以下に、本願発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
まず、図1及び図2を参照しながら、移動栽培装置1の概略構造について説明する。以下の説明において必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば「左右」「上下」等)を用いる場合は、図1において紙面に直交する方向を平面視とし、紙面上下方向を前後方向又は縦方向(列方向と言ってもよい)とし、紙面左右方向を左右方向又は横方向(行方向と言ってもよい)とする。これらの用語は説明の便宜のために用いたものであり、本願発明の技術的範囲を限定するものではない。
なお、実施形態では、縦方向及び横方向がいずれも水平面(地面)に対して平行(重力方向に対して垂直)であるが、本願発明はこれに限定されるものではなく、イチゴやホウレンソウといった果菜等の栽培に支障を来さない程度で、縦方向及び横方向が水平面に対して多少傾斜していても構わない。
図1及び図2に示すように、実施形態の移動栽培装置1は、イチゴやホウレンソウといった果菜等を栽培する複数の栽培ベンチ10を循環搬送する閉ループ状のものである。この場合の移動栽培装置1は、搬送方向を互いに逆向きにして平行状に並ぶ一対の搬送コンベヤ40A,40Bと、一方の搬送コンベヤ40A(40B)の搬送下流側から他方の搬送コンベヤ40B(40A)の搬送上流側に各栽培ベンチ10を案内する一対の案内装置20A(20B)と、搬送コンベヤ40A,40B上の栽培ベンチ10を搬送下流側の案内装置20A,20Bに向けて移動させる移載装置としての一対の引き込み装置21A,21Bとを備えている。一対の搬送コンベヤ40A,40Bと一対の案内装置20A,20Bとが、複数の栽培ベンチ10を循環搬送するために閉ループ状に構成されている。
一対の搬送コンベヤ40A,40Bは、前後方向(縦方向)に間隔を開けた状態で平行状に並べられている。それぞれ栽培ベンチ10を互いに逆向きの搬送方向(横方向)に搬送するように構成されている。一対の案内装置20A,20Bは、左右方向(横方向)に間隔を開けた状態で平行状に並べられていて、それぞれ栽培ベンチ10を互いに逆向きの方向(縦方向)に案内するように構成されている。
手前側搬送コンベヤ40Aの左半部は第1案内装置20Aの手前側に位置し、手前側搬送コンベヤ40Aの右半部は第2案内装置20Bの手前側に位置している。奥側搬送コンベヤ40Bの左半部は第1案内装置20Aの奥側に位置し、奥側搬送コンベヤ40Bの右半部は第2案内装置20Bの奥側に位置している。各搬送コンベヤ40A,40Bはいずれも、各案内装置20A,20Bとの間で栽培ベンチ10を受け渡し可能に構成されている。各栽培ベンチ10は、手前側搬送コンベヤ40A→第1案内装置20A→奥側搬送コンベヤ40B→第2案内装置20B→手前側搬送コンベヤ40Aの順に、図1の平面視時計回りに循環搬送される。なお、循環搬送方向は図1の平面視反時計回りにしてもよい。
図6を参照しながら、栽培ベンチ10の詳細構造について説明する。栽培ベンチ10は、上向き開口横長箱状の栽培槽であるプランタ2と、プランタ2が収容される横長箱枠状のフレーム枠11とを備えている。プランタ2は栽培用の土を収容するものであり、その底面には余分な水及び薬液を外部に排出する排出穴(図示省略)が形成されている。プランタ2上面の前後縁部には、フレーム枠11の上面側を構成する左右横長のアッパーフレーム12に係合する係止片部2aが形成されている。係止片部2aをアッパーフレーム12に引っ掛かり係合させることによって、プランタ2が栽培ベンチ10に支持されている。
