以下に図面を参照しながら本発明に係る塗装ラインを説明する。なお、以下の説明は本発明の一実施形態を例示するものであり、本発明は以下の説明に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、以下の実施形態は改変することができる。
図1に本発明に係る塗装ラインの構成を示す。本発明の塗装ライン1は、被塗装物9の待機ライン8と、入口部10、洗浄ブース12、乾燥ブース14、塗装ブース16、振分機20、乾燥炉22、冷却ブース24、出口部26、28、主コンベア30および制御器50を含む。
待機ライン8は、被塗装物9を保持するパレット60(図2で説明)が順番に並べられた待ち行列である。被塗装物9は、この順番に塗装ライン1に取り込まれる。したがって塗装ライン1を稼動させる前に待機ライン8は形成される必要がある。なお、被塗装物9とパレット60との対応付けは、図5で説明する表データPDに予め記録される。また、乾燥時間が同じ被塗装物9は、同じパレット60に保持してもよい。
入口部10は、待機ライン8から被塗装物9を塗装ライン1の主コンベア30に取り込む部分である。被塗装物9は、例えば後に図2で説明するパレット60に吊り下げられて、主コンベア30で搬送される。なお、入口部10には、光センサL10が備えられている。光センサL10は、パレット60を個々に識別する。
洗浄ブース12は、被塗装物9の油脂等を除去するために洗浄を行う部分である。洗浄の方法は特に限定されない。乾燥ブース14は、洗浄ブース12で行った洗浄の水分を除去する部分である。強勢風で水滴等を吹き飛ばす若しくは、温風で乾燥させるといった方法が用いられる。なお、洗浄ブース12および乾燥ブース14を合わせて前処理部15と呼んでもよい。また、洗浄ブース12および乾燥ブース14(前処理部15)は、主コンベア30に沿って設けられるといえる。
塗装ブース16も主コンベア30に沿って設けられ、被塗装物9に実際に塗装を行う部分である。塗装は人の手を使って塗装してもよいし、機械によって塗装を行ってもよい。なお、洗浄ブース12、乾燥ブース14、塗装ブース16は、被塗装物9に塗装を行う上で一般的に必要な工程であり、この工程以外の工程が含まれていてもよい。さらに、すでに清浄な表面を有する被塗装物9等では、洗浄ブース12、乾燥ブース14が省略される場合があってもよい。
振分機20は、主コンベア30で搬送されてきた被塗装物9を後続する複数の副コンベア35に振り分ける。ここでは副コンベア35は2本あるとし、それぞれAライン32、Bライン34とする。
主コンベア30と副コンベア35は、パレット60の形状に応じた形態を取ることができる。例えば、パレット60が本実施形態のように、下方に被塗装物9を吊り下げるタイプであれば、主コンベア30および副コンベア35は、ワイヤ状の形態になる。また、パレット60が被塗装物9を載置するタイプであれば、主コンベア30および副コンベア35は、ベルト状やモータローラー状のものであってよい。したがって、主コンベア30と副コンベア35は、それぞれ主搬送手段および副搬送手段と言ってもよい。
乾燥炉22は、内部が150〜200℃の温度に維持されている。副コンベア35は乾燥炉22の内部を貫通して設けられている。また副コンベア35は、主コンベア30と同速で動く。振分機20の直前には光センサL20が設けられている。主コンベア30で搬送されてきた被塗装物9を保持するパレット60を識別するためである。
また、乾燥炉22内では、Aライン32およびBライン34に沿って、ストッパ36、38と検知器37、39が複数個設置されている。ストッパ36、38と検知器37、39については図3で説明する。冷却ブース24は、徐冷を行う部分である。乾燥炉22内よりも低い温度の温風を流してもよい。
出口部26、28は、Aライン32およびBライン34で搬送されてくる被塗装物9をAライン32およびBライン34から取り外し、次の工程に渡す部分である。ここでは、パレット60から被塗装物9を取り外すだけでなく、パレット60を含めてAライン32およびBライン34から取り外してもよい。出口部26、28には、光センサL26、L28が設けられている。塗装が終了した被塗装物9を確認するためである。
制御器50は、塗装ライン1内でのパレット60(被塗装物9)の流れを管理する。より具体的には、制御器50は、図5で説明する表データPDに従って、パレット60が各処理の工程を搬送されているかを管理する。したがって、パレット60が決められた順序とおりに搬送されていない場合は、警告通知を行ってもよい。なお、表データPDは、制御器50のメモリ50mに記憶される。
