JP6277538B2 - タッチパネル用導電シート - Google Patents

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Description

本発明は、タッチパネル用導電シートに関するものである。
従来、コンピュータや電子機器の表示装置(ディスプレイ)の前面に、指などによるタッチを検出してその接触位置の座標を特定するタッチパネルを設けることが行われている(例えば、特許文献1参照)。タッチパネルには種々の方式があり、その動作方式の一つとして静電容量方式がある。
静電容量方式のタッチパネルの構造は、透明な絶縁層を有し、表示装置を基準に見て前記絶縁層の前側の面に前面電極、後側の面に後面電極を備えている。前記前面電極は、平面視で一方向に線状に延びる導電配線であり、複数の前面電極が所定間隔でほぼ平行に配列されることで前記絶縁層の前側の面に前面電極パターンが形成される。また、前記後面電極は、平面視で前記前面電極と交差する他の方向に線状に延びる導電配線であり、複数の後面電極が所定間隔でほぼ平行に配列されることで前記絶縁層の後側の面に後面電極パターンが形成される。そして、平面視で前記前面電極パターンと前記後面電極パターンとを重ねてみたとき、これらにより格子状の検出用メッシュパターンが形成される。
この静電容量方式のタッチパネルでは、使用者が指を前方から近づけてタッチパネル前面に接触させると、その接触位置における指と前記前面電極との間の静電容量、及び、指と前記後面電極との間の静電容量がそれぞれ変化し、これらの変化を検出することにより指の接触位置の座標を特定する。
特開2010−39537号公報
ところで、上記のようなタッチパネルでは、指などの接触位置の座標を特定する検出精度を高めるために各電極の列間隔が比較的狭く設定されている。しかしながら、前記後面電極は前記前面電極の後方に位置するため、タッチパネル前面に指を接触させたとき、前記前面電極が存在する近傍領域では、指と前記後面電極との間の静電容量の変化が妨げられて、前記後面電極での検出感度が低下するという問題があり、特に電極の列間隔が狭いとこの感度低下は顕著となる。
そこで、各電極の列間隔を広くすれば、前記前面電極が存在しない空白領域の面積が大きくなるので前記後面電極での検出感度が向上するが、その一方で、接触位置の座標の検出精度が低下する。
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、指などが接触した際の検出感度を向上させ、接触位置の座標の良好な検出精度を確保することができるタッチパネル用導電シートを提供することを目的とするものである。
本発明に係るタッチパネル用導電シートは、表示装置の前面側に設置して使用されるタッチパネル用導電シートであって、当該設置状態において使用者が触れる側を前側、表示装置に対向する側を後側と規定したとき、透明な絶縁層と、この絶縁層の前側の面に設けられ、間隔をあけて配列された複数の前面電極と、前記絶縁層の後側の面に設けられ、間隔をあけて配列されるとともに平面視において前記前面電極と交差する複数の後面電極とを備えている。そして、前記後面電極の各々には、枠状の導体からなる複数の第一枠状部が所定ピッチで設けられており、前記第一枠状部の各々は、平面視において、隣り合う2つの前記前面電極の間に配置されている。
本発明においては、前記後面電極の第一枠状部が、隣り合う2つの前記前面電極の間に配置されていることで、使用者等が指を前方から近づけてきたときに、前記第一枠状部で生じる静電容量の変化は、前記前面電極の存在による影響を受けにくくなり、前記後面電極での検出出力が向上する。また、前記第一枠状部の存在により、前記絶縁層の後側の面における後面電極が存在する領域が大きくなるので、指などの接触位置の座標の良好な検出精度を確保できる。したがって、前記後面電極側での検出出力を向上させるために前記前面電極間の間隔を大きくする場合でも、良好な座標検出精度が確保できる。更に、前記第一枠状部は、枠状の導体からなり、その内側に導体の存在しない空隙があるため、タッチパネルを通した表示装置の視認性を、阻害しにくい。
