(水素ポンプについて)
特許文献2に記載の技術では、電解質を介して、隔壁で隔てられた一方の容器から他方の容器へプロトンを輸送させている。このような機構又はこのような動作が可能な装置は、水素ポンプと呼ばれる。典型的な水素ポンプは、アノードと、カソードと、これらの間に挟まれたプロトン伝導性固体電解質とを備え、アノード側に設けられた流路と、カソード側に設けられた流路とが、電解質によって分離された構造を有する。プロトン伝導性固体電解質の一方の主面上に形成されるアノードは、水素を酸化する触媒を含んでいる。アノード側の流路に例えば水素ガスを供給し、アノードとカソードとの間に電位差を与えると、アノードにおいて水素ガスから引き抜かれたプロトンが、プロトン伝導性固体電解質を介してカソード側に輸送される。
水素ポンプの運転条件は、プロトン伝導性固体電解質がプロトン伝導性を発揮するために必要な温度に大きく影響される。
例えば、特許文献2に開示されるような、固体高分子膜をプロトン伝導性固体電解質として用いた水素ポンプでは、固体高分子膜の耐熱温度である100℃前後より低温で水素ポンプを運転しなければならない。そのため、100℃前後においても高活性な触媒が必要である。また、固体高分子膜を湿潤した状態に保つために、アノード側の流路に供給する気体を加湿しなければならず、したがってカソード極で生成される有機ハイドライドにも水分が含まれ、純粋な有機ハイドライドを得ることが困難である。
また、従来、プロトン伝導性を有する電解質として、前述したようなペロブスカイト型プロトン伝導性酸化物が知られている。ペロブスカイト型プロトン伝導性酸化物は、600℃以上の温度で実用可能なプロトン伝導性を示す。そのため、ペロブスカイト型プロトン伝導性酸化物をプロトン伝導性固体電解質として用いた場合には、600℃以上の高温での運転が必要である。このような高温下では、有機ハイドライドの原料である芳香族炭化水素化合物が変質してしまう。したがって、このような高温下において例えば芳香族炭化水素化合物を水素化することにより、有機ハイドライドの形で水素を貯蔵することは困難である。
(水素貯蔵可能な材料について)
水素化によって水素を貯蔵することが可能な材料(以下、「被水素化物」ということがある。)として、芳香族炭化水素化合物であるベンゼン、トルエン、ビフェニル、ナフタレン、1−メチルナフタレン、2−エチルナフタレン等が知られている。これらの他にアセトンも被水素化物として利用し得る。これらを水素化すると、それぞれ、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ビシクロヘキシル、デカリン、1−メチルデカリン、2−エチルデカリン及び2−プロパノールを得る。本明細書では、このような水素化後の被水素化物を有機ハイドライドと称する。有機ハイドライドを脱水素化することにより、有機ハイドライドから水素を取り出すことが可能である。
一般に、相異なる芳香族炭化水素化合物における融点及び沸点は相異なる。ただし、2種以上の芳香族炭化水素化合物の混合物を被水素化物として利用し得る。例えば、ベンゼンは常温では固体であり、100℃から300℃の温度域で気体又は液体である。したがって、ベンゼンが液体である温度域であれば、ベンゼンと液体のトルエンとの混合液体を被水素化物として利用し得る。なお、水素化は、100℃以上300℃以下の温度域において行うことが好ましい。400℃以上、特に500℃以上では、被水素化物が変質する場合があり、有機ハイドライドの生成が困難になることがある。
以上の理由から、100℃以上300℃以下の温度域において動作できる、より実用的な水素化装置が求められている。
本発明者は、鋭意研究を重ねることにより、100℃以上500℃以下の温度域においても高いプロトン伝導度を維持するプロトン伝導性酸化物を見出し、このようなプロトン伝導性酸化物を電解質として用いた水素化装置を想到した。
本発明の一態様の概要は、以下のとおりである。
本発明の一態様である水素化装置は、被水素化物を水素化する水素化装置であって、水素を酸化する触媒を含むアノードと、水素化触媒を含むカソードと、前記アノード及び前記カソードの間に配置されたプロトン伝導体とを備え、前記プロトン伝導体は、組成式AaB1-xB’xO3-δで表されるペロブスカイト型結晶構造を有し、前記Aは、アルカリ土類金属から選択される少なくとも1つであり、前記Bは、4価の4族の遷移金属又はCeであり、前記B’は、3価の3族又は13族の元素であり、0.4<a<0.9、かつ、0.2<x<0.6を満たす。
前記Aは、Ba及びSrから選択される少なくとも1つであってもよい。前記Bは、Zrであってもよい。前記B’は、Y又はInであってもよい。
前記aの値が、0.4<a<0.8であってもよい。前記xの値が、0.3<x<0.6であってもよい。
前記aの値が、0.4<a<0.8であってもよい。前記xの値が、0.4<x<0.6であってもよい。
前記aの値が、0.4<a<0.6であってもよい。前記xの値が、0.4<x<0.6であってもよい。
前記aの値が、0.4<a<0.5であってもよい。前記xの値が、0.4<x<0.6であってもよい。
100℃以上500℃以下の温度範囲における、前記プロトン伝導体のプロトン伝導の活性化エネルギが0.1eV以下であってもよい。
0.21≦x≦0.58、a≧−0.054x+0.441、及びa≦−0.027x+0.886の関係が成立してもよい。
前記プロトン伝導体は、組成および結晶構造が実質的に均一な単相から構成されていてもよい。
前記水素を酸化する触媒は、Ni、Pt、Re及びRhからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む金属又は合金であってもよい。
前記水素を酸化する触媒は、Ni、Pt、Re及びRhからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む酸化物であってもよい。
前記水素を酸化する触媒は、組成式CDO3-δで表されるペロブスカイト型結晶構造を有する酸化物であってもよい。前記Cは、Ba、Sr、Ca、La及びSmからなる群から選ばれる少なくとも1つを含んでいてもよい。前記Dは、Zr及びCeからなる群から選ばれる少なくとも1つとRuとを含むか、又は、Ni、Fe、Co及びMnからなる群から選ばれる少なくとも1つを含んでいてもよい。
前記水素を酸化する触媒は、組成式La2-vSrvNiO4-δで表されるK2NiF4結晶構造を有する酸化物であってもよい。0≦v≦0.5が満たされてもよい。
前記水素を酸化する触媒は、組成式EF1-yF’yO3-δで表されるペロブスカイト型結晶構造を有する酸化物であってもよい。前記Eは、Ba、Sr及びCaからなる群から選ばれる少なくとも1つを含んでいてもよい。前記Fは、Zr及びCeからなる群から選ばれる少なくとも1つとRuとを含んでいてもよい。前記F’は、Y若しくはIn又は3価のランタノイド元素であってもよい。0.10<y<0.80が満たされてもよい。
前記水素化触媒は、Ni、Pt、Pd及びRhからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む金属又は合金であってもよい。
