JP6279241B2 - 電池の製造方法、電解液、及びリチウムイオン二次電池 - Google Patents

電池の製造方法、電解液、及びリチウムイオン二次電池 Download PDF

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Description

本発明は、電池の製造方法、前記電池の製造方法に適した電解液、及び前記電池の製造方法によって製造されたリチウムイオン二次電池に関する。
近年、携帯電子機器の多様化、それに伴う出荷台数の激増により、高出力、高容量の二次電池の需要が増大している。また、地球温暖化防止、大気汚染の軽減、化石燃料の消費低減を目的として市場投入されている、ハイブリッド車、電気自動車などの高性能蓄電池としても二次電池は重要である。さらに、一般家庭においても電力消費の平準化、太陽電池等との組み合わせによる個人家屋レベルでのエネルギーマネジメントの蓄電デバイスとして、大容量かつ高性能な二次電池が求められている。
これらの携帯機器、自動車、住宅等に用いられる二次電池として、鉛蓄電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池、リチウムイオン電池など、多くの種類が存在する。このうち、リチウムイオン二次電池は高電位が得られ、エネルギー密度が大きく、メモリ効果も少ないため、携帯機器、自動車、住宅用などの継ぎ足し充電が行われる用途において特に適している。
一方で、リチウムイオン二次電池は高性能であるために、制御されたバランスの良い充放電を行う必要がある。充放電保護回路が不十分であると、電池内部が極めて強い酸化状態あるいは還元状態となり、電池内部の材料等を不安定化させる。特に過充電となった場合には、電池内部で金属リチウムが析出し、電池を劣化させるだけでなく、発熱によるシール剤の破損、それに伴う電解液の流出、さらには発火といった重大な事故となる可能性がある。
このような問題に対しては、全体構造及び個別の部材に対してそれぞれ対策が行われている。
上記対策のうち、電解液に関する安全対策技術としては、電解液の固体化又はゲル化を挙げることができる。電解液を固体化又はゲル化することにより、電解液の流出を低減又は回避し、電池周辺の腐食や発火などを防止することが試みられている。電解液の固体化又はゲル化の代表的な例として、無機系固体電解質を使うもの(特許文献1)、ポリエチレンオキサイド等のポリマーにより固体化又は増粘化するもの(特許文献2)、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体によるもの(特許文献3)などが知られている。
電解液をゲル化又は固体化することにより、二次電池の安全性はある程度確保できる。しかし、特許文献1〜3の方法においては、電解液が、セル内に注入される以前の調製段階からゲル状態又は固体状態であるため、従来の電池製造プロセス及び電池製造装置を使用することはできず、ゲル電解質又は固体電解質をセル内に配置するための専用の製造プロセス及び製造装置が必要となる、という問題がある。
上記問題に対し、特許文献4では、製造工程において、液体電解質(電解液)にゲル化材料を加えて、その電解液をセル内に注入し、その後、セル内においてゲル化材料を反応させて、電解液をゲル化する方法を提案している。この方法によると、従来の製造プロセス及び製造装置を変更することなく使用でき、多様な電池形態に対応することが可能となる。
国際公開第2013/024724号 特開平10−189050号公報 特表平8−507407号公報 特許第4597294号公報
しかしながら、電解液をゲル化する反応の具体例として、エポキシ架橋、イソシアネート架橋、アクリル架橋などが示されている特許文献4の方法では、セル内におけるゲル化反応の制御が困難である、という問題がある。
通常、エポキシ架橋、イソシアネート架橋の反応を開始させるためには、電解液を加熱する必要がある。ところが、その加熱により電解液の成分が劣化してしまう問題が生じやすい。現在、電解液に用いられている一般的なリチウム塩はヘキサフルオロリン酸リチウムであるが、ヘキサフルオロリン酸リチウムの熱分解は60℃で始まることが知られている。特許文献4では70℃で架橋反応を実施しており、例えばヘキサフルオロリン酸リチウムを含む電解液の場合、加熱による電解質の劣化は避けることができない。
一方、加熱による重合に代えて、カチオン重合を電解液のゲル化又は固体化に適用した場合、電解液をセル内に注入することは事実上不可能である。カチオン重合は低温でも反応が進むため、電解液に架橋剤を加えた時点で反応が始まり、セル内へ注入が完了する前にゲル化または固体化してしまうからである。カチオン重合可能なモノマーは、リチウムイオン二次電池の代表的な電解質(支持塩)であるヘキサフルオロリン酸リチウムやテトラフルオロホウ酸リチウムなどによって重合が開始されてしまう。また、電解液中に微量の水が存在した場合に生じるフッ化水素も、カチオン重合モノマーの重合開始剤となり得る。従って、カチオン重合モノマーを電解液のゲル化材料として用いることは困難である。
また、ラジカル重合を適用するためにはラジカル開始剤を電解液中に添加する必要がある。ところが、ラジカル開始剤は不安定であり、電解液の中で安定的に存在させることは困難である。また、電解液中で安定に存在するラジカル開始剤を用いた場合には、その開始剤を開裂させるために加熱する必要があり、電解質が劣化する可能性が高い。
