JP6284125B2 - 垂直磁気記録媒体、垂直磁気記録媒体の製造方法、垂直記録再生装置 - Google Patents

垂直磁気記録媒体、垂直磁気記録媒体の製造方法、垂直記録再生装置 Download PDF

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本発明は、垂直磁気記録媒体、垂直磁気記録媒体の製造方法、垂直記録再生装置に関する。
近年、磁気ディスク装置、可撓性ディスク装置、磁気テープ装置等の磁気記録装置の適用範囲は著しく増大され、その重要性が増すと共に、これらの装置に用いられる磁気記録媒体について、その記録密度の著しい向上が図られつつある。特にHDD(ハードディスクドライブ)では、MR(Magneto Resistive)ヘッド、およびPRML(Partial Response Maximum Likelihood)技術の導入以来、面記録密度の上昇はさらに激しさを増し、近年ではさらにGMR(Giant Magneto Resistive)ヘッド、TuMR(Tunnel Magneto Resistive)ヘッドなども導入され、面記録密度は1年に約1.5倍ものペースで増加を続けている。
一方、HDDの磁気記録方式として、いわゆる垂直磁気記録方式が主流となっている。垂直磁気記録方式は、情報を記録する記録層の結晶粒子が基板に対して垂直方向に磁化容易軸をもっているため、面記録密度を高めるのに適している。
垂直磁気記録媒体は、非磁性基板上に軟磁性材料で構成される裏打ち層と、磁気記録層の垂直磁気異方性を制御する下地層と、垂直磁化した磁気記録層から構成するのが一般的である。
しかしながら、面記録密度の増大にともない、従来の垂直磁気記録再生方式では、その記録を"磁気(磁界)"でおこなうことによる限界がある。
高密度に記録することは、1ビット(磁気記録したデータの最少単位)の媒体上における占有面積を小さくすることに等しい。これに対応するには、磁気記録媒体の磁気記録層は粒子径や磁気クラスタをより小さくすることが求められる。粒子径や磁気クラスタを現行通りとすると、データの再生信号のSNR(Signal−to−Noise Ratio)が悪化し、十分な特性を得ることができないためである。
粒子径や磁気クラスタを小さくしていくと、熱による影響のため、記録データの保持が不安定になることが知られている(熱揺らぎ現象)。これに耐えるため高Kuを有する磁性材料を使う必要がある。しかし、高Ku材料を使った場合、磁気記録層の保磁力が増大するため、データを記録する際により高い書き込み磁界を必要とする。
一方で、記録再生ヘッド側では、記録磁界が記録素子(磁極)に使われる磁性材料によるところが大きく、このため発生させられる書き込み磁界には限界がある。
この問題を解決する案として、電界により磁気記録層にデータを記録する案が提案されている。例えば、磁気により記録する際、媒体側に電界を発生させ、磁気記録層の保磁力を低下させる方法や(例えば、特許文献1参照。)、高周波電界と磁気記録層の磁気スピンとの共鳴を利用して記録層の保磁力を下げる方法(マイクロ波アシスト記録、MAMR)がある(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、前者では、磁気記録装置内で磁気記録媒体側をアーシングする必要がある上、磁界と電界を同時に発生・制御するためヘッドの構造が複雑になる問題がある。後者は、ヘッドに高周波磁界の発生機構を組み込むため構造がより複雑になるという問題がある。
その他、強誘電体を記録層として用いることで、磁気による記録再生ではなく電界によりデータを記録再生する方式も提案されている(例えば、特許文献3参照。)。この方式によれば、記録媒体にデータを書き込む際に電圧のみを印加すれば良く、またデータの再生も電界で行うため、記録再生素子を磁性材料ではなく導電性の探針と磁界を発生させるコイルにより構成することができ、書き込みの能力の限界は解消される。しかしながらこの方式では、磁気記録方式に比べて、局在した分極の不安定性や記録再生速度が遅いといった問題がある。
近年、新しい材料として、磁性と誘電性を併せ持つ材料が研究されている。中でも強磁性と強誘電性を併せ持つマルチフェロイック材料が注目されている。マルチフェロイック材料としては、例えば、磁性を有する強誘電材料であるBiFeO3、及び、BiをBa、FeをMnで置換した材料が知られている。これらの材料を従来の磁性材料からなる磁気記録層に組み込むことで、電界により書き込みを行い、磁界により再生を行う技術が報告されている(例えば、非特許文献1〜3参照)。
磁性と誘電性を併せ持つ材料を用いた磁気記録媒体は、電界による書き込みが可能であるため、電界を発生する書き込み素子の小形化により高記録密度を実現できる可能性を有している。
特開2006−139854号公報 特開2007−265512号公報 特開2008−219007号公報
第60回応用物理学会春季学術講演会講演予稿集、28a−D3−8、pp.06−017(2013年) 第37回 日本磁気学会学術講演会概要集、3aC−6、pp.41(2013) The 58th Annual Magnetism and Magnetic Materials (MMM) Conference, Abstract, FS−15, p.587 (2013)
しかしながら、磁性と誘電性を併せ持つ材料を用いて垂直磁気記録媒体を作製した場合、記録再生時にノイズが発生し、SNRを十分に高くすることが困難であるという問題があった。
本発明は、上記従来技術が有する問題に鑑み、SNRに優れた記録再生特性を有する垂直磁気記録媒体を提供することを目的とする。
本発明は、非磁性基板上に、少なくとも一層の下地層と、垂直記録層と、を有しており、
前記垂直記録層は、
磁性結晶粒子及び該磁性結晶粒子を取り囲む非磁性粒界領域を有する強磁性層と、
磁性及び誘電性を併せ持ち、結晶粒子及び前記結晶粒子を取り囲む非晶質粒界領域を有する誘電磁性層と、を有し、
前記磁性結晶粒子は、Feと、Ptと、を含む垂直磁気記録媒体を提供する。
本発明によれば、SNRに優れた記録再生特性を有する垂直磁気記録媒体を提供できる。
本発明の第1の実施形態に係る垂直磁気記録媒体の断面模式図。 本発明の第1の実施形態に係る垂直磁気記録媒体の垂直記録層の断面模式図。 本発明の第2の実施形態に係る垂直記録再生装置を表す模式図。
以下、本発明を実施するための形態について説明するが、本発明は、下記の実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、下記の実施形態に種々の変形および置換を加えることができる。
[第1の実施態様]
本実施形態の垂直磁気記録媒体の構成例について説明する。
本実施形態の垂直磁気記録媒体は、非磁性基板上に、少なくとも一層の下地層と、垂直記録層と、を有している。そして、垂直記録層は、磁性結晶粒子及び該磁性結晶粒子を取り囲む非磁性粒界領域を有する強磁性層と、磁性及び誘電性を併せ持ち、結晶粒子及び結晶粒子を取り囲む非晶質粒界領域を有する誘電磁性層と、を有することができる。また、磁性結晶粒子は、Feと、Ptと、を含むことが好ましい。
上述のように従来、磁性と誘電性を併せ持つ材料を用いて垂直磁気記録媒体を作製すると、記録再生時にノイズが発生し、SNRを十分に高くすることができなかった。
そこで、本発明の発明者らがSNRを十分に高めることができなかった理由について検討を行った。
まず、磁性と誘電性を併せ持つ材料として既述のようにマルチフェロイック材料が知られている。これらの材料は酸素を含んだペロブスカイト構造等を取る場合が多く、構造が複雑であり特性発現には結晶性が重要な因子となる他、成膜が難しいため組成の化学量論比からのずれや酸素欠損等を起こしやすい。そして、これらの構造上の欠陥は、本発明の発明者らの検討によると磁気ヘッドによる情報の読み込みに際してノイズの発生原因となる。また、磁性と誘電性を併せ持つ材料では結晶性を向上させると、結晶粒の肥大化が著しい。このため平滑な媒体表面が得られにくく、ヘッドの飛行を不安定にさせる他、酸素欠損や肥大化した結晶粒による構造上の欠陥は、磁気ヘッドを用いた情報の読み込みに際して磁気ノイズの発生原因となることが明らかになった。
本発明の発明者らは上記課題を解決すべく検討を行った。その結果、非磁性基板上に少なくとも一層の下地層と、垂直記録層と、を有する垂直磁気記録媒体において、垂直記録層が、磁性結晶粒子及び該磁性結晶粒子を取り囲む非磁性粒界領域を有する、いわゆるグラニュラー構造の強磁性層と、磁性及び誘電性を併せ持ち、結晶粒子及び結晶粒子を取り囲む非晶質粒界領域を有するグラニュラー構造の誘電磁性層と、を有する構造とすることが好ましいことを見出した。このように、誘電磁性層を結晶粒子及び結晶粒子を取り囲む非晶質粒界領域を有する構造とすることにより、誘電磁性層のノイズを低減可能となりSNRに優れた記録再生特性が得られることを見出し本発明を完成させた。
すなわち、垂直記録層がグラニュラー構造の誘電磁性層を有することにより、誘電磁性層の結晶粒の肥大化抑制と粒径の均一化(径分散の減少)が生じ、SNRに優れた記録再生特性が得られる。
また、誘電磁性層がグラニュラー構造を有するため誘電磁性層の結晶粒子の結晶粒径も小さくでき、誘電磁性層の表面が滑らかになる。これにより記録再生ヘッドの飛行が安定してスペーシングロスを低減可能となり、SNRに優れた記録再生特性が得られることを見出した。
図1(a)〜(d)に本実施形態に係る垂直磁気記録媒体の構成例を表す断面模式図を示す。
図1(a)に示した垂直磁気記録媒体10Aは、例えば、非磁性基板11上に下地層12、垂直記録層13を有する構造とすることができる。そして、垂直記録層13は、強磁性層131と、誘電磁性層132と、を含むことができる。この際、強磁性層131と、誘電磁性層132の積層順は特に限定されるものではなく、例えば図1(b)に示した垂直磁気記録媒体10Bのように、誘電磁性層132、強磁性層131の順に積層されていてもよい。また、図1(c)に示した垂直磁気記録媒体10Cのように、強磁性層(131A〜131C)、誘電磁性層(132A〜132C)が複数層積層されていてもよい。なお、図1(c)に示した垂直磁気記録媒体10Cにおいて、強磁性層、誘電磁性層の積層順は限定されるものではなく、任意の順番に積層することができる。
