以下に、本願発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
まず、図1及び図2を参照しながら、移動栽培装置1の概略構造について説明する。以下の説明において必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば「左右」「上下」等)を用いる場合は、図1において紙面に直交する方向を平面視とし、紙面上下方向を前後方向又は縦方向(列方向と言ってもよい)とし、紙面左右方向を左右方向又は横方向(行方向と言ってもよい)とする。これらの用語は説明の便宜のために用いたものであり、本願発明の技術的範囲を限定するものではない。
なお、実施形態では、縦方向及び横方向がいずれも水平面(地面)に対して平行(重力方向に対して垂直)であるが、本願発明はこれに限定されるものではなく、イチゴやホウレンソウといった果菜類や葉菜類といった野菜の栽培に支障を来さない程度で、縦方向及び横方向が水平面に対して多少傾斜していても構わない。
図1及び図2に示すように、実施形態の移動栽培装置1は、イチゴやホウレンソウ、又はトマトやキュウリといった野菜や花卉等の植物を栽培する複数の栽培ベンチ10を循環搬送する閉ループ状のものである。この場合の移動栽培装置1は、搬送方向を互いに逆向きにして平行状に並ぶ一対の搬送コンベヤ40A,40Bと、一方の搬送コンベヤ40A(40B)の搬送下流側から他方の搬送コンベヤ40B(40A)の搬送上流側に各栽培ベンチ10を案内する一対の案内装置20A(20B)と、搬送コンベヤ40A,40B上の栽培ベンチ10を搬送下流側の案内装置20A,20Bに向けて移動させる移載装置としての一対の引き込み装置21A,21Bとを備えている。一対の搬送コンベヤ40A,40Bと一対の案内装置20A,20Bとが、複数の栽培ベンチ10を循環搬送するために閉ループ状に構成されている。
一対の搬送コンベヤ40A,40Bは、前後方向(縦方向)に間隔を開けた状態で平行状に並べられている。それぞれ栽培ベンチ10を互いに逆向きの搬送方向(横方向)に搬送するように構成されている。一対の案内装置20A,20Bは、左右方向(横方向)に間隔を開けた状態で平行状に並べられていて、それぞれ栽培ベンチ10を互いに逆向きの方向(縦方向)に案内するように構成されている。
手前側搬送コンベヤ40Aの左半部は第1案内装置20Aの手前側に位置し、手前側搬送コンベヤ40Aの右半部は第2案内装置20Bの手前側に位置している。奥側搬送コンベヤ40Bの左半部は第1案内装置20Aの奥側に位置し、奥側搬送コンベヤ40Bの右半部は第2案内装置20Bの奥側に位置している。各搬送コンベヤ40A,40Bはいずれも、各案内装置20A,20Bとの間で栽培ベンチ10を受け渡し可能に構成されている。各栽培ベンチ10は、手前側搬送コンベヤ40A→第1案内装置20A→奥側搬送コンベヤ40B→第2案内装置20B→手前側搬送コンベヤ40Aの順に、図1の平面視時計回りに循環搬送される。なお、循環搬送方向は図1の平面視反時計回りにしてもよいことは言うまでもない。
図6及び図15等を参照しながら、栽培ベンチ10の詳細構造について説明する。栽培ベンチ10は、上向き開口横長箱状の容器である栽培槽としての複数のプランタ2と、プランタ2が収容される横長箱枠状のフレーム枠体11とを備えている。プランタ2は栽培用の土等を収容するものであり、その底面には余分な水及び薬液を外部に排出する排出穴(図示省略)が形成されている。プランタ2上面の前後縁部には、フレーム枠体11の上面側を構成する矩形枠状の上フレーム枠12のうち前後の長手側部に係合する係止片部2aが形成されている。係止片部2aを上フレーム枠12の長手側部に引っ掛かり係合させることによって、プランタ2が栽培ベンチ10に支持されている。
フレーム枠体11の下面側を構成する矩形枠状の下フレーム枠18には、栽培ベンチ10を各案内装置20A,20B上で摺動させる摺動体としての車輪13が二個一組の計四組取り付けられている。計四組の車輪13は、各案内装置20A(20B)の案内レール35(詳細は後述する)の配置幅に合わせた間隔で、栽培ベンチ10の横方向に並べて配置されている。なお、摺動体は各案内装置20A(20B)側に設けてもよい。また、摺動体は車輪13に限らず、コロ、スライダー又はローラといった別の構造でもよい。下フレーム枠18の上面側には、プランタ2下面の排出穴から排出される余分な水及び薬液を回収する受け樋14が取り付けられている。各栽培ベンチ10の受け樋14に集められた水及び薬液は、案内装置20A,20Bの長手方向(縦方向)に沿って延びる回収樋30A,30B(図1参照)にてまとめられて回収される。