制御器50は、また振分機20の動作および乾燥炉22内のストッパ36、38の動作を制御する。また、乾燥炉22内の検知器37、39と入口部10、振分機20、出口部26、28に設けられた光センサL10、L20、L26、L28からの信号を受け取る。
なお、図1では、制御器50から送信される信号を点線で表し、検知器37、39および各光センサL10、L20、L26、L28からの信号を一点鎖線で表した。また、検知器37、39および各光センサL10、L20、L26、L28は、それぞれ配置位置によってアドレスが付与されている。そして、制御器50への送信には、配置位置を表すアドレスも一緒に送信する。また、制御器50は、モニタ52と入力装置53が接続されてもよい。
図2には、パレット60の構成を示す。図2(a)は平面図であり、図2(b)は側面図である。図2を参照して、パレット60は、本体60aと、遮蔽板60dと、フック60cと、レールガイド60bを含む。本体60aは、少なくとも下面に、レールガイド60bが設けられている。レールガイド60bは、平行な2本の溝形状をしている。主コンベア30、副コンベア35(Aライン32、Bライン34)は、2本の平行な突起(図3参照)が形成されている。レールガイド60bは、この突起に嵌合し、主コンベア30で搬送される。
なお、後述するように、パレット60は、移動する副コンベア35上で停止させられる場合がある。つまり、レールガイド60bと副コンベア35の突起との間で、摩擦が生じる。したがって、レールガイド60bの内側は摩擦抵抗が低くなる加工が行われるのが望ましい。
遮蔽板60dは、本体60aの上面側に配置された突起である。遮蔽板60dは個々のパレット60を識別するために設けられたものである。識別部と呼んでよい。遮蔽板60dは、パレット60毎に配置箇所を変えてあり、各光センサL10、L20、L26、L28の前を通過する際に光を遮蔽する。これによって、光センサL10、L20、L26、L28は、デジタルコードを出力する。
このデジタルコードは、個々のパレット60のパレット番号と言ってもよい。デジタルコードは、制御器50に送られる。制御器50はこの信号と送信された光センサのアドレスを知ることで、個々の被塗装物9が現在塗装ライン1のどこにいるかを知る。なお、識別部は個々のパレット60を識別できればよく、遮蔽板60d以外の方法であってもよい。
また、パレット60の下面には、フック60cが取り付けられている。このフック60cには、被塗装物9が吊り下げられる。なお、パレット60は、被塗装物9を吊り下げるだけでなく、パレット60上に被塗装物9を載置して、主コンベア30および副コンベア35上を移動してもよい。したがって、パレット60は被塗装物9を保持するといってもよい。
図3には、乾燥炉22内の検知器37、39およびストッパ36、38を示す。検知器37とストッパ36はAライン32に取り付けられている。ここでは、Aライン32の2本の突起を実線で示した。検知器39とストッパ38はBライン34に取り付けられている。共に、構成および機能は同じであるので、Aライン32の検知器37とストッパ36について説明する。
検知器37とストッパ36は、一対のペアとして構成される。検知器37は本体37aの端辺の一端に突設されたスイッチ37bと、同じ端辺の他端に枢軸(図では省略)で枢支された押板37cで構成されている。いわゆるリミッタスイッチである。押板37cがスイッチ37bの方向に搖動されると、押板37cがスイッチ37bを押す。内部で接点同士が接続し導通する。すなわち、検知器37は、押板37cによってスイッチ37bが現在押されているか否かを示すことができる。この状態は、制御器50に送信される。なお、検知器37は、パレット60の有無を検知できればよいので、リミッタスイッチ以外のものであってもよい。
ストッパ36は、Aライン32に沿って流れるパレット60の進行方向と直角方向に設けられた枢軸36aに本体36bが回転可能に枢支されたものである。制御器50からの信号によって、アーム36cが枢軸36a周りに回転する。
図3の動作について説明する。図3(a)を参照して、Aライン32に沿って搬送されてきたパレット60は、その進行方向前面の角部60eが検知器37の押板37cを押し、スイッチ37bが押し込まれる。これによって検知器37の点にパレット60が到達したことを制御器50は知ることができる。
