JP6253015B2 - 燃料電池 - Google Patents

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Description

本開示は、燃料電池に関する。本開示は、特に、プロトン伝導体を備える燃料電池に関する。
プロトン伝導性固体電解質の中でも、組成式AB1-xB’x3-δで表されるペロブスカイト型プロトン伝導性酸化物は数多く報告されている。ここで、Aはアルカリ土類金属、Bは4価の4族遷移金属元素や4価のランタノイド元素であるCe、B’は3価の3族または13族の元素、Oは酸素である。xは、Bの元素を置換するB’の元素の組成比率であり、0<x<1.0を満たす。δは酸素欠損または酸素過剰を表す値である。ペロブスカイト構造の基本構成については、後に図面を参照しながら簡単に説明する。
非特許文献1に、ペロブスカイト構造を有する酸化物が開示されている。非特許文献1の酸化物は、組成式BaZr1-xx3-δ又は組成式BaCe1-xx3-δである。ここで、Aがバリウム(Ba)であり、BがZr又はCeであり、B’がYの酸化物である。
また、特許文献1に、ペロブスカイト構造を有するプロトン伝導性膜が開示されている。特許文献1のプロトン伝導性膜は、化学式AL1-XX3-αである。Aがアルカリ土類金属である。Lがセリウム、チタン、ジルコニウム及びハフニウムから選ばれる1種以上の元素である。Mがネオジム、ガリウム、アルミニウム、イットリウム、インジウム、イッテルビウム、スカンジウム、ガドリウム、サマリウム及びプラセオジムから選ばれる1種以上の元素である。ここで、Xは、Lの元素を置換するMの元素の組成比率であり、αは酸素欠損の原子比率である。特許文献1のプロトン伝導性膜において、0.05<X<0.35であり、0.15<α<1.00である。
一方、プロトン伝導性を有する固体高分子膜も知られている。特許文献2に、このような固体高分子膜を用いた燃料電池が開示されている。特許文献2に記載の技術では、燃料として、有機ハイドライド(シクロヘキサン、デカリン等)が供給される。
特開2008−23404号公報 特開2003−45449号公報
Nature materials Vol9(October 2010) 846〜852 Solid State Ionics 110(1998) 103〜110
水素ガスを用いずに発電を実行し得、かつ実用性が向上された燃料電池を提供する。
本開示の燃料電池の一態様は、燃料をアノードに供給し、酸素ガスを含有する気体をカソードに供給することにより、発電する燃料電池であって、脱水素化触媒を含むアノードと、前記気体中の酸素を還元する触媒を含むカソードと、前記アノード及び前記カソードの間に配置されたプロトン伝導体とを備え、前記プロトン伝導体は、組成式Aa1-xB’x3-δで表されるペロブスカイト型結晶構造を有し、前記Aは、アルカリ土類金属から選択される少なくとも1つであり、前記Bは、4価の4族の遷移金属又はCeであり、前記B’は、3価の3族又は13族の元素であり、0.4<a<0.9、かつ、0.2<x<0.6を満たす。
本開示の実施形態によれば、水素ガスを用いずに発電を実行し得、かつ実用性が向上された燃料電池が提供される。
組成式ABO3で示される一般的なペロブスカイト構造を示す図である。 実施例1における100℃から600℃の温度範囲におけるプロトン伝導度を示す図である。 本開示の実施形態による燃料電池の例を示す模式的な断面図である。
(有機ハイドライドについて)
芳香族炭化水素化合物であるベンゼン、トルエン、ビフェニル、ナフタレン、1−メチルナフタレン、2−エチルナフタレンを水素化すると、それぞれ、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ビシクロヘキシル、デカリン、1−メチルデカリン及び2−エチルデカリンが得られる。上記のような被水素化物(例えばベンゼン)を用いることにより、水素を水素化物(例えばシクロヘキサン)の形で貯蔵することができる。また、アセトンを水素化すると、2−プロパノールが得られる。したがって、アセトンを用いて水素を2−プロパノールの形で貯蔵することが可能である。本明細書では、上記に例示したようなベンゼン、アセトン等の水素化により得られる水素化物(シクロヘキサン、2−プロパノール等)を有機ハイドライドと称する。
有機ハイドライドの脱水素化により、有機ハイドライドから水素を取り出すことが可能である。例えばシクロヘキサンの脱水素化により、水素ガスが得られる。このとき、脱水素化物としてベンゼンが生成される。シクロヘキサンの脱水素化により生じたベンゼンは、水素化によりシクロヘキサンに変換することができ、したがって、水素の貯蔵に再度利用することが可能である。
(有機ハイドライドを燃料として用いる発電について)
従来、電解質中を移動するイオンとしてプロトンを用いた燃料電池が知られている。このような燃料電池として、例えば、パーフルオロカーボン材料からなるプロトン伝導性固体高分子膜を電解質として用いた固体高分子型燃料電池が知られている。また、固体高分子型燃料電池の燃料として有機ハイドライドを用いることも知られている(例えば特許文献2参照)。燃料として有機ハイドライドを用いることにより、取り扱いの難しい水素ガスを用いずに発電を行えるという利点が得られる。また、発電によって生成される、有機ハイドライドの脱水素化物を水素の貯蔵に再度利用することができるという利点も得られる。
前述のプロトン伝導性固体高分子膜は、100℃以下の温度域において、かつ、湿潤した状態において良好なプロトン伝導性を示す。そのため、固体高分子型燃料電池では、動作時、例えばアノード又はカソードを介して固体高分子膜に水分が供給される。
しかしながら、常圧、100℃以下の温度では、有機ハイドライドの脱水素化が起こりにくく、したがって発電によって高い電流値を得にくい。また、固体高分子膜が湿潤した状態であると、アノードに供給された有機ハイドライドの脱水素化物に水分が混ざってしまう。そのため、水分が混入することにより脱水素化物の純度が低下してしまい、脱水素化物を水素化して有機ハイドライドとして再利用することが難しい。さらに、固体高分子膜が有機ハイドライド及び/又はその脱水素化物によって溶解するおそれがあり、安定した発電が困難である。
なお、有機ハイドライドを燃料として用いて発電を行う場合、有機ハイドライド及び/又は有機ハイドライドの脱水素化物の変質を抑制するために、作動温度は300℃以下の温度域であることが好ましい。上述したような従来知られたペロブスカイト型プロトン伝導性酸化物は、600℃以上の温度で実用可能なプロトン伝導性を示すため、有機ハイドライドを燃料として用いる燃料電池には適当でないといえる。
以上の理由から、有機ハイドライドを燃料として用いて、100℃以上300℃以下の温度域において発電を実行し得る、実用的な燃料電池が求められている。
本発明者は、鋭意研究を重ねることにより、100℃以上500℃以下の温度域においても高いプロトン伝導度を維持するプロトン伝導性酸化物を見出し、このようなプロトン伝導性酸化物を電解質として用いた燃料電池を想到した。
本発明の一態様の概要は、以下のとおりである。
本発明の一態様である燃料電池は、燃料をアノードに供給し、酸素ガスを含有する気体をカソードに供給することにより、発電する燃料電池であって、脱水素化触媒を含むアノードと、前記気体中の酸素を還元する触媒を含むカソードと、前記アノード及び前記カソードの間に配置されたプロトン伝導体とを備え、前記プロトン伝導体は、組成式Aa1-xB’x3-δで表されるペロブスカイト型結晶構造を有し、前記Aは、アルカリ土類金属から選択される少なくとも1つであり、前記Bは、4価の4族の遷移金属又はCeであり、前記B’は、3価の3族又は13族の元素であり、0.4<a<0.9、かつ、0.2<x<0.6を満たす。
前記Aは、Ba及びSrから選択される少なくとも1つであってもよい。前記Bは、Zrであってもよい。前記B’は、Y又はInであってもよい。
