転を行なう場合においても、固定子電流の駆動用基本周波数成分の周波数は実質的にゼロ周波数であり、請求項3の発明に基づく時間差分固定子電流生成手段に生成された時間差分固定子電流においては、駆動用基本周波数成分は理想的状態で除去されることになる。以上の説明より既に明らかなように、請求項3の発明の時間差分固定子電流生成手段によれば、ゼロ速から高速までの広い速度範囲で時間差分固定子電流から駆動用基本周波数成分を理想的状態で除去でき、ひいてはゼロ速から高速までの広い速度範囲で請求項1の発明を適用できるようになるという効果が得られる。換言するならば、請求項1の効果を一層高めることができると言う効果が得られる。
続いて、請求項4の発明による効果について説明する。(13)式、(14)式の導出根拠となった(12)式は、「(k−1)時点とk時点の2つの時間差分固定子電流が生成される間、回転子位相は実質的に不変」と言う仮定の下に構築されている。ゼロ速度あるいはこれに準じた低速度であれば本仮定は問題なく成立するが、速度向上に応じて、この仮定が崩れてくる。ひいては、位相推定値あるいはこれに基づく速度推定値に伴う誤差が、次第に大きくなる。位相同期(PLL)ループまたは位相同期ループと等価なフィードバックループは、位相推定値を時々刻々変化する位相真値に追随させる働きがある。請求項4の発明によれば、位相同期ループまたは位相同期ループと等価なフィードバックループを構成するようにして、回転子位相速度推定値生成手段を構成することになるので、速度向上に応じて増大する上述の推定誤差を押さえ込むことが可能となる。速度推定値は、微積分の関係を利用して位相推定値から生成されるので、速度推定値に伴う誤差も同様に押さえ込まれる。以上の説明より既に明白なように、請求項4の発明の回転子位相速度推定値生成手段によれば、高速回転においても、精度を著しく劣化することなく回転子位相推定値あるいは回転子速度推定値を得ることができると言う効果が得られる。換言するならば、請求項1の効果を一層高めることができると言う効果が得られる。
「3種の座標系と回転子位相の1関係例を示す図」 「1実施例のための駆動制御システムを示すブロック図」 「1実施例における位相速度推定器の基本構成を示すブロック図」 「1実施例における空間回転高周波電圧の空間位相を示す図」 「1実施例のための空間回転高周波電圧と応答高周波電流と同離散時間検出時刻との関係を示す図」 「1実施例における空間回転高周波電圧指令器の基本構成を示すブロック図」 「1実施例における位相速度推定器の詳細構成を示すブロック図」 「1実施例のための駆動制御システムを示すブロック図」 「1実施例における位相速度推定器の詳細構成を示すブロック図」 「従前のデジタル式駆動制御装置の構成例と印加高周波電圧例を示す図」
以下、図面を用いて、本発明の実施例を詳細に説明する。代表的な交流電動機である永久磁石同期電動機に対し、本発明のデジタル式回転子位相速度推定装置を備えたデジタル式駆動制御装置の1例を図2に示す。1は交流電動機(同期電動機)を、2は電力変換器(インバータ)を、3は離散時間電流検出器を、4a、4bは夫々3相2相変換器、2相3相変換器を、5a、5bは共にベクトル回転器を、6は電流制御器を、7は指令変換器を、8は速度制御器を、9はローパスフィルタを、10は位相速度推定器(デジタル式回転子位相速度推定装置の別称)を、11は係数器を、12は余弦正弦信号発生器を、各々示している。図2では、1の電動機を除く、2から12までの諸機器が駆動制御装置を構成している。本図では、簡明性を確保すべく、2×1のベクトル信号を1本の太い信号線で表現している。以下のブロック図表現もこれを踏襲する。