また、図1(a)〜(c)に示したように、最表面には、保護層14を配置することもできる。
垂直磁気記録媒体においては、非磁性基板11上に、下地層12、垂直記録層13に限定されず、他の層を含む形態とすることもできる。例えば、図1(d)に示すように、非磁性基板11と、下地層12との間には、密着層15および/または裏打ち層16を配置することができる。また、上述の層以外にも任意の層を配置することもできる。
以下に各層について説明する。
(非磁性基板)
非磁性基板11としては非磁性の基板であれば特に限定されず任意の基板を用いることができるが、耐熱性を備えた基板であることが望ましい。例えば、通常のソーダガラス、アルミノシリケート系ガラス、アモルファスガラス類、シリコン、チタン、セラミックス、サファイア、石英から選択されたいずれかの材料からなる基板等を用いることができる。
(密着層)
密着層15は、非磁性基板11の表面を平滑化して、非磁性基板11と下地層12との密着性を高めると共に、非磁性基板11からのアルカリ性イオンが下地層12に拡散して、下地層12が腐食するのを防ぐことができる。
密着層15としては、非磁性金属材料を使うことができるが、アモルファス構造であることが望ましい。アモルファス構造とすることで、緻密な構造となり非磁性基板11からのアルカリ性イオンの拡散を防ぐ作用が優れる他、表面粗さ(Ra)を低く保つことができるため、ヘッドの浮上量を低減することが可能となり、さらなる高記録密度化が可能となるためである。このような材料としては例えば、CrTi、NiTa、AlTi合金等を好ましく用いることができる。
(裏打ち層)
裏打ち層(軟磁性裏打ち層)16は、垂直記録層13の磁化の方向をより強固に非磁性基板11と垂直な方向に固定し、再生信号を安定化させることができる。
裏打ち層16は軟磁性材料から構成することが好ましい。例えば、裏打ち層16の材料としてはCoFe系合金(CoFeTaZr、CoFeZrNb、CoFeB等)、FeCo合金(FeCo、FeCoV等)、CoZr系合金(CoZr、CoZrNb等)、CoTa系合金(CoTa、CoTaZr等)、FeB系合金等の軟磁気特性を有する材料を好ましく用いることができる。
裏打ち層16は、アモルファス構造を有することが特に好ましい。裏打ち層16がアモルファス構造を有することで、垂直磁気記録媒体表面の表面粗さ(Ra)が大きくなることを防ぎ、ヘッドの浮上量をさらに低減することが可能となり、さらなる高記録密度化が可能となるためである。また、裏打ち層16の構造としては、軟磁性層単層の場合に限定されるものではない。例えば、2層の軟磁性層間にRuなどの極薄い非磁性薄膜を挟み、軟磁性層間に反強磁性結合を持たせた構造とすることもでき、このように軟磁性層を複数層含む形態がより好ましい。
裏打ち層16の保磁力(Hc)は特に限定されないが、100Oe以下とすることが好ましく、20Oe以下とすることがより好ましい。なお1Oeは79A/mである。裏打ち層16の保磁力(Hc)が上記範囲にある場合、より確実に再生波形をいわゆる矩形波に保つことができ、好ましいためである。
裏打ち層16の飽和磁束密度(Bs)は特に限定されないが、0.6T以上であることが好ましく、1T以上であることがより好ましい。飽和磁束密度(Bs)が上記範囲にある場合、より確実に再生波形を矩形波に保つことができ好ましいためである。
また、裏打ち層16の飽和磁束密度(Bs)と裏打ち層16の膜厚との積(Bs・T)が15Tnm以上であることが好ましく、25Tnm以上であることがより好ましい。裏打ち層16の飽和磁束密度と、膜厚との積(Bs・T)が上記範囲であると、より確実に再生波形をいわゆる矩形波に保つことができるためである。
裏打ち層16は、外部から磁界を印加しない状態で、非磁性基板11の表面と平行かつ半径方向に磁化が向いていることが好ましい。裏打ち層16の磁化方向が制約されることで、再生時におけるいわゆるスパイクノイズを特に抑制することができるためである。
外部から磁界を印加しない状態で、非磁性基板の表面と平行かつ半径方向に裏打ち層16の磁化が向いた構造とするため、裏打ち層16は例えば、2層の軟磁性層の間に非磁性金属膜を設けた積層構造を有することが好ましい。そして、上下の軟磁性層間に磁気的な結合(バイアス磁界HBias)を発生させることで実現できる。
また、裏打ち層16は、導電体であることが好ましい。これにより、データの書き込み時に電界を印加した際、裏打ち層16が対電極の働きをするため、垂直記録層13に印加される電界の面積を狭くすることができる。これにより一ビットの占有面積を小さくなり、記録密度を増大させることができる。
なお、裏打ち層16を絶縁体とした場合には、チャージアップにより電界によりデータを書き込む際、垂直記録層13に印加される電界の面積が広がってしまい、記録密度を低下させてしまう場合がある。このため、上述のように裏打ち層16は導電体とすることが好ましい。
(下地層)
本実施形態の垂直磁気記録媒体においては、少なくとも直上の膜の垂直磁気異方性を制御できる下地層12を設けることができる。下地層12は例えば垂直記録層の配向性を制御することができる。
下地層12は、既述のように非磁性基板11上に設けられており、非磁性基板11と下地層12との間には、例えば密着層15や裏打ち層16等を配置することもできる。
下地層12の材料としては特に限定されないが、強磁性層131をL1構造を有する合金を主成分とするために適した構成とすることが望ましい。このため、下地層12の材料としては、例えばfcc構造(面心立方構造)やbcc構造(体心立方格子)を有する非磁性材料、アモルファスあるいは微結晶構造を有する非磁性材料を好ましく用いることができる。また、hcp構造(六方最密充填構造)を有する非磁性材料も用いることができる。
fcc構造を有する非磁性材料としては、例えばNi、Pt、Pd、Ti、Ni系合金(NiNb系合金、NiTa系合金、NiV系合金、NiW系合金、NiPt系合金、NiCr系合金等)、Pt系合金(PtCr系合金等)、CoPd系合金、AlTi系合金、MgO、Mg系合金等が挙げられる。下地層12がfcc構造を有する非磁性材料の場合、強磁性層131に大きな垂直磁気異方性を持たせるための(001)配向面が基板面に平行であるL1構造をとらせるためには、下地層12は(100)配向面が基板面に平行していることが望ましい
bcc構造を有する非磁性材料としては、例えばCrやCrTi、CrMo、CrV、CrMnなどのCr系合金、AlNi、AlRuなどのAl系合金等があげられる。下地層12がbcc構造を有する非磁性材料の場合、強磁性層131に大きな垂直磁気異方性を持たせるための(001)配向面が基板面に平行であるL1構造をとらせるためには、下地層12は(100)配向面が基板面に平行していることが望ましい
hcp構造を有する非磁性材料としては、例えばRu、Re、CoCr系合金、RuCo系合金等が挙げられる。下地層12がhcp構造を有する非磁性材料の場合、強磁性層131に大きな垂直磁気異方性を持たせるための(001)配向面が基板面に平行であるL1構造をとらせるためには、下地層12は(110)配向面が基板面に平行していることが望ましい。
アモルファスあるいは微結晶構造を有する非磁性材料としては、例えばTa、Hf、Zrあるいはこれらを主成分とする合金、PdSi系合金、CrB系合金、CoB系合金等が挙げられる。
下地層12は単層構造に限定されるものではなく、多層構造とすることもできる。これにより強磁性層131のL1構造かつ(001)面配向をより強くすることができる。
下地層12を多層構造とする場合、下地層12に含まれる各層の構成は特に限定されるものではない。例えば下地層12は、NiW系合金のようなfcc構造を有する微結晶構造の層の上に、PtあるいはPt系合金などのfcc構造を有する非磁性材料の層を配置した構造とすることができる。この場合、下地層12の結晶配向性が強くなり、強磁性層131のL1構造かつ(001)面配向がより強くなるため好ましい。
また、例えば下地層12は、Cr系合金のようなbcc構造を有する非磁性材料を(100)面が基板面に平行となるように層を形成し、その上にRuあるいはRu系合金などのhcp構造を有する非磁性材料の層を配置した構造とすることもできる。このような構造とすることで、hcp構造の(110)面配向がより強くなり、強磁性層131のL1構造かつ(001)面配向がより強くなるため好ましい。
特に下地層12を多層とし、垂直記録層13側にMgOを主成分とする非磁性材料の層を設けることで強磁性層131のL1構造かつ(001)面配向や結晶性を特に高めることができるため、より好ましい。この場合、MgOは(100)配向面が基板面に平行であることが望ましい。垂直記録層13側にMgOを主成分とする非磁性材料の層を設けた構成例としては、例えばCr(100)層の上にMgO(100)層を積層した構成や、NiTa(100)層の上にRu(110)層、MgO(100)層の順で積層した構成などを挙げることができる。
下地層12として、下地層12を構成する材料に酸化物を添加した材料により構成することができる。具体的には、Ru−Si酸化物、Ru−B酸化物、Ru−Ti酸化物、Pt−Si酸化物、Pt−Cr酸化物、Pt−W酸化物、Ni−Ta酸化物、Pd−Ti酸化物、CrMo−Ti酸化物、Ti−Si酸化物、AlTi−Cr酸化物などである。
下地層12の厚さは特に限定されないが、5nm以上40nm以下とするのが好ましく、10nm以上30nm以下とすることがより好ましい。下地層12の厚さを係る範囲とすることで、垂直記録層13の磁化の垂直磁気異方性を特に強くすることができ、再生信号の分解能をより高めることができるためである。
下地層12の厚さを、5nm以上とすることにより、垂直記録層13の結晶配向性をより高め、電磁変換特性も高めることができる。また、下地層12の厚さを40nm以下とすることにより、垂直記録層13の粒子径をより適切なサイズとすることができるため、再生信号のノイズを抑制し、分解能を十分に高めることができ、電磁変換特性を高めることができる。