本発明において、前記前面電極の各々には、枠状の導体からなる複数の第二枠状部を所定ピッチで設けることができる。このとき、前記第二枠状部の各々は、平面視において、隣り合う2つの前記後面電極の間に配置されるとともに前記第一枠状部と重ならないことが好ましい。
この場合、前記前面電極が第二枠状部を有することで、前記絶縁層の前側の面では、前記前面電極が存在する領域が大きくなる。したがって、前記前面電極間の間隔を大きくしても前記絶縁層の前側の面における前記前面電極が存在しない空白領域の面積拡大を抑止でき、前記前面電極での検出出力の低下を抑制するとともに、良好な座標検出精度も確保できる。更に、前記第二枠状部と前記第一枠状部とは重ならないので、前記後面電極における検出出力の低下も抑制できる。更に、前記第二枠状部は、枠状の導体からなり、その内側に導体の存在しない空隙があるため、タッチパネルを通した表示装置の視認性を、阻害しにくい。
また、本発明において、前記後面電極が、隣り合う前記第一枠状部どうしを接続する第一接続配線部を備え、前記前面電極が、隣り合う前記第二枠状部どうしを接続する第二接続配線部を備えたものとすることができる。このとき、平面視において、前記後面電極と前記前面電極とが、前記第一接続配線部と前記第二接続配線部において交差することが好ましい。
この場合、前記第一接続配線部と前記第二接続配線部とをそれぞれ設け、且つ、これらにおいて前記後面電極と前記前面電極とが交差するようにすることで、前記第二枠状部と前記第一枠状部とが重ならないような電極パターンを形成しやすくなる。
また、本発明において、前記第一枠状部と前記第二枠状部とが、同一形状であることが好ましい。
この場合、前記前面電極と前記後面電極との電極パターンの形状の相違が低減される。これにより、タッチパネル用導電シートの面全体の電極パターンの形状のバランス化を図ることができる。この結果、モアレ等の発生による外観の悪化、並びにタッチパネルを通した表示装置の視認性の低化を、抑制することができる。
さらに本発明では、前記絶縁層の外周形状は、平面視において矩形状であり、前記第一枠状部および前記第二枠状部の各々の形状が、前記絶縁層の外周辺に対して傾斜する辺で構成された多角形形状であることが好ましい。
この場合、表示装置の前面に当該タッチパネル用導電シートを設置した際、前記第一枠状部および前記第二枠状部の形状が、表示装置の画素に対して平行とならず傾斜することになるため、モアレ等の発生による外観の悪化、並びにタッチパネルを通した表示装置の視認性の低化を抑制することができる。
本発明によれば、前記後面電極の前記第一枠状部が、隣り合う2つの前記前面電極の間に配置されていることで、前記第一枠状部での静電容量の変化に対する、前記前面電極の存在による影響が小さくなり、前記後面電極での検出出力を向上できる。また、前記第一枠状部の存在により、前記絶縁層の後側の面での前記後面電極が存在する領域が大きくなるので、指などの接触位置の座標の良好な検出精度を確保できる。
本発明の一実施形態に係るタッチパネル用導電シートを示す要部拡大平面図である。 前記実施形態における後面電極の一例を示し、(a)は要部の拡大平面図、(b)はZ−Z線における断面図である。 前記実施形態における前面電極の一例を示し、(a)は要部の拡大平面図、(b)はY−Y線における断面図である。 (a)は前記実施形態に係るタッチパネル用導電シートの一例を示し、図1のX−X線における断面図、(b)及び(c)は前記実施形態に係るタッチパネル用導電シートの変形例を示し、図1のX−X線における断面図である。 前記実施形態に係るタッチパネル用導電シートを示す平面図である。 電極引き出し配線部の一例を示す拡大平面図である。 前記実施形態に係るタッチパネル用導電シートの使用状態の一例を示す断面図である。 従来のタッチパネル用導電シートの一例を示す要部拡大平面図である。
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
図5は、本発明の一実施形態に係るタッチパネル用導電シート1を平面視で見たときの全体を示す平面図であり、図1はその一部(図5のAで示す領域)を拡大した平面図である。また図7は、本実施形態に係るタッチパネル用導電シート1の使用状態の一例を示す断面図である。尚、平面視とは、タッチパネル用導電シート1の平面に対して垂直な方向から見ることをいう。