離散時間電流検出器3で検出された3相の固定子電流は、3相2相変換器4aでαβ固定座標系上の2相電流に変換された後、ベクトル回転器5aで回転子位相(dq同期座標系の位相と同一)へゼロ位相偏差で位相同期を目指したγδ準同期座標系の2相電流に変換される。変換電流からローパスフィルタ9を介して駆動用電流(固定子電流の駆動基本周波数成分)を抽出し、これを電流制御器6へ送る。電流制御器6は、γδ準同期座標系上の駆動用2相電流が、各相の電流指令値(電流指令値用変数の頭符記号*は指令値を意味する。本明細書では、同様に、関連信号の指令値は、関連信号に頭符*を付して表現している)に追随すべくγδ準同期座標系上の駆動用2相電圧指令値を生成する。ここで、位相速度推定器10から受けた空間回転高周波電圧の指令値を、駆動用2相電圧指令値に重畳させ、重畳合成した2相電圧指令値を、ベクトル回転器5bへ送る。5bでは、γδ準同期座標系上の重畳合成の電圧指令値をαβ固定座標系の2相電圧指令値に変換し、2相3相変換器4bへ送る。4bでは、2相電圧指令値を3相電圧指令値に変換し、電力変換器2への最終指令値として出力する。電力変換器2は、指令値に応じた電力を発生し、同期電動機1へ印加しこれを駆動する。
位相速度推定器10は、ベクトル回転器5aの出力信号であるγδ準同期座標系上の固定子電流を入力として受けて、回転子位相推定値、回転子(電気)速度推定値、及び空間回転高周波電圧指令値を出力している。回転子位相推定値は、余弦正弦信号発生器12で余弦・正弦信号に変換された後、γδ準同期座標系を決定づけるベクトル回転器5a、5bへ渡される。これは、回転子位相推定値をγδ準同期座標系の位相(γ軸の位相と等価)とすることを意味する。
γδ準同期座標系上の2相電流指令値は、当業者には周知のように、トルク指令値を指令変換器7に通じ変換することにより得ている。速度制御器8には、位相速度推定器10からの出力信号の1つである回転子速度推定値(回転子電気速度推定値)が、一定値である極対数Npの逆数を係数器11を介して乗じられ機械速度推定値に変換された後、送られている。図2の例では、速度制御システムを構成した例を示しているので、速度制御器8の出力としてトルク指令値を得ている。当業者には周知のように、制御目的がトルク制御にあり速度制御システムを構成しない場合には、速度制御器8は不要である。この場合には、トルク指令値が外部から直接印加される。
本発明の核心は、デジタル式回転子位相速度推定装置と同義でる位相速度推定器10にある。速度制御、トルク制御の何れにおいても、位相速度推定器10には何らの変更を要しない。また、駆動対象電動機を他の同期電動機、あるいは誘導電動機とする場合にも位相速度推定器10には何らの変更を要しない。以下では、速度制御、トルク制御等の制御モードに関し一般性を失うことなく、更には、駆動対象の交流電動機に対して一般性を失うことなく、位相速度推定器10の種々の実施例について説明する。
上記の説明より既に明らかなように、図2のデジタル式回転子位相速度推定装置は、本発明の主眼である位相速度推定器(デジタル式回転子位相速度推定装置の別称)10をγδ準同期座標系上で構成する例となっている。これは、「請求項2および請求項3の発明に基づき、空間回転高周波電圧印加手段、時間差分固定子電流生成手段をγδ準同期座標系上で構成している」ことを意味している(詳細は、後述)。
図3は、位相速度推定器10の代表的な内部構成例を示したものである。位相速度推定器は、空間回転高周波電圧印加手段を実現した空間回転高周波電圧指令器10−1、時間差分固定子電流生成手段を実現した時間差分器10−2、回転子位相速度推定値生成手段を実現した推定値生成器10−3から構成されている。空間回転高周波電圧指令器10−1は、空間回転高周波電圧指令値を生成し、位相速度推定器10の外部へ出力している。時間差分器10−2は、固定子電流検出器により制御周期Tsごとに離散時間検出された固定子電流を、(11a)式に従って周期Tsごとに時間差分して、時間差分固定子電流を生成している。なお、図における「zの逆数」は、離散時間信号に対して1制御周期Tsの時間遅れを発生させる「遅延器」(演算的には、「遅れ演算子」)を意味する。本明細書では、他所でも、同様の意味で「zの逆数」を利用する。推定値生成器10−3は、時間差分固定子電流と空間回転高周波電圧に起因した高周波信号を用いて、回転子位相の推定値、回転子位相と基本的に微積分関係にある回転子速度の2信号を生成し、位相速度推定器10の外部へ出力している。時間差分器10−2の詳細は、上記の説明で既に明らかであるので、以下に、残りの空間回転高周波電圧指令器10−1、推定値生成器10−3に関し、この実施例を用いて、詳細に説明する。