上述したように、電解液に架橋性材料を混合した場合、混合した直後から反応が始まるため、電解液の注入工程が実施できない問題、あるいは、高温で加熱して反応させる必要があるため、電解質や電池材料の劣化を引き起こす問題、が生じる可能性があった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、液体状態の電解液を電池容器内に注入する工程と、電解質の劣化を抑制しつつ、電池容器内で電解液の流動性を減ずる工程と、を有する電池の製造方法の提供を課題とする。また、その製造方法に適した電解液、及びその製造方法によって製造されたリチウムイオン二次電池の提供を課題とする。
[1] 電池の製造過程において、電池容器内へ注入された後に流動性が低減する電解液であって、前記電解液の流動性を低減させる薬剤を芯物質として有するマイクロカプセルが含まれていることを特徴とする電解液。
[2] 前記マイクロカプセルの壁膜が、薬剤徐放性であることを特徴とする前記[1]に記載の電解液。
[3] 前記マイクロカプセルの壁膜が、前記電池の製造過程において加えられる物理的又は化学的な刺激によって、前記芯物質の放出を開始する又は促進する状態になることを特徴とする前記[1]又は[2]に記載の電解液。
[4] 前記芯物質である薬剤が、ゲル化剤又は増粘剤であることを特徴とする前記[1]
〜[3]の何れか一項に記載の電解液。
[5] 前記芯物質である薬剤が、オキシラン環又はオキセタン環を有する化合物を含有することを特徴とする前記[1]〜[4]の何れか一項に記載の電解液。
[6] 前記薬剤によって流動性が低減された後の前記電解液の粘度が1Pa・s以上であることを特徴とする前記[1]〜[5]の何れか一項に記載の電解液。
[7] 前記[1]〜[6]の何れか一項に記載の電解液を電池容器内に注入する工程Aと、前記電池容器内に注入した前記電解液の流動性を低減させる工程Bと、を有することを特徴とする電池の製造方法。
[8] 前記工程Bにおいて、前記電解液に含まれる前記マイクロカプセルから前記芯物質である薬剤の放出を開始する又は促進する刺激を加えることを特徴とする前記[7]に記載の電池の製造方法。
[9] 前記工程Bにおいて、前記電解液を40〜70℃で保持し、エージングすることを特徴とする前記[7]又は[8]に記載の電池の製造方法。
[10] 前記工程Bにおいて、前記電解液を4〜40℃で保持し、エージングすることを特徴とする前記[7]〜[9]の何れか一項に記載の電池の製造方法。
[11] 前記[1]〜[6]の何れか一項に記載された電解液を備えたリチウムイオン二次電池。
[12] 前記[7]〜[10]の何れか一項に記載された製造方法によって製造されたリチウムイオン二次電池。
本発明の電池の製造方法によれば、従来の電解液が充填された電池を製造するための装置及び製造プロセスを殆ど変更することなく適用できると共に、電解液の流動性が低減したことにより液漏れが防止された電池を、安価に製造することができる。さらに、本製造方法においては、電解液を高温で加熱する必要はないため、電解質や電池部材を熱で劣化させる恐れがない。
また、本発明の電解液は、電池容器内に注入する前においては従来の電解液と同等の流動性を有するため、従来の装置及び製造プロセスを殆ど変更せずに適用できる。つまり、本発明の電解液を従来方法と同様に電池容器内に容易に注入することができる。
また、本発明のリチウムイオン二次電池は、電池内に備えられた電解液の流動性が従来よりも充分に低減されているため、液漏れの恐れが無く、安全性が向上している。
《電解液》
本発明の電解液の第一実施形態は、電池の製造過程において、電池容器内へ注入された後に流動性が低減する電解液であって、前記電解液の流動性を低減させる薬剤を芯物質として有するマイクロカプセルが含まれている電解液である。
前記電池の種類は特に制限されず、例えば一次電池、二次電池、燃料電池が挙げられる。前記二次電池としては、例えばリチウムイオン二次電池が挙げられる。
通常、これらの電池の製造過程は、正極材と負極材の間に電解液を配置した構成を電池容器内に組み立てる工程を有する。また、必要に応じて正極材と負極材の間にはセパレータが配置される。正極材と負極材の間に電解液を注入する方法としては、電池容器内に正極材、セパレータ及び負極材を設置した後、電池容器内の空隙を満たすように、電解液を徐々に注入する方法が一般的である。本実施形態の電解液は、電池容器内に注入する前においては従来の電解液と同等の流動性を有するため、従来と同等の装置及び方法によって、電池容器内に容易に注入することができる。一方、電解液が高粘度の場合や、ゲル化している場合は、注入を行うことが困難であり、別の製造方法が必要となる。
ここで、「電池容器」とは、広義には、電池において電解液を保持可能な領域(空間)を意味する。このような空間としては、例えば、互いに対向配置された正極板と負極板、及びこれら両極板の間の空間を封止する封止材によって囲まれた空間が挙げられる。また、「電池容器」の狭義の意味は、電池において電解液を保持可能な入れ物を意味する。本明細書及び特許請求の範囲において、「電池容器」の用語は、広義の意味及び狭義の意味の両方を含む。
本実施形態の電解液の流動性は、電池容器内に注入された後に低減される。流動性が低減した後の電解液の状態としては、例えば、粘度が高い状態、ゲル化した状態、固体化した状態が挙げられる。これらの状態になった電解液は、増粘化電解質、ゲル化電解質、固体化電解質と呼ばれてもよい。
前記粘度が高い状態における具体的な粘度としては、回転式粘度計にて測定した場合、1Pa・s以上であることが好ましく、5Pa・s以上であることがより好ましく、10Pa・s以上であることが更に好ましい。1Pa・s以上であることにより、電池容器が損傷した場合にも、その高粘度化した電解液が外部へ流出することを充分に抑制することができる。なお、電解液の粘度は、「JIS Z 8803:2011 液体の粘度測定方法」にて規定されている方法に準拠して測定することができる。