本実施形態に係るタッチパネル用導電シート1は、表示装置2の前面側(図7においては、上面側)に設置して使用される。タッチパネル用導電シート1の外形形状は特に限定されるものではないが、一般的な表示装置2の前面に設置しやすいように、本実施形態では矩形に形成されている。
タッチパネル用導電シート1は透明な絶縁層30を備えている。この絶縁層30は、プラスチックフィルム等の透明基材31によって構成することができる。絶縁層30として矩形形状の透明基材31を用いることで、タッチパネル用導電シート1の外形形状を矩形形状にすることができる。
本実施形態では、当該設置状態において使用者が触れる側を前側、表示装置2に対向する側を後側と規定したとき、この絶縁層30の前側の面に複数の前面電極20を備え、絶縁層30の後側の面には複数の後面電極10を備えている。ここで、図1および図5に示すように、タッチパネル用導電シート1の外周の矩形形状に対応するよう第一の方向(以下、縦方向nという)、第二の方向(以下、横方向mという)を規定したとき、前面電極20の各々は縦方向nに延びる配向ベクトルを有しており、隣り合う前面電極20、20どうしは所定ピッチで間隔をあけて配列されている。一方、後面電極10の各々は、横方向mに延びる配向ベクトルを有しており、隣り合う後面電極10、10どうしは所定ピッチで間隔をあけて配列されている。そして、前面電極20と後面電極10とは平面視において交差する配置となっている。後面電極10は、指の接触位置の縦方向nの座標を検出するために用いられる。前面電極20は、指の接触位置の横方向mの座標を検出するために用いられる。尚、前面電極20の配向ベクトルとは、前面電極20の長手方向のベクトルであり、後面電極10の配向ベクトルとは、後面電極10の長手方向のベクトルである。
まず、後面電極10について説明する。図2に示すように、後面電極10の各々には、枠状の導体からなる複数の第一枠状部11が設けられている。これら複数の第一枠状部11は、後面電極10の配向ベクトル方向(横方向m)において一定のピッチで間隔をあけて配置されている。そして、図1に示すように、第一枠状部11の各々は、平面視において、隣り合う2つの前面電極20、20の間に配置されている。また、後面電極10は、隣り合う第一枠状部11、11どうしを接続する第一接続配線部12を備えている。これら第一枠状部11と第一接続配線部12とが交互に連続して配置されることで、後面電極10が構成されている。隣り合う2つの後面電極10、10のピッチDは、タッチパネル用導電シート1の面積に応じて、適宜設定することができる。
第一枠状部11についてより詳しく説明する。この第一枠状部11は、導電材料からなる線状の導体により形成された枠形状の配線単位であり、細い線幅の導体により外周の輪郭線51が形成され、その内側は導体が存在しない空隙となっている。第一枠状部11は、絶縁層30の後側の面において、前方に前面電極20が存在しない領域、すなわち前面電極20、20の間の領域における後面電極10の配線密度を大きくする機能を有する。第一枠状部11を構成する導体の線幅は特に限定されないが、タッチパネル3としての透明性(表示装置2の視認性)を損なわないよう比較的細いものが好適であり、例えば、3〜30μmとすることができ、好ましくは5〜10μmである。
第一枠状部11の形状は、特に限定されないが、例えば多角形形状が挙げられ、特に幾何学的に対称性を有する形状が、電極パターン全体としての均一性を図る設計が行いやすいため好適である。第一枠状部11を多角形状とする場合、タッチパネル用導電シート1の外周辺G、すなわち絶縁層30(透明基材31)の外周辺Gに対して傾斜する辺で構成された多角形状であることが好ましい。すなわち、第一枠状部11の輪郭線51が、絶縁層30(透明基材31)の外周辺G(縦方向nの辺、横方向mの辺)に対して傾斜している線で構成されていることが好ましい。輪郭線51の傾斜角度は、所定の角度にすることができる。横方向mと平行な外周辺Gに対する輪郭線51の傾斜角度θ1は、例えば、60度である。縦方向nと平行な外周辺Gに対する輪郭線51の傾斜角度θ2は、例えば、30度である。本実施形態では、このような条件を実現する第一枠状部11の形状としてひし形を採用している。
