図1は、本発明の実施例に係る作業機械の一例であるショベルの側面図である。ショベルの下部走行体1には、旋回機構2を介して上部旋回体3が搭載される。上部旋回体3には、ブーム4が取り付けられる。ブーム4の先端にはアーム5が取り付けられ、アーム5の先端にはバケット6が取り付けられる。作業要素としてのブーム4、アーム5、及びバケット6は、アタッチメントの一例である掘削アタッチメントを構成し、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9によりそれぞれ油圧駆動される。上部旋回体3にはキャビン10が設けられ、且つエンジン11等の動力源及びコントローラ30等が搭載される。
コントローラ30は、ショベルの駆動制御を行う主制御部としての制御装置である。本実施例では、コントローラ30は、CPU及び内部メモリを含む演算処理装置で構成され、内部メモリに格納された駆動制御用のプログラムをCPUに実行させて各種機能を実現する。
図2は、図1のショベルに搭載される油圧回路の構成例を示す概略図である。本実施例では、油圧回路は、主に、第1ポンプ14L、第2ポンプ14R、ポンプ・モータ14A、コントロールバルブ17、及び油圧アクチュエータを含む。油圧アクチュエータは、主に、左側走行用油圧モータ1L、右側走行用油圧モータ1R、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9、旋回用油圧モータ21、及びアキュムレータ80を含む。
ブームシリンダ7は、ブーム4を昇降させる油圧シリンダであり、ボトム側油室とロッド側油室との間には再生弁7aが接続され、ボトム側油室側には保持弁7bが設置される。また、アームシリンダ8は、アーム5を開閉させる油圧シリンダであり、ボトム側油室とロッド側油室との間には再生弁8aが接続され、ロッド側油室側には保持弁8bが設置される。また、バケットシリンダ9は、バケット6を開閉させる油圧シリンダであり、ボトム側油室とロッド側油室との間には再生弁9aが接続される。
旋回用油圧モータ21は、上部旋回体3を旋回させる油圧モータであり、ポート21L、21Rがそれぞれリリーフ弁22L、21Rを介して作動油タンクTに接続され、シャトル弁22Sを介して再生弁22Gに接続され、且つ、チェック弁23L、23Rを介して作動油タンクTに接続される。
リリーフ弁22Lは、ポート21L側の圧力が所定のリリーフ圧に達した場合に開き、ポート21L側の作動油を作動油タンクTに排出する。また、リリーフ弁22Rは、ポート21R側の圧力が所定のリリーフ圧に達した場合に開き、ポート21R側の作動油を作動油タンクTに排出する。
シャトル弁22Sは、ポート21L側及びポート21R側のうちの圧力が高い方の作動油を再生弁22Gに供給する。
再生弁22Gは、コントローラ30からの指令に応じて動作する弁であり、旋回用油圧モータ21(シャトル弁22S)とポンプ・モータ14A又はアキュムレータ80との間の連通・遮断を切り替える。
チェック弁23Lは、ポート21L側の圧力が負圧になった場合に開き、作動油タンクTからポート21L側に作動油を補給する。チェック弁23Rは、ポート21R側の圧力が負圧になった場合に開き、作動油タンクTからポート21R側に作動油を補給する。このように、チェック弁23L、23Rは、旋回用油圧モータ21の制動時に吸い込み側のポートに作動油を補給する補給機構を構成する。
左側走行用油圧モータ1Lは、下部走行体1の左側クローラを回転させる油圧モータである。また、右側走行用油圧モータ1Rは、下部走行体1の右側クローラを回転させる油圧モータである。なお、左側走行用油圧モータ1L及び右側走行用油圧モータ1Rのそれぞれは、図示を省略するが、旋回用油圧モータ21と同様に、リリーフ弁及びチェック弁等を含んで構成される。
第1ポンプ14Lは、作動油タンクTから作動油を吸い込んで吐出する油圧ポンプであり、本実施例では斜板式可変容量型油圧ポンプである。また、第1ポンプ14Lはレギュレータに接続される。レギュレータは、コントローラ30からの指令に応じて第1ポンプ14Lの斜板傾転角を変更して第1ポンプ14Lの吐出量を制御する。第2ポンプ14Rについても同様である。