前記aの値が、0.4<a<0.8であってもよい。前記xの値が、0.3<x<0.6であってもよい。
前記aの値が、0.4<a<0.8であってもよい。前記xの値が、0.4<x<0.6であってもよい。
前記aの値が、0.4<a<0.6であってもよい。前記xの値が、0.4<x<0.6であってもよい。
前記aの値が、0.4<a<0.5であってもよい。前記xの値が、0.4<x<0.6であってもよい。
100℃以上500℃以下の温度範囲における、前記プロトン伝導体のプロトン伝導の活性化エネルギが0.1eV以下であってもよい。
0.21≦x≦0.58、a≧−0.054x+0.441、及びa≦−0.027x+0.886の関係が成立してもよい。
前記プロトン伝導体は、組成および結晶構造が実質的に均一な単相から構成されていてもよい。
前記脱水素化触媒は、Ni、Pt及びPdからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む金属又は合金であってもよい。
前記脱水素化触媒は、Ni、Pt及びPdからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む酸化物であってもよい。
前記アノードは、担体をさらに含んでいてもよい。前記担体は、Al23、SiO2、又はZrO2から構成されていてもよい。前記脱水素化触媒は、Ni、Pt及びPdからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む金属又は合金であってもよい。前記脱水素化触媒は、前記担体の表面上に担持されていてもよい。
前記酸素を還元する触媒は、Pt及びRuからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む金属又は合金であってもよい。
前記酸素を還元する触媒は、Pt及びRuからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む酸化物であってもよい。
前記酸素を還元する触媒は、Co、Fe及びMnからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む酸化物であってもよい。
前記酸素を還元する触媒は、組成式CDO3-δで表されるペロブスカイト型結晶構造を有する酸化物であってもよい。前記Cは、Ba、Sr、Ca、La及びSmからなる群から選ばれる少なくとも1つを含んでいてもよい。前記Dは、Zr及びCeからなる群から選ばれる少なくとも1つとRuとを含むか、又は、Ni、Fe、Co及びMnからなる群から選ばれる少なくとも1つを含んでいてもよい。
前記酸素を還元する触媒は、組成式La2-wSrwNiO4-δで表されるK2NiF4結晶構造を有する酸化物であってもよい。0≦w≦0.5が満たされてもよい。
前記酸素を還元する触媒は、組成式EF1-zF’z3-δで表されるペロブスカイト型結晶構造を有する酸化物であってもよい。前記Eは、Ba、Sr及びCaからなる群から選ばれる少なくとも1つを含んでいてもよい。前記Fは、Zr及びCeからなる群から選ばれる少なくとも1つとRuとを含んでいてもよい。前記F’は、Y若しくはIn又は3価のランタノイド元素であってもよい。0.10<z<0.80が満たされてもよい。
本開示による燃料電池の実施形態を説明する前に、この燃料電池に用いられるプロトン伝導性酸化物を説明する。以下に説明するプロトン伝導性酸化物は、ペロブスカイト構造を有するペロブスカイト型プロトン伝導体であり、100℃以上500℃以下の温度域においても、高いプロトン伝導性を有する。
(ペロブスカイト構造)
まず、図1を参照しながら、ペロブスカイト構造の基本構成を簡単に説明する。一般的なペロブスカイト構造は、図1に例示されるように、元素A、B、Oによって構成され、組成式ABO3によって表される。ここで、Aは2価のカチオンとなり得る元素、Bは4価のカチオンとなり得る元素、Oは酸素である。ペロブスカイト構造を有する結晶の単位格子は、典型的には立方体に近い形を有している。図示されるように、単位格子の8個の頂点には元素Aのイオンが位置する。一方、単位格子の6個の面の中心には酸素Oのイオンが位置する。また、単位格子の中央付近には元素Bのイオンが位置する。元素A、B、Oが占める位置を、それぞれ、Aサイト、Bサイト、Oサイトと呼んでもよい。
上記の構造は、ペロブスカイト結晶の基本的な構造であり、元素A、B、Oの一部が欠損していたり、過剰であったり、あるいは他の元素によって置換されていてもよい。例えば、元素B以外の元素B’がBサイトに位置する結晶は、組成式AB(1-x)B’x3によって表されるペロブスカイト結晶である。ここで、xは、B’の組成比率(mole fraction)であり、置換率と呼んでもよい。このような元素の置換、欠損、または過剰が生じると、単位格子の構造は立方体から歪んだり、変形したりし得る。ペロブスカイト結晶は、「立方晶」に限定されず、より対称性の低い「斜方晶」や「正方晶」に相転移した結晶を広く含む。
(本発明者らの知見)
ペロブスカイト構造を有する従来のプロトン伝導性酸化物では、4価の元素であるBを、3価の元素であるB’で置換すると、プロトン伝導性酸化物に酸素欠損が生じる。すなわち、4価のカチオンの一部が3価のカチオンで置換されると、カチオンが有するプラス電荷の合計が減るため、電気的中性を維持する電荷補償の作用により、2価のアニオンである酸素イオンの組成比率が低下し、酸素欠損が生じると考えられている。このような組成を有するプロトン伝導性酸化物では、酸素欠損の位置(Oサイト)に水分子(H2O)が導入されることにより、プロトン伝導性酸化物にプロトン伝導のキャリアが導入されると考えられている。
従来のプロトン伝導性酸化物内では、酸素原子の周囲をプロトンがホッピング伝導することにより、プロトン伝導性が発現すると考えられている。この場合、プロトン伝導度の温度依存性は、活性化エネルギが0.4〜1.0eV程度の熱活性型になる。そのため、プロトン伝導度は温度の低下に伴って指数関数的に低下する。
100℃以上500℃以下の温度域においても、プロトン伝導性酸化物が、10-1S/cm(ジーメンス/センチメートル)以上の高いプロトン伝導度を維持するためには、プロトン伝導度の活性化エネルギを0.1eV以下にすることにより、温度の低下に伴うプロトン伝導度の低下を抑制することが望まれる。
本発明者らは、3価の元素B’の固溶量(置換量)を増加させてプロトンキャリアの濃度または密度を高め、従来のホッピングよりも容易にプロトンが移動できる状態を作ることを試みた。しかし、従来のペロブスカイト型プロトン伝導性酸化物において、B’の元素の組成比率の上限が0.2程度であり、酸素欠損量に上限があった。
本発明者は、より多くのプロトンキャリアを導入する方法として、Aの元素の組成比率を減少させることにより、B’の元素の組成比率の増加と同様な効果が得られる可能性に着目した。しかし、非特許文献2に記載されているように、Aの元素の組成比率aが1より減少するとプロトン伝導度が低下する。この理由は、プロトン伝導性を有しない成分(異相:ペロブスカイト型の結晶構造を有しない相)が結晶組織内に生成されるためと考えられる。
そこで、本発明者らは、Aの元素の組成比率aを1より減少させるという、従来プロトン伝導には不適とされていた化学組成領域において、B’の元素の組成比率xを従来の0.2よりも高くすることにより、予想外にも単相のペロブスカイト構造を維持しつつ、活性化エネルギを低くできることを見出した。その結果、高いプロトン伝導性を有するペロブスカイト型プロトン伝導性酸化物が得られた。
(プロトン伝導性酸化物)
以下、本開示の実施形態による燃料電池に用いられるプロトン伝導性酸化物を説明する。