なお、フレーム枠体11の下部中央側には、栽培ベンチ10にて栽培される植物の各種情報を記憶するICタグ(図示省略)が設けられている。ICタグの使用によって、植物のトレーサビリティを向上できる。
下フレーム枠18の搬送方向前後一方の長手側部には、平面視コ字状に形成された当接フレーム19が設けられている。当接フレーム19の左右両縦パイプ部19bが下フレーム枠18側に溶接固定されている。当接フレーム19の横パイプ部19aが、各案内装置20A,20B上で前後いずれか一方にある栽培ベンチ10の下フレーム枠18に当接可能になっている。当接フレーム19の横パイプ部19aを隣の栽培ベンチ10に当接させた状態では、隣り合う栽培ベンチ10の間に各案内装置20A,20Bの長手方向(縦方向)に沿って適宜間隔(実施形態では500mm程度)が開くことになる。
なお、当接フレーム19を着脱可能(付け替え可能)に構成したり長さ調節可能に構成したりすれば、隣り合う栽培ベンチ10間の配置間隔を変更して、栽培ベンチ10を増設したり削減したりでき、植物の種類や品種によって栽培ベンチ10の増減を図れて便利である。当接フレーム19は図示の構造に限らない。隣の栽培ベンチ10に当接した状態で、隣り合う栽培ベンチ10の間に各案内装置20A,20Bの長手方向(縦方向)に沿って適宜間隔を開け得るように、各栽培ベンチ10から突出した構造であればよい。
フレーム枠体11は、前述した上フレーム枠12及び下フレーム枠18と、上下のフレーム枠12,18をつなぐ複数の縦フレーム15とを備えている。各縦フレーム15は、上下フレーム枠12,18における前後の長手側部の延びる横方向に沿って、適宜間隔を空けて並んでいる。各縦フレーム15は中空パイプ状に構成している。各縦フレーム15の下端側は下フレーム枠18の上面側に溶接固定している。各縦フレーム15の上端側は上フレーム枠12を貫通した状態で上フレーム枠12に溶接固定している。各縦フレーム15の上端面は上向きに開口している。
図15に示すように、フレーム枠体11の前後の長手側部側には、植物の茎及び/又は幹を誘引する縦長の誘引棒16を支持する支柱支持体を取り付けている。実施形態では、各縦フレーム15が支柱支持体を兼ねている。すなわち、各縦フレーム15には、その上端開口部15aから縦フレーム15内に誘引棒16を抜き差し可能に差し込み装着することが可能になっている。なお、有底筒状の支柱支持体をフレーム枠体11に取り付けたりすることももちろん可能である。
上記の構成によると、フレーム枠体11の前後の長手側部側に、植物の茎及び/又は幹を誘引する縦長の誘引棒16を支持する支柱支持体15を取り付けているから、各栽培ベンチ10の移動時の振動等によって誘引棒16が倒れるおそれがなく、各栽培ベンチ10に誘引棒16を安定的に支持できる。従って、移動栽培装置1において誘引棒16を用いて成長させるトマトやキュウリ等の植物を栽培するにあたり、当該植物の成長を確実に手助けできる。移動栽培装置1によって、イチゴやホウレンソウだけでなくトマトやキュウリ等も効率よく栽培できるから、移動栽培装置1の適用範囲が広がり、移動栽培装置1の汎用性を向上できる。
また、フレーム枠体11は、上面側を構成する矩形枠状の上フレーム枠12と、下面側を構成する矩形枠状の下フレーム枠18と、上下のフレーム枠12,18をつなぐ複数の縦フレーム15とを備えており、各縦フレーム15は、中空状に構成すると共に上端側を上向きに開口していて、支柱支持体を兼ねているから、支柱支持体を別途設けたりする必要がなく、フレーム枠体11の強度メンバーである縦フレーム15を有効利用して、それだけフレーム枠体11の構造を簡素化できる。フレーム枠体11の部品点数を削減してコスト抑制を図れる。
更に、誘引棒16は各縦フレーム15に抜き差し可能に差し込み装着しているから、例えばイチゴやホウレンソウのように誘引棒16の不要な植物の栽培では、誘引棒16を引き抜いて撤去しておけばよい。従って、移動栽培装置1の適用範囲拡大に寄与できる。