前記水素化触媒は、Ni、Pt、Pd及びRhからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む酸化物であってもよい。
前記水素化触媒は、Ni、Pt、Pd及びRhからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む酸化物を含有するサーメットであってもよい。
前記水素化触媒は、組成式GHO3-δで表されるペロブスカイト型結晶構造を有する酸化物であってもよい。前記Gは、Ba、Sr、Ca、La及びSmからなる群から選ばれる少なくとも1つを含んでいてもよい。前記Hは、Zr及びCeからなる群から選ばれる少なくとも1つとRuとを含むか、又は、Ni、Fe、Co及びMnからなる群から選ばれる少なくとも1つを含んでいてもよい。
前記水素化触媒は、組成式La2-wSrwNiO4-δで表されるK2NiF4結晶構造を有する酸化物であってもよい。0≦w≦0.5が満たされてもよい。
前記水素化触媒は、組成式IJ1-zJ’zO3-δで表されるペロブスカイト型結晶構造を有する酸化物であってもよい。前記Iは、Ba、Sr及びCaからなる群から選ばれる少なくとも1つを含んでいてもよい。前記Jは、Zr及びCeからなる群から選ばれる少なくとも1つとRuとを含んでいてもよい。前記J’は、Y若しくはIn又は3価のランタノイド元素であってもよい。0.10<z<0.80が満たされてもよい。
本開示による水素化装置の実施形態を説明する前に、この水素化装置に用いられるプロトン伝導性酸化物を説明する。以下に説明するプロトン伝導性酸化物は、ペロブスカイト構造を有するペロブスカイト型プロトン伝導体であり、100℃以上500℃以下の温度域においても、高いプロトン伝導性を有する。
(ペロブスカイト構造)
まず、図1を参照しながら、ペロブスカイト構造の基本構成を簡単に説明する。一般的なペロブスカイト構造は、図1に例示されるように、元素A、B、Oによって構成され、組成式ABO3によって表される。ここで、Aは2価のカチオンとなり得る元素、Bは4価のカチオンとなり得る元素、Oは酸素である。ペロブスカイト構造を有する結晶の単位格子は、典型的には立方体に近い形を有している。図示されるように、単位格子の8個の頂点には元素Aのイオンが位置する。一方、単位格子の6個の面の中心には酸素Oのイオンが位置する。また、単位格子の中央付近には元素Bのイオンが位置する。元素A、B、Oが占める位置を、それぞれ、Aサイト、Bサイト、Oサイトと呼んでもよい。
上記の構造は、ペロブスカイト結晶の基本的な構造であり、元素A、B、Oの一部が欠損していたり、過剰であったり、あるいは他の元素によって置換されていてもよい。例えば、元素B以外の元素B’がBサイトに位置する結晶は、組成式AB(1-x)B’xO3によって表されるペロブスカイト結晶である。ここで、xは、B’の組成比率(mole fraction)であり、置換率と呼んでもよい。このような元素の置換、欠損、または過剰が生じると、単位格子の構造は立方体から歪んだり、変形したりし得る。ペロブスカイト結晶は、「立方晶」に限定されず、より対称性の低い「斜方晶」や「正方晶」に相転移した結晶を広く含む。
(本発明者らの知見)
ペロブスカイト構造を有する従来のプロトン伝導性酸化物では、4価の元素であるBを、3価の元素であるB’で置換すると、プロトン伝導性酸化物に酸素欠損が生じる。すなわち、4価のカチオンの一部が3価のカチオンで置換されると、カチオンが有するプラス電荷の合計が減るため、電気的中性を維持する電荷補償の作用により、2価のアニオンである酸素イオンの組成比率が低下し、酸素欠損が生じると考えられている。このような組成を有するプロトン伝導性酸化物では、酸素欠損の位置(Oサイト)に水分子(H2O)が導入されることにより、プロトン伝導性酸化物にプロトン伝導のキャリアが導入されると考えられている。
従来のプロトン伝導性酸化物内では、酸素原子の周囲をプロトンがホッピング伝導することにより、プロトン伝導性が発現すると考えられている。この場合、プロトン伝導度の温度依存性は、活性化エネルギが0.4〜1.0eV程度の熱活性型になる。そのため、プロトン伝導度は温度の低下に伴って指数関数的に低下する。
100℃以上500℃以下の温度域においても、プロトン伝導性酸化物が、10-1S/cm(ジーメンス/センチメートル)以上の高いプロトン伝導度を維持するためには、プロトン伝導度の活性化エネルギを0.1eV以下にすることにより、温度の低下に伴うプロトン伝導度の低下を抑制することが望まれる。
本発明者らは、3価の元素B’の固溶量(置換量)を増加させてプロトンキャリアの濃度または密度を高め、従来のホッピングよりも容易にプロトンが移動できる状態を作ることを試みた。しかし、従来のペロブスカイト型プロトン伝導性酸化物において、B’の元素の組成比率の上限が0.2程度であり、酸素欠損量に上限があった。
本発明者は、より多くのプロトンキャリアを導入する方法として、Aの元素の組成比率を減少させることにより、B’の元素の組成比率の増加と同様な効果が得られる可能性に着目した。しかし、非特許文献2に記載されているように、Aの元素の組成比率aが1より減少するとプロトン伝導度が低下する。この理由は、プロトン伝導性を有しない成分(異相:ペロブスカイト型の結晶構造を有しない相)が結晶組織内に生成されるためと考えられる。
そこで、本発明者らは、Aの元素の組成比率aを1より減少させるという、従来プロトン伝導には不適とされていた化学組成領域において、B’の元素の組成比率xを従来の0.2よりも高くすることにより、予想外にも単相のペロブスカイト構造を維持しつつ、活性化エネルギを低くできることを見出した。その結果、高いプロトン伝導性を有するペロブスカイト型プロトン伝導性酸化物が得られた。
(プロトン伝導性酸化物)
以下、本開示の実施形態による水素化装置に用いられるプロトン伝導性酸化物を説明する。
本開示の実施形態による水素化装置に用いられるプロトン伝導性酸化物は、組成式AaB1-xB’xO3-δで表されるペロブスカイト結晶構造を有する金属酸化物である。Aの元素はアルカリ土類金属である。Aの元素の組成比率を示すaの値は、BとB’の和を1とした場合のAの元素の原子数比率であり、0.4<a<0.9の範囲である。B’の元素は3価の3族および13族の元素である。Bの元素の組成比率を示すxの値が、0.2<x<0.6の範囲である。組成比率については、後述の実施例で詳細に説明する。なお、δは、前述したように、酸素欠損または酸素過剰を示す。以下の実施例においてδの値は測定されていないが、酸素欠損が生じ、0<δ<3.0の関係を満たしていると考えられる。
<Aの元素>
Aの元素の例は、アルカリ土類金属である。ペロブスカイト構造が安定である。Aの元素の具体的な例は、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、カルシウム(Ca)、及びマグネシウム(Mg)から選ばれる少なくとも1種類以上の元素である。Aの元素がバリウム(Ba)及びストロンチウム(Sr)から選択させる少なくとも1種類であるプロトン伝導性酸化物は、高いプロトン伝導性を有するので望ましい。また、Aの元素は、少なくともバリウム(Ba)を含み、かつ、ストロンチウム(Sr)、カルシウム(Ca)、及びマグネシウム(Mg)から選ばれる少なくとも1種類以上の元素を含んでいてもよい。例えば、Aの元素は、BayA’1-y(0<y≦1)である。