一方、本実施形態の電解液の電池容器内に注入する前の粘度は低い程好ましく、回転式粘度計にて測定した場合、0.5Pa・s以下であることが好ましく、0.3Pa・s以下であることがより好ましく、0.1Pa・sであることが更に好ましい。前記注入前の粘度の下限値は特に制限されず、例えば、0.003Pa・s程度を目安とすることができる。これらの好ましい粘度であることにより、電池容器内に電解液を容易に注入することができる。
<マイクロカプセル>
本実施形態の電解液に含まれるマイクロカプセルは、前記電解液の流動性を低減させる薬剤を芯物質として含有する。
(マイクロカプセルの壁膜)
本実施形態の電解液の調製後から電池容器内への注入完了前までに、電解液の流動性が大きく低減する(例えば、電解液の粘度が大きく増加する)ことを防ぐ観点から、マイクロカプセルの壁膜は、芯物質を徐々に放出可能な徐放性であることが好ましい。電池容器内に注入された電解液中のマイクロカプセル内部から薬剤が徐々に放出されることにより、電池容器内において電解液の流動性を徐々に低減させることができる。
ここで、「徐放」とは、物質の放出を抑制して遅くし、当該物質を徐々に放出することを意味する。
前記マイクロカプセルの壁膜が、前記電池の製造過程において加えられる物理的又は化学的な刺激(トリガー)によって、前記芯物質の放出を開始する又は促進する状態になることが好ましい。
前記物理的な刺激としては、例えば、熱、物理的圧力、物理的衝撃、振動、音波、光などをマイクロカプセルの壁膜に与えることが挙げられる。
前記化学的な刺激としては、例えば、電解液を構成する溶媒とマイクロカプセルの壁膜との接触、前記溶媒に含まれる酸又は塩基と前記壁膜との接触などが挙げられる。
これらの物理的な又は化学的な刺激をマイクロカプセルの壁膜に与えることによって、壁膜の劣化、変性、柔軟化、多孔化、溶解、崩壊又は分解等を起こすことができる。この結果、マイクロカプセル内の芯物質の放出を開始させるか、又は、刺激前に徐々に放出していた場合には、その放出の程度を促進させることができる。
前記マイクロカプセルの壁膜は、電解液の流動性が低減した後、すなわち芯物質を放出した後においても、電解液中に残存してもよいし、電解液の溶媒に溶解しても構わない。いずれの場合においても、前記壁膜を構成する材料は、電気化学的に安定であり、電池特性に与える影響が小さい材料であることが好ましい。
前記マイクロカプセルの壁膜を構成する材料としては、例えば、ポリスチレン類、ポリ(メタ)アクリレート類、ポリエステル類、ポリアミド類等が好ましく用いることができるが、これらに限定されるものではない。
(マイクロカプセルの芯物質)
前記マイクロカプセルの芯物質である薬剤は、ゲル化剤又は増粘剤であることが好ましい。ゲル化剤又は増粘剤を用いることにより、電解液の流動性を穏やかに低減させることができる。これらのゲル化剤及び増粘剤としては、マイクロカプセル内に含有可能な公知の薬剤が適用できる。
前記ゲル化剤の具体的な例としては、オキシラン環、オキセタン環、テトラヒドロフラン環などのカチオン開環重合可能な脂環式ヘテロ環を1以上含む化合物、ビニルエーテル、p-メトキシスチレン、p-ヒドロキシスチレンなどのカチオン重合可能な基を1以上含む化合物等が挙げられる。これらの化合物はモノマー、オリゴマー、ポリマーの何れの形態であってもよい。これらの化合物はマイクロカプセルから自然に徐放されるか、温度等の刺激により電解液中に放出されることが好ましい。前記電解液に含まれる電解質が、ヘキサフルオロリン酸リチウムのように、わずかの水の存在でフッ化水素などのブレンステッド酸を生じるか、又は、熱により五フッ化リンなどのルイス酸を生じる場合には、これらの電解液中に生じた酸によりカチオン重合が開始され、電解液の流動性が低減し、電解液漏れが抑制される程度に増粘化又はゲル化しうる。また、カチオン開環重合による重合反応の開始は、電解液中のリチウムイオン等のカチオンがトリガーとなって開始することができる。
また、ゲル化剤の別の例として、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、スチレン類等のラジカル重合可能な基を含むモノマー、オリゴマー、ポリマー等のラジカル重合可能な化合物をゲル化剤として含有することもできる。これらの化合物を重合させるためのラジカル発生剤(ラジカル開始剤)は、電解液中にあらかじめ含ませておいても良いし、ゲル化剤と同様に、マイクロカプセル中に含有させ、徐放あるいは刺激により放出させても良い。
さらに、前記ラジカル重合可能な化合物を電解質中にあらかじめ含ませておき、ラジカル発生剤をマイクロカプセル内に封入し、電解液の流動性を低減させるタイミングを見計らって、電解液中に徐放させるか、又は、前記刺激による放出を行い、重合を開始させても良い。
前記芯物質である薬剤は上記の例に限られず、付加反応、縮合反応等により重合することによって電解液の流動性を低減することが可能な反応性材料を用いても良い。
前記芯物質である薬剤としては、オキシラン環又はオキセタン環を有する化合物が好ましい。オキシラン環及びオキセタン環は、一般に、カチオン、酸又は塩基によって開環反応を容易に起こすことが知られている。この性質を利用して、放出された電解液の流動性を容易に低減することができる。また、上記化合物は電気化学的に安定であり、重合によって生じるポリエーテルも電気化学的に安定であるため、電池特性への影響が少ない。
前記オキシラン環を有する化合物としては、立体的なひずみの大きいオキシラン環が、開環し易いので好ましい。この観点から、前記オキシラン環としては、シクロヘキセンオキシド、又は、メチル基などの炭素数1〜5のアルキル基が環の水素原子を置換したオキシラン環を有する化合物が好ましい。