本開示の実施形態による燃料電池に用いられるプロトン伝導性酸化物は、組成式Aa1-xB’x3-δで表されるペロブスカイト結晶構造を有する金属酸化物である。Aの元素はアルカリ土類金属である。Aの元素の組成比率を示すaの値は、BとB’の和を1とした場合のAの元素の原子数比率であり、0.4<a<0.9の範囲である。B’の元素は3価の3族および13族の元素である。Bの元素の組成比率を示すxの値が、0.2<x<0.6の範囲である。組成比率については、後述の実施例で詳細に説明する。なお、δは、前述したように、酸素欠損または酸素過剰を示す。以下の実施例においてδの値は測定されていないが、酸素欠損が生じ、0<δ<3.0の関係を満たしていると考えられる。
<Aの元素>
Aの元素の例は、アルカリ土類金属である。ペロブスカイト構造が安定である。Aの元素の具体的な例は、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、カルシウム(Ca)、及びマグネシウム(Mg)から選ばれる少なくとも1種類以上の元素である。Aの元素がバリウム(Ba)及びストロンチウム(Sr)から選択させる少なくとも1種類であるプロトン伝導性酸化物は、高いプロトン伝導性を有するので望ましい。また、Aの元素は、少なくともバリウム(Ba)を含み、かつ、ストロンチウム(Sr)、カルシウム(Ca)、及びマグネシウム(Mg)から選ばれる少なくとも1種類以上の元素を含んでいてもよい。例えば、Aの元素は、BayA’1-y(0<y≦1)である。
Aの元素は、2価であるアルカリ土類金属元素であれば、Aの元素の組成比率を減少させることにより、B’の元素の組成比率の増加と同様な効果が得られ、酸素欠損を生じやすくなり、プロトンのキャリア濃度を高める効果が得られる。
<Bの元素>
Bの元素の例は、4族の元素である。Bの元素の具体的な例は、ジルコニウム(Zr)、セリウム(Ce)、チタン(Ti)、又はハフニウム(Hf)である。Bの元素がジルコニウム(Zr)の場合、ペロブスカイト構造が安定になるので、プロトン伝導性を有しない組織成分の生成が少なくなる。その結果、高いプロトン伝導性を有するプロトン伝導性酸化物が得られるので望ましい。
Bの元素は、4価である4族のジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、ハフニウム(Hf)およびセリウム(Ce)であれば、ペロブスカイト構造が安定になり、プロトン伝導性を有しない組織成分の生成が少なくなり、高いプロトン伝導性が得られる。
<B’の元素>
B’の元素は、3族の元素、13族の元素、又は3価のランタノイドである。B’の元素は、イオン半径が0.5Åより大きく1.02Åより小さいイオン半径を有する3族の元素、13族の元素、及び3価のランタノイドが望ましい。これにより、xの値が0.2より大きい場合でも、ペロブスカイト構造を安定に保ち、高いプロトン伝導性を有するプロトン伝導性酸化物が得られる。B’の元素がイットリウム(Y)又はインジウム(In)であるプロトン伝導性酸化物は、ペロブスカイト構造が安定であり、高いプロトン伝導性も有するので、より望ましい。
B’の元素は、3価である3族の元素、3価の13族の元素、3価のランタノイドであって、イオン半径が0.5Åより大きく1.02Åより小さい値を有する元素であれば、xの値が0.2より大きい場合でも、ペロブスカイト構造を安定に保持した状態で、酸素欠損が生じやすくなり、プロトンのキャリア濃度を高める効果が得られる。
(a、x、及びδについて)
Aの元素の組成比率を示すaの値は、0.4<a<0.9の範囲である。0.4より小さいaの値を有する酸化物は、ペロブスカイト構造が不安定になり、プロトン伝導性酸化物に、プロトン伝導性を有しない相が生成されるため望ましくない。
B’の元素の組成比率を示すxの値は、0.2<x<0.6の範囲である。0.6より大きいaの値を有する酸化物は、ペロブスカイト構造が不安定になり、プロトン伝導性を有しない相が生成されるため好ましくない。
0.9≦a<1.1であり、かつ、0≦x≦0.2である酸化物は、活性化エネルギが0.1eV以上になり、100℃以上500℃以下の温度範囲におけるプロトン伝導性が低下するため望ましくない。
0.9≦a<1.1であり、かつ、0.2<x<0.6である酸化物は、プロトン伝導性を持たない相が生成されるため望ましくない。
a>1.1である酸化物は、ペロブスカイト構造が不安定になり、プロトン伝導性が低下するため望ましくない。
よって、0.4<a<0.9であり、かつ、0.2<x<0.6であるプロトン伝導性酸化物は、ペロブスカイト構造が安定に得られ、プロトン伝導度が10-1S/cm以上になるため望ましい。0.4<a<0.9であり、かつ、0.0≦x≦0.2である酸化物は、ペロブスカイト構造を有するが、プロトン伝導度が10-1S/cm未満になるため望ましくない。
さらに、0.4<a<0.8であり、0.3<x<0.6であるプロトン伝導性酸化物は、500℃において、より高いプロトン伝導度を有するので、より望ましい。さらに、0.4<a<0.8であり、かつ、0.4<x<0.6であるプロトン伝導性酸化物は、100℃においても、高いプロトン伝導度を有するので、より望ましい。
Aは2価の元素、Bは4価の元素、B’は3価の元素である。また、Oは2価である。したがって、電気的中性条件を満たすとき、Aの欠損量の値とB’の置換量の半分の量の和が酸素欠損量になると考えられる。すなわち、結晶のユニットセルあたり、Aの欠損量は1−a、B’の置換量はx、酸素欠損量はδであるので、これらの元素のイオンによって電気的中性条件が満たされていると仮定すれば、δ=(1−a)+x/2が成立する。したがって、0.4<a<0.9、かつ、0.2<x<0.6を満たすとき、0.2<δ<0.9が満たされる。
Aの元素の組成比率を示すaの値、及びB’の元素の組成比率を示すxの値をそれぞれ上記の範囲内となるように調整することにより、組成および結晶構造が実質的に均一な(ホモジニアスな)単相から構成された単結晶または多結晶のペロブスカイト構造体が実現される。ここで、「組成および結晶構造が実質的に均一な単相から構成された」とは、プロトン伝導体が、上述した範囲から外れる組成を有する異相を含まないこと意味している。なお、本開示の実施形態による燃料電池に用いられるプロトン伝導体は、不可避的な不純物を微量に含有していてもよい。また、本開示の実施形態による燃料電池に用いられるプロトン伝導体を焼結によって製造する場合、焼結助剤などの化合物や元素を一部に含んでいてもよい。その他、製造プロセスの途上で意図せず、あるいは、何らかの効果を得るために意図的に不純物が添加されていてもよい。重要な点は、A、B、B’、Oの各元素が、上述した範囲内にあり、これらがペロブスカイト結晶構造を構成している点にある。従って、製造途中に混入される不純物の含有は許容され得る。
(製造方法)
プロトン伝導性酸化物は、スパッタ法、プラズマレーザーデポジション法(PLD法)、ケミカルベイパーデポジション法(CVD法)等の膜形成方法によって形成出来る。膜の形成方法には、特に限定されない。
(その他)
プロトン伝導性酸化物を、プロトン伝導体とも表記する。プロトン伝導性酸化物の形状の例は膜である。プロトン伝導性酸化物はプロトン伝導性固体電解質として機能すれば良く、連続体の膜でなくてかまわない。
また、プロトン伝導性酸化物の膜が形成される基材は、平坦でなくてもかまわない。反応物である、例えば水素及び酸素が、固体電解質としてのペロブスカイト型プロトン伝導性酸化物を介さずに直接反応することを避ける観点から、ペロブスカイト型プロトン伝導性酸化物に供給される反応物の漏れがないことが望ましい。そのため平滑な平面を有する、酸化マグネシウム(MgO)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、又はシリコン(Si)等で構成される基材上に、ペロブスカイト型プロトン伝導性酸化物の薄膜を形成する。その後、エッチング等を用いて、基材の一部又は全体を除去し、プロトン伝導性固体電解質とするのがより望ましい。基材の材料および形状について、特に限定されない。