次に図3(b)を参照して、制御器50からの指示により、ストッパ36が枢軸36aの周囲に回動し、アーム36cが、パレット60の走行方向を遮る。ストッパ36のアーム36cで進行方向を遮られたパレット60は、その位置で止まる。なお、Aライン32は、常に一定方向に走行する。したがって、パレット60は、Aライン32の上で滑りながら停留する。
制御器50からの指示により、ストッパ36のアーム36cが引き込みの位置(図3(b)では点線で示した。)に戻れば、再びAライン32に沿ってパレット60の搬送が開始される。
図4には、乾燥炉22の拡大図を示す。乾燥炉22内には、検知器37、39とストッパ36、38のペアがそれぞれAライン32、Bライン34の進行方向沿って配置されている。また検知器37、ストッパ36のペアと検知器39、ストッパ38のペアは、乾燥炉22の入口22iから同じ距離の位置に設けられる。
したがって、検知器37、ストッパ36のペアと検知器39、ストッパ38のペアによって、乾燥炉22内は、ゾーンZに分けられる。図4では、検知器37、39とストッパ36、38のペアを3組配置し、3つのゾーンZが形成された様子を示す。ここで、乾燥炉22の入口22iに近い方からゾーンZ1、Z2、Z3とする。
これらのゾーンZ1、Z2、Z3の長さをそれぞれLZ1、LZ2、LZ3とする。長さLZ1、LZ2、LZ3は同じ長さになるようにするのがよい。乾燥炉22内での停留時間を調整しやすいからである。なお、これらのゾーンZの間に、わざとLZ1<LZ2<LZ3若しくはLZ1>LZ2>LZ3といった関係を設けることを排除しない。
上記のようにストッパ36、38および検知器37、39は、ゾーンZ毎に乾燥炉22内に複数個設けられる。これらの配置に関し、副コンベア35の流れの下流側を「後ろ」若しくは「後段」と呼ぶ。また、最下流側のストッパ36、38および検知器37、39は、最後段のストッパ36、38等といえる。また「直後段」とは、次段を意味し、図4では、ゾーンZ1の直後段はゾーンZ2、ゾーンZ2の直後段はゾーンZ3(最後段)である。したがって、ゾーンZ1のストッパ36、38よび検知器37、39の直後段のストッパおよび検知器とは、ゾーンZ2のストッパ36、38および検知器37、39である。
また、ここでは、ストッパ36、38はすべて制御器50がその動作を制御するように説明するが、制御器50は、少なくとも最後段のストッパ36、38を制御し、それ以外のストッパ36、38は、制御器50が動きを制御しなくてもよい。すなわち、最後段以外のストッパ36、38は、直後段のストッパ36、38の動きにしたがって動作できればよいからである。
以上の構成を有する塗装ライン1の動作について説明する。動作の概略は、以下のようである。まず、予め塗布を行う被塗装物9毎に、決められた乾燥時間のデータが作成される。そして、これらを乾燥時間が短い順に並べた表データPDが作成される。たとえば、翌日塗工する予定被塗装物のリストを作成し、乾燥時間が短い順に並べたものが表データPDである。そして、各被塗装物9に対して、それらが搭載されるパレット60が決められる。つまり、表データPDには、パレット60の投入順、パレット番号、パレット60毎の乾燥時間、被塗装物番号の情報を含む。なお、表データPDは制御器50内のメモリ50mに記憶させておくのが好適である。
そして、実際に被塗装物9を保持したパレット60を塗装ライン1への投入順に並べた待機ライン8を準備しておく。
塗装が開始されると、被塗装物9を吊り下げたパレット60が、入口部10から塗装ライン1に所定時間間隔Twで取り込まれる。これは主コンベア30に各パレット60が載せられることを意味する。それぞれの被塗装物9は、主コンベア30に従って移動し、洗浄ブース12、乾燥ブース14、を通過し、塗装ブース16で塗装された後、振分機20でAライン32とBライン34に振り分けられる。
各被塗装物9は、乾燥炉22中に入ると、その被塗装物9で決められた乾燥時間の間停留するようにストッパ36、38で移動が阻止される。そして被塗装物9毎の乾燥時間の間、乾燥炉22に保持されたら乾燥炉22から送出され冷却ブース24で徐冷される。出口部26、28では、光センサL26、L28を使って、入口部10から塗装ライン1に投入された被塗装物9(パレット60)であることを確認する。以下詳説する。
本発明の塗装ライン1では、乾燥時間の異なる被塗装物9に対して効率的に塗装を行うことができる。しかし、その乾燥時間の範囲は、乾燥炉22の長さ、主コンベア30の搬送速度、主コンベア30で搬送される被塗装物9の時間間隔で決められる。したがって、予め処理する被塗装物9の乾燥時間を想定した上で、塗装ライン1は設計される。