前記オキシラン環を有する化合物の具体例として、例えば、シクロヘキセンオキシド、1,2-エポキシ-4-(2-メチルオキシラニル)-1-メチルシクロヘキサン、3',4'-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ε-カプロラクトン変性 3',4'-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ブタンテトラカルボン酸テトラ(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル) 修飾ε-カプロラクトン などが挙げられる。
前記オキセタン環を有する化合物の具体例として、例えば、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、2−エチルヘキシルオキセタン、キシリレンビスオキセタン、3−エチル−3{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン、ヘキサン二酸ビス[(7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン−3−イル)メチル]等が挙げられる。
(マイクロカプセルの形態)
前記マイクロカプセルの構造は、単核、多核、又はマトリクスの何れであってもよい。
前記マイクロカプセルの直径は、電池容器内に電解液を注入する妨げにならない程度の大きさであれば特に限定されない。通常、その直径は1μm〜1mmの範囲であることが好ましく、5μm〜300μmであることがより好ましい。前記直径が1μm未満であると、含有する芯物質である薬剤の含有量が少なくなるため、電解液に多数のマイクロカプセルを含有させる必要がある。前記直径が1mmを超えると、電解液の物性(例えば流動性)に与える影響が大きくなり、電池容器内に電解液を注入する時に問題が発生したり、電解液中においてマイクロカプセルが沈殿したりする可能性がある。
(マイクロカプセルの合成方法)
前記マイクロカプセルの合成方法は特に制限されず、例えば、懸濁重合法、ミニエマルジョン法、エマルジョン重合法、ソープフリー重合法、析出重合法、分散重合法、界面重縮合法、液中硬化法、in situ法、液中乾燥法、コアセルべーション法、スプレードライ法、ヘテロ凝集法、ハイブリダイゼーション法など、公知の方法によって合成することができる。
<電解液の調製>
(電解液中のマイクロカプセルの含有量)
本実施形態の電解液の総重量に対する前記マイクロカプセルの含有量は特に限定されないが、その含有量の上限値は、電解液100重量部に対して20重量部以下であることが好ましい。20重量部を超えると、電解液の物性への影響が大きく、イオン伝導性などに影響を及ぼす可能性がある。前記含有量の下限は特に限定されないが、電解液の流動性を充分に低減可能な量を含有させることが好ましく、例えば、電解液100重量部に対して0.1重量部以上を含有させることが好ましい。
なお、前記マイクロカプセルは1種類を単独で用いても良いし、複数種類を併用しても良い。
(電解液の溶媒)
本実施形態の電解液を構成する溶媒としては、電解液の注入前に前記マイクロカプセル内の芯物質の放出を一気に終了させてしまうような溶媒でなければ特に制限されない。前記溶媒は、マイクロカプセルの壁膜に前記刺激を与えて、芯物質を徐放させる溶媒であってもよいし、マイクロカプセルの壁膜に影響を与えず、芯物質の放出を促進しない溶媒であってもよい。
本実施形態の電解液をリチウムイオン二次電池の製造に用いる場合には、前記溶媒は、非水系溶媒であることが好ましい。具体的には、例えば、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチル、炭酸ジエチルなど、高誘電率で高沸点の炭酸エステル系溶媒が好ましい。また、脂肪酸エステルやラクトンを前記溶媒に添加してもよい。これらの溶媒は1種類を単独で用いても、複数種類の溶媒を混合して用いても良い。
(電解質)
本実施形態の電解液を構成する電解質は、特に制限されず、電池の用途に応じて適宜選択すればよい。前記電解質は、マイクロカプセルの壁膜に前記刺激を与えて、芯物質を徐放させることに寄与してもよいし、マイクロカプセルの壁膜に影響を与えず、芯物質の放出の促進等に寄与しない電解質であってもよい。
本実施形態の電解液をリチウムイオン二次電池の製造に用いる場合には、前記電解質はリチウムイオンを含む支持塩が適当である。具体的には、例えば、ヘキサフルオロリン酸リチウム、テトラフルオロホウ酸リチウムなどのフッ素無機塩、リチウム−ビス(フルオロスルホニル)イミド、リチウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウム−ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド等のイミド類等が挙げられる。
本実施形態の電解液には、更に、添加剤を加えても良い。添加剤としては、例えば、電極と電解液(電解質)間に生じ、電極表面を安定化させるSEIと呼ばれる皮膜を形成する材料や、電解液(電解質)に難燃性を付与するための難燃剤などが挙げられる。また、ゲル化剤や増粘剤を添加剤として加えて、電解液の電池容器内への注入を妨げない程度に、粘度を調整しても構わない。
(調製方法)
本実施形態の電解液は、前記マイクロカプセル、前記電解質及び前記溶媒、並びに必要に応じてその他の成分を均一に混合することにより調製できる。各成分は、これらを順次添加しながら混合してもよいし、全成分を一度にまとめて混合してもよい。