また、下地層12は、導電体であることが好ましい。これにより、データの書き込み時に電界を印加した際、下地層12が対電極の働きをするため、垂直記録層に印加される電界の面積を狭くすることができる。これにより一ビットの占有面積を小さくなり、記録密度を増大させることができる。下地層12を絶縁体とした場合には、チャージアップにより電界によりデータを書き込む際、垂直記録層に印加される電界の面積が広がってしまい、記録密度を低下させてしまう場合があるため好ましくない。
(垂直記録層)
上述のように、本実施形態の垂直磁気記録媒体において垂直記録層13は、強磁性層131と、磁性と誘電性を併せ持つ誘電磁性層132と、を有することができる。
まず、強磁性層131について説明する。
強磁性層131は、誘電磁性層132と同様にグラニュラー構造を有する。具体的には、磁性結晶粒子及び該磁性結晶粒子を取り囲む非磁性粒界領域を有する構造とする。
このため、強磁性層131の強磁性材料としては、磁性結晶粒子が、非磁性粒界領域中に分散した構造(グラニュラー構造)にできる材料を用いる。
磁性結晶粒子は、Feと、Ptと、を含み、(001)面が基板面に平行な配向を有していることが好ましく、さらにL1の規則化合金であることがより好ましい。
強磁性層131に含まれる磁性結晶粒子をFePtを主成分としたL1規則化合金とすることで、一般的なCoCrPt系の磁性材料よりも磁気異方性定数(Ku)を大きくでき、熱揺らぎを抑制できる。このため、FePtを主成分としたL1規則化合金は、1ビットあたりの占有面積を小さくしなければならない、より高密度な記録に適した材料である。
FeとPtとの規則化合金としては例えば、50Fe−50Pt<L1型>などが挙げられる。
FeとPtとの規則化合金の場合Ptの含有量は特に限定されず、規則化合金を得る上で最適な含有量とすることが好ましい。
規則化合金の製造方法は特に限定されないが、例えば上述した組成を有するターゲットにより成膜することができる。また、成膜する際、下地層12としては上述のように特に限定されないが、RuやReの他に、Cr、MgOとPtの順で形成した3層、またはTaとPtの順で形成した2層とすることでより大きい磁気異方性定数(Ku)を得ることができ好ましい。
そして、強磁性層131の材料としては、例えば、上述した磁性結晶粒子(磁性合金)の原料となる物質に、酸化物、窒化物、炭素系材料から選択された1種類以上の材料を添加した材料を好ましく用いることができる。なお、後述のように、酸化物、窒化物、炭素系材料から選択された1種類以上の材料は磁性結晶粒子を囲むように非磁性粒界領域を形成することができる。このため、非磁性粒界領域は酸化物、窒化物、炭素系材料から選択された1種類以上の材料を含有することが好ましい。
磁性結晶粒子の原料となる物質に酸化物を添加する場合、酸化物としては例えば、Si酸化物、Ti酸化物、W酸化物、Cr酸化物、Co酸化物、Ta酸化物、B酸化物、Mg酸化物、Ce酸化物、Y酸化物、Ni酸化物、Al酸化物およびRu酸化物から選択される1種以上を好適に用いることができる。
磁性結晶粒子の原料となる物質に酸化物を添加した強磁性層131の材料としては、例えばFePt−Si酸化物、FePt−Ti酸化物、FePt−W酸化物、FePt−Cr酸化物、FePt−Co酸化物、FePt−Ta酸化物、FePt−B酸化物、FePt−Ru酸化物、などを挙げることができる。
磁性結晶粒子の原料となる物質に窒化物を添加する場合、窒化物としては例えば、Si窒化物、Ti窒化物、Cr窒化物、Ta窒化物、B窒化物、Al窒化物から選択される1種以上を好適に用いることができる。
磁性結晶粒子の原料となる物質に窒化物を添加した強磁性層131の材料としては、例えばFePt−Si窒化物、FePt−Ti窒化物、FePt−Cr窒化物、FePt−Ta窒化物、FePt−B窒化物、などを挙げることができる。
磁性結晶粒子の原料となる物質に炭素系材料を添加する場合、炭素系材料としては、単体の炭素の他、Si炭化物、Ta炭化物、Cr炭化物、B炭化物、V炭化物、W炭化物などのカーバイト系材料から選択される1種以上を好適に用いることができる。
磁性結晶粒子の原料となる物質に炭素系材料を添加した強磁性層131の材料としては、例えばFePt−C、FePt−Si炭化物、FePt−Ta炭化物、FePt−Cr炭化物、FePt−B炭化物、FePt−V炭化物、FePt−W炭化物などを挙げることができる。
なお、ここでは、強磁性層131の材料として磁性結晶粒子に、酸化物、窒化物、炭素系材料のいずれかを1種類添加した例を挙げたが、上述のように酸化物、窒化物、炭素系材料から選択された材料を同時に2種類以上添加することも可能である。
強磁性層131に含まれる磁性結晶粒子の平均粒径は、3nm以上12nm以下であることが好ましく、3nm以上8nm以下であることがより好ましい。磁性結晶粒子の平均粒径は、平面TEM観察像を用いて算出することができ、例えば、TEMの観察画像から、200個の粒子について粒径(円相当径)を測定し、積算値50%での粒径を平均粒径とすることができる。
磁性結晶粒子の平均粒径は、熱的な安定性を得るために上記範囲であることが好ましい。これは、磁性結晶粒子の平均粒径を3nm以上とすることにより、熱揺らぎによる影響を抑制し、データをより確実に維持することができ好ましいためである。また、磁性結晶粒子の平均粒径を12nm以下とすることにより、1ビットあたりの粒子数を十分に確保し、再生時のSNRを高めることができるため好ましい。
強磁性層131の中に酸化物、窒化物、炭素系材料から選択された1種類以上の材料(以下、「酸化物等の添加材料」とも記載する)を添加した場合、酸化物等の添加材料の含有量は、強磁性層131中の酸化物等の添加材料以外の組成を一つの化合物として算出したmol総量に対して、3mol%以上18mol%以下が好ましい。特に、6mol%以上12mol%以下がより好ましい。酸化物等の添加材料の含有量が上記範囲にある場合、強磁性層を形成した際、磁性結晶粒子の周りに酸化物等の添加材料が析出し、層全体に渡ってより均一に磁性結晶粒子の孤立化、微細化を達成できるため好ましい。強磁性層131の中に存在する酸化物等の添加材料の含有量を18mol%以下とすることにより、酸化物等の添加材料が磁性結晶粒子内に残留することや、磁性結晶粒子の上下に酸化物等の添加材料が析出することを抑制し、強磁性層131の配向性や結晶性を十分に保つことができるため好ましい。また、酸化物等の添加材料の含有量を3mol%以上とすることにより、磁性結晶粒子を十分に分離、微細化することができ、電磁変換特性の劣化を抑制することができるため好ましい。
磁性結晶粒子は上述のようにFeとPtとを含む。そして、強磁性層131に含まれる磁性結晶粒子中のPt含有量は40at%以上60at%以下であることが好ましく、45at%以上55at%以下であることがより好ましい。Pt含有量が上記範囲であることにより、L1規則度の高いFePt相が得られ易く、高密度記録に適した電磁変換特性が得られるため好ましい。
Ptの含有量が40at%未満の場合、磁性結晶粒子中にFe成分が多く、L1の規則性の低い相が生成し易くなる。そして、L1の規則性の低い相が生成すると、磁性結晶粒子全体のKuが下がり、熱的な安定性が悪くなるほか、層中の磁性結晶粒子間の磁気特性にバラつきが生じやすくなる。このため、ノイズが高くなる要因となるため好ましくない。
また、Ptの含有量が60at%を超えると、磁性結晶粒子中に積層欠陥が多くなることでL1の規則度が下がる恐れがあり、L1の規則度が下がると磁性結晶粒子全体のKuが下がり、熱的な安定性が悪くなるため好ましくない。
強磁性層131の材料は、磁性結晶粒子及び例えば上述の酸化物、窒化物、炭素系材料等の他にCu、Ag、Ni、Cr、Si、B、Ta、Mo、Nd、W、Nb、Sm、Tb、Ru、Reから選ばれる1種類以上の元素を含むことができる。上記元素を含むことにより、磁性結晶粒子の微細化を促進、あるいは結晶性や配向性を向上させることができ、より高密度記録に適した電磁変換特性を得ることができる。
上述のようにCu等から選択される1種類以上の元素を添加する場合、上記元素の含有量の合計は、強磁性層131に含まれる物質について18at%以下であることが好ましい。これは、18at%以下とすることにより、L1の規則化度を妨げることなく、電磁変換特性の劣化を特に抑制することができるためである。上記元素の含有量は8at%以下とすることが電磁変換特性の劣化をさらに抑制する観点からより好ましい。
ここまで強磁性層131について説明してきたが、強磁性層131は1層に限定されるものではなく、2層以上の多層構造としてもよい。
なお、垂直記録層13に含まれる強磁性層131の総膜厚は3nm以上12nm以下であることが好ましく、5nm以上7nm以下であることがより好ましい。
強磁性層131は、導電体であることが好ましい。これにより、データの書き込み時に電界を印加した際、強磁性層131が電界を引き込むことで拡散を抑える働きをするため、垂直記録層に印加される電界の面積を狭くすることができる。これにより一ビットの占有面積が小さくなり、記録密度を増大させることができる。
次に誘電磁性層について説明する。
誘電磁性層132は、磁性及び誘電性を併せ持っている。
なお、ここでいう磁性とは強磁性(硬磁性又は軟磁性)又は反磁性のことを意味している。
そして、誘電磁性層132は、強磁性と誘電性又は強誘電性を持っていることが好ましく、強磁性と強誘電性を持っていることがより好ましい。
誘電磁性層132を構成する材料は特に限定されるものではないが、誘電磁性層は、(Bi1−aBa)FeOを含むことが好ましい。この場合、置換率aは0.05≦a≦0.8を満たすことが好ましく、置換率aを係る範囲とすることにより、特に好適な強磁性と強誘電性を併せ持つ材料とすることができる。置換率aは0.1≦a≦0.5を満たすことがより好ましい。