被塗装物9の乾燥時間がm通りあるとする。これらを短い順にP1、P2、・・・、Pm(単位は分)とする。明らかにP1<P2<・・・<Pmである。また、パレット60が搬送される時間間隔をTw(分)、主コンベア30の搬送速度をv(m/分)、乾燥炉22内の検知器37、39とストッパ36、38のペアの数(これはゾーンZの数である。)をS、パレット60が1つのゾーンZを通過する時間をTs(分)とする。
まず、最も乾燥時間の短い(P1分)被塗装物9は、P1分で乾燥炉22を通過できなければならない。乾燥しすぎになるからである。すなわち、乾燥炉22の長さは、vP1(m)以下である。また、1つのゾーンZを通過する時間Ts(分)で表すと、最短乾燥時間P1は、(1)式のように表される。
P1≧Ts・S(分)・・・(1)
一方、最も乾燥時間の長い(Pm分)被塗装物9に着目する。各被塗装物9は乾燥炉22内で、先詰めに投入されるとする。被塗装物9は、乾燥炉22の入口22iから入って、一番奥のゾーンZの最後に設けられたストッパ36、38で搬送を止められる。
乾燥炉22の上流側にストックヤード等の退避領域を設けず、乾燥炉22への待ち行列も発生させないとすると、この被塗装物9が乾燥炉22内にとどまっていられる時間は、搬送時の時間間隔Twで流れて来る被塗装物9によって全てのゾーンZが埋まってしまうまでの時間である。
また、連続する被塗装物9は、一様にAライン32若しくはBライン34に振り分けられる。すると、Aライン32、Bライン34それぞれには、2Tw毎に被塗装物9が搬入される。より一般的に乾燥炉22内の副コンベア35の数がR本あるとすると、最長乾燥時間Pmは(2)式のように表される。
Pm=R・Tw・S(分)・・・(2)
(1)式および(2)式の関係は、塗装ライン1では満足されているとする。
図5に表データPDを示し、図6から図8に入口部10、振分機20、出口部26、28での、制御器50における制御の簡単なフローを示す。なお、乾燥炉22内の処理は、図9で詳説する。図5を参照して、制御器50は、この表データPDを随時更新しながら、塗装の進捗を管理する。表データPDの第1行目には被塗装物番号(図では「製品番号」とした。)が記載されている。今被塗装物9はa1からanまでのn個あるとする。
一方、乾燥時間はP1からPmのm種類あるとする。被塗装物9には、乾燥時間が重複するものがあってもよい。図5では、少なくとも被塗装物番号a1、a2の被塗装物9の乾燥時間は、同じP1(分)である。また少なくとも被塗装物an−1、anの乾燥時間も同じPm(分)であったことを示している。
表データPDには、各被塗装物9を搬送するパレット番号が記載される。パレット60は被塗装物9の数だけある。投入時刻は入口部10からパレット60に保持された被塗装物9が塗装ライン1に投入された時刻である。また、「振分機」、「A出口」、「B出口」と記載された部分はそれぞれ振分機20、出口部26、28を表す(図1参照)。処理が進むにつれ、その地点で被塗装物9を確認した際の時刻が記録される部分である。
また、表データPDの「炉内時間」は、乾燥炉22内での停留累積時間を表す。後述するように、被塗装物9が乾燥炉22内に入ると、乾燥炉22での停留累積時間が記録される。各被塗装物9は「炉内時間」が「乾燥時間」になるまで乾燥炉22内に停留させられる。
例えば、被塗装物番号a2の被塗装物9は、塗装ライン1に時刻T2の時に投入され、振分機20に時刻TB1に到着した。その後Bライン34に振り分けられ、時刻EB1に出口部28で確認されたことが読み取れる。なお、「炉内時間」は、ゼロとしているが、「B出口」(出口部28)に時刻が記録されたときは、P1となっている。
すでに説明したように、塗装ライン1に投入される被塗装物9は、すでに表データPDに記録されたように、乾燥時間の短い物順にパレット60に保持された状態になっている。
図6を参照して、入口部10での処理を示す。塗装ライン1が稼働を開始すると(ステップS100)、パレット番号「1」から順次入口部10へ投入される(ステップS102)。ここで、「投入される」とは、パレット60が主コンベア30に載せられる若しくは、取り込まれると言ってもよい。投入されたパレット60は、光センサL10でパレット番号が読み取られ、表データPDに記録されたパレット番号と一致しているか(表データPD通りか)否かが判断される(ステップS104)。