(14)式の左辺を精度よく算定するには、同式左辺の2×2高周波電圧行例の正則性を高める必要がある。最も高い正則性をもたらすのは、空間回転高周波電圧周期と制御周期との相対比NhをNh=4と場合である。この場合、高周波電圧行列を構成する連続した2個の空間回転高周波電圧(2x1ベクトル)は、常時直交する。同様に、連続した2個の空間回転高周波電圧指令値(2x1ベクトル)も常時直交する。
Nh=4の場合の代表的高周波電圧指令値は、次の4個である((8a)式参照)。
Figure 0006286733
(15)式の空間回転高周波電圧指令値は、γδ準同期座標系上で位相差±π/2[rad]をもつ4個の空間ベクトルとして、図4のように描画することができる。空間ベクトルの平均回転速度を正(負)とする場合には、(15)式の4個の2×1空間ベクトルを左(右)から右(左)へと選択することになる。
図5に、(15)式の空間回転高周波電圧指令値を用いて高周波電圧を印加した場合の、応答高周波電流、同離散時間検出値(サンプリング値)をγ軸、δ軸要素ごとに例示した。同図が明示しているように、空間回転高周波電圧は、固定子電流の離散時間検出時刻と同期した形で印加されている。空間回転高周波電圧指令値に基づく高周波電圧の印加は、図2に例示しているように、電力変換器2を介して行なわれる。図5には、参考までに、電力変換器のスイッチングためのPWM搬送波の2例も示した。(f)に示した例では、PWM搬送波の周期と高周波電圧の周期の相対比は、1対4である。これに対して、(g)に示した例では、PWM搬送波の周期と高周波電圧の周期の相対比は、1対2である。
固定子電流の離散時間検出時刻と同期した形で空間回転高周波電圧を印加するための手段、より具体的には、空間回転高周波電圧指令値を生成するための空間回転高周波電圧指令器10−1の構成の2例を図6に示した。同図(a)の構成例では、遅延器の初期値として、右から順次[0、1、0、−1]を設定しさえすれば、(15)式に示した高周波電圧指令値とこれに対応した符号ベクトルとを、離散時間検出時刻と同期した形で、繰返し生成することができる。同図(b)の構成例では、遅延器の初期値として、右から順次[0、1]を設定しさえすれば、同一の高周波電圧指令値を、離散時間検出時刻と同期した形で、繰返し生成することができる。
続いて、推定値生成器10−3の実施例、特に、周期の相対比NhとしてNh=4を採用した空間回転高周波電圧指令器に対応した推定値生成器10−3の実施例を紹介する。
(15)式の空間回転高周波電圧指令値を採用する場合には、電圧指令値の直交性が活用でき、ひいては、(14)式の関係は、次式のように簡略化することができる。
Figure 0006286733
(16a)式に用いたsgn関数は、(16b)式に定義しているように、1、0、−1の3値をとる符号関数である。
表現上の簡略化を図るため、次のように4x4行列を定義する。
Figure 0006286733
(16a)式を(17)式に用いると、ただちに次の(18)式を得る。
Figure 0006286733
(18)式は、空間回転高周波電圧指令値として(15)式を利用した場合の(14a)式にほかならない。すなわち、(17b)式、(18)式の左辺の4x4行列を構成する4要素は、4基本信号にほかならない。(17)式、(18)式は、「時間差分固定子電流と印加高周波電圧の極性により、(14a)式に定義した4基本信号が特定される」ことを意味する。ひいては、「特定した4基本信号に対して、(14b)式の処理を施すことにより回転子位相θγが、あるいは(14b)式に準じた処理を施すことにより回転子位相θγの相当値(以降、回転子位相相当値と呼称)が特定される」ことを意味する。
