以下、本実施形態に係る電力変換装置の冷却装置について、図1ないし図13を参照しながら説明する。
なお、以下では、自動車向けのパワーコントロールユニットである電力変換装置(以下、「PCU:Power Control Unit」という。)を冷却する場合を例に挙げて説明するが、これに限らない。本発明は、自動車以外の機器、例えば産業機械、のPCUを冷却する場合においても、適用することができる。同様にして、冷却対象物はPCUに限らない。本発明は、冷却することが望まれるあらゆる発熱装置に対して、適用することができる。
また、以下ではエアコンが冷房で運転される場合を例に挙げて説明するが、これに限らない。本発明の各実施形態は、エアコンが暖房で運転されるような環境下であっても、同様にして適用することができる。
また、各図において、同一の装置には同一の符号を付し、重複する説明を省略するものとする。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る電力変換装置の冷却装置に関する概略図であり、(a)はエアコンの熱交換サイクルにおけるエバポレータと、電力変換装置の冷却回路における熱交換器とを、直列に接続した場合の図である。(b)は電力変換装置の冷却回路における熱交換器の内部構造を模式的に示す断面図である。
図1(a)に示すように、本実施形態に係るPCUの冷却装置においては、PCU冷却系であるPCU冷却水流路120と、公知のエアコンの熱交換サイクル系である、エアコン冷媒が通流するエアコン冷媒流路110とを、組み合わせるように構成される。
公知のエアコンの熱交換サイクル系である、エアコン冷媒流路110は、コンプレッサ10、フィルタドライヤ20、コンデンサ30、膨張弁40、エバポレータ50を含んで、この順で環状に接続するようにして構成される。
ここで、車室外側はコンプレッサ10、フィルタドライヤ20、コンデンサ30を含んでこの順に配置され、車室内側には、膨張弁40、エバポレータ50を含んで、この順に配置される。
コンプレッサ10は、圧縮機であり、吸込側から流入したエアコン冷媒を圧縮して、吐出側から吐出すものである。
コンプレッサ10の吐出側の流路には、フィルタドライヤ20が配置される。フィルタドライヤ20は、循環するエアコン冷媒のなかに含まれる異物などを除去し、特にコンプレッサ10や膨張弁40を保護するものである。
コンデンサ30は車室外側に設けられた熱交換器で、凝縮器とも呼ばれる。コンプレッサ10で圧縮されて高温高圧となった冷媒と、送風機60によって通気される外気と、がコンデンサ30で熱交換され、冷媒が凝縮され、中温高圧となる。
膨張弁40は、中温高圧状態の冷媒を減圧させて断熱膨張させるバルブである。断熱膨張過程では、温度が下がる。これにより、冷媒は低温低圧の冷えた冷媒となって、エバポレータ50に供給される。膨張弁40は車室内側に設けられる。
エバポレータ50は、車室内側に設けられた熱交換器であり、蒸発器とも呼ばれる。エバポレータ50は、熱交換を促進するために、細い冷媒配管が幾重にも折り重ねられた構造となっている。
なお、エバポレータ50では、膨張弁40を通過した低温低圧の冷えた冷媒と、ブロアファン415によって通気される外気または内気の空気とが熱交換される。ここで、外気または内気のいずれと熱交換するかについては、ユーザによるエアコンの設定が、外気導入となっているか、内気循環となっているか、のいずれの設定になっているかに依存する。
この際、ブロアファン415によって吸気された暖かい空気は、冷えた冷媒の熱を吸熱して、冷気となり、室内に供給される(冷房運転)。また、冷たい冷媒は、暖かい空気の熱を吸熱して気化し、蒸発する。
気化した高温低圧の冷媒は、車室外へと導かれ、再びコンプレッサ10の入口側、すなわち吸込側、に供給される。
次に、PCU冷却系であるPCU冷却水流路120は、車室外側に電動水ポンプ90、PCU100、車室内側にPCU冷却水冷却用熱交換器80を含んで、この順で接続されている。
PCU100は、例えばインバータなどの電力変換装置が収容される。なお、PCU100は冷却することが望まれる発熱装置であり、本実施形態における冷却対象物である。
PCU冷却水用電動水ポンプ90は、PCU冷却水を循環させるための水ポンプである。なお、本実施形態におけるPCU冷却水には、例えば内燃機関を冷却するための冷却液として用いられる不凍液の、LLC(ロングライフクーラント)を用いてもよい。
図1(b)に示すように、PCU冷却水冷却用熱交換器80は、例えばエアコン冷媒流路110の配管の周囲に当接するようにして、PCU冷却水流路120が配置されている。つまり、エアコン冷媒流路110と、PCU冷却水流路120とは、2重管構造の関係になっている。更に、PCU冷却水流路120の配管のうち、エアコン冷媒流路110とは反対側の外装には、空冷フィン85が設けられている。
すなわち、PCU冷却水冷却用熱交換器80のイメージは、例えばエアコン冷媒流路110とPCU冷却水流路120とを重ねた2重管構造となっており、これに加えて、その外周に空冷フィン85を加工したフィンアンドチューブの熱交換器となっている。
また、この例では、PCU冷却水冷却用熱交換器80は、ブロアファン415が作り出す空気流れの下流側に設けられる。より好適には、エバポレータ50の下流側となるように配置する。この場合、ブロアファン415によってエバポレータ50に送り込まれた空気が、熱交換して冷気となって空冷フィン85に当たり、PCU冷却水冷却用熱交換器80の冷却がより一層促進される。または、後記するように、エバポレータ50の一部にPCU冷却水冷却用熱交換器80が備わるようにしてもよい。