また、第1ポンプ14Lの吐出側にはリリーフ弁14aLが設置される。リリーフ弁14aLは、第1ポンプ14Lの吐出側の圧力が所定のリリーフ圧に達した場合に開き、吐出側の作動油を作動油タンクに排出する。第2ポンプ14Rの吐出側に設置されるリリーフ弁14aRについても同様である。
ポンプ・モータ14Aは、油圧ポンプ(第3ポンプ)としても油圧モータとしても機能する油圧装置であり、本実施例では斜板式可変容量型油圧ポンプ・モータである。また、ポンプ・モータ14Aは、第1ポンプ14L及び第2ポンプ14Rと同様にレギュレータに接続される。レギュレータは、コントローラ30からの指令に応じてポンプ・モータ14Aの斜板傾転角を変更してポンプ・モータ14Aの吐出量を制御する。
また、ポンプ・モータ14Aの吐出側にはリリーフ弁14aAが設置される。リリーフ弁14aAは、ポンプ・モータ14Aの吐出側の圧力が所定のリリーフ圧に達した場合に開き、吐出側の作動油を作動油タンクに排出する。
また、本実施例では、第1ポンプ14L、第2ポンプ14R、及びポンプ・モータ14Aは、それぞれの駆動軸が機械的に連結される。具体的には、それぞれの駆動軸は、変速機13を介して所定の変速比でエンジン11の出力軸に連結される。そのため、エンジン回転数が一定であれば、それぞれの回転数も一定となる。但し、第1ポンプ14L、第2ポンプ14R、及びポンプ・モータ14Aは、エンジン回転数が一定であっても回転数を変更できるよう、無段変速機等を介してエンジン11に接続されてもよい。
コントロールバルブ17は、ショベルにおける油圧駆動系の制御を行う油圧制御装置である。また、コントロールバルブ17は、主に、可変ロードチェック弁51〜53、合流弁55、走行直進弁56、統一ブリードオフ弁57L、57R、切替弁60〜63、及び制御弁170〜173、174L、174Rを含む。
制御弁170〜173、174L、174Rは、各種油圧アクチュエータに流出入する作動油の向き及び流量を制御する弁である。本実施例では、制御弁170〜173、174L、174Rのそれぞれは、対応する操作レバー等の操作装置(図示せず。)が生成するパイロット圧を左右何れかのパイロットポートで受けて動作する4ポート3位置のスプール弁である。操作装置は、操作量(操作角度)に応じて生成したパイロット圧を、操作方向に対応する側のパイロットポートに作用させる。
具体的には、制御弁170は、旋回用油圧モータ21に流出入する作動油の向き及び流量を制御可能なスプール弁であり、制御弁171は、アームシリンダ8に流出入する作動油の向き及び流量を制御可能なスプール弁である。
また、制御弁172は、ブームシリンダ7に流出入する作動油の向き及び流量を制御可能なスプール弁であり、制御弁173は、バケットシリンダ9に流出入する作動油の向き及び流量を制御可能なスプール弁である。
また、制御弁174Lは、左側走行用油圧モータ1Lに流出入する作動油の向き及び流量を制御可能なスプール弁であり、制御弁174Rは、右側走行用油圧モータ1Rに流出入する作動油の向き及び流量を制御可能なスプール弁である。
図3は、制御弁174Lの構成例を示す概略図である。図3に示すように、制御弁174Lは、主に、バルブボディ174M、パイロットポート174PL、174PR、バネ174SL、174SR、シャトル弁174HL、174HR、及び電磁弁174VL、174VRを含む。
電磁弁174VLは、コントローラ30からの指令に応じて動作する3ポート2位置の電磁切替弁である。具体的には、電磁弁174VLは、パイロットポート174PLに作用する作動油を作動油タンクTに排出してパイロット圧を低減させる第1弁位置と、コントロールポンプ15が吐出する作動油をパイロットポート174PLに作用させてパイロット圧を増大させる第2弁位置とを有する。なお、図中の括弧内の数字は弁位置を表す。他の弁についても同様である。そして、電磁弁174VLは、コントローラ30から所定の指令を受けると第2弁位置となりパイロットポート174PLに作用するパイロット圧を増大させる。制御弁174Lは、パイロットポート174PLに作用するパイロット圧が増大すると第1弁位置となり、パイロット圧が低減するとバネ174SRの力によって第2弁位置となる。