フレーム枠11の下面側を構成する左右横長のロワーフレーム18には、栽培ベンチ10を各案内装置20A,20B上で摺動させる摺動体としての車輪13が二個一組の計四組取り付けられている。計四組の車輪13は、各案内装置20A(20B)の案内レール35(詳細は後述する)の配置幅に合わせた間隔で、栽培ベンチ10の横方向に並べて配置されている。なお、摺動体は各案内装置20A(20B)側に設けてもよい。また、摺動体は車輪13に限らず、コロ、スライダー又はローラといった別の構造でもよい。ロワーフレーム18の上面側には、プランタ2下面の排出穴から排出される余分な水及び薬液を回収する受け樋14が取り付けられている。各栽培ベンチ10の受け樋14に集められた水及び薬液は、案内装置20A,20Bの長手方向(縦方向)に沿って延びる回収樋30A,30B(図1参照)にてまとめられて回収される。
各栽培ベンチ10における一方のアッパーフレーム12の長手方向両端部には、一対の線材固定アーム15が着脱可能に取り付けられている。前記一方のアッパーフレーム12において両線材固定アーム15の間には、両線材固定アーム15と同じ向きに突出する複数の支持アーム16が設けられている。詳細は図示していないが、両線材固定アーム15に形成された固定穴に線材を結び付け、当該線材の中途部を各支持アーム16上面に形成された案内溝に上方から引っ掛け、これらの上に例えばネットを被せ付ける。当該ネットの部分は、両線材固定アーム15、複数の支持アーム16及び線材にて下方から支持され、栽培中の果菜等においてプランタ2の外まで伸長した果実等の部分を保護している。
なお、フレーム枠11の下部中央側には、栽培ベンチ10にて栽培される果菜等の各種情報を記憶するICタグ(図示省略)が設けられている。ICタグの使用によって、果菜等のトレーサビリティを向上できる。
各栽培ベンチ10の周囲(実施形態では長手両側部)には、平面視コ字状に形成した当接部兼ポット収容部としての当接枠体19を設けている。当接枠体19の横長側板19aの長手両端部に、左右側板19bの一端側を溶接固定している。左右両側板19bの他端側はロワーフレーム18に溶接固定している。当接枠体19の横長側板19aが、各案内装置20A,20B上で隣り合う栽培ベンチ10の横長側板19aに当接可能になっている。ある栽培ベンチ10の横長側板19aを隣の栽培ベンチ10の横長側板19aに当接させた状態では、隣り合う栽培ベンチ10の間に、各案内装置20A,20Bの長手方向(縦方向)に沿って適宜間隔(実施形態では500mm程度)が空くことになる。
ロワーフレーム18と横長側板19aとの相対向する内面側には、それぞれの長手方向に適宜間隔を空けて、複数の底受け片25を取り付けている。底受け片25群の上に、ロワーフレーム18及び当接枠体19で囲まれた範囲に収まる大きさの底板26を抜け不能に載置している。底板26は底受け片25群の上に載った状態で支持される。フレーム枠11と搬送方向前後一対の当接枠体19とが、プランタ2を載置する収容筺体27を構成している。当接枠体19の内側に底板26を嵌め込んだ状態で、当接枠体19内に、苗取り用の複数の育苗ポット28を載置できる(図12参照)。親株から伸びた各ランナー(匍匐茎)を切り離して採取した幼苗を、育苗ポット28に移し替えて発根させ、その後定植するまで育苗ポット28内で子苗を育成することが可能になっている。
次に、図1〜図5を参照しながら、搬送コンベヤ40A,40B及び案内装置20A,20Bの詳細構造について説明する。前述の通り、一対の搬送コンベヤ40A,40Bと一対の案内装置20A,20Bとは、複数の栽培ベンチ10を循環搬送するために閉ループ状に構成されている。