図6及び図15に示すように、実施形態の栽培ベンチ10は、当該栽培ベンチ10上で左右横長に延びる灌水チューブ81と、灌水チューブ81に接続され且つ案内装置20A,20Bの長手方向に沿って延びる注水管82とを備えている。灌水チューブ81には、長手方向に沿って適宜間隔を空けて並ぶ複数個の吐出口部(図示省略)を形成している。灌水チューブ81の各吐出口部から栽培ベンチ10のプランタ2内にある培地や植物に灌水される。
灌水チューブ81の左右両端部に注水管82を連結している。従って、一つの栽培ベンチ10に二つの注水管82を組み付けている。各注水管82は栽培ベンチ10のフレーム枠体11に固定している。各注水管82の前後両端部に、案内装置20A,20Bに沿った栽培ベンチ10群の移動によって着脱可能な管継手83を設けている。管継手83は注水管82の前後一端部に設けたプラグ84と、注水管82の前後他端部に設けたソケット85とで構成される。例えば列方向下流側の栽培ベンチ10における注水管82のプラグ84を、列方向上流側の栽培ベンチ10における注水管82のソケット85内に差し込むことによって、隣り合う注水管82同士ひいては各案内装置20A,20B上で並ぶ栽培ベンチ10の注水管82群を連接させ、注水管82群から各灌水チューブ81を介して各栽培ベンチ10に灌水するように構成している(図9及び図10参照)。
管継手83のプラグ84は全体として筒形状をなしている。図16に示すように、プラグ84の長手方向中途部の外周側には、長手方向両側面をテーパ状に傾斜させた断面台形状のロック溝84aを形成している。プラグ84内周の先端側に常閉式の開閉弁84bを設けている。開閉弁84bはソケット85側に設けた開閉弁85bと当接することによって開弁状態になる。プラグ84内周の基端側に注水管82が接続される。ソケット85の先端側にはロックボール85aを半径方向に変位可能に保持している。ソケット85内周の先端側には常閉式の開閉弁85bを設けている。開閉弁85bはプラグ84側に設けた開閉弁84bと当接することによって開弁状態になる。
プラグ84をソケット85内に差し込むと、ロックボール85aがプラグ84のロック溝84aに係合され、プラグ84とソケット85が接続状態にロックされる。このとき両者84,85の開閉弁84b,85bが互いに当接し合って開弁し、つながりあった注水管82同士が連通する。プラグ84をソケット85から引き抜けば、ロックボール85aとロック溝84aとの係合が解除され、プラグ84とソケット85とが分離する。このとき両者の開閉弁84b,85bは離間して閉弁する。
次に、図1〜図5を参照しながら、搬送コンベヤ40A,40B及び案内装置20A,20Bの詳細構造について説明する。前述の通り、一対の搬送コンベヤ40A,40Bと一対の案内装置20A,20Bとは、複数の栽培ベンチ10を循環搬送するために閉ループ状に構成されている。
両搬送コンベヤ40A,40Bの基本的な構造は同じである。各搬送コンベヤ40A(40B)は、複数本の脚にて支持される左右横長の二本のコンベヤフレーム47を備えている。両コンベヤフレーム47の左右両端部の間に、駆動スプロケット42の対と従動スプロケット43の対とが回転可能に軸支されている。両コンベヤフレーム47の間には、駆動及び従動スプロケット42,43を介して2本の略平行なコンベヤチェン41が配置されている。コンベヤチェン41は、駆動及び従動スプロケット42,43に掛け回されている。チェン及びスプロケット伝動系を介して、駆動スプロケット42の駆動軸に搬送モータ45A(45B)を動力伝達可能に連結させ、当該搬送モータ45A(45B)によって2本の略平行なコンベヤチェン41を同期させて同一方向に回動させるように構成されている。
両コンベヤチェン41には、各案内装置20A(20B)から受け渡された栽培ベンチ10の車輪13を載せる載置板46が適宜間隔を開けて取り付けられている。栽培ベンチ10の各車輪13が対応する載置板46に載った状態で、搬送モータ45A(45B)にて一対のコンベヤチェン41を回転駆動させることによって、各搬送コンベヤ40A(40B)が栽培ベンチ10を横方向に搬送する。