同様に、電磁弁174VRは、コントローラ30からの指令に応じて動作する弁である。本実施例では、3ポート2位置の電磁切替弁である。具体的には、電磁弁174VRは、パイロットポート174PRに作用する作動油を作動油タンクTに排出してパイロット圧を低減させる第1弁位置と、コントロールポンプ15が吐出する作動油をパイロットポート174PRに作用させてパイロット圧を増大させる第2弁位置とを有する。そして、電磁弁174VRは、コントローラ30から所定の指令を受けると第2弁位置となりパイロットポート174PRに作用するパイロット圧を増大させる。制御弁174Lは、パイロットポート174PRに作用するパイロット圧が増大すると第3弁位置となり、パイロット圧が低減するとバネ174SLの力によって第2弁位置となる。
シャトル弁174HLは、左側走行レバー(図示せず。)が生成するパイロット圧と電磁弁174VLが生成するパイロット圧のうち大きいほうのパイロット圧をパイロットポート174PLに作用させる。また、シャトル弁174HRは、右側走行レバー(図示せず。)が生成するパイロット圧と電磁弁174VRが生成するパイロット圧のうち大きいほうのパイロット圧をパイロットポート174PRに作用させる。この構成により、コントローラ30は、例えば、電磁弁174VL、174VRが生成するパイロット圧を、走行レバーがフルレバー操作されたときのパイロット圧力に相当する圧力とすることができる。そして、走行レバーがハーフレバー操作された場合であっても、フルレバー操作された場合と同様のストロークで制御弁174を移動させることができる。なお、「ハーフレバー操作」はフルレバー操作よりも小さい操作量で行われるレバー操作を意味する。また、「フルレバー操作」は、所定の操作量以上で行われるレバー操作を意味し、所定の操作量は例えば80%以上の操作量である。なお、操作量100%は操作レバーを最大限傾斜させたときの操作量に対応し、操作量0%は操作レバーを中立にしたとき(操作レバーを操作していないとき)の操作量に対応する。
可変ロードチェック弁51〜53は、コントローラ30からの指令に応じて動作する弁である。本実施例では、可変ロードチェック弁51〜53は、制御弁171〜173のそれぞれと第1ポンプ14L及び第2ポンプ14Rのうちの少なくとも一方との間の連通・遮断を切り替え可能な2ポート2位置の電磁弁である。なお、可変ロードチェック弁51〜53は、第1弁位置において、ポンプ側に戻る作動油の流れを遮断するチェック弁を有する。具体的には、可変ロードチェック弁51は、第1弁位置にある場合に制御弁171と第1ポンプ14L及び第2ポンプ14Rのうちの少なくとも一方との間を連通させ、第2弁位置にある場合にその連通を遮断する。可変ロードチェック弁52及び可変ロードチェック弁53についても同様である。
合流弁55は、合流切替部の一例であり、コントローラ30からの指令に応じて動作する弁である。本実施例では、合流弁55は、第1ポンプ14Lが吐出する作動油(以下、「第1作動油」とする。)と第2ポンプ14Rが吐出する作動油(以下、「第2作動油」とする。)とを合流させるか否かを切り替え可能な2ポート2位置の電磁弁である。具体的には、合流弁55は、第1弁位置にある場合に第1作動油と第2作動油とを合流させ、第2弁位置にある場合に第1作動油と第2作動油とを合流させないようにする。
走行直進弁56は、走行直進切替部の一例であり、コントローラ30からの指令に応じて動作する弁である。本実施例では、走行直進弁56は、第1ポンプ14L及び第2ポンプ14Rと左側走行用油圧モータ1L及び右側走行用油圧モータ1Rとの連通・遮断を切り替え可能な4ポート2位置のスプール弁である。
図4は、走行直進弁56の構成例を示す概略図である。図4に示すように、走行直進弁56は、主に、バルブボディ56M、パイロットポート56P、バネ56S、及び電磁弁56Vを含む。
電磁弁56Vは、コントローラ30からの指令に応じて動作する3ポート2位置の電磁切替弁である。具体的には、電磁弁56Vは、パイロットポート56Pに作用する作動油を作動油タンクTに排出してパイロット圧を低減させる第1弁位置と、コントロールポンプ15が吐出する作動油をパイロットポート56Pに作用させてパイロット圧を増大させる第2弁位置とを有する。そして、弁56Vは、コントローラ30から所定の指令を受けると第2弁位置となりパイロットポート56Pに作用するパイロット圧を増大させる。走行直進弁56は、パイロットポート56Pに作用するパイロット圧が増大すると第2弁位置となり、パイロット圧が低減するとバネ56Sの力によって第1弁位置となる。