Aの元素は、2価であるアルカリ土類金属元素であれば、Aの元素の組成比率を減少させることにより、B’の元素の組成比率の増加と同様な効果が得られ、酸素欠損を生じやすくなり、プロトンのキャリア濃度を高める効果が得られる。
<Bの元素>
Bの元素の例は、4族の元素である。Bの元素の具体的な例は、ジルコニウム(Zr)、セリウム(Ce)、チタン(Ti)、又はハフニウム(Hf)である。Bの元素がジルコニウム(Zr)の場合、ペロブスカイト構造が安定になるので、プロトン伝導性を有しない組織成分の生成が少なくなる。その結果、高いプロトン伝導性を有するプロトン伝導性酸化物が得られるので望ましい。
Bの元素は、4価である4族のジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、ハフニウム(Hf)およびセリウム(Ce)であれば、ペロブスカイト構造が安定になり、プロトン伝導性を有しない組織成分の生成が少なくなり、高いプロトン伝導性が得られる。
<B’の元素>
B’の元素は、3族の元素、13族の元素、又は3価のランタノイドである。B’の元素は、イオン半径が0.5Åより大きく1.02Åより小さいイオン半径を有する3族の元素、13族の元素、及び3価のランタノイドが望ましい。これにより、xの値が0.2より大きい場合でも、ペロブスカイト構造を安定に保ち、高いプロトン伝導性を有するプロトン伝導性酸化物が得られる。B’の元素がイットリウム(Y)又はインジウム(In)であるプロトン伝導性酸化物は、ペロブスカイト構造が安定であり、高いプロトン伝導性も有するので、より望ましい。
B’の元素は、3価である3族の元素、3価の13族の元素、3価のランタノイドであって、イオン半径が0.5Åより大きく1.02Åより小さい値を有する元素であれば、xの値が0.2より大きい場合でも、ペロブスカイト構造を安定に保持した状態で、酸素欠損が生じやすくなり、プロトンのキャリア濃度を高める効果が得られる。
(a、x、及びδについて)
Aの元素の組成比率を示すaの値は、0.4<a<0.9の範囲である。0.4より小さいaの値を有する酸化物は、ペロブスカイト構造が不安定になり、プロトン伝導性酸化物に、プロトン伝導性を有しない相が生成されるため望ましくない。
B’の元素の組成比率を示すxの値は、0.2<x<0.6の範囲である。0.6より大きいaの値を有する酸化物は、ペロブスカイト構造が不安定になり、プロトン伝導性を有しない相が生成されるため好ましくない。
0.9≦a<1.1であり、かつ、0≦x≦0.2である酸化物は、活性化エネルギが0.1eV以上になり、100℃以上500℃以下の温度範囲におけるプロトン伝導性が低下するため望ましくない。
0.9≦a<1.1であり、かつ、0.2<x<0.6である酸化物は、プロトン伝導性を持たない相が生成されるため望ましくない。
a>1.1である酸化物は、ペロブスカイト構造が不安定になり、プロトン伝導性が低下するため望ましくない。
よって、0.4<a<0.9であり、かつ、0.2<x<0.6であるプロトン伝導性酸化物は、ペロブスカイト構造が安定に得られ、プロトン伝導度が10-1S/cm以上になるため望ましい。0.4<a<0.9であり、かつ、0.0≦x≦0.2である酸化物は、ペロブスカイト構造を有するが、プロトン伝導度が10-1S/cm未満になるため望ましくない。
さらに、0.4<a<0.8であり、0.3<x<0.6であるプロトン伝導性酸化物は、500℃において、より高いプロトン伝導度を有するので、より望ましい。さらに、0.4<a<0.8であり、かつ、0.4<x<0.6であるプロトン伝導性酸化物は、100℃においても、高いプロトン伝導度を有するので、より望ましい。
Aは2価の元素、Bは4価の元素、B’は3価の元素である。また、Oは2価である。したがって、電気的中性条件を満たすとき、Aの欠損量の値とB’の置換量の半分の量の和が酸素欠損量になると考えられる。すなわち、結晶のユニットセルあたり、Aの欠損量は1−a、B’の置換量はx、酸素欠損量はδであるので、これらの元素のイオンによって電気的中性条件が満たされていると仮定すれば、δ=(1−a)+x/2が成立する。したがって、0.4<a<0.9、かつ、0.2<x<0.6を満たすとき、0.2<δ<0.9が満たされる。
Aの元素の組成比率を示すaの値、及びB’の元素の組成比率を示すxの値をそれぞれ上記の範囲内となるように調整することにより、組成および結晶構造が実質的に均一な(ホモジニアスな)単相から構成された単結晶または多結晶のペロブスカイト構造体が実現される。ここで、「組成および結晶構造が実質的に均一な単相から構成された」とは、プロトン伝導体が、上述した範囲から外れる組成を有する異相を含まないこと意味している。なお、本開示の実施形態による水素化装置に用いられるプロトン伝導体は、不可避的な不純物を微量に含有していてもよい。また、本開示の実施形態による水素化装置に用いられるプロトン伝導体を焼結によって製造する場合、焼結助剤などの化合物や元素を一部に含んでいてもよい。その他、製造プロセスの途上で意図せず、あるいは、何らかの効果を得るために意図的に不純物が添加されていてもよい。重要な点は、A、B、B’、Oの各元素が、上述した範囲内にあり、これらがペロブスカイト結晶構造を構成している点にある。従って、製造途中に混入される不純物の含有は許容され得る。
(製造方法)
プロトン伝導性酸化物は、スパッタ法、プラズマレーザーデポジション法(PLD法)、ケミカルベイパーデポジション法(CVD法)等の膜形成方法によって形成出来る。膜の形成方法には、特に限定されない。
(その他)
プロトン伝導性酸化物を、プロトン伝導体とも表記する。プロトン伝導性酸化物の形状の例は膜である。プロトン伝導性酸化物はプロトン伝導性固体電解質として機能すれば良く、連続体の膜でなくてかまわない。
また、プロトン伝導性酸化物の膜が形成される基材は、平坦でなくてもかまわない。反応物である、例えば水素及び酸素が、固体電解質としてのペロブスカイト型プロトン伝導性酸化物を介さずに直接反応することを避ける観点から、ペロブスカイト型プロトン伝導性酸化物に供給される反応物の漏れがないことが望ましい。そのため平滑な平面を有する、酸化マグネシウム(MgO)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、又はシリコン(Si)等で構成される基材上に、ペロブスカイト型プロトン伝導性酸化物の薄膜を形成する。その後、エッチング等を用いて、基材の一部又は全体を除去し、プロトン伝導性固体電解質とするのがより望ましい。基材の材料および形状について、特に限定されない。