プロトン伝導性酸化物の結晶構造は、単結晶又は多結晶でも構わない。酸化マグネシウム(MgO)又はチタン酸ストロンチウム(SrTiO3)の基板、および格子定数を制御したバッファ層が形成されたシリコン(Si)基板上に、結晶成長の方位を制御することにより配向された結晶組織を有するプロトン伝導性酸化物は、より高いプロトン伝導性を有するので望ましい。また、基板に対してエピタキシャル成長した単結晶の結晶組織を有するプロトン伝導性酸化物は、より高いプロトン伝導性を有するので望ましい。なお、基板の面方位、温度、圧力、雰囲気等の成膜条件の制御により、単結晶の結晶組織にすることができるが、薄膜形成条件および薄膜の結晶系は特に限定されない。
以下、実施例により、プロトン伝導性酸化物を具体的に説明する。
(実施例1)
基材(10mm×10mm、厚さ0.5mm)を、真空チャンバー内部の加熱機構を有する基板ホルダーにセットし、真空チャンバー内を10-3Pa程度の真空度に排気した。基材の材料は、酸化マグネシウム(MgO)単結晶であった。
真空排気後、基材を650℃〜750℃に加熱した。酸素ガス(2sccmの流量)とアルゴンガス(8sccmの流量)とを導入し、真空チャンバー内の圧力を1Pa程度に調整した。
Ba:Zr:Y=7:7:3の元素比率を有する焼結体ターゲットを用い、スパッタ法にて、プロトン伝導性酸化物を成膜した。
成膜したプロトン伝導性酸化物の構造、組成比、及びプロトン伝導性を評価した。表1に結果を示す。以下、それぞれの評価方法及びその結果を示す。なお、表1には、後述する実施例2〜13、および比較例1〜5も記載されている。
Figure 0006253015
Cuターゲットを用いて、成膜したプロトン伝導性酸化物のX線回折を測定した。表1に示すように、実施例1のプロトン伝導性酸化物は、ペロブスカイト型の結晶構造であり、かつ、単結晶であることが確認された。
イオン結合プラズマ分光分析法(ICP:Inductively Coupled Plasma)を用いて、成膜したプロトン伝導性酸化物の組成比を調べた。表1に示すように、実施例1のプロトン伝導性酸化物(Aa1-xB’x3-δ)は、Aの元素がバリウム(Ba)であり、aの値は0.73であった。また、Bの元素がジルコニウム(Zr)であり、B’の元素がイットリウム(Y)であり、xの値が0.31(Zr:0.69、Y:0.31)であった。
図2に、実施例1におけるプロトン伝導性酸化物のプロトン伝導度の測定結果を示す。プロトン伝導性酸化物の上に銀ペーストを用いて電極を形成した。5%の水素(H2)を混合したアルゴン(Ar)ガス中で、かつ、100℃から600℃の温度範囲の条件下で、インピーダンス法を用いてプロトン伝導度を測定した。
表1に示すように、100℃での実施例1のプロトン伝導度は0.36S/cmであり、500℃でのプロトン伝導度は0.71S/cmであった。
(実施例2)
Ba:Zr:Y=1:1:1の元素比率を有する焼結体ターゲットを用いて成膜したこと以外は、実施例1と同様に実験を行った。表1に、成膜したプロトン伝導性酸化物の構造、組成比、及びプロトン伝導性を示す。
表1に示すように、実施例2のプロトン伝導性酸化物は、ペロブスカイト型の結晶構造であり、かつ、単結晶であることが確認された。表1に示すように、このプロトン伝導性酸化物(Aa1-xB’x3-δ)は、Aの元素がバリウム(Ba)であり、aの値は0.48であった。また、Bの元素がジルコニウム(Zr)であり、B’の元素がイットリウム(Y)であり、xの値が0.48(Zr:0.52、Y:0.48)であった。表1に示すように、100℃での実施例2のプロトン伝導度は0.42S/cmであり、500℃でのプロトン伝導度は0.79S/cmであった。
(実施例3)
Ba:Zr:Y=9:4:6の元素比率を有する焼結体ターゲットを用いて成膜したこと以外は、実施例1と同様に実験を行った。表1に、成膜したプロトン伝導性酸化物の構造、組成比、及びプロトン伝導性を示す。
表1に示すように、実施例3のプロトン伝導性酸化物は、ペロブスカイト型の結晶構造であり、かつ、多結晶であることが確認された。表1に示すように、このプロトン伝導性酸化物(Aa1-xB’x3-δ)は、Aの元素がバリウム(Ba)であり、aの値は0.89であった。また、Bの元素がジルコニウム(Zr)であり、B’の元素がイットリウム(Y)であり、xの値が0.58(Zr:0.42、Y:0.58)であった。表1に示すように、100℃での実施例3のプロトン伝導度は0.14S/cmであり、500℃でのプロトン伝導度は0.55S/cmであった。
(実施例4)
Ba:Zr:In=5:8:2の元素比率になる焼結体ターゲットを用いて成膜したこと以外は、実施例1と同様に実験を行った。表1に、成膜したプロトン伝導性酸化物の構造、組成比、及びプロトン伝導性を示す。
表1に示すように、実施例4のプロトン伝導性酸化物は、ペロブスカイト型の結晶構造であり、かつ、単結晶であることが確認された。表1に示すように、このプロトン伝導性酸化物(Aa1-xB’x3-δ)は、Aの元素がバリウム(Ba)であり、aの値は0.44であった。また、Bの元素がジルコニウム(Zr)であり、B’の元素がインジウム(In)であり、xの値が0.22(Zr:0.78、In:0.22)であった。表1に示すように、100℃での実施例4のプロトン伝導度は0.32S/cmであり、500℃でのプロトン伝導度は0.57S/cmであった。
(実施例5)
Ba:Zr:Y=8:6:4の元素比率を有する焼結体ターゲットを用いて成膜したこと以外は、実施例1と同様に実験を行った。表1に、成膜したプロトン伝導性酸化物の構造、組成比、及びプロトン伝導性を示す。
表1に示すように、実施例5のプロトン伝導性酸化物は、ペロブスカイト型の結晶構造であり、かつ、単結晶であることが確認された。表1に示すように、このプロトン伝導性酸化物(Aa1-xB’x3-δ)は、Aの元素がバリウム(Ba)であり、aの値は0.71であった。また、Bの元素がジルコニウム(Zr)であり、B’の元素がイットリウム(Y)であり、xの値が0.41(Zr:0.59、Y:0.41)であった。表1に示すように、100℃での実施例5のプロトン伝導度は0.39S/cmであり、500℃でのプロトン伝導度は0.79S/cmであった。
(実施例6)
基材の材料がチタン酸ストロンチウム(SrTiO3)単結晶であることと、Ba:Sr:Zr:Y=3:4:7:3の元素比率を有する焼結体ターゲットを用いて成膜したこと以外は、実施例1と同様に実験を行った。表1に、成膜したプロトン伝導性酸化物の構造、組成比、及びプロトン伝導性を示す。
表1に示すように、実施例6のプロトン伝導性酸化物は、ペロブスカイト型の結晶構造であり、かつ、多結晶であることが確認された。表1に示すように、このプロトン伝導性酸化物(Aa1-xB’x3-δ)は、Aの元素がバリウム(Ba)とストロンチウム(Sr)とであった。バリウム(Ba)とストロンチウム(Sr)との比率は、バリウム(Ba)が0.22、ストロンチウム(Sr)が0.49であり、aの値は0.71であった。また、Bの元素がジルコニウム(Zr)であり、B’の元素がイットリウム(Y)であり、xの値が0.27(Zr:0.73、Y:0.27)であった。表1に示すように、100℃での実施例6のプロトン伝導度は0.35S/cmであり、500℃でのプロトン伝導度は0.66S/cmであった。
(実施例7)
Ba:Sr:Zr:Y=1:1:2:2の元素比率を有する焼結体ターゲットを用いて成膜したこと以外は、実施例6と同様に実験を行った。表1に、成膜したプロトン伝導性酸化物の構造、組成比、及びプロトン伝導性を示す。