このように、PCU冷却水流路120と、エアコン冷媒流路110とを当接させる構成とすることで、PCU冷却水と、エアコン冷媒と、の間の熱交換効率を高めることができる。
また、PCU冷却水流路120を、2重管構造でエアコン冷媒流路110よりも外側に設けるとともに、その外周に空冷フィン85を設け、ブロアファン415よりも下流位置に配置させる構成とすることで、PCU冷却水を、空冷フィン85と、エアコン冷媒流路110とで挟み込むようにして両側から冷却するとともに、空冷フィン85で冷気を捉えることができ、冷却効率をさらに向上させることができる。
(PCU冷却水冷却用熱交換器80の変形例)
なお、PCU冷却水冷却用熱交換器80は、例えばエアコン冷媒流路110の配管の両側に当接するようにしてPCU冷却水流路120,120の配管が配置されるようにしてもよい(サンドイッチ構造)。さらに、PCU冷却水流路120,120の配管のうち、エアコン冷媒流路110とは反対側の外装には、空冷フィン85,85を設けるようにしてもよい。
つまり、PCU冷却水流路120を、エアコン冷媒流路110よりも外側に設けるとともに、その外周に空冷フィン85を設け、ブロアファン415よりも下流位置に配置させる構成とする。これにより、PCU冷却水を、空冷フィン85と、エアコン冷媒流路110とでサンドイッチのように挟み込むようにして両側から冷却するとともに、空冷フィン85で冷気を捉える。このように構成しても、冷却効率を向上させることができる。
なお、空冷フィン85は、通常複数備えられる。また、フィンの方向は、PCU冷却水冷却用熱交換器80の長手方向と平行な方向となるように設置してもよいし、PCU冷却水冷却用熱交換器80の長手方向と直交する方向に設置してもよい。
なお、本実施形態においては、エバポレータ50と、PCU冷却水冷却用熱交換器80とは、直列に接続されている。
また、エアコンの運転およびPCU冷却水の冷却を統合制御するために、例えばオートエアコンなどの公知のエアコンシステムに加えて、PCU冷却水の水温制御を行うための制御装置と、フィン温度センサ270、PCU冷却水用水温センサ280と、が備えられている。
なお、制御線や通信線は、図の煩雑を避けるために適宜省略している。
なお、以下では、本実施形態におけるPCU冷却水の水温制御を行うための制御装置は、エアコンECU300と一体の構成物であるとして説明するが、これに限定するものではない。すなわち、エアコンECU300とは別体となるように、別途制御装置を設けてもよい。
本実施形態におけるエアコンECU300は、オートエアコンが停止している間でも、常時センシングにより温度検出手段であるフィン温度センサ270、PCU冷却水用水温センサ280の温度データを含むデータを取得して、例えば公知のエアコンシステムに備えられた、車室内に連通するドア(詳細後記)などを開閉制御可能に構成されている。
フィン温度センサ270は、例えばPCU冷却水冷却用熱交換器80のうち、エアコン冷媒流路110の最下流の位置に設けられた空冷フィン85の先端部分に設けられている。
このフィン温度センサ270は、PCU冷却水冷却用熱交換器80のうち、エアコン冷媒流路110の最も温度が高くなる部分の温度を計測するものである。
また、PCU冷却水用水温センサ280は、PCU冷却水流路120のうち、例えばPCU100の出口付近に設置される。PCU冷却水用水温センサ280は、PCU冷却水が、PCU100の排熱を吸熱し、最も温度が高くなっている部分に設置され、PCU冷却水の水温を計測するものである。
フィン温度センサ270、PCU冷却水用水温センサ280はともに、例えばサーミスタなどの温度センサを使用してもよい。例えば、フィン温度センサ270に関しては、温度センサを空冷フィン85の先端部分に接触などさせたものを使用することができる。また、PCU冷却水用水温センサ280に関しては、温度センサを配管表面に接触などさせたものを使用してもよい。また、温度センサは例えばサーミスタに限定されず、直接エアコンの冷媒ガス温度やPCU冷却水の冷却水温を計測できるような装置を用いてもよい。
送風機60は、コンデンサ30の冷媒配管中を流れるエアコン冷媒と空気と、を熱交換するためのものである。また、ブロアファン415は、エバポレータ50の冷媒配管中を流れるエアコン冷媒と空気(気流)とを熱交換するためのものである。
これとあわせて、ブロアファン415は、空気流れから見てエバポレータ50の下流に置かれたPCU冷却水冷却用熱交換器80において、PCU冷却水流路120の熱が伝導された空冷フィン85と、空気(気流)とを熱交換するためのものである。
(図1(a)の変形例)
次に、図2を参照しながら、本実施形態に係る変形例を説明する。なお、図1(a)と同様の構成においては、同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図2は、第1実施形態に係る電力変換装置のその他の冷却装置に関する概略図であり、エアコンの熱交換サイクルにおけるエバポレータと、PCUの冷却回路における熱交換器とを、並列に接続した場合の図である。
前記の図1では、エアコンの熱交換サイクルにおけるエバポレータ50と、PCU冷却水冷却用熱交換器80とを、直列の位置関係となるように接続していた。本変形例では、この部分を並列の位置関係となるように接続した。さらに、エバポレータ50と並列するPCU冷却水冷却用熱交換器80側のエアコン冷媒流路110には、流量調整のためのバルブ45を備えた。
バルブ45は、PCU冷却水冷却用熱交換器80側に流れ込むエアコン冷媒の流量を調整するためのものであり、例えば電動弁である。このバルブを設けることで、例えば、エアコン冷媒のPCU冷却水冷却用熱交換器80側への流れ込み量を絞ったり、全開にしたり、といった調節が可能になる。それゆえ、PCU冷却水冷却用熱交換器80での熱交換の温度管理を行いやすくなるというメリットを生む。