プロトン伝導性酸化物の結晶構造は、単結晶又は多結晶でも構わない。酸化マグネシウム(MgO)又はチタン酸ストロンチウム(SrTiO3)の基板、および格子定数を制御したバッファ層が形成されたシリコン(Si)基板上に、結晶成長の方位を制御することにより配向された結晶組織を有するプロトン伝導性酸化物は、より高いプロトン伝導性を有するので望ましい。また、基板に対してエピタキシャル成長した単結晶の結晶組織を有するプロトン伝導性酸化物は、より高いプロトン伝導性を有するので望ましい。なお、基板の面方位、温度、圧力、雰囲気等の成膜条件の制御により、単結晶の結晶組織にすることができるが、薄膜形成条件および薄膜の結晶系は特に限定されない。
以下、実施例により、プロトン伝導性酸化物を具体的に説明する。
(実施例1)
基材(10mm×10mm、厚さ0.5mm)を、真空チャンバー内部の加熱機構を有する基板ホルダーにセットし、真空チャンバー内を10-3Pa程度の真空度に排気した。基材の材料は、酸化マグネシウム(MgO)単結晶であった。
真空排気後、基材を650℃〜750℃に加熱した。酸素ガス(2sccmの流量)とアルゴンガス(8sccmの流量)とを導入し、真空チャンバー内の圧力を1Pa程度に調整した。
Ba:Zr:Y=7:7:3の元素比率を有する焼結体ターゲットを用い、スパッタ法にて、プロトン伝導性酸化物を成膜した。
成膜したプロトン伝導性酸化物の構造、組成比、及びプロトン伝導性を評価した。表1に結果を示す。以下、それぞれの評価方法及びその結果を示す。なお、表1には、後述する実施例2〜13、および比較例1〜5も記載されている。
Cuターゲットを用いて、成膜したプロトン伝導性酸化物のX線回折を測定した。表1に示すように、実施例1のプロトン伝導性酸化物は、ペロブスカイト型の結晶構造であり、かつ、単結晶であることが確認された。
イオン結合プラズマ分光分析法(ICP:Inductively Coupled Plasma)を用いて、成膜したプロトン伝導性酸化物の組成比を調べた。表1に示すように、実施例1のプロトン伝導性酸化物(AaB1-xB’xO3-δ)は、Aの元素がバリウム(Ba)であり、aの値は0.73であった。また、Bの元素がジルコニウム(Zr)であり、B’の元素がイットリウム(Y)であり、xの値が0.31(Zr:0.69、Y:0.31)であった。
図2に、実施例1におけるプロトン伝導性酸化物のプロトン伝導度の測定結果を示す。プロトン伝導性酸化物の上に銀ペーストを用いて電極を形成した。5%の水素(H2)を混合したアルゴン(Ar)ガス中で、かつ、100℃から600℃の温度範囲の条件下で、インピーダンス法を用いてプロトン伝導度を測定した。
表1に示すように、100℃での実施例1のプロトン伝導度は0.36S/cmであり、500℃でのプロトン伝導度は0.71S/cmであった。
(実施例2)
Ba:Zr:Y=1:1:1の元素比率を有する焼結体ターゲットを用いて成膜したこと以外は、実施例1と同様に実験を行った。表1に、成膜したプロトン伝導性酸化物の構造、組成比、及びプロトン伝導性を示す。
表1に示すように、実施例2のプロトン伝導性酸化物は、ペロブスカイト型の結晶構造であり、かつ、単結晶であることが確認された。表1に示すように、このプロトン伝導性酸化物(AaB1-xB’xO3-δ)は、Aの元素がバリウム(Ba)であり、aの値は0.48であった。また、Bの元素がジルコニウム(Zr)であり、B’の元素がイットリウム(Y)であり、xの値が0.48(Zr:0.52、Y:0.48)であった。表1に示すように、100℃での実施例2のプロトン伝導度は0.42S/cmであり、500℃でのプロトン伝導度は0.79S/cmであった。
(実施例3)
Ba:Zr:Y=9:4:6の元素比率を有する焼結体ターゲットを用いて成膜したこと以外は、実施例1と同様に実験を行った。表1に、成膜したプロトン伝導性酸化物の構造、組成比、及びプロトン伝導性を示す。
表1に示すように、実施例3のプロトン伝導性酸化物は、ペロブスカイト型の結晶構造であり、かつ、多結晶であることが確認された。表1に示すように、このプロトン伝導性酸化物(AaB1-xB’xO3-δ)は、Aの元素がバリウム(Ba)であり、aの値は0.89であった。また、Bの元素がジルコニウム(Zr)であり、B’の元素がイットリウム(Y)であり、xの値が0.58(Zr:0.42、Y:0.58)であった。表1に示すように、100℃での実施例3のプロトン伝導度は0.14S/cmであり、500℃でのプロトン伝導度は0.55S/cmであった。
(実施例4)
Ba:Zr:In=5:8:2の元素比率になる焼結体ターゲットを用いて成膜したこと以外は、実施例1と同様に実験を行った。表1に、成膜したプロトン伝導性酸化物の構造、組成比、及びプロトン伝導性を示す。
表1に示すように、実施例4のプロトン伝導性酸化物は、ペロブスカイト型の結晶構造であり、かつ、単結晶であることが確認された。表1に示すように、このプロトン伝導性酸化物(AaB1-xB’xO3-δ)は、Aの元素がバリウム(Ba)であり、aの値は0.44であった。また、Bの元素がジルコニウム(Zr)であり、B’の元素がインジウム(In)であり、xの値が0.22(Zr:0.78、In:0.22)であった。表1に示すように、100℃での実施例4のプロトン伝導度は0.32S/cmであり、500℃でのプロトン伝導度は0.57S/cmであった。
(実施例5)
Ba:Zr:Y=8:6:4の元素比率を有する焼結体ターゲットを用いて成膜したこと以外は、実施例1と同様に実験を行った。表1に、成膜したプロトン伝導性酸化物の構造、組成比、及びプロトン伝導性を示す。
表1に示すように、実施例5のプロトン伝導性酸化物は、ペロブスカイト型の結晶構造であり、かつ、単結晶であることが確認された。表1に示すように、このプロトン伝導性酸化物(AaB1-xB’xO3-δ)は、Aの元素がバリウム(Ba)であり、aの値は0.71であった。また、Bの元素がジルコニウム(Zr)であり、B’の元素がイットリウム(Y)であり、xの値が0.41(Zr:0.59、Y:0.41)であった。表1に示すように、100℃での実施例5のプロトン伝導度は0.39S/cmであり、500℃でのプロトン伝導度は0.79S/cmであった。
(実施例6)
基材の材料がチタン酸ストロンチウム(SrTiO3)単結晶であることと、Ba:Sr:Zr:Y=3:4:7:3の元素比率を有する焼結体ターゲットを用いて成膜したこと以外は、実施例1と同様に実験を行った。表1に、成膜したプロトン伝導性酸化物の構造、組成比、及びプロトン伝導性を示す。
表1に示すように、実施例6のプロトン伝導性酸化物は、ペロブスカイト型の結晶構造であり、かつ、多結晶であることが確認された。表1に示すように、このプロトン伝導性酸化物(AaB1-xB’xO3-δ)は、Aの元素がバリウム(Ba)とストロンチウム(Sr)とであった。バリウム(Ba)とストロンチウム(Sr)との比率は、バリウム(Ba)が0.22、ストロンチウム(Sr)が0.49であり、aの値は0.71であった。また、Bの元素がジルコニウム(Zr)であり、B’の元素がイットリウム(Y)であり、xの値が0.27(Zr:0.73、Y:0.27)であった。表1に示すように、100℃での実施例6のプロトン伝導度は0.35S/cmであり、500℃でのプロトン伝導度は0.66S/cmであった。