表1に示すように、実施例7のプロトン伝導性酸化物は、ペロブスカイト型の結晶構造であり、かつ、多結晶であることが確認された。表1に示すように、このプロトン伝導性酸化物(Aa1-xB’x3-δ)は、Aの元素がバリウム(Ba)とストロンチウム(Sr)とであった。バリウム(Ba)とストロンチウム(Sr)との比率は、バリウム(Ba)が0.22、ストロンチウム(Sr)が0.25であり、aの値は0.47であった。また、Bの元素がジルコニウム(Zr)であり、B’の元素がイットリウム(Y)であり、xの値が0.47(Zr:0.53、Y:0.47)であった。表1に示すように、100℃での実施例7のプロトン伝導度は0.39S/cmであり、500℃でのプロトン伝導度は0.71S/cmであった。
(実施例8)
Ba:Sr:Zr:Y=2:7:4:6の元素比率を有する焼結体ターゲットを用いて成膜したこと以外は、実施例6と同様に実験を行った。表1に、成膜したプロトン伝導性酸化物の構造、組成比、及びプロトン伝導性を示す。
表1に示すように、実施例8のプロトン伝導性酸化物は、ペロブスカイト型の結晶構造であり、かつ、多結晶であることが確認された。表1に示すように、このプロトン伝導性酸化物(Aa1-xB’x3-δ)は、Aの元素がバリウム(Ba)とストロンチウム(Sr)とであった。バリウム(Ba)とストロンチウム(Sr)との比率は、バリウム(Ba)が0.20、ストロンチウム(Sr)が0.68であり、aの値は0.88であった。また、Bの元素がジルコニウム(Zr)であり、B’の元素がイットリウム(Y)であり、xの値が0.58(Zr:0.42、Y:0.58)であった。表1に示すように、100℃での実施例8のプロトン伝導度は0.15S/cmであり、500℃でのプロトン伝導度は0.57S/cmであった。
(実施例9)
Ba:Sr:Zr:In=4:1:8:2の元素比率を有する焼結体ターゲットを用いて成膜したこと以外は、実施例6と同様に実験を行った。表1に、成膜したプロトン伝導性酸化物の構造、組成比、及びプロトン伝導性を示す。
表1に示すように、実施例9のプロトン伝導性酸化物は、ペロブスカイト型の結晶構造であり、かつ、単結晶であることが確認された。表1に示すように、このプロトン伝導性酸化物(Aa1-xB’x3-δ)は、Aの元素がバリウム(Ba)とストロンチウム(Sr)とであった。バリウム(Ba)とストロンチウム(Sr)との比率は、バリウム(Ba)が0.35、ストロンチウム(Sr)が0.08であり、aの値は0.43であった。また、Bの元素がジルコニウム(Zr)であり、B’の元素がインジウム(In)であり、xの値が0.21(Zr:0.79、In:0.21)であった。表1に示すように、100℃での実施例9のプロトン伝導度は0.29S/cmであり、500℃でのプロトン伝導度は0.55S/cmであった。
(実施例10)
Ba:Sr:Zr:Y=5:2:6:4の元素比率を有する焼結体ターゲットを用いて成膜したこと以外は、実施例6と同様に実験を行った。表1に、成膜したプロトン伝導性酸化物の構造、組成比、及びプロトン伝導性を示す。
表1に示すように、実施例10のプロトン伝導性酸化物は、ペロブスカイト型の結晶構造であり、かつ、単結晶であることが確認された。表1に示すように、このプロトン伝導性酸化物(Aa1-xB’x3-δ)は、Aの元素がバリウム(Ba)とストロンチウム(Sr)とであった。バリウム(Ba)とストロンチウム(Sr)との比率は、バリウム(Ba)が0.48、ストロンチウム(Sr)が0.21であり、aの値は0.69であった。また、Bの元素がジルコニウム(Zr)であり、B’の元素がイットリウム(Y)であり、xの値が0.39(Zr:0.61、Y:0.39)であった。表1に示すように、100℃での実施例10のプロトン伝導度は0.35S/cmであり、500℃でのプロトン伝導度は0.69S/cmであった。
(実施例11)
Ba:Zr:Y=2:2:3の元素比率を有する焼結体ターゲットを用いて成膜したこと以外は、実施例1と同様に実験を行った。表1に、成膜したプロトン伝導性酸化物の構造、組成比、及びプロトン伝導性を示す。
表1に示すように、実施例11のプロトン伝導性酸化物は、ペロブスカイト型の結晶構造であり、かつ、単結晶であることが確認された。表1に示すように、このプロトン伝導性酸化物(Aa1-xB’x3-δ)は、Aの元素がバリウム(Ba)であり、aの値は0.41であった。また、Bの元素がジルコニウム(Zr)であり、B’の元素がイットリウム(Y)であり、xの値が0.58(Zr:0.42、Y:0.58)であった。表1に示すように、100℃での実施例11のプロトン伝導度は0.45S/cmであり、500℃でのプロトン伝導度は0.95S/cmであった。
(実施例12)
Ba:Zr:Y=9:8:2の元素比率を有する焼結体ターゲットを用いて成膜したこと以外は、実施例1と同様に実験を行った。表1に、成膜したプロトン伝導性酸化物の構造、組成比、及びプロトン伝導性を示す。
表1に示すように、実施例12のプロトン伝導性酸化物は、ペロブスカイト型の結晶構造であり、かつ、単結晶であることが確認された。表1に示すように、このプロトン伝導性酸化物(Aa1-xB’x3-δ)は、Aの元素がバリウム(Ba)であり、aの値は0.88であった。また、Bの元素がジルコニウム(Zr)であり、B’の元素がイットリウム(Y)であり、xの値が0.21(Zr:0.79、Y:0.21)であった。表1に示すように、100℃での実施例12のプロトン伝導度は0.12S/cmであり、500℃でのプロトン伝導度は0.65S/cmであった。
(実施例13)
Ba:Zr:Y=3:4:1の元素比率を有する焼結体ターゲットを用いて成膜したこと以外は、実施例1と同様に実験を行った。表1に、成膜したプロトン伝導性酸化物の構造、組成比、及びプロトン伝導性を示す。
表1に示すように、実施例13のプロトン伝導性酸化物は、ペロブスカイト型の結晶構造であり、かつ、単結晶であることが確認された。表1に示すように、このプロトン伝導性酸化物(Aa1-xB’x3-δ)は、Aの元素がバリウム(Ba)であり、aの値は0.42であった。また、Bの元素がジルコニウム(Zr)であり、B’の元素がイットリウム(Y)であり、xの値が0.22(Zr:0.78、Y:0.22)であった。表1に示すように、100℃での実施例13のプロトン伝導度は0.31S/cmであり、500℃でのプロトン伝導度は0.54S/cmであった。
(比較例1)
Ba:Zr:Y=5:4:1の元素比率を有する焼結体ターゲットを用いて成膜したこと以外は、実施例1と同様に実験を行った。表1に、成膜したプロトン伝導性酸化物の構造、組成比、及びプロトン伝導性を示す。
表1に示すように、比較例1のプロトン伝導性酸化物は、ペロブスカイト型の結晶構造であり、かつ、単結晶であることが確認された。表1に示すように、この酸化物(Aa1-xB’x3-δ)は、Aの元素がバリウム(Ba)であり、aの値は0.98であった。また、Bの元素がジルコニウム(Zr)であり、B’の元素がイットリウム(Y)であり、xの値が0.19(Zr:0.81、Y:0.19)であった。
表1に示すように、100℃での比較例1のプロトン伝導度は2.3×10-5S/cmであり、500℃でのプロトン伝導度は0.039S/cmであった。
(比較例2)
Ba:Zr:In=7:9:1の元素比率を有する焼結体ターゲットを用いて成膜したこと以外は、実施例1と同様に実験を行った。表1に、成膜したプロトン伝導性酸化物の構造、組成比、及びプロトン伝導性を示す。
表1に示すように、比較例2のプロトン伝導性酸化物は、ペロブスカイト型の結晶構造であり、かつ、単結晶であることが確認された。表1に示すように、この酸化物(Aa1-xB’x3-δ)は、Aの元素がバリウム(Ba)であり、aの値は0.65であった。また、Bの元素がジルコニウム(Zr)であり、B’の元素がインジウム(In)であり、xの値が0.13(Zr:0.87、In:0.13)であった。表1に示すように、100℃での比較例2のプロトン伝導度は0.01S/cmであり、500℃でのプロトン伝導度は0.013S/cmであった。
(比較例3)
Ba:Zr:Y=4:7:3の元素比率を有する焼結体ターゲットを用いて成膜したこと以外は、実施例1と同様に実験を行った。表1に、成膜したプロトン伝導性酸化物の構造、組成比、及びプロトン伝導性を示す。