実施形態では、手前側搬送コンベヤ40Aの手前側スペース(特に第2案内装置20B寄りの手前側スペース)が、作業者の作業スペースとして設定される。作業者は、作業スペースにおいて種々の作業(例えば収穫作業、草取り作業、剪定作業及びプランタ2交換作業等)を行える。また、両搬送コンベヤ40A,40Bの長手中途部には、各搬送コンベヤ40A(40B)にて横方向搬送される栽培ベンチ10に向けて水を散布する灌水装置31が配置されている。
更に、移動栽培装置1において作業スペースから最も離れた位置、すなわち奥側搬送コンベヤ40B側には、防除装置32(薬液噴霧装置)が配置されている。防除装置32は、奥側搬送コンベヤ40Bにて横方向搬送される栽培ベンチ10に向けて防除剤や薬液を散布するものである。実施形態の防除装置32は、奥側搬送コンベヤ40Bの長手中途部に配置されている。従って、作業スペースに居る作業者に防除剤や薬液が付着するおそれを確実に防止できる点で優れている。
一方、両案内装置20A,20Bの基本的な構造は同じである。各案内装置20A,20Bは、多数の支柱や横フレームによってその骨組を構成していて、栽培ベンチ10の車輪13が走行する複数本の案内レール35(実施形態では四本)を備えている。案内レール35群は、左右方向(横方向)に間隔を空けて並べられ、多数の支柱や横フレームからなる骨組にて支持されている。各案内レール35は前後方向(縦方向)に長い金属板を折り曲げ、縦方向から見て概ね上方に開口するV字形状に形成されている。このような断面V字状の案内レール35によって、車輪13を脱輪させることなく、複数の栽培ベンチ10を各搬送コンベヤ40A(40B)まで容易に案内できる。
各案内装置20A(20B)の搬送上流側の下部には、各搬送コンベヤ40A(40B)の搬送下流側に移動した栽培ベンチ10をこれに対峙する案内装置20A(20B)に向けて縦方向に搬送する手段として、引き込み装置21A(21B)を設けている。実施形態では、栽培ベンチ10を図1の平面視時計回りに循環搬送させるため、第1案内装置20Aの手前側の下部に送り側引き込み装置21Aを、第2案内装置20Bの奥側の下部に戻り側引き込み装置21Bをそれぞれ配置している。そして、図1の平面視反時計回りの循環搬送にも対応できるように、第1案内装置20Aの奥側の下部に戻り側引き込み装置21Bを、第2案内装置20Bの手前側の下部に送り側引き込み装置21Aをそれぞれ配置している。すなわち、循環搬送方向に合わせて、図1の平面視で互いに対角線上の位置関係にある引き込み装置21A,21Bを稼働させる。
以下には、説明の便宜上、図1の平面視時計回りの循環搬送に対応する各引き込み装置21A(21B)を例に挙げて説明する。これら各引き込み装置21A(21B)の基本的な構造はいずれも同じである。図3及び図4に示すように、各引き込み装置21A(21B)は、対応する搬送コンベヤ40A(40B)上の栽培ベンチ10に下方から係脱可能な一対の係合爪体51と、各係合爪体51を栽培ベンチ10に係脱させる係脱用アクチュエータとしての昇降電磁ソレノイド52と、両係合爪体51を案内装置20A(20B)に沿って縦方向に往復動させる往復用アクチュエータとしてのエアシリンダ53とを備えている。
実施形態では、各案内装置20A(20B)の骨組である一対の横フレーム54の搬送上流側に、横方向に延びる前後一対の梁フレーム55がボルト締結されている。両梁フレーム55には、シリンダ架台56が溶接等によって固着されている。シリンダ架台56上には、各搬送コンベヤ40A(40B)の搬送下流側から離れる方にピストンロッド57を位置させた状態で、エアシリンダ53が設けられている。なお、各横フレーム54は、四本の案内レール35のうち内側二本のものの下方に位置している。
エアシリンダ53を挟んで左右両側には、縦方向に延びる丸棒状のスライドバー58が配置されている。この場合、シリンダ架台56の前後両側端部に、左右外向きに突出する横桟ブラケット59(実施形態では四本)の基端側が固定されている。各横桟ブラケット59の先端側にバー支持板60が立設されている。エアシリンダ53を挟んで左右一方側にある一対のバー支持板60に、左右一方のスライドバー58の前後各端部が固定され、左右他方側にある一対のバー支持板60に、左右他方のスライドバー58の前後各端部が固定されている。両スライドバー58は縦方向に平行状に並んでいる。