(第1実施形態続き)
次に、図3を参照しながら、本実施形態に係るPCU冷却水冷却用熱交換器80(図1、図2参照)の、公知の車載のエアコンシステムを構成するHVACへの組込例を説明する。
図3は、PCU冷却水流路120上に設けられるPCU冷却水冷却用熱交換器80を、HVACへ組込んだ際の説明図である。ちなみに、この図3の例では、一例としてPCU冷却水冷却用熱交換器80が、エバポレータ50に内蔵されるようにして組み込まれている。
なお、一般に車両用のエアコンは、家庭用のエアコンと比較して、余剰能力を有している。本実施形態ではその余剰分を利用するものである。
ここで、HVACとは、Heating,Ventilation,and Air Conditioningの略称である。ここで一般的な、HVACの概要を説明する。まず換気切替ドアモータ420によって、換気切替ドア425の回動角θ1を切り換えることで、外気を導入するのか、内気を取り込むのかが決定される。
次に、ブロアファンモータ410を動かすことで、ブロアファン415が回転し、内気または外気が吸い込まれ、エバポレータ50に向けて吐き出される。
次に、エバポレータ50において、エアコン冷媒と空気が熱交換されて冷気となる。その後、設定温度となるようにエアミックスドア445の回動角θ3がエアミックスドアモータ440によって調整されて、一部の冷気がヒータコア130に取り込まれる。
なお、以下では説明の便宜上、ブロアファン415からエアミックスドア445までの流路を第1流路と呼ぶ。
ヒータコア130では、例えば内燃機関を有する自動車であれば内燃機関の燃焼熱が導かれ、また電気自動車であれば例えば電気ヒータなどを設けるなどの適宜の方法によって、熱源が供給されている。それゆえに、取り込まれた冷気は、このヒータコア130の熱源と熱交換して暖気となる。
エバポレータ50をそのまま通過した冷気は、ヒータコア130を通過した暖気と混ざって所望の温度に調整され、デフロスタダクト457、フェースダクト467、フットダクト477など、適宜のダクトを介して車室内に供給される。
この際、例えばデフロスタダクト457へと通気する場合は、デフロスタドアモータ450を作動させ、デフロスタドア455を開くように回動角θ4を調整すればよい。
また、例えばフェースダクト467へと通気する場合は、フェースドアモータ460を作動させ、フェースドア465を開くように回動角θ5を調整すればよい。
また、例えばフットダクト477へと通気する場合は、フットドアモータ470を作動させ、フットドア475を開くように回動角θ6を調整すればよい。
なお、以下では説明の便宜上、エアミックスドア445からデフロスタドア455、またはエアミックスドア445からフェースドア465までの流路を第2流路、ヒータコア130からフットドア475までの流路を第3流路と呼ぶ。
このような公知のHVACにおいて、さらに本実施形態では、図1、図2におけるPCU冷却水冷却用熱交換器80を、例えば、エバポレータ50の内部に組み込み、両者の装置を一体化させることを考える。
ただし、これはあくまで一例であって、PCU冷却水冷却用熱交換器80を、例えばブロアファン415による空気流れから見て、エバポレータ50の下流側近傍に別体で配置するような構成とすることもできる。
PCU冷却水冷却用熱交換器80を、エバポレータ50の内部に組み込み、両者の装置を一体化させた場合には、PCU冷却水冷却用熱交換器80を設置するスペースを省き、装置全体を小型化することができる。
この際、PCU冷却水冷却用熱交換器80の、エバポレータ50への組み込み位置は、なるべくPCU100から離れた位置、すなわち、エバポレータ50の最上部(紙面上)でかつ、空気流れから見て下流寄り(紙面右)の位置とすることが望ましい。
なぜならば、エバポレータ50の最上部(紙面上)の位置とすれば、PCU冷却水がエバポレータ50内を通って、PCU冷却水冷却用熱交換器80に達するまでの間の距離が延び、その間にPCU冷却水がエバポレータ50で生成された冷気と熱交換して放熱することで、冷却がより一層促進されるからである。
また、エバポレータ50の最上部(紙面上)でかつ、下流寄り(紙面右)の位置にPCU冷却水冷却用熱交換器80を組み込むと、PCU冷却水冷却用熱交換器80の直近であって、かつ空気流れから見て下流にあたる位置に、外気と連通する強制排気ダクト437を設けることによって、PCU冷却水冷却用熱交換器80を通過した空気を、強制的かつ効率的に外気へと排気させることができるようになる。
この際は、例えば強制排気ドアモータ430を作動させ、強制排気ドア435を開くように回動角θ2を調整するようにすればよい。
なお、エバポレータ50の最上部(紙面上)でかつ、気流すなわち空気流れの上流寄り(紙面左)の位置にPCU冷却水冷却用熱交換器80を組み込む場合と比べて、空気流れの下流寄り(紙面右)の位置に組み込めば、PCU冷却水冷却用熱交換器80に到達する前に、エバポレータ50によって空気が冷却され、その冷却された空気がPCU冷却水冷却用熱交換器80に到達することになるので、より好適である。
図4〜図9に、このような構成とした場合の、HVACの動作の一例を簡単に紹介する。
なお、図3と同様の構成については同一の符号を付している。また、空気の流れを示す矢印は、実線の場合は実際に空気流れが存在することを模式的に示したものである。また、破線の場合は、実際には空気流れが存在しないことを模式的に示したものである。
まず、図4を参照しながら、HVACへの組込み動作例(その1)を紹介する。