本実施形態の電解液の好適な調製方法として、まず、前記溶媒に所定量の前記電解質及び必要に応じて添加するその他の成分を添加し、これらの成分を充分に溶解させた電解質溶液を調製した後、前記電解質溶液に所定量の前記マイクロカプセルを添加して穏やかに撹拌し、前記電解質溶液中に前記マイクロカプセルを均一に分散させて、目的の電解液を得る方法が挙げられる。調製した電解液を長時間放置しておくと、マイクロカプセルが沈殿する場合がある。この不都合を回避するためには、電池容器内に注入する直前に本実施形態の電解液の調製を行うか、又は、電池容器内に注入する前に、再度、本実施形態の電解液を撹拌して、沈殿したマイクロカプセルを均一に分散させればよい。
各成分を混合する方法は、特に限定されず、例えば、撹拌子、撹拌翼、ボールミル、スターラー、超音波分散機、超音波ホモジナイザー、自公転ミキサー等を使用する公知の方法を適用すればよい。ただし、混合時にマイクロカプセルの壁膜が破損して、電池容器内に注入する前にその流動性が低下してしまうことを避けることを考慮して、なるべく穏やかに混合する方法を適用することが好ましい。
本実施形態の電解液を調製する際の混合温度、混合時間等の混合条件は、前記電解質及び前記マイクロカプセルの劣化を避けることを考慮しつつ、適宜設定すればよい。
例えばリチウムイオン二次電池の代表的な電解質であるヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)の熱分解は60℃程度で始まることが知られている。このため、前記電解質が熱に弱い種類のリチウム塩である場合、前記混合温度は、4〜70℃が好ましく、10〜60℃がより好ましく、15〜50℃が更に好ましく、20〜40℃が特に好ましい。また、前記混合時間は、通常、1〜30分で充分であり、1〜20分が好ましく、1〜10分が更に好ましい。
<電解液に含まれる、流動性を低減させる薬剤の総量>
本実施形態の電解液において、電池容器内に注入する前の電解液の溶媒に、前記流動性を低減させる薬剤を少量含有させておいてもよい。ここで、少量とは、その電解液の流動性が、電池容器内に注入することが可能な程度に高い状態を維持できる程度をいう。この場合、前記マイクロカプセルに芯物質として含まれる前記薬剤と、前記溶媒に含まれる前記薬剤を合わせた量(電解液中の薬剤の総量)が、その電解液の流動性を充分に低減させうる量以上であることが好ましい。
具体的には、例えば、電解液の総重量に対して、前記薬剤を5〜10重量%含有させると、その電解液の流動性が充分に低減(低下)する場合、その電解液の溶媒中に例えば0.5重量%以上5重量%未満の前記薬剤を含有させておき、マイクロカプセルに前記薬剤を0.5重量%以上5重量%未満を含有させておくことにより、両者を合わせると5重量%以上になるため、その電解液の流動性を充分に低減させるために必要な前記薬剤が、その電解液中に含有されている、といえる。
《電池の製造方法》
本発明の電池の製造方法の第一実施形態は、前述した本発明の電解液を電池容器内に注入する工程Aと、前記電池容器内に注入した前記電解液の流動性を低減させる工程Bと、
を有する。
前記工程Aにおいて、電池容器内に前記電解液を注入する方法は特に制限されず、従来の装置及び方法が適用可能である。前記電解液の注入量は、電池容器内における電解液を注入可能な容積にもよるが、従来の電池における電解液の注入量と同等で構わない。前記電池容器内には、あらかじめ正極、セパレータ、負極等の電池部材が配置されていることが好ましい。前記工程Aにおいては、前記電解液の流動性は実質的に低減しないことが好ましい。充分な流動性を有する電解液は、電池容器内の各部材の隙間に充分に浸透し、電池性能の発揮に必要な電気化学反応が適切に行われる状態になる。電解的の注入後、次の工程Bを行うことが好ましい。
前記工程Bにおいて、電池容器内に注入した前記電解液の流動性は、前記マイクロカプセルの芯物質が電解液を構成する溶媒中に放出されることによって低減する。
前記マイクロカプセルが芯物質(薬剤)徐放性である場合、徐放される前記薬剤によって前記電解液が徐々にゲル化、増粘化等の反応を起こし、電解液の流動性を徐々に低下させることができる。
前記マイクロカプセルが芯物質を自然に徐放する場合、例えば25℃程度の室温において、1時間〜30日間程度の期間で芯物質を徐放して前記電解液の流動性が低下する程度の徐放速度であることが好ましい。この徐放速度が1時間未満であると、電池容器内に電解液を注入する工程Aの段階で流動性が大きく低下し、電解液の注入を完了させることができない恐れがある。また、前記徐放速度が30日間を超えても足りない程度であると、前記工程Bの完了に時間がかかり過ぎ、電池製造に要求されるスペックを満たさない恐れがある。このような観点から、前記期間は、12時間〜20日間がより好ましく、24時間〜10日間が更に好ましい。
前記芯物質徐放性のマイクロカプセルを構成する壁膜の材料としては、例えば、ポリスチレン及びアラビアゴムの混合材、ポリメタクリル酸メチル及びポリビニルアルコールの混合材、ポリスチレン類、ポリ(メタ)アクリレート類、ポリエステル類、ポリアミド類等が挙げられる。
前記工程Bにおいて、前記電解液に含まれる前記マイクロカプセルの芯物質である薬剤の放出を開始する又は促進する刺激を加えることが好ましい。
前記刺激によって芯物質の放出の開始を制御することにより、前記工程Aにおいて、電解液の流動性が低減したり、電解液の注入を完了する前にゲル化してしまう等の不都合を確実に防止することができる。
また、前記刺激によって芯物質の放出を促進することにより、電解液の流動性の低下を促進して、工程Bの完了を早めることができる。
前記刺激としては、前述の物理的な刺激又は化学的な刺激が好ましい。前記刺激として、物理的な刺激と化学的な刺激の両方を併用しても構わない。