回転子位相相当値は、一般に、正相関信号pcとも呼ばれる。正相関信号は、(14b)式を一般化した(19a)式で表現され、θγが小さい領域では(19b)式の特性をもつ。
Figure 0006286733
正相関信号を合成するための関数fp()の代表的なものは、次のものである。
Figure 0006286733
Figure 0006286733
請求項1の発明の効果説明に利用した(14b)式は、上の(19)式、(20)式の特別な1場合に過ぎない。
請求項4の発明に従い、位相同期ループ(PLL)を構成して、回転子位相と速度の最終的推定値を生成することを考える。これは、正相関信号を利用した次の(21)式で記述される。
Figure 0006286733
回転子速度推定値ω2n^は、γδ準同期座標系の速度ωγをそのまま用いてもよいし、ローパスフィルタ処理して用いてもよい。(21c)式には、直接利用の場合と1次ローパスフィルタを用いる場合の2例を示した。
図7に、本発明による推定値生成器の実施例を、上位機器である位相速度推定器とともに、示した。同図における4×4行列の4要素すなわち4基本信号は、(17)式で定義されたものに対応している。また、正相関信号pcは(19)式に定義されたものに対応している。また、正相関信号pcを処理して回転子位相と速度の最終的推定値を生成する位相同期器10−4は、(21)式に忠実に従って構成されている。なお、速度推定値生成にはローパスフィルタの使用・不使用の2例がある点を考慮し、同図では、本ローパスフィルタを破線ブロックで示している。
図8は、本発明に従って構成した位相速度推定器の第2構成例である。図2の実施例との違いは、位相速度推定器の配置位置にある。図8では、位相速度推定器をαβ固定座標系上で構成する例となっている。位相速度推定器への入力ベクトル信号である固定子電流、、出力ベクトル信号である空間回転高周波電圧指令値は、ともにαβ固定座標系上で定義されたベクトル信号である。本構成は、時間差分固定子電流生成手段、空間回転高周波電圧印加手段をαβ固定座標系上で構成していることを意味している。
図8の位相速度推定器10の内部構成の1例は、図3の構成を採用することができる。時間差分器に関しては、変更は一切必要ない。空間回転高周波電圧の周期と制御周期の相対比NhをNh=4とする場合、図3における空間回転高周波電圧指令器の構成として、図6の2構成例を無修正で利用できる。
位相速度推定器の主要機器である推定値生成器10−3に関しては、図7のものをそのまま利用することはできない。図8、図3に利用可能な推定値生成器10−3の1例は、図9のように描画される。4基本信号の生成は、図7と同様である。ただし、正相関信号pcの生成は、(19)式に従うものの、Kθ=1の条件を追加することになる。すなわち、Kθ=1を満たす形で正相関信号pcを生成する必要がある。簡単には、(14b)式の右辺に従って正相関信号pcを生成すればよい。
図8、図3に対応した、さらには請求項4に基づき構成された位相同期器の1例は、図9のように構成される。すなわち、図9の位相同期器は、正相関信号と最終位相推定値との偏差信号を生成し、生成した偏差信号を−π/2から+π/2の間でモジュラ処理し、モジュラ処理信号に対して図7と同様な処理(すなわち、(21)式と同様な処理)を施し、最終的な位相推定値と速度推定値を生成している。
αβ固定座標系上で構成された位相速度推定器は、空間回転高周波電圧指令値をuvw座標系上で駆動用電圧指令値に重畳する場合にも、一般に、実質的無修正で利用可能である。この場合には、αβ固定座標系上の空間回転高周波電圧指令値を2相3相変換器を介してuvw座標系上の空間回転高周波電圧指令値に変換し、この上で重畳すればよい。
以上、本発明によるデジタル式回転子位相速度推定装置(位相速度推定器)に関し、具体的実施例を5例挙げて、これを詳しく説明した。位相速度推定器の構成法は、上記の5例に限定されるものでなく、本発明に従った紹介例以外の構成が種々存在することを指摘しておく。
