JP6269129B2 - 燃料電池 - Google Patents
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Description
従来、電解質中を移動するイオンとしてプロトンを用いた燃料電池が知られている。このような燃料電池として、例えば、パーフルオロカーボン材料からなるプロトン伝導性固体高分子膜を電解質として用いた固体高分子型燃料電池、プロトン伝導性酸化物を用いた燃料電池が知られている。
まず、図1を参照しながら、ペロブスカイト構造の基本構成を簡単に説明する。一般的なペロブスカイト構造は、図1に例示されるように、元素A、B、Oによって構成され、組成式ABO3によって表される。ここで、Aは2価のカチオンとなり得る元素、Bは4価のカチオンとなり得る元素、Oは酸素である。ペロブスカイト構造を有する結晶の単位格子は、典型的には立方体に近い形を有している。図示されるように、単位格子の8個の頂点には元素Aのイオンが位置する。一方、単位格子の6個の面の中心には酸素Oのイオンが位置する。また、単位格子の中央付近には元素Bのイオンが位置する。元素A、B、Oが占める位置を、それぞれ、Aサイト、Bサイト、Oサイトと呼んでもよい。
ペロブスカイト構造を有する従来のプロトン伝導性酸化物では、4価の元素であるBを、3価の元素であるB’で置換すると、プロトン伝導性酸化物に酸素欠損が生じる。すなわち、4価のカチオンの一部が3価のカチオンで置換されると、カチオンが有するプラス電荷の合計が減るため、電気的中性を維持する電荷補償の作用により、2価のアニオンである酸素イオンの組成比率が低下し、酸素欠損が生じると考えられている。このような組成を有するプロトン伝導性酸化物では、酸素欠損の位置(Oサイト)に水分子(H2O)が導入されることにより、プロトン伝導性酸化物にプロトン伝導のキャリアが導入されると考えられている。
以下、本開示の実施形態による燃料電池に用いられるプロトン伝導性酸化物を説明する。
Aの元素の例は、アルカリ土類金属である。ペロブスカイト構造が安定である。Aの元素の具体的な例は、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、カルシウム(Ca)、及びマグネシウム(Mg)から選ばれる少なくとも1種類以上の元素である。Aの元素がバリウム(Ba)及びストロンチウム(Sr)から選択させる少なくとも1種類であるプロトン伝導性酸化物は、高いプロトン伝導性を有するので望ましい。また、Aの元素は、少なくともバリウム(Ba)を含み、かつ、ストロンチウム(Sr)、カルシウム(Ca)、及びマグネシウム(Mg)から選ばれる少なくとも1種類以上の元素を含んでいてもよい。例えば、Aの元素は、BayA’1-y(0<y≦1)である。
Bの元素の例は、4族の元素である。Bの元素の具体的な例は、ジルコニウム(Zr)、セリウム(Ce)、チタン(Ti)、又はハフニウム(Hf)である。Bの元素がジルコニウム(Zr)の場合、ペロブスカイト構造が安定になるので、プロトン伝導性を有しない組織成分の生成が少なくなる。その結果、高いプロトン伝導性を有するプロトン伝導性酸化物が得られるので望ましい。
B’の元素は、3族の元素、13族の元素、又は3価のランタノイドである。B’の元素は、イオン半径が0.5Åより大きく1.02Åより小さいイオン半径を有する3族の元素、13族の元素、及び3価のランタノイドが望ましい。これにより、xの値が0.2より大きい場合でも、ペロブスカイト構造を安定に保ち、高いプロトン伝導性を有するプロトン伝導性酸化物が得られる。B’の元素がイットリウム(Y)又はインジウム(In)であるプロトン伝導性酸化物は、ペロブスカイト構造が安定であり、高いプロトン伝導性も有するので、より望ましい。
Aの元素の組成比率を示すaの値は、0.4<a<0.9の範囲である。0.4より小さいaの値を有する酸化物は、ペロブスカイト構造が不安定になり、プロトン伝導性酸化物に、プロトン伝導性を有しない相が生成されるため望ましくない。
プロトン伝導性酸化物は、スパッタ法、プラズマレーザーデポジション法(PLD法)、ケミカルベイパーデポジション法(CVD法)等の膜形成方法によって形成出来る。膜の形成方法には、特に限定されない。
プロトン伝導性酸化物を、プロトン伝導体とも表記する。プロトン伝導性酸化物の形状の例は膜である。プロトン伝導性酸化物はプロトン伝導性固体電解質として機能すれば良く、連続体の膜でなくてかまわない。