各スライドバー58にはスライダー61(図7〜図12参照)が摺動可能に被嵌されている。両スライダー61の上面側に平板状の移動プレート62が取り付けられている。移動プレート62の下面側のうち両スライダー61の間の箇所は、連結ロッド63を介して、エアシリンダ53におけるピストンロッド57の先端側に連結されている。従って、移動プレート62は、エアシリンダ53におけるピストンロッド57の伸縮動によって、両スライドバー58に沿った縦方向に往復動するように構成されている。
移動プレート62上面の左右両端側に、係合爪体51がそれぞれ上下回動可能に配置されている。移動プレート62上面のうち各搬送コンベヤ40A(40B)の搬送下流側から遠い方の左右コーナ部に、軸支金具64が立設されている。係合爪体51における本体アーム65の基端側が、枢支ピン軸66を介して軸支金具64に回動可能に枢支されている。係合爪体51の本体アーム65は各搬送コンベヤ40A(40B)の搬送下流側に近づくように延びている。本体アーム65の先端側に、各搬送コンベヤ40A(40B)上にある栽培ベンチ10の下フレーム枠18に係脱可能な爪部67が設けられている。
両係合爪体51の爪部67は、エアシリンダ53のピストンロッド57を短縮させた状態で、各搬送コンベヤ40A(40B)の搬送下流側の上方に位置し、各搬送コンベヤ40A(40B)と栽培ベンチ10の下フレーム枠18との間に入り込む。エアシリンダ53のピストンロッド57を伸長させた状態では、両係合爪体51の爪部67が各搬送コンベヤ40A(40B)の搬送下流側から遠ざかる。各引き込み装置21A(21B)は、栽培ベンチ10を縦方向に搬送しない待機状態(初期状態と言ってもよい)において、エアシリンダ53のピストンロッド57を伸長させた状態で保持する。これは、両係合爪体51の爪部67を、各搬送コンベヤ40A(40B)上で搬送途次にある栽培ベンチ10に干渉しない(引っ掛からない)ように、各搬送コンベヤ40A(40B)の搬送下流側から遠ざけておくためである。
図5に示すように、移動プレート62下面のうち各搬送コンベヤ40A(40B)の搬送下流側に近い方の左右コーナ部に、昇降電磁ソレノイド52が設けられている。各昇降電磁ソレノイド52の昇降ロッド68は上向きに突出していて、移動プレート62を貫通している。各昇降ロッド68の先端側が、対応する係合爪体51における本体アーム65の長手中途部に連結されている。各係合爪体51は、対応する昇降電磁ソレノイド52における昇降ロッド68の昇降動によって、枢支ピン軸66回りに上下回動するように構成されている。すなわち、両係合爪体51の上下回動によって、各搬送コンベヤ40A(40B)上にある栽培ベンチ10の下フレーム枠18に爪部67を係合させたり、下フレーム枠18と爪部67との係合を解除させたりする。
搬送コンベヤ40A(40B)の搬送下流側に移動した栽培ベンチ10をこれに対峙する案内装置20B(20A)に受け渡したり、前記一方の搬送コンベヤ40A(40B)の搬送下流側にある栽培ベンチ10の注水管82(管継手83のソケット85)を案内装置20B(20A)の最上流側にある栽培ベンチ10の注水管82(管継手83のプラグ84)に連結したりする際は、一方の引き込み装置21A(21B)におけるエアシリンダ53のピストンロッド57を短縮させ、両係合爪体51の爪部67を各搬送コンベヤ40A(40B)と、栽培ベンチ10の下フレーム枠18との間に入り込ませる(図7及び図10参照)。次いで、両昇降電磁ソレノイド52の昇降ロッド68を上昇動させて両係合爪体51を上向き回動させ、栽培ベンチ10の一方の下フレーム枠18に、両係合爪体51の爪部67を下方から係合させる(図8及び図11参照)。
それから、下フレーム枠18と両爪部67との係合を維持した状態で、各エアシリンダ53のピストンロッド57を伸長させて、一方の搬送コンベヤ40A(40B)上の栽培ベンチ10を案内装置20A(20B)に向けて引き込み、一方の各搬送コンベヤ40A(40B)側にあった栽培ベンチ10の下フレーム枠18を、案内装置20A(20B)側にある栽培ベンチ10の当接フレーム19(横パイプ部19a)に当接させる(図9及び図12参照)。その結果、案内装置20A(20B)上にある複数の栽培ベンチ10が次々と玉突き状に追突する。