(実施例7)
Ba:Sr:Zr:Y=1:1:2:2の元素比率を有する焼結体ターゲットを用いて成膜したこと以外は、実施例6と同様に実験を行った。表1に、成膜したプロトン伝導性酸化物の構造、組成比、及びプロトン伝導性を示す。
表1に示すように、実施例7のプロトン伝導性酸化物は、ペロブスカイト型の結晶構造であり、かつ、多結晶であることが確認された。表1に示すように、このプロトン伝導性酸化物(AaB1-xB’xO3-δ)は、Aの元素がバリウム(Ba)とストロンチウム(Sr)とであった。バリウム(Ba)とストロンチウム(Sr)との比率は、バリウム(Ba)が0.22、ストロンチウム(Sr)が0.25であり、aの値は0.47であった。また、Bの元素がジルコニウム(Zr)であり、B’の元素がイットリウム(Y)であり、xの値が0.47(Zr:0.53、Y:0.47)であった。表1に示すように、100℃での実施例7のプロトン伝導度は0.39S/cmであり、500℃でのプロトン伝導度は0.71S/cmであった。
(実施例8)
Ba:Sr:Zr:Y=2:7:4:6の元素比率を有する焼結体ターゲットを用いて成膜したこと以外は、実施例6と同様に実験を行った。表1に、成膜したプロトン伝導性酸化物の構造、組成比、及びプロトン伝導性を示す。
表1に示すように、実施例8のプロトン伝導性酸化物は、ペロブスカイト型の結晶構造であり、かつ、多結晶であることが確認された。表1に示すように、このプロトン伝導性酸化物(AaB1-xB’xO3-δ)は、Aの元素がバリウム(Ba)とストロンチウム(Sr)とであった。バリウム(Ba)とストロンチウム(Sr)との比率は、バリウム(Ba)が0.20、ストロンチウム(Sr)が0.68であり、aの値は0.88であった。また、Bの元素がジルコニウム(Zr)であり、B’の元素がイットリウム(Y)であり、xの値が0.58(Zr:0.42、Y:0.58)であった。表1に示すように、100℃での実施例8のプロトン伝導度は0.15S/cmであり、500℃でのプロトン伝導度は0.57S/cmであった。
(実施例9)
Ba:Sr:Zr:In=4:1:8:2の元素比率を有する焼結体ターゲットを用いて成膜したこと以外は、実施例6と同様に実験を行った。表1に、成膜したプロトン伝導性酸化物の構造、組成比、及びプロトン伝導性を示す。
表1に示すように、実施例9のプロトン伝導性酸化物は、ペロブスカイト型の結晶構造であり、かつ、単結晶であることが確認された。表1に示すように、このプロトン伝導性酸化物(AaB1-xB’xO3-δ)は、Aの元素がバリウム(Ba)とストロンチウム(Sr)とであった。バリウム(Ba)とストロンチウム(Sr)との比率は、バリウム(Ba)が0.35、ストロンチウム(Sr)が0.08であり、aの値は0.43であった。また、Bの元素がジルコニウム(Zr)であり、B’の元素がインジウム(In)であり、xの値が0.21(Zr:0.79、In:0.21)であった。表1に示すように、100℃での実施例9のプロトン伝導度は0.29S/cmであり、500℃でのプロトン伝導度は0.55S/cmであった。
(実施例10)
Ba:Sr:Zr:Y=5:2:6:4の元素比率を有する焼結体ターゲットを用いて成膜したこと以外は、実施例6と同様に実験を行った。表1に、成膜したプロトン伝導性酸化物の構造、組成比、及びプロトン伝導性を示す。
表1に示すように、実施例10のプロトン伝導性酸化物は、ペロブスカイト型の結晶構造であり、かつ、単結晶であることが確認された。表1に示すように、このプロトン伝導性酸化物(AaB1-xB’xO3-δ)は、Aの元素がバリウム(Ba)とストロンチウム(Sr)とであった。バリウム(Ba)とストロンチウム(Sr)との比率は、バリウム(Ba)が0.48、ストロンチウム(Sr)が0.21であり、aの値は0.69であった。また、Bの元素がジルコニウム(Zr)であり、B’の元素がイットリウム(Y)であり、xの値が0.39(Zr:0.61、Y:0.39)であった。表1に示すように、100℃での実施例10のプロトン伝導度は0.35S/cmであり、500℃でのプロトン伝導度は0.69S/cmであった。
(実施例11)
Ba:Zr:Y=2:2:3の元素比率を有する焼結体ターゲットを用いて成膜したこと以外は、実施例1と同様に実験を行った。表1に、成膜したプロトン伝導性酸化物の構造、組成比、及びプロトン伝導性を示す。
表1に示すように、実施例11のプロトン伝導性酸化物は、ペロブスカイト型の結晶構造であり、かつ、単結晶であることが確認された。表1に示すように、このプロトン伝導性酸化物(AaB1-xB’xO3-δ)は、Aの元素がバリウム(Ba)であり、aの値は0.41であった。また、Bの元素がジルコニウム(Zr)であり、B’の元素がイットリウム(Y)であり、xの値が0.58(Zr:0.42、Y:0.58)であった。表1に示すように、100℃での実施例11のプロトン伝導度は0.45S/cmであり、500℃でのプロトン伝導度は0.95S/cmであった。
(実施例12)
Ba:Zr:Y=9:8:2の元素比率を有する焼結体ターゲットを用いて成膜したこと以外は、実施例1と同様に実験を行った。表1に、成膜したプロトン伝導性酸化物の構造、組成比、及びプロトン伝導性を示す。
表1に示すように、実施例12のプロトン伝導性酸化物は、ペロブスカイト型の結晶構造であり、かつ、単結晶であることが確認された。表1に示すように、このプロトン伝導性酸化物(AaB1-xB’xO3-δ)は、Aの元素がバリウム(Ba)であり、aの値は0.88であった。また、Bの元素がジルコニウム(Zr)であり、B’の元素がイットリウム(Y)であり、xの値が0.21(Zr:0.79、Y:0.21)であった。表1に示すように、100℃での実施例12のプロトン伝導度は0.12S/cmであり、500℃でのプロトン伝導度は0.65S/cmであった。
(実施例13)
Ba:Zr:Y=3:4:1の元素比率を有する焼結体ターゲットを用いて成膜したこと以外は、実施例1と同様に実験を行った。表1に、成膜したプロトン伝導性酸化物の構造、組成比、及びプロトン伝導性を示す。
表1に示すように、実施例13のプロトン伝導性酸化物は、ペロブスカイト型の結晶構造であり、かつ、単結晶であることが確認された。表1に示すように、このプロトン伝導性酸化物(AaB1-xB’xO3-δ)は、Aの元素がバリウム(Ba)であり、aの値は0.42であった。また、Bの元素がジルコニウム(Zr)であり、B’の元素がイットリウム(Y)であり、xの値が0.22(Zr:0.78、Y:0.22)であった。表1に示すように、100℃での実施例13のプロトン伝導度は0.31S/cmであり、500℃でのプロトン伝導度は0.54S/cmであった。
(比較例1)
Ba:Zr:Y=5:4:1の元素比率を有する焼結体ターゲットを用いて成膜したこと以外は、実施例1と同様に実験を行った。表1に、成膜したプロトン伝導性酸化物の構造、組成比、及びプロトン伝導性を示す。