表1に示すように、比較例3のプロトン伝導性酸化物は、多結晶のペロブスカイト型の結晶構造が含まれていた。また、不純物層として、酸化ジルコニウム(ZrO2)が検出された。表1に示すように、この酸化物(Aa1-xB’x3-δ)は、Aの元素がバリウム(Ba)であり、aの値は0.35であった。また、Bの元素がジルコニウム(Zr)であり、B’の元素がイットリウム(Y)であり、xの値が0.32(Zr:0.68、Y:0.32)であった。表1に示すように、100℃での比較例3のプロトン伝導度は3.2×10-6S/cmであり、500℃でのプロトン伝導度は8.5×10-3S/cmであった。
(比較例4)
基材の材料がチタン酸ストロンチウム(SrTiO3)単結晶であり、Sr:Zr:Y=8:3:7の元素比率を有する焼結体ターゲットを用いて成膜したこと以外は、実施例1と同様に実験を行った。表1に、成膜したプロトン伝導性酸化物の構造、組成比、及びプロトン伝導性を示す。
表1に示すように、比較例4のプロトン伝導性酸化物は、多結晶のペロブスカイト型の結晶構造が含まれていた。また、不純物層として、炭酸バリウム(BaCO3)及び酸化イットリウム(Y23)も検出された。表1に示すように、この酸化物(Aa1-xB’x3-δ)は、Aの元素がストロンチウム(Sr)であり、aの値は0.78であった。また、Bの元素がジルコニウム(Zr)であり、B’の元素がイットリウム(Y)であり、xの値が0.68(Zr:0.32、Y:0.68)であった。
表1に示すように、100℃での比較例4のプロトン伝導度は6.5×10-6S/cmであり、500℃でのプロトン伝導度は9.4×10-3S/cmであった。
(比較例5)
Sr:Zr:Y=5:3:2の元素比率を有する焼結体ターゲットを用いて成膜したこと以外は、比較例4と同様に実験を行った。表1に、成膜したプロトン伝導性酸化物の構造、組成比、及びプロトン伝導性を示す。
表1に示すように、比較例5のプロトン伝導性酸化物は、ペロブスカイト型の結晶構造であり、かつ、多結晶であることが確認された。表1に示すように、この酸化物(Aa1-xB’x3-δ)は、Aの元素がストロンチウム(Sr)であり、aの値は1.01であった。また、Bの元素がジルコニウム(Zr)であり、B’の元素がイットリウム(Y)であり、xの値が0.45(Zr:0.55、Y:0.45)であった。
表1に示すように、100℃での比較例5のプロトン伝導度は4.3×10-6S/cmであり、500℃でのプロトン伝導度は8.6×10-3/cmであった。
表1に示すように、実施例1〜13のプロトン伝導性酸化物は、比較例1〜5と比較して、高いプロトン伝導度を有していることがわかる。実施例1〜13のプロトン伝導性酸化物は、0.4<a<0.9であり、かつ、0.2<x<0.6の条件を満たしている。
少なくとも5%程度の製造誤差を有することがわかっており、実施例1〜13のa及びxの値から、0.4<a<0.9であり、かつ、0.2<x<0.6を満たすプロトン伝導性酸化物は、高いプロトン伝導度を有する。
より具体的には、実施例3、実施例9、実施例11、及び実施例12のプロトン伝導体酸化物は、x=0.21、x=0.58、a=−0.054x+0.441、及びa=−0.027x+0.886の4つの式で囲まれる数値範囲である。すなわち、これらの実施例では、組成比率x、aが以下の関係を満たしている。
0.21≦x≦0.58、
a≧−0.054x+0.441、及び
a≦−0.027x+0.886
また、実施例1〜13のプロトン伝導性酸化物は、100℃及び500℃での活性化エネルギが、0.1eVよりも低い活性化エネルギを示しているのに対して、比較例1、3〜5の酸化物は、0.1eVよりも高い活性化エネルギを有していた。つまり、組成比率が上述の条件を満たす場合(実施例)に、100℃以上500℃以下の温度域においても、プロトン伝導性酸化物が、10-1S/cm以上の高いプロトン伝導度を維持する。実施例により示したように、a及びxの値が上述した範囲内となるように調整することにより、プロトン伝導度の活性化エネルギを0.1eV以下にすることができるので、温度の低下に伴うプロトン伝導度の低下を抑制できる。さらに、0.4<a<0.9であり、かつ、0.2<x<0.6の条件を満たすプロトン伝導性酸化物は、0.1eV以下のプロトン伝導度の活性化エネルギを有する、比較例2の酸化物よりも高いプロトン伝導度を有する。
なお、本発明者の実験から、Aの元素の欠損量を示す(1−a)がB’の元素の組成比率xに近いとき、製造が容易であることが分かっている。このため、以下の関係が成立すると、実用上、有益である。
0.5<(1−a)/x<2.5
また、表1から明らかなように、0.4<a<0.6であり、かつ、0.4<x<0.6のとき、相対的に高いプロトン伝導度が実現し、0.4<a<0.5であり、かつ、0.4<x<0.6のとき、最も高いプロトン伝導度が実現している。
さらに、実施例1、2、5、7、10、及び11のプロトン伝導性酸化物は、500℃において、より高いプロトン伝導を有するので、より望ましい。実施例1、2、5、7、10、及び11のプロトン伝導性酸化物は、少なくとも5%程度の製造誤差を考慮して、0.4<a<0.8、かつ、0.3<x<0.6の条件を満たす。より具体的には、実施例1、2、5、7、10、及び11のプロトン伝導性酸化物は、0.41<a<0.73、かつ、0.31<x<0.58の数値範囲に対して製造誤差を加えた条件を満たす。
さらに、実施例2、5、7、及び11のプロトン伝導性酸化物は、100℃において、高いプロトン伝導度を有するので、より望ましい。実施例2、5、7、及び11のプロトン伝導性酸化物は、少なくとも5%程度の製造誤差を考慮して、0.4<a<0.8、かつ、0.4<x<0.6の条件を満たす。より具体的には、実施例2、5、7、及び11のプロトン伝導性酸化物は、0.41<a<0.71、かつ、0.41<x<0.58の数値範囲に対して製造誤差を加えた条件を満たす。
(燃料電池の実施形態)
以下、図3を参照しながら、本開示の実施形態による燃料電池の構成及び動作を説明する。
図3に示す燃料電池100は、アノード102と、カソード103と、アノード102及びカソード103の間に配置されたプロトン伝導体101とを備える。プロトン伝導体101として、実施例を参照しながら説明した上述のプロトン伝導性酸化物を用いることができる。プロトン伝導体101は、100℃以上500℃以下の温度域においても、高いプロトン伝導性を有する。そのため、燃料電池100は、有機ハイドライドを用いる発電に適した、例えば100℃以上300℃以下の温度域において、動作することができる。さらに、プロトン伝導体101を備える燃料電池100では、プロトン伝導性固体高分子膜を電解質として用いる場合とは異なり、アノード102又はカソード103から電解質(ここではプロトン伝導体101)に積極的に水分を供給する必要はない。
図3に例示する構成では、アノード102とカソード103とは、プロトン伝導体101を挟むようにして配置されている。すなわち、図示する例では、アノード102は、プロトン伝導体101の一方の主面上に配置されており、カソード103は、プロトン伝導体101においてアノード102が配置されていない側の主面上に配置されている。プロトン伝導体101、アノード102及びカソード103の配置は、図3の例に限定されず、種々の配置を採用し得る。例えば、アノード102及びカソード103が、プロトン伝導体101における同一の主面上に配置されていてもよい。
アノード102は、脱水素化触媒を含む。すなわち、アノード102は、有機ハイドライドを含有する気体又は液体からプロトンを引き抜くことができるように構成されている。アノード102に含まれる触媒の例は、Ni、Pt、及びPdからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む、金属、合金又は酸化物である。