そして、走行直進弁56は、図2に示すように、第1弁位置にある場合に第1作動油を左側走行用油圧モータ1Lに流入させ、且つ、第2作動油を右側走行用油圧モータ1Rに流入させることができる。また、走行直進弁56は、第2弁位置にある場合に第1作動油を左側走行用油圧モータ1L及び右側走行用油圧モータ1Rの双方に流入させることができる。
統一ブリードオフ弁57L、57Rは、コントローラ30からの指令に応じて動作する弁である。本実施例では、統一ブリードオフ弁57Lは、第1作動油の作動油タンクTへの排出量を制御可能な2ポート2位置の電磁弁である。統一ブリードオフ弁57Rについても同様である。この構成により、統一ブリードオフ弁57L、57Rは、制御弁170〜173、174L、174Rのうちの関連する制御弁の合成開口を再現できる。具体的には、合流弁55が第2弁位置にあり、且つ走行直進弁56が第1弁位置にある場合に、統一ブリードオフ弁57Lは制御弁170、制御弁171、及び制御弁174Lの合成開口を再現でき、統一ブリードオフ弁57Rは制御弁172、制御弁173、及び制御弁174Rの合成開口を再現できる。また、合流弁55が第2弁位置にあり、且つ走行直進弁56が第2弁位置にある場合に、統一ブリードオフ弁57Lは制御弁174L及び制御弁174Lの合成開口を再現でき、統一ブリードオフ弁57Rは制御弁170〜制御弁173の合成開口を再現できる。
切替弁60〜63は、コントローラ30からの指令に応じて動作する弁である。本実施例では、切替弁60〜63は、油圧アクチュエータのそれぞれから排出される作動油をポンプ・モータ14Aの上流側(供給側)に流すか否かを切り替え可能な3ポート2位置の電磁弁である。具体的には、切替弁60は、第1弁位置にある場合に、再生弁22Gを通じて旋回用油圧モータ21から排出される作動油をポンプ・モータ14Aの供給側に流し、第2弁位置にある場合に、再生弁22Gを通じて旋回用油圧モータ21から排出される作動油をアキュムレータ80に流す。また、切替弁61は、第1弁位置にある場合に、アームシリンダ8から排出される作動油を作動油タンクTに流し、第2弁位置にある場合に、アームシリンダ8から排出される作動油をポンプ・モータ14Aの供給側に流す。切替弁62及び切替弁63についても同様である。なお、本実施例では、左側走行用油圧モータ1L及び右側走行用油圧モータ1Rのそれぞれから排出される作動油の排出先を切り替える切替弁が省略されるが、切替弁60と同様の切替弁が取り付けられてもよい。この場合、左側走行用油圧モータ1L及び右側走行用油圧モータ1Rのそれぞれは、旋回用油圧モータ21と同様に、シャトル弁、再生弁等を含んでいてもよい。
アキュムレータ80は、加圧された作動油を蓄積する油圧装置である。本実施例では、アキュムレータ80は、切替弁81及び切替弁82により作動油の蓄積・放出が制御される。
切替弁81は、コントローラ30からの指令に応じて動作する弁である。本実施例では、切替弁81は、加圧された作動油の供給源である第1ポンプ14Lとアキュムレータ80との間の連通・遮断を切り替え可能な2ポート2位置の電磁弁である。具体的には、切替弁81は、第1弁位置にある場合に第1ポンプ14Lとアキュムレータ80との間を連通させ、第2弁位置にある場合にその連通を遮断する。なお、切替弁81は、第1弁位置において、第1ポンプ14L側に戻る作動油の流れを遮断するチェック弁を有する。
切替弁82は、コントローラ30からの指令に応じて動作する弁である。本実施例では、切替弁82は、加圧された作動油の供給先であるポンプ・モータ14Aの供給側とアキュムレータ80との間の連通・遮断を切り替え可能な2ポート2位置の電磁弁である。具体的には、切替弁82は、第1弁位置にある場合にポンプ・モータ14Aとアキュムレータ80との間を連通させ、第2弁位置にある場合にその連通を遮断する。なお、切替弁82は、第1弁位置において、アキュムレータ80側に戻る作動油の流れを遮断するチェック弁を有する。
切替弁90は、コントローラ30からの指令に応じて動作する弁である。本実施例では、切替弁90は、ポンプ・モータ14Aが吐出する作動油(以下、「第3作動油」とする。)の供給先を切り替え可能な3ポート2位置の電磁弁である。具体的には、切替弁90は、第1弁位置にある場合に第3作動油を切替弁91に向けて流し、第2弁位置にある場合に第3作動油を作動油タンクTに向けて流す。