図4〜図7、図9を用いた実施例は、空間回転高周波電圧の周期と制御周期の相対比Nhを4とする場合の実施例である。本発明は、相対比Nhを4以外とする場合にも、紹介の実施例と同様な位相速度推定器の構成が可能であることを指摘しておく。
デジタル式回転子位相速度推定装置の具体的説明の都合上、駆動用電動機として同期電動機としこれに関連した駆動制御装置を取り上げたが、本発明によるデジタル式回転子位相速度推定装置は、同期電動機に限定されるものでないことを重ねて指摘しておく。駆動用電動機を他の交流電動機とする駆動制御装置におけるデジタル式回転子位相速度推定装置にも、詳述した具体的実施例のものが実質そのまま利用できる。駆動用電動機を同期リラクタンス電動機、誘導電動機とする駆動制御装置と同装置内での回転子位相速度推定装置の一般的配置に関しては、例えば特許文献(新中新二:「交流電動機のベクトル制御方法及び同装置」、特許第4120775号(1902−3−18))等に説明されている。このため、この説明は省略する。
本発明は、交流電動機をセンサレス駆動する応用の中で、特に、ゼロ速度を含む速度領域で高い速応性を備えた位相推定性能を必要とする用途に好適である。
1 交流電動機(同期電動機)
2 電力変換器
3 離散時間電流検出器
4a 3相2相変換器
4b 2相3相変換器
5a ベクトル回転器
5b ベクトル回転器
6 電流制御器
7 指令変換器
8 速度制御器
9 ローパスフィルタ
10 位相速度推定器
10−1 空間回転高周波電圧指令器
10−2 時間差分器
10−3 推定値生成器
10−4 位相同期器
11 係数器
12 余弦正弦信号発生器

Claims (4)

  1. 駆動基本周波数より高い周波数の高周波電圧の印加に対し回転子が突極特性を示す交流電動機のための、電力変換器と固定子電流検出器とを用いた周期Tsの固定子電流デジタル制御機能を備えたデジタル式駆動制御装置に使用されるデジタル式回転子位相速度推定装置であって、
    Nhを3から10の整数とするとき、周期Th=Nh*Tsで空間的に回転する高周波電圧を、
    固定子電流の離散時間検出時刻と同期した形で印加するようにした空間回転高周波電圧印加手段と、
    該固定子電流検出器を用いて周期Tsで離散時間検出された、空間回転高周波電圧の印加に起因する高周波電流成分を含む固定子電流を、周期Tsごとに時間差分して、時間差分固定子電流を生成する時間差分固定子電流生成手段と、
    該時間差分固定子電流の時間的に隣接した2個のみと該空間回転高周波電圧に起因する高周波信号の前記時間差分固定子電流に対応した時間的に隣接した2個のみとを用いて、回転子位相の推定値あるいは回転子位相と基本的に微積分関係にある回転子速度の推定値の少なくとも何れかの推定値を、周期Tsごとに生成する回転子位相速度推定値生成手段と、
    を備えることを特徴とするデジタル式回転子位相速度推定装置。
  2. 回転子位相に位相偏差ゼロで同期を目指したγ軸とこれに直交したδ軸とで構成されるγδ準同期座標系上で、空間的に回転する高周波電圧を印加するようにして該空間回転高周波電圧印加手段を構成したことを特徴とする請求項1記載のデジタル式回転子位相速度推定装置。
  3. 回転子位相に位相偏差ゼロで同期を目指したγ軸とこれに直交したδ軸とで構成されるγδ準同期座標系上で、固定子電流を周期Tsごとに時間差分して、時間差分固定子電流を生成するようにして、該時間差分固定子電流生成手段を構成したことを特徴とする請求項1記載のデジタル式回転子位相速度推定装置。
  4. 位相同期ループまたは位相同期ループと等価なフィードバックループを構成するようにして、該回転子位相速度推定値生成手段を構成したことを特徴とする請求項1記載のデジタル式回転子位相速度推定装置。
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