アノード102に含まれる触媒として、Ni、Pt、及びPdからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む金属又は合金を用いる場合、触媒は、Al23、SiO2、ZrO2等からなる担体の表面上に担持されていてもよい。すなわち、アノード102は、担体をさらに含み得る。担体の材料に特に限定はない。Al23、SiO2、及びZrO2は、アノード102の形成が容易な担体の例である。また、担体の形状に特に限定はなく、アノード102に含まれる触媒と外部負荷104との間の電気的接続が確保できればよい。アノード102が担体を含むことにより、より広い面積に触媒を分散させることができる。
アノード102は、スパッタ法、PLD法、CVD法等の膜形成方法によって形成できる。上記の材料の粉末を溶剤に分散させたインクをスクリーン印刷した後、加熱、真空処理等により乾燥及び固化させ、アノード102を形成してもよい。アノード102の形成方法は、特に限定されない。
カソード103は、酸素ガスを含有する気体中の酸素を還元し、プロトンと電子とが反応することができる触媒を含む。カソード103に含まれる触媒の例は、Pt及びRuからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む、金属、合金若しくは酸化物、又は、Co、Fe及びMnからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む酸化物である。
カソード103に含まれる触媒の他の例は、組成式ABO3-δで表されるペロブスカイト型結晶構造を有する酸化物である。ここで、Aは、Ba、Sr、Ca、La及びSmからなる群から選ばれる少なくとも1つを含み、Bは、Zr及びCeからなる群から選ばれる少なくとも1つとRuとを含む。又は、Bは、Ni、Fe、Co及びMnからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む。なお、Oは酸素であり、δは、酸素欠損または酸素過剰を示す。このような酸化物として、La1-xSrxFeO3-δ(0≦x≦1.0)、La1-xSrxCo1-yFey3-δ(0≦x≦1.0、0.1≦y≦0.8)、La1-xSrxMnO3-δ(0≦x≦0.4)、Sm1-xSrxCoO3-δ(0.2<x<0.8)、Ba1-xSrxCo1-yFey3-δ(0.4≦x≦1.0、0.4≦y≦1.0)等を例示することができる。なお、La2-xSrxNiO4-δ(ただし、0≦x≦0.5)で表されるK2NiF4結晶構造を有する酸化物を用いることも可能である。
カソード103に含まれる触媒として、以下に示すような、組成式AB1-xB’x3-δで表されるペロブスカイト型結晶構造を有する酸化物も用い得る。この酸化物は、前述したようなペロブスカイト型結晶構造を有する酸化物である。ここで、Aは、Ba、Sr及びCaからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む。Bは、Zr及びCeからなる群から選ばれる少なくとも1つとRuとを含み、B’は、Y若しくはIn又は3価のランタノイド元素である。B’の元素の組成比率を示すxの値は、0.10<x<0.80の範囲であり、より好ましくは、0.25<x<0.75の範囲である。なお、AとBとB’の和を2とした場合におけるRuの原子数比率は、例えば0.01以上、0.8以下である。
カソード103は、スパッタ法、PLD法、CVD法等の膜形成方法によって形成できる。上記の材料の粉末を溶剤に分散させたインクをスクリーン印刷した後、加熱、真空処理等により乾燥固化させ、カソード103を形成してもよい。カソード103の形成方法は、特に限定されない。
図3に例示する構成では、燃料電池100は、第1流体入口105及び第1流体出口106が設けられたアノード側反応容器111と、第2流体入口107及び第2流体出口108が設けられたカソード側反応容器112とを有している。アノード側反応容器111内の空間とカソード側反応容器112内の空間とは、隔壁によって分離されており、図3に例示する構成では、プロトン伝導体101が、これら2つの空間を分離する隔壁として機能する。
図示する例において、アノード側反応容器111内には、第1流路109が設けられており、第1流体入口105から導入された流体は、第1流路109を介して第1流体出口106に向かって流れる。同様に、カソード側反応容器112内には、第2流路110が設けられており、第2流体入口107から導入された流体は、第2流路110を介して第2流体出口108に向かって流れる。第1流路109及び第2流路110は、それぞれ、気密及び水密が保たれており、各流路を流れる流体が互いに混ざり合わないように構成されている。図3に示したように、アノード102の表面の少なくとも一部は、第1流路109において露出し、カソード103の表面の少なくとも一部は、第2流路110において露出する。
図示する構成では、燃料電池100の動作時、第1流体入口105を介して、第1流路109に、有機ハイドライドを含有する気体又は液体が導入される。2種以上の有機ハイドライドの混合体も用いられ得る。また、第2流体入口107を介して、第2流路110に酸素を含有する気体(典型的には酸素ガス又は空気)が導入される。有機ハイドライドを含有する気体又は液体と、酸素を含有する気体とを導入するために、第1流体入口105、第1流体出口106、第2流体入口107及び第2流体出口108のそれぞれに不図示の配管が接続される。これらの配管の途中には、ボンベ、タンク、バルブ、コンプレッサ、マスフローコントローラ等が配置され得る。
燃料電池100は、有機ハイドライドを含有する気体又は液体をアノード102に供給し、酸素ガスを含有する気体をカソード103に供給することにより発電する。第1流体入口105から例えば有機ハイドライドを導入するとともに、第2流体入口107から例えば酸素ガスを導入することにより、一端がアノード102に接続され、他端がカソード103に接続された外部負荷104に電流が流れる。すなわち、アノード102及びカソード103を介して、燃料電池100において発生した電力を取り出すことができる。
第1流体入口105から例えば液体の有機ハイドライド(ここではメチルシクロヘキサン)を導入し、第1流路109において有機ハイドライドをアノード102に接触させる。なお、有機ハイドライドを霧状にしてアノード102に噴霧してもよい。また、有機ハイドライドの気体又は蒸気を含有する気体をアノード102に供給してもよい。アノード102に供給される気体は、例えば、炭化水素系ガス、窒素ガス、二酸化炭素ガス、酸素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等を含んでいてもよい。これにより、有機ハイドライド(ここではメチルシクロヘキサン)からプロトンが引き抜かれる。
アノード102では、以下の式(1)に示す反応が進行する。
714→C78+6H++6e- (1)
有機ハイドライド(ここではメチルシクロヘキサン)の脱水素化物(ここではトルエン)は、第1流体出口106を介して排出される。第1流体出口106を介して排出される脱水素化物は、水素化により、有機ハイドライドとして再利用可能である。なお、燃料電池100は、動作時、例えば200℃程度の温度で運転される。したがって、有機ハイドライド及び/又はその脱水素化物の変質を抑制し得る。
アノード102において生成したプロトンは、プロトン伝導体101中を伝導し、カソード103に到達する。プロトン伝導体101は、アノード102とカソード103との間の短絡を防ぎ、かつ、アノード102において生成されたプロトンをカソード103に供給する。
第2流体入口107から例えば酸素ガスを導入し、第2流路110において酸素ガスをカソード103に接触させる。酸素ガスは、積極的に加湿されていなくてもよい。酸素ガスをカソード103に接触させることにより、カソード103では、以下の式(2)に示す反応が進行する。