BiFeOは誘電性材料として知られているが、BiFeOの材料のBiの一部をBaで置換することで、特に好適な強磁性と誘電性を発現する。この場合の置換率aを、0.05以上0.8以下の範囲内とすることで、上述のように特に好適な強磁性と強誘電性を併せ持つ好適な材料を形成できる。(Bi1−aBa)FeOを含む誘電磁性層132の成膜方法は特に限定されないが、例えば、上記組成と同一組成材料のターゲットを用いたスパッタリング法により形成できる。ただし、成膜した膜の酸素欠損を防ぐため、酸素濃度を高めたターゲットを用いることが好ましい。
また、誘電磁性層132は、Bi(Fe1−bMn)Oを含むことができる。この場合、置換率bは0.01≦b≦0.5を満たすことが好ましく、置換率bを係る範囲とすることにより特に好適な強磁性と強誘電性を併せ持つ材料とすることができる。前述のように、BiFeOは誘電磁性材料として知られているが、この材料のFeの一部をMnで置換することで、強磁性と誘電性を発現するが、置換率bを0.01以上0.5以下とすることで、より好適な強磁性と強誘電性を併せ持つ材料を形成できる。置換率bは0.05≦b≦0.4を満たすことがより好ましい。
Bi(Fe1−bMn)O(0.01≦b≦0.5)を含む誘電磁性層132の成膜方法は特に限定されないが、例えば、上記組成と同一組成材料のターゲットを用いたスパッタリング法により形成できる。ただし、成膜した膜の酸素欠損を防ぐため、酸素濃度を高めたターゲットを用いることが好ましい。
誘電磁性層132は、(Bi1−a―cBaLa)(Fe1−bMn)Oを含むことができる。この場合の置換率aは0≦a≦0.8、bは0.01≦b≦0.5、cは0≦c≦0.8、かつ0.05≦a+c≦0.8を満たすことが好ましく、係る範囲とすることにより特に好適な強磁性と強誘電性を併せ持つ材料を形成することができる。置換率a、b、cは、0.1≦a+c≦0.5、0.05≦b≦0.4、を満たすことがより好ましい。
また、誘電磁性層132は、(Bi1−a−cBaLa)(Fe1−b−dMnTi)Oを含むことができる。この場合の置換率a、b、c、dは、0≦a≦0.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.8、0.01≦d≦0.5、かつ0≦a+c≦0.8、0.01≦b+d≦0.5とすることが好ましい。係る範囲とすることにより特に好適な強磁性と強誘電性を併せ持つ材料を形成することができる。置換率a、b、c、dは、0.1≦a+c≦0.5、0.05≦b+d≦0.4とすることがより好ましい。
また、誘電磁性層132は、(Bi1−cLa)FeOを含むことができる。この場合の置換率cは、0.01≦c≦0.8とすることが好ましく、係る範囲とすることにより特に好適な強磁性と強誘電性を併せ持つ材料を形成することができる。
また、誘電磁性層132は、M−Fe−O系、M−Fe−Mn−O系、M−Co−O系、M−Ni−O系、M−Co−Fe−O系、M−Fe−Ni−O系、M−Co−Mn−O系、M−Ni−Mn−O系、M−V−O系(Mは、希土類元素、Bi、Y、アルカリ土類元素の中から選択された1種類以上の元素)等を含むことができる。例えば、BiLaFeO、BiNdMnO、BiFeCoO、BiPrFeOなどである。
誘電磁性層132で使用する材料は、既述のように反磁性特性と誘電特性を有する材料でも構わない。その場合、書き込んだデータ列と再生時のデータ列の極性が逆になることを注意すればよい。
誘電磁性層132の膜厚は特に限定されないが、50nm以下であることが好ましい。誘電磁性層132の厚さを50nm以下とすることにより、誘電磁性層132内の結晶粒の肥大化を抑制することができ、誘電磁性層132の表面粗さを小さくすることができる。このため、得られた磁気記録媒体の表面形状を平滑にできるため、ヘッドの飛行高さを低くすることができ、電磁変換特性を向上させることができる。
誘電磁性層132の膜厚は20nm以下とするのがさらに好ましい。特に誘電磁性層132を垂直磁気記録媒体の表層側に設けた構成とする場合、誘電磁性層132の厚さ分だけ強磁性層131とヘッドの再生素子との距離が離れることとなる。このため、ヘッドと強磁性層131との間の距離を十分短くするために上記範囲とすることがより好ましい。
誘電磁性層の膜厚の下限値は特に限定されるものではないが、例えば2nm以上であることが好ましく、3nm以上であることがより好ましい。2nm以上であれば、誘電磁性層を形成した際、層中に結晶粒子が形成されやすくなるため好ましい。
誘電磁性層132に含まれる結晶粒子の平均粒径は特に限定されるものではないが、結晶粒子が十分な誘電特性および磁性特性を得るため3nm以上12nm以下が好ましい。結晶粒子の平均粒径(平均結晶粒子径)は平面TEM観察像を用いて算出することができる。平面TEM観察像による結晶粒子の平均粒径の算出は既述の方法により行うことができる。
結晶粒子の平均粒径を12nm以下とすることにより、1ビットあたりの粒子数を十分に確保でき再生時のSNRを高めることができるため好ましい。
そして、誘電磁性層132は既述のように、誘電磁性層が、結晶粒子及び該結晶粒子を取り囲む非晶質粒界領域を有することが好ましい。
また、強磁性層131を構成する粒子と、誘電磁性層132を構成する粒子とが、厚み方向に連続した柱状結晶(柱状構造)を構成することが好ましい。具体的な構成例を図2を用いて説明する。図2は、強磁性層131と、誘電磁性層132と、を積層した構造を模式的に示したものであり、積層順番は係る形態に限定されるものではない。なお、その他の層については記載を省略している。図2に示すように、強磁性層131の磁性結晶粒子1312と、誘電磁性層132の結晶粒子1322とが厚み方向に連続した柱状結晶を構成していることが好ましい。
磁性結晶粒子1312と、結晶粒子1322と、が柱状結晶を形成することで、誘電磁性層132の結晶粒の結晶性を高めることが可能となり、また、結晶粒径を下げることが可能となるので、SNRの優れた磁性層を構成することが可能となる。
既述のように、本実施形態の垂直磁気記録媒体では、強磁性層131もグラニュラー構造とする。強磁性層131がグラニュラー構造を有する場合、誘電磁性層132を強磁性層131と積層することにより、強磁性層及び誘電磁性層を構成する粒子が厚み方向に連続した柱状結晶を構成しやすくなる。また、各層の結晶粒子の結晶粒径を下げることが可能となる。
本実施形態の垂直磁気記録媒体の垂直記録層13は強磁性層131と誘電磁性層132とを含んでおり、強磁性層131と、誘電磁性層132との積層により構成することができる。なお、垂直記録層13に含まれる、強磁性層131、誘電磁性層132の層数は特に限定されるものではない。例えば、図1(c)に示したように垂直記録層13は、2層以上の強磁性層131と、2層以上の誘電磁性層132と、が積層した構造を有することもできる。また、一方を単層とし他方のみを複数層設けたような構造でも構わない。また、垂直記録層13を強磁性層131と誘電磁性層132とをそれぞれ一層ずつ含むように構成することもできる。
また、強磁性層131と誘電磁性層132の積層順については特に限定されるものではない。例えば、強磁性層131を非磁性基板11側に配置しその上面に誘電磁性層132を積層することができる。この場合、強磁性層131が磁性結晶粒子1312及び非磁性粒界領域1311を含むグラニュラー構造を有していることが好ましい。強磁性層131がかかる構造を有している場合、磁性結晶粒子1312及び非磁性粒界領域1311それぞれの上に、誘電磁性層132の結晶粒子1322と非晶質粒界領域1321とを容易に成長させることができる。このため、誘電磁性層132も容易にグラニュラー構造とすることができる。係る構造とすることにより、誘電磁性層132のノイズを抑えることができ、電磁変換特性が向上する。また、下地層12による配向制御の効果により強磁性層131の結晶性及び配向性が向上するため、誘電磁性層132の結晶性及び配向性も向上し結果としてさらに電磁変換特性が向上する効果が得られる。
また、強磁性層131が非磁性基板11側にあることで、電界によりデータを書き込む際の対電極の働きをするため、垂直記録層に印加される電界の面積を狭くすることができる。これにより一ビットの占有面積を小さくなり、記録密度を増大させることができる。
また、誘電磁性層132が表層側にあることで、記録再生ヘッドとの物理的な距離が近くなる上、前記誘電磁性層132のグラニュラー化の効果により結晶粒子径の増大が抑えられる。このため、垂直磁気記録媒体の表面を平坦にすることができ、より記録再生ヘッドに設けた電界書き込み素子と誘電磁性層132との距離が近くできることから、誘電磁性層132への書き込みが容易となることで、垂直磁気記録媒体の高記録密度化が容易となる。
一方で誘電磁性層132を非磁性基板11側とすることもできる。例えば、下地層12の垂直記録層13側にグラニュラー構造をもった配向調整層を設けることで、強磁性層131のグラニュラー構造と同じ効果をえることができる。すなわち、粒子を囲むように粒界層が形成された配向調整層により、配向調整層中の結晶性の粒子の上に誘電磁性層132の結晶粒子が、配向調整層中の非晶質性の粒界層の上には誘電磁性層132の非晶質構造が成長することができる。このため、この場合も誘電磁性層132をグラニュラー構造とすることができる。
配向調整層の構成は特に限定されないが、例えば下地層12を構成する材料に酸化物を添加した材料により構成することができる。具体的には、Ru−Si酸化物、Ru−B酸化物、Ru−Ti酸化物、Pt−Si酸化物、Pt−Cr酸化物、Pt−W酸化物、Ni−Ta酸化物、Pd−Ti酸化物、CrMo−Ti酸化物、Ti−Si酸化物、AlTi−Cr酸化物などである。
さらに、誘電磁性層132中の結晶粒子1322の上に強磁性層131中の磁性結晶粒子1312が、誘電磁性層132中の非晶質粒界領域1321の上に強磁性層131中の非磁性粒界領域1311が成長することができる。このため、垂直記録層の粒子の肥大化を抑制し、均一性を維持することができ、結果として電磁変換特性が向上する効果が得られる。