両搬送コンベヤ40A,40Bの基本的な構造は同じである。各搬送コンベヤ40A(40B)は、複数本の脚にて支持される左右横長の二本のコンベヤフレーム47を備えている。両コンベヤフレーム47の左右両端部の間に、駆動スプロケット42の対と従動スプロケット43の対とが回転可能に軸支されている。両コンベヤフレーム47の間には、駆動及び従動スプロケット42,43を介して2本の略平行なコンベヤチェン41が配置されている。コンベヤチェン41は、駆動及び従動スプロケット42,43に掛け回されている。チェン及びスプロケット伝動系を介して、駆動スプロケット42の駆動軸に搬送モータ45A(45B)を動力伝達可能に連結させ、当該搬送モータ45A(45B)によって2本の略平行なコンベヤチェン41を同期させて同一方向に回動させるように構成されている。
両コンベヤチェン41には、各案内装置20A(20B)から受け渡された栽培ベンチ10の車輪13を載せる載置板46が適宜間隔を開けて取り付けられている。栽培ベンチ10の各車輪13が対応する載置板46に載った状態で、搬送モータ45にて一対のコンベヤチェン41を回転駆動させることによって、各搬送コンベヤ40A(40B)が栽培ベンチ10を横方向に搬送する。
実施形態では、手前側搬送コンベヤ40Aの手前側スペース(特に第2案内装置20B寄りの手前側スペース)が、作業者の作業スペースとして設定される。作業者は、作業スペースにおいて種々の作業(例えば収穫作業、草取り作業、剪定作業及びプランタ2交換作業等)を行える。また、両搬送コンベヤ40A,40Bの長手中途部には、各搬送コンベヤ40A(40B)にて横方向搬送される栽培ベンチ10に向けて水を散布する灌水装置31が配置されている。
更に、移動栽培装置1において作業スペースから最も離れた位置、すなわち奥側搬送コンベヤ40B側には、防除装置32(薬液噴霧装置)が配置されている。防除装置32は、奥側搬送コンベヤ40Bにて横方向搬送される栽培ベンチ10に向けて防除剤や薬液を散布するものである。実施形態の防除装置32は、奥側搬送コンベヤ40Bの長手中途部に配置されている。従って、作業スペースに居る作業者に防除剤や薬液が付着するおそれを確実に防止できる点で優れている。
一方、両案内装置20A,20Bの基本的な構造は同じである。各案内装置20A,20Bは、多数の支柱や横フレームによってその骨組を構成していて、栽培ベンチ10の車輪13が走行する複数本の案内レール35(実施形態では四本)を備えている。案内レール35群は、左右方向(横方向)に間隔を空けて並べられ、多数の支柱や横フレームからなる骨組にて支持されている。各案内レール35は前後方向(縦方向)に長い金属板を折り曲げ、縦方向から見て概ね上方に開口するV字形状に形成されている。このような断面V字状の案内レール35によって、車輪13を脱輪させることなく、複数の栽培ベンチ10を各搬送コンベヤ40A(40B)まで容易に案内できる。
各案内装置20A(20B)の搬送上流側の下部には、各搬送コンベヤ40A(40B)の搬送下流側に移動した栽培ベンチ10をこれに対峙する案内装置20A(20B)に向けて縦方向に搬送する手段として、引き込み装置21A(21B)を設けている。実施形態では、栽培ベンチ10を図1の平面視時計回りに循環搬送させるため、第1案内装置20Aの手前側の下部に送り側引き込み装置21Aを、第2案内装置20Bの奥側の下部に戻り側引き込み装置21Bをそれぞれ配置している。そして、図1の平面視反時計回りの循環搬送にも対応できるように、第1案内装置20Aの奥側の下部に戻り側引き込み装置21Bを、第2案内装置20Bの手前側の下部に送り側引き込み装置21Aをそれぞれ配置している。すなわち、循環搬送方向に合わせて、図1の平面視で互いに対角線上の位置関係にある引き込み装置21A,21Bを稼働させる。
以下には、説明の便宜上、図1の平面視時計回りの循環搬送に対応する各引き込み装置21A(21B)を例に挙げて説明する。これら各引き込み装置21A(21B)の基本的な構造はいずれも同じである。図3及び図4に示すように、各引き込み装置21A(21B)は、対応する搬送コンベヤ40A(40B)上の栽培ベンチ10に下方から係脱可能な一対の係合爪体51と、各係合爪体51を栽培ベンチ10に係脱させる係脱用アクチュエータとしての昇降電磁ソレノイド52と、両係合爪体51を案内装置20A(20B)に沿って縦方向に往復動させる往復用アクチュエータとしてのエアシリンダ53とを備えている。