表データPDのパレット番号と一致していれば(ステップS104のY分岐)、表データPDに投入時刻を記録する(ステップS106)。一致していなければ、警告を出し(ステップS108)、終了(ステップS112)にフローを移してもよいし、そのまま続行してもよい。ここでは終了するとして説明を続ける。
終了していなければ(ステップS110のN分岐)、搬送時間間隔Twだけ待機し(ステップS114)、再びステップS102に戻る。終了していれば(ステップS110のY分岐)、入口部10での処理は終了する(ステップS112)。この終了判定は、パレット番号が「n」番目になったか否かで判定すればよい。なお、ここでの終了は、入口部10での処理が終了したことを言い、塗装ライン1全体は、最後の被塗装物9が出口部26、28から取り出されるまで稼働する。
図7には、振分機20での処理を示す。塗装ライン1が稼働を開始すると(ステップS200)、光センサL20に反応があるまで待機する(ステップS202)。反応があったら(ステップS202のY分岐)、パレット番号を読み取る(ステップS204)。そして、読み取った時刻を表データPDの該当するパレット番号の「振分機」の部分に記録し(ステップS206)、Aライン32若しくはBライン34へ振り分ける(ステップS208)。この振分は、基本的に交互に振り分ければよい。
図8には、出口部26、28での処理を示す。塗装ライン1が稼働を開始すると(ステップS260)、光センサL26、L28に反応があるまで待機する(ステップS262)。反応があったら(ステップS262のY分岐)、パレット番号を読み取る(ステップS264)。そして、読み取った時刻を表データPDの該当するパレット番号の「出口部」の部分に記録する(ステップS266)。そして、終了判定を行う(ステップS268)。
終了判定は表データPDの記録されるべき部分がすべて記録されたか否かで判定してよい。終了である場合(ステップS268のY分岐)は、終了処理を行って(ステップS270)、終了する(ステップS272)。終了でない場合(ステップS268のN分岐)は、再びステップS262に戻る。
なお、終了処理は、終了した旨の表示をモニタ52に表示することを含めてよい。また、入口部10での処理(ステップS100)や、振分機20での処理(ステップS200)を強制的に終了する処理を入れてもよい。
次に乾燥炉22内での処理について説明する。図9には、乾燥炉22内での処理のフローを示し、図10には状態遷移を示す。説明を簡単にするために、乾燥炉22は、4つのゾーンZを有しているとする。振分機20に近い側から、それぞれゾーン1、ゾーン2、ゾーン3、ゾーン4とする。また図10には、Aライン32の状態遷移だけを示す。Bライン34は、送り時間間隔TwずれるだけでAライン32と同じ状態と考えてよい。
図10を参照して、縦方向は時間の経過を示す。横方向はゾーンZの並びを示す。またゾーンZを移動する間隔はTsであるとする。最も左側には時刻を示す(T1、T2等)。ゾーン1(ZONE1)の左側(22bf)には、これから乾燥炉22に入る被塗装物9を記載した。また、ゾーン4(ZONE4)の右側(22af)は、乾燥炉22から出た被塗装物9を記載した。また、登場する被塗装物9はわかりやすくするため、a1から奇数番目毎に登場する。偶数番目の被塗装物9は、Bライン34に振り替えられるからである。
図10は、最初の被塗装物a1がゾーン4の終端まで進んでいる状態を示している。また、説明を簡単にするために、搬送時間間隔TwとゾーンZを通過する時間Tsは同じとした。振分機20でAライン32とBライン34に交互に被塗装物9が振り分けられるので、Aライン32には、2Ts毎に被塗装物9が流れて来る。
図9を参照して、乾燥炉22での処理を概観すると、4つのゾーンのうち、最後段のゾーン(ゾーン4)から最初のゾーン(ゾーン1)に向かって、被塗装物9の有無を確認していく。最後段のゾーン(ゾーン4)に被塗装物9がある場合は、予定された乾燥時間が実行されるように被塗装物9を停留させたり、乾燥炉22から送り出したりする。
最後段のゾーン(ゾーン4)でないゾーンに被塗装物9がある場合は、直後段のゾーンに被塗装物9が停留していれば、そのゾーンで被塗装物9を停留させる。直後段のゾーンで被塗装物9が停留していなければ、そのゾーンを通過させる。以下図10を参照しながら詳説する。フロー中には、一般性を失わないために、未定変数を用いた。
塗装ライン1が稼働すると(ステップS300)、n番目(4番目)のゾーンに被塗装物9があるか否かを判定する(ステップS302)。被塗装物9の有無は、n番目(4番目)のゾーンの検知器37からの信号によって検知することができる。