また、強磁性層131が表層側にあることで、記録再生ヘッドとの物理的な距離が近くなり、再生時の信号出力が大きくでき、SNRが良好な再生信号が得られる。
さらに電界によりデータを書き込む際、電界は強磁性層131の中を通って誘電磁性層132に印加される。この時、強磁性層131が表面側にあることで電界の広がり抑制することができ、さらに下地層12の対電極効果と相まって、垂直記録層に印加される電界の面積をより狭くすることができる。これにより一ビットの占有面積を小さくなり、より記録密度を増大させることができる。
(保護層)
保護層14は記録再生ヘッドと垂直磁気記録媒体との接触によるダメージから垂直磁気記録媒体を保護するためのものである。保護層14の構成は特に限定されるものではないが、保護層14としては例えばカーボン膜、SiO膜などを用いることができ、カーボン膜を好ましく用いることができる。保護層14の形成方法は特に限定されるものではないが、例えばスパッタリング法、プラズマCVD法、イオンビーム法などにより形成することができる。特にイオンビーム法を好ましく用いることができる。保護層14の膜厚についても特に限定されないが、1nm以上10nm以下とすることが好ましく、1.5nm以上5nm以下であることがより好ましい。
次に、本実施形態の垂直磁気記録媒体の製造方法の構成例について説明する。
本実施形態の垂直磁気記録媒体の製造方法は、非磁性基板上に、少なくとも一層の下地層と、垂直記録層と、を有している垂直磁気記録媒体の製造方法に関する。そして、垂直記録層は、磁性結晶粒子及び該磁性結晶粒子を取り囲む非磁性粒界領域を有する強磁性層と、磁性と誘電性を併せ持ち、結晶粒子と、前記結晶粒子を取り囲む非晶質粒界領域と、を有する誘電磁性層と、を有する構成とする。
また、磁性結晶粒子は、Feと、Ptと、を含む構成とする。
なお、本実施形態の垂直磁気記録媒体の製造方法は、例えば以下の工程を有することができる。
非磁性基板を準備する非磁性基板準備工程。
非磁性基板の少なくとも一方の面側に、少なくとも一層の下地層を形成する下地層形成工程。
非磁性基板の少なくとも一方の面側に垂直記録層を形成する垂直記録層形成工程。
そして、垂直記録層形成工程は、強磁性層形成工程、及び誘電磁性層形成工程を有することができる。強磁性層形成工程は、磁性結晶粒子及び該磁性結晶粒子を取り囲む非磁性粒界領域を有する強磁性層を形成する工程とすることができる。また、誘電磁性層形成工程は、磁性と誘電性を併せ持ち、結晶粒子と、結晶粒子を取り囲む非晶質粒界領域と、を有する誘電磁性層を形成する工程とすることができる。
また、上記工程に限定されるものではなく、さらに必要に応じて例えば密着層を形成する密着層形成工程や、裏打ち層を形成する裏打ち層形成工程、保護層を形成する保護層形成工程等を実施することもできる。
非磁性基板11、下地層12の構成については既に説明したとおりであるため、ここでは説明を省略する。また、上述のように、密着層15や裏打ち層16等を任意に形成することができる。
なお、下地層形成工程については、例えば既述の目的組成を有するターゲットを用いてスパッタリング法により実施することができる。また、密着層15や裏打ち層を形成する場合も同様にスパッタリング法で目的組成に応じたターゲットを用いて成膜することができる。
以下に垂直記録層13の形成方法を中心に説明する。
まず、強磁性層について説明する。
垂直記録層13を形成する垂直記録層形成工程のうち、強磁性層131を形成する強磁性層形成工程については、既述のように例えば磁性結晶粒子を構成する材料と、酸化物等の添加材料とを基板上に供給することにより実施できる。具体的には、例えば既述の磁性結晶粒子を構成する材料と、酸化物等の添加材料とを含むターゲットを用い、スパッタリング法等により実施できる。
また、既述のように強磁性層131には、Cu等の元素を添加することもできる。
そして、強磁性層は既述のように磁性結晶粒子及び該磁性結晶粒子を取り囲む非磁性粒界領域を有する構成とする。
次に、誘電磁性層132について説明する。
本実施形態の垂直磁気記録媒体の製造方法においては、垂直記録層13は、グラニュラー構造を有する強磁性層131と、グラニュラー構造を有する誘電磁性層132と、が積層された構造を有していることが好ましい。特に、強磁性層131の磁性結晶粒子1312と、誘電磁性層132の結晶粒子1322とが、積層するように配置されていることが好ましい。すなわち、強磁性層の磁性結晶粒子と、誘電磁性層の結晶粒子とが厚み方向に連続した柱状結晶を構成していることが好ましい。また、同時に、強磁性層131の非磁性粒界領域1311と、誘電磁性層132の非晶質粒界領域1321と、が積層するように配置されていることが好ましい。
そして、誘電磁性層を形成する誘電磁性層形成工程は、基板温度を誘電磁性層132に含まれる材料の結晶化温度未満として実施することが好ましい。なお、ここでいう基板温度とは、誘電磁性層132を形成する被成膜基板の温度のことを指しており、非磁性基板11上に形成された下地層12等を含む基板の温度を意味している。
また、誘電磁性層132に含まれる材料の結晶化温度とは、非晶質基板上でも誘電磁性層132に含まれる材料が結晶化する温度である。
これは、基板温度を、誘電磁性層132に含まれる材料の結晶化温度以上とすると、例えば強磁性層131の上面に誘電磁性層132を形成した場合、強磁性層131の非磁性粒界領域1311上の対応する部分に結晶が生じ、誘電磁性層132がグラニュラー構造とならない場合がある。このため、誘電磁性層132の結晶粒子1322の肥大が生じ、また該非磁性粒界領域1311上の部分は結晶の配向が異なるためノイズの増大につながり、結果として平坦性や電磁変換特性を損ねる場合があり好ましくないからである。
また誘電磁性層132を成膜する際には、非磁性基板11にバイアスを印加することが好ましい。
基板温度が誘電磁性層132に含まれる材料の結晶化温度未満でも、例えば強磁性層の磁性結晶粒子のように高配向の部分の上面については誘電磁性層132は結晶粒子を形成する場合がある。しかし、係る温度域で形成される結晶粒子の結晶性は十分ではないことがある。このため、上述のように誘電磁性層132を形成する際に、非磁性基板11にバイアスを印加し、結晶粒子の結晶性を高めることが好ましい。
係る条件で例えばグラニュラー構造をもった強磁性層131上や、配向調整層上に、誘電磁性層132を形成することにより、容易に誘電磁性層が、結晶粒子と、該結晶粒子を取り囲む非晶質粒界領域と、を有する構造とすることができる。すなわち、誘電磁性層132を容易にグラニュラー構造を有する構造とすることができ好ましい。
誘電磁性層132を成膜する際の基板温度は、誘電磁性層132に含まれる材料の結晶化温度より300度低い温度から結晶化温度に達しない範囲であることがより好ましい。さらには基板温度が、結晶化温度より300度低い温度から結晶化温度より50度低い範囲であることが特に好ましい。すなわち、誘電磁性層132に含まれる材料の結晶化温度をTc、誘電磁性層132を成膜する際の非磁性基板11の基板温度をTsとした場合、Tc−300≦Ts<Tcであることがより好ましく、Tc−300≦Ts≦Tc−50であることが特に好ましい。
誘電磁性層132を成膜する際の基板温度を係る温度範囲とすることで容易に誘電磁性層132を結晶粒子1322を非晶質粒界領域1321が囲んだグラニュラー構造とすることができる。
誘電磁性層132を成膜する際、基板温度(Ts)を結晶化温度より300度低い温度(Tc−300)よりも低い温度とした場合、非磁性基板11にバイアスをかけても誘電磁性層132の結晶が得られない場合がある。この場合、誘電磁性層132に誘電特性と磁性特性が得られないため好ましくない。
誘電磁性層に含まれる材料として例えば、BiFeO系の材料、(Bi1−aBa)FeO系の材料、Bi(Fe1−bMn)O系の材料、(Bi1−a―cBaLa)(Fe1−bMn)O系の材料、(Bi1−a−cBaLa)(Fe1−b−dMnTi)O系の材料、(Bi1−cLa)FeO系の材料を用いる場合、基板温度は300℃以上600℃未満とすることが好ましい。特に誘電磁性層に含まれる材料として上記材料を用いる場合、基板温度は300℃以上550℃以下とすることがより好ましい。
非磁性基板にバイアス(Bias)を印加する場合、バイアスは交流バイアスであることが好ましく、特に高周波バイアスであることが好ましい。これは、DC(直流)バイアスの場合、誘電磁性層132のチャージアップにより非磁性基板11にバイアスを印加する効果が十分得られない場合があるためである。非磁性基板11に印加するバイアスは、周波数は特に限定されないが、実用上の観点から周波数は0.1kHz以上2.5GHz以下であることが好ましく、150kHz以上2.45GHz以下であることがより好ましい。
以下に強磁性層131上に誘電磁性層132を形成した場合を例に説明する。
既述のように、強磁性層131に含まれる磁性結晶粒子1312としてFeとPtとを含んだ物質を用いるため、そのL1結晶はc軸が基板面に対して垂直な(001)面配向をとる。この強磁性層131の上に誘電磁性層132を形成することで、誘電磁性層132中の結晶粒子1322の結晶性が磁性結晶粒子1312に重なるように成長する。このため基板面に対して垂直に印加した磁界を制御することで、垂直記録層13にデータを記録することができる。
この時、強磁性層131の磁性結晶粒子1312の格子定数と、誘電磁性層132の結晶粒子1322の格子定数とを近い値とすることが好ましい。このように構成することにより、あたかも強磁性層131が、誘電磁性層132の配向制御層のごとく機能する。このため、強磁性層131の磁性結晶粒子1312上に誘電磁性層132の結晶粒子1322の成長が容易となる。
発明者らの検討によると係る条件下で、誘電磁性層132を形成する際に、非磁性基板11にバイアスを印加することで、誘電磁性層132に含まれる材料の結晶化温度未満であっても高い結晶性を有する誘電磁性層132の結晶粒子を得られることが確認できた。このため、例えば強磁性層の磁性結晶粒子と、誘電磁性層の結晶粒子とが厚み方向に連続した柱状結晶をより確実に構成することができる。