この動作例ではそれぞれ、換気切替ドア425が外気導入、強制排気ドア435が開、エアミックスドア445が閉、デフロスタドア455が閉、フェースドア465が開、フットドア475が閉の位置となっている。
この状態でブロアファン415を作動させると、ファンの旋回に伴う負圧で外気が吸い込まれ、この外気がエバポレータ50に向けて吐き出される(第1流路)。
そして、その空気流れ、すなわち気流の一部はPCU冷却水冷却用熱交換器80を通過する際に、PCU冷却水冷却用熱交換器80に備えられた空冷フィン85と熱交換を行って、PCU冷却水を冷却する。
また、PCU冷却水は、PCU冷却水冷却用熱交換器80の内部を通流する際に、前記のとおりエアコン冷媒とも直接熱交換を行い、冷却される。なぜならば、例えば、PCU冷却水冷却用熱交換器80が前記の2重管構造であれば、外側にPCU冷却水が流れ、内側にエアコン冷媒が流れているからである。
このようにして冷却されたPCU冷却水は、PCU冷却水流路120を通流してPCU100へと供給され、PCU100を冷却することができる。
また、PCU冷却水冷却用熱交換器80を通過する際に、空冷フィン85と熱交換し、PCU冷却水の熱を吸熱した空気は、例えば、強制排気ドア435を経由して、強制排気ダクト437から外気中に全て排気され、車室内のエアコンの空気調和に全く影響が及ばないようにすることができる。
また、第1流路を通過した残りの冷気は、全てが第2流路へと流れ込み、開状態となっているフェースドア465を経由して、フェースダクト467から車室内に供給される。
本件は、例えばエアコンが効いた夏場の車内のように、車外が暑くて、車内が涼しいような場合の動作例である。このように本実施形態を適用し、PCU100を冷却させてもよい。
次に、図5を参照しながら、HVACへの組込み動作例(その2)を紹介する。
この動作例ではそれぞれ、換気切替ドア425が内気循環、強制排気ドア435が閉、エアミックスドア445が閉、デフロスタドア455が閉、フェースドア465が開、フットドア475が閉の位置となっている。
この状態でブロアファン415を作動させると、開いた換気切替ドア425を介して、ファンの旋回に伴う負圧で車室内の内気が吸い込まれ、この内気がエバポレータ50に向けて吐き出される(第1流路)。
そして、その一部はPCU冷却水冷却用熱交換器80を通過する際に、PCU冷却水冷却用熱交換器80に備えられた空冷フィン85と熱交換を行って、PCU冷却水を冷却する。
また、PCU冷却水は、動作例(その1)と同様、PCU冷却水冷却用熱交換器80の内部を通流する際に、前記のとおりエアコン冷媒とも直接熱交換を行い、冷却される。
このようにして冷却されたPCU冷却水は、PCU冷却水流路120を通流してPCU100へと供給され、PCU100を冷却することができる。
また、PCU冷却水冷却用熱交換器80を通過する際に、空冷フィン85と熱交換し、PCU冷却水の熱を吸熱した空気と、第1流路を通過した残りの冷気とが混ざって第2流路へと流れ込み、開状態となっているフェースドア465を経由して、フェースダクト467から車室内に供給される。
本件は、例えばエアコンが効いた夏場の車内のうち、図4で示した条件よりも、更に車外が暑いような場合の動作例である。このように本実施形態を適用し、PCU100を冷却させてもよい。
次に、図6を参照しながら、HVACへの組込み動作例(その3)を紹介する。
この動作例ではそれぞれ、換気切替ドア425が外気導入、強制排気ドア435が閉、エアミックスドア445が開、デフロスタドア455が閉、フェースドア465が開、フットドア475が開の位置となっている。
この状態でブロアファン415を作動させると、ファンの旋回に伴う負圧で外気が吸い込まれ、この外気がエバポレータ50に向けて吐き出される(第1流路)。
そして、その空気流れ、すなわち気流の一部はPCU冷却水冷却用熱交換器80を通過する際に、PCU冷却水冷却用熱交換器80に備えられた空冷フィン85と熱交換を行って、PCU冷却水を冷却する。
また、PCU冷却水は、動作例(その1)と同様、PCU冷却水冷却用熱交換器80の内部を通流する際に、前記のとおりエアコン冷媒とも直接熱交換を行い、冷却される。ちなみに、後記のように秋から冬にかけての日射の少ない日を想定した場合、エアコン冷媒は流れが停止していることがあり得る。
このようにして冷却されたPCU冷却水は、PCU冷却水流路120を通流してPCU100へと供給され、PCU100を冷却することができる。
また、PCU冷却水冷却用熱交換器80を通過する際に、空冷フィン85と熱交換し、PCU冷却水の熱を吸熱した空気は、第2流路を進み、開状態となっているフェースドア465を経由して、フェースダクト467から車室内に供給されるようにすることができる。
また、第1流路からヒータコア130を介して暖気となり、第3流路に流れた空気は、開状態となっているフットドア475を経由して、フットダクト477から車室内に供給される。
本件は、例えば秋から冬にかけての日射が少ない日の場合の動作例である。このように本実施形態を適用し、PCU100を冷却させてもよい。
次に、図7を参照しながら、HVACへの組込み動作例(その4)を紹介する。
この動作例ではそれぞれ、換気切替ドア425が内気循環、強制排気ドア435が閉、エアミックスドア445が開、デフロスタドア455が閉、フェースドア465が開、フットドア475が開の位置となっている。
本動作例は、前記した図6の動作例(その3)の、換気切替ドア425を、外気導入から内気循環の位置に変更したものであり、それ以外はすべて同一であるので、詳細な説明を省略する。
本件は、例えば秋から冬にかけての日射が少ない日のうち、図6で示した条件よりも気温が低い場合の動作例である。このように本実施形態を適用し、PCU100を冷却させてもよい。