基材(10mm×10mm、厚さ0.5mm)を、真空チャンバー内部の加熱機構を有する基板ホルダーにセットし、真空チャンバー内を10-3Pa程度の真空度に排気した。基材の材料は、酸化マグネシウム(MgO)単結晶であった。
Ba:Zr:Y=1:1:1の元素比率を有する焼結体ターゲットを用いて成膜したこと以外は、実施例1と同様に実験を行った。表1に、成膜したプロトン伝導性酸化物の構造、組成比、及びプロトン伝導性を示す。
Ba:Zr:Y=9:4:6の元素比率を有する焼結体ターゲットを用いて成膜したこと以外は、実施例1と同様に実験を行った。表1に、成膜したプロトン伝導性酸化物の構造、組成比、及びプロトン伝導性を示す。
Ba:Zr:In=5:8:2の元素比率になる焼結体ターゲットを用いて成膜したこと以外は、実施例1と同様に実験を行った。表1に、成膜したプロトン伝導性酸化物の構造、組成比、及びプロトン伝導性を示す。
Ba:Zr:Y=8:6:4の元素比率を有する焼結体ターゲットを用いて成膜したこと以外は、実施例1と同様に実験を行った。表1に、成膜したプロトン伝導性酸化物の構造、組成比、及びプロトン伝導性を示す。
基材の材料がチタン酸ストロンチウム(SrTiO3)単結晶であることと、Ba:Sr:Zr:Y=3:4:7:3の元素比率を有する焼結体ターゲットを用いて成膜したこと以外は、実施例1と同様に実験を行った。表1に、成膜したプロトン伝導性酸化物の構造、組成比、及びプロトン伝導性を示す。
Ba:Sr:Zr:Y=1:1:2:2の元素比率を有する焼結体ターゲットを用いて成膜したこと以外は、実施例6と同様に実験を行った。表1に、成膜したプロトン伝導性酸化物の構造、組成比、及びプロトン伝導性を示す。
Ba:Sr:Zr:Y=2:7:4:6の元素比率を有する焼結体ターゲットを用いて成膜したこと以外は、実施例6と同様に実験を行った。表1に、成膜したプロトン伝導性酸化物の構造、組成比、及びプロトン伝導性を示す。
Ba:Sr:Zr:In=4:1:8:2の元素比率を有する焼結体ターゲットを用いて成膜したこと以外は、実施例6と同様に実験を行った。表1に、成膜したプロトン伝導性酸化物の構造、組成比、及びプロトン伝導性を示す。
Ba:Sr:Zr:Y=5:2:6:4の元素比率を有する焼結体ターゲットを用いて成膜したこと以外は、実施例6と同様に実験を行った。表1に、成膜したプロトン伝導性酸化物の構造、組成比、及びプロトン伝導性を示す。
Ba:Zr:Y=2:2:3の元素比率を有する焼結体ターゲットを用いて成膜したこと以外は、実施例1と同様に実験を行った。表1に、成膜したプロトン伝導性酸化物の構造、組成比、及びプロトン伝導性を示す。
Ba:Zr:Y=9:8:2の元素比率を有する焼結体ターゲットを用いて成膜したこと以外は、実施例1と同様に実験を行った。表1に、成膜したプロトン伝導性酸化物の構造、組成比、及びプロトン伝導性を示す。
Ba:Zr:Y=3:4:1の元素比率を有する焼結体ターゲットを用いて成膜したこと以外は、実施例1と同様に実験を行った。表1に、成膜したプロトン伝導性酸化物の構造、組成比、及びプロトン伝導性を示す。
Ba:Zr:Y=5:4:1の元素比率を有する焼結体ターゲットを用いて成膜したこと以外は、実施例1と同様に実験を行った。表1に、成膜したプロトン伝導性酸化物の構造、組成比、及びプロトン伝導性を示す。
Ba:Zr:In=7:9:1の元素比率を有する焼結体ターゲットを用いて成膜したこと以外は、実施例1と同様に実験を行った。表1に、成膜したプロトン伝導性酸化物の構造、組成比、及びプロトン伝導性を示す。
Ba:Zr:Y=4:7:3の元素比率を有する焼結体ターゲットを用いて成膜したこと以外は、実施例1と同様に実験を行った。表1に、成膜したプロトン伝導性酸化物の構造、組成比、及びプロトン伝導性を示す。
基材の材料がチタン酸ストロンチウム(SrTiO3)単結晶であり、Sr:Zr:Y=8:3:7の元素比率を有する焼結体ターゲットを用いて成膜したこと以外は、実施例1と同様に実験を行った。表1に、成膜したプロトン伝導性酸化物の構造、組成比、及びプロトン伝導性を示す。
Sr:Zr:Y=5:3:2の元素比率を有する焼結体ターゲットを用いて成膜したこと以外は、比較例4と同様に実験を行った。表1に、成膜したプロトン伝導性酸化物の構造、組成比、及びプロトン伝導性を示す。
0.21≦x≦0.58、
a≧−0.054x+0.441、及び
a≦−0.027x+0.886
0.5<(1−a)/x<2.5
以下、図3を参照しながら、本開示の実施形態による燃料電池の構成及び動作を説明する。
H2→2H++2e- (1)
4H++O2+4e-→2H2O (2)
101 プロトン伝導体
102 アノード
103 カソード
104 外部負荷