搬送コンベヤ40A(40B)の搬送下流側にある栽培ベンチ10の注水管82(管継手83のソケット85)を案内装置20B(20A)の最上流側にある栽培ベンチ10の注水管82(管継手83のプラグ84)に連結する場合は、後述するストッパー部材25の阻止板26を上向き突出させ、案内装置20B(20A)の最下流側にある栽培ベンチ10の移動を強制停止させておく。このため、各案内装置20A,20B上の栽培ベンチ10群が次々と玉突き状に追突するのに合わせて、隣り合う注水管82同士ひいては各案内装置20A,20B上で並ぶ栽培ベンチ10の注水管82群が全て連接することになる。
一方の搬送コンベヤ40A(40B)の搬送下流側にある栽培ベンチ10を案内装置20B(20A)に受け渡す(栽培ベンチ10群を循環移動させる)場合は、各案内装置20A,20B上の栽培ベンチ10群が次々と玉突き状に追突する結果、最終的に案内装置20B(20A)の最下流側にある栽培ベンチ10が他方の搬送コンベヤ40B(40A)の搬送上流側に押し出される。なお、この場合は、後述するストッパー部材25の阻止板26は下向きに引っ込んで退避している。
すなわち、両昇降電磁ソレノイド52の駆動で両係合爪体51を栽培ベンチ10に係合させたのち、エアシリンダ53の駆動で両係合爪体51を搬送下流側の案内装置20A(20B)に向けて移動させることによって、案内装置20A(20B)上にある複数の栽培ベンチ10を玉突き状に搬送するのである。
その後、両昇降電磁ソレノイド52の昇降ロッド68を下降動させて両係合爪体51を下向き回動させ、栽培ベンチ10の一方の下フレーム枠18と両係合爪体51の爪部67との係合を解除する(図10及び図12の二点鎖線状態参照)。なお、実施形態では、隣り合う栽培ベンチ10が玉突き状に搬送される際、第1案内装置20A上では、搬送上流側の栽培ベンチ10の下フレーム枠18奥側面が搬送下流側の栽培ベンチ10の当接フレーム19(横パイプ部19a)に当接する。第2案内装置20B上では、搬送上流側の栽培ベンチ10の当接フレーム19(横パイプ部19a)が搬送下流側の栽培ベンチ10の下フレーム枠18奥側面に当接する。
各搬送コンベヤ40A(40B)の搬送上流側には、各案内装置20A(20B)の最下流側から受け渡される栽培ベンチ10の縦方向搬送(玉突き搬送)を規制する規制バー体23が着脱可能に取り付けられている。
実施形態では、当接フレーム19が手前側搬送コンベヤ40Aに向く姿勢で各栽培ベンチ10を移動栽培装置1(各搬送コンベヤ40A(40B)及び各案内装置20A(20B))上に載置する。このため、手前側搬送コンベヤ40Aの規制バー体23は、当接フレーム19と当接する関係上、平面視で手前側にはみ出した姿勢で取り付けられる。奥側搬送コンベヤ40Bの規制バー体23は、当接フレーム19ではなく栽培ベンチ10の下フレーム枠18と当接する関係上、平面視で奥側搬送コンベヤ40Bと重なる姿勢で取り付けられる。
また、図1の平面視時計回り及び反時計回りの両方の循環搬送に対応する目的で、各搬送コンベヤ40A(40B)の搬送上流側だけでなく搬送下流側にも、規制バー体23が配置されている。実施形態では、各搬送コンベヤ40A(40B)の搬送上流側に二個、搬送下流側に二個の計四個の規制バー体23が配置されている。
玉突き搬送によって各案内装置20A(20B)の最下流側の栽培ベンチ10が他方の搬送コンベヤ40B(40A)に乗り移る際は、前記最下流側の栽培ベンチ10の下フレーム枠18奥側面又は当接フレーム19(横パイプ部19a)が規制バー体23に当接して、前記最下流側の栽培ベンチ10の車輪13が載置板46に載った状態で、他方の搬送コンベヤ40B(40A)の搬送上流側において停止する。すなわち、各搬送コンベヤ40B(40A)上の定位置に確実に乗り移りできる。
その後は、各搬送コンベヤ40B(40A)の駆動によって栽培ベンチ10を搬送下流側に移動させるが、その際に、搬送上流側及び搬送下流側の規制バー体23の存在によって、栽培ベンチ10において各搬送コンベヤ40B(40A)と直交する縦方向の位置ずれを防止しながら、栽培ベンチ10を規制バー体23に沿って搬送下流側に案内する。従って、各搬送コンベヤ40B(40A)上でも、栽培ベンチ10を好適な姿勢でスムーズに横方向に搬送できる。