次に、図8を参照しながら、HVACへの組込み動作例(その5)を紹介する。
この動作例ではそれぞれ、換気切替ドア425が外気導入、強制排気ドア435が閉、エアミックスドア445が全開、デフロスタドア455が閉、フェースドア465が開、フットドア475が開の位置となっている。
この状態でブロアファン415を作動させると、ファンの旋回に伴う負圧で外気が吸い込まれ、この外気がエバポレータ50に向けて吐き出される(第1流路)。
そして、その一部はPCU冷却水冷却用熱交換器80を通過する際に、PCU冷却水冷却用熱交換器80に備えられた空冷フィン85と熱交換を行って、PCU冷却水を冷却する。
また、PCU冷却水は、前記のようにPCU冷却水冷却用熱交換器80の内部を通流する際に、前記のとおりエアコン冷媒とも直接熱交換を行い、冷却される。なお、冬場の気温の低い日なので、エアコン冷媒は止まっている可能性もある。
このようにして冷却されたPCU冷却水は、PCU冷却水流路120を通流してPCU100へと供給され、PCU100を冷却することができる。
また、PCU冷却水冷却用熱交換器80を通過する際に、空冷フィン85と熱交換し、PCU冷却水の熱を吸熱した空気と、第1流路を通過した残りの空気は、エアミックスドア445を介して、全てがヒータコア130へと流れ込む。
そして、ヒータコア130を通過し、暖められた空気は、第3流路を通過して、開状態となっているフットドア475を経由して、フットダクト477から車室内に供給される。
本件は、例えば冬の気温が低い場合の動作例である。このように本実施形態を適用し、PCU100を冷却させてもよい。
次に、図9を参照しながら、HVACへの組込み動作例(その6)を紹介する。
この動作例ではそれぞれ、換気切替ドア425が内気循環、強制排気ドア435が閉、エアミックスドア445が全開、デフロスタドア455が閉、フェースドア465が開、フットドア475が開の位置となっている。
本動作例は、図8の動作例(その5)の、換気切替ドア425を、外気導入から内気循環の位置に変更したものであり、それ以外はすべて同一であるので、詳細な説明を省略する。なお、図8の例とは異なり、内気循環なので、図8の例よりもエアコンコンプレッサ10が動いている可能性は高い。
本件は、例えば冬の気温が低い場合の動作例である。このように本実施形態を適用し、PCU100を冷却させてもよい。
次に、図10を参照しながら、本実施形態に係るPCU冷却水冷却用熱交換器80を、HVACのエバポレータ50へ組み込んだ際の特徴的な動作を説明する。
本実施形態ではそれぞれ、換気切替ドア425が外気導入、強制排気ドア435が開、エアミックスドア445が閉、デフロスタドア455が閉、フェースドア465が閉、フットドア475が閉の位置となっている。
つまり、HVAC内部において、外部空間と連通する開ドアが強制排気ドア435のみとなっている。つまり、車室内側への連通ドアである、デフロスタドア455、フェースドア465、フットドア475は、いずれも全て閉状態となっている。すなわち、第2流路および第3流路に、空気流れが発生しないようにされている。また、暖房を使用しない季節の場合、ヒータコア130への空気の流量調節を担うエアミックスドア445は閉となっている。
この状態でブロアファン415を作動させると、ファンの旋回に伴う負圧で外気が吸い込まれ、この外気がエバポレータ50に向けて吐き出される(第1流路)。
そして、その一部はPCU冷却水冷却用熱交換器80を通過する際に、PCU冷却水冷却用熱交換器80に備えられた空冷フィン85と熱交換を行って、PCU冷却水を冷却する。
また、PCU冷却水は、PCU冷却水冷却用熱交換器80の内部を通流する際に、前記のとおりエアコン冷媒とも直接熱交換を行い、冷却される。なお、エアコンのコンプレッサ10が動いているとすれば、PCU冷却水の冷却用のためである。
このようにして冷却されたPCU冷却水は、PCU冷却水流路120を通流してPCU100へと供給され、PCU100を冷却することができる。
また、PCU冷却水冷却用熱交換器80を通過する際に、空冷フィン85と熱交換し、PCU冷却水の熱を吸熱して暖かくなった空気は、全てが強制排気ドア435を経由して、強制排気ダクト437から外気中に排気される。
本実施形態は、例えば、ユーザがエアコンをOFFにして走行しているような場合でも、車室内側のドア455,465,475を全て閉じた状態でブロアファン415を作動させることで、車室内側にいる乗員から見た見かけ上は、エアコンOFF状態を維持できる。それゆえに、乗員に違和感を与えることなく、PCU100の冷却を実行できる。
次に、図11を参照しながら、第1実施形態に係るPCU100の冷却装置の、制御機構の構成を説明する。
本実施形態において、エアコンECU300は、冷却条件判定部310と、駆動指令部320と、表示部330とを含んで構成される。
冷却条件判定部310は、例えば計測された温度などの入力情報をもとにして、どのような方法でPCU冷却水を冷却させるのか、HVACのどのドアを開閉させるか、などを決定する。
また、駆動指令部320は、冷却条件判定部310において決定された内容に従って、各制御要素に駆動指令を送信する。
表示部330は、エアコンの設定温度などのユーザの選択を受け付けるとともに、ユーザの選択の有無に関係なく、エアコンに関する運転状態などに関する情報を、ユーザが視認可能な形で表示装置400に表示させる。
以下、入力側の接続機器を説明する。