被塗装物9がn番目(4番目)のゾーンにある場合(ステップS302のY分岐)は、n番目(4番目)の被塗装物ak(a1)は予定された乾燥時間Pak(Pa1)が実行されたか否かを判定する(ステップS304)。予定された乾燥時間Pak(Pa1)は、図5の表データPDに記録されている。
また、現在の炉内停留時間も表データPDに「炉内時間」として記録されている。従って、これらの値を比較することで、ステップS304の判定は可能である。乾燥時間Pak(Pa1)が実行された場合(ステップS304のY分岐)は、n番目(4番目)のストッパ36を開く(ステップS306)。なお、乾燥時間Pak(Pa1)については、累積されていくが、ステップS322で説明する。
図10を参照すると、時刻T1の時の状態は、ゾーン4の終端で被塗装物a1が検知器37で検知されている。被塗装物a1は、4つのゾーンを流れてきているので、4Tsの時間だけ乾燥処理が行われている。被塗装物a1の乾燥時間Pa1が4Tsで満たされていれば、ストッパ36を開き(図9のステップS306)、乾燥炉22から被塗装物a1を送り出す。
なお、被塗装物a1の乾燥時間が満たされているか否かは、上述したように、図5の表データPDで被塗装物a1の「乾燥時間」がPa1であって、表データPDの「炉内時間」が同じくPa1になっているか否かで判断することができる。
図9に戻って、被塗装物ak(a1)の乾燥時間Pak(Pa1)が実行されていない場合(ステップS304のN分岐)は、n番目(4番目)のストッパ36を閉じる(ステップS308)。図10を参照すると、時刻T1の時にゾーン4にある被塗装物a1を停留させることに対応する。
再び図9に戻る。ステップS302で、n番目(4番目)のゾーンに被塗装物がない場合(ステップS302のN分岐)は、ステップS306に移り、n番目(4番目)のゾーンのストッパ36は開いておく。
次にn−1番目(3番目)のゾーンの被塗装物ak+1の有無を調べる(ステップS310)。被塗装物9の有無は、n番目(4番目)の時と同じで、n−1番目(3番目)のゾーンの検知器37からの信号で制御器50は知ることができる。n−1番目(3番目)のゾーンに被塗装物があった場合(ステップS310のY分岐)は、続いて直後段であるn番目(4番目)のストッパ36が閉じているか否かを確認する(ステップS312)。
そして、n番目(4番目)のストッパ36が閉じている場合(ステップS312のY分岐)は、n−1番目(3番目)のストッパ36も閉じる(ステップS314)。被塗装物9の進行方向の次段のゾーンが詰まっているので、進めないからである。
n番目(4番目)のストッパ36が開いている場合(ステップS312のN分岐)は、n−1番目(3番目)のストッパ36も開く(ステップS316)。直後段の第n番目(4番目)のゾーンが詰まっていないので、進むことができるからである。そして、ステップS314の次にフローを移動させる。
ステップS318では、n(4)をn−1(3)で置き換える。そして、ステップS320でnが1であるかどうかを判断する。nが1であれば、最初のゾーン(ゾーン1)まで評価が終わったことを示すからである。
なお、ステップS310でn−1番目(3番目)のゾーンに被塗装物が無かった場合(ステップS310のN分岐)は、ステップS316に処理を移し、n−1番目(3番目)のゾーンのストッパ36を開く。そして、ステップS314の次にフローを移す。
図10を参照して、時刻T1の時のゾーン3は、被塗装物9がないので、図9のステップS310からステップS316へ流れる処理が行われる。
図9に戻って、nが1でない場合(ステップS320のN分岐)は、ステップS310に戻ってn−1番目(2番目)のゾーンの被塗装物9の有無を確かめる(ステップS310)。今図10の時刻T1では、ゾーン2に被塗装物ak+1(a3)が存在する。なので、フローはステップS312に移動する。
ステップS312でn番目(3番目)のストッパ36の状態を調べる。図10の時刻T1では、ゾーン3には被塗装物9がないので、ストッパ36は開いていた。したがって、処理はステップS316に移動し、n−1番目(2番目)のストッパ36を開く。つまり、被塗装物ak+1(a3)は、ゾーン3に移動できる。
このようにして、時刻T1の時のゾーンZ中の全ての被塗装物9について、そのゾーンZを通過させるか否かを判断する。ステップS320でnが1になったら、状態遷移を更新する(ステップS322)。図10を参照して、時刻T1の時の状態遷移を時刻T2の状態に更新する。ここでは、図5の表データPDの「炉内時間」の更新を含む。つまり、表データPDを更新する際に乾燥時間は累積加算されていく。