前記物理的な刺激としては、前記電解液に熱を加える加熱処理が簡便であるため好ましい。ただし、電解質の熱分解を考慮して、加熱温度をなるべく低温に抑え、加熱時間をなるべく短時間に抑えることが好ましい。これらの観点から、前記加熱温度は、70℃以下であることが好ましく、30〜60℃がより好ましく、40〜50℃が更に好ましい。また、前記加熱時間は、1時間〜7日間が好ましく、12時間〜6日間がより好ましく、24時間〜5日間が更に好ましい。
電池容器内に充填された前記電解液を加熱する方法は特に制限されず、例えば、電池容器を恒温室に静置する方法が挙げられる。
前記加熱処理によって前記マイクロカプセルから前記芯物質の放出を開始又は促進する場合、使用するマイクロカプセルとしては、壁膜の状態が加熱により変化する熱応答性マイクロカプセルが好ましい。熱応答性マイクロカプセルを構成する壁膜の材料としては、例えば、ポリスチレン及びアラビアゴムの混合材、ポリメタクリル酸メチル及びポリビニルアルコールの混合材、ポリスチレン類、ポリ(メタ)アクリレート類、ポリエステル類、ポリアミド類等が挙げられる。
前記化学的な刺激としては、前記電解液を構成する溶媒と前記マイクロカプセルの壁膜との接触が簡便であるため好ましい。ただし、電池容器内に電解液を注入する工程Aにおいても、前記接触は必然的に起きている。このため、前記化学的な刺激は、少なくとも前記工程Aが完了するまでは、前記マイクロカプセルから芯物質が放出することを殆ど促進せず、その促進が起きるまでに相当の時間を要する程度に、穏やかな刺激であることが好ましい。このような観点から、前記接触により芯物質の放出を促進する期間の目安としては、20〜28℃程度の常温で、1日〜30日が好ましく、1日〜20日がより好ましく、1日〜10日間が更に好ましい。
前記溶媒との接触によって前記マイクロカプセルから前記芯物質の放出を開始又は促進する場合、使用するマイクロカプセルとしては、壁膜の状態が前記溶媒との接触により変化する化学応答性マイクロカプセルが好ましい。このような化学応答性マイクロカプセルを構成する壁膜の材料としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
前記工程Bにおいて、前記マイクロカプセルから放出される芯物質によって電解液の流動性が低減することを待つ処理をエージングと呼び、その処理に要する時間(期間)をエージング時間(期間)と呼ぶ。
前記工程Bにおいて、電池容器内に注入された電解液を、例えば40〜70℃又は4〜40℃で保持してエージングすることが好ましく、40〜70℃でエージングすることがより好ましい。これらのエージング処理において、前記物理的な刺激のうち、加熱以外の刺激を併用しても構わないし、前記化学的な刺激のうち、溶媒との接触以外の刺激を併用しても構わない。また、物理的な刺激と化学的な刺激の両方を併用しても構わない。
また、前記工程Bにおいて、第一のエージング期間で40〜70℃で前記電解液を保持した後、続く第二のエージング期間で4〜40℃で保持して、エージングしてもよい。この二段階のエージング処理によれば、第一のエージング期間で比較的高い温度で加熱し、マイクロカプセルの壁膜の状態を芯物質の放出が促進される状態に変化させた後、第二のエージング期間では、比較的低い温度で保持して、電解質の熱分解を抑制しつつ、電解液の流動性が低減する反応をゆっくり進行させることができる。
前記工程Bが完了したことは、所定の製造条件において必要なエージング期間を予め調べておき、そのエージング期間が経過した時点で電解液の流動性が充分に低下したと判断し、工程Bを終了すればよい。前記工程Bにおいて、電解液の粘度を1Pa・s以上に増加させ、その流動性を低減させることが好ましい。前記粘度は回転式粘度計による測定により求められる。
本実施形態の電池の製造方法におけるその他の工程は、特に制限されず、従来公知の方法が適用できる。
前記工程Aの前工程としては、例えば、正極、負極、セパレータなどの電池の構造要素を公知方法により電池容器内に組み込む工程が挙げられる。また、前記工程Bの前工程としては、例えば、電解液の注入後に電池容器内に残存する気泡を脱気し、その後、封止(シール)する工程が挙げられる。また、前記工程Bの前工程又は後工程として、必要に応じて電池の充放電を施してもよい。
《リチウムイオン二次電池》
本発明のリチウムイオン二次電池の第一実施形態は、本発明の電解液を備えたリチウムイオン二次電池、及び、本発明の電池の製造方法によって製造されたリチウムイオン二次電池である。本実施形態のリチウムイオン二次電池において、前記電解液以外の構成は、特に制限されず、従来公知のリチウムイオン二次電池の構成が適用できる。
市販のリチウムイオン二次電池の基本構造は、正極、電解液(電解質)、セパレータ、負極を順次積み重ね、フィルムパッケージ、缶(金属製容器)等の電池容器内に設置されたものが多い。
本実施形態のリチウムイオン二次電池の構成として、正極、負極、電解液、電池容器、並びに必要に応じて使用するセパレータが例示できる。
前記正極としては、例えば、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケル酸リチウム、リン酸鉄リチウム等が挙げられる。
前記負極としては、例えば、グラファイト、ハードカーボン等の炭素系材料の他、チタネート、シリコン、ゲルマニウム等が挙げられる。
前記セパレータは正極と負極が直接接触することを防ぐ部材であり、正極と負極の間に設けられる。通常、セパレータは多孔質体であり、電解液(電解質)をその孔に保持している。前記セパレータの材料としては、ポリプロピレン等のポリオレフィンからなる多孔質シートが用いられる。前記セパレータとして、電池が異常発熱した場合に多孔質の孔が閉塞してイオン伝導を遮断し、それ以上の反応暴走を抑制する機能も有するセパレータを適用してもよい。