4H++O2+4e-→2H2O (2)
第1流体入口105から導入された有機ハイドライドのうち、発電に使用されなかった有機ハイドライドは、第1流体出口106を介して排出される。この残余の有機ハイドライドを回収して第1流体入口105から第1流路109に再度導入してもよい。同様に、第2流体入口107から導入された酸素ガスのうち、発電に使用されなかった酸素ガスは第2流体出口108を介して排出される。この残余の酸素ガスを回収して第2流体入口107から第2流路110に再度導入してもよい。カソード103において生成した水は、第2流体出口108を介して排出されてもよいし、カソード側反応容器112に他の排出口(不図示)を設け、この排出口から排出されてもよい。なお、燃料(ここでは有機ハイドライド)と、酸素を含有する気体とを導入するための流路は、図3に例示した構成に限定されず、種々の構成及び配置を採用し得る。例えば、第1流体入口105及び第1流体出口106のそれぞれの配置は、有機ハイドライド及びその脱水素化物のそれぞれの比重を考慮して設計され得る。また、アノード102、プロトン伝導体101及びカソード103が順に積層される構成では、アノード側の空間とカソード側の空間とを分離する隔壁の少なくとも一部が、アノード102、プロトン伝導体101及びカソード103の積層体であればよい。
以上に説明したように、本開示の実施形態によれば、有機ハイドライドを燃料として用い、100℃以上300℃以下の温度域においても発電を実行し得る、実用的な燃料電池を提供できる。本開示の実施形態によれば、300℃以下の温度域において燃料電池を運転できるので、有機ハイドライド及び/又はその脱水素化物の変質を抑制しつつ、比較的高い出力を得ることができる。また、電解質を湿潤した状態に保つ必要がないので、水分の混入が抑制され、したがって有機ハイドライドの脱水素化物を再利用することが容易である。
本開示の実施形態による燃料電池は、家庭用、業務用等の燃料電池として有用である。また、本開示の実施形態によれば、有機ハイドライドの形で貯蔵された水素を、水素ガスの形で取り出すことなく発電に用いることができ、有機ハイドライドの脱水素化物を容易に再利用することができる。
100 燃料電池
101 プロトン伝導体
102 アノード
103 カソード
104 外部負荷
105 第1流体入口
106 第1流体出口
107 第2流体入口
108 第2流体出口
109 第1流路
110 第2流路
111 アノード側反応容器
112 カソード側反応容器

Claims (18)

  1. 燃料をアノードに供給し、酸素ガスを含有する気体をカソードに供給することにより、発電する燃料電池であって、
    脱水素化触媒を含むアノードと、
    前記気体中の酸素を還元する触媒を含むカソードと、
    前記アノード及び前記カソードの間に配置されたプロトン伝導体と
    を備え、
    前記プロトン伝導体は、組成式Aa1-xB’x3-δで表されるペロブスカイト型結晶構造を有し、
    前記Aは、アルカリ土類金属から選択される少なくとも1つであり、
    前記Bは、4価の4族の遷移金属又はCeであり、
    前記B’は、3価の3族又は13族の元素であり、
    0.4<a<0.9、かつ、0.2<x<0.6を満たす、燃料電池。
  2. 前記Aは、Ba及びSrから選択される少なくとも1つであり、
    前記Bは、Zrであり、
    前記B’は、Y又はInである、
    請求項1に記載の燃料電池。
  3. 前記aの値が、0.4<a<0.8であり、
    前記xの値が、0.3<x<0.6である、
    請求項1又は2に記載の燃料電池。
  4. 前記aの値が、0.4<a<0.8であり、
    前記xの値が、0.4<x<0.6である、
    請求項1又は2に記載の燃料電池。
  5. 前記aの値が、0.4<a<0.6であり、
    前記xの値が、0.4<x<0.6である、
    請求項1又は2に記載の燃料電池。
  6. 前記aの値が、0.4<a<0.5であり、
    前記xの値が、0.4<x<0.6である、
    請求項1又は2に記載の燃料電池。
  7. 100℃以上500℃以下の温度範囲における、前記プロトン伝導体のプロトン伝導の活性化エネルギが0.1eV以下である、
    請求項1から6のいずれかに記載の燃料電池。
  8. 0.21≦x≦0.58、
    a≧−0.054x+0.441、及び
    a≦−0.027x+0.886
    の関係が成立する、
    請求項1又は2に記載の燃料電池。
  9. 前記プロトン伝導体は、組成および結晶構造が実質的に均一な単相から構成されている、
    請求項1から8のいずれかに記載の燃料電池。
  10. 前記脱水素化触媒は、Ni、Pt及びPdからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む金属又は合金である、
    請求項1から9のいずれかに記載の燃料電池。
  11. 前記脱水素化触媒は、Ni、Pt及びPdからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む酸化物である、
    請求項1から9のいずれかに記載の燃料電池。
  12. 前記アノードは、担体をさらに含み、
    前記担体は、Al23、SiO2、又はZrO2から構成されており、
    前記脱水素化触媒は、Ni、Pt及びPdからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む金属又は合金であり、前記担体の表面上に担持されている、
    請求項1から9のいずれかに記載の燃料電池。
  13. 前記酸素を還元する触媒は、Pt及びRuからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む金属又は合金である、
    請求項1から9のいずれかに記載の燃料電池。
  14. 前記酸素を還元する触媒は、Pt及びRuからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む酸化物である、
    請求項1から9のいずれかに記載の燃料電池。
  15. 前記酸素を還元する触媒は、Co、Fe及びMnからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む酸化物である、
    請求項1から9のいずれかに記載の燃料電池。
  16. 前記酸素を還元する触媒は、組成式CDO3-δで表されるペロブスカイト型結晶構造を有する酸化物であり、
    前記Cは、Ba、Sr、Ca、La及びSmからなる群から選ばれる少なくとも1つを含み、
    前記Dは、Zr及びCeからなる群から選ばれる少なくとも1つとRuとを含むか、又は、Ni、Fe、Co及びMnからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む、
    請求項1から9のいずれかに記載の燃料電池。
  17. 前記酸素を還元する触媒は、組成式La2-wSrwNiO4-δで表されるK2NiF4結晶構造を有する酸化物であり、
    0≦w≦0.5を満たす、
    請求項1から9のいずれかに記載の燃料電池。
  18. 前記酸素を還元する触媒は、組成式EF1-zF’z3-δで表されるペロブスカイト型結晶構造を有する酸化物であり、
    前記Eは、Ba、Sr及びCaからなる群から選ばれる少なくとも1つを含み、
    前記Fは、Zr及びCeからなる群から選ばれる少なくとも1つとRuとを含み、
    前記F’は、Y若しくはIn又は3価のランタノイド元素であり、
    0.10<z<0.80を満たす、
    請求項1から9のいずれかに記載の燃料電池。


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