105 第1流体入口
106 第1流体出口
107 第2流体入口
108 第2流体出口
109 第1流路
110 第2流路
111 アノード側反応容器
112 カソード側反応容器
Claims (16)
- 水素ガスを含有する燃料をアノードに供給し、酸素ガスを含有する気体をカソードに供給することにより、発電する燃料電池であって、
前記燃料中の水素を酸化する触媒を含むアノードと、
前記気体中の酸素を還元する触媒を含むカソードと、
前記アノード及び前記カソードの間に配置されたプロトン伝導体と
を備え、
前記プロトン伝導体は、組成式AaB1-xB'xO3-δで表されるペロブスカイト型結晶
構造を有し、
前記Aは、Ba及びSrから選択される少なくとも1つであり、
前記Bは、Zrであり、
前記B’は、Y又はInであり、
0.4<a<0.9、かつ、0.2<x<0.6を満たす、燃料電池。 - 前記aの値が、0.4<a<0.8であり、
前記xの値が、0.3<x<0.6である、
請求項1に記載の燃料電池。 - 前記aの値が、0.4<a<0.8であり、
前記xの値が、0.4<x<0.6である、
請求項1に記載の燃料電池。 - 前記aの値が、0.4<a<0.6であり、
前記xの値が、0.4<x<0.6である、
請求項1に記載の燃料電池。 - 前記aの値が、0.4<a<0.5であり、
前記xの値が、0.4<x<0.6である、
請求項1に記載の燃料電池。 - 100℃以上500℃以下の温度範囲における、前記プロトン伝導体のプロトン伝導の活性化エネルギが0.1eV以下である、
請求項1から5のいずれかに記載の燃料電池。 - 0.21≦x≦0.58、
a≧−0.054x+0.441、及び
a≦−0.027x+0.886
の関係が成立する、
請求項1に記載の燃料電池。 - 前記プロトン伝導体は、組成および結晶構造が実質的に均一な単相から構成されている、
請求項1から7のいずれかに記載の燃料電池。 - 前記水素を酸化する触媒は、Ni、Pt、Pd、Re、Ru及びRhからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む金属又は合金である、
請求項1から8のいずれかに記載の燃料電池。 - 前記水素を酸化する触媒は、Ni、Pt、Pd、Re、Ru及びRhからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む酸化物である、
請求項1から8のいずれかに記載の燃料電池。 - 前記酸素を還元する触媒は、Ni、Pt、Ru及びRhからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む金属又は合金である、
請求項1から8のいずれかに記載の燃料電池。 - 前記酸素を還元する触媒は、Ni、Pt、Ru及びRhからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む酸化物である、
請求項1から8のいずれかに記載の燃料電池。 - 前記酸素を還元する触媒は、Co、Fe及びMnからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む酸化物である、
請求項1から8のいずれかに記載の燃料電池。 - 前記酸素を還元する触媒は、組成式CDO3-δで表されるペロブスカイト型結晶構造を有する酸化物であり、
前記Cは、Ba、Sr、Ca、La及びSmからなる群から選ばれる少なくとも1つを含み、
前記Dは、Zr及びCeからなる群から選ばれる少なくとも1つとRuとを含むか、又は、Ni、Fe、Co及びMnからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む、
請求項1から8のいずれかに記載の燃料電池。 - 前記酸素を還元する触媒は、組成式La2-zSrzNiO4-δで表されるK2NiF4結晶構造を有する酸化物であり、
0≦z≦0.5を満たす、
請求項1から8のいずれかに記載の燃料電池。 - 前記酸素を還元する触媒は、組成式EF1-yF'yO3-δで表されるペロブスカイト型結晶構造を有する酸化物であり、
前記Eは、Ba、Sr及びCaからなる群から選ばれる少なくとも1つを含み、
前記Fは、Zr及びCeからなる群から選ばれる少なくとも1つとRuとを含み、
前記F’は、Y若しくはIn又は3価のランタノイド元素であり、
0.10<y<0.80を満たす、
請求項1から8のいずれかに記載の燃料電池。
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