一方で、強磁性層131の非磁性粒界領域1311は、既述のように例えば強磁性材料に酸化物を含有させた場合、該酸化物の析出により形成される。このため明確な結晶構造を有しない。そして、例えば強磁性層131の上に誘電磁性層132を形成した場合、強磁性層131の非磁性粒界領域1311に対応した部分である、誘電磁性層132の一部は、結晶化温度未満では非晶質となり、誘電特性および磁気特性を発現しない。このような条件下では非磁性基板11に交流バイアスを印加しても、誘電磁性層132のうち、強磁性層131の非磁性粒界領域1311の上面部分は結晶粒子を形成しないことが実験により確かめられた。
以上のように、本実施形態の垂直磁気記録媒体の製造方法においては、誘電磁性層132は、例えば、グラニュラー構造を有する強磁性層131の上に、基板温度を誘電磁性層132に含まれる材料の結晶化温度未満として成膜することが好ましい。さらに成膜時に非磁性基板11に交流バイアスを印加することが好ましい。これにより、誘電磁性層132を容易に、結晶粒子と、該結晶粒子を取り囲む非晶質粒界層と、を有する構造、すなわち、グラニュラー構造とすることができる。
またこの方法によれば、前記強磁性層131を構成する磁性結晶粒子1312と、誘電磁性層132を構成する結晶粒子1322とが、厚み方向に連続した柱状結晶を構成することができる。このような構成を採用することで、強磁性層131の磁性結晶粒子1312の結晶性を高めることが可能となり、また、結晶粒径の肥大化を抑制することが可能となるので、SNRの優れた表面の平滑な垂直記録層13を構成することが可能となる。
なお、ここで、強磁性層131上に誘電磁性層132を形成する場合を例に説明したが、誘電磁性層132は既述のように非磁性基板11側に形成することもできる。この際、誘電磁性層132をグラニュラー構造とする場合には、既述のように、例えば配向調整層上に形成することができる。この場合、配向調整層が上記強磁性層131と同様の機能を果たすことから、上述の条件で成膜を行うことにより誘電磁性層132を容易にグラニュラー構造とすることができる。
[第2の実施形態]
本実施形態では、垂直記録再生装置の構成例について説明する。
本実施形態の垂直記録再生装置は、第1の実施形態で説明した垂直磁気記録媒体を備えた垂直記録再生装置とすることができる。
図3は、第1の実施形態で説明した垂直磁気記録媒体を用いた垂直記録再生装置30の一例を示すものである。図3に示す垂直記録再生装置は、第1の実施形態で説明した垂直磁気記録媒体31を備えている。そしてさらに、垂直磁気記録媒体31を回転駆動させる媒体駆動部32と、垂直磁気記録媒体31に情報を記録再生する記録再生ヘッド33と、記録再生ヘッド33を垂直磁気記録媒体31に対して相対運動させるヘッド駆動部34と、記録再生信号処理系35とを備えた構成とすることができる。
記録再生信号処理系35は、外部から入力されたデータを処理して記録信号を記録再生ヘッド33に送り、記録再生ヘッド33からの再生信号を処理してデータを外部に送ることができるようになっている。
本実施形態の垂直記録再生装置30に用いる記録再生ヘッド33には記録素子と再生素子とを独立して設けることができる。そして、記録素子には針状電極を用いた電界書き込み素子、再生素子には巨大磁気抵抗効果(GMR)を利用したGMR素子、トンネル効果を利用したTuMR素子などを用いることができる。
本実施形態の垂直記録再生装置30においては、第1の実施形態で説明した垂直磁気記録媒体を用いているため、データの記録再生信号のSNRが高く、高密度の垂直記録再生装置とすることができる。
以下に具体的な実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
本実施例では以下の手順で図1(a)に示した垂直磁気記録媒体を形成した。なお、以下に記述のように、本実施例の垂直磁気記録媒体においては、図1(a)に示した層の構成に加えて、非磁性基板11と下地層12との間に密着層を、保護層14の上面に潤滑膜をさらに設けている。
非磁性基板11として、洗浄済みのガラス基板(コニカミノルタ社製、外径2.5インチ)を用意した。
そして、上記ガラス基板をマグネトロンスパッタ装置(アネルバ社製 型式:C−3040)の成膜チャンバー内に収容して、到達真空度1×10−5Paとなるまで成膜チャンバー内を排気した後、Arガスを導入しチャンバー内圧力を0.8Paにした。次いで、ガラス基板上にTi含有量50at%、残部がCrからなる(以下、係る組成を「50Cr−50Ti」と記載する)ターゲットを用いて10nmの密着層を形成した。
次に、基板を250℃まで加熱したのち、V含有量20at%、残部がCrからなる(以下、係る組成を「80Cr−20V」と記載する)ターゲット、MgOターゲットを用いて、膜厚が10nmの80Cr−20V層と、膜厚が5nmの厚さのMgO層とをその順に成膜した。
さらに、基板を450℃まで加熱したあと、Pt含有量50at%、残部がFeからなる合金を90mol%と、SiOを10mol%と、含むターゲットである90(50Fe50Pt)−10(SiO)を用い、強磁性層131を成膜した。成膜の際、チャンバー内の圧力を3Paとして行い、強磁性層131は膜厚が6nmになるように成膜した。
次いで誘電磁性層132を成膜した。基板温度を450℃とし、Bi:Fe:Mn:Oの含有モル比が1:0.9:0.1:3の化合物合金である、Bi(Fe0.9Mn0.1)Oをターゲットを使い、膜厚12nmの誘電磁性層を形成した。なお、Bi(Fe0.9Mn0.1)Oの非晶質基板上で結晶化する結晶化温度は650℃である。
また、誘電磁性層132を成膜する際、非磁性基板11にVHFバイアスを5W印加した。なお、ここでいうVHFバイアスとは、40.68MHzの高周波バイアスである。
次にイオンビーム法にて保護層14としてDLC膜を厚さ3nm形成し、潤滑膜として、テトラオール系潤滑剤を膜厚が2nmになるように塗布して垂直磁気記録媒体を作製した。
得られた垂直磁気記録媒体について以下の評価を行った。
(表面粗さ)
垂直磁気記録媒体の潤滑膜表面の表面粗さをAFMを用いて観察したところ、表面粗さ(Ra)は0.28nmであった。
(SNR、OW特性)
垂直磁気記録媒体の記録媒体特性を、リードライトアナライザー(米国GUZIK TECHNICAL ENTERPRISES社製 型式:RW1632)、および、スピンスタンド(米国GUZIK TECHNICAL ENTERPRISES社製 型式:S1701MR)を用いて測定、評価した。
測定に当たっては、測定半径21mm、回転数5400rpm、最大信号周波数514.02MHz(1インチあたり2139キロビットの線記録密度)、書き込み電圧1.5Vの条件で垂直磁気記録媒体の電磁変換特性を測定した。測定に用いた記録再生ヘッドは、書き込み素子として先端径10nmの電極針を、再生素子としてTMR薄膜を有しており、データの書き込みにはデータ列を電気の極性に変換し電極針から電圧を印加する方法を用いた。
記録媒体特性評価の結果、SNRは19.4dBであった。
また、オーバーライト(OW)は1070kFCIの信号を書き込み、次いで143kFCIの信号を上書きし、周波数フィルターにより高周波数成分を取り出し、その残留割合によりデータの書き込み能力を評価しところ、38dBの値が得られた。
(垂直記録層の粒子の成長状態の評価)
さらに、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて誘電磁性層132の微細構造を観察した。非磁性基板11に垂直な面で観察(断面TEM観察)したところ、誘電磁性層132の結晶粒が柱状に形成しており、隣接する柱状の結晶粒同士を非晶質の粒界層により分割している構造を明確に観察できた。また、強磁性層131は磁性結晶粒子1312及び磁性結晶粒子1312を取り囲む非磁性粒界領域1311を有することが確認できた。そして、強磁性層131の磁性結晶粒子1312上に誘電磁性層132の結晶粒子1322が、ほぼ同じ幅で積み重なって連続した柱状構造になっていることを確認できた。すなわち、垂直記録層13は、強磁性層131の磁性結晶粒子1312と、誘電磁性層132の結晶粒子1322とが厚み方向に連続した柱状結晶を構成していることを確認できた。従って、強磁性層131及び誘電磁性層132がグラニュラー構造を有することが分かる。なお、誘電磁性層132がグラニュラー構造を有するとは、結晶粒子1322を非晶質粒界領域1321が取り囲んだ構造を有することを意味する。強磁性層131及び誘電磁性層132が、このような構造になっていることを以後、柱状構造として示す。
(誘電磁性層の結晶粒子の平均粒径)
次に、平面方向からの観察(平面TEM)により誘電磁性層132において、結晶粒子1322を非晶質粒界領域1321が囲んだグラニュラー構造を観察できた。この平面TEM像から見積もった誘電磁性層132の結晶粒子1322の平均粒径は5.9nmであった。
なお測定に当たっては、TEMの観察画像から、200個の粒子について粒径(円相当径)を測定し、積算値50%での粒径を平均粒径とした。
[実施例2〜19]
誘電磁性層および強磁性層を表1に記載の材料、膜厚に変更した他は、実施例1と同様に垂直磁気記録媒体を作製した。得られた垂直磁気記録媒体を実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
なお、実施例2〜19で誘電磁性層132を成膜する際に用いた材料はいずれも非晶質基板上で結晶化する結晶化温度は500℃以上750℃以下の範囲内であった。
[比較例1]
強磁性層131、誘電磁性層132を以下の手順で成膜した点以外は実施例1と同様にして、垂直磁気記録媒体を作製した。
基板温度を450℃に加熱した後、下地層12上にPt含有量50at%、残部Feからなる合金である50Fe50Ptのターゲットを用い、チャンバー内の圧力を3Paとして強磁性層131を膜厚が6nmになるように成膜した。
基板を450℃とし、Bi:Fe:Mn:Oの含有モル比が1:0.9:0.1:3の合金であるBi(Fe0.9Mn0.1)Oのターゲットを使い、膜厚12nmの誘電磁性層132を形成した。