エアコンECU300の冷却条件判定部310には、例えば公知のエアコンシステムに付属の外気温センサ210、内気温センサ220、日射センサ230、エバポレータ温度センサ240、ヒータ温度センサ250、湿度センサ260(符号210〜260は公知のセンサのため図1〜図10ではいずれも不図示)からの検出信号に加えて、フィン温度センサ270、PCU冷却水用水温センサ280(図1・図2参照)などからの検出信号が入力される。
これらはそれぞれ一台ずつに限らない。これらはそれぞれ、複数の計測機器を用いて、所定箇所をセンシングするように構成してもよい。
また、表示部330には、公知のエアコンシステムに付属のコントロールパネル200を介して、ユーザが選択した情報が入力される。これは、例えばエアコン自体のON/OFFに関する検出情報であったり、所望の設定温度に関する検出情報であったり、冷暖房や除湿といった運転形態、風向きや風量などに関する検出情報である。コントロールパネル200は、例えばタッチパネルであってもよいし、ノブ状のスイッチなどであってもよい。
次に、出力側の接続機器を説明する。
エアコンECU300の駆動指令部320には、出力側の機器として、例えばブロアファンモータ410、換気切替ドアモータ420、強制排気ドアモータ430、エアミックスドアモータ440、デフロスタドアモータ450、フェースドアモータ460、フットドアモータ470、PCU冷却水用電動水ポンプモータ95が接続される。
ここで、ブロアファンモータ410はブロアファン415を駆動させるモータである。換気切替ドアモータ420は、換気切替ドア425を駆動させるモータである。強制排気ドアモータ430は、強制排気ドア435を駆動させるモータである。エアミックスドアモータ440は、エアミックスドア445を駆動させるモータである。
また、デフロスタドアモータ450は、デフロスタドア455を駆動させるモータである。フェースドアモータ460は、フェースドア465を駆動させるモータである。フットドアモータ470は、フットドア475を駆動させるモータである。PCU冷却水用電動水ポンプモータ95は、PCU冷却水を、PCU冷却水流路120内で循環させるための電動水ポンプ90を駆動させるモータである。
また、エアコンECU300の表示部330には、出力側の機器として、表示装置400が接続される。
次に、図12を参照しながら、本実施形態に係るPCU冷却水を冷却するための制御フローを説明する。
ステップS10において、本実施形態に係るエアコンECU300は、PCU冷却水用電動水ポンプモータ95の出力を制御して、常時エアコンの運転状態に係らず、所定の出力となるように、PCU冷却水の流量制御を行う。
次に、ステップS20において、エアコンECU300の冷却条件判定部310は、オートエアコンが運転中か否かを判定する。ステップS20においてYes、つまり、オートエアコンが運転中であると判定した場合は、ステップS90に進む。その一方、ステップS20でNo、すなわち、オートエアコンが運転中でないと判定された場合は、ステップS30に進む。
なお、ステップS20がNoの場合は、乗員はエアコンを作動させているという自覚がない。そこで、詳細は後記するが、ステップS70において、各ドアを全て閉として、乗員に違和感を感じさせないようにしている。
ステップS30において、冷却条件判定部310は、エアコン冷媒温度よりもPCU冷却水温度の方が高いか否かを判定する。
なお、エアコン冷媒温度は、例えば公知のエアコンシステムに付属の図示しないエバポレータ温度センサ240、またはフィン温度センサ270の各温度検出手段のいずれかの計測値を用いるか、一方の値を他方の値で補正するなどして、エアコン冷媒温度を推定するようにすればよい。
また、PCU冷却水の温度は、例えばPCU冷却水用水温センサ280で計測した値を参照するようにすればよい。
ステップS30でYes、すなわち、PCU冷却水温度のほうが、エアコン冷媒温度よりも高いと判定された場合は、PCU冷却水冷却用熱交換器80において、PCU冷却水からエアコン冷媒に対して放熱が起こり、自然とPCU冷却水が冷却される状態である。
ゆえに、この場合はそのままでも冷却の破綻はない状態と判定し、ステップS90に進む。
ステップS30でNo、すなわち、エアコン冷媒温度のほうが、PCU冷却水の温度よりも高いと判定された場合は、PCU冷却水冷却用熱交換器80において、エアコン冷媒から、PCU冷却水に向けて放熱が起こり、このままではPCU冷却水が吸熱して益々昇温していく状態であると考えられる。ゆえに、次に空冷フィン85を介してPCU冷却水の熱を外気に放熱することが可能か否かを判定するために、ステップS40に進む。
ステップS40において、冷却条件判定部310は、外気温度よりもPCU冷却水温度の方が高いか否かを判定する。ここで、外気温度は、例えば公知のエアコンシステムに付属の図示しない外気温センサ210の値を参照するようにすればよい。また、PCU冷却水の温度は、例えばPCU冷却水用水温センサ280で計測した値を参照するようにする。
ステップS40でYes、すなわち外気温度が、PCU冷却水温度よりも低いと判定した場合は、空冷フィン85を介してPCU冷却水の熱を外気に放熱することが可能な状態であると考えられる。
ゆえに、ステップS50において、エアコンECU300の駆動指令部320は、換気切替ドアモータ420に指令を送り、換気切替ドア425の回動角θ1を外気導入の位置に変更させて、外気を導入するように制御する。
次に、ステップS60に進み、駆動指令部320は、強制排気ドアモータ430に指令を送り、強制排気ドア435の回動角θ2を開の位置に変更させて、強制排気ダクトが開状態となるように制御する。