図9に戻って、表データPDの更新(ステップS322)が終了したら、時間Tsだけ待機する(ステップS324)。この時、変数nをリセットし、乾燥炉22の最後のゾーンの番号(図10であればn=4)にする。そして、処理をステップS302に戻し、再び最後のゾーンから被塗装物9の有無を調べる。
図10を再度参照する。被塗装物a1の乾燥時間は4Tsであったとする。したがって、時刻T2には、乾燥炉22から送り出される。一方、被塗装物a3からは「乾燥時間」が5Tsであったとする。被塗装物a3は、時刻T3にゾーン4まで来ると、時刻T4まで乾燥炉22中に残る。そうして、被塗装物a3の乾燥炉22中での「炉内時間」(停留累積時間)は5Tsとなる。
そして、「炉内時間」が5Tsとなった被塗装物a3は、時刻T5の時に乾燥炉22から送り出される。この時、被塗装物a1とa3の間は、3Tw(Tw=Tsである。)分だけ間があく。連続する被塗装物9の乾燥時間が同じであれば、Aライン32での被塗装物の送出し間隔は2Tw(=2Ts)である。しかし、被塗装物9の乾燥時間が増える境目では、被塗装物9の送り時間間隔はTwより大きくなる。つまり、送り時間間隔は遅れる。
図11には、被塗装物9が入口部10に投入された順と、出口部26、28から取り出される被塗装物9の関係を示す。被塗装物9の並びは待機ライン8である。入口部10には、被塗装物9がa1から時間間隔Tw毎に投入される。これは前処理部15、塗装ブース16、乾燥炉22、冷却ブース24を経て、出口部26、28から取り出される。この時、出口部26、28からは2Tw毎に被塗装物9が取り出される。しかし、出口部26、28を一体としてみれば、投入した時間間隔Tw毎に被塗装物9を取り出すことができる。
なお、被塗装物a2と被塗装物a3の間を境目として、乾燥時間が異なった場合は、出口部26、28から得られる被塗装物9の順は、図11の符号29Aの四角の中のようになる。図10で説明した送出し被塗装物9の遅れは、Bライン34でも生じる。したがって、被塗装物9全体でみると、送り時間間隔がTwより長くなる部分が生じる。図11では、符号D1で示す部分にちょうど送り時間間隔Tw分だけ被塗装物9が出てこない部分が生じる。
このように本発明に係る塗装ライン1は、乾燥時間が異なる被塗装物9が含まれていても、乾燥時間が異なる被塗装物9同士の境目の部分以外は、投入した時間間隔と同じ時間間隔で塗装が完了した被塗装物9を得ることができる。
なお、本発明に係る塗装ライン1は、待機ライン8に並べる被塗装物9の順によって、図9のフローの下で、いくつかの動作を行う。以下そのいくつかを示す。
図12を参照する。ここでは、時刻T2、時刻T3、時刻T4、時刻T5まで、第4ゾーンのストッパ36を閉じた場合を示す。時刻T5の時に、全てのゾーンに被塗装物9が存在し、乾燥炉22の入口にも次の被塗装物a9が来ている。したがって、時刻T5の時には、全てのゾーンのストッパ36を開き、被塗装物9を送り出す必要がある。この時、ゾーン4の被塗装物a1は、8Tsの間乾燥処理を受けていたことになる。
時刻T6の時に、再び全てのゾーンのストッパ36を閉じる。すると、時刻T7の時に、ゾーン4にいる被塗装物a3の乾燥時間は8Tsとなり、時刻T5の時の状態に戻る。つまり、乾燥炉22中に2本の副コンベア35を有し、乾燥炉22中に4個のゾーンを設けると、最長で2×4×Ts(分)の乾燥時間を得ることができる。
なお、一般的に、副コンベア35の数をR本、乾燥炉22中のゾーンの数がS個、各ゾーンの通過時間をTsとすると、最大「R×S×Ts(分)」の乾燥時間を得ることができる((2)式参照。)。なお、これらの処理は図5に示した表データPDに被塗装物9の順序と乾燥時間を記載しておけば、図9のフローによって、動作させることができる。
次に図13を参照する。図13には、時刻T1の時に被塗装物a1が最大乾燥時間8Tsを得ている状態を示している。この状態は、次に被塗装物a9が乾燥炉22内に進まなければならないので、全てのゾーンのストッパ36は開放される。そしてそのまま全てのゾーンのストッパ36が開放されたとすると、時刻T5の時にゾーン4にいる被塗装物9は乾燥時間が4Tsに戻っている。
塗装ライン1では、乾燥時間が短い被塗装物9から順に並べて処理を行う。しかし、この方法では、乾燥時間が長い被塗装物9は、後回しとなる。乾燥時間が長い一部の被塗装物9を先に塗装し、その後再び、乾燥時間が短い順に塗装を行う場合もありえる。