誘電磁性層132上には、実施例1と同様にイオンビーム法にて保護層14としてDLC膜を厚さ3nm形成し、潤滑膜として、テトラオール系潤滑剤を膜厚が2nmになるように塗布して垂直磁気記録媒体を作製した。
得られた垂直磁気記録媒体について、実施例1と同様にして評価を行なった。
(表面粗さ)
実施例1と同様に得られた垂直磁気記録媒体の表面粗さをAFMを用いて観察したところ、表面粗さ(Ra)は1.10nmであった。
(SNR、OW特性)
実施例1と同じ条件でSNR、OW特性の評価を行った。
SNRは10.1dBであった。また、オーバーライト(OW)は21dBの値が得られた。
(垂直記録層の粒子の成長状態の評価)
また、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて誘電磁性層132の微細構造を観察した。非磁性基板11に垂直な面で観察(断面TEM観察)したところ、誘電磁性層132の結晶粒は形状が不規則であり結晶粒と結晶粒の境界も明確に観察できなかった。また、強磁性層131の磁性結晶粒子1312と無関係に誘電磁性層132の結晶粒子1322が形成されていた。以下、このような構造を不規則形状と記載する。
次に、平面方向からの観察(平面TEM)により誘電磁性層132の結晶粒子1322の粒界部分を明確に観測できなかった。また、誘電磁性層132は、結晶粒子及び結晶粒子を取り囲む非晶質粒界領域を有する構造とはなっていなかった。この平面TEM像から見積もった誘電磁性層132の結晶粒子の平均粒径は16.3nmであった。
[比較例2]
強磁性層131を除いた他は比較例1と同様にして垂直磁気記録媒体を作成した。
得られた磁気記録媒体を比較例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
なお、比較例2の試料についても平面方向からの観察(平面TEM)により誘電磁性層132を観察したところ、いずれの試料でも結晶粒子及び結晶粒子を取り囲む非晶質粒界領域を有する構造とはなっていなかった。
Figure 0006284125
実施例1〜19と比較例1および2の比較から、強磁性層131にグラニュラー構造を有するFePt系磁性材料を用い、その上に誘電磁性層132を積層することにより、優れた磁気記録媒体を得られることが確認できた。
これは、実施例1〜19では、強磁性層131のグラニュラー構造を引き継ぐ形で、誘電磁性層132が結晶粒子を非晶質粒界層が囲うようなグラニュラー構造になることで、誘電磁性層132からの磁気ノイズが低減したためである。
また、実施例1〜5の結果を比較すると、誘電磁性層132の膜厚を50nm以下、さらに好ましくは20nm以下とすることで高SNRが得られることが分る。
これは、誘電磁性層132の膜厚を薄くすることで結晶粒子の径が小さくなり、磁気的なノイズを抑制し、強磁性層131と記録再生ヘッドとの間の距離が短くなることによる再生信号の強度増加により、電磁変換特性が改善するためである。
実施例1と実施例7〜10との結果から、誘電磁性層132にBi(Fe1−bMn)Oを用いることで、BiFeOよりも優れた特性を示すことがわかる。また、bについて、0.01≦b≦0.5の範囲とすることにより、特に電磁変換特性が良好であることがわかる。
実施例10〜14の結果から、誘電磁性層132に(Bi1−aBa)FeOを用いることで、BiFeO、BaFeOよりも優れた特性を示すことがわかる。また、aについて0.05≦a≦0.8の範囲とすることにより電磁変換特性が良好であることがわかる。
実施例15〜19の結果から、誘電磁性層として、(Bi1−aBa)(Fe1−bMn)Oを誘電磁性層として使えることが分る。一方で、強磁性層の膜厚は3nm以上12nm以下がより好ましいことがわかる。
また、比較例2の結果から、誘電磁性層132のみでは十分な特性を示しておらず、誘電磁性層132の上に強磁性層131を形成することにより優れたSNR、OW特性を示すことが確認できた。
[実施例20〜32]
強磁性層131および誘電磁性層132を表2に記載の材料に変更した他は、実施例1と同様にして垂直磁気記録媒体を作製した。得られた垂直磁気記録媒体を実施例1と同様に評価した。結果を表2に示す。
なお、実施例20〜32で誘電磁性層132を成膜する際に用いた材料はいずれも非晶質基板上で結晶化する結晶化温度は500℃以上750℃以下であった。
Figure 0006284125
実施例20〜23の結果から、強磁性層131に添加する酸化物は18mol%以下が良いことが分る。強磁性層131に添加する酸化物を18mol%以下とすることにより、酸化物を非磁性粒界領域1311に確実に偏析させ、磁性結晶粒子1312内に残留することを抑制できるため、磁気特性を十分に高めることができることを確認できた。
また、実施例20〜23の結果から、強磁性層131に添加する酸化物は3mol%以上であることが好ましいことが確認できた。強磁性層131に添加する酸化物を3mol%以上とすることにより、非磁性粒界領域1311を十分に形成し、磁性粒子の肥大化を特に抑制できるため磁気特性を向上させることが可能になる。
実施例24〜32の結果から、強磁性層131に添加する元素は、Fe、Pt、及び酸化物等の添加材料を除いた合計が18at%以下であることが好ましいことが分る。強磁性層131に添加する元素を、Fe、Pt、及び酸化物等の添加材料を除いた合計が18at%以下とすることにより、磁性結晶粒子1312の配向を向上させ、磁気特性を高めることができることが確認できた。
また、表2の結果より、強磁性層には各種酸化物、各種窒化物、各種炭化物を添加できることが確認できた。
実施例31、32と実施例10、14の結果より、(Bi1−a−cBaLa)(Fe1−b−dMnTi)O、または(Bi1−cLa)FeOを用いることで、BiFeO、BaFeO、よりも優れた特性を示すことが確認できた。
[実施例33]
垂直記録層13を、表3に示す構成とした点以外は実施例1と同様にして垂直磁気記録媒体を作製した。
本実施例では、垂直記録層13の第1層として第1の強磁性層、第2層として第2の強磁性層、第3層として誘電磁性層を積層した。各層の形成手順について説明する。
実施例1と同様にして下地層12まで成膜した後、下地層12上に第1の強磁性層を成膜した。第1の強磁性層は、Pt含有量45at%、残部Feからなる合金を91mol%、Alからなる酸化物を9mol%含む、91(55Fe45Pt)−9(Al)のターゲットを用いて成膜した。成膜の際、チャンバー内の圧力を3Paとし、第1の強磁性層の膜厚が5nmになるように成膜した。
第1の強磁性層に続けて、Pt含有量45at%、残部Feからなる合金を90mol%、WCからなる炭化物を10mol%含む、90(55Fe45Pt)−10(WC)のターゲットを用いて第2の強磁性層を成膜した。成膜の際、チャンバー内の圧力を3Paとし、第2の強磁性層の膜厚が3nmになるように成膜した。
次に、基板を400℃まで加熱し、Bi:Ba:Fe:Oの含有モル比が0.6:0.4:1:3の化合物合金である、(Bi0.6Ba0.4)FeOのターゲットを用い、膜厚が10nmの誘電磁性層132を形成した。なお、(Bi0.6Ba0.4)FeOの非晶質基板上で結晶化する結晶化温度は650℃である。また、誘電磁性層132を成膜する際、非磁性基板11にVHF バイアスを5W印加した。ここでいうVHFバイアスとは、40.68MHzの高周波バイアスである。
誘電磁性層132を成膜後、実施例1と同様にイオンビーム法にて保護層としてDLC膜を厚さ3nm形成し、潤滑膜を2nm塗布して垂直磁気記録媒体を作製した。
得られた垂直磁気記録媒体を実施例1と同様に評価した。結果を表3に示す。
[実施例34]
垂直記録層13を、表3に示す構成とした点および下地層の垂直記録層側に95Pt−5(SiO)を5nmの厚さで設けた以外は実施例1と同様にして垂直磁気記録媒体を作製した。
本実施例では、垂直記録層13の第1層として第1の誘電磁性層、第2層として第1の強磁性層、第3層として第2の誘電磁性層、第4層として第2強磁性層を積層した。各層の形成手順について説明する。
実施例1と同様にしてMgO層を5nmまで成膜したあと、Ptを95mol%と、SiOを5mol%と、含むターゲットである95(Pt)−5(SiO)を用いて膜厚5nmの95(Pt)−5(SiO)を成膜し、下地層12とした後、下地層12上に第1の誘電磁性層を成膜した。基板を450℃まで加熱し、Bi:Ba:Fe:Oの含有モル比が0.8:0.2:1:3の化合物合金である、(Bi0.8Ba0.2)FeOのターゲットを使い、膜厚10nmの誘電磁性層を形成した。なお、(Bi0.8Ba0.2)FeOの非晶質基板上で結晶化する結晶化温度は600℃である。また、第1の誘電磁性層を成膜する際、非磁性基板11にVHF バイアスを5W印加した。ここでいうVHFバイアスとは、40.68MHzの高周波バイアスである。
そして、第1の誘電磁性層の上にPt含有量52at%、残部Feからなる合金を86mol%、TaCからなる炭化物を14mol%含む86(48Fe52Pt)−14(TaC)のターゲットを用い、第1の強磁性層を成膜した。強磁性層を成膜する際、チャンバー内の圧力を3Paとし、第1の強磁性層の膜厚が5nmになるように成膜した。
次に第2の誘電磁性層として、Bi:Ba:Fe:Oの含有モル比が0.8:0.2:1:3の化合物合金である、(Bi0.8Ba0.2)FeOのターゲットを使い、膜厚8nmの誘電磁性層を形成した。第2の誘電磁性層を成膜する際、基板を450℃まで加熱し、非磁性基板11にVHF バイアスを5W印加した。なお、ここでいうVHFバイアスとは、40.68MHzの高周波バイアスである。
そして、第2の誘電磁性層の上にPt含有量50at%、残部Feからなる合金を89mol%、Vからなる炭化物を11mol%含む89(50Fe50Pt)−11(V)のターゲットを用い、第2の強磁性層を成膜した。第2の強磁性層を成膜する際、チャンバー内の圧力を3Paとし、強磁性層の膜厚が4nmになるように成膜した。