実施形態では、各案内装置20A(20B)の骨組である一対の横フレーム54の搬送上流側に、横方向に延びる前後一対の梁フレーム55がボルト締結されている。両梁フレーム55には、シリンダ架台56が溶接等によって固着されている。シリンダ架台56上には、各搬送コンベヤ40A(40B)の搬送下流側から離れる方にピストンロッド57を位置させた状態で、エアシリンダ53が設けられている。なお、各横フレーム54は、四本の案内レール35のうち内側二本のものの下方に位置している。
エアシリンダ53を挟んで左右両側には、縦方向に延びる丸棒状のスライドバー58が配置されている。この場合、シリンダ架台56の前後両側端部に、左右外向きに突出する横桟ブラケット59(実施形態では四本)の基端側が固定されている。各横桟ブラケット59の先端側にバー支持板60が立設されている。エアシリンダ53を挟んで左右一方側にある一対のバー支持板60に、左右一方のスライドバー58の前後各端部が固定され、左右他方側にある一対のバー支持板60に、左右他方のスライドバー58の前後各端部が固定されている。両スライドバー58は縦方向に平行状に並んでいる。
各スライドバー58にはスライダー61(図7〜図10参照)が摺動可能に被嵌されている。両スライダー61の上面側に平板状の移動プレート62が取り付けられている。移動プレート62の下面側のうち両スライダー61の間の箇所は、連結ロッド63を介して、エアシリンダ53におけるピストンロッド57の先端側に連結されている。従って、移動プレート62は、エアシリンダ53におけるピストンロッド57の伸縮動によって、両スライドバー58に沿った縦方向に往復動するように構成されている。
移動プレート62上面の左右両端側に、係合爪体51がそれぞれ上下回動可能に配置されている。移動プレート62上面のうち各搬送コンベヤ40A(40B)の搬送下流側から遠い方の左右コーナ部に、軸支金具64が立設されている。係合爪体51における本体アーム65の基端側が、枢支ピン軸66を介して軸支金具64に回動可能に枢支されている。係合爪体51の本体アーム65は各搬送コンベヤ40A(40B)の搬送下流側に近づくように延びている。本体アーム65の先端側に、各搬送コンベヤ40A(40B)上にある栽培ベンチ10のロワーフレーム18に係脱可能な爪部67が設けられている。
両係合爪体51の爪部67は、エアシリンダ53のピストンロッド57を短縮させた状態で、各搬送コンベヤ40A(40B)の搬送下流側の上方に位置し、各搬送コンベヤ40A(40B)と栽培ベンチ10のロワーフレーム18との間に入り込む。エアシリンダ53のピストンロッド57を伸長させた状態では、両係合爪体51の爪部67が各搬送コンベヤ40A(40B)の搬送下流側から遠ざかる。各引き込み装置21A(21B)は、栽培ベンチ10を縦方向に搬送しない待機状態(初期状態と言ってもよい)において、エアシリンダ53のピストンロッド57を伸長させた状態で保持する。これは、両係合爪体51の爪部67を、各搬送コンベヤ40A(40B)上で搬送途次にある栽培ベンチ10に干渉しない(引っ掛からない)ように、各搬送コンベヤ40A(40B)の搬送下流側から遠ざけておくためである。