図1、図10及び図11に示すように、各搬送コンベヤ40A,40Bの搬送下流側には、当該箇所にある栽培ベンチ10左右外側の注水管82に給水する給水ポンプ86を配置している。給水ポンプ86には、例えば水タンクや水道管等の水供給源(図示省略)を接続している。また、給水ポンプ86には、各搬送コンベヤ40A,40Bの搬送下流側にある栽培ベンチ10左右外側の注水管82の管継手83(プラグ84又はソケット85)に連結可能な放出口部87aを有する伸縮パイプ87を設けている。伸縮パイプ87にはアクチュエータとしての注水用エアシリンダ88のピストン側を連結している。注水用エアシリンダ88のシリンダ側は給水ポンプ86に固定している。
図10に示すように、栽培ベンチ10群の循環移動を停止させた状態では、注水用エアシリンダ88の伸長動による伸縮パイプ87の伸長によって、各搬送コンベヤ40A,40Bの搬送下流側にある栽培ベンチ10左右外側の注水管82の管継手83(プラグ84)に、伸縮パイプ87の放出口部87aが連結される。そして、給水ポンプ86の駆動によって、注水管82群から各灌水チューブ81を介して各栽培ベンチ10に灌水される。図11に示すように、栽培ベンチ10群の循環移動を開始する際は、注水用エアシリンダ88の短縮動による伸縮パイプ87の短縮によって、各搬送コンベヤ40A,40Bの搬送下流側にある栽培ベンチ10左右外側の注水管82の管継手83(プラグ84)と、伸縮パイプ87の放出口部87aとの連結が解除される。なお、図7〜図9等では説明の便宜のため、給水ポンプ86、伸縮パイプ87及び注水用エアシリンダ88の図示を省略している。
引き込み装置21A,21Bで栽培ベンチ10群の縦方向搬送(玉突き搬送)することによって、隣り合う注水管85同士の管継手83(プラグ84及びソケット85)が連結される。すなわち、後述するストッパー部材25の阻止板26を上向き突出させ、案内装置20B(20A)の最下流側にある栽培ベンチ10の移動を強制停止させておき、引き込み装置21A,21Bの駆動で各案内装置20A,20B上の栽培ベンチ10群を次々と玉突き状に追突させ、一方の搬送コンベヤ40A(40B)の搬送下流側にある栽培ベンチ10の注水管82(管継手83のソケット85)を案内装置20B(20A)の最上流側にある栽培ベンチ10の注水管82(管継手83のプラグ84)に連結し、ひいては各案内装置20A,20B上で並ぶ栽培ベンチ10の注水管82群が全て連接する。
なお、伸縮パイプ87aに代えて給水ポンプに蛇腹管を接続し、リンク機構によって蛇腹管の放出口部を揺動させて、各搬送コンベヤ40A,40Bの搬送下流側にある栽培ベンチ10左右外側の注水管82の管継手83に着脱可能に連結するように構成してもよい。
図1及び図13に示すように、左右の案内装置20の最下流側には、栽培ベンチ10の移動を規制するストッパー部材25を配置している。ストッパー部材25はソレノイド又はエアシリンダ等のアクチュエータ(図示省略)の駆動によって上下方向に出没動可能な阻止板26を備えている。阻止板26は、搬送コンベヤ40A(40B)の搬送下流側にある栽培ベンチ10の注水管82を案内装置20B(20A)の最上流側にある栽培ベンチ10の注水管82に連結する際や、栽培ベンチ10群の循環移動時に、案内装置20B(20A)の最下流側にある栽培ベンチ10を他方の搬送コンベヤの搬送上流側に押し出すにあたり、前記最下流の栽培ベンチ10の注水管82と、最下流一つ手前の栽培ベンチ10の注水管82との連結を解除したりするのに用いられる。
循環移動時における栽培ベンチ10群の縦方向搬送(玉突き搬送)中において、最下流の栽培ベンチ10がストッパー部材25を通り過ぎた後、阻止板26を上向きに突出させた規制姿勢にすると、最下流一つ手前にある栽培ベンチ10の下フレーム枠18長手側面と、これに対応した阻止板26とが当接して、最下流一つ手前の栽培ベンチ10が搬送コンベヤ40A,40Bに向けて移動するのを阻止する。最下流の栽培ベンチ10は慣性によって他方の搬送コンベヤ40B(40A)の搬送上流側に受け渡されるが、最下流一つ手前の栽培ベンチ10は強制的に移動停止させられるので、両者10の注水管82同士をつなぐ管継手83(プラグ84とソケット85)が引き離され、最下流の栽培ベンチ10と最下流一つ手前の栽培ベンチ10とが阻止板26を挟んで搬送方向前後に離間することになる。その結果、各搬送コンベヤ40A(40B)が前記受け渡された栽培ベンチ10を単独で横方向に搬送可能になる。