第一枠状部11の横方向mの寸法L及び縦方向nの寸法Wは、タッチパネル用導電シート1を設ける表示装置2の面積に応じて、適宜設定することができる。例えば、表示装置2が大型(例えば、サイズが32型以上)である場合、第一枠状部11の横方向mの寸法L、縦方向nの寸法Wとしては、例えばそれぞれ0.3〜3mmとすることができる。尚、第一枠状部11は、平面視において、隣り合う前面電極20、20の間に配置されるものであることから、少なくとも前面電極20、20間のピッチよりも小さい必要があり、好ましくは同ピッチの半分以下の大きさである。
隣り合う第一枠状部11、11間は第一接続配線部12により接続されている。第一接続配線部12を構成する導体の線幅は特に限定されないが、タッチパネル3としての透明性を確保する観点から、第一枠状部11の導体と同様に、例えば3〜30μmとすることができ、好ましくは5〜10μmである。第一接続配線部12の形状は特に制限されず、例えば線状であっても、枠状であってもよい。本実施形態では、第一接続配線部12の形状は枠状であり、より具体的には、ひし形形状としている。第一接続配線部12を枠状とした場合、第一接続配線部12の横方向mの寸法L及び縦方向nの寸法Wは、前面電極20、20のピッチの大きさ、後述する第二枠状部21との相対的な配置関係に応じて、適宜設定することができるものである。この第一接続配線部12のひし形形状の輪郭線52も、絶縁層30(透明基材31)の外周辺Gに対して傾斜したものとなっている。
各後面電極10の端部は、絶縁層30の横方向mの側縁近傍領域において縦方向nに複数並べられた第一端子14に接続されている。本実施形態では、4本の後面電極10が、一つの第一端子14に接続されるようにしている。尚、第一端子14のうち、最端部に設けられる第一端子14には、縦方向nの端部域に位置する2本の後面電極10が接続されている。この最端部に設けられる第一端子14に接続される2本の後面電極10は、表示装置2のフレームに隠れてしまう場合を想定して形成した、いわゆるダミー電極である。第一端子14に接続された後面電極10の各々は、図6に示すような後面電極引き出し配線部15を介して、指などの接触位置の座標を演算するためのIC回路(図示省略)等に接続される。
次に、前面電極20について詳しく説明する。図3に、本実施形態における前面電極20の一例を示す。前述したとおり、前面電極20は、絶縁層30の前側の面に設けられ、所定ピッチで間隔をあけて複数配列される。また、前面電極20の各々は、透明基材31の縦方向nに延びる配向ベクトルを有している。隣り合う2つの前面電極20、20のピッチDは、タッチパネル用導電シート1の面積に応じて、適宜設定することができる。
各前面電極20には、枠状の導体からなる複数の第二枠状部21が設けられている。これら複数の第二枠状部21は、前面電極20の配向ベクトル方向(縦方向n)において一定のピッチで間隔をあけて配置されている。そして、図1に示すように、第二枠状部21の各々は、平面視において、隣り合う2つの後面電極10、10の間に配置されており、第一枠状部11とは重ならない配置となっている。第二枠状部21の形状は、特に限定されないが、後面電極10の第一枠状部11と同様の設計思想で設計することができる。例えば、タッチパネル3の電極パターン全体としての良好なバランスを考慮すると、後面電極10における第一枠状部11と同一形状とすることが好ましい。本実施形態では、具体的には、第一枠状部11と同じ形状、大きさのひし形としており、ひし形の対角線の長軸及び短軸の向きも同様としている。したがって、第二枠状部21は、導体の線幅は第一枠状部11と同様に設定され、第二枠状部21の輪郭線53についても、絶縁層30(透明基材31)の外周辺Gに対して傾斜している線で構成されている。
前面電極20は、隣り合う第二枠状部21、21どうしを接続する第二接続配線部22を備えている。これら第二枠状部21と第二接続配線部22とが交互に連続して配置されることで、前面電極20が構成されている。第二接続配線部22を構成する導体の線幅は特に限定されないが、タッチパネル3としての透明性を確保する観点から、第一接続配線部12の導体と同様に、例えば3〜30μmとすることができ、好ましくは5〜10μmである。第二接続配線部22の形状は特に制限されず、例えば線状であっても、枠状であってもよい。本実施形態では、第二接続配線部22は、直線状の導体としている。
各前面電極20の端部は、横方向mに複数並べられた第二端子24に接続されている。本実施形態では、4本の前面電極20が、一つの第二端子24に接続されるようにして形成されている。尚、第二端子24のうち、最端部に設けられる第二端子24には、2本の前面電極20が接続されている。この最端部に設けられる第二端子24に接続される2本の前面電極20は、いわゆるダミー電極である。第二端子24に接続された前面電極20の各々は、図6に示すような前面電極引き出し配線部25を介して、指などの接触位置の座標を演算するためのIC回路(図示省略)等に接続される。
本実施形態に係るタッチパネル用導電シート1では、絶縁層30(透明基材31)を挟んで、平面視において、複数の後面電極10と複数の前面電極20とが重なり合うことで、タッチパネル3全体としての電極パターンが構成される。このとき、後面電極10と前面電極20とは、第一接続配線部12と第二接続配線部22において交差している。
ところで、本実施形態に係るタッチパネル用導電シート1では、後面電極10の配向ベクトルが横方向mであり、且つ前面電極20の配向ベクトルが縦方向nである態様として説明してきたが、後面電極10及び前面電極20の配向ベクトルの向きはこれに限定されるものではない。後面電極10と前面電極20が平面視において交差するようそれぞれ配列されていればよい。例えば、後面電極10と前面電極20の配向ベクトルの向きは縦/横を逆にしてもかまわない。また、後面電極10と前面電極20の配向ベクトルは、タッチパネル用導電シート1における縦方向n、横方向mに対して斜めであってもかまわない。また、相互の配向ベクトルが交差していれば、必ずしも直交していなくてもよい。
次に、本実施形態に係るタッチパネル用導電シート1の製造例について説明する。本実施形態では、図2に示すような、透明基材31と、その表面上に設けられた後面電極10とから構成される後面電極用シート材18と、図3に示すような、透明基材31と、その表面上に設けられた前面電極20とから構成される前面電極用シート材28とを別々に準備し、これらを組み合せて、図4(a)に示すような構成のタッチパネル用導電シート1を作成している。
図2(a)は、後面電極用シート材18の一部の拡大平面図であり、図2(b)は、図2(a)のZ−Z線における断面図である。後面電極用シート材18は、透明基材31の一方の面に後面電極10が形成された構成となっており、透明基材31の他方の面には前面電極20は形成されていない。
透明基材31としては、透明であり且つ電気絶縁性を有する材料からなる板状(シート状、フィルム状も含む)のものであれば特に制限はなく、例えば、ガラス板、プラスチックフィルムなどが挙げられるが、薄厚としたり軽量化を図るうえでプラスチックフィルムが好適である。透明基材31として使用可能なプラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、ポリスチレンフィルムなどが挙げられる。
後面電極10は、導電性の高い材料から形成される。後面電極10の材料としては、例えば、銅、銀、金、白金、パラジウム、ニッケル、錫、アルミニウム、コバルト、ロジウム、鉄、ルテニウム、マンガン、モリブデン、タングステン、チタン、ビスマス、アンチモン、鉛などの金属材料;インジウムスズ酸化物(ITO)、アンチモンドープスズ酸化物(ATO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)などの金属酸化物等が挙げられる。後者の金属酸化物は、透明電極材料として使用可能であり、スマートフォン等の携帯通信端末機やタブレット式端末、ノートパソコン等のように比較的に画面サイズが小さい表示装置2用のタッチパネル3には好適である。一方、ITO等の金属酸化物は導電抵抗が金属よりも大きいため大画面用のタッチパネル3にはあまり向いていない。例えば、32型以上の表示装置2であれば、導電性に優れる点で金属材料が好ましく、特に、銅が好ましい。
透明基材31の一方の面に後面電極10を形成する場合には、例えば、まず透明基材31の一方の面に導電性材料の薄膜(導電薄膜)を形成する。この導電薄膜を形成する方法としては、公知の方法を使用することができ、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などが挙げられる。
そして、上記で形成した導電薄膜にエッチング等の処理を施すことで、この導電薄膜をパターニングして、透明基材31の一方の面に複数の後面電極10を形成することができる。
図3(a)は、前面電極用シート材28の一部の拡大平面図であり、図3(b)は、図3(a)のY−Y線における断面図である。前面電極用シート材28は、透明基材31の一方の面に前面電極20が形成された構成となっており、透明基材31の他方の面には後面電極10は形成されていない。この前面電極用シート材28で用いる透明基材31は、上述した後面電極用シート材18のものと同様のものが使用可能である。また、前面電極20を構成する導体の材料についても、上述した後面電極10と同様のものが使用可能である。なお、前面電極用シート材28と後面電極用シート材18とは組み合せて使用することから、透明基材31および電極の導体材料ともに同じものを使用することが好ましい。また、前面電極20の形成方法についても、後面電極用シート材18と同様に行うことができる。
そして、複数の後面電極10を透明基材31の片面に形成した後面電極用シート材18(図2)と、複数の前面電極20を透明基材31の片面に形成した前面電極用シート材28(図3)とを、図4(a)に示すように積層する。これにより、図4(a)に示すような、下から順に透明基材31と、後面電極10と、透明基材31と、前面電極20とが、この順で積層して形成されたタッチパネル用導電シート1が得られる。尚、この場合、後面電極10と前面電極20との間に配置される一方の透明基材31が、絶縁層30となる。なお、図4(a)は図1のX−X線における断面図である。
上記のようにして製造されたタッチパネル用導電シート1は、図7に示すように、表示装置2の前面側(図7においては、上面側)に設けられることでタッチパネル3を構成する。タッチパネル用導電シート1の前面電極20側の面には、透明接着剤201によってカバーフィルム202が貼着される。このカバーフィルム202の前面(上面)が、指などが接触する接触面となる。
尚、上記に示した実施形態では、図4(a)に示すように、後面電極10を透明基材31に形成し、この後面電極10を形成した透明基材31とは別の透明基材31に前面電極20を形成して、これらを積層させ、後面電極10と前面電極20との間に配置される一方の透明基材31が、絶縁層30となる構成について説明したが、本発明はこれに限られない。本発明に係るタッチパネル用導電シート1は、例えば、図4(b)に示すように、後面電極10と前面電極20とが、それぞれ別体の透明基材31に形成され、これらの透明基材31どうしが貼着されていてもよい。すなわち、後面電極10と前面電極20との間に二つの透明基材31、31を介在させてもよい。この場合、二つの透明基材31、31が、絶縁層30となる。また、他の変形例に係るタッチパネル用導電シート1では、例えば、図4(c)に示すように、一つの透明基材31の一方の面に複数の後面電極10を形成すると共に、この透明基材31の一方の面と反対側の他方の面に前面電極20を形成し、この透明基材31を絶縁層30としてもよい。
以上説明したように、本実施形態に係るタッチパネル用導電シート1は、後面電極10の第一枠状部11が、隣り合う2つの前面電極20、20の間に配置されていることで、使用者等が指を前方から近づけてきたときに、第一枠状部11で生じる静電容量の変化は、前面電極20の存在による影響を受けにくくなり、後面電極10での検出出力が向上する。また、第一枠状部11の存在により、絶縁層30の後側の面における後面電極10が存在する領域が大きくなるので、指などの接触位置の座標の良好な検出精度を確保できる。したがって、後面電極10側での検出出力を向上させるために前面電極20間の間隔を大きくする場合でも、良好な座標検出精度が確保できる。更に、第一枠状部11は、枠状の導体からなり、その内側に導体の存在しない空隙がある。このため、後面電極10が金属材料、すなわち非透明性の材料で形成されていても、後面電極10を見え難くすることができる。この結果、後面電極10が、タッチパネル3を通した表示装置2の視認性を阻害しにくくなるため、表示装置2の良好な視認性を確保できる。特に、大型の表示装置2に用いるタッチパネル3では、透明電極であるITO等の金属酸化物は導電抵抗が大きくて使用困難であり、銅などの非透明性の金属材料を電極形成用の導体材料に用いる必要があるため、当該タッチパネル用導電シート1は大型化が可能なタッチパネル3を得るのに有用である。
また、後面電極10の各々が、第一枠状部11を備えることにより、製造の際、後面電極10の一部に断線箇所が生じても、後面電極10全体に電気信号を印加することができる。この結果、製造歩留まりが低下するのを抑制することができる。
また、前面電極20が第二枠状部21を有することで、前面電極20が存在する領域が大きくなる。したがって、前面電極20間の間隔を大きくしても絶縁層30の前側の面における前面電極20が存在しない空白領域の面積拡大を抑止でき、前面電極20での検出出力の低下を抑制するとともに、良好な座標検出精度も確保できる。更に、第二枠状部21と第一枠状部11とは重ならないので、後面電極10における検出出力の低下も抑制できる。更に、第二枠状部21は、枠状の導体からなり、その内側に導体の存在しない空隙がある。このため、前面電極20が金属材料、すなわち非透明性の材料で形成されていても、前面電極20を見え難くすることができる。この結果、前面電極20が、タッチパネル3を通した表示装置2の視認性を、阻害しにくくなるため、視認性が高く、大型化が可能なタッチパネル3を得ることができる。
また、前面電極20の各々が、第二枠状部21を備えることにより、製造の際、前面電極20の一部に断線箇所が生じても、前面電極20全体に電気信号を印加することができる。この結果、製造歩留まりが低下するのを抑制することができる。
また、第一接続配線部12と第二接続配線部22とをそれぞれ設け、且つ、これらにおいて後面電極10と前面電極20とが交差するようにすることで、第二枠状部21と第一枠状部11とが重ならないような電極パターンを形成しやすくなる。
また、第一枠状部11と第二枠状部21とが、同一形状であることで、前面電極20と後面電極10との電極パターンの形状の相違が低減される。これにより、タッチパネル用導電シート1の面全体の電極パターンの形状のバランス化を図ることができる。この結果、モアレ等の発生による外観の低化、並びにタッチパネル3を通した表示装置2の視認性の低化を、抑制することができる。
また、第一枠状部11および第二枠状部21の各々の形状が、絶縁層30の外周辺Gに対して傾斜する辺で構成されることで、表示装置2の前面に当該タッチパネル用導電シート1を設置した際、第一枠状部11および第二枠状部21の形状が、表示装置2の画素に対して平行とならず傾斜することになる。これにより、モアレ等の発生による外観の悪化、並びにタッチパネル3を通した表示装置2の視認性の悪化を、抑制することができる。
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。尚、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
本実施例では、まず、厚み100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを透明基材31として用意した。次に、真空蒸着法によって、透明基材31の一方の面に厚み2μmの銅薄膜を形成した。そして、エッチングを行い、銅薄膜をパターニングして、透明基材31の一方の面に、図2に示す構造の後面電極10を形成した。後面電極10に設けられる第一枠状部11は、その線幅を5〜10μm、横方向mの寸法(長さ)Lを0.6mm、縦方向nの寸法(幅)Wを1.04mmとした。隣り合う2つの後面電極10、10の間隔Dは、1.6mmとした。後面電極10が接続される第一端子14の縦方向nの寸法は、6.0mmとした。第一端子14の数は、46とした。隣り合う2つの第一端子14、14の間隔は、0.5mmとした。
また、別の透明基材31の一方の面に、図3に示す構造の前面電極20を形成した。前面電極20に設けられる第二枠状部21は、その線幅を5〜10μm、縦方向nの寸法(長さ)Lを1.04mm、横方向mの寸法(幅)Wを0.6mmとした。隣り合う2つの前面電極20、20の間隔Dは、1.6mmとした。前面電極20が接続される第二端子24の横方向mの寸法は、6.0mmとした。第二端子24の数は、74とした。隣り合う2つの第二端子24、24の間隔は、0.5mmとした。
そして、複数の後面電極10が形成された透明基材31と、複数の前面電極20が形成された透明基材31とを積層して、図1に示す構造のタッチパネル用導電シート(420mm×720mm)を作製した。
<比較例1>
実施例1において、ITO薄膜をパターニングして、後面電極10及び前面電極20を形成し、図8に示すような従来の四角形状の格子構造で電極が配置されたタッチパネル用導電シート(420mm×720mm)を作製した。格子の一辺の長さは、1000μmとした。
<比較例2>
実施例1において、ITO薄膜をパターニングして、後面電極10及び前面電極20を形成し、図8に示すような従来の四角形状の格子構造で電極が配置されたタッチパネル用導電シート(420mm×720mm)を作製した。格子の一辺の長さは、2000μmとした。
これらのタッチパネル用導電シートについて、検出力の評価試験を次に示す通り行った。
[検出力の評価]
まず、ファンクションジェネレータを用いて、65KHzの周波数で、タッチパネル用導電シートに電圧を印加し、タッチパネル用導電シートに指を接触させない状態で、タッチパネル用導電シートから出力された出力電圧の波形をオシロスコープ(アジレント・テクノロジー社製 54622D)で取得した。
次に、上記と同様の条件で、タッチパネル用導電シートに電圧を印加し、タッチパネル用導電シートに指を接触させた状態で、タッチパネル用導電シートから出力された出力電圧の波形をオシロスコープで取得した。
そして、タッチパネル用導電シートに指を接触させない状態での出力電圧(N)に対する指を接触させた状態での出力電圧(T)の変化率を電圧変化率(V)として、次の数式(1)を用いて算出した。
V(%)=(N−T)/N×100 ・・・(1)
検出力の評価試験の結果を、下記表1に示す。
Figure 0006277538
表1にみられるように、図1に示す構造で電極が配置された実施例1は、従来の四角形状の格子構造で電極が配置された比較例1及び2と比較して、電圧変化率が大きく、タッチパネル用導電シートに指が接触した際の検出感度を向上させることができた。
1 タッチパネル用導電シート
2 表示装置
10 後面電極
11 第一枠状部
12 第一接続配線部
20 前面電極
21 第二枠状部
22 第二接続配線部
30 絶縁層

Claims (3)

  1. 表示装置の前面側に設置して使用されるタッチパネル用導電シートであって、当該設置状態において使用者が触れる側を前側、表示装置に対向する側を後側と規定したとき、
    透明な絶縁層と、この絶縁層の前側の面に設けられ、間隔をあけて配列された複数の前面電極と、前記絶縁層の後側の面に設けられ、間隔をあけて配列されるとともに平面視において前記前面電極と交差する複数の後面電極とを備え、
    前記後面電極は、前記前面電極よりも配線密度が大きく、
    前記後面電極の各々には、枠状の導体からなる複数の第一枠状部が所定ピッチで設けられ、前記第一枠状部の各々は、平面視において、隣り合う2つの前記前面電極の間に配置され
    前記前面電極の各々に、枠状の導体からなる複数の第二枠状部が所定ピッチで設けられ、前記第二枠状部の各々は、平面視において、隣り合う2つの前記後面電極の間に配置されるとともに前記第一枠状部と重なっておらず、
    前記後面電極が、隣り合う前記第一枠状部どうしを接続する枠状の第一接続配線部を備え、前記前面電極が、隣り合う前記第二枠状部どうしを接続する第二接続配線部を備え、平面視において、前記後面電極と前記前面電極とが、前記枠状の第一接続配線部と第二接続配線部において交差する、
    ことを特徴とするタッチパネル用導電シート。
  2. 前記第一枠状部と前記第二枠状部とが、同一形状であることを特徴とする請求項に記載のタッチパネル用導電シート。
  3. 平面視における前記絶縁層の外周形状は矩形状であり、前記第一枠状部および前記第二枠状部の各々の形状は、前記絶縁層の外周辺に対して傾斜する辺で構成された多角形形状であることを特徴とする請求項に記載のタッチパネル用導電シート。
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