図5に示すように、移動プレート62下面のうち各搬送コンベヤ40A(40B)の搬送下流側に近い方の左右コーナ部に、昇降電磁ソレノイド52が設けられている。各昇降電磁ソレノイド52の昇降ロッド68は上向きに突出していて、移動プレート62を貫通している。各昇降ロッド68の先端側が、対応する係合爪体51における本体アーム65の長手中途部に連結されている。各係合爪体51は、対応する昇降電磁ソレノイド52における昇降ロッド68の昇降動によって、枢支ピン軸66回りに上下回動するように構成されている。すなわち、両係合爪体51の上下回動によって、各搬送コンベヤ40A(40B)上にある栽培ベンチ10のロワーフレーム18に爪部67を係合させたり、ロワーフレーム18と爪部67との係合を解除させたりする。
一方の搬送コンベヤ40A(40B)の搬送下流側に移動した栽培ベンチ10をこれに対峙する案内装置20A(20B)に受け渡す際は、一方の引き込み装置21A(21B)におけるエアシリンダ53のピストンロッド57を短縮させ、各搬送コンベヤ40A(40B)と、栽培ベンチ10のロワーフレーム18との間に、両係合爪体51の爪部67を入り込ませる(図7参照)。次いで、両昇降電磁ソレノイド52の昇降ロッド68を上昇動させて両係合爪体51を上向き回動させ、栽培ベンチ10の一方のロワーフレーム18に、両係合爪体51の爪部67を下方から係合させる(図8参照)。
それから、ロワーフレーム18と両爪部との係合を維持した状態で、各エアシリンダ53のピストンロッド57を伸長させて、一方の搬送コンベヤ40A(40B)上の栽培ベンチ10を案内装置20A(20B)に向けて引き込み、一方の各搬送コンベヤ40A(40B)側にあった栽培ベンチ10の搬送方向前側の当接枠体19(横長側板19a)を、案内装置20A(20B)側にある栽培ベンチ10の搬送方向後側の当接枠体19(横長側板19a)に当接させる(図9参照)。その結果、案内装置20A(20B)上にある複数の栽培ベンチ10が次々と玉突き状に追突して、案内装置20A(20B)の最下流側にある栽培ベンチ10が他方の搬送コンベヤ40B(40A)の搬送上流側に押し出される。すなわち、両昇降電磁ソレノイド52の駆動によって両係合爪体51を栽培ベンチ10に係合させたのち、エアシリンダ53の駆動によって両係合爪体51を搬送下流側の案内装置20A(20B)に向けて移動させることによって、案内装置20A(20B)上にある複数の栽培ベンチ10を玉突き状に搬送するのである。
その後、両昇降電磁ソレノイド52の昇降ロッド68を下降動させて両係合爪体51を下向き回動させ、栽培ベンチ10の一方のロワーフレーム18と両係合爪体51の爪部67との係合を解除する(図10参照)。
各搬送コンベヤ40A(40B)の搬送上流側には、各案内装置20A(20B)の最下流側から受け渡される栽培ベンチ10の縦方向搬送(玉突き搬送)を規制するストッパー部材23が着脱可能に取り付けられている。各搬送コンベヤ40A(40B)のストッパー部材23は、当接枠体19の横長側板19aと当接する関係上、平面視で手前側にはみ出した姿勢で取り付けられている。
また、図1の平面視時計回り及び反時計回りの両方の循環搬送に対応する目的で、各搬送コンベヤ40A(40B)の搬送上流側だけでなく搬送下流側にも、ストッパー部材23が配置されている。第1実施形態では、各搬送コンベヤ40A(40B)の搬送上流側に二個、搬送下流側に二個の計四個のストッパー部材23が配置されている。
玉突き搬送によって各案内装置20A(20B)の最下流側の栽培ベンチ10が他方の搬送コンベヤ40B(40A)に乗り移る際は、前記最下流側の栽培ベンチ10の当接枠体19(横長側板19a)がストッパー部材23に当接して、前記最下流側の栽培ベンチ10の車輪13が載置板46に載った状態で、他方の搬送コンベヤ40B(40A)の搬送上流側において停止する。すなわち、各搬送コンベヤ40B(40A)上の定位置に確実に乗り移りできる。その後は、各搬送コンベヤ40B(40A)の駆動によって栽培ベンチ10を搬送下流側に移動させるが、その際に、搬送上流側及び搬送下流側のストッパー部材23の存在によって、栽培ベンチ10において各搬送コンベヤ40B(40A)と直交する縦方向の位置ずれを防止しながら、栽培ベンチ10をストッパー部材23に沿って搬送下流側に案内する。従って、各搬送コンベヤ40B(40A)上でも、栽培ベンチ10を好適な姿勢でスムーズに横方向に搬送できる。