次に、ステップS70に進み、駆動指令部320は、車室内側へ連通するダクトである、デフロスタダクト457、フェースダクト467、フットダクト477が全て閉状態となるように、各ドアモータに指令を送る。これは、乗員に違和感を感じさせないようにするためである。また、ステップS30でNo、すなわちエアコン冷媒温度が昇温する季節の場合であるので、ヒータコア130への空気流量を絞る目的で、エアミックスドア445も閉とする。
具体的には、デフロスタダクト457を閉状態とするために、駆動指令部320は、デフロスタドアモータ450に対して、デフロスタドア455が閉となるように、回動角θ4を変更させる。
同様にして、フェースダクト467を閉状態とするために、駆動指令部320は、フェースドアモータ460に対して、フェースドア465が閉となるように、回動角θ5を変更させる。
同様にして、フットダクト477を閉状態とするために、駆動指令部320は、フットドアモータ470に対して、フットドア475が閉となるように、回動角θ6を変更させる。
同様にして、エアミックスドア445を閉とするために、駆動指令部320は、エアミックスドアモータ440に対して、エアミックスドア445が閉となるように、回動角θ3を変更させる。
次に、ステップS80に進み、駆動指令部320は、ブロアファン415を回転させるように、ブロアファンモータ410に指令を送ったのち、ステップS90へと進む。
なお、ステップS50〜ステップS80までの処理は、この順で連続的に行ってもよいし、順序を問わず、一斉に、同時に行うようにしてもよい。
このようにすることで、図10で説明したHVACの動作図と同様の、各ドアの開閉状態およびPCU100の冷却状態が実現される。
ここで、ステップS70でデフロスタドア455、フェースドア465、フットドア475を一斉に閉とする理由は、以下の通りである。
ステップS70は、ステップS20でNo、すなわち、オートエアコンが停止中であるという環境下で行われるステップである。
このため、ステップS80でブロアファン415を回した際に、もし、車室内に連通するデフロスタダクト457、フェースダクト467、フットダクト477のいずれかが、ひとつでも開状態となっているとすると、そこからブロアされた空気が吹き出すことになってしまい、乗員が違和感を感じてしまう可能性がある。つまり、ステップS20でオートエアコンが停止中であるのに、開いているダクトから空気が吹き出して乗員に違和感を生じさせることがある。
それゆえに、そのような事態を避けるために、駆動指令部320は、ステップS70において、車室内側へ連通する全てのダクト、具体的にはデフロスタダクト457、フェースダクト467、フットダクト477が閉状態となるように、各ドアモータに指令を送るのである。
ステップS40でNo、すなわち外気温度が、PCU冷却水温度よりも高いと判定した場合は、空冷フィン85を介してPCU冷却水の熱を外気に放熱することができない状態であると考えられる。
ゆえに、この場合は、エアコンのコンプレッサ10を強制的に運転させ、エアコン冷媒を強制的に冷却させることにより、PCU冷却水を冷却させるために、ステップS90に進む。
ステップS90において、冷却条件判定部310は、PCU100において、過熱保護温度の検出を行う。ここで、PCU100の過熱保護温度とは、PCU100の動作保証を超える温度である。
PCU100の温度は、例えば図示しない温度センサなどの温度検出手段を用いて、直接PCU100のチップ温度を計測してもよいし、PCU冷却水の水温を、PCU冷却水用水温センサ280で計測するようにしてもよい。
ステップS90でYes、すなわち、PCU100の過熱保護温度、つまり、PCU100の動作保証を超える温度を検出した場合は、ステップS100に進む。
ステップS100において、駆動指令部320は、エアコンのコンプレッサ10に指令を送り、強制的にコンプレッサ10を運転させる。これは、たとえユーザがエアコンをOFFにしていたとしても、強制的に作動させるステップである。このようにすることで、エアコン冷媒が急速に冷却され、PCU冷却水冷却用熱交換器80において、PCU冷却水を強制的に冷却することができる。そして、ステップS10に戻る。
ステップS90でNo、すなわち、PCU100の過熱保護温度、つまり、PCU100の動作保証を超えるような温度を検出しなかった場合は、特にPCU冷却水温に関し、何らかの処置を講じなければならないなどの、緊急性を要する状況ではないと判断し、本フローの最初である、ステップS10にリターンする。
以上により、PCU100の効率的な冷却が実現される。
(作用・効果)
本実施形態の作用・効果を改めてまとめると、以下のようになる。
本実施形態では、PCU冷却水冷却用熱交換器80を、例えばエバポレータ50と一体もしくは別体として構成する。
ここで、PCU冷却水冷却用熱交換器80は、PCU冷却水流路120の配管が、エアコン冷媒流路110の配管を外側から当接するように挟み込み、更にPCU冷却水流路120の配管の外周に、空冷フィン85を備えて構成される。つまり、2重管+空冷フィン構造を備えている。
このようなPCU冷却水冷却用熱交換器80を、エバポレータ50と一体として、その内部に組み込んだ場合には、PCU冷却水冷却用熱交換器80を別途設けるためのスペースを、省くことができる。
この省スペース化により、他の機器配置のレイアウトなど、設計の自由度を高めることができる。
また、PCU冷却水冷却用熱交換器80を、エバポレータ50とは別体として配置した場合には、空気流れから見て、エバポレータ50の下流近傍に配置することで、エバポレータ50を通過した冷気を空冷フィン85で捕らえ、熱交換効率を一層向上させることができる。
また、HVACには、PCU冷却水冷却用熱交換器80の空冷フィン85で熱交換された空気を排出するために、強制排気ダクト437、強制排気ドア435および強制排気ドアモータ430が備えられる。