前記電池容器としては、例えば、前記正極、セパレータ及び負極の積層体を包む樹脂フィルム(ラミネートフィルム)、金属製容器等が挙げられる。
本実施形態のリチウムイオン二次電池の形状は、特に限定されず、円筒型、角型、コイン型、シート型、フィルムパッケージ型等、種々の形状が適用できる。
本実施形態のリチウムイオン二次電池に充填された前記電解液の量は、従来公知のリチウムイオン二次電池と同等で構わない。また、充填された電解液の総重量に対する前記マイクロカプセルの含有量は、特に制限されず、例えば電解液100重量部に対して前記マイクロカプセル0.1〜20重量部の配合が挙げられる。前記マイクロカプセルの壁膜が電解液を構成する溶媒に全て溶解していても構わないが、通常は、芯物質を放出した後のマイクロカプセルが電解液内に残存している。この残存量は、製造時における前記電解液の含有量と同じであってもよいし、一部が分解したために前記含有量よりも少なくなっていてもよい。
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
[実施例1]
(マイクロカプセルの製造)
3',4'-エポキシシクロヘキシルメチル 3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(和光純薬社製)0.1gをクロロホルム10mLに溶解させた後、ポリスチレン(アルドリッチ社製)0.5gを加えて溶解した。別に用意した2wt%アラビアゴム、0.1wt%ドデシル硫酸ナトリウムを含有した水200mLに前記クロロホルム溶液を加え、ホモジナイザーで1000rpm10分攪拌し、エマルジョンとした。得られたエマルジョンを遠心分離にて分離し、粉末状のマイクロカプセルを得た。
このマイクロカプセルの壁膜は、ポリスチレン及びアラビアゴムによって形成されている。また、その芯物質は、クロロホルムに溶解された3',4'-エポキシシクロヘキシルメチル 3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートである。
(電解液の製造)
ドライボックス内で、炭酸エチレン25vol%、炭酸ジエチル75vol%の溶媒にヘキサフルオロリン酸リチウムを1mol/Lとなるように溶かし、更に3',4'-エポキシシクロヘキシルメチル 3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートを3wt%となるように混合した。この溶液に、製造したマイクロカプセルを10wt%で加えて攪拌することによって、白濁した流動性の高い電解液を得た。
なお、電解液の全重量に対する、電解液に含まれる3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートの合計の濃度は、マイクロカプセル内に封入された芯物質も含めて、5wt%となるように調製した。
得られた電解液は、室温で1日未満静置した後においては流動性の高い状態であったが、室温で10日間放置した頃には、流動性が殆ど無いゲル化した状態に変化した。また、得られた電解液を50℃で5日間加熱したところ、同様にゲル化した。
(リチウムイオン二次電池の製造)
上記の通り製造した電解液と、正極としてコバルト酸リチウムと、負極として黒鉛と、セパレータとしてガラス繊維と、を用いてコインセルを製造した。具体的には、円盤状に打ち抜いた上記の正極、セパレータ、負極をこの順にSUS製の電池容器(CR2032等)内で積層し、この電池容器内に上記電解液を注入して、積層体に電解液を含浸させ、電池容器内の負極の上にSUS製の蓋を載せて電池容器を封止した。その後、50℃で5日間加熱することにより、電池容器内の電解液をゲル化することにより、ゲル電解質を備えたリチウムイオン二次電池を製造した。
(電池性能の評価)
この実施例1の電池の放電容量は、マイクロカプセルを用いないで製造した後述する比較例1の電池とほぼ同じであった。実施例1の電池の充放電特性を比較例1の電池と比較して評価したところ、実施例1の電圧がわずかに低くなったが、サイクル特性の低下は見られなかった。また、この実施例1の電池をドライボックス内で分解したところ、電解液はゲル化しており、電池容器を破壊してもゲル電解質は漏れ出てこなかった。
[比較例1]
電解液の製造において、上記のマイクロカプセルを添加しない以外は、実施例1と同様に電解液を調製した。この電解液を用いて、実施例1と同様に、コイン型のリチウム二次電池を製造した。その後、比較例1のコインセルをドライボックス内で分解して調べたところ、電解液は高い流動性を示しており、電池容器を破壊することにより、電池容器外へ電解液が漏出した。
[実施例2]
(マイクロカプセルの製造)
塩化メチレン20g、3−エチル−3{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン(SINASIA社製)50g、イソオクタン5g、ポリメタクリル酸メチル10g、ソルビタンモノオレエート(span80)3gの混合物を製造した。
これとは別に、100gの蒸留水に、1gポリビニルアルコール、30gリン酸カルシウムを加えた水溶液を用意した。
上記混合物及び上記水溶液を混合して、ホモジナイザーにて1000rpmで10分攪拌した後、250rpmに回転速度を落とし、35℃に加温し、300hPaで緩く減圧して、塩化メチレンを揮発させた。混合液中に生成した固体を濾過して回収し、0.5mol/L塩酸にて洗い、更に水洗して乾燥し、粉末状のマイクロカプセルを得た。