切替弁91は、コントローラ30からの指令に応じて動作する弁である。本実施例では、切替弁91は、第3作動油の供給先を切り替え可能な3ポート2位置の電磁弁である。具体的には、切替弁91は、第1弁位置にある場合に第3作動油をアームシリンダ8に向け、第2弁位置にある場合に第3作動油を旋回用油圧モータ21に向ける。
次に、図5を参照し、走行操作を含む操作が行われた場合にコントローラ30が油圧回路における作動油の流れを制御する処理(以下、「走行時処理」とする。)について説明する。なお、図5は、走行時処理の一例の流れを示すフローチャートであり、コントローラ30は、所定の制御周期で繰り返しこの走行時処理を実行する。
最初に、コントローラ30は、走行操作が行われたかを判定する(ステップS1)。具体的には、コントローラ30は、走行操作装置に関する操作内容検出部の出力に基づいて走行操作装置の操作内容(例えば、レバー操作の有無、レバー操作方向、レバー操作量等である。)を電気的に検出する。そして、検出した操作内容に基づいて走行操作装置が操作されたかを判定する。本実施例では、コントローラ30は、走行レバーが生成するパイロット圧を検出する圧力センサの出力に基づいて走行レバーが操作されたかを判定する。なお、操作内容検出部は、走行レバーの傾きを検出する傾きセンサ等、圧力センサ以外のセンサで構成されてもよい。また、走行レバーは走行ペダルであってもよい。
走行操作が行われていないと判定した場合(ステップS1のNO)、コントローラ30は、今回の走行時処理を終了させる。
一方で、走行操作が行われたと判定した場合(ステップS1のYES)、コントローラ30は、別の操作が行われたかを判定する(ステップS2)。本実施例では、コントローラ30は、アーム操作レバー、旋回操作レバー等、走行操作装置以外の別の操作装置が生成するパイロット圧を検出する圧力センサの出力に基づいて別の操作が行われたかを判定する。
別の操作が行われていないと判定した場合(ステップS2のNO)、すなわち走行操作装置のみが操作されたと判定した場合、コントローラ30は、第1作動油で左側走行用油圧モータ1Lを駆動させ、且つ、第2作動油で左側走行用油圧モータ1Lを駆動させる(ステップS3)。
図6は、別の操作が行われていないと判定される場合の油圧回路の状態を示す図であり、図2に対応する。具体的には、図6は、左右の走行レバーが前進方向にハーフレバー操作された場合の油圧回路の状態を示す。この場合、コントローラ30は、図6に示すように、走行直進弁56を第1弁位置に設定し、制御弁174L及び制御弁174Rのそれぞれを第3弁位置に設定する。油圧回路のこの状態により、図6の太実線で示すように、第1ポンプ14Lが吐出する第1作動油は制御弁174Lを通じて左側走行用油圧モータ1Lに至り、左側走行用油圧モータ1Lから流出する作動油は制御弁174Lを通じて作動油タンクTに至る。また、第2ポンプ14Rが吐出する第2作動油は走行直進弁56及び制御弁174Rを通じて右側走行用油圧モータ1Rに至り、右側走行用油圧モータ1Rから流出する作動油は制御弁174Rを通じて作動油タンクTに至る。
また、制御弁174Lは、左側走行レバーの操作量にかかわらず、電磁弁174VR(図3参照)が生成するパイロット圧で強制的に且つ瞬時に第3弁位置に設定される。すなわち、左側走行レバーの操作量に対応する左側走行レバーが生成するパイロット圧に応じた中間弁位置(第2弁位置と第3弁位置との間の位置)に留まることはない。制御弁174Lのところで流路面積が絞られて無駄な圧力損失を発生させないようにするためである。また、コントローラ30は、第1ポンプ14Lの吐出量を調整することで、左側走行用油圧モータ1Lの回転速度が左側走行レバーの操作量に応じた速度となるようにする。
同様に、制御弁174Rは、右側走行レバーの操作量にかかわらず、強制的に且つ瞬時に第3弁位置に設定される。そして、コントローラ30は、第2ポンプ14Rの吐出量を調整することで、右側走行用油圧モータ1Rの回転速度が右側走行レバーの操作量に応じた速度となるようにする。
この構成により、コントローラ30は、走行操作が単独で行われた場合であっても、制御弁174L、174Rのところで発生する圧力損失を低減させながら、走行レバーの操作量に応じた走行用油圧モータ1L、1Rの回転速度を実現できる。