このように構成することで、例えば、エアコンがOFFとなっていて、かつエアコン冷媒温度の方が、PCU冷却水温度よりも高いような環境下であっても、外気温度とPCU冷却水温度を比較して、PCU冷却水温度の方が高い場合には、HVACの車室内側に連通するダクトを全閉状態で維持し、外気導入を行い、ブロアファン415を回し、空冷フィン85を介して外気と熱交換させてそのまま外気へ排気することができる(ステップS40でYes〜ステップS80)。
このようにすることで、乗員に違和感を与えずに、PCU冷却水を効率的に冷却することができる。また、この際エアコンのコンプレッサ10は作動させていないので、静粛性を向上させて、乗員のより快適な居住空間を確保することができる。また、省エネ効果を高めることで、燃費あるいは電費の向上および航続距離の拡大に貢献することができる。
また、その他の環境下、例えば外気温度よりもPCU冷却水温度の方が低い場合や、エアコン冷媒温度の方が、PCU冷却水温度よりも低いような場合には、PCU100の過熱保護温度を検出し(ステップS90)、過熱保護温度が検出された場合には、強制的にエアコンコンプレッサ10を作動させ、エアコン冷媒を急速に冷却させて、これとPCU冷却水とを熱交換させることで、PCU冷却水を冷却させる。
このように構成することで、外気温度を考慮した、空冷フィン85による冷却と、エアコン冷媒による冷却とによって、PCU冷却水のいわゆるハイブリッド冷却が可能となる。これにより、PCU100をより確実に、かつ効率的に熱保護し、かつ冷却することができるという効果を奏する。
(第2実施形態)
次に、図13を参照しながら、第2実施形態に係る電力変換装置の冷却回路における熱交換器を、HVACのエバポレータへ組込んだ際の動作を説明する。
図13は、PCU冷却水冷却用熱交換器80,80Bを、HVACのエバポレータへ組込んだ図である。
なお、第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
第1実施形態では、エバポレータ50に組み込まれるPCU冷却水の冷却用熱交換器は、符号80で表される熱交換器1台のみであった。本実施形態においては、更に符号80Bを追加し、2台体制となっている。なお、符号80Bの構成は符号80と全く同一であってもよいし、異なっていてもよい。本実施形態では同一であるとして説明する。
PCU冷却水冷却用熱交換器80,80Bは、図13に示すように、互いに直列つなぎで接続されている。また、それぞれが、エバポレータ50に対して直列つなぎとなるようにして繋がれ、組み込まれている。これ以外の構成は、全て第1実施形態と同様である。
このように構成しても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。むしろ、このように構成すれば、PCU冷却水が、PCU冷却水流路120に沿って1周分、例えばPCU冷却水用電動水ポンプ90→PCU100→エバポレータ50→PCU冷却水冷却用熱交換器80→PCU冷却水冷却用熱交換器80B→PCU100というように、ループを循環する間に、PCU冷却水冷却用熱交換器80,80Bでそれぞれ1回ずつ、合計2回冷却されることになり、第1実施形態よりも効率がよく、より好適であるといえる。
なお、PCU冷却水冷却用熱交換器80,80Bは、互いに並列つなぎとなるように繋がれていてもよい。同様にして、エバポレータ50に対するそれぞれの接続関係に関しても、図2に示すような、並列つなぎの関係で繋がれていてもよい。
また、PCU冷却水冷却用熱交換器80,80Bはそれぞれ、エバポレータ50内には組み込まれずに、空気流れから見てエバポレータ50の下流近傍に、エバポレータ50とは別体として、設置される構成であってもよい。
上記した実施形態は本発明を分かりやすくするために詳細に説明したものであり、必ずしも、説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
また、制御線や情報線、電源線は説明上必要と考えられるものを示しており、必ずしもすべての制御線や情報線、電源線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成機器が相互に接続されていると考えてもよい。
また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に、他の実施形態の構成の一部もしくは全てを加えることも可能である。
また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
具体的には例えば、上記実施形態はそれぞれ自動車に搭載する電力変換装置の冷却を例に挙げて説明したが、これに限らない。高電圧機器を使用するものであれば、あらゆるものに対して、適用することができる。
具体的には、例えば電車や電動の汎用機械、電動パワーショベルなどの産業機械、高度に電子化された船舶や航空機に適用して、搭載機器を冷却するようにしてもよい。
また、上記実施形態はエアコンの冷房運転時を例にあげて説明したが、暖房運転時であっても、同様にして適用できる。
具体的には、暖房運転時には、例えば強制排気ドア435とエアミックスドア445を互いに接する程度まで開くなどして、第1流路から、第2流路への空気の流れを遮断させる。そして、第1流路の空気のほぼ全量を第3流路へと導き、内燃機関などの熱源の熱が供給されるヒータコア130で熱交換を行って暖気を得る構成とすればよい。
つまり、エアコンの冷暖房の運転状態に関わらず、外気または内気の吸気から、ブロアファン415、エバポレータ50に至る過程は同じであるので、冷房時の議論を、暖房時にそのまま適用することができるのである。