このマイクロカプセルの壁膜は、ポリメタクリル酸メチル及びポリビニルアルコールによって形成されている。また、その芯物質は、3−エチル−3{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン、イソオクタン、ソルビタンモノオレート、リン酸カルシウムの混合物である。
(電解液の製造)
ドライボックス内で、炭酸エチレン25vol%、炭酸ジエチル75vol%の溶媒にヘキサフルオロリン酸リチウムを1mol/Lとなるように溶かした。この溶液に、製造したマイクロカプセルを10wt%で加えて攪拌することによって、白濁した流動性の高い電解液を得た。
得られた電解液は、室温で1日未満静置した後においては流動性の高い状態であったが、室温で7日間放置した頃には、傾けるとゆっくり応答する程度に粘度が増加した。また、得られた電解液を50℃で3日間加熱したところ、同様に粘度が増加した。
(リチウムイオン二次電池の製造)
上記の通り製造した電解液を用い、実施例1と同様の方法によってリチウムイオン二次電池を得た。
(電池性能の評価)
この実施例2の電池の放電容量は、マイクロカプセルを用いない以外は実施例2と同様に製造した比較例2の電池とほぼ同じであった。実施例2の電池の充放電特性を比較例2の電池と比較して評価したところ、実施例2の電圧がわずかに低くなったが、サイクル特性の低下は見られなかった。
この実施例2の電池をドライボックス内で分解したところ、電解液は高粘度化しており、電池容器を破壊しても電解液は漏れ出てこなかった。
[比較例2]
電解液の製造において、上記のマイクロカプセルを添加しない以外は、実施例2と同様に電解液を調製した。この電解液を用いて、実施例2と同様に、コイン型のリチウム二次電池を製造した。その後、比較例2のコインセルをドライボックス内で分解して調べたところ、電解液は高い流動性を示しており、電池容器を破壊することにより、電池容器外へ電解液が漏出した。
[比較例3]
(電解液の製造)
ドライボックス内で、炭酸エチレン25vol%、炭酸ジエチル75vol%の溶媒にヘキサフルオロリン酸リチウムを1mol/Lとなるように溶かし、更に3',4'-エポキシシクロヘキシルメチル 3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートを5wt%となるように混合して、電解液を得た。その後、すぐに電解液の粘度が上昇して、電解液がゲル化したため、電解容器内に電解液を注入することができなかった。なお、実施例1では、ゲル化剤である3',4'-エポキシシクロヘキシルメチル 3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート3wt%を電解液の溶媒に溶かしておき、マイクロカプセルから前記ゲル化剤2wt%を放出させたので、本比較例と実施例1の電解液中のゲル化剤の最終的な濃度は同一であった。
以上で説明した各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。また、本発明は各実施形態によって限定されることはなく、請求項(クレーム)の範囲によってのみ限定される。
本発明に係る電池の製造方法、電解液及びリチウムイオン二次電池は、携帯電子機器用電池、家庭用蓄電池、電気自動車用電池等の分野で広く利用可能である。

Claims (10)

  1. 電池の製造過程において、電池容器内へ注入された後に流動性が低減する電解液であって、前記電解液の流動性を低減させる薬剤を芯物質として有するマイクロカプセルが含まれており、
    前記マイクロカプセルの壁膜が、ポリスチレン及びアラビアゴムの混合材、ポリメタクリル酸メチル及びポリビニルアルコールの混合材、ポリスチレン類、ポリ(メタ)アクリレート類、ポリエステル類、ポリアミド類、ポリビニルアルコール、又はポリビニルピロリドンによって形成されており、
    前記芯物質である薬剤が、オキシラン環又はオキセタン環を有する化合物を含有することを特徴とする電解液。
  2. 前記マイクロカプセルの壁膜が、薬剤徐放性であることを特徴とする請求項1に記載の電解液。
  3. 前記マイクロカプセルの壁膜が、前記電池の製造過程において加えられる物理的又は化学的な刺激によって、前記芯物質の放出を開始する又は促進する状態になることを特徴とする請求項1又は2に記載の電解液。
  4. 前記芯物質である薬剤が、ゲル化剤又は増粘剤であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の電解液。
  5. 前記薬剤によって流動性が低減された後の前記電解液の粘度が1Pa・s以上であることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の電解液。
  6. 請求項1〜5の何れか一項に記載の電解液を電池容器内に注入する工程Aと、
    前記電池容器内に注入した前記電解液の流動性を低減させる工程Bと、
    を有することを特徴とする電池の製造方法。
  7. 前記工程Bにおいて、前記電解液に含まれる前記マイクロカプセルから前記芯物質である薬剤の放出を開始する又は促進する刺激を加えることを特徴とする請求項6に記載の電池の製造方法。
  8. 前記工程Bにおいて、前記電解液を40〜70℃で保持し、エージングすることを特徴とする請求項6又は7に記載の電池の製造方法。
  9. 前記工程Bにおいて、前記電解液を4〜40℃で保持し、エージングすることを特徴とする請求項6〜8の何れか一項に記載の電池の製造方法。
  10. 請求項1〜5の何れか一項に記載された電解液を備えたリチウムイオン二次電池。
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