また、別の操作が行われたと判定した場合(ステップS2のYES)、すなわち走行操作を含む複合操作が行われたと判定した場合、コントローラ30は、別の操作の操作量が所定値未満であるかを判定する(ステップS4)。本実施例では、コントローラ30は、例えばアーム操作レバー(図示せず。)が閉じ方向に操作されたと判定した場合、アーム操作レバーの閉じ方向における操作量(アーム閉じ操作量)が所定値未満であるか否かを判定する。なお、所定値は、アーム閉じ操作量に対応する所要作動油流量が第2ポンプ14Rの最大吐出量となるときのアーム閉じ操作量に相当する。また、この場合の所要作動油流量はアームシリンダ8のボトム側油室に流入させるべき作動油の流量を意味する。したがって、アーム閉じ操作量が所定値未満であることは、第2ポンプ14Rが吐出する作動油のみでアーム5の所望の閉じ動作を実行できることを意味する。
そして、別の操作の操作量が所定値未満であると判定した場合(ステップS4のYES)、コントローラ30は、第1作動油で左側走行用油圧モータ1L及び右側走行用油圧モータ1Rを駆動させ、且つ、第2作動油でその別の操作に対応する油圧アクチュエータを駆動させる(ステップS5)。
図7は、別の操作の操作量が所定値未満であると判定される場合の油圧回路の状態を示す図であり、図2及び図6に対応する。具体的には、図7は、左右の走行レバーが前進方向にハーフレバー操作され、且つ、アーム操作レバーが閉じ方向にハーフレバー操作された場合の油圧回路の状態を示す。この場合、コントローラ30は、図7に示すように、走行直進弁56を第2弁位置に設定し、可変ロードチェック弁51を第1弁位置に設定し、且つ、切替弁61を第1弁位置に設定する。また、コントローラ30は、制御弁171を第3弁位置の方に移動させ、且つ、制御弁174L及び制御弁174Rのそれぞれを第3弁位置に設定する。油圧回路のこの状態により、図7の太実線で示すように、第1ポンプ14Lが吐出する第1作動油の一部は制御弁174Lを通じて左側走行用油圧モータ1Lに至り、左側走行用油圧モータ1Lから流出する作動油は制御弁174Lを通じて作動油タンクTに至る。また、第1ポンプ14Lが吐出する第1作動油の残りの部分は走行直進弁56及び制御弁174Rを通じて右側走行用油圧モータ1Rに至り、右側走行用油圧モータ1Rから流出する作動油は制御弁174Rを通じて作動油タンクTに至る。また、図7の太点線で示すように、第2ポンプ14Rが吐出する第2作動油は、走行直進弁56、可変ロードチェック弁51、及び制御弁171を通じてアームシリンダ8のボトム側油室に至り、アームシリンダ8のロッド側油室から流出する作動油は、制御弁171及び切替弁61を通じて作動油タンクTに至る。
また、制御弁174L、174Rは、走行レバーの操作量にかかわらず、強制的に且つ瞬時に第3弁位置に設定される。そして、コントローラ30は、第1ポンプ14Lの吐出量を調整することで、左右の走行用油圧モータ1L、1Rの回転速度が左右の走行レバーの操作量に応じた速度となるようにする。
この構成により、コントローラ30は、走行操作を含む複合操作が行われた場合であっても、制御弁174L、174Rのところで発生する圧力損失を低減させながら、走行レバーの操作量に応じた走行用油圧モータ1L、1Rの回転速度を実現できる。
また、別の操作の操作量が所定値以上であると判定した場合(ステップS4のNO)、コントローラ30は、第1作動油で左側走行用油圧モータ1L及び右側走行用油圧モータ1Rを駆動させ、且つ、第2作動油及び第3作動油でその別の操作に対応する油圧アクチュエータを駆動させる(ステップS6)。
図8は、別の操作の操作量が所定値以上であると判定される場合の油圧回路の状態を示す図であり、図2、図6、及び図7に対応する。具体的には、図8は、左右の走行レバーが前進方向にハーフレバー操作され、且つ、アーム操作レバーが閉じ方向にフルレバー操作された場合の油圧回路の状態を示す。この場合、コントローラ30は、図8に示すように、走行直進弁56を第2弁位置に設定し、可変ロードチェック弁51を第1弁位置に設定し、且つ、切替弁61を第1弁位置に設定する。また、コントローラ30は、制御弁171を第3弁位置に設定し、且つ、制御弁174L及び制御弁174Rのそれぞれを第3弁位置に設定する。