表1に示すように、比較例1のプロトン伝導性酸化物は、ペロブスカイト型の結晶構造であり、かつ、単結晶であることが確認された。表1に示すように、この酸化物(AaB1-xB’xO3-δ)は、Aの元素がバリウム(Ba)であり、aの値は0.98であった。また、Bの元素がジルコニウム(Zr)であり、B’の元素がイットリウム(Y)であり、xの値が0.19(Zr:0.81、Y:0.19)であった。
表1に示すように、100℃での比較例1のプロトン伝導度は2.3×10-5S/cmであり、500℃でのプロトン伝導度は0.039S/cmであった。
(比較例2)
Ba:Zr:In=7:9:1の元素比率を有する焼結体ターゲットを用いて成膜したこと以外は、実施例1と同様に実験を行った。表1に、成膜したプロトン伝導性酸化物の構造、組成比、及びプロトン伝導性を示す。
表1に示すように、比較例2のプロトン伝導性酸化物は、ペロブスカイト型の結晶構造であり、かつ、単結晶であることが確認された。表1に示すように、この酸化物(AaB1-xB’xO3-δ)は、Aの元素がバリウム(Ba)であり、aの値は0.65であった。また、Bの元素がジルコニウム(Zr)であり、B’の元素がインジウム(In)であり、xの値が0.13(Zr:0.87、In:0.13)であった。表1に示すように、100℃での比較例2のプロトン伝導度は0.01S/cmであり、500℃でのプロトン伝導度は0.013S/cmであった。
(比較例3)
Ba:Zr:Y=4:7:3の元素比率を有する焼結体ターゲットを用いて成膜したこと以外は、実施例1と同様に実験を行った。表1に、成膜したプロトン伝導性酸化物の構造、組成比、及びプロトン伝導性を示す。
表1に示すように、比較例3のプロトン伝導性酸化物は、多結晶のペロブスカイト型の結晶構造が含まれていた。また、不純物層として、酸化ジルコニウム(ZrO2)が検出された。表1に示すように、この酸化物(AaB1-xB’xO3-δ)は、Aの元素がバリウム(Ba)であり、aの値は0.35であった。また、Bの元素がジルコニウム(Zr)であり、B’の元素がイットリウム(Y)であり、xの値が0.32(Zr:0.68、Y:0.32)であった。表1に示すように、100℃での比較例3のプロトン伝導度は3.2×10-6S/cmであり、500℃でのプロトン伝導度は8.5×10-3S/cmであった。
(比較例4)
基材の材料がチタン酸ストロンチウム(SrTiO3)単結晶であり、Sr:Zr:Y=8:3:7の元素比率を有する焼結体ターゲットを用いて成膜したこと以外は、実施例1と同様に実験を行った。表1に、成膜したプロトン伝導性酸化物の構造、組成比、及びプロトン伝導性を示す。
表1に示すように、比較例4のプロトン伝導性酸化物は、多結晶のペロブスカイト型の結晶構造が含まれていた。また、不純物層として、炭酸バリウム(BaCO3)及び酸化イットリウム(Y2O3)も検出された。表1に示すように、この酸化物(AaB1-xB’xO3-δ)は、Aの元素がストロンチウム(Sr)であり、aの値は0.78であった。また、Bの元素がジルコニウム(Zr)であり、B’の元素がイットリウム(Y)であり、xの値が0.68(Zr:0.32、Y:0.68)であった。
表1に示すように、100℃での比較例4のプロトン伝導度は6.5×10-6S/cmであり、500℃でのプロトン伝導度は9.4×10-3S/cmであった。
(比較例5)
Sr:Zr:Y=5:3:2の元素比率を有する焼結体ターゲットを用いて成膜したこと以外は、比較例4と同様に実験を行った。表1に、成膜したプロトン伝導性酸化物の構造、組成比、及びプロトン伝導性を示す。
表1に示すように、比較例5のプロトン伝導性酸化物は、ペロブスカイト型の結晶構造であり、かつ、多結晶であることが確認された。表1に示すように、この酸化物(AaB1-xB’xO3-δ)は、Aの元素がストロンチウム(Sr)であり、aの値は1.01であった。また、Bの元素がジルコニウム(Zr)であり、B’の元素がイットリウム(Y)であり、xの値が0.45(Zr:0.55、Y:0.45)であった。
表1に示すように、100℃での比較例5のプロトン伝導度は4.3×10-6S/cmであり、500℃でのプロトン伝導度は8.6×10-3/cmであった。
表1に示すように、実施例1〜13のプロトン伝導性酸化物は、比較例1〜5と比較して、高いプロトン伝導度を有していることがわかる。実施例1〜13のプロトン伝導性酸化物は、0.4<a<0.9であり、かつ、0.2<x<0.6の条件を満たしている。
少なくとも5%程度の製造誤差を有することがわかっており、実施例1〜13のa及びxの値から、0.4<a<0.9であり、かつ、0.2<x<0.6を満たすプロトン伝導性酸化物は、高いプロトン伝導度を有する。
より具体的には、実施例3、実施例9、実施例11、及び実施例12のプロトン伝導体酸化物は、x=0.21、x=0.58、a=−0.054x+0.441、及びa=−0.027x+0.886の4つの式で囲まれる数値範囲である。すなわち、これらの実施例では、組成比率x、aが以下の関係を満たしている。
0.21≦x≦0.58、
a≧−0.054x+0.441、及び
a≦−0.027x+0.886
また、実施例1〜13のプロトン伝導性酸化物は、100℃及び500℃での活性化エネルギが、0.1eVよりも低い活性化エネルギを示しているのに対して、比較例1、3〜5の酸化物は、0.1eVよりも高い活性化エネルギを有していた。つまり、組成比率が上述の条件を満たす場合(実施例)に、100℃以上500℃以下の温度域においても、プロトン伝導性酸化物が、10-1S/cm以上の高いプロトン伝導度を維持する。実施例により示したように、a及びxの値が上述した範囲内となるように調整することにより、プロトン伝導度の活性化エネルギを0.1eV以下にすることができるので、温度の低下に伴うプロトン伝導度の低下を抑制できる。さらに、0.4<a<0.9であり、かつ、0.2<x<0.6の条件を満たすプロトン伝導性酸化物は、0.1eV以下のプロトン伝導度の活性化エネルギを有する、比較例2の酸化物よりも高いプロトン伝導度を有する。
なお、本発明者の実験から、Aの元素の欠損量を示す(1−a)がB’の元素の組成比率xに近いとき、製造が容易であることが分かっている。このため、以下の関係が成立すると、実用上、有益である。
0.5<(1−a)/x<2.5
また、表1から明らかなように、0.4<a<0.6であり、かつ、0.4<x<0.6のとき、相対的に高いプロトン伝導度が実現し、0.4<a<0.5であり、かつ、0.4<x<0.6のとき、最も高いプロトン伝導度が実現している。
さらに、実施例1、2、5、7、10、及び11のプロトン伝導性酸化物は、500℃において、より高いプロトン伝導を有するので、より望ましい。実施例1、2、5、7、10、及び11のプロトン伝導性酸化物は、少なくとも5%程度の製造誤差を考慮して、0.4<a<0.8、かつ、0.3<x<0.6の条件を満たす。より具体的には、実施例1、2、5、7、10、及び11のプロトン伝導性酸化物は、0.41<a<0.73、かつ、0.31<x<0.58の数値範囲に対して製造誤差を加えた条件を満たす。