次に実施例1と同様にしてイオンビーム法にて保護層としてDLC膜を厚さ3nm形成し、潤滑膜を2nm塗布して垂直磁気記録媒体を作製した。
得られた垂直磁気記録媒体を実施例1と同様に評価した。結果を表3に示す。
Figure 0006284125
実施例33、34の結果から、強磁性層131と誘電磁性層132とを積層することでSNR、OW特性について良好な特性が得られたことがわかる。
実施例34の結果から、誘電磁性層132を非磁性基板11側に設ける構造でもSNR、OW特性について良好な特性が得られたことがわかる。
[実施例35]
実施例1と同様にして下地層12まで成膜した後、Pt含有量50at%、残部がFeからなる合金を90mol%と、SiOを10mol%と、含むターゲットである90(50Fe50Pt)−10(SiO)を用い、強磁性層131を成膜した。成膜の際、チャンバー内の圧力を3Paとして行い、強磁性層131は膜厚が5nmになるように成膜した。
次いで誘電磁性層132を成膜した。基板を350℃とし、Bi:Ba:Fe:Mn:Oの含有モル比が0.7:0.3:0.9:0.1:3の化合物合金である、(Bi0.7Ba0.3)(Fe0.9Mn0.1)Oターゲットを使い、膜厚10nmの誘電磁性層を形成した。なお、(Bi0.7Ba0.3)(Fe0.9Mn0.1)Oの非晶質基板上で結晶化する結晶化温度は650℃である。
また、誘電磁性層132を成膜する際、非磁性基板11にVHF バイアスを5W印加した。なお、ここでいうVHFバイアスとは、40.68MHzの高周波バイアスである。
次にイオンビーム法にて保護層14としてDLC膜を厚さ3nm形成し、潤滑膜として、テトラオール系潤滑剤を膜厚が2nmになるように塗布して垂直磁気記録媒体を作製した。
得られた垂直磁気記録媒体を実施例1と同様に評価した。結果を表4に示す。
[実施例36、37、比較例3〜5]
誘電磁性層132の成膜条件を表4に記載の条件とした点以外は実施例35と同様にして磁気記録媒体を作製した。得られた磁気記録媒体を実施例1と同様に評価した。結果を表4に示す。
なお、比較例3、4の試料について透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて誘電磁性層132の微細構造を観察したところ、誘電磁性層には結晶粒子が見られず、結晶粒子及び結晶粒子を取り囲む非晶質粒界領域を有する構造とはなっていなかった。また、比較例5の試料については、誘電磁性層全体に結晶粒子が析出し、結晶粒子及び結晶粒子を取り囲む非晶質粒界領域を有する構造とはなっていなかった。
Figure 0006284125
表4の結果から、誘電磁性層を成膜する際の基板温度を結晶化温度−300度以上結晶化温度未満の範囲とし、かつ、基板にVHFバイアスを印加することが好ましいことが分かる。係る条件で誘電磁性層を成膜することで、より確実に誘電磁性層が結晶粒子と、結晶粒子を取り囲む非晶質粒界領域と、を有する構造となり、優れた特性を得られることがわかる。
[実施例40]
非磁性基板11として、洗浄済みのガラス基板(コニカミノルタ社製、外径2.5インチ)を用意した。
そして、上記ガラス基板をマグネトロンスパッタ装置(アネルバ社製 型式:C−3040)の成膜チャンバー内に収容して、到達真空度1×10−5Paとなるまで成膜チャンバー内を排気した後、Arガスを導入しチャンバー内圧力を0.8Paにした。次いで、ガラス基板上にTi含有量50at%、残部がCrからなる50Cr−50Tiターゲットを用いて10nmの密着層15を形成した。
次に、B含有量20at%、残部がFeからなる80Fe20Bターゲット、Ruターゲットを用いて裏打ち層を形成した。具体的には、80Fe20Bターゲット、Ruターゲット、80Fe20Bターゲットの順で用いて裏打ち層を形成した。これにより、膜厚が20nmの80Fe20B層、膜厚が0.8nmのRu層、膜厚が20nmの80Fe20B層をその順に積層し、裏打ち層とした。
次に、基板を250℃まで加熱したのち、V含有量20at%、残部がCrからなる80Cr−20Vターゲット、MgOターゲットを用いて、膜厚が10nmの80Cr−20V層と、膜厚が5nmの厚さのMgO層とをその順に成膜した。
さらに、基板を450℃まで加熱したあと、Pt含有量50at%、残部がFeからなる合金を90mol%と、SiOを10mol%と、含むターゲットである90(50Fe50Pt)−10(SiO)を用い、強磁性層131を成膜した。成膜の際、チャンバー内の圧力を3Paとして行い、強磁性層131は膜厚が6nmになるように成膜した。
次いで誘電磁性層132を成膜した。基板温度を450℃とし、Bi:Fe:Mn:Oの含有モル比が1:0.9:0.1:3の化合物合金である、Bi(Fe0.9Mn0.1)Oターゲットを使い、膜厚12nmの誘電磁性層を形成した。なお、Bi(Fe0.9Mn0.1)Oの非晶質基板上で結晶化する結晶化温度は650℃である。
また、誘電磁性層132を成膜する際、非磁性基板11にVHF バイアスを5W印加した。なお、ここでいうVHFバイアスとは、40.68MHzの高周波バイアスである。
次にイオンビーム法にて保護層14としてDLC膜を厚さ3nm形成し、潤滑膜として、テトラオール系潤滑剤を膜厚が2nmになるように塗布して垂直磁気記録媒体を作製した。
得られた磁気記録媒体を実施例1と同様に評価した。結果を表5に示す。
Figure 0006284125
実施例1と実施例40との比較から、下地層の下に裏打ち層を設けることができることがわかる。また、裏打ち層を設けることにより磁気特性の向上効果が得られることがわかる。これは、裏打ち層により再生波形の矩形性が向上し、また対電極の効果がプラスされたことにより電界の引き込みが容易になったことで、信号の分解能が向上した効果である。
10A〜10D、31 垂直磁気記録媒体
11 非磁性基板
12 下地層
13 垂直記録層
131 強磁性層
132 誘電磁性層
1311 非磁性粒界領域
1312 磁性結晶粒子
1321 非晶質粒界領域
1322 結晶粒子
30 垂直記録再生装置

Claims (15)

  1. 非磁性基板上に、少なくとも一層の下地層と、垂直記録層と、を有しており、
    前記垂直記録層は、
    磁性結晶粒子及び該磁性結晶粒子を取り囲む非磁性粒界領域を有する強磁性層と、
    磁性及び誘電性を併せ持ち、結晶粒子及び前記結晶粒子を取り囲む非晶質粒界領域を有する誘電磁性層と、を有し、
    前記磁性結晶粒子は、Feと、Ptと、を含む垂直磁気記録媒体。
  2. 前記強磁性層の前記磁性結晶粒子と、前記誘電磁性層の前記結晶粒子とが厚み方向に連続した柱状結晶を構成している請求項1に記載の垂直磁気記録媒体。
  3. 前記非磁性粒界領域が、酸化物、窒化物、炭素系材料から選択された1種類以上の材料を含有する請求項1または2に記載の垂直磁気記録媒体。
  4. 前記誘電磁性層が、(Bi1−aBa)FeO(0.05≦a≦0.8)を含む請求項1乃至3いずれか一項に記載の垂直磁気記録媒体。
  5. 前記誘電磁性層が、Bi(Fe1−bMn)O(0.01≦b≦0.5)を含む請求項1乃至3いずれか一項に記載の垂直磁気記録媒体。
  6. 前記誘電磁性層が、(Bi1−a―cBaLa)(Fe1−bMn)O(0≦a≦0.8、0.01≦b≦0.5、0≦c≦0.8、かつ0.05≦a+c≦0.8)を含む請求項1乃至3いずれか一項に記載の垂直磁気記録媒体。
  7. 前記誘電磁性層が、(Bi1−a−cBaLa)(Fe1−b−dMnTi)O(aおよびcは0≦a≦0.8、0≦c≦0.8、かつ0≦a+c≦0.8の範囲、bおよびdは0≦b≦0.5、0.01≦d≦0.5かつ0.01≦b+d≦0.5の範囲。)を含む請求項1乃至3いずれか一項に記載の垂直磁気記録媒体。
  8. 前記誘電磁性層が、(Bi1−cLa)FeO(0.01≦c≦0.8)を含む請求項1乃至3いずれか一項に記載の垂直磁気記録媒体。
  9. 前記垂直記録層は、2層以上の前記強磁性層と、2層以上の前記誘電磁性層と、が積層した構造を有する請求項1乃至8いずれか一項に記載の垂直磁気記録媒体。
  10. 非磁性基板上に、少なくとも一層の下地層と、垂直記録層と、を有しており、
    前記垂直記録層は、
    磁性結晶粒子及び該磁性結晶粒子を取り囲む非磁性粒界領域を有する強磁性層と、
    磁性と誘電性を併せ持ち、結晶粒子と、前記結晶粒子を取り囲む非晶質粒界領域と、を有する誘電磁性層と、を有し、
    前記磁性結晶粒子は、Feと、Ptと、を含む垂直磁気記録媒体の製造方法。
  11. 前記非磁性基板を準備する非磁性基板準備工程と、
    前記非磁性基板の少なくとも一方の面側に、少なくとも一層の前記下地層を形成する下地層形成工程と、
    前記非磁性基板の少なくとも一方の面側に前記垂直記録層を形成する垂直記録層形成工程と、を有し、
    前記垂直記録層形成工程は、
    前記磁性結晶粒子及び該磁性結晶粒子を取り囲む前記非磁性粒界領域を有する前記強磁性層を形成する強磁性層形成工程と、
    磁性と誘電性を併せ持ち、前記結晶粒子と、前記結晶粒子を取り囲む前記非晶質粒界領域と、を有する前記誘電磁性層を形成する誘電磁性層形成工程と、
    を有する請求項10に記載の垂直磁気記録媒体の製造方法。
  12. 前記誘電磁性層を、基板温度を前記誘電磁性層に含まれる材料の結晶化温度未満として形成する請求項10または11に記載の垂直磁気記録媒体の製造方法。
  13. 前記誘電磁性層を形成する際に、前記非磁性基板に交流バイアスを印加する請求項10乃至12のいずれか一項に記載の垂直磁気記録媒体の製造方法。
  14. 前記垂直記録層が、
    前記強磁性層の前記磁性結晶粒子と、前記誘電磁性層の前記結晶粒子とが厚み方向に連続した柱状結晶を構成している請求項10乃至13のいずれか一項に記載の垂直磁気記録媒体の製造方法。
  15. 請求項1乃至9のいずれか一項に記載の垂直磁気記録媒体を備えた垂直記録再生装置。
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