油圧回路のこの状態により、図8の太実線で示すように、第1ポンプ14Lが吐出する第1作動油の一部は制御弁174Lを通じて左側走行用油圧モータ1Lに至り、左側走行用油圧モータ1Lから流出する作動油は制御弁174Lを通じて作動油タンクTに至る。また、第1ポンプ14Lが吐出する第1作動油の残りの部分は走行直進弁56及び制御弁174Rを通じて右側走行用油圧モータ1Rに至り、右側走行用油圧モータ1Rから流出する作動油は制御弁174Rを通じて作動油タンクTに至る。また、図8の太点線で示すように、第2ポンプ14Rが吐出する第2作動油は、走行直進弁56、可変ロードチェック弁51、及び制御弁171を通じてアームシリンダ8のボトム側油室に至り、アームシリンダ8のロッド側油室から流出する作動油は、制御弁171及び切替弁61を通じて作動油タンクTに至る。
また、制御弁174L、174Rは、走行レバーの操作量にかかわらず、強制的に且つ瞬時に第3弁位置に設定される。そして、コントローラ30は、第1ポンプ14Lの吐出量を調整することで、左右の走行用油圧モータ1L、1Rの回転速度が左右の走行レバーの操作量に応じた速度となるようにする。
この構成により、コントローラ30は、走行操作を含む複合操作が行われた場合であっても、制御弁174L、174Rのところで発生する圧力損失を低減させながら、走行レバーの操作量に応じた走行用油圧モータ1L、1Rの回転速度を実現できる。
また、コントローラ30は、切替弁90を第1弁位置に設定し、且つ、切替弁91を第1弁位置に設定する。そして、コントローラ30は、ポンプ・モータ14Aを油圧ポンプとして作動させる。この場合、ポンプ・モータ14Aが吐出する第3作動油は、図8の太点線で示すように、切替弁90、切替弁91を通じて第2作動油に合流し、さらに制御弁171を通じてアームシリンダ8のボトム側油室に至る。
また、ポンプ・モータ14Aの吐出量は、第1ポンプ14Lの吸収馬力と、第2ポンプ14Rの吸収馬力と、ポンプ・モータ14Aの吸収馬力との合計吸収馬力が駆動源としてのエンジン11の出力馬力を超えないように制御される。なお、油圧ポンプの吸収馬力は、吐出量と吐出圧の積に所定の効率を乗じた値として算出される。
具体的には、図8の例では、第1ポンプ14Lは走行レバーの操作量に応じた吐出量である最大吐出量未満の吐出量で作動油を吐出し、第2ポンプ14Rは最大吐出量で作動油を吐出する。例えば、第1ポンプ14Lの吐出量を80[L/分]とし、第1ポンプ14Lの吐出圧を28[MPa]とすると、第1ポンプ14Lの吸収馬力は38[kW]として算出される。また、第2ポンプ14Rの最大吐出量を200[L/分]とし、第2ポンプ14Rの吐出圧を15[MPa]とすると、第2ポンプ14Rの吸収馬力は50[kW]として算出される。その結果、第1ポンプ14Lの吸収馬力と第2ポンプ14Rの吸収馬力との合計吸収馬力は88[kW]となる。この場合、エンジンの最大出力馬力を110[kW]とすると、エンジンの余裕馬力は22(=110−88)[kW]となる。したがって、ポンプ・モータ14Aは22[kW]分の吸収馬力を利用でき、ポンプ・モータ14Aの吐出圧を第2ポンプ14Rと同じ15[MPa]とすると、最大で88[L/分]の吐出量で作動油を供給できる。
この構成により、コントローラ30は、走行操作を含む複合操作が行われた場合であっても、3つの油圧ポンプの合計吸収馬力がエンジン11の出力馬力を超えない限りにおいてポンプ・モータ14Aが吐出する第3作動油を所望の油圧アクチュエータに追加的に供給できる。具体的には、コントローラ30は、左右の走行用油圧モータ1L、1Rに作動油を供給する第1ポンプ14Lの吸収馬力の低減分を第2ポンプ14Rで利用できない場合であっても、その低減分でポンプ・モータ14Aを油圧ポンプとして作動させ、左右の走行用油圧モータ1L、1R以外の別の油圧アクチュエータに第3作動油を供給できる。そのため、コントローラ30は、走行操作を含む複合操作が行われた場合であっても、制御弁174L、174Rのところで発生する圧力損失を低減させながら、走行レバーの操作量に応じた走行用油圧モータ1L、1Rの回転速度を実現できる。また、別の油圧アクチュエータに供給される作動油の流量不足を生じさせることもない。その結果、別の油圧アクチュエータによって駆動される作業要素の作業性を向上させることができる。