さらに、実施例2、5、7、及び11のプロトン伝導性酸化物は、100℃において、高いプロトン伝導度を有するので、より望ましい。実施例2、5、7、及び11のプロトン伝導性酸化物は、少なくとも5%程度の製造誤差を考慮して、0.4<a<0.8、かつ、0.4<x<0.6の条件を満たす。より具体的には、実施例2、5、7、及び11のプロトン伝導性酸化物は、0.41<a<0.71、かつ、0.41<x<0.58の数値範囲に対して製造誤差を加えた条件を満たす。
(水素化装置の実施形態)
以下、図3を参照しながら、本開示の実施形態による水素化装置の構成及び動作を説明する。
図3に示す水素化装置100は、アノード102と、カソード103と、アノード102及びカソード103の間に配置されたプロトン伝導体101とを備える。プロトン伝導体101として、実施例を参照しながら説明した上述のプロトン伝導性酸化物を用いることができる。プロトン伝導体101は、100℃以上500℃以下の温度域においても、高いプロトン伝導性を有する。そのため、水素化装置100は、100℃以上500℃以下の温度域において、被水素化物を水素化することができる。さらに、プロトン伝導体101を備える水素化装置100では、積極的に加湿されていない気体を導入することが可能である。
図3に例示したように、アノード102とカソード103とは、典型的には、プロトン伝導体101を挟むようにして配置される。図示する例では、アノード102は、プロトン伝導体101の一方の主面上に配置されており、カソード103は、プロトン伝導体101においてアノード102が配置されていない側の主面上に配置されている。プロトン伝導体101、アノード102及びカソード103の配置は、図3の例に限定されず、種々の配置を採用し得る。例えば、アノード102及びカソード103が、プロトン伝導体101における同一の主面上に配置されていてもよい。
水素化装置100の動作時には、図示するように、アノード102に外部電源104の一端が接続され、カソード103に外部電源104の他端が接続される。外部電源104から供給される電力は、例えば商用系統から供給される電力であってもよいし、化学電池、燃料電池等の種々の電池又はキャパシタから供給される電力であってもよい。なお、図3に模式的に示したように、水素化装置100の動作時においては、アノード102は、カソード103よりも高電位である。
アノード102は、水素を酸化する触媒を含む。すなわち、アノード102は、水素ガスを含有する気体からプロトンを引き抜くことができるように構成されている。アノード102に含まれる触媒の例は、Ni、Pt、Re及びRhからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む、金属、合金又は酸化物である。
アノード102に含まれる触媒の他の例は、組成式ABO3-δで表されるペロブスカイト型結晶構造を有する酸化物である。ここで、Aは、Ba、Sr、Ca、La及びSmからなる群から選ばれる少なくとも1つを含み、Bは、Zr及びCeからなる群から選ばれる少なくとも1つとRuとを含む。又は、Bは、Ni、Fe、Co及びMnからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む。なお、Oは酸素であり、δは、酸素欠損または酸素過剰を示す。このような酸化物として、La1-xSrxFeO3-δ(0≦x≦1.0)、La1-xSrxCo1-yFeyO3-δ(0≦x≦1.0、0.1≦y≦0.8)、La1-xSrxMnO3-δ(0≦x≦0.4)、Sm1-xSrxCoO3-δ(0.2<x<0.8)、Ba1-xSrxCo1-yFeyO3-δ(0.4≦x≦1.0、0.4≦y≦1.0)等を例示することができる。なお、La2-xSrxNiO4-δ(ただし、0≦x≦0.5)で表されるK2NiF4結晶構造を有する酸化物を用いることも可能である。
アノード102に含まれる触媒として、プロトンと電子とを伝導し得る混合伝導性酸化物を用いてもよい。例えば、組成式AB1-xB’xO3-δで表される酸化物を用い得る。この酸化物は、前述したようなペロブスカイト型結晶構造を有する酸化物である。ここで、Aは、Ba、Sr及びCaからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む。Bは、Zr及びCeからなる群から選ばれる少なくとも1つとRuとを含み、B’は、Y若しくはIn又は3価のランタノイド元素である。B’の元素の組成比率を示すxの値は、0.10<x<0.80の範囲であり、より好ましくは、0.25<x<0.75の範囲である。なお、AとBとB’の和を2とした場合におけるRuの原子数比率は、例えば0.01以上、0.8以下である。
なお、アノード102は、水素ガスを含む種々のガスに曝され得る。そのため、アノード102に含まれる触媒は、酸化性雰囲気及び還元性雰囲気に対して不活性であるか又は耐久性が高く、かつ、過電圧を低減し得る材料から選択されることが好ましい。上述した材料は、このような材料の例である。
アノード102は、スパッタ法、PLD法、CVD法等の膜形成方法によって形成できる。上記の材料の粉末を溶剤に分散させたインクをスクリーン印刷した後、加熱、真空処理等により乾燥及び固化させ、アノード102を形成してもよい。アノード102の形成方法は、特に限定されない。
カソード103は、水素化触媒を含む。すなわち、カソード103は、プロトン伝導体101を介してアノード102からカソード103に輸送されたプロトンを還元し、被水素化物に水素原子を付加できるように構成されている。カソード103に含まれる触媒は、プロトンと電子が再結合することによって生じる水素によって還元されても電気伝導性を確保できる、金属又は合金を含む触媒であると有益である。カソード103に含まれる触媒の例は、Ni、Pt、Pd及びRhからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む、金属、合金又は酸化物である。なお、カソード103に含まれる触媒として、サーメットも用い得る。例えば、Ni、Pt、Pd及びRhからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む酸化物を含有するサーメットを用いてもよい。カソード103の形成の容易さ、価格等の観点からは、Niを含む酸化物を含有するサーメットを用いることが有益である。
カソード103に含まれる触媒の他の例は、組成式ABO3-δで表されるペロブスカイト型結晶構造を有する酸化物である。ここで、Aは、Ba、Sr、Ca、La及びSmからなる群から選ばれる少なくとも1つを含み、Bは、Zr及びCeからなる群から選ばれる少なくとも1つとRuとを含む。又は、Bは、Ni、Fe、Co及びMnからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む。なお、Oは酸素であり、δは、酸素欠損または酸素過剰を示す。このような酸化物として、La1-xSrxFeO3-δ(0≦x≦1.0)、La1-xSrxCo1-yFeyO3-δ(0≦x≦1.0、0.1≦y≦0.8)、La1-xSrxMnO3-δ(0≦x≦0.4)、Sm1-xSrxCoO3-δ(0.2<x<0.8)、Ba1-xSrxCo1-yFeyO3-δ(0.4≦x≦1.0、0.4≦y≦1.0)等を例示することができる。なお、La2-xSrxNiO4-δ(ただし、0≦x≦0.5)で表されるK2NiF4結晶構造を有する酸化物を用いることも可能である。