次に、図11を参照しながら、移動栽培装置1の空気圧回路70構造を説明する。移動栽培装置1の空気圧回路70は、エアシリンダ53に高圧空気を供給するコンプレッサ71と、各引き込み装置21A(21B)のエアシリンダ53とを備えている。なお、図15では、図1の平面視反時計回りの循環搬送に対する各引き込み装置21A(21B)のエアシリンダ53の図示を省略している。
コンプレッサ71と各エアシリンダ53とは、5ポート3位置切換型の方向切換電磁弁72を介して接続されている。方向切換電磁弁72は、制御手段としてのコントローラ75に電気的に接続された一対の電磁ソレノイド73を有している。方向切換電磁弁72は、コントローラ75からの指令に基づく各電磁ソレノイド73の励磁によって、エアシリンダ53のピストンロッド57を伸長動させる伸長位置と、ピストンロッド57の動作を停止させる停止位置と、ピストンロッド57を短縮動させる短縮位置とに切換駆動するように構成されている。
制御手段としてのコントローラ75は、栽培ベンチ10群の循環搬送に関する各搬送コンベヤ40A(40B)及び各引き込み装置21A(21B)の駆動制御を実行するものである。コントローラ75には、係脱用アクチュエータとしての左右一対の昇降電磁ソレノイド52、手前側搬送コンベヤ40Aの第1搬送モータ45Aに対する第1モータドライバ74A、奥側搬送コンベヤ40Bの第2搬送モータ45Bに対する第2モータドライバ74B、及び前述した各方向切換電磁弁72の一対の電磁ソレノイド73等が接続されている。
上記の説明並びに図6及び図12から明らかなように、実施形態によると、搬送方向を互いに逆向きにして平行状に並ぶ一対の搬送コンベヤ40A,40Bと、前記両搬送コンベヤ40A,40B間をつなぐ一対の案内装置20A,20Bとによって閉ループを形成し、前記各搬送コンベヤ40A,40B上にある栽培ベンチ10を搬送下流側の前記案内装置20A,20Bに向けて移動させる一対の移載装置21A,21Bを備え、前記各移載装置21A,21Bの駆動によって前記各案内装置20A,20B上の複数の栽培ベンチ10を玉突き状に搬送し、前記閉ループ内で前記複数の栽培ベンチ10を循環させる移動栽培装置1において、前記各栽培ベンチ10は、果菜類を栽培する栽培槽2と、前記栽培槽2を載置する収容筐体27とを備え、前記収容筐体27のうち前記栽培槽2の周囲には、育苗ポット28を収容するポット収容部19を設けているから、作業者は、親株の植付けから子苗の定植までのほとんどの育苗作業を立ったまま移動栽培装置1上で行えることに加えて、子苗の育成のために一日に何度も潅水を行う手間も省けることになる。従って、従来の育苗作業と比較して、作業負担を大幅に軽減できる。また、育苗専用の畑を特別に用意する必要がなく、育苗まで含めた効率的な栽培を実現できる。
特に実施形態では、隣り合う前記栽培ベンチ10同士は、前記収容筐体27の長手各側板19a同士で当接するように構成しているから、前記各栽培ベンチ10で栽培される果菜等の花梗や果実を、隣り合う前記栽培ベンチの衝突によって傷付けるおそれがない。
本願発明は、前述の実施形態に限らず、様々な態様に具体化できる。その他各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本願発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。なお、本明細書中で用いた「果菜等」の文言は、イチゴ等の果菜類やホウレンソウ等の葉菜類などを広く含めた概念として使用している。