また、前述の通り、搬送コンベヤ40A(40B)の搬送下流側にある栽培ベンチ10の注水管82を案内装置20B(20A)の最上流側にある栽培ベンチ10の注水管82に連結する場合は、ストッパー部材25の阻止板26を上向き突出させ、案内装置20B(20A)の最下流側にある栽培ベンチ10の移動を強制停止させておき、各案内装置20A,20B上の栽培ベンチ10群が次々と玉突き状に追突するのに合わせて、隣り合う注水管82同士ひいては各案内装置20A,20B上で並ぶ栽培ベンチ10の注水管82群を全て連接させる。
次に、図14を参照しながら、移動栽培装置1の空気圧回路70構造を説明する。移動栽培装置1の空気圧回路70は、エアシリンダ53に高圧空気を供給するコンプレッサ71と、各引き込み装置21A(21B)のエアシリンダ53とを備えている。なお、図11では、図1の平面視反時計回りの循環搬送に対する各引き込み装置21A(21B)のエアシリンダ53の図示を省略している。
コンプレッサ71と各エアシリンダ53とは、5ポート3位置切換型の方向切換電磁弁72を介して接続されている。方向切換電磁弁72は、制御手段としてのコントローラ75に電気的に接続された一対の電磁ソレノイド73を有している。方向切換電磁弁73は、コントローラ75からの指令に基づく各電磁ソレノイド73の励磁によって、エアシリンダ53のピストンロッド57を伸長動させる伸長位置と、ピストンロッド57の動作を停止させる停止位置と、ピストンロッド57を短縮動させる短縮位置とに切換駆動するように構成されている。
制御手段としてのコントローラ75は、栽培ベンチ10群の循環搬送に関する各搬送コンベヤ40A(40B)及び各引き込み装置21A(21B)の駆動制御を実行するものである。コントローラ75には、係脱用アクチュエータとしての左右一対の昇降電磁ソレノイド52、手前側搬送コンベヤ40Aの第1搬送モータ45Aに対する第1モータドライバ74A、奥側搬送コンベヤ40Bの第2搬送モータ45Bに対する第2モータドライバ74B、及び前述した各方向切換電磁弁72の一対の電磁ソレノイド73等が接続されている。
上記の記載並びに図1、図6、図9及び図10から明らかなように、搬送方向を互いに逆向きにして平行状に並ぶ一対の搬送コンベヤ40A,40Bと、前記両搬送コンベヤ40A,40B間をつなぐ一対の案内装置20A,20Bとによって閉ループを形成し、前記各搬送コンベヤ40A,40B上にある栽培ベンチ10を搬送下流側の前記案内装置,20A,20Bに向けて移動させる一対の移載装置21A,21Bを備え、前記各移載装置21A,21Bの駆動によって前記各案内装置20A(20B)上の複数の栽培ベンチ10を玉突き状に搬送し、前記閉ループ内で前記複数の栽培ベンチ10を循環させる移動栽培装置1において、前記各栽培ベンチ10は、これに灌水する灌水チューブ81と、前記灌水チューブ81に接続され且つ前記各案内装置20A(20B)の長手方向に沿って延びる注水管82とを備え、前記各案内装置20A(20B)に沿った前記栽培ベンチ10群の移動によって着脱可能な管継手83を介して前記注水管82群を連接させ、前記注水管82群から前記各灌水チューブ81を介して前記各栽培ベンチ10に灌水するように構成しているから、前記閉ループ内で前記複数の栽培ベンチ10を循環させるものでありながら、前記栽培ベンチ10群を循環移動させなくても(前記栽培ベンチ10群を停止させた状態で)、前記注水管82群から前記各灌水チューブ81を介して前記各栽培ベンチ10に灌水でき、植物の成長に適した灌水作業を簡単に手間なく行える。
本願発明は、前述の実施形態に限らず、様々な態様に具体化できる。その他各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本願発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。例えば図17に示すように、各栽培ベンチ10の注水管82は左右一方のみに設けるようにしてもよい。この場合、一方の搬送コンベヤ40Aの搬送下流側に、給水ポンプ86、伸縮パイプ87及び注水用エアシリンダ88の組を配置し、他方の搬送コンベヤ40Bの搬送方向中途部に、給水ポンプ86、伸縮パイプ87及び注水用エアシリンダ88の組を配置すればよい。