次に、図9を参照し、図1のショベルに搭載される油圧回路の別の構成例について説明する。なお、図9は、図1のショベルに搭載される油圧回路の別の構成例の概略図であり、図2に対応する。また、図9の油圧回路は、切替弁91の変わりに切替弁91Aを備える点で図1の油圧回路と相違するが、その他の点で共通する。そのため、共通部分の説明を省略し、相違部分を詳細に説明する。
切替弁91Aは、コントローラ30からの指令に応じて動作する弁である。本実施例では、切替弁91Aは、ポンプ・モータ14Aと油圧アクチュエータとの間の連通・遮断を切り替え可能な2ポート2位置の電磁弁である。具体的には、切替弁91Aは、第1弁位置にある場合にポンプ・モータ14Aと油圧アクチュエータとの間を連通させ、第2弁位置にある場合にポンプ・モータ14Aと油圧アクチュエータとの間の連通を遮断する。
この構成により、コントローラ30は、ポンプ・モータ14Aが吐出する第3作動油をブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9、旋回用油圧モータ21、及びアキュムレータ80のうちの少なくとも1つに供給できる。
以上の構成より、コントローラ30は、走行用油圧モータ1L、1Rとそれら以外の別の油圧アクチュエータとを同時に動作させる場合、走行直進切替部によって第1ポンプ14Lと走行用油圧モータ1L、1Rとの間を連通させる。そのため、走行用油圧モータ1L、1Rは第1作動油によって駆動され、その別の油圧アクチュエータは第2作動油及び第3作動油のうちの少なくとも第2作動油によって駆動される。また、第1ポンプ14Lと、第2ポンプ14Rと、油圧ポンプとしてのポンプ・モータ14Aとは共通の駆動源であるエンジン11によって駆動される。そのため、コントローラ30は、例えば、第1ポンプ14Lの吸収馬力の低減分を第2ポンプ14Rで利用できない場合であっても、その低減分をポンプ・モータ14Aの駆動に利用でき、エンジン出力をより効率的に利用できる。
また、走行用油圧モータ1L、1Rとそれら以外の別の油圧アクチュエータとを同時に動作させる場合、走行用油圧モータ1L、1Rのそれぞれの回転速度は、第1ポンプ14Lが吐出する第1作動油の吐出量を制御することで調整される。コントローラ30は、走行用油圧モータ1L、1Rを第1作動油のみで駆動できるためである。その結果、コントローラ30は、制御弁174L、174Rのところで発生する圧力損失を低減させながら、走行レバーの操作量に応じた走行用油圧モータ1L、1Rの回転速度を実現できる。また、コントローラ30は、走行用油圧モータ1L、1Rのそれぞれの回転速度を第1作動油の吐出量を制御することで調整するため、少なくとも圧力損失を低減させた分だけ第1ポンプ14Lの吸収馬力を低減させることができる。そのため、その低減分でポンプ・モータ14Aを駆動させる等、エンジン出力をより効率的に利用できる。
また、コントローラ30は、上述の別の油圧アクチュエータの所要の作動油流量が第2ポンプ14Rの最大吐出量を上回る場合に、第2作動油及び第3作動油によって上述の別の油圧アクチュエータを駆動する。また、コントローラ30は、上述の別の油圧アクチュエータの所要の作動油流量が第2ポンプ14Rの最大吐出量以下の場合には第2作動油のみによって上述の別の油圧アクチュエータを駆動する。このように、コントローラ30は、所要の作動油流量の大きさに応じて作動油の供給源の構成を変えることができる。
また、コントローラ30は、第1ポンプ14Lの吸収馬力と第2ポンプ14Rの吸収馬力とポンプ・モータ14Aの吸収馬力との合計吸収馬力が駆動源としてのエンジン11の出力馬力を超えないようにポンプ・モータ14Aの吐出量を制御する。そのため、エンジン11の出力馬力を上回る合計吸収馬力で油圧ポンプが駆動されるのを防止し、エンジン11が過負荷によって停止してしまうのを防止できる。
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなしに上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
例えば、上述の実施例において、ポンプ・モータ14Aは、油圧ポンプとしても油圧モータとしても機能する。しかしながら、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、ポンプ・モータ14Aは油圧ポンプで置き換えられてもよい。