カソード103に含まれる触媒として、前述の混合伝導性酸化物と同様の、ペロブスカイト型結晶構造を有する酸化物も用い得る。すなわち、組成式AB1-xB’xO3-δで表されるペロブスカイト型結晶構造を有する酸化物を用い得る。Aの元素、Bの元素及びB’の元素のそれぞれは、アノード102に用い得る混合伝導性酸化物の説明において示した元素から選ばれてよい。xの範囲も、前述の混合伝導性酸化物と同様に0.10<x<0.80を満たす。0.25<x<0.75が満たされてもよい。AとBとB’の和を2とした場合におけるRuの原子数比率は、例えば0.01以上、0.8以下である。
カソード103は、スパッタ法、PLD法、CVD法等の膜形成方法によって形成できる。上記の材料の粉末を溶剤に分散させたインクをスクリーン印刷した後、加熱、真空処理等により乾燥固化させ、カソード103を形成してもよい。カソード103の形成方法は、特に限定されない。
図3に例示する構成では、水素化装置100は、第1流体入口105及び第1流体出口106が設けられたアノード側反応容器111と、第2流体入口107及び第2流体出口108が設けられたカソード側反応容器112とを有している。アノード側反応容器111内の空間とカソード側反応容器112内の空間とは、隔壁によって分離されており、図3に例示する構成では、プロトン伝導体101が、これら2つの空間を分離する隔壁として機能する。
図示する例において、アノード側反応容器111内には、第1流路109が設けられており、第1流体入口105から導入された流体は、第1流路109を介して第1流体出口106に向かって流れる。同様に、カソード側反応容器112内には、第2流路110が設けられており、第2流体入口107から導入された流体は、第2流路110を介して第2流体出口108に向かって流れる。第1流路109及び第2流路110は、それぞれ、気密及び水密が保たれており、各流路を流れる流体が互いに混ざり合わないように構成されている。図3に示したように、アノード102の表面の少なくとも一部は、第1流路109において露出し、カソード103の表面の少なくとも一部は、第2流路110において露出する。
図示する構成では、水素化装置100の動作時、第1流体入口105を介して、第1流路109に、水素ガスを含有する気体が導入される。また、第2流体入口107を介して、第2流路110に被水素化物(典型的には液体)が導入される。水素ガスを含有する気体と、被水素化物とを導入するために、第1流体入口105、第1流体出口106、第2流体入口107及び第2流体出口108のそれぞれに不図示の配管が接続される。これらの配管の途中には、ボンベ、タンク、バルブ、コンプレッサ、マスフローコントローラ等が配置され得る。
水素化装置100は、水素ガスを含有する気体及び被水素化物をアノード102及びカソード103にそれぞれ供給し、アノード102とカソード103との間に電位差を与えることにより、被水素化物を水素化する。すなわち、水素化装置100を利用することにより、有機ハイドライドを得ることができる。ここで、アノード102に供給される気体は、例えば、水蒸気、炭化水素系ガス、窒素ガス、二酸化炭素ガス、酸素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等と、水素ガスとの混合気体である。
第1流体入口105から例えば水素ガスを導入し、第1流路109において水素ガスをアノード102に接触させる。これにより、水素からプロトンが引き抜かれる。すなわち、アノード102では、以下の式(1)に示す反応が進行する。
H2→2H++2e- (1)
アノード102において生成したプロトンは、プロトン伝導体101中を伝導し、カソード103に到達する。プロトン伝導体101は、アノード102とカソード103との間の短絡を防ぎ、かつ、アノード102において生成されたプロトンをカソード103に供給する。動作時、外部電源104によりアノード102とカソード103との間に電圧が印加され、アノード102において生成したプロトンが、プロトン伝導体101を介してカソード103に電気化学的に輸送される。
アノード102において水素を含有する気体から引き抜かれ、プロトン伝導体101中を移動したプロトンは、カソード103において水素に還元される。第2流体入口107から被水素化物である例えばトルエンを導入し、第2流路110において被水素化物(ここではトルエン)をカソード103に接触させる。これにより、被水素化物が水素化される。このとき、被水素化物を霧状にしてカソード103に噴霧してもよい。被水素化物(ここではトルエン)をカソード103に接触させることにより、カソード103では、以下の式(2)に示す反応が進行する。
C7H8+6H++6e-→C7H14 (2)
上記の反応により、第2流路110内に有機ハイドライド(ここではメチルシクロヘキサン)が得られる。なお、水素化装置100では、固体高分子膜をプロトン伝導性固体電解質として用いる場合と異なり、電解質を湿潤した状態に保つ必要がない。そのため、ほとんど水分の混入のない有機ハイドライドを得ることが可能である。また、水素化装置100は、動作時、200℃程度の温度で運転される。したがって、被水素化物の変質を抑制し得る。
なお、第1流体出口106を介して排出される気体には、水素ガスが含有され得る。第1流体出口106を介して排出された気体を回収して第1流体入口105から第1流路109に再度導入してもよい。同様に、第2流体入口107から導入された被水素化物のうち、水素化されなかった(未反応の)被水素化物は第2流体出口108を介して排出される。この未反応の被水素化物を回収して第2流体入口107から第2流路110に再度導入してもよい。なお、水素を含有する気体と、被水素化物とを導入するための流路は、図3に例示した構成に限定されず、種々の構成及び配置を採用し得る。また、アノード102、プロトン伝導体101及びカソード103が順に積層される構成では、アノード側の空間とカソード側の空間とを分離する隔壁の少なくとも一部が、アノード102、プロトン伝導体101及びカソード103の積層体であればよい。
以上に説明したように、本開示の実施形態によれば、有機ハイドライドの生成に適した100℃以上300℃以下の温度域においても動作可能な、より実用的な水素化装置を提供できる。本開示の実施形態によれば、積極的に加湿されていない気体を導入することもでき、加湿器、結露防止用の加熱装置等を省くことができる。さらに、電解質を湿潤した状態に保つ必要もないので、より簡易な構成でありながら、水分の混入の少ない有機ハイドライドを得ることができる。したがって、本開示の実施形態によれば、小型かつ実用的な水素化装置を提供することが可能である。また、500℃以下の温度域において被水素化物を水素化することが可能であるので、反応容器、配管等の材料をより幅広い選択肢の中から選択することができる。