図13は、塗装ライン1のように、連続的に乾燥炉22を通過させる装置であっても、その規則を失う事なく、被塗装物9の乾燥時間を入れ替えることができることを示している。つまり、最大乾燥時間から最小乾燥時間までの間に、被塗装物a3、a5、a7の3つの被塗装物9を挟むことで、乾燥時間を短くすることができる。
一般性を失うことなく、副コンベア35の数をR本、乾燥炉22中のゾーンの数がS個、各ゾーンの通過時間をTsとすると、1つの副コンベア35において、最大「R×S×Ts(分)」の乾燥時間から、最小「S×Ts(分)」まで被塗装物9の乾燥時間を戻すためには、最長乾燥時間の最後の被塗装物9から最短乾燥時間の最初の被塗装物9までの間に、S−1個の被塗装物9を挟めばよい。
図14を参照する。図14は、図11とほぼ同じ図である。ここで、被塗装物a2が最長乾燥時間の被塗装物の最後であり、被塗装物a9が最短乾燥時間の被塗装物の最初であるとする。図13で説明したように、a1からa9までに、a3、a5、a7の3つの被塗装物9を挟む必要がある。またBライン34でも同様のことが発生し、a2からa10までの間にa4、a6、a8の3つの被塗装物9を挟む必要がある。したがって、被塗装物9全体で見れば、6つの被塗装物9を間に挟むことで、乾燥時間を短くすることができる。
一般性を失うことなく、最長乾燥時間の最後の被塗装物9から最短乾燥時間の最初の被塗装物9までの間に、R×(S−1)個の被塗装物9を挟めばよい。もちろん、短くする乾燥時間の長さが短ければ、より少ない被塗装物9を挟めばよい。
図15(a)には、図5で示した表データPDに被塗装物9を記載する際に、乾燥時間の短いもの順の間に乾燥時間が長いものを実施する場合の記録を示す。被塗装物番号と乾燥時間の部分だけ示す。被塗装物a1、a2は乾燥時間が最短のP1である。k番目の被塗装物akは最長の乾燥時間Pmのものが、挿入された。k+1番目の被塗装物9から乾燥時間の短いものを順次並べる。そして、乾燥時間がP1分のものに戻る。乾燥時間P1分の被塗装物9は、l(エル)+1番目まで続き、l+2番目からは乾燥時間P2の被塗装物9に変わる。
ここで、乾燥炉22中には、2本の副コンベア35があるとしているので、乾燥時間Pmのものから順次乾燥時間の短い被塗装物9を並べる場合は、2個ずつ連続して並べる必要がある。Aライン32でもBライン34でも同じ処理が行われるからである。
図15(b)には、片方の副コンベア35だけでこのような処理を行う場合の表データPDの記載を例示する。副コンベア35の一方のラインで、乾燥時間がP1の並びの中に、乾燥時間がPmのものが挟まれた(被塗装物ak)。他方のラインには、乾燥時間P1のものが連続して投入される。ここで、被塗装物ak、ak+2、ak+4と1つおきに乾燥時間がPm−1、Pm−2と乾燥時間を短いものを挿入すれば、一方のラインだけで、乾燥時間が長いものから短いものへ戻すことができる。
なお、ここで、乾燥時間が短い被塗装物9に戻す際には、順次乾燥時間が短くなる被塗装物9を挟む必要がある。しかし、そのような被塗装物9がない場合は、空のパレットを挿入してもよい。空のパレットとは、被塗装物9が保持されていないパレット60だけのものをいう。これを図15のPm−1、Pm−2といった部分に挿入する。
このように、塗装ライン1は、乾燥時間の短い被塗装物9順に入口部10から投入されるのが望ましいが、乾燥時間の短い被塗装物9の流れの中に乾燥時間の長い被塗装物9を挿入しても、再び乾燥時間の短い順に戻すことができる。つまり、待機ライン8には、乾燥時間の長い順に並ぶ部分があってもよい。ただし、戻す際に空パレットを用いると、その分だけ全体の処理効率は低下する。
図16には、他の被塗装物9の投入例を示す。この例では、被塗装物9は、乾燥時間の異なるものがほぼ同数ある場合に利用できる。このような被塗装物9群は、基本とおり乾燥時間の短い順に投入してもよい。しかし、一方の副コンベア35で、短い乾燥時間を処理し、他方の副コンベア35で長い乾燥時間の被塗装物9を処理してもよい。この場合、待機ライン8では、2つおきに乾燥時間の長い被塗装物9と短い被塗装物9を並べる。このような待機ライン8であっても、図9のフローによって処理することができる。
一般に、副コンベア35がm本あれば、m個の乾燥時間の異なる被塗装物9をm個毎に待機ライン8に並べれば、それぞれの副コンベア35で乾燥時間の異なる被塗